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『愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ』~日本×カタール~

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<愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ ~日本×カタール~

西野JAPANのロシアW杯ベスト16を引き継ぐ形で発足した森保JAPAN。
昨年のテストマッチでは南米の強豪ウルグアイを破る快進撃を見せ、アジア杯決勝を迎えるまで目下無敗という成績。
このカタール戦を迎えるまで、森保JAPANには追い風しか吹いていなかったはずが、たった1つの敗戦で今や空気は一変してしまいました。

それぐらい、衝撃的な完敗劇だったと言えるのではないでしょうか。

しかし今大会の勝ち上がりを見ても森保JAPANの強さはアジアでは際立っていたはずでした。
「絶対に先に失点しない」という森保監督の強い哲学が感じられるゲーム運びは、今大会で台頭した「日本の未来」こと冨安を中心にしたDFラインの安定感と5-4-1の撤退も辞さない「人海戦術の守備」が鉄壁を誇っています。

象徴的な勝ち方であったサウジ戦では脅威のボール支配率23%で1-0の勝利。
「ボールなどいらない、欲しいのは結果のみ」という割り切りが真骨頂のチームであり、確かにアジアでは日本が組織的に我慢比べを挑めば、必ず先に根を上げるのは相手チームの方です。
大会優勝最有力と見られていたイランも日本の我慢比べに根負けして結局自滅していました。

勿論、これが通用するのはアジアまでです。
日本サッカー界はW杯後の4年間で毎度アジアでイキって調子に乗り⇒世界に出て叩かれるのサイクルを繰り返してきた歴史があります。

だからこそ、このアジア杯では日本が優勝候補であり続けられる訳ですし、それは大会前から分かっていた事でした。
しかし、このアジアで欧州や南米の一線級を相手にした時のような完敗を喫したとなればこれは一大事です。
この一敗は前回大会でシュート37本を打ちながらPK負けしたベスト8の"アレ"とは全く別次元のものとして扱うべきでしょう。

ではせめてこの歴史的な一敗という「経験」から我々も最大限学べるよう、敗因を分析しながら試合を振り返っていきたいと思います。



<恐るべきカタールのポジショナルサッカー>
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日本の最大の敗因、それはカタールがこれまでのアジア諸国には見られなかった緻密なサッカーで日本を完全攻略してきたからでした。
この試合、これまでの日本の勝ちあがり方をスカウティングしたカタールは3-5-2の布陣を選択。
具体的な狙いは両チームの布陣の噛み合わせを見れば明らかです。

【日本×カタール 両チームの布陣噛み合わせ】
日本カタール2

後ろから丁寧にボールをつなぐカタールはビルドアップの始点で日本の2トップに対し3対2の数的優位。
加えて1・5列目をウロウロしているFW11番のアフィフがこのチームにおけるメッシ役で、機を見て中盤に降りてくるので中央エリアでは日本の2ボランチ×カタールの3MF+1FWという絶対的な優位性を築いています。

では実際の試合序盤のシーンからカタールの狙いと日本の噛み合っていない守備を検証していきましょう。


【カタールの4-4-2殺し】
カタールポジショナル1
カタールの3バックから始まるビルドアップに対し、日本は2トップで規制をかけようとしていますが、ここではカタールがCHまで加わって4対2の鳥カゴ状態になっているのがよく分かります。




カタールポジショナル2
3バックに規制がかからないので、間を通されてボールはCHへ。
このCHに柴崎が出て行くと、もう1枚のボランチ塩谷は前線から落ちてきたFWアフィフをケアするのでハーフスペースに落ちてきているIH(インサイドハーフ)が完全に浮いてしまいます。
しかも日本のDFラインはカタールの1トップ+WBでピン止めされているので、この落ちていくIHを捕まえられる選手は誰もいません。

3バックで2トップのファーストラインを剥がし、CHでセカンドラインのボランチ(柴崎)を食い付かせたら次はハーフスペースへ、という具合に日本の守備ラインを1列づつ剥がしていく狙いがカタールの配置に集約されていると言っていいでしょう。


そしてこれがいわゆるオーソドックスな配置の優位性を活かした4-4-2殺し、ポジショナルプレーの系譜です。

吉田麻也
『ボランチの脇で11番を誰が掴むのか。1点目も2点目もそこを起点にされて失点している。そこでの臨機応変さが足りなかった』




-3バックに対して2トップで守備をしていたらハマらない-


ならばSHを加勢させたらどうか…?


この安易な対応こそがカタールの罠であり、結果的に日本は2失点という重過ぎるしっぺ返しをくらう事になろうとは-



【日本の失点シーン検証】
カタール得点1-1
続いてもまたカタールの3バックから始まるビルドアップに対し、2トップ+SHの原口が加勢して3対3のプレスを敢行




カタール得点1-2
しかし、この時の原口の寄せる意識は完全に「人(CB)」に向いており、背中にいる敵と自分の内側のパスコースを切る意識が皆無と言って良いレベルで低いと言わざるを得ない。

ポジショナルプレーとはすなわち相手の出方を見た後での「後出しジャンケン」なので、カタールのCBは原口のこの寄せを見て隣のCBではなくハーフスペースへのクサビを選択




カタール得点1-3
やはりこの原口の寄せ方だとこのコースを通されてしまう。
守る側である日本からすると、このハーフスペースにクサビを入れられてしまうと一気に苦しい状態に追い込まれてしまうのだが・・・




カタール得点1-4
それは何故か?と言えば、中を通された場合、守備ブロックは一度中央に収縮させざるを得ない。
カタールはここでもそんな日本の動きを見た「後出しジャンケン」で今度は空いたサイドのスペースへ流れたアフィフへサイドチェンジ。
(この11番アフィフは本当に厄介な選手で、常に日本の陣形の動きを見た後で「空いたスペース」を察知し、そこへ顔を出す)





カタール得点1-5
上空からのアングルで見ても明らかな通り、中に絞った日本の守備ブロックと、サイドに空いたスペースが一目瞭然。
これだけスペースのあるサイドにボールを展開されたら守備側は後退するしか手は無い。







カタール得点1-6
↑はアフィフがサイドでボールを受けた後のシーンです。
カタールは次のクロスに備えて、FW+IHの2枚がゴール前に走り込もうとしていますが、そのポジション取りに注目。
きちんと5レーンにおけるハーフスペースのレーンをIHが走っています。
中の3枚が全員、日本のDFとDFの間のコースを取っている事にカタールの完成度が垣間見えます。
(明らかにこれまで対戦した中東の「前線個人頼みサッカー」とは一線を画している)






カタール得点1-8
で、実際にクロスが中央のFWに入った瞬間ですが、結果的にこの後、オーバーヘッドを選択してゴールにつながるこのシーン。
ゴールを決めたFWの両脇をIHがサポートに走り込んでおり、クロスが入った時点でカタールにはいくつもの選択肢があった事が分かります。
攻撃の確率とはいかに多くの選択肢を用意するかなので、この状況を作った事が既にカタールの勝利であり、
このゴールは結果的にその選択肢の中から自分でオーバーヘッドという選択を取ったに過ぎない。



そして続くカタールの2点目も全く同じ構図から生まれています。



【カタールの2点目を検証】
カタール得点2-1
このシーンでは左SHの原口と右SHの堂安がポジションを入れ替わって守備をしていますが、人が変わっても全く同じ状況が生まれている事にご注目。
ここでも3バックの右CBに堂安が寄せるが、やはり意識はあくまで「人(CB)]であり、背中にいる敵と自身の内側のコースを切る意識が希薄になっています。

↑このシーンを見て「堂安じゃなくて、ボランチの塩谷がこのコースを切ったら良いのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、もしボールに充分なプレッシャーがかかっていないこの状況でボランチの塩谷が堂安の背後をケアするポジションを取った場合、一体何が起こるのか?




カタール得点2-2
仮に塩谷のポジションが堂安の背後寄りにスライドしていたら、一番肝心な中央のFWへのクサビルートがポッカリと空いてしまいます。
そもそもボランチはこの一番打ち込まれたくないコースとスペースを消すのが役目なので、ここを空けてしまったら本末転倒。
故に、だからこそハーフスペースというのは現代サッカーにおいて有効と言える訳ですね。






カタール得点2-3
結果的に1失点目と全く同じパスコースを通されてしまう日本。
こうなると守備側は自陣ゴール前まで撤退あるのみ






カタール得点2-4
しかーし!自陣で4×4のブロックを形成しても、やはり堂安の中を閉める意識が低過ぎてバイタルへのコースがガラ空きやー!






カタール得点2-5
ここを通されてしまうと、CBの吉田と冨安はまず失点の確率を減らす為、DFライン背後のスペースを消す後退の一択しかない。
(もしここにスルーパスが出たらそれこそ致命傷)








カタール得点2-6
故にドリブルで中に切り込まれてそのままシュートを打たれるこの場面でも、一度背後をケアした分、CB吉田の対応が1歩遅れて寄せきれず⇒シュートコースが消しきれなかったというロジックですね。

TVの前で思わず「何で吉田、寄せんねん!」と思ってしまった方は、あの瞬間CBがボールに食い付いて、背後にスルーパス出された時には文句を言えないのでご注意下さい(笑)





<後手に回り続けた日本の対応>
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気付けば前半26分でスコアはまさかの0-2。
その原因ともなったこれまでの日本の守備の問題点をまとめてみましょう。

・3バックにされた事で2トップ×3バックだとプレスがハマらない
・空いたCBからCHを使われて、ボランチが出て行くと今度はハーフスペースにいるIHが浮いてしまう
・かと言ってSHを2トップに加勢させて3バックに「3対3」の同数でプレスに行くと中を通されて、これまたハーフスペースを使われる


うーん・・・こう書き出すとまさに八方塞りですね(^^;
つまり、これが「人」に付くだけの守備の限界であり、だからこそ4-4-2ではSHが守備の戦術インテリジェンスが低い場合、スコスコにやられるっていう良い一例なんですけどね。

3バックに対して4-4-2で守る場合、SHが内側のコースを背中で消しながらCBに出て行くという「1人で2人を見る守備」が出来ないと簡単に中を通されてしまいます。
この「1人で2人を消す守備」が日本で最も得意なSHは乾なんですが、その乾もスペインに渡ってからこのポジショニングを叩き込まれたので現状、日本の育成でこの守備は実装出来ていません。

ちなみに乾はエイバル時代のメンディリバル監督から「CBとボランチとSBの3枚を1人で見ろ!」と言われており、「1人で3枚を消す守備」を要求されていたというんですから、世界のトップはげに恐ろしき。
(具体的な方法は背中でボランチを消しながらCBを牽制し、SBに出されたら一気にスライドする、という頭脳とハードワークを兼ね備えた極めて高レベルのプレーでした)

そんな乾だけに試合後のコメントは悔しさが滲み出ています。

乾『2トップで3バックを見ていた。それだと絶対に(プレスは)はまらない。気づいていたのに言えなかった』



それにしても日本ベンチの対応は一体どうなっているのか?
0-2とされた後の日本ベンチが抜かれた画を見て、戦慄が走ります-

森保前半28分
まだ監督とコーチが対応を話し合っている・・・だと?

この試合、キックオフから5分もすればカタールの布陣とその狙い、そして4-4-2との噛み合わせの悪さは一目瞭然だったはず。であるならば遅くとも前半10分~15分までにはベンチから修正の一手が打たれるのはCLなどのトップレベルのサッカーでは当たり前の光景です。
それをもう前半も30分になろうかというこの時間帯でまだ対応策を決めかねている・・・というのでは現代サッカーでは致命的とも言える遅さ。

実際にそうこうしている内にスコアは0-2になってしまった訳ですから、勝敗の8割はこの前半30分までに決まってしまったと言っても過言ではないでしょう。


この後、ベンチの森保監督がタッチライン際に大迫を呼んで前線の守備を修正したのは前半35分の事。
森保前半35分

「どう修正してくるかな?」と注目して試合を見ていましたが、この修正が実際にピッチ上で具現化されたと思われる前半45分のシーンがコチラ↓


【前線の守備を修正】日本修正(前半44分)
カタールの3バックに対してはパスが出てからSHが出て行く形だと先ほどのように中を通されてしまうので、あらかじめ堂安、原口のSHを上げて大迫とマンツー気味の3トップを形成。
CHにトップ下の南野がマンツーマンで付いて、IHの2枚を2ボランチ(柴崎+塩谷)で、WBにはSBを押し出して、逆サイドのWBを捨てる事で最終ラインの「+1」を確保。

やはり「守備=人に付く」意識が強い日本の修正はどこまでいってもマンツー寄りではありましたが、こうする事でようやく守備に安定感が生まれ、前で引っかけるシーンも出てきました。


・・・しかし、時間はもう前半45分を過ぎたロスタイム。
あまりにも遅すぎた修正であり、終始後手に回り続けたこの試合を象徴するようなシーンでした。



<カタールのゾーンを主体とした守備>

一方、カタールは守備もポジショナルディフェンスと言うか、あくまで人ではなくボールとゾーンを主体にした見事な配置を見せていました。


【カタールの守備を検証】
守備カタール4
↑は守備時WBを下げて5-3-2で守るカタールの守備ブロックの図

2トップが縦関係で、中盤の3枚がボールサイドからL字型に綺麗なディアゴナーレ(チャレンジとカバー)を形成しているのが分かります。
カタールの守備は1人が1人に付く、というものではなく、ボールと味方を基準にしているのでこの時の各選手の果たしている守備の役割を可視化させると以下のようになります↓


守備カタール3
まず前線の大迫は3CBがいるので、大迫がどう動こうと3対1の完全数的優位で対応出来るので問題無し。
縦関係の2トップは1・5列目に入る11番のアフィフが背中でボランチ(柴崎)を消しています。
そしてボールホルダーのSB酒井にはIHが寄せますが、ナナメのコースを切りながら中から寄せるので結果としてボールに寄せながら背中にいる堂安も消せているので「1人で2人を」見れています。
そしてこのIHとディアゴナーレを組むCHは、あくまで味方のIHの位置を基準にナナメ後方に位置取る事で「相手(堂安)」に付くのではなくスペースを消しながら結果として目の前にいる堂安を見つつ、背中でトップ下の南野を消せているのでこれまた「1人で2人」を見れてしまいます。

このようにゾーンベースの守備はあくまでボールと味方を基準とした位置を取り、その結果として間のスペースに立っている敵(人)を消してしまう・・・という守り方です。

この守り方の利点は以下の通り
・人を前に置くのではなく、自分が前で背中で消しているのでパスが出てから寄せるのではなく、パスコース自体を消せている
・守備がリアクションではないので相手にどう動かれても陣形のバランスが崩れにくい
・SBが上がったらどこまでも付いて行く原口・・・というような属人的な過負荷が無いので運動量を節約出来る

そして最大の利点は「ボールを奪った瞬間にカウンターで優位性が持てる点」です。


【背中で消す守備の利点=カウンターの優位性】
カタール守備ゾーン1
↑はカタールのゾーン守備の優位性が明らかになったワンシーン。
まずカタールは縦関係の2トップがディアゴナーレを組む事で2枚で日本の2CB+ボランチ(柴崎)を消せているのが分かるかと思います。
3バックのカタールに3枚をマンツーでブチ当てないと守れない日本とはまず守備の始点で違いが明らか。





カタール守備ゾーン2
カタールはここでもボールと味方を基準にディアゴナーレを組むのでFWもCHも背中でコースを消せている状態。
追い込まれた吉田はグラウンダーのパスだと全てカットされるので浮き玉のロングボールを前線に蹴るぐらいしか選択肢が無い






カタール守備ゾーン3
まんまとロングボールを「蹴らされた」吉田だが、ここは逆サイドのIHが絞ってカバーしていたので難なく処理。
そしてこのボールを跳ね返す瞬間に、マークを自分の「前」ではなく「後ろに置いていた」事の利点が明らかに。
カタールはこのボールを前線に跳ね返せば、攻撃と守備の⇒が入れ替わるのでボランチ(柴崎)の背後でFWがフリーで前を向ける状態に





カタール守備ゾーン4
ハイ!出たこの形。2CBに2トップで向かって行ける極めて危険なカウンター。
日本は自陣から何でもないロングボールを一発蹴っただけで、跳ね返されたらもうこの状態である。


これが攻撃と守備を分けて考えるのではなく、連動したものとして
奪った瞬間のカウンターを想定した配置で守る、という考え方ですね。

これ即ち、ポジショナルプレーなり



<両指揮官の修正力の差が明暗を分ける>
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カタールから見れば前半を終えて2-0。あとは安全運転で後半を乗り切れば問題は無いだろう。
という事でハーフタイムにカタールのサンチェス監督は5-4-1へ布陣を変更して守備を固める一手を打ちます。
しかし、これは結果的に日本に息を吹き返すチャンスを与える悪手でした。


【5-4-1にしたカタール】カタール5-4守備1

日本は前半、ボランチもSHも上手くゾーンの中に取り込まれてパスコースを消されてしまい、結果的にCBやSBから長いアバウトなタテパスを入れるしか攻撃の手が無かったのですが、後半のカタールが5-4-1で撤退を選択した為に、前半ほとんど前を向いてボールを持てなかったボランチ、とりわけ柴崎がフリーで前を向けるようになったのは救いでした。

日本はボランチがボールを持てるようになるとSBが上がる時間を作れるようになり、攻撃に「幅」と「厚み」が生まれます。
更にこの状態でボールを持った柴崎はこの身体の向きから・・・・





カタール5-4守備2
このコースにタテパスを刺せるから!

柴崎はこういうオープンな姿勢からサイドに出すと見せて相手DFを動かし⇒厳しいコ-スにタテパスを通すのが真骨頂。
ちなみに4年前の前回大会でも、この形から日本のゴールが生まれていたのを憶えていますか?


【4年前のアジア杯ゴールシーン】
前回アジア杯
この身体の向きからバイタルで待つ本田にタテパスを通してゴールの起点を作っていました。

つまり、柴崎が前を向ける、というのは日本のバロメーターでもある訳です。
(以前は遠藤ヤットがこの役割)


実際に試合では5-4-1で撤退するカタールに対し、日本がボランチを中心に一方的にボールを支配する時間が続きます。
これを見てカタールのサンチェス監督は自身の一手が悪手だった事に気付き、すぐさま動きます。


カタール352修正1
後半15分、すぐさま選手交代で布陣を5-4-1から前半の5-3-2へ戻してきました。
やはりこの15分というベンチの反応時間が世界のスタンダードと言えるのではないでしょうか。
(前半、35分まで動けなかった森保監督と後半15分で動いてきたサンチェス監督)



カタール352修正
後半15分、カタールの守備陣形が5-3-2に戻っているのが分かります。


これで再び試合は拮抗するかに思われましたが、カタールはもう1つディスアドバンテージを抱えていました。
それは「中2日」という日程面での不利であり、後半20分過ぎからじょじょに足が止まっていきます。

この間隙を突いて生まれたのが日本の得点でした。



【日本の得点シーンを検証】
0203日本得点1-1
↑は後半23分のシーンですが、日本がSBからSBへUの字に横パスをつなぐと、特に中盤3枚で横幅68Mを横スライドするIHに明らかに疲れが見えて日本のSBへの寄せが甘くなっています。

これで余裕を持って前線を見れるSB酒井から、後半途中投入された武藤の裏抜けへ。
前半と違ってボールにプレッシャーがかからず、ナナメのコースも切れてないカタールは背走するしかない




0203日本得点1-2
前半、ほとんど入らなかったFWへのクサビが入るようになり、日本はカタール陣内で試合を運べるようになりました。
↑このシーンでもこの後、武藤はボールを奪われてしまうのですが、敵陣深くから守備をスタート出来るので・・・








0203日本得点1-3
奪った後の二次攻撃も敵陣深くからスタート。
SBも高い位置を取っているので、これを拾った酒井がカットイン






0203日本得点1-4
この流れから塩谷がタテパスを入れて南野が待望のゴール、という流れ。

勿論、日本からすると待望のゴールだった訳ですが、このシーンをよく見てみると前線4枚+両SBにボランチまで加勢して、まさに「神風特攻オフェンス」のごとき。後ろには2CBしか残っていません。

つまり森保JAPANとは先に先制してしまえば後は5-4-1の「人海戦術」で守って逃げ切るか、
このようにビハインドを追って攻めに出る時も2-2-6の「人海戦術」で特攻するしかないという、どこまで行っても「人を増やす事」でしか攻撃も守備も出来ないチームと言えるのではないでしょうか?


さて、この嫌な時間帯に1点差に追いつかれたカタールのサンチェス監督。
これがもし立場が逆であったなら日本は「これは追いつかれる流れ」「だから2-0は危険なスコアだとあれほど…」「とにかくアフロが出て来たら気を付けろ」とパニックになるところでしたが、日本の同点弾が戦術的なロジックではなく単なる「全員攻撃の特攻」による産物に過ぎない事を見抜いていました。



カタール後半修正
失点後、すぐさまMF(カリム)を呼び寄せて指示を与えるカタールベンチの動き。
IHに投入する事で、まず守備では疲れの見える横スライドの遅れ問題を解消するのがこの交代による狙いの1点。

そしてもう1点、日本が2CBを残して全員攻撃状態であるならば、狙うは勿論カウンター。
その時に2トップに+もう1枚、攻撃に上がって来れる元気なIHがいる事でカウンターの厚みを増し、得点率を高めたい。
これが失点の瞬間にカタールのサンチェス監督が描いたであろう青写真だったと見ます。


そして実際にこの交代から6分後に試合を決めるカタールの3点目が生まれます。



【カタールの3点目を検証】
カタール得点3-1
1点差に追い上げて、なおもイケイケ状態の日本。
当然両SBを前線に上げて、人海戦術の特攻攻撃継続中。

しかしここからボールを失ってしまうと・・・・






カタール得点3-2
ハイ、お馴染みのパターン!

これだけ広大なスペースでFWに前を向かれた状態になったら吉田は無力。
ズルズルと自陣ゴール前まで後退するしか術がありません。

そしてこれを見た途中投入のIH(カリム)が全速力で上がって来ます。






カタール得点3-3
局面はカタール2トップ+IHの3枚×日本の2CB+2ボランチの4枚。
IHのカリムが攻撃に厚みを加えていると言っても日本から見れば「4対3」
これは充分守れるはず・・・・










カタール得点3-4
・・・が、こういう広いスペースでのデュエルで攻撃のスピードを止められないのがジョルジーニョタイプに属する柴崎のウィークポイント。(スペインで使われない理由の一つ)

隣にカンテかせめて遠藤航がいるならまだしも、プレー半径の狭い塩谷が相棒ではカバーも間に合わず。
加えて吉田は背後にカリムがいるのでボールへ行くのはどうしても遅れる事に。(カリム投入の狙いがここで活きている)

結局このままシュートを打たれ、何とか足に当てて枠を外させたものの、これで与えたCKから吉田が痛恨のハンドでジ・エンド。


試合を振り返ってみると事前のスカウティングから試合中の修正に到るまで、森保監督とサンチェス監督の差が一つの勝敗の分れ目となった感は否めないのではないでしょうか。



<経験からも学べない愚者に未来は無い>
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その国のサッカーを強くするには一体何をしたら良いのか?

賢者は歴史から学ぼう。

フランスは1988年、国立の育成機関としてかの有名なクレーヌフォンテーヌ国立研究所を設立⇒10年後の98年W優勝&2000年EURO優勝の黄金期到来

ドイツは2004年のEURO惨敗による反省から育成を抜本的に改革⇒10年後の2014年W杯で優勝

そしてカタールは自国開催のW杯も睨み2004年に国が養成機関アスパイアアカデミーを設立⇒06年に現A代表監督であるサンチェスをスペインから招聘し10年に渡ってアンダー世代の代表チームを歴任させ、2017年に満を持してA代表の監督へ⇒2019年アジア杯優勝


サッカーの歴史は雄弁に語っている。
「サッカーにおける強化とは一見遠回りに見える『育成』こそが最短の近道である」と。
そして「成果は10~15年単位で現れる」と。


ではこの15年、日本は何をしていたのか?

15年前と言うとジーコJAPANの「自由なサッカー」がドイツでの惨敗に向けて歩みを一歩一歩進めていたあの時である。
そこからオシムの「日本化」⇒岡田の「全員撤退守備」⇒ザックの「俺達の…」⇒ハリルで「縦に速い」を経て西野、森保の「ジャパンズウェイ」である。

まさにその「ウエイ(道)」があっちへ行ったり、こっちへ行ったりなので、継続した強化のベクトルが生まれていない事が分かる。

古いことわざによると「経験から学ぶのは愚者である」という。

では経験からすら学べないとしたら、果たして日本サッカーに未来はあるのか?


愚者が一足飛びで賢者になるのは難しい。
我々にはまず、この「経験」から最大限学ぼうという謙虚な姿勢こそが今、求められているのではないだろうか-







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テーマ : サッカー
ジャンル : スポーツ

5レーンを封鎖せよ!~シティ、チェルシー ポジショナルサッカー攻略法~

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<5レーンを封鎖せよ!~ポジショナルサッカー攻略法~

『ポジショナル VS ストーミング』

今季のプレミアリーグを敢えて今流行りのパワーワードで表現すれば、こんなところになるでしょうか。
ポジショナル勢は元祖ペップのシティと今季からサッリを招聘したチェルシー。ストーミング勢は元祖クロップのリバプールとポジェッティーノのスパーズですね。

開幕から5ケ月-
現在のプレミアリーグの順意表を眺めてみると1位リパプール、2位スパーズ、3位シティ、4位チェルシーとまさにこの4チームの明暗がクッキリ分かれてしまっています。
特にシティは直近のプレミア4試合で1勝3敗と明らかに攻略法がバレてしまった感もありますね。

そこで今回はポジショナルサッカーが陥っている現在の不調の原因を探る為、その目的と攻略法を解析していきたいと思います。


<ポジショナルサッカーの目的とは?>

こんな辺境のブログに迷い込んだ人の中に今更「そもそもポジショナルサッカーって何?」という人はまずいないと思いますが
詳しい解説を読みたい方はネットや雑誌にいくらでも転がってますのでそちらをご参照下さい(笑)

ここではその概念や言葉遊びみたいなのは本題から逸れるので一旦置いておき、
大雑把にポジショナルサッカーとは「再現性の高いポジショニングの型からロジカルにサッカーというゲームを攻略する戦術」という風に定義しておきましょう。

まあ要するに本質的にカオスであるフットボールに将棋の定石のような考え方を持ち込んで、詰め将棋のように相手を追い込んでいこうという訳です。

最近、よく聞く「5レーン」というワードもその定石の一つ、ポジショナルサッカーを遂行する上でのいち手段に過ぎない訳ですね。

で、最近のポジショナルサッカーを巡る言説の中で個人的に少し違和感を覚えていたのが、5レーンや再現性の高いポジショニングが手段ではなく目的のように一部語られていて、「そもそもこのサッカーの目的って何よ?」っていう部分が忘れられてはいないか?という話で。

別に5レーンを全て埋めるポジションを取れてるからスゲー!ではなく、この型が効率的な得点につながっているから凄い、とならなくては本来いけないはず。


現代サッカーにおいて、再現性を持って効率的に相手を崩す最終目的とは即ち「相手のCBを崩す」っていう事とほぼ同義と考えて良いと思います。何故なら数あるシュートパターンの中で最も得点率の高いパターンとは「GKとの1対1」だからです。

よくボール支配率70%とか、クロス60本も蹴って得点0みたいな試合、サッカーにはあるあるですよね?
あれは結局、一見攻めているように見えて外⇒外のUの字にボールを誘導されて、相手のCBが自分の持ち場を離れず、常に良い状態から守備をされているので最後の最後で崩しきれていないんです。

なので、サッカーというゲームでは質の低い決定機10本(大外からのアバウトなクロス)よりも質の高い決定機1本(GKと1対1)の方が遥かに価値が高いという事を分かっている監督かどうか?はそのチームのサッカー、特に攻め筋に大きく影響を与えます。
(まだ世界には「とにかくアフロに蹴れ!」が戦術の監督もいる)


言うまでもなくペップやサッリはこの「決定機の質」に人一倍こだわる監督なので、
再現性を持って効率的に質の高い決定機を作る為にポジショナルサッカーを志向しているという訳ですね。


では具体的にポジショナルサッカーが「5レーン」のポジショニングを用いて中央突破から相手のCBを崩す、理想的な例を見ていきましょう。



【5レーンを用いてCBを崩す(中央突破編)】
マンC得点1229-5
画像はシティの直近の試合(レスター戦)から。
シティの前線がお互い横のレーンに重なる事なく、綺麗に5レーンに各1枚、ポジションを取っている事が分かります。
(この場面ではアグエロとデブライネがポジションを入れ替えて更に守りずらくしているが、人は入れ替わっても「いるべき位置に誰かが立っている」というのがペップの再現性の高さ)





マンC得点1229-6
5レーンを取る事の狙いは、4バックで5レーンを守る場合、相手DFの意識は↑のような状態であると言えます。
SBは大外で「幅」を取るWGにピン止めされていて、CBは中央のCFに対してチャレンジ&カバーの関係性。
そうすると「間」を取るIH(この場面では金髪のアグエロ)がどうしても浮いてしまうという「王手飛車取り」



マンC得点1229-1
アングルを変えてみてもマッチアップの構図から1人、アグエロが浮いてしまっているのがよく分かると思います。
本来、守るレスターは2列目のラインで中を閉めて、アグエロへのコースを消さないといけないんですが、中央のMFが並列になってしまい閉め切れていません。





マンC得点1229-2
アグエロに通されてしまうとCBが対応に持ち場を離れて出て行かざるを得ない状況を作り出しています。
これが「CBを崩す」という事で、屈強な2M近い巨漢CB2枚をアグエロとBシウバの小男2人で完全に崩しきっています。
大外からのクロスを跳ね返す、という場面ではレスターのCB2枚は無敵の強さを誇りますが、このように理詰めの『型』で崩されるとその強みも無効化されてしまうのがよく分かりますね。



マンC得点1229-3
狙い通り、『GKと1対1』という最も得点率が高い決定機を作り出す事に成功。



とは言え、当然試合では相手も中は警戒して閉めてきますから、次はサイドからの5レーンを用いた「CBの崩し方」を見ていきましょう。



【5レーンを用いてCBを崩す(サイド攻撃編)】
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局面はここでも人は入れ替わっているが5レーンをしっかり埋めているシテイ
(ボールがサイドにある時は逆サイドのWGは一つ内側のレーンに入る)

WGの位置に流れたジェズスにSBが釣り出されると内側のいわゆる「ハーフスペース」をフェルナンジーニョがオートマッティックに抜け出す




hafspace2.jpg
「5レーン」を用いて「ハーフスペース」を突く目的はCBを持ち場から引っ張り出す事。
すなわち「CBを崩す」事がここでも目的になっているのだ。

本来、守る側としてはゴール中央エリアにCB2枚が待ち構えて、チャレンジとカバーの補完性が効く状態なら失点率を減らす事が出来る。
しかし↑のようにCBが1枚引っ張り出されてクロスに対してCB1枚で守らないといけない場合は失点率が劇的に上昇。
何故ならCB1枚ではボールとマーク(背後のスターリング)を同一視で守る事が出来ないから。





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ハーフスペースからCBを超えるクロスが送られると、スターリングは「GKと1対1」(実際はクロスにGKが動かされているので「1対0.5」ぐらいの感覚)で、ゴールに流し込むだけの質の高い決定機を迎えている。
これだと別に中で待っているのがアフロの大男でなくとも、クロスから充分に得点が狙えるのがお分かりいただけるだろう。


このように中央からでもサイドからでも「5レーン」という一つの型を使う事で極めて再現性高く、相手のCBを崩せる⇒効率的に得点を取れるサッカーがペップやサッリが志向しているポジショナルサッカーの正体という訳ですね。



<5レーンを封鎖せよ!~4-5-1で攻略~>
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ではこのサッカーにどのように対抗していくべきか?

皮肉にも一つの答えを出したのはペップのシティに今季初の土を着けた男サッリでした。
自分達も日頃から同じサッカーを磨いているので、逆説的にその攻略法を最も知っているのがサッリというのは考えてみれば当たり前の話。
しかし、サッリ自身が披露した攻略法で、今度はチェルシーが苦しめられているというのも何とも皮肉な話ではありますが・・・(笑)


サッリがシティに土を着けた試合で採用したシステムは4-5-1。
中盤に5枚のMFをフラットに並べて、予め5レーンを全て埋めてしまおうという守り方でした。

ではこれをシティ戦で模倣したクリスタルパレスの守り方から5レーンの守り方を見ていきましょう。


【2列目の5枚で5レーンを封鎖】
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↑このように予めシティのIHが陣取るハーフスペースにはこちらもIHを置いて封鎖してしまおうという訳ですね。
これでグラウンダーのパスをIHに通されてCBが釣り出されるという「中央突破」のルートをまずは封鎖。




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こうなった時のシティの応手は相手の2列目を飛ばして逆サイドへ送る対角パス
ここから先ほどのサイド突破の型へ結び付けていきます。
何故なら2列目を飛ばされて逆サイドのWGに付けられた場合、4-5-1で守る側からするとWGに対応するのは大外のSBになるので、SBを釣り出して⇒ハーフスペースのコンボ発動になる訳ですね

しかし、もうこの攻め筋は研究されているので、ここでは逆SHが頑張って横スライド!



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大外をSHがカバーして、SBを釣りださせない守備陣形を維持。
SHがハードワークする事でハーフスペースをIHとSBの2枚で埋められています。
これをやられるとシティの攻撃はサイドで手詰まりになり⇒下げてやり直しというターンが続く

更にこの4-5-1には二重の保険もかかっており、次はSBがWGへの対応で外につり出された場合の守備も見ていきましょう。



【SBがWGの対応につり出された場合】
ih1.jpg
局面はWGザネの対応にSBがつり出された場面。
ここではSBが外に出るのと同時に予めハーフスペースに配置されていたIHが戻ってそこを埋める動きがオートマティックにセットになっています。



ih2.jpg
SBが釣り出されたハーフスペースをIHが埋める事でCBが一歩も動かされていないのがよく分かると思います。
シティはこの状態で大外からクロスを上げても得点を取れる設計にはなっていません(中はジェズスやアグエロ)
というより、先ほど触れたようにそもそもここから大雑把にクロスを上げずに済むよう設計されているチームなのです。

故にこのように中が万全の時は攻撃の目的が曖昧となり、次第にサイドで攻撃が停滞・・・




ih3.jpg
気付けばボールホルダーのザネが挟まれて奪われている、というようなシーンが最近の試合では目立ってきました。

やはり「CBを崩す」という手順に乗らないとなかなかフィニッシュに結び付かない事、
型が精密で再現性が高いが故に、対応策も再現性が高くなってしまうのがポジショナルプレーの弱点と言えるでしょう。



<負けパターンにおける再現性の高さ>
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シティとチェルシーは攻撃が手詰まりになった場合、被カウンター時におけるリスクも共通しています。

何故なら前線が常に5レーンを埋めるポジショニングを取っているという事は、失った時に5枚並んでいるワンラインが全員カウンターに置去りにされる、という事と同義だからです。

次の2枚の画像をご覧下さい。


mannc1228.jpg
失点チェルシー1229
↑これらはシテイ、チェルシーがそれぞれ対レスター戦でくらった失点シーンになります。

状況は驚くほど似通っており、カウンターからアンカーを通過されると3枚残りのDFが無防備に晒されている場面になります。
つまり、ここでも失点パターンにおける再現性の高さが確認出来る訳ですね。

では、具体例として実際にチェルシーの典型的な失点シーン(対スパーズ戦)を検証していきたいと思います。


【チェルシーの失点シーン検証】
ジョルジ3
↑は敵陣内でチェルシーがボールを失った瞬間です。
チェルシーは攻撃時、特に左サイドでSBのMアロンソを絡める事で攻撃の厚みを出すポジショニングに特徴があります。
特にウィリアンやアザールがサイドに開いて幅を取った時に、Mアロンソが内側のレーン(ハーフスペース)を取るオートマティズムは完成の域に達してきました。

しかし、↑の画像でも分かる通り、本来SBのMアロンソが内側を取るという事は失った時にSB裏に広大なスペースが広がっている事と同義。
スパーズは事前のスカウティングから完全にこのスペースを俊足のソンフンミンで狙い撃ちにするゲームプランを仕込んでいました。



ジョルジ
実際にソンフンミンに走られて並走で対応するジョルジーニョ。
しかしジョルジーニョは前線の守備が機能している時のパスコースの切り方や、読みを効かしたインターセプトでは守備力を発揮するものの、広大なスペースを肉弾戦で守る局面では無力です。

この場面でも無抵抗のままソンのスピードで千切られますが、チェルシーは被カウンター時アンカーで相手のスピードを止められないと3枚残りのDFが無防備に晒される状態になってしまいます。




ジョルジ2
しかもジョルジーニョが振り切られた後にカバーに入るDルイスも守備で我慢が効かない為、一発で飛び込んで万事休す。
これではいくら高いポゼッション率を記録しても失点が減る訳がありません。


では同じジョルジーニョをアンカーに置いていたナポリ時代はどうやって守っていたのか?と言われれば
それはIHのアランが常に被カウンター時に身体を張って相手のスピードを止めていたのです。

恐らくサッリはチェルシーでIHに起用しているカンテにこの役割を担って欲しいと考えているはずですが、
まだカンテも取るべきポジショニングを完全には理解しきれておらず、それがカウンターを食らった際のモロさに直結していると見ます。


シティの失点パターンも構造自体は同じ。

【シティの失点パターン検証】
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↑はレスター戦の失点シーンですが、アンカーのギュンドアンが置去りにされてDF3枚で守る場面。

ここでもレスターは事前のスカウティングからシティの失点パターンを解析し、フィニッシュパターンを仕込んでいました。
それはデルフのクロス対応です。





derufu3.jpg
クロス対応も基本的にゾーンで守るシティはバーディーが右足に切り替えしたタイミングでCBが1~2歩DFラインを上げています。
デルフは逆サイドからのクロスに対して、必ず隣のCBを基準にラインを上げるのでそれと入れ替わるように背後を取れる、この形を練習から準備してきたに違いありません。

それは同じ試合で何度も繰り返された攻撃パターンからも明らか↓



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本職がボランチのデルフは通常、逆サイドからのクロス対応で正しい身体の向きとポジションを取る、といった局面を数多く経験してきた選手ではありません。

故にどうしてもボール状況に応じてラインを崩して人に付いて行く、深さを取る、といった咄嗟の対応に弱さを覗かせるのはある意味当然です。


では何故ペップはわざわざ本職がボランチのデルフを左SBに起用しているのか?
それはSBの怪我人状況なども勿論ありますが、攻撃時(ボール保持時)に偽SBとして振る舞えるデルフのボランチ性能を高く買っているからに他なりません。


【偽ボランチとして振る舞う左SBデルフ】
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つまり攻撃時はメリットとなっているSBデルフは今後も再現性高く、クロス対応の守備では繰り返し「穴」になるはずだと予測されます。
これに対するペップの対応策、修正も今後一つの見所ですね。



<ポジショナルサッカーは器に過ぎない>
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例えばチェルシーにアランがいたら・・・、この被カウンター時の諸さは高確率で解消するでしょう。
同じようにシティはアンカーのフェルナンジーニョが怪我で離脱していなければ、DFラインが晒される前に相手のカウンターを潰すか、悪くてもスピードを殺す対応が出来るはずです。(その間に前線の5レーンが猛スピードでプレスバック)

攻撃も同じ話。
いくらハーフスペースを埋められたと言っても、シルバであれば絶妙のタイミングでマークを外してハーフスペースに入っていけるセンスが絶妙ですし、時には自分をオトリにワンツーでWGをカットインさせるなどのバリエーションも豊富。
同じくデブライネが万全の状態であれば、大外からのクロスでもGKとDFラインの間にピンポイントの質で入れる事で「CBを崩す事」が出来るはず。(昨季、何度も見た形)


つまりペップが言うように「戦術が凄いのではなく、まず選手が重要」なのです。
ポジショナルサッカーは単なる器に過ぎず、中身(選手)の質が乏しければ監督が誰であろうと「絵に描いた餅」に過ぎません。

一時、ペップバルサの模倣を目指した多くのチームで死屍累々・・・という時代がありましたが、
同じように今、ペップシティを目指した多くのチームが「質の伴わないポジショナルサッカーほど悲惨なものは無い」という教訓を与えてくれるに違いありません。







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テーマ : サッカー
ジャンル : スポーツ

光射す方へ ~日本×コロンビア徹底分析~

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<光射す方へ ~2018W杯 日本×コロンビア~

どうも半年ぶり、ご無沙汰です。
思えば前回のW杯から一体、何回更新したんだ?っていう本ブログではありますが、気が付いたら4年経ってました(笑)
時の流れは早いものです。

さて、ブラジルの地での惨敗から4年、まさかロシアW杯を西野監督で戦っているとは誰が予想したでしょうか?
本当に色々ありました。ありましたが・・・ここでは一旦置いておきましょう。
ここに到る経緯はもう散々メディアなりSNSなりで議論尽くされてきましたから。

本ブログはあくまで「ピッチ上のプレー、戦術にフォーカス」するのが基本路線なので。
何より・・・その手の話題は荒れるしね(爆)


では半年ぶりのマッチレビューは歴史的な勝利を飾ったコロンビア戦の勝因解分析です。
何故日本は勝てたのか?10人になった事で両チームに何が起きたのか?前半と後半の違いは何か?
そこら辺も含めて解析していきましょう。




<的中した選手選考&コロンビアの隙>
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まずは両チームのスタメンから↓

コロンビアスタメン0622

両チーム共にシステムは4-2-3-1

コロンビアはハメスロドリゲスがコンディション不良でまさかのベンチスタート。
一方の日本は本大会まで僅か3試合という強化試合を目一杯に使って西野監督は最適解を見出したと思えるスタメン選考です。
システムは当初、長谷部をCBに落とした3バックを試してみるも結局はやり慣れた4-2-3-1がベストという賢明な判断。
更に直前のパラグアイ戦で光明を見出した香川&乾のユニット、司令塔・柴崎のタテパス、南米のFW相手に対人で完勝してみせた昌子をCBに抜擢。

結果的に見ても前線、中盤、最終ラインでそれぞれ抜擢した選手が躍動し勝利に貢献してくれました。


では、この試合の行方を左右した”あの場面”から試合の検証を始めていきましょう。

前半-
試合開始と共に前からプレスをかける日本に対して、コロンビアにはどこか緩さが垣間見えました。
それは4年前の惨敗のイメージが色濃く残る我々の感覚が、彼らにしたら日本=大勝の感覚で残っていたと考えれば無理も無い事でしょう。

しかし、サッカーにおいてその油断は致命傷を招きます。

オシム『コロンビアが最初にピッチに姿を現したとき、私は彼らの傲りを感じた。南米選手にありがちな、そうした驕慢を私はよく知っている。そして彼らはピッチでその代償を支払うことになった。』



ではPKに到るシーンを少し遡って流れを見ていきましょう。

【前半3分のPKシーンを検証】
1点目0622-1-2
前半3分、コロンビアの左SBが浅い位置から早めのアーリークロスをゴール前に送る場面が↑になります。

まず、注目したいのがコロンビアの攻撃にかける枚数
両SBを同時に高い位置へ上げ、ボールより前に7枚を投入しているのが分かります。
(ネット配信で戦術カメラが観れるのは有り難い!)

前回対戦時の2014W杯のコロンビアは攻撃は前線の3枚~多くても4枚に任せて
4バック+2ボランチの6枚が常に自陣で待ち構えているカウンター主体のプランだったのを考えると2つの試合でコロンビアのアプローチが大きく違うのが分かりますね。

この両SBを同時に上げて攻撃に枚数をかけるサッカーはまさに前回のザックJAPAN、我々の姿そのもの。
これはコロンビア版「俺達のサッカー」なのか…?(笑)

とにかく、こんなところに序盤からコロンビアの傲慢さが垣間見えていた訳です。


日本は守備時、4-4-1-1で守るのでボールより前に残るのは香川+大迫の2人。
しかしコロンビアのボランチ+CBの3枚はそれぞれ、誰が誰を捕まえているのか?非常に中途半端なポジショニングになってるのが分かります。
(基本的には守備残りのボランチが香川を観て、CB2枚で大迫に対して「+1」を作る、というのが基本路線)

攻撃の最中から後ろはカウンターを防止する為の予防的ポジションを取る、というのは現代サッカーの必須戦術となっていますが、この場面におけるコロンビアの予防的ポジションはかなり怪しいと言わざるを得ません。(コロンビアのミスその①)




1点目0622-2
このクロスが跳ね返されて香川にこぼれた瞬間が↑になります。

ここで問題なのが何を血迷ったのか、香川に対してボランチではなく、後ろで大迫を見なければいけないはずのCBがボールにチャレンジする為に前へ突っ込んでいる事です。
またその距離を見ても、明らかに香川の方がボールに近く、先に触られるであろう状況なのにも関わらず、このCBのチャレンジはあらゆる意味から考えてセオリーを逸脱したコロンビアのミスその②です。

香川はドルトムントでもこのポジションでカウンターを発動させる為のスイッチとして機能している選手なので、
ボールを拾う前から自分の背後には大迫とコロンビアのCBが1対2の状況である事、自分が誰からも明確なマークされる距離にいない事を「観て」、分かっていました。

なのでコロンビアのCBが自分に突っ込んできてるのを周辺視野で捉えて、大迫が今この瞬間、自分の背中で1対1の状況である事を瞬時に察知します。しかしこの時、香川の視野はバウンドするボールに身体が向いているので大迫の動き出しまでは恐らく観えていません。そこで感覚で背後のスペースに、事故が置きやすく、かつ大迫がパスコースへの修正が効きやすいフワッとしたロブをスペースへ落としたのです。

これは今季クロップのリバプールを観ていた人には分かるかと思いますが、クロップのチームはセカンドを拾った瞬間にサラー、マネがヨーイドン!するスペースへ向かってアバウトに浮き球を落とすシーンが数多く見られます。(そしてこの2人はだいたいヨーイドン!に勝てるw)

香川は現代サッカーのトップ下に必要とされるこのセンスがとにかく抜群なので、真骨頂とも言えるシーンでした。
(更にパスを出した後に足を止めず、パス&ゴーでゴール前へ詰めていた動き出しがPKにつながったのもミソ)


1点目0622-3
↑は香川のスペースに落とされたパスに対して大迫とCBのDサンチェスが競り合っているシーンです。

ここで大迫と1対1のDサンチェスに求められたのはまずゴールに向かって帰陣し、大迫の突進を遅らせる守備でした。
しかしDサンチェスは所属するスパーズでも度々こういったプレーを見せているように、抜群の身体能力を過信したリスキーなプレー選択が見られるDF。

ここでも遅らせる事ではなく、自分で奪いに行く事を優先した矢印で大迫に向かってしまい、結果入れ変わられてしまいました(コロンビアのミスその③)

よく現代サッカーでは『ミスが3つ続くと失点になる』と言われますが、日本がPKを獲得したシーンは正にコロンビアの致命的なミスが3つ続けて起こった事による必然だったと言えるでしょう。

そして、その引き金となったのは香川の一瞬の判断とセンス、そして大迫の競り合いにおける粘り強さだった事も忘れるべきではないですね。


<10人で落ち着くコロンビア&慌てる日本>

開始3分で1点(PK)&退場で10人へ。
しかしコロンビアの選手達はベンチを見る事もなく自動的に4-4-1のオーガナイズで守備を再構築。
逆に慌てたのが1人多くなった日本で「…え?え?相手10人だけど、どうする?どうする?」と言わんばかりのチグハグさ。
何故、相手より1人多いはずの日本が有効な攻め筋を見つけられなかったのでしょうか?


そこでまずこの時、日本がすべきプレーは何だったのか?を考えてみましょう。

2トップの1枚を削って4-4-1で守るコロンビアに対しての定石はビルドアップの始点で起きる2対1の数的優位を上手く活用する事です。すなわち日本のCB2枚とコロンビアの1トップによる2対1のエリアですね。↓

【数的優位を活かせない日本の攻め筋】
ビルド0621-1
この場面はコロンビアの退場直後の日本のビルドアップから。

吉田と昌子のCBがコロンビアの1トップ(ファルカオ)に対し2対1の数的優位になっているのが分かります。
ここから昌子がボールを運んで・・・・


ビルド0621-2
日本はサイドに入れてコロンビアの矢印⇒を後ろ向きにし、1トップの背後でボランチが前向きに受ければそこからタテパスorナナメの間受けor逆サイドへの対角パスという崩しのフェーズに入ります。

要は1トップを剥がして常に残りの8枚と勝負!っていうのが9人守備を崩す始点になるという事ですね。



ビルド0621-3
しかーし!サイドの乾から横パスを受ける長谷部の距離と身体の向きが悪過ぎる!

日本のボランチ(長谷部&山口蛍)が抱える問題がコレで、要は間で受けて前を向く事が出来ないんですね。



ビルド0621-4
…で、苦しい体勢の長谷部はサイドの乾へリターンパス。

コロンビアはボールサイドに寄せてきているので、これは受けた方が苦しい、いわゆる死に筋のパス。
案の定、乾はこの後難なくボールを奪われてしまいました。


これが日本の左サイドの問題で、ボランチが長谷部、その後ろのCB昌子も運ぶドリブルやタテパスといった攻撃面が苦手という地獄の組み合わせなので、サイドの長友&乾が死んでしまっていたんですね。
(前半、乾のボールロストが多かったのは後ろからの配球側の問題も大きかったと見ます)


じゃあ、もう1枚のボランチ柴崎はどうか?という話になってきます。
続いて右サイドの攻撃ルートを見ていきましょう。

【右サイド(柴崎)の攻撃ルート】
柴崎1-1
局面はCB吉田がボールを持ったところで柴崎がかなり低い位置まで落ちてきてタテパスを引き出す場面


柴崎1-2
柴崎の特徴はこの低い位置からでも正確な長いタテパスを通せるという事です。
香川が欲しいタテパスはまさにコレなんですね。


柴崎1-3
香川は正確なタテパスさせ刺せば、狭いエリアでも苦も無く前を向く事が出来る職人
この場面でも得意のターンから原口へのスルーパスでサイドをえぐりました。

このように右サイドはCB吉田⇒ボランチ柴崎⇒香川⇒SH原口という中→中→外の攻撃ルートがあるのでアタッキングサードまで侵入出来る下地はありました。
左右の攻撃ルートの違いはそのまま長谷部と柴崎の違いと言っても良い訳ですが、ボランチというポジションにとっていかにボールを受ける際の「身体の向きを作るスキル」が重要であるか、この両者を見ていると良く分かります。


【長谷部と柴崎の身体の向きの違い】
長谷部0621-1
日本代表の試合を観ていて↑こういうシーンをよく見かける事にお気付きでしょうか…?

長谷部がこの身体の向きでボールを持っている事で守る側からすると逆サイドの柴崎&酒井は全くケアする必要が無く、非常にハメやすい持ち方であるという事が言えるでしょう。

実際、↑の場面でも柴崎が両手を挙げてアピールしていますが、長谷部の視野には入っておらず、狭い方の乾へタテパスを出してまんまと囲まれてしまいました。これは山口蛍でも同様のシーンを本当に多く見かけます。


身体の向き(柴崎)
続いて全く同じエリアでボールを持った時の柴崎の身体の向きを見て下さい。

この向きで持たれると、まず長谷部へのセーフティな横パスを確保しながらナナメの香川とも目が合うし、パスの選択肢が複数あるのでコロンビアのDFが寄せられないという状況を作っています。
そしてボールにプレッシャーがかかり切らないので同サイドの乾も迷う事なく裏へ走り出せる訳です。

ちなみにハリルJAPANはどちらもこの持ち方が出来ない長谷部&山口蛍という地獄のボランチコンビだったので、完全に日本の攻め筋から中→中→外というルートは消えていました。
もっぱらパスはCB→SB→SHとUの字型に外→外→外。同サイドで3本以上パスをつなぐので相手からするとハメやすく、苦しくなって大迫にタテポンという遅攻が目立ったのはこのためです。

なので個人的に日本のボランチは柴崎と大島の組み合わせしかないだろう、と思っていたのですが西野監督はその折衷案を取って1枚は柴崎or大島の司令塔タイプ、もう1枚に長谷部or山口のファイタータイプという補完性による組み合わせを基本に考えている模様。

であるならば、この日の日本は右サイドを中心に攻めたら良かったのではないか・・・?という疑問は当然湧いてくるのですが、コロンビアも事前のスカウティングでこの事をよく理解しており、対策を立てていました。


【コロンビアのビルドアップ対策】
柴崎ケア1
局面は日本のビルドアップ
1トップのファルカオは基本的に日本のCBは放置。その分、柴崎へのコースをケアする立ち位置で日本のビルドアップを左サイドへと誘います。



柴崎ケア2
・・・で、お馴染みのバックパサー長谷部。
こちらのルートはボランチに預けたところでサイドで詰まるか、バックパスが返ってくるだけなのでコロンビアからすると全く問題無し。



柴崎ケア3
この時のファルカオのポジショニングがミソ

首を振って背後の柴崎を確認し、ここのコースだけは死んでも空けないぞ!という構え。
恐らくコロンビアのペケルマンは当初2トップで柴崎へのパスコースをケアしながらチャンスとあればCBにプレスをかけるというプランだったのだと思いますが、1トップになった事で割り切って「柴崎を消す事」のみにファルカオの守備タスクを絞ったと見ます。

こうなると日本のビルドアップは右サイドに回しても柴崎回避の外→外ルートになるので・・・



柴崎ケア4
ハイ、待ってました~!とばかりに原口が囲まれてジ・エンド。


まさにこれがボランチを補完性のコンビで組んだ時の弱点で、スカウティングされて「片方だけ消す」という対策を講じられやすいんですね。

考えられる日本の打ち手としては「1トップのファルカオが疲れるまで後ろでひたすら回し、柴崎が空くのを待つ」か「長谷部を大島に変えて左右どちらからも攻められるようにする」の2つ。

前者が1-0リードを保ったまま隙あらば追加点を…の安全策で、後者が自分達から2点目をとって試合を決めてしまう積極策なんですが前半の日本はどっちつかずのまま試合を進めて、何となくコロンビアの守備にハメられてカウンターを食らうという展開になっていました。非常に勿体無かったですね。



<香川は何故、試合から消えたのか?>
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この状況に業を煮やした選手がいました。

トップ下の香川です。

気持ちは分かります。「待っててもボール来ねえじゃん…!」という心情だったのでしょう(笑)
こういう時は香川の悪い癖が顔を出します。


【ポジションを崩す香川】
香川落ちる1
局面は日本のビルドアップから。

我慢しきれなくなった香川が「ええい、オレが行く!」とばかりにボランチのポジションまで落ちてきてしまいました。
これでファルカオの1枚を剥がすのにイビツな3ボランチ気味の人数過多になってしまい、その分前の枚数が足りない状況へ自分達からバランスを崩してしまう日本



香川落ちる2
しかしコロンビアからすれば長谷部は捨てられるし、香川が一番怖いエリアから離れてるので、このエリアで受けるなら思い切り強く当たれるだけ



香川落ちる3
更にせっかく柴崎にボールが渡っても前線に香川がいないので大迫が孤立
これならコロンビアのCBも大迫一択で前にインターセプトを狙える状態が整っています



香川落ちる4
アッーーー!!!


日本はこの時間帯、バランスを崩した状態で無理なタテパスを入れてはカウンターを食らうという悪循環に陥ってました。しかもその流れで与えた不用意なセットプレーから痛恨の失点を喫しています。


パスマップのデータで見ても前半の香川のポジション移動は明らか↓

香川位置0624-1
香川位置0624-2

これが香川が諸刃の剣と言われる所以で、4年前のブラジル大会も彼の負の面の方が出てしまい、惨敗につながっているだけに悪い予感が漂う流れになってきました。




<バランスをとった知将ペケルマンの修正>
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一方、10人になったコロンビアの視点で前半を振り返るとどう見えるでしょうか?

ボランチのCサンチェスが退場になった後のコロンビアはトップ下のキンテーロをボランチに下げた4-4-1でそのまま試合を進めました。
実はこのキンテーロという選手、ハメスというクラックがいるから目立っていないだけで、クラシカルな南米の10番タイプとしてなかなかの実力者。事実、10人になった後のコロンビアで攻撃のタクトを振るっていたのはこのキンテーロであり、長いタテパスから何度もカウンターの起点になっていました。

しかし、一方でペケルマンにはこのキンテーロをボランチにした中盤のバランスに懸念はあったはず。
どういう事か、検証していきましょう。

【キンテーロをボランチで使うリスク】
キンテロ1
局面は右から左へ攻めるコロンビアのビルドアップ
キンテーロがボランチの位置でボールを受けます


キンテロ2
1人少ない10人で日本の守備を崩さないといけないという事もありますが、キンテーロの持ち味は強気なプレー
↑の場面でもドリブルで日本の中盤ラインを剥がすべくボールを運びます



キンテロ3
・・・ただ、いかんせんドリブルを始める位置が低い。
ボランチなんで仕方ないんですが、ここでボールを失った場合、前に5枚が取り残された状態で日本にカウンターを浴びるハメになります



キンテロ4
そのままカウンターを食らって、あわや決定的な2失点目を喫するところでした
(このシーンでは乾がシュートをふかして一命を取り留める)


更に守備ではこのようなシーンも↓

キンテロ守備
ファルカオに疲れが見えてきた前半25分過ぎ、日本で最も危険な柴崎が持った時にボランチのキンテーロが中を閉め切れないんですね。

このシーンを見たペケルマンはこのままオープンに日本とカウンターを打ち合うのではなく、一旦ボランチの守備バランスを修正する一手を打ちます。ただし攻撃面を考えると追いつく為には司令塔キンテーロは欠かせない。
という訳で中盤で最も守備力の低いクアドラードを下げて、守備型のボランチ・バリオスを投入。キンテーロを一列前に上げたSHに移します。
(10人になった時に最も守備で計算出来ない選手を下げるのは定石であり、94W杯のイタリア代表ではサッキが前半にあのRバッジョを下げた事で話題にもなった→結果は狙い通り勝ち点1を獲得)


0-1のビハインドを追いながらまずは守備を整え、キンテーロとファルカオの距離を近くして、このホットラインとセットプレーから同点ゴールを狙う。曖昧に前半を過ごした日本とは対照的に明確な姿勢を打ち出したペケルマンのしたたかさが光ります。


実際に試合ではボランチをキンテーロからバリオスに代えた事でまず守備が安定↓

コロンビア中閉め
しっかり中を閉められているので柴崎から大迫へのタテパスを消す事に成功。まず守備を安定させます


そして攻撃ではキンテーロをSHに上げたメリットで早速↓のような場面が生まれました

【キンテーロの間受け⇒ラストパス】
キンテロSH1
右から左へ攻めるコロンビアの攻撃。

右SHに上がったキンテーロはライン間に入ってボールを受ける得意なプレー
先ほどまでのボランチだった時と比べてボールを受けるエリアが一段高くなっている事が分かります。



キンテロSH2
間で受けてファルカオへのラストパス

この交代以降、日本の攻め筋は塞がれ、コロンビアのカウンターに脅威が増していきます。

香川が落ちて中盤のバランスが崩れた日本と、キンテーロを上げて中盤のバランスが修正されたコロンビア
前半の1-1というスコアにはそれなりの必然が潜んでいたと見るべきでしょう。



<最適手に見えた悪手 ハメス投入が勝負を分ける>
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1-1で折り返したハーフタイム-

試合を観ながら日本が勝ちのルートに乗る為の修正点は一つ、だと思ってました。
香川のポジショニングを修正出来るか?これに付きます。

果たして後半の立ち上がりに↓のようなプレーが観れたので「これはもしかすると…」の思いを強めた次第。


【香川のポジションを戻した日本の猛攻】
後半5分香川1
局面は右から左へ攻める日本。
後半はファルカオの電池が切れてコロンビアの1列目の守備が機能しなくなっていました。

加えて香川がしっかりとバイタルエリアにポジションを取っているのでコロンビアのボランチが香川をケアする為に引っ張られているのが分かります。

これでボールを持ったボランチ(長谷部)の前にフリーで運べるスペースが出来ており、さすがにノープレッシャーであれば長谷部も苦も無く前を向いてボールを運べるシーンが増えてきました。



後半8分香川1
↑勿論、それは柴崎とて同じ事。

要は1トップのファルカオが追えなくなってきた事+香川がコロンビアのボランチを引っ張る事で日本のボランチのエリアは完全なオープンスペースになっていたんですね。

香川はボールタッチ数こそ少なかった後半ですが、「いるべきところにいる」事で、日本ペースを生み出す主要因になっていたと見ます。


原口(試合後のコメント)
『ハーフタイムでは監督からポジショニングのことを言われました。せっかく相手が10人なんだからもっと相手の嫌なポジションで受けたら必ずチャンスができるという話だったので、各選手がポジショニングを考え直したと思います。』



・・・さて、日本はハーフタイムでキッチリ修正してきました。
対するコロンビアは規定路線の最適手(?)を打ちます。後半15分、エースのハメス・ロドリゲス投入。

この交代によりピッチでは何が起こったのでしょうか?


【ハメス投入で崩れたコロンビアのバランス】
ハメス守備1
投入直後からハメスの動きは明らかに鈍く、元々守備をほとんどしない選手なので基本は前残り。

それまで4-4-1で保たれていたコロンビアの守備ブロックがハメス投入によって4-3-2になってしまいました。
中盤の2列目が4枚から横幅68Mを3枚でスライドする事になったコロンビアの中盤、特にハメスが入った右サイドは完全にスペースが空いており、ここは香川が受けたいエリアでもあります。

戦術カメラアングルで見てもバランスの崩れたコロンビアの右サイド(日本の左サイド)で数的なバランスが崩れているのは明らか↓

ハメス守備2
これにより日本は左サイドで香川、乾、長友が常に数的優位を傍受しながら気持ちよくパスをつないで崩す事が出来ていました。



ハメス守備3-2
後半、乾のドリブル突破が突如復活したのはコロンビア側のバランスが崩れたからだと言えるでしょう。
(ハメスは乾の突破を後ろで傍観してるだけ)



柴崎(試合後のコメント)
『攻撃の部分で乾くんと(長友)佑都さん、真司さんの連係で左サイドを作りたかった。前半は右サイドに偏っていたので僕がなるべく左サイドでボールを持つようになって全体的にうまく回った印象があります。』




試合は残り20分、コロンビアのバランスが崩れて日本優位の流れ-
ここでぞれぞれの指揮官が次にどんな手を打つかが勝敗の鍵を握っている事は間違いありません。

まず日本の西野監督としては、当然あと1点を求めて勝ちに出たいところ。
コロンビアの中盤のバランスが崩れているという事を鑑みて、ここは中盤からミドルシュートで得点が期待出来る本田の投入を決めました。(香川はオープンスペースでボールを受けてもここまで自分で打つミドルは0本)

本田のメリットはご存知の通り、こういった大一番で決めてくれる得点力であり、デメリットは日本の中で最も運動量とスピードが低い事。
しかし10人のコロンビアは引いているのでスピードが必要な速攻はほとんど無いですし、本田の運動量のマイナス分はコロンビアもハメスがいるので帳尻が合うと踏んだのでしょう。


一方のペケルマン監督はどうか?
さきほどは崩れた中盤のバランスを修正する見事な一手で試合を振り出しに戻した知将。ここは1-1のまま勝ち点1をまず確保する、という選択肢もあったはずです。

しかし、4年前とは違い優勝候補の一つにも挙げられるほどの地位になったコロンビアで、グループ最弱と目されていた日本に「まず初戦で勝ち点3を確保する」以外のプランは頭に無かったとしても無理はないかもしれません。

ペケルマンは崩れたバランスを更に攻撃的に動かし、10人で2点目を奪いに行く一手を選択。
中盤で最も運動量のあるSHイスキエルドに代えてFWのバッカ投入で勝ちにきました。


この一手の明暗は本田のファーストプレーで明らかになります。

【試合の流れをベンチから見ていた本田のファーストプレー】
本田0622-1
バッカ投入でハメスが左、バッカを右サイドに移したコロンビアに対し、本田のファーストプレーはハメス側の右サイドに移動し酒井と2対1を作りに行っています。
これは明らかにベンチで試合の流れを見て、自分が出た時のプレーをイメージしていたであろう事が分かる本田の動きだと思います。




本田0622-2
狙い通り日本は右サイドで本田+酒井の関係性を作り出すと、ハメスは全く追ってきません。
従ってコロンビアの左SBに対して2対1の数的優位を作れています。



本田0622-3
フリーの本田に戻して、ファーストプレーでミドルシュートを選択した本田。
相手の状況を観て最適のポジションを取り、ベンチが求める「引いたコロンビアにミドルの脅威を」という役割を忠実にこなしています。


一方のコロンビアはバッカ投入でただでさえ崩れていたチームのバランスが更に攻撃過多になり4-3-2から4-2-3気味となって、これは日本の得点は時間の問題だろう…というカオス状態に陥ってしまいました。

後半73分、バッカ&本田投入の僅か3分後に生まれた大迫のゴール。
このCKを取る経緯となった日本の攻撃は必然といえる流れだったのではないでしょうか。


【日本の2点目を生んだ攻撃の流れ】
2点目0622-1
局面はもはやコロンビアのファーストラインが崩壊し、フリーで持ち運び自由となった柴崎から乾へのタテパスが起点。
バッカはハメスよりは運動量がありますが、守備で中閉めが出来ないのでタテパスも通し放題



2点目0622-2
乾が間受けで前を向くとハメスは既にスイッチOFF
本田もそれを分かっているのでハメスの背後でスタンバイ



2点目0622-3
右サイドの本田&酒井で数的優位を作る日本。
ここに到る流れの中で既に20本以上パスをつなぎ右に左に揺さぶられたコロンビアはもう大外の酒井をケア出来ません



2点目0622-4
戦術カメラの視点で見てもコロンビアの守備組織がもはや4+2の2ラインで守っていて崩壊しているのが良く分かります。
乾が前を向いた段階でコロンビアは詰んでました。



<僥倖ではなく実力で掴んだ光明>
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この試合の勝敗を分けたポイントは誰がどう見ても「前半3分のPK&退場」で間違いありません。
しかし、それをもって「僥倖」「たまたま勝てただけ」「ラッキーだった」と日本の勝利の価値が下がったかのような論調も目に付きますが果たしてそうなんでしょうか・・?

コロンビアの退場とPKを生んだのは純粋に競技内における日本の一連のプレーでした。
もしあれを「たまたま」と言ってしまうのであればサッカーとはそもそも「たまたま」パスがつながって「たまたま」ドリブルで抜けてしまい「たまたま」シュートが入って勝ってしまう競技という事になってしまいます。

アルゼンチンには「たまたま」メッシがアルゼンチンに生まれてくれて、ポルトガルの好調は「たまたま」ロナウドがポルトガル人だったからでしょうね。ロシアは「たまたま」開催国だったから好調なのかもしれません。


勿論、11対11だったら結果はどうなっていたか分かりませんし、この1試合の結果で両国の実力は測れないでしょう。
しかし元々誰が監督であろうとコロンビアが格上なのは分かっていた事で、それを前提にいかに「10回に1回」の勝ちルートを探るかがW杯という大会ではないでしょうか。


今回の西野JAPANが見せたサッカーも「タテに速いサッカーの遺産」だとか「俺達のサッカー復活」だとかの二元論で語っていては今大会のレベルに日本サッカーが置いていかれるだけでしょう。

開始と共に前へ勢い良く出て来たコロンビアを逆手にとって「タテに速い」パスを2本つないだ前半3分の1点目。
10人になって引いた相手を右に左に22本のパスをつないで崩した2点目。

どちらも相手を観て、最適な判断でパスを繋いだ「日本のサッカー」に他ならないのですから。







*↓のRTと「イイネ!」が一定数以上集まったらセネガル戦のマッチレビューもやる・・・・かも!?

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アジア仕様の限界を露呈したハリルJAPAN ~日本×ブラジル~

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<アジア仕様の限界を露呈したハリルJAPAN>~日本×ブラジル~

アジア最終予選を突破し、本大会へ舵を切ったハリルJAPAN。
就任以降、世界の一線級との対戦が無かったこのチームの実力を測る上で、
ブラジル&ベルギーと組まれた今回の欧州遠征はとりわけ重要なものでした。

しかし蓋を開けてみれば、アジア予選では「隠れていた」課題が次々と浮き彫りになるかたちでいいところなく2敗。
とりわけ流れの中からほとんど崩せる事なく無得点に終わった内容は来年の本大会に向け指揮官が言うほど説得力のあるものだったとは言い難いのではないでしょうか。

ちょうど4年前、同じく本大会を半年後に控えたザックJAPANがオランダとベルギー相手に1勝1分、流れの中からの素晴らしい崩しで5得点を挙げていたのと比べると実に対照的です。

勿論、強化試合なので結果を単純に比較してもあまり意味はないですし、課題を見つける為の試合だったと指揮官は言うかもしれません。
しかし、今回の欧州遠征で見つかったのはチームを次のレベルへ引き上げる為の新たな課題ではなく、
どれもアジア予選の頃から「分かっていた事」で、アジアだから問題にはならかったに過ぎないというものばかり。


そこで今回はアジア予選の試合と比較しながら、ブラジルとの試合にフォーカスし、現在のハリルJAPANの問題点を分析していきたいと思います。


<ブラジルにボールを渡す自殺行為>

アジア予選でハリルの評価を一層高めたのは突破を自力で決めたホーム豪州戦でした。
実際、この試合では「相手の強みと弱みを分析して対策を立てる」というハリルのストロングポイントが良く出た試合だったと言えるでしょう。

オーストラリアは稚拙な技術力にも関わらず必ず自陣から繋いでくると分かっていたので
日本は中盤にボールハンター(井手口、山口、長谷部)をズラリと並べて中盤にプレスラインを設定。
DFラインにはある程度自由にボールを持たせて、そこから必ず出てくる中盤へ預けるパスに網を張り、次々とボールを奪取していました。

この試合の日本のボール支配率は35%でしたが、シュート数では15:4と圧倒。
まさにハリルからすると会心の勝利で、世間も「これがハリルのサッカーか」と評価を新たにしました。


しかし、この試合をしっかり観ていけば決してハリルJAPANの守備が強固だった訳ではなく、
オーストラリアがわざわざボールを失う為に自陣でパスをつなぐのに終始した、という特殊なチームスタイルとゲームプランにあった事は間違いありません。

ハッキリ言ってしまえば、本大会でこんな「マヌケなチーム」と対戦する機会はまず無いと言っていいでしょう。
(でも辛くもプレーオフで出場決めたけどNE!)

なので個人的にはこんなサッカーで本大会に挑んだら、まず間違いなく惨敗するだろうと確信したのですが、
予選突破の祝福ムードでチラッとそんな事をつぶやいたら炎上しました(笑)




・・・とまあ、前置きが長くなりましたが、そんな流れを踏まえて迎えた今回のブラジル戦。
ハリルのゲームプランは勿論、オーストラリア戦の流れを汲むもので、DFラインではブラジルにある程度ボールを持たせてボランチのところに入って来るパスを2枚のインサイドハーフ(井手口&山口)で狩る!というものでした。

では実際の試合でどうなったか見ていきましょう。


前プレ行かない1

画像はブラジルがGKからのパス出しでビルドアップ開始の瞬間。

日本はブラジルのダブルボランチにプレスラインを張ってCBは放置。

そう、確かにオーストラリアにはこれで良かった。
この「待ちの守備」で次か、次の次に出てくるパスに対して全体でGO!⇒ショートカウンター(゚д゚)ウマー!

しかし、この日の相手はユニフォームこそ同じ黄色だが、あのセレソンなのである。


前プレ行かない2

ボールが世界のマルセロに渡っても日本はステイ。
マルセロは難なく前を向いてオープンな姿勢でボールを持てている。

アジアのSBはだいたい走力やクロス精度自慢の選手が多く、ゲームメイクの能力は低い。
だからこの距離感で守っていても問題は無い。

だが世界のSBはもう「司令塔化」が進む流れだ。
そしてこのマルセロとかいうSBはそのトレンドの中でも先頭集団を走る手練れである。



前プレ行かない3

日本がボールサイドに寄せて次のタテパス狙いなのを見透かしたマルセロがボランチ経由のサイドチェンジを促すパス。
日本はファーストディフェンスでボールにプレッシャーがかかっていない為、後ろも押し上げられず実にチグハグな守備になっている



前プレ行かない4

フリーで受けたボランチから逆サイドに高精度のサイドチェンジを通されて、日本の横スライドは間に合わず。
68Mの横幅を目一杯に使われて右に左にと走らされるハリルJAPAN。

こんな守備でボールが奪えるはずがない。


一方、チッチのセレソンは世界のトレンドを組んだ超絶インテンシティの高いチームに仕上がっていた。
あのブラジルがここまでハードワークするのか・・・と驚いた人も多いのではないか。



【ブラジルの前プレ (ネイマールのハードワーク)】
ネイ前プレ1

局面は日本が攻め込んだ流れで長谷部にボールが下げられる瞬間。
相手のバックパスにタイミングで全体を押し上げてGOをかける、はセオリーではあるが、ネイマールの寄せのスピードが凄い。

ボールにプレッシャーをかける、という域を超えて完全に「奪う」為のプレスになっている。


ネイ前プレ2

ネイマールの寄せがすさまじ過ぎて、ボールを受けた長谷部は後ろを向かされている。
こうなるともう次の選択肢はバックパスしかないので、ネイマールのファーストディフェンスのおかげでブラジルはノーリスクでチーム全体を一つ押し上げられる。



ネイ前プレ3

長谷部からCBの吉田に下げられたボールにもネイマールは二度追い。
しかもスピードを落とさないどころかむしろギアを上げている。
チームの絶対的なスター選手であるネイマールが守備で40Mをフルスプリントできなければ使ってもらえないのがブラジルなのである。

このプレッシャーにより吉田⇒長谷部のパスが僅かではあるが弾んだボールになってしまう



ネイ前プレ4

受けた長谷部がファーストタッチでボールを浮かしてしまう。
その隙に背後からジェズスが猛烈なプレスバック



ネイ前プレ5

ジェズスに押し込まれた長谷部の身体の向きではパスコースはSBの酒井しかない



ネイ前プレ6

酒井にパスだ出た瞬間にブラジルは「待ってました!」とばかりに一気に3人で包囲。

これがアジアとは違う「世界の守備」「世界基準のインテンシティ」である。


あのネイマールが必死に日本のCB(吉田)にまでボールを自由に持たせないよう前プレをかけてくる時代に
日本がブラジルにボールを持たせるというのは自殺行為でしかない。

現代サッカーにおけるビルドアップも、この「前プレ」を前提に、それをいかに剥がすかの攻防が行われているのに対し、
日本の中盤は自分達ばボールを持つ事が主眼から抜け落ちた構成なので、ロクにバックパスすら回せない惨状では・・・OTL



<問題その② 原口の5バック化問題>
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二つ目の問題はハリルJAPANの守備におけるポジショニングとゾーン設定がかなり曖昧なところ。
もっと言ってしまえば完全に選手任せなのか?という疑念も。

特にアジア最終予選のアウェイ豪州戦で顕著になった原口の守備ゾーンを思い返していただきたい。
原口は相手のSBが上がっていくとどこまでもマンツーマンでそれに付いていってしまう。

【SB化する原口と5バックになる日本】
香川低い1014-5

原口はSBを受け渡さず付いて行くし、槙野も「こりゃ助かるで」とばかりに放置してるのでチームとしては5バック化してしまうのがなかば常態化しているハリルJAPAN。

むしろ日本ではこれを「原口のハードワークすげー!」という論調すらあるが、とどのつまり日本サッカーの守備文化はどこまでいっても「マンツーマン」と「気持ち守備」の合作である証拠。

そしてアジア予選では「原口半端ない」で済んでてもブラジル相手にはチームとして何が問題かを突きつけられるのである。


【5バック化する日本 byブラジル戦】
原口5バック

局面はブラジルの最終ラインのビルドアップから。
この段階で原口はもはやSBではなく右WGのウィリアンを気にして早くもポジションを下げ始めている。





原口5バック2

原口がSB化しているので、日本の左サイドにボールを回されたら当然そこには誰もいない

しかも流れでアンカーに回っていた山口がブラジルの1トップ(ジェズス)を見ているんだから前の人数が足りるはずがない。
(一方で日本のDFライン4枚に対しブラジルはウイリアン1枚でピン止めに成功している)


この場面、ブラジルならこう守るというポジションを可視化してみます↓


原口5バック3

本来ジェズスのラインにCBが行けるようライン設定をすべきで、ウィリアンはオフサイドに置いておけば良し。
全体を一列づつ前に押し上げればブラジルのDFラインにもプレスがかかるはずなのだ。


原口5バック4
奪うならこのポジションバランスで前プレでしょ!





<問題その③ 3センターの鎖が繋がっていない>
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ハリルJAPANの基本形4-3-3(4-1-4-1)では中盤の3センターのバランスが肝になってきます。
「3センター」「ブラジル」で思い起こされるのが前回アギーレが戦った2年前のブラジル戦。


この試合でアギーレは森岡、柴崎、田口で3センターを採用。
しかし常に横スライドしながらお互いにチャレンジ&カバーを繰り返し一定の距離感を保つ、
まさにチェーン(鎖)で繋がれているかのような動きが求めらる3センターにあって、日本はこの意識が決定的に欠けています。


【前回アギーレJAPANの3センター】
3センター2

このように1枚(柴崎)がチャレンジしたら残りの2枚(田口&森岡)がカバーのスライドを行うという基本中の基本の動きすら怪しいレベル。


ではハリルになってそれが改善されたのかどうかを先日のブラジル戦から検証してみましょう。


長谷部いない1

前半いいようにブラジルにやられただけあって、さすがにハリルも「これ前から行かんとアカンわ!」と気付いたのか後半はプレスラインを高くして前からプレスをかける日本。

GKからのパスを受けるCBに久保が、そしてブラジルの両方インサイドハーフに井手口と山口が付いていますが、とするとこの2枚を結ぶ中間にアンカーの長谷部がいなければいけないはず。

しかし長谷部の姿は見えず、この場面では3センターのチェーンが切れて個々がバラバラに守っているのが分かります。



長谷部いない2

逆に展開されたボールに対して今度は山口と原口が出ていこうとしますが、やはり長谷部がいない。



長谷部いない3

で、これに気付いたカゼミーロに前に出られてポッカリ空いたバイタルで受けられるの図↑

肝心の長谷部はどこにいたのかというと、何と左SBのマルセロにマンツーマンで付いていた・・・という按配。

この場面では山口と井手口の間を割られて、後ろにアンカーがいないという3センターの布陣では本来有り得ないような事が起きてしまっている。

つまりアギーレもハリルも「3センター」というよりは、前者はボール扱いに長けた3枚を、後者はボールを奪うのに長けた3枚を、ただ中盤に並べただけという代物に過ぎないのではないか?



【問題④デュエルしてもボールが奪えない件】
GettyImages-872466440-min.jpg

4つ目の問題はボールにプレッシャーをかけたとしても、最後ボールを奪う、という個の能力が低くて奪いきれないという問題です。

日本サッカーにおける永遠の課題ですね。

ブラジル戦ではネイマールへの対応で、まず酒井が背後から寄せて、横からはアンカーの長谷部が、前からSHの久保がプレスバックして必ず数的優位を作って奪う、という約束事が徹底されていました。

しかし個々で奪えない集団で囲んでも結局3対1をネイマールに面白いようにいなされ、必死に寄せる酒井はファイルを量産するだけに終わりました。

実際の試合から攻防を振り返っていきましょう。


ネイ囲む1

局面はまさに今、酒井、長谷部、久保の3枚でボールを持ったネイマールを包囲しようというところ


ネイ囲む2

まず側面から寄せてきた長谷部を難なく右手のハンドオフ1本でボールに近付かせないネイマール
長谷部は右手1本の力で上半身がのけ反った上体にさせられており、肩から入れない



ネイ囲む3-1

そのまま右手で長谷部をブロックしながら足裏でボールをコントロール
前後からもう2枚が挟むように近付いてきているのを感じているネイマールは狭いスペースの中で最もボールを細かく動かせる足裏を選択したのだが、こういうのはストリートの感覚なのか南米の選手は本当に上手い。



ネイ囲む4

プレスバックしてきた久保がボールにアタックするが、まさに「足先だけ出す」という典型のような守備。

足裏でボールを保持していたネイマールは久保の出した足と重心をしっかり見て、逆を取る持ち出し


ネイ囲む5

足から行っている久保は逆をつかれたら完全に腰砕け状態で対応出来ない。
久保の矢印とネイマールの矢印を見れば上手くいなされているのが分かるだろう。
この後、久保を外したネイマールは難なくマルセロに返して包囲網を脱出。

1対1の守備では「肩から先に入れろ」や「腰(ケツ)から入れ」など選手によって色々やり方はあるのだが、
日本の選手の奪いに行く時の姿勢は総じて軽い、の一言に尽きる。






<またもアジア仕様を脱しきれず>
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試合後の指揮官は「後半だけならブラジルに勝っていた」「ベルギー戦は負けに値しない」と何故か満足そうだが、
アジア予選で分かっていた課題を世界で改めて認識し直しているようでは5歩は出遅れている。

率直に言って、ブラジルW杯後の4年もまたアジアにドップリ浸かって無駄にしてしまったという感しかない。


このままハリルで行っても本大会は相手に合わせてその都度メンバーと戦術をいじり、ストロングを消しながら耐えて耐えての3試合。
上手くいけばベスト16ぐらいは可能だが、このてのチームは頑張ってもそこが限界というのはW杯の歴史が証明している。


個人的にはこの国にW杯で旋風を巻き起こすようなチームの構築を長年望んでいるので
アジア予選など全試合ハーフコートに押し込んで世界基準のインテンシティとポゼッションで圧勝するぐらいでいってもらいたいのだが・・・









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【CL決勝 レアル×ユベントス】策を力でねじ伏せたマドリー

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<策を力でねじ伏せたマドリー 【CL決勝 レアル×ユベントス】

16/17シーズンのCLはレアルの連覇達成という偉業を持って幕を閉じました。
自分が初めてこの大会を観た25年前から連覇したチームがいなかったという事実はチャンピオンズリーグというコンペティションのレベルの高さを物語っています。

歴史を変えたマドリーの勝因とは何だったのか?

今回はこのビッグマッチを時系列を追って解析していきたいと思います。

【両チームスタメン】
0608CL決勝スタメン

アッレグリのユベントスは4-4-2。
とは言え、攻撃時ディバラが1・5列目に下がってマンジュキッチがゴール前まで進入すればイグアインとの擬似2トップになりますし、SBのサンドロが高い位置を取ってバルザーリが絞れば3バックのようにも出来ます。

更に押し込まれた時にDアウベスが下がってくれば5バックにも可変可能と、各ポジションに2つ以上の戦術タスクをこなせる選手を配置しているので交代カードを切らずとも色々とチームを変化させる事が出来る知将アッレグリらしい編成になっています。


対するジダンのマドリーは一応4-3-1-2のような並びとなっていますが、良い意味でも悪い意味でも選手の自由度が高くかなり流動的な代物。
特にイスコはトップ下だったりSHだったりウイングだったりと現役時代のジダンさながらの自由度です。

アッレグリもそこは良く分かっており、前日会見で「イスコの奔放な動きは時にチームの守備組織を乱す諸刃の剣だ」という主旨の発言をしていました。

このようにそれぞれチームの事情は違うものの、局面に応じて初期配置がいくつもの変形を見せるという点は共通しており、これはもう時代のサッカーがいよいよフォーメーションという数字の羅列を過去の産物にしていこうという兆候なのかもしれませんね。




<ピッチからディバラを消したレアルの包囲網>
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さてこの試合、個人的に最も注目していた選手がユーベのディバラでした。
今季はまさに「今が旬」というプレーぶりで、ボールが無い時にいつの間にかフリーになっているポジショニング、ファーストタッチでDFを剥がすボールの置き所、そしてゴール前でのフィニッシュの多彩さは芸術的。

特にユーベの守⇒攻のトランジションはほぼ全てディバラを経由していると言っても過言ではなく戦術的にもキーマンと言える存在です。

勿論ジダンも「ディバラはユーベで最も危険なアタッカー」と最大級の警戒を払っており、実際にこの試合では徹底したディバラ包囲網でピッチから消し去る事に成功。


ディバラのプレーの真骨頂は自軍の守備時から常に相手ボランチの背後、死角で間受けの準備ポジションを取っておき、味方がボールを奪うやいなや1本目のタテパスを前を向いて受ける事でユーベのカウンタースイッチを入れるところ。

しかし、この日のレアルはアンカーのカゼミーロを中心に常にディバラのポジショニングに目を光らせており、パスコースの前に立ってユーベDFからのコースを消す守備を徹底。


【ディバラへのパスコースを消すカゼミーロ】
ディバラ消す0608

従って、このようにユーベは自陣で奪ったボールをディバラに預けようにもパスコースが消されている場面が目立ちました。
仮にサイドに流れても今度はクロース、モドリッチが捕まえて離しません。


ならばと得意の間受け(DFラインと中盤の間で受ける)を試みるも・・・


【間受けは迎撃守備で対応】
ディバラ迎撃1

局面はまさに今、ディバラが間受けを狙っているところ。
ここで前を向いてDFを剥がしていくプレーこそ彼の真骨頂です。

CB(ラモス)との距離感を意識してDFからすると出ていこうにも間に合わない実に嫌らしいポジショニングが妙味




ディバラ迎撃2
Sラモス『甘いわっ・・・!!!』


ディバラ迎撃3
ディバラ『グハッ・・!!!』

まさかの人外、高速の寄せでディバラがファーストタッチで前を向こうとする瞬間にはもう狩られてました。


ディバラ「ウソやろ・・・こんなDF,セリエAにはおらんかった・・・」

ラモス(手を差し伸べながら)「フッ・・・ならば貴様もリーガに来い。本物の世界を教えてやる」


このSラモスとヴァランの異常な守備範囲とインターセプトの強さでユーベのセリエA最強2トップは完全に沈黙。
特にラモスは前半だけで3回以上のインターセプトを決めてました。

これによりディバラは「前にはカゼミーロ、背後からSラモス」という地獄のような挟み撃ちに遭い、ピッチから完全に姿を消す事になってしまいました。



<レアルの構造的な脆さを突くアッレグリの緻密さ>areguri06090.jpg

エースのディバラを封じられたアッレグリ。
しかし、それでもレアル相手に攻め手が無い訳ではありません。

アッレグリが突くのはレアルの構造的な「隙」です。
ジダンのレアルは守備時、そもそも4-4-2で守るのか4-3-3で守るのか、からしてかなりアバウト。

トップ下のイスコがSHまで下がれば4-4-2になるのですが、それを決定するのはイスコ自身の気まぐれなので戻ってこない事も多く、それに加えてロナウドとベンゼマのファーストラインはほとんど守備のていを成していません。
(アッレグリがイスコを「戦術的な穴」を見ているのはこのせいで、確かにカルチョの視点で戦局を捉えれば穴以外のなにものでもない)

従ってレアルの守備は基本、4-3の2ライン守備です。(この時代に2ラインで守るとかww)
ちなみにバルサの守備構造もこれと全く同じです。
要は守備免除2枚(ロナウド&ベンゼマ メッシ&スアレス)+気まぐれ1枚(ネイマール、イスコ、ベイル)の構成ですね(笑)

これはレアルとバルサの2クラブが普通、チームに1人までしか置いておけないようなエース級を3枚も4枚も保有しているが故のジレンマと言えるでしょう。

まあロナウド、ベンゼマクラスであれば守備でハードワークさせるよりも前残りにしておいてカウンター時に仕事をさせる・・・という方が結局トータルの収支ではプラス。
それは90分の流れで見ると不安定なようでいて、結局最後は力技で勝ちを積み重ねるという今季のレアルの勝ち方と成績にも表われています。


ただCL決勝のような一発勝負で、しかも相手が知将アッレグリだった場合どうなるのか・・・?

実際の試合から確認していきましょう。


【レアルの4-3守備構造】
モド鬼スライド1

局面は右から左に攻めるユーベの攻撃を自陣で迎撃するレアルの構図。

しかしレアルの中盤は3枚でピッチの横幅68Mを守らねばならず、やはり逆サイドにはかなりのスペースが空いてしまいます。

じゃあ、このスペースに展開された場合、どう守るのか?と言うと・・・



モド鬼スライド2
根性の戻リッチで鬼スライド!!wwww

ちなみにバルサだとラキティッチが同じ役割をやらされているのでクロアチア人は社畜体質なのかもしれません(爆)

但し、いくらモドリッチが根性を見せたところで「ボールは人より速い」のです。
なので常にノープレッシャーのCBボヌッチあたりから一発の対角パスでサイドを変えられた場合・・・



ユーベサイドは2対1
必然的にサイドではユーベが2対1の数的優位になります。

つまりユーベはサイドに振れば簡単にマドリーゴール前まで運べてしまうので(1対2の数的不利ではSBカルバハルは後退するしかない)このジダンマドリーの構造的な脆さが、序盤のユーベ攻勢を招いた要因です。


では、一方のレアルの攻撃はどうったのか?

ユーベがサイドに2枚を配置出来る4-4-2でサイドを優位にしていたのなら、中央を厚くしたジダンの4-3-1-2は中で優位性を作れるはず。
しかしジダンがディバラを警戒していたように、アッレグリもレアルのキーマンがモドリッチとクロースのインサイドハーフである事は見抜いていました。

そこでこの2枚には常にボランチかSHが受け渡しながら捕まえて、その代わりカゼミーロは放置、と対応がハッキリしています。

【アッレグリの守備】
前半CL決勝図

しかしフリーのカゼミーロからは気の利いたタテパスが入らずむしろパスミスを量産。
勿論、こうなると読んでいたからこそアッレグリはカゼミロを放置していた訳ですが、こうなるとレアルのパス経路は自然とフリーのSBへの安全な横パスが増えていきます。

しかしレアルのサイドにはSBの前に人がいません。


【孤立するレアルのSB】
マドリーsb孤立
よって、SBに回したところで常に孤立した状態で攻撃をスタートさせねばならない苦しい立ち上がり。


マドリーsb孤立2
左も同様、マルセロが1対2で対応されてしまいます。


これを見たベンゼマが気を利かせてサイドに流れますが・・・


マドリーsb孤立3
左に流れたベンゼマが局面を2対2にしてワンツーからマルセロにサイドを突破させるも・・・



マドリーsb孤立4
中がロナウド1枚ではユーベのDFにガッチリ捕まえられてしまっています。
このサイド攻撃では今大会3失点の鉄壁ユーベディフェンスから得点を奪うのは難しいところ。


ジダンの誤算としてはイスコが守備はともかく攻撃でも機能しなかった事でしょうか。

完全に自由を与えたイスコが攻撃のタクトを振るうはずが、間受けしようにもユーベのコンパクトな3ラインにスペースを見つけられず、窮屈なエリアで受けてバックパスをするか、ブロック内を嫌がって外に下がって受ける場面が目立ち始めます。

これで中盤と前線をつなぐリンクマンが不在となり2トップも孤立。
レアルはほとんどマイボールでチャンスらしいチャンスを作れない時間が続きます。





<それぞれの"理"が生んだ得点>
get20170604_4_tw.jpg

ここで両チームに起きている状況をまとめてみましょう。

【レアル】
<攻撃>
・SBが孤立
・モドリッチ、クロースの両インサイドハーフが守備に追われている
・イスコが間で受けれない

<守備>
・ディバラとイグアインはCBが完封
・サイドで数的不利に立たされている


【ユベントス】
<攻撃>
・2トップが消されている
・サイドからゴール前まで運ぶのは容易
・CBはノープレッシャーで対角パスが出せる

<守備>
・ほぼ完璧にレアルの攻撃を抑えている


両監督の狙いではややアッレグリ優勢ですが最後のゴール前では人外CBのラモスとヴァランがユーベの2トップを完全に抑え切っているので致命傷には到らず。
従って戦術的にはアンバランスでも微妙に試合は拮抗しているのでした。

こうなると得点はカウンターかセットプレーが勝負を分けるのがフットボールの理。
マドリーの先制点はやはりカウンターからでした。


【マドリーの先制点を検証】
レアル1点目0608-1

局面はユーベがサイドからレアル陣内深く攻め込み、右サイドからのクロスをマンジュキッチとカルバハルのミスマッチを突いてファーで押し込もうとした場面から。

この攻め筋は確実にアッレグリが狙いとしていたところですが、クロスを上げる前にディバラがボールをロスト


レアル1点目0608-2

回収したボールをつないでレアルのカウンターが始まるとクロースがこの日初めて長いドリブルを見せてユーベの第二防波堤(ボランチライン)を突破。

ボランチが剥がされた状態でボールを運ばれているのでユーベDFラインは後退せざるを得ず


レアル1点目0608-3

ベンゼマがフリーでボールを収めると、ここでもこの試合初めてロナウドがサイドに流れてボールを受けるかたちに。

そしてカウンターの開始地点では守備でマークしていたマンジュキッチをスピードで振り切ったカルバハルが既にフリーになりかけている
(アッレグリが高さでミスマッチを作ったポイントが反転速攻では逆にスピードでミスマッチになってしまった)



レアル1点目0608-5

ロナウドがサイドに流れた事でユーベのSBが初めてロナウド+SB(カルバハル)と1対2の数的不利で対応する局面に



レアル1点目0608-4

先ほどの中がロナウド1枚だけの状況と違いベンゼマが奥でDFを引っ張っているのでロナウドがマイナスでフリー

レアルはこの試合、クロスでは徹底してグラインダーの速いボールを狙っていました。
(ロナウドの奥にもクロースが待っているのでこのクロスは完全なゲームプラン)
確かに鉄壁のユーベ守備陣に対して平凡なハイクロスでは分が悪いのでこれは"理"に適っています。

試合の主導権は握られていても必ず起こるカウンターという状況から
前残りにしておいた圧倒的な個の力で得点は強奪出来るだろう・・・というのがジダンの、マドリーにとっての"理"でした。


しかし戦術的にはアッレグリの"理"が試合を支配しているので、すぐさま返す刀でユーベが同点に追いつきます。

【ユベントスの同点弾を検証】
ユーベ得点0608-1

局面はレアル陣内に攻め込んだユーベのボヌッチがノープレッシャーで逆サイドに対角パス
これは相手2トップのプレスが無く、サイドで数的優位が作れている・・・という状況に即したアッレグリの手筋ですね



ユーベ得点0608-2

逆サイドではSBのカルバハルがゴール前に侵入したマンジュキッチに付いているのでその大外にSBのサンドロが上がって来ると必然的にフリーになれます。

↑この場面では気付いたイスコが一足遅れて戻ってきていますが完全に間に合っておらず、これを見たカルバハルがカバーの対応に向かっているのが分かります。



ユーベ得点0608-3

サンドロからダイレクトでゴール前のイグアインに折り返されると、カバーに向かった分カルバハルとマンジュキッチとの距離がこれだけ離れてしまっています。
この距離がマンジュキッチに胸トラからシュートにいける余裕を与え、得点に繋がりました。


前半はアッレグリ、ジダン、それぞれの理で1点づつを取り合って後半へ。



<狙われたバルザーリ>

後半、前半は得点シーンのカウンター以外、ほとんど攻め手の無かったレアルが明らかに攻め筋を変えてきました。

ユーベのコンパクトな3ライン間にパスを入れても囲い込まれるだけなので、それならばとDFライン裏へキックオフから立て続けに2本蹴っています。
狙われたのはこの試合、右SBに配置されたバルザーリ。

バルザーリがSBに起用されているのは3バックにも可変出来る事や、マドリーのストロングサイドである左サイド(マルセロ)への守備を強化しようなどの理由があったからですが、SBが本職の選手と比べるとやはりスピードには欠ける分、背後への対応やタッチライン際での1対1は不得手としています。

マドリーが突いたのはまさにそこで、後半からイスコを左サイドに張らせただけでなく、ロナウドやベンゼマも積極的に左へ流して後半開始僅か15分の間に6回も左サイドでの仕掛けを見せています。

【マドリーの露骨なバルザーリ狙い】
バルザリ0608-1

バルザリ0608-2

バルザリ0608-4

バルザリ0608-5

バルザリ0608-6

そしてこの後半15分のベンゼマとバルザーリの1on1からクロス(またもやグラウンダーでマイナス)⇒こぼれ球にどフリーだったカゼミーロがドン!で勝負有り。


アッレグリからすると後半の攻め筋変更に修正が間に合わないうちに放置していたカゼミロに決められるという痛恨の失点。
しかもリードされてしまうと攻撃にパワーを加える手持ちのカードがほとんど無いのが苦しいところ。

気落ちするユーベを見た王者マドリーは「ここが勝負どころ!」と一気に畳み掛けてきました。




<勝負どころを逃さない勝者のメンタリティ>
DBbPVaWVoAA-Gtb.jpg

結果的に勝負を決めたレアルの3点目も後半の攻め筋が伏線となっていました。

バルザーリの背後をスピードで狙われ始めた事で少しづつユーベのDFラインが後退。
これにより中盤の2列目も合わせて後退し、これまでマドリーのキーマン(モドリッチ、クロース)を抑えていたボランチ、SHとの距離が僅かに開いてしまいます。

しかし、モドリッチ&クロースレベルの選手にとってこの僅かなスペースがあれば試合を決めるのに充分過ぎる程でした。
というのもユーベの守備はマドリーのように個の能力で解決するものではなく、3ラインが一体となって守備をする事でその強度を保っているからです。

ユーベにとって2トップと2列目のライン間が離れるという事は守備の強度とボールポゼッション、ひいては試合の主導権を明け渡すのと同義でした。

試合はこの時間帯、2点目が決まったのを合図に一方的にマドリーがボールを支配し始めるのですが、一体ピッチでは何が起こっていたのでしょうか?

実際の試合から解析していきましょう。


【マドリーの五角形が機能し始める】
五角形2-1

局面は最終ラインからビルドアップするレアルに前プレをかけるユーベの図。
レアルはCB2枚とアンカーのカゼミーロ+両インサイドハーフ(クロース+モドリッチ)で作る五角形でユーベの2トップに対し数的優位を作りながら鳥カゴの要領でボールを回し始めます。

この流れでSHが少し離れた位置からインサイドハーフにプレスをかけたとしても・・・


五角形2-2

このように簡単にいなされてしまいます。

これで構造的にボールを握れるようになったレアルにとって追加点は必然でした。




【レアルの3点目を検証】
レアルティキタカ1

3点目の起点もこのようにレアルの五角形がユーベの2トップのプレスを無効化しているのが分かります。
それでいてユーベの2列目は左右のSHが大外に開いたSB(マルセロ&カルバハル)に引っ張られているのでボランチの方が中途半端に前に出てしまってかなりのアンバランス。

仮にケディラとピアニッチがこの五角形に食いつくと今度はイスコ、ロナウド、ベンゼマのいずれかに背後で間受けを狙われて、
ならばとそれをDFラインが迎撃守備で食いつこうものなら一発で背後を取られる危険性があります。
(何故ならボールの出所にプレッシャーがかけられない状態だから)

とにかくこの時間帯のマドリーは全体のポジションバランス、距離感、機能性、相互関係が素晴らしく、↑の図でいくつのトライアングルとパスコースが描かれているかを可視化するとこうなります↓

レアルティキタカ2
う・・・・美しい

ポイントはユーベの1列目と2列目が各トライアングルの間に立たされて、それぞれのエリアで鳥カゴをされてるような状態なので守備が全く機能しなくなっているんですね。

この圧倒的な支配感とポジショニングバランス・・・どこかで見た覚えがあるなーと思ったら、これユニフォームの色さえ変えてしまえば各選手の名前をこう書いても誰も気付かないと思うんですよ(笑)↓

レアルティキタカ3
マドリディスタに怒られるからやめれwww

いやー、未だにあの頃のペップバルサの映像を見返す事があるんですが、最近気付いたんですよ。
彼らの何が他と違うのかって、足元の技術よりもポジショニングの秀逸さだな・・・って。
本当11人全員が意図と意味のあるポジションを取っているので無駄が無いんですよね。

おっと、話が逸れかけたので3点目の流れに戻りましょう。


レアル2点目0608-1

構造的にフリーになるアンカー(カゼミーロ)から構造的にフリーになる大外のカルバハルへサイドチェンジ



レアル2点目0608-2

・・・・で、案の定カゼミーロのパスはパスミスになるんですけど、この布陣全体でユーベの守備ブロックを包囲するようなバランスで攻めていると仮に途中でミスが起こっても必ず近い距離間でボールに対して守備に切り替えられるのと前向きにアプローチ出来るという利点があります。

ここでもパスカットからつなごうとしたユーベの1本目のパスをモドリッチが前向きにインターセプトし、ショートカウンターからまたもやロナウドで勝負有り。
(地味にここでもベンゼマがファーに流れてDFを釣っている)


勝負どころを見逃さずに一気に畳み掛けたマドリーはその後も手を緩ませず、ユーベの切り札として投入されたクアドラードが早々にイエロー1枚をもらったと見るや2枚目を誘ってピッチから追い出す徹底振り。

更にユーベに心身共に疲れが出たと見るやスピードスターのベイル、アセンシオ、モラタを立て続けに投入してトドメのトドメまで忘れない。

このディフェンディングチャンピオンでありながら、マドリーが最も勝ちに対して貪欲な姿勢を見せていたというのが今季の決め手の一つだったのではないでしょうか。



<マドリーの黄金期到来なのか?>
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遂に成し遂げられたCLの連覇。
国内リーグも含めて今季の成績を見ればマドリーの黄金期到来とも思えるが、彼らの強さをどうみるべきだろうか。

戦術的な観点で見ればジダンは何一つ特別な事はやっていない。
彼の勝利の方程式は明確で「最高の選手達が最高の状態でプレーすれば負けるはずがない」というシンプルなもの。
徹底したローテーションで天才達の磨耗を防ぎ、シーズン最後のこの試合でも「最高のプレー」を発揮させました。

一見、戦術的にも「隙」が多いのだが、それが見方を変えると選手に託した「余白」にもなっており
試合展開次第でどうにでも出られる戦い方の幅が気付いたら最後に逆転している不思議な勝ち方につながっている。


「策」で挑む挑戦者としては現在、世界でも最高峰のアッレグリを持ってしてもこの完敗劇。
だが続投を決めたこの男は同じ相手に二度は負けないのが真骨頂だ。今からリベンジの秘策を練ってくるに違いない。

そして・・・来季は「策」で挑む手強い挑戦者達が欧州の舞台に帰ってくる。
コンテ、クロップ、モウリーニョに加えてラングニックの息がかかるライプツィヒや新時代の旗手ナーゲルスマンなどいずれも曲者揃い。


マドリーの黄金期が続くのか、はたまた群雄割拠の新時代が始まるのか-







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