【CL決勝 レアル×ユベントス】策を力でねじ伏せたマドリー

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<策を力でねじ伏せたマドリー 【CL決勝 レアル×ユベントス】

16/17シーズンのCLはレアルの連覇達成という偉業を持って幕を閉じました。
自分が初めてこの大会を観た25年前から連覇したチームがいなかったという事実はチャンピオンズリーグというコンペティションのレベルの高さを物語っています。

歴史を変えたマドリーの勝因とは何だったのか?

今回はこのビッグマッチを時系列を追って解析していきたいと思います。

【両チームスタメン】
0608CL決勝スタメン

アッレグリのユベントスは4-4-2。
とは言え、攻撃時ディバラが1・5列目に下がってマンジュキッチがゴール前まで進入すればイグアインとの擬似2トップになりますし、SBのサンドロが高い位置を取ってバルザーリが絞れば3バックのようにも出来ます。

更に押し込まれた時にDアウベスが下がってくれば5バックにも可変可能と、各ポジションに2つ以上の戦術タスクをこなせる選手を配置しているので交代カードを切らずとも色々とチームを変化させる事が出来る知将アッレグリらしい編成になっています。


対するジダンのマドリーは一応4-3-1-2のような並びとなっていますが、良い意味でも悪い意味でも選手の自由度が高くかなり流動的な代物。
特にイスコはトップ下だったりSHだったりウイングだったりと現役時代のジダンさながらの自由度です。

アッレグリもそこは良く分かっており、前日会見で「イスコの奔放な動きは時にチームの守備組織を乱す諸刃の剣だ」という主旨の発言をしていました。

このようにそれぞれチームの事情は違うものの、局面に応じて初期配置がいくつもの変形を見せるという点は共通しており、これはもう時代のサッカーがいよいよフォーメーションという数字の羅列を過去の産物にしていこうという兆候なのかもしれませんね。




<ピッチからディバラを消したレアルの包囲網>
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さてこの試合、個人的に最も注目していた選手がユーベのディバラでした。
今季はまさに「今が旬」というプレーぶりで、ボールが無い時にいつの間にかフリーになっているポジショニング、ファーストタッチでDFを剥がすボールの置き所、そしてゴール前でのフィニッシュの多彩さは芸術的。

特にユーベの守⇒攻のトランジションはほぼ全てディバラを経由していると言っても過言ではなく戦術的にもキーマンと言える存在です。

勿論ジダンも「ディバラはユーベで最も危険なアタッカー」と最大級の警戒を払っており、実際にこの試合では徹底したディバラ包囲網でピッチから消し去る事に成功。


ディバラのプレーの真骨頂は自軍の守備時から常に相手ボランチの背後、死角で間受けの準備ポジションを取っておき、味方がボールを奪うやいなや1本目のタテパスを前を向いて受ける事でユーベのカウンタースイッチを入れるところ。

しかし、この日のレアルはアンカーのカゼミーロを中心に常にディバラのポジショニングに目を光らせており、パスコースの前に立ってユーベDFからのコースを消す守備を徹底。


【ディバラへのパスコースを消すカゼミーロ】
ディバラ消す0608

従って、このようにユーベは自陣で奪ったボールをディバラに預けようにもパスコースが消されている場面が目立ちました。
仮にサイドに流れても今度はクロース、モドリッチが捕まえて離しません。


ならばと得意の間受け(DFラインと中盤の間で受ける)を試みるも・・・


【間受けは迎撃守備で対応】
ディバラ迎撃1

局面はまさに今、ディバラが間受けを狙っているところ。
ここで前を向いてDFを剥がしていくプレーこそ彼の真骨頂です。

CB(ラモス)との距離感を意識してDFからすると出ていこうにも間に合わない実に嫌らしいポジショニングが妙味




ディバラ迎撃2
Sラモス『甘いわっ・・・!!!』


ディバラ迎撃3
ディバラ『グハッ・・!!!』

まさかの人外、高速の寄せでディバラがファーストタッチで前を向こうとする瞬間にはもう狩られてました。


ディバラ「ウソやろ・・・こんなDF,セリエAにはおらんかった・・・」

ラモス(手を差し伸べながら)「フッ・・・ならば貴様もリーガに来い。本物の世界を教えてやる」


このSラモスとヴァランの異常な守備範囲とインターセプトの強さでユーベのセリエA最強2トップは完全に沈黙。
特にラモスは前半だけで3回以上のインターセプトを決めてました。

これによりディバラは「前にはカゼミーロ、背後からSラモス」という地獄のような挟み撃ちに遭い、ピッチから完全に姿を消す事になってしまいました。



<レアルの構造的な脆さを突くアッレグリの緻密さ>areguri06090.jpg

エースのディバラを封じられたアッレグリ。
しかし、それでもレアル相手に攻め手が無い訳ではありません。

アッレグリが突くのはレアルの構造的な「隙」です。
ジダンのレアルは守備時、そもそも4-4-2で守るのか4-3-3で守るのか、からしてかなりアバウト。

トップ下のイスコがSHまで下がれば4-4-2になるのですが、それを決定するのはイスコ自身の気まぐれなので戻ってこない事も多く、それに加えてロナウドとベンゼマのファーストラインはほとんど守備のていを成していません。
(アッレグリがイスコを「戦術的な穴」を見ているのはこのせいで、確かにカルチョの視点で戦局を捉えれば穴以外のなにものでもない)

従ってレアルの守備は基本、4-3の2ライン守備です。(この時代に2ラインで守るとかww)
ちなみにバルサの守備構造もこれと全く同じです。
要は守備免除2枚(ロナウド&ベンゼマ メッシ&スアレス)+気まぐれ1枚(ネイマール、イスコ、ベイル)の構成ですね(笑)

これはレアルとバルサの2クラブが普通、チームに1人までしか置いておけないようなエース級を3枚も4枚も保有しているが故のジレンマと言えるでしょう。

まあロナウド、ベンゼマクラスであれば守備でハードワークさせるよりも前残りにしておいてカウンター時に仕事をさせる・・・という方が結局トータルの収支ではプラス。
それは90分の流れで見ると不安定なようでいて、結局最後は力技で勝ちを積み重ねるという今季のレアルの勝ち方と成績にも表われています。


ただCL決勝のような一発勝負で、しかも相手が知将アッレグリだった場合どうなるのか・・・?

実際の試合から確認していきましょう。


【レアルの4-3守備構造】
モド鬼スライド1

局面は右から左に攻めるユーベの攻撃を自陣で迎撃するレアルの構図。

しかしレアルの中盤は3枚でピッチの横幅68Mを守らねばならず、やはり逆サイドにはかなりのスペースが空いてしまいます。

じゃあ、このスペースに展開された場合、どう守るのか?と言うと・・・



モド鬼スライド2
根性の戻リッチで鬼スライド!!wwww

ちなみにバルサだとラキティッチが同じ役割をやらされているのでクロアチア人は社畜体質なのかもしれません(爆)

但し、いくらモドリッチが根性を見せたところで「ボールは人より速い」のです。
なので常にノープレッシャーのCBボヌッチあたりから一発の対角パスでサイドを変えられた場合・・・



ユーベサイドは2対1
必然的にサイドではユーベが2対1の数的優位になります。

つまりユーベはサイドに振れば簡単にマドリーゴール前まで運べてしまうので(1対2の数的不利ではSBカルバハルは後退するしかない)このジダンマドリーの構造的な脆さが、序盤のユーベ攻勢を招いた要因です。


では、一方のレアルの攻撃はどうったのか?

ユーベがサイドに2枚を配置出来る4-4-2でサイドを優位にしていたのなら、中央を厚くしたジダンの4-3-1-2は中で優位性を作れるはず。
しかしジダンがディバラを警戒していたように、アッレグリもレアルのキーマンがモドリッチとクロースのインサイドハーフである事は見抜いていました。

そこでこの2枚には常にボランチかSHが受け渡しながら捕まえて、その代わりカゼミーロは放置、と対応がハッキリしています。

【アッレグリの守備】
前半CL決勝図

しかしフリーのカゼミーロからは気の利いたタテパスが入らずむしろパスミスを量産。
勿論、こうなると読んでいたからこそアッレグリはカゼミロを放置していた訳ですが、こうなるとレアルのパス経路は自然とフリーのSBへの安全な横パスが増えていきます。

しかしレアルのサイドにはSBの前に人がいません。


【孤立するレアルのSB】
マドリーsb孤立
よって、SBに回したところで常に孤立した状態で攻撃をスタートさせねばならない苦しい立ち上がり。


マドリーsb孤立2
左も同様、マルセロが1対2で対応されてしまいます。


これを見たベンゼマが気を利かせてサイドに流れますが・・・


マドリーsb孤立3
左に流れたベンゼマが局面を2対2にしてワンツーからマルセロにサイドを突破させるも・・・



マドリーsb孤立4
中がロナウド1枚ではユーベのDFにガッチリ捕まえられてしまっています。
このサイド攻撃では今大会3失点の鉄壁ユーベディフェンスから得点を奪うのは難しいところ。


ジダンの誤算としてはイスコが守備はともかく攻撃でも機能しなかった事でしょうか。

完全に自由を与えたイスコが攻撃のタクトを振るうはずが、間受けしようにもユーベのコンパクトな3ラインにスペースを見つけられず、窮屈なエリアで受けてバックパスをするか、ブロック内を嫌がって外に下がって受ける場面が目立ち始めます。

これで中盤と前線をつなぐリンクマンが不在となり2トップも孤立。
レアルはほとんどマイボールでチャンスらしいチャンスを作れない時間が続きます。





<それぞれの"理"が生んだ得点>
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ここで両チームに起きている状況をまとめてみましょう。

【レアル】
<攻撃>
・SBが孤立
・モドリッチ、クロースの両インサイドハーフが守備に追われている
・イスコが間で受けれない

<守備>
・ディバラとイグアインはCBが完封
・サイドで数的不利に立たされている


【ユベントス】
<攻撃>
・2トップが消されている
・サイドからゴール前まで運ぶのは容易
・CBはノープレッシャーで対角パスが出せる

<守備>
・ほぼ完璧にレアルの攻撃を抑えている


両監督の狙いではややアッレグリ優勢ですが最後のゴール前では人外CBのラモスとヴァランがユーベの2トップを完全に抑え切っているので致命傷には到らず。
従って戦術的にはアンバランスでも微妙に試合は拮抗しているのでした。

こうなると得点はカウンターかセットプレーが勝負を分けるのがフットボールの理。
マドリーの先制点はやはりカウンターからでした。


【マドリーの先制点を検証】
レアル1点目0608-1

局面はユーベがサイドからレアル陣内深く攻め込み、右サイドからのクロスをマンジュキッチとカルバハルのミスマッチを突いてファーで押し込もうとした場面から。

この攻め筋は確実にアッレグリが狙いとしていたところですが、クロスを上げる前にディバラがボールをロスト


レアル1点目0608-2

回収したボールをつないでレアルのカウンターが始まるとクロースがこの日初めて長いドリブルを見せてユーベの第二防波堤(ボランチライン)を突破。

ボランチが剥がされた状態でボールを運ばれているのでユーベDFラインは後退せざるを得ず


レアル1点目0608-3

ベンゼマがフリーでボールを収めると、ここでもこの試合初めてロナウドがサイドに流れてボールを受けるかたちに。

そしてカウンターの開始地点では守備でマークしていたマンジュキッチをスピードで振り切ったカルバハルが既にフリーになりかけている
(アッレグリが高さでミスマッチを作ったポイントが反転速攻では逆にスピードでミスマッチになってしまった)



レアル1点目0608-5

ロナウドがサイドに流れた事でユーベのSBが初めてロナウド+SB(カルバハル)と1対2の数的不利で対応する局面に



レアル1点目0608-4

先ほどの中がロナウド1枚だけの状況と違いベンゼマが奥でDFを引っ張っているのでロナウドがマイナスでフリー

レアルはこの試合、クロスでは徹底してグラインダーの速いボールを狙っていました。
(ロナウドの奥にもクロースが待っているのでこのクロスは完全なゲームプラン)
確かに鉄壁のユーベ守備陣に対して平凡なハイクロスでは分が悪いのでこれは"理"に適っています。

試合の主導権は握られていても必ず起こるカウンターという状況から
前残りにしておいた圧倒的な個の力で得点は強奪出来るだろう・・・というのがジダンの、マドリーにとっての"理"でした。


しかし戦術的にはアッレグリの"理"が試合を支配しているので、すぐさま返す刀でユーベが同点に追いつきます。

【ユベントスの同点弾を検証】
ユーベ得点0608-1

局面はレアル陣内に攻め込んだユーベのボヌッチがノープレッシャーで逆サイドに対角パス
これは相手2トップのプレスが無く、サイドで数的優位が作れている・・・という状況に即したアッレグリの手筋ですね



ユーベ得点0608-2

逆サイドではSBのカルバハルがゴール前に侵入したマンジュキッチに付いているのでその大外にSBのサンドロが上がって来ると必然的にフリーになれます。

↑この場面では気付いたイスコが一足遅れて戻ってきていますが完全に間に合っておらず、これを見たカルバハルがカバーの対応に向かっているのが分かります。



ユーベ得点0608-3

サンドロからダイレクトでゴール前のイグアインに折り返されると、カバーに向かった分カルバハルとマンジュキッチとの距離がこれだけ離れてしまっています。
この距離がマンジュキッチに胸トラからシュートにいける余裕を与え、得点に繋がりました。


前半はアッレグリ、ジダン、それぞれの理で1点づつを取り合って後半へ。



<狙われたバルザーリ>

後半、前半は得点シーンのカウンター以外、ほとんど攻め手の無かったレアルが明らかに攻め筋を変えてきました。

ユーベのコンパクトな3ライン間にパスを入れても囲い込まれるだけなので、それならばとDFライン裏へキックオフから立て続けに2本蹴っています。
狙われたのはこの試合、右SBに配置されたバルザーリ。

バルザーリがSBに起用されているのは3バックにも可変出来る事や、マドリーのストロングサイドである左サイド(マルセロ)への守備を強化しようなどの理由があったからですが、SBが本職の選手と比べるとやはりスピードには欠ける分、背後への対応やタッチライン際での1対1は不得手としています。

マドリーが突いたのはまさにそこで、後半からイスコを左サイドに張らせただけでなく、ロナウドやベンゼマも積極的に左へ流して後半開始僅か15分の間に6回も左サイドでの仕掛けを見せています。

【マドリーの露骨なバルザーリ狙い】
バルザリ0608-1

バルザリ0608-2

バルザリ0608-4

バルザリ0608-5

バルザリ0608-6

そしてこの後半15分のベンゼマとバルザーリの1on1からクロス(またもやグラウンダーでマイナス)⇒こぼれ球にどフリーだったカゼミーロがドン!で勝負有り。


アッレグリからすると後半の攻め筋変更に修正が間に合わないうちに放置していたカゼミロに決められるという痛恨の失点。
しかもリードされてしまうと攻撃にパワーを加える手持ちのカードがほとんど無いのが苦しいところ。

気落ちするユーベを見た王者マドリーは「ここが勝負どころ!」と一気に畳み掛けてきました。




<勝負どころを逃さない勝者のメンタリティ>
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結果的に勝負を決めたレアルの3点目も後半の攻め筋が伏線となっていました。

バルザーリの背後をスピードで狙われ始めた事で少しづつユーベのDFラインが後退。
これにより中盤の2列目も合わせて後退し、これまでマドリーのキーマン(モドリッチ、クロース)を抑えていたボランチ、SHとの距離が僅かに開いてしまいます。

しかし、モドリッチ&クロースレベルの選手にとってこの僅かなスペースがあれば試合を決めるのに充分過ぎる程でした。
というのもユーベの守備はマドリーのように個の能力で解決するものではなく、3ラインが一体となって守備をする事でその強度を保っているからです。

ユーベにとって2トップと2列目のライン間が離れるという事は守備の強度とボールポゼッション、ひいては試合の主導権を明け渡すのと同義でした。

試合はこの時間帯、2点目が決まったのを合図に一方的にマドリーがボールを支配し始めるのですが、一体ピッチでは何が起こっていたのでしょうか?

実際の試合から解析していきましょう。


【マドリーの五角形が機能し始める】
五角形2-1

局面は最終ラインからビルドアップするレアルに前プレをかけるユーベの図。
レアルはCB2枚とアンカーのカゼミーロ+両インサイドハーフ(クロース+モドリッチ)で作る五角形でユーベの2トップに対し数的優位を作りながら鳥カゴの要領でボールを回し始めます。

この流れでSHが少し離れた位置からインサイドハーフにプレスをかけたとしても・・・


五角形2-2

このように簡単にいなされてしまいます。

これで構造的にボールを握れるようになったレアルにとって追加点は必然でした。




【レアルの3点目を検証】
レアルティキタカ1

3点目の起点もこのようにレアルの五角形がユーベの2トップのプレスを無効化しているのが分かります。
それでいてユーベの2列目は左右のSHが大外に開いたSB(マルセロ&カルバハル)に引っ張られているのでボランチの方が中途半端に前に出てしまってかなりのアンバランス。

仮にケディラとピアニッチがこの五角形に食いつくと今度はイスコ、ロナウド、ベンゼマのいずれかに背後で間受けを狙われて、
ならばとそれをDFラインが迎撃守備で食いつこうものなら一発で背後を取られる危険性があります。
(何故ならボールの出所にプレッシャーがかけられない状態だから)

とにかくこの時間帯のマドリーは全体のポジションバランス、距離感、機能性、相互関係が素晴らしく、↑の図でいくつのトライアングルとパスコースが描かれているかを可視化するとこうなります↓

レアルティキタカ2
う・・・・美しい

ポイントはユーベの1列目と2列目が各トライアングルの間に立たされて、それぞれのエリアで鳥カゴをされてるような状態なので守備が全く機能しなくなっているんですね。

この圧倒的な支配感とポジショニングバランス・・・どこかで見た覚えがあるなーと思ったら、これユニフォームの色さえ変えてしまえば各選手の名前をこう書いても誰も気付かないと思うんですよ(笑)↓

レアルティキタカ3
マドリディスタに怒られるからやめれwww

いやー、未だにあの頃のペップバルサの映像を見返す事があるんですが、最近気付いたんですよ。
彼らの何が他と違うのかって、足元の技術よりもポジショニングの秀逸さだな・・・って。
本当11人全員が意図と意味のあるポジションを取っているので無駄が無いんですよね。

おっと、話が逸れかけたので3点目の流れに戻りましょう。


レアル2点目0608-1

構造的にフリーになるアンカー(カゼミーロ)から構造的にフリーになる大外のカルバハルへサイドチェンジ



レアル2点目0608-2

・・・・で、案の定カゼミーロのパスはパスミスになるんですけど、この布陣全体でユーベの守備ブロックを包囲するようなバランスで攻めていると仮に途中でミスが起こっても必ず近い距離間でボールに対して守備に切り替えられるのと前向きにアプローチ出来るという利点があります。

ここでもパスカットからつなごうとしたユーベの1本目のパスをモドリッチが前向きにインターセプトし、ショートカウンターからまたもやロナウドで勝負有り。
(地味にここでもベンゼマがファーに流れてDFを釣っている)


勝負どころを見逃さずに一気に畳み掛けたマドリーはその後も手を緩ませず、ユーベの切り札として投入されたクアドラードが早々にイエロー1枚をもらったと見るや2枚目を誘ってピッチから追い出す徹底振り。

更にユーベに心身共に疲れが出たと見るやスピードスターのベイル、アセンシオ、モラタを立て続けに投入してトドメのトドメまで忘れない。

このディフェンディングチャンピオンでありながら、マドリーが最も勝ちに対して貪欲な姿勢を見せていたというのが今季の決め手の一つだったのではないでしょうか。



<マドリーの黄金期到来なのか?>
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遂に成し遂げられたCLの連覇。
国内リーグも含めて今季の成績を見ればマドリーの黄金期到来とも思えるが、彼らの強さをどうみるべきだろうか。

戦術的な観点で見ればジダンは何一つ特別な事はやっていない。
彼の勝利の方程式は明確で「最高の選手達が最高の状態でプレーすれば負けるはずがない」というシンプルなもの。
徹底したローテーションで天才達の磨耗を防ぎ、シーズン最後のこの試合でも「最高のプレー」を発揮させました。

一見、戦術的にも「隙」が多いのだが、それが見方を変えると選手に託した「余白」にもなっており
試合展開次第でどうにでも出られる戦い方の幅が気付いたら最後に逆転している不思議な勝ち方につながっている。


「策」で挑む挑戦者としては現在、世界でも最高峰のアッレグリを持ってしてもこの完敗劇。
だが続投を決めたこの男は同じ相手に二度は負けないのが真骨頂だ。今からリベンジの秘策を練ってくるに違いない。

そして・・・来季は「策」で挑む手強い挑戦者達が欧州の舞台に帰ってくる。
コンテ、クロップ、モウリーニョに加えてラングニックの息がかかるライプツィヒや新時代の旗手ナーゲルスマンなどいずれも曲者揃い。


マドリーの黄金期が続くのか、はたまた群雄割拠の新時代が始まるのか-







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『ティキタカを思い出せ』~イニエスタがいないバルサといるバルサ~

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<イニエスタがいないバルサといるバルサ ~FCバルセロナ×Rマドリー~

さて、本当はもう少し早くクラシコのマッチレビューでもやろうかと思ってたんですが
ちょっと時間が経ってしまったので今日はこのクラシコの焦点にもなった「イニエスタのいないバルサ」と「いるバルサ」の比較から
今季のバルサのメカニズムを検証していく、というアプローチで攻めたいと思います。

まあ実も蓋もない言い方をすれば僕のイニエスタたんをひたすら褒めるだけの記事にもなりそうですが、
そこは長い付き合いの読者であればイニエスタ狂があの試合を見せられて黙っていられるはずがないと分かってくれるはず(笑)



では、まずクラシコの前半、つまりイニエスタが「いないバルサ」におけるビルドアップを見ていきましょう。

【クラシコ前半に見せたバルサのビルドアップ布陣】
バルサビルド1213

この試合、レアルは4-5-1でかなり引き気味のブロックを自陣に形成。
エンリケのバルサが狙いたいのはこの布陣の泣き所である1アンカー、モドリッチの両脇に出来るスペースです。

バルサはCBがボールを持つと両SBが同時に高い位置を取って、空いたスペースにインサイドハーフのラキティッチとAゴメスを落とし、メッシとネイマールのウイングがアンカー脇で間受けを狙うという可変をオートマティックに見せていました。


ラキSB1
↑このように右サイドではSロベルトが上がった後のスペースにラキティッチが降りてSBのような役割



ラキSB2

ここから逆サイドにボールを迂回させるとAゴメス、Jアルバ、ネイマールの3枚がサイドでポジション移動

要はこれ、ビルドアップ時に安全なパスルートを確保する為、インサイドハーフ(ラキ&Aゴメス)をサイドでフリーにさせるって事なんですけどね。
ただ、ラキティッチとAゴメスがボールを受けるまではいいとして、問題は中に入って来るネイマールとメッシに対して当然レアルの3センターも中を閉めますから前半はタテパスが全く入らなかったと。
(特にモドリッチは鬼神のごとき横スライドと守備範囲の広さで中に入って来るボールをことごとくインターセプト)





ラキSB3

という事は当然、バルサのパスルートは外⇒外⇒外になってネイマールもDFに背を向けた苦しい状態でボールを受けるかたちになり・・・





ラキSB4

強引に個のドリブルでサイドチェンジしてる有り様です。


要するにエンリケバルサのビルドアップとは、いかにMSNへリスク無くボールを届けるかが重要で
その為にDF~中盤はとにかくシンプルにボールを循環させて「あとはMSN頼んます!」ってのがその実態。

ただ、本来中盤でボールを運ぶ役割だったインサイドハーフがこれだけ簡単にSBの位置まで降りちゃうと
MSNが中盤のボール運びから崩し⇒最後のフィニッシュと全て担うようなかたちになり、その結果がコレです↓


【ティキタカ無きエンリケバルサの攻撃】
メッシ降りてくる1

もうね、ラキティッチが持った段階で、「どうせ中で待っててもボール入ってこねえや」とばかりに
見かねたメッシがブロックの外まで降りてくる場面が頻出し始めます。




メッシ降りてくる2

そんで中盤から「自分で運びます」って強引なドリはいいんだけど・・・・




メッシ降りてくる3

相手からすると結局一番怖いところに怖い選手がいない、というだけの話なんですな。




いくらメッシが凄いと言ったって、これではいくら何でもドリブルのスタート地点が低過ぎです。



メッシ降りてくる4

だから後半もバルサの攻撃スイッチが自陣からのメッシ無双頼みじゃあ・・・




メッシ降りてくる5
さすがにレアルには潰されますって


とにかくイニエスタの「いない」バルサはこれがあの「間受け」の元祖か?と思うほどに
攻撃ルートが右から左、左から右へと外⇒外を迂回するだけで一向に中へタテパスが入りませんでした。



<選手任せの貴族ディフェンス>

続いて、今回の本筋とは少し離れますが今季のバルサの守備についても少し触れておきましょう。

バルサの布陣は4-3-3ですが、エンリケのチームは完全ヒエラルキー制なので前線の3枚、特権階級のMSNは守備が免除されています。

つまり現代サッカーにおいて3ラインではなく2ラインで守るというちょっと有り得ない構図になっているんですが
攻撃では貢献度の低いラキティッチらのハードワークとブスケスの守備範囲で何とかごまかているのがその実情です。


レアルは左攻め1213-1
局面は右から左へ攻めるレアルの攻撃。
右サイドに展開されたボールにバルサの中盤3枚(普通は2列目だがバルサだとここが守備のファーストライン)が
ボールサイドにスライドして守備をしています。(ブスケスとAゴメス)

で、ここから中央のモドリッチに戻されたバックパスに対してスアレス、メッシは完全棒立ちでプレスバックが皆無。
となるとボールにはノープレッシャーのまま中盤はラキティッチ1枚でカバーしなけりゃいけない地獄絵図



レアルは左攻め1213-2

当然、フリーのイスコに前を向かれて・・・・




レアルは左攻め1213-3

左サイドに展開すればバルサの右WGであるメッシは絶対に自陣まで帰ってこないので攻撃参加のマルセロが常にフリーダム
これもラキティッチが鬼の横スライドで対応するんですが、どうしたって後追いの守備になってしまいます。

これがバルサの守備が抱える構造的欠陥で、マドリーはフリーマンのマルセロを攻撃の起点にしていました。

ちなみにこれ、特権階級が守備するかどうかは選手に任されているらしく、左のネイマールはプレスバックするので問題なく対応出来てたんですけどね。


【左のネイマールはプレスバックするので守備が厚い】
右はネイマールが戻る

右SBカルバハルのオーバーラップにはネイマールが対応するのでJアルバはロナウドに付いて左サイドは2対2の構図が作れていました。



マドリーもロナウドが同じように守備免除なんですがその分、左サイドはベンゼマが入って4-5-1を作るので守備ブロックのメカニズムがギリギリ担保されていました。

スアレスはメッシの代わりにプレスバックする時もあるんですが気まぐれというか単発で、特に最近はかなりおざなりになっている模様。



<イニエスタで蘇るティキタカ>

で、退屈な前座の60分が終わり、いよいよいイニエスタの投入です。
この交代で一体バルサの何が変わったのか?

実際の試合から見ていきましょう。


【①インサイドハーフのポジショニングが変化】
イニは中1213-1

局面は後半、右から左へ攻めるバルサのビルドアップ
ラキティッチに変わってインサイドハーフに入ったイニエスタのポジショニングにご注目

前半とはうって変わってインサイドハーフが「中」で待ってます。



イニは中1213-2
バルサのティキタカの基本は「敵と敵の間で受ける」

いわゆる三辺の中心でパスを受け・・・・



イニは中1213-3

涼しい顔のままターンしてボール運べちゃうから!

しかも1人でDF3枚引き付けてるんで周りの味方にスペースも提供しちゃう一挙両得。


更にイニエスタ投入の効果は周囲に波及し、特に前半は死んでいたブスケスとメッシを蘇らせる事につながります。


【②イニエスタのポジショニングがブスケスを蘇らせる】
イニがブスをフリーにする1

局面はGKからマスケラーノが受け取ったところでイニエスタがブスケスと逆方向に動いてモドリッチを引きつける場面
守る方はイニエスタに中で受けられると致命傷なのでケアせざるを得ません




イニがブスをフリーにする2

結果、前半まで窒息寸前だったブスケスがフリーで前を向けてメッシが間受けの準備
前半喪失していたバルサの中盤が蘇りました。

これを分かり易くすると・・・・



イニがブスをフリーにする3

↑要はこれブスケス、イニエスタ、メッシが中盤で大きめのトライアングルを作ってロンドを始めたに過ぎないんです。

これをラインを敷いてゾーンで守ろうとすると必ずどこかにギャップが出来る現代サッカーにおけるハメ技みたいなもんですな(笑)



イニがブスをフリーにする4

結果、メッシが最も得意なかたちでボールを受けて無双発動。
前半とドリブルのスタート位置が全く違ってメッシが自分の役割に集中出来ているのがよく分かるかと思います。


つまり前半はブスケスとメッシが中盤で切り離されていた感じですが、この2人をイニエスタがつなぐ事でバルサのパスルートに1本芯が通った感じですかね。

バルサのティキタカはボールをつなぐ前にまずポジショニングでお互いがつながらないとパスが回りません。
そして「お互いのポジショニングに意味を持たせる」とはつまりこういう事です↓

トライアングル1213-1

この3人のポジショニングこそバルサの全てです。
それぞれがそれぞれを助け、各自が敵と敵の間に入っているのでマドリーの守備陣形が機能していません。
(誰かに付けば別の誰かが空く・・・という状態)

ブスケスが受ける前にスッと横に降りて来るイニエスタの動きも往年のシャビを彷彿とさせますね。


そしてイニエスタの凄みはボールを「受けない」時にもその効果が発揮されるところ↓



【③イニエスタのバックステップがバルサに時間を与える】
イニバックステップ1213-1

局面はバルサのビルドアップからマスケラーノがボールを持ったところ

ここでインサイドハーフのイニエスタはSBの位置に落ちるのではなくボールに身体を向けたままバックステップで「中」へ進入していく得意の動き出し

この守備ブロックの「間」で受けようとする準備動作に対し、マドリーはバスケスとイスコが対応する為にイニエスタに引っ張られていきます。

これでマドリーのファーストディフェンスがボールにプレッシャーをかけられず、バルサのCBとSBに時間が与えられる・・・という寸法です。

つまりイニエスタはボールに触らずともバルサにポゼッションを与える事が出来るんですね。



イニバックステップ1213-2

時間を与えられたCBは余裕を持ってボールを運べるのでそもそもの攻撃開始地点が高くなります。
そしてイニエスタは定石通り、今度はマドリーDFの四辺の中心にポジションを取っています。

これでマドリーのCB,SB,CH、WGはそれぞれイニエスタを気にしながらプレーせざるを得ず(自分のポジショニングを間違えるとイニを使われる為)、Jアルバとネイマールに対して思い切ったアプローチに出ていけない制限をかけられているんですね。


このように守る方としてはイニエスタを気にするとどうしても守備ブロックをバルサ主導で動かされてボールを取りに行けないのですが、かと言ってじゃあ「ブロックの外では放っておけ!」と放置プレーをしてしまうと・・・



イニ神スルーパス
ブロックの外から神スルーパス!!!


一発で決定機を作られてしまう・・・と。


世界最高のタレントをかき集めたクラシコが、たった1人のMFによってここまで変質させられてしまうとは・・・。

シャビ無き今、イニエスタこそがバルサに残された最後のフットボールと言えよう。



<添え物に過ぎなかった両指揮官>
201604090005-spnavi_2016040900008_view.jpg

結局、クラシコでのエンリケの仕事は「残り30分になったらイニエスタを投入するだけのお仕事です」に過ぎず、他の采配も実にチグハグなものでした。

1-0リードで逃げ切る為のデニススアレス&アルダの投入は
Dスアレスが肝心の守備で穴になっていたばかりか、アルダの不必要なファウルがマドリーの同点弾を生んでいます。


そもそもこのチームが逃げ切りを図りたいのであればボールを相手に渡して自陣に引くのではなく
守備的ポゼッションでボールを相手に渡さない、という閉め方こそ勝ちパターンだったはず。


トランジションゲームに持ち込んでMSNの決定力で勝つ!というエンリケの唯一の勝ちパターンも既に攻略されかかっている気配。

ソシエダ戦のようにDFラインに強烈なプレスをかけられるとそもそもMSNまでボールが渡らずにジ・エンドのパターンはリーガの中堅&弱小クラブにも恰好のお手本になるだろうし、マドリーのようにトランジションゲームに持ち込ませないゲーム運びをされると試合が膠着してしまいます。


ペップであれば相手の出方に応じてシステムを変え、選手を変え、ポジショニングのメカニズムを変える応手で対応していましたがエンリケはピッチ上で選手達が解決してくれるのを待つのみ。

バルサの肝である中盤を軽視してカンテラーノから外注路線に舵を切ったものの、肝心のクラシコでエンリケを救ったのがカンテラーノによるティキタカというのは皮肉でしかありません。


一方のジダンもデルボスケよろしく、ただ最高の選手をピッチに並べるだけでそれ以上でもそれ以下でも無し。

クラシコでもリードされてからボールの収まりどころだったイスコを下げてカゼミロを投入し攻撃力を下げたばかりか
終盤まで空気以下だったベンゼマを引っ張っるなど謎采配につぐ謎采配。
(結局、前線を若手に変えてからマドリーの攻撃は明らかに活性化されました)


結局この両指揮官ではクラシコという試合の格に対して添え物になってしまい、
ピッチ外の空中戦は皆無なまま膠着した試合は互いセットプレーで1点づつを取り合ってのドロー決着は必然と言えよう。


ただ唯一、イニエスタだけがフットボールの神がこの試合につかわした救世主(メシア)だったのである-






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新しい風が吹いたハリルJAPAN ~日本×サウジアラビア~

表紙1122
<新しい風が吹いたハリルJAPAN ~日本×サウジアラビア~

どうも皆さん、1ケ月振りです。

その間、海外クラスタからは「完全に日本代表応援ブログやないか」と言われ、
代表ファンからは「ツイッターを炎上させてる暇があったらブログ更新しろ」「原口のインテンシティを見習え」「どうせガッキーのドラマ見てブヒブヒ言ってるだけだろ」などなど、数々のごもっともなお叱りを受けて猛省中のダメ人間です。



・・・さて、アジア最終予選シリーズもようやく折り返し地点まで来ましたね。
(これで次の更新まで3ケ月休め・・・ry)

今回は日本の快勝に終わったサウジアラビア戦からその要因を検証していきたいと思います。
では日本のスタメンから。

日本サウジ1122

前回、この最終予選でも最も厳しい試合となるアウェイのオーストラリア戦では
最悪「勝ち点1でもOK」のプランでボールを相手に譲り「受け」の姿勢で臨んだハリル。

世論は「香川&本田外し」に動いていましたが、老獪なゲーム運びで勝ち点1を確保する試合に指揮官が何よりも重視したのは「経験値」でした。

その結果、清武が外れ本田、香川の2トップ(縦関係)で守備のファーストラインを決めるという人選に到っています。


翻って今回のサウジ戦は残りのスケジュールを考えても絶対に勝ち点3を「取りに」にいかなければならない試合。

当然、守備でも受けに回るのではなく前から積極的に奪いに行くプランになるので
前線は経験値よりもインテンシティを重視した若手中心のメンバーに入れ替えてきました。


<間延びした4-4-2と日本のインテンシティ>

試合前、目下グループ首位、しかも指揮官はあのファンマルワイクという事で不気味さが漂っていたサウジ。
しかし蓋を開けてみれば恐れるに足らず、非常温いチームだったと言えるでしょう。


サウジは守備時4-4-2で2トップが前からプレスをかけにきましたが
組織的な連動性に乏しくDFラインの押し上げは極めて緩慢。

結果、現代サッカーではほとんど見かけなくなった「間延びしきった4-4-2」のラインとラインの間で日本の攻撃陣が躍動。
特にこれだけバイタルが広ければ清武は常にフリーで間受けが出来るカモネギ状態でした。


【間延びしたサウジの4-4-2】
清武間受け1122-1
20年前のプレミアリーグかよwww



清武間受け1122-2
清武(試合後のコメント)『今日は相手があまりついてこなかったので、常にボールを受けられました。』



この間受けを嫌がってサウジのSHが中に絞れば・・・


閉められたら外112-1
シンプルに外を使うまで


このように序盤からサウジの「中途半端な前プレ」と「間延びした4-4-2」という戦術的に最悪の組み合わせにつけ込んで日本は自由にタテパスを出し入れ出来ました。

勿論、サウジのDFラインが押し上げられなかった要因の一つとして、やはりこの男の存在は無視出来ますまい・・・・











7b7bf783.jpg
一体どこのイブラヒモビッチだよwww




この圧倒的な「預けとけばキープしてくれる感」は半端無い!
(むしろ赤いチームで喘ぐ本家より10倍機能してる)


原口『(大迫の存在は)大きかったですね。収まり方がやっぱりすごいので、僕も前を向いて仕掛けられるシーンがたくさんありました』


結局日本代表の構造として1トップが身体を張って2列目のタレントを活かすという構図はザックがCFに前田を置いていた時の作り方と全く同じです。

日本はいつの時代も2列目にタレントが集中するので、彼らを活かそうと思ったら自然とこういうチーム構成になってしまうんですよね。

そしてこのタテパスが入る状況に今回セレクトした「前線のインテンシティ」が加わるとハリルが狙いとしている「タテに速い攻撃」の全貌が見えてきました。

では実際の試合から日本代表が見せたブンデスレベルのゲーゲンプレッシング⇒連続攻撃のコンボを見ていきましょう。


【ハリルが理想とする攻守一体化】
タテパスGプレ1122-1

局面は中盤で日本がボールを奪い返した瞬間から。すぐに空いている清武にタテパスが入れられる





タテパスGプレ1122-2

このタテパスを清武がコントロールミス。しかしタテパスで失っているのでサポートに上がってきていた山口、原口がそのまま守備に移れる





タテパスGプレ1122-3

ボールを奪い返したサウジのCBに強度の高いプレス





タテパスGプレ1122-4

ファーストプレスでこれだけパスコースが限定されていれば後ろはインターセプトを狙いやすい

長友が狙い澄ましたインターセプトでサウジの1本目のパスを奪う





タテパスGプレ1122-5

サウジは中途半端に攻撃に出ている瞬間なので大きなチャンスに繋がる二次攻撃となった
(ゴール前に走りこんだ久保にタテパスが出て横で大迫がフリーの決定機につながる)



大迫のキープ力とサウジのDFラインを1人で引っ張れる存在感、清武の間受け、原口のインテンシティといったように日本のゲームプランとチョイスした駒がガッチリ噛み合っていました。

そのかいあって前半は日本が圧倒的に主導権を握り、ハーフタイム間際に大迫の超絶キープから2列目が追い越せ、飛び出せの波状攻撃を仕掛けてPKから先制点を奪う事に成功。





<思考停止のデュエルに潜む危険性>
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前回のオーストラリア戦が「受け身」の守備だった事もあって殊更このサウジ戦の躍動感が日本のファンに好意的に受け取られているのは分かりますが、メディアがその一面的な見方に乗っかってしまうのは危険ではないでしょうか?

この2戦の違いは本田、香川が「いる・いない」以上にそもそものゲームプランとそれに伴う駒のチョイスが全く違ったわけで・・・。


確かにサウジ戦の日本の守備はハリルの口グセになっている「デュエル」の一端を日本のサッカーファンに示すに充分だった事でしょう。

しかし、ここでは同時にそこに付随する危険性の方にも目を向けてみたいと思います。



【日本の特攻守備が持つ危険性】
ボラのチャレ&チャレ1

局面は守備時4-4-2で守る日本の守備から
(久保と原口は逆ね)

球際での「デュエル」を強調されている日本はここでもボランチの長谷部が厳しくボールに寄せる





ボラのチャレ&チャレ2

・・・・が、取りきれずにボールを逆サイドへ展開される。

この時の山口の動きに注目
見ての通り、逃がされたボールを追ってアタックをかけています。

しかしボランチの長谷部がアプローチして逃がされたボールに相棒の山口が出て行くという事は
ボランチの守備が「チャレンジ&チャレンジ」になっているという事。

つまりどうなるかと言うと・・・





ボラのチャレ&チャレ3
そりゃあもうバイタルがポッカリ空く!

ついでに言うと原口もボールに寄せているのでこの守備での日本の中盤4枚は「チャレンジ&チャレンジ&チャレンジ&チャレンジ」だ(笑)






ボラのチャレ&チャレ4

そんで、ここにタテパス打ち込まれたらDFラインは後退するしかない!


確かにボールに対して全員「デュエル」している・・・のかもしれない。
が、これでは中盤の連動性というものを全く欠いてボールにただ突っ込むだけの特攻守備になっている。

【日本の中盤4枚の動き】
チャレンジ&チャレンジ

本来中盤の4枚は1本のロープで結ばれているかのように左が出れば右が絞り、真ん中が出れば両脇が閉める・・・といった具合に一つの生命体として動かないとスペースが空いてしまいます。

日本人は言われた事を生真面目に受け取り過ぎるが故の思考停止ってのはカテゴリー問わず「日本サッカーあるある」ですなぁ・・・。



そしてもう一つ、日本の守備の継続課題となっているのが最後尾の押し上げ

間延び1122-1

局面はサウジがGKまで下げたバックパスを日本の2トップが追って前プレをかけているところ

しかし2トップの高さに対して中盤の2列目、そして2列目を押し上げる最終ラインが付いてきていません。
(本来は今2列目がいる高さにDFラインを敷きたいところ)




間延び1122-2

だから蹴られたボールに対してCBがアプローチ出来ない変な空間が生まれています。





間延び1122-3

結局、こぼれ球をこのスペースで拾われて、1人早めに深さをとる吉田とのギャップからDFラインはバラバラ。
前プレがサウジのロングボール1本で失点のピンチに。


このように圧倒していたに見える前半の戦い振りにも日本の守備が抱える危うさというものは確かにそこにあったという事を見逃すべきではないでしょう。






<プランBは「経験値」の投入>
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スターティングメンバーを「自分達から仕掛けて取る」メンバーで組んで狙い通り1-0リードで折り返した日本。
ハリルとすれば後半は当然リスクを抑えてサウジが出てきたところをカウンターで叩くオーストラリア戦に近いプランBへ変更となります。

となれば「経験値」の本田投入はこれ以上無い明確な戦術的交代だったのではないでしょうか。

実際、後半の日本は本田が入った事でタテへの推進力こそやや失ったものの、
バタバタした展開が消えて明確なハーフリトリートからのショートカウンター狙いに切り替わっています。

ちなみに本田はファーストプレーから続けて3本、受けたボールを「タテ」ではなくキープからのバックパスを選択。
指揮官の意図を汲み取って、まずチーム全体に後半は何をすべきかを示す極めて戦術的なプレーだったと思います。


ここからハリルは更に60分過ぎに「当初の予定通り」清武を下げて香川を投入。
よりオーストラリア戦に近いメンバー編成へ移行しています。

ではその本田&香川投入で日本の攻撃がどう変わり、追加点を生んだのか検証してみましょう。


本田2点目

局面は後半、西川のロングボールのセカンドを本田が拾い、それを見た原口が裏へ飛び出す瞬間

前半はここで裏に出してヨーイドン!が多かったですが・・・




本田2点2

本田はキープを選択してSBの長友が上がって来る時間を稼ぐと満を持して2人のコンビネーションでサイドを突破





本田2点3

時間を使った事で全体の距離感が近くなり、クロスに対する中の厚みも生まれています。
(香川のスルー?から原口が押し込んでダメ押し)


これが本田、香川、長友らザックJAPAN組が得意とする遅攻で同じクロスからの得点でも1点目と2点目の違いにハリルJAPANの幅が現れています。


但し、勿論メリットあればその裏にデメリットあり・・・なので、後半のザックプランだと当時と同じ課題が顔を覗かせてきます




【後半のザックプランが抱えるリスク】
本田守備問題1122-1

局面は日本が中盤でボールを回している場面。
注目は右SH本田のポジショニングでやはり「定位置」に入ってしまっている・・・




本田守備問題1122-2

で、この状態でボールを失うと日本は右SHがいない状態で守備をスタートせざるを得ない

長谷部がこれに気付いて山口に空いてる右サイドを埋めるよう指示




本田守備問題1122-3

急場しのぎの陣形で守る日本となるが、ここからサウジにボールを回されると・・・




本田守備問題1122-4
中盤の守備がカオス過ぎwwww

ブラジルW杯のコートジボワール戦の悪夢再び

これが本田を使う時のメリットとデメリットですね。




<ハリルJAPANに警鐘を鳴らす失点>

とはいえ、試合終盤までサウジのシュートを2本に抑えてホームで2-0。
あとはこのまま試合を閉じて文句無しの勝ち点3かと思われた後半90分、ケチのつく1失点でした。

この失点はサッカーの厳しさというか、やはり前半から確認されていた日本の守備の問題点が凝縮されたハリルへの警笛のようなものだったように思われます。


【日本の課題が凝縮された失点シーン】
失点1122-1

局面は終盤、パワープレー気味の攻撃に切り替えたサウジのロングボールから



失点1122-2

これをこの日、空中戦で無双していた吉田が跳ね返す。

と、同時に日本はDFラインを押し上げてセカンドを高い位置で回収しいきたいところ。

ところが・・・・



失点1122-3
ピクリとも押し上げないDFライン!


2枚上の画像、最初のロングボールを跳ね返した位置と比べても1センチも押し上げられていません。

これだとただのベタ引き守備でセカンド拾われてのロングボール地獄になるぞ~





失点1122-4

ほらねー、SHの本田がここまで落ちてきたらセカンド拾えませんって



失点1122-5

その必然として波状攻撃を受ける日本。
そして↑ここでも中盤4枚の連動性が皆無なので、山口と長谷部のボランチ2枚がディアゴナーレを作れず並列に並んでる状態。




失点1122-6

やっぱり中盤4枚が1本のロープで繋がってたらボールと逆サイドのボランチ&SHはここまで絞ってきて欲しいですよね




失点1122-7
ほーら、真ん中を真っ二つに割られたー!

ドリブルでボランチの間割られてバイタル侵入されたら守りきるのは厳しいですよ
(スルーパスを裏に通されて失点)


失点を振り返ってみると「押し上げてコンパクトに出来ない最終ライン」「連動性が皆無な中盤」という日本の課題がモロに露呈した形になっています。



<今だからこそ敢えて"ハリルのサッカーは世界で勝てるのか?"を問うべきだ>
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最終予選も半分を消化し日本は3勝1分1敗の勝ち点10で2位。

結局初戦のUAEで躓いたと言っても首位のサウジがこのレベルだったり、オーストラリアがタイに勝ち点を落としたりで終わってみれば順当な順位に落ち着くのがこの総当り戦というフォーマットなんですよね。

この5試合を振り返るとハリルのサッカー哲学というものも少しづつ分かってきたのではないでしょうか。

その日の相手、自分達が置かれた状況からゲームプランを導き出し、そこに最適なメンバーをチョイスする。
誰がエースで誰と誰だとベストメンバーという概念は多分この監督にはないはずなので日本のマスコミやファンが好むその手の話題は本質的には無意味だと内心鼻で笑っている事でしょう。


ハリル「私は毎回このチームの強みは組織だと言っている。もちろん、何人かの選手はトップパフォーマンスではない。ただ、私は躊躇なくより良い選手を選んでプレーさせた。全員をリスペクトしていて、私は「スター選手はチームだ」と言っている。」

「私はずっとこのやり方でやっている。今日はグループを見せてくれた。ひとつのチームは11人でできているわけではない。
16〜18人、それ以上の人数で決まるものだ。各自が先発を目指した競争がある。私はこういうやり方でやっていく。」



UAE戦後にはかなり騒がしかった周囲もだいぶ沈静化されてきました。
しかし、だからこそ今、敢えて問いたい。

「ハリルのサッカーは世界で勝てるのか?」


確かに日本の戦い方の幅はプランBを持たずに惨敗したザックJAPANより確実に広がっています。
その意味では前回のアンチテーゼに充分応えていると言えるでしょう。

しかし、あらゆる事態を想定して「事故」を起こさない準備の仕方は、どちらかと言うと強者が躓かない為のものではないでしょうか。


過去のサッカーの歴史を振り返ってみてもW杯で日本がアップセットを起こすとしたら一局集中型のスタイルによる一点突破しかないと思います。

そのスタイルがハマれば突き抜けるし、ハマらなければ何も出来ずに敗退・・・・これが弱者のあるべき姿だと思うのです。


ザックの4年間はハマった時の躍動感と打つ手が無い時の絶望感の落差が大きく、
肝心の本番の結果がトラウマになっているのは分かりますが、その経過と選択までが全て誤りだったのかどうかを誰も検証していません。


ハリルJAPANがこのままいくと恐らく本大会では悪いなりにもザックJAPANよりはしぶとく勝ち点を稼ぐ一方、
ハマったとしてもザックJAPANほどの確変は望めないだろうな・・・というのが今から透けて見えるのです。


忘れてはならないのは、我々はアジアを戦いながら同時に「世界も見据えなければならない」という視点だと思う次第。













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「俺達の」でも「タテに速い」でも無く「結果を求めるサッカー」の真価を問う~豪州×日本~

1015表紙
<「俺達の」でも「タテに速い」でも無く「結果を求めるサッカー」の真価を問う>
~オーストラリア×日本~


アジア最終予選シリーズ第4弾はアウェイの豪州戦です。
この試合の「勝ち点1」という結果をどう見るか?

最終予選を目の前の試合を1つづつ勝っていく「短期的」な戦いの積み重ねと考えている人は
試合前の日本の順位と勝ち点からそれこそマスコミ主導型の「絶対に負けられない戦い」で勝ち点2を落としたとなるでしょう。

一方で10試合トータルで最終的に2位以内(最悪3位)に入る「長期戦」のリーグと見れば
今予選の中でも最も勝ち点を取るのが厳しいこのカードは試合前から勝ち点1で御の字という構えでいたはずです。


しかし視点を更に広げてW杯本戦で結果を残す、というところから逆算した「残り1年半スパン」で捉えるとどうでしょうか。
この最終予選という真剣勝負の場で世界と戦うチーム力のベースを作っておかないと
結局またアジアと世界との差に絶望させられるだけという繰り返しになってしまいます。

故に自分としてはこの試合は最悪「勝ち点0」でもOK(それでも最終的に2位は充分射程圏内)
但し、それは内容を伴った上での勝ち点0である事。

ここまでの3試合、アジア相手に散々腰の引けた戦いを見せられてこのまま行ったら予選が終わる頃には
世界どころかアジアでもどれだけ退行した位置にいるのかとかなり絶望的な思いをさせられているので、
今一度勇気を持って豪州相手に打ち負けての勝ち点0であれば長期的に見れば大きな収穫になると思っていたからです。


ただ、結論から言うとハリルはこれまでと同じように「結果」を取りに行って
「勝ち点1」という結果を持ち帰ったのですからそこはプロとして正当に評価されるべきでしょう。
あのサッカーで挑んで負けていたら何も残らない悲惨な状況でしたが
とにもかくにも一番厳しい試合で得た虎の子の勝ち点1は最後に大きな意味を持ってくる可能性もあります。

マスコミのハリルに対する風当たりもかなり厳しくなってきましたが
好意的に観るのであれば"あのサッカー"こそがハリルが本来得意とするスタイルだったのかもしれません。

これまでは日本相手にどこも引いて来るのでボールを持たされる中、
最大限カウンターのリスクを排除して戦うハリルからすると不得意な土俵を強いられていましたが、
オーストラリアは今予選で初めて日本から「相手にボールを持たせる」という戦い方の選択肢が生まれた相手でした。


では仮にこの試合をハリルの真骨頂が発揮された、と考えた時に果たして世界相手に結果を残しうるサッカーだったのかどうか-
今回はそこら辺にも焦点を当てつつ、豪州戦から見えたハリルの手腕と日本の現在地を探っていきましょう。


<本田1トップに漂う岡田JAPAN臭>

日本豪州スタメン1015

まずはオーストラリアの布陣から。まさかの4-3-1-2です。
この布陣は中盤の4枚で絶対的なポゼッションが確保出来るという自信が無いとなかなか運用が難しいシステム。

両サイドの幅を作るのがSBだけなので押し上げるだけの時間を作ると共にSBが常時上がっていてもボールを失う事は無い、という強気の姿勢が求められるからですね。

世界では過去アンチェロッティのミランなどが代表例ですが、
やはりピルロ、セードルフを中心とした中盤のポゼッション力とカフーの常人離れした攻め上がりが記憶に残るチームでした。


対するハリルはこの大一番に彼の本質的なサッカー観の一面を除かせる決断を下していました。
岡崎が欠場という自体に攻撃陣の配置は事前からかなり注目されていましたが、その回答は「本田の1トップ」
トップ下には香川を復帰させて両ワイドの大久保&松井ならぬ小林と原口が馬車馬のように走り回るという・・・
紛れも無き岡田JAPANのリバイバル!

要は「リスクは冒せない」「ボールは相手に渡して結果を持ち帰る」という意思がこのスタメンに表われています。

前回イラク戦後のレビューでは加茂JAPANを例に日本サッカーの時計は20年巻き戻ったと言いましたが
ハリルは僅か5日でその時計を進め6年前の時点にまで戻してきました。ああ良かった、良かった!

ハリルにとっては未開のアジアサッカーという舞台で
日本がかつて見せてきた負の遺産を次々と引っ張り出してきては四苦八苦している姿に既視感が拭えません。

あれ・・?確かあのサッカーに限界を感じてザックを招聘してきたんじゃなかったっけ・・・?
(いや、あれが並行世界の出来事だった可能性や我々日本サッカーファンが繰り返される8年をエンドレスに彷徨っている可能性も微レ存。これをエンドレスエイトと名付け・・ry)




<ゲームプラン通りの先制点>
sensei10152.jpg


試合は序盤からハリルの狙い通りオーストリアがボールを握って日本がそれを待ち受けるという関係がハッキリとピッチ上で具現化されました。

我々からすると中盤を省略してボンボン蹴られた方が遥かに嫌だったはずですが目下オーストラリアはポゼッションスタイルへ移行中という事で、ある意味お互いが半周してそれぞれのスタイルが噛み合う構図になっていたのです。


オーストラリアは攻撃時、自陣から丁寧につなぐビルドアップで特にキーになっていたのが3センターの3枚(ヒゲ、ハゲ、パイナップル頭)。
日本の守備は序盤、本田が相手の2CBの片方を切って方向を限定し、前線に入れてくるクサビと3センターに預けるタテパスから本格的にプレッシャーをかけてインターセプト⇒ショートカウンターというゲームプランでした。

オーストラリアのポゼッションの中心である3センターを逆に日本のカウンターの起点にしてやろうというのがハリルの目論みだったようで、この3枚にはボランチの山口&長谷部だけでなくSHとトップ下の香川もパスコースをケアする姿勢が序盤から徹底されていました。


攻撃面でもこれまでは奪ってマイボールにしたまではいいけど、一体どうやって崩していくんだ問題で結局リスク排除の外⇒外⇒クロス量産に終わっていましたが、この日は奪った瞬間に明らかな目標物が日本の最前線に立っています。

これで余計な迷いが消えたのか長谷部などは奪ったボールをシンプルに本田に通すタテパスを連発、役割が整理された事で心も整えられた模様。

そして一番重要なのはこのタテパスが本田で収まる事!(ここ重要)

ここ3試合は相手にドン引きされる中でポゼッションしながらDFにベッタリ付かれている状態でタテパスを受ける受ける事が多かった本田ですが1トップになり岡田JAPANの頃の感覚が蘇ったのか、攻守のトランジションの瞬間にスッと引いてきてカウンターの1本目を納める動きが非常に利いていました。

では「狙い通り!」と言わんばかりのハリル会心の先制点を検証していきましょう。


【日本の先制点】
日本得点1014-1

局面はオーストラリアのポゼッションに対して日本がプレッシングを行っているところ。
相手の左SBが持ったボールに対して小林がプレスバックして挟みに行き、トップ下の香川もボールサイドにスライドして網を張っています。

これでパスコースのなくなったオーストラリアはCBまでバックパス


日本得点1014-2

CBが持ったところで相手のキーマンの1人であるアンカーのジュディナックを香川がケア
徹底してここにはボールを出させません。



日本得点1014-3

オーストラリアは中盤にタテパスを出せないのでCBからCBへの横パスしかコースが無い

するとこの横パスに合わせて今度はCHのムーイをケアする為に横スライドする香川。
ボールが横に動く度に3センターへのタテパスを横スライドしながら消し続けるトップ下の守備タスクはかなりの負担だったはず



日本得点1014-4

CBからムーイに入れて来たタテパスを狙い通り香川と原口で挟んでボール奪取⇒ショートカウンター発動!



日本得点1014-5

長谷部に預けたボールは迷い無く本田へ。
そして本田のキープ力を信じて原口と小林の両ワイドが馬車馬のように前線へ飛び出していくこの懐かしい感じ(笑)

まあ、1度成功しているモデルだしアジアでは尚更・・・って感じもしますが、とにもかくにもハリルのこの博打は開始早々に結果を出した事だけは間違いありません。



<ゾーンディフェンスの強み>

このように序盤から日本の守備はオーストリア相手に明らかにハマっていました。

4-4-2と4-4-1-1を使い分けながら前線がパスコースを限定して後ろがインターセプトを狙う形で面白いようにボールが奪えたのです。
(だってオージーったら明らかに下手なのに意地になって繋いできてくれるんやもん・・・)

やはり3ラインがコンパクトな状態で組織的なゾーンディフェンスが機能した時の日本は強い。(確信)
行き過ぎず、かといって引き過ぎずという絶妙なエリアで網を張れていたと思います。

では実際の試合から何故日本の守備があれだけ機能し、面白いようにカウンターが取れたのかをロジカルに検証していきましょう。


【3ラインで守備をする(ゾーン)】
右小林守備1014-1

局面はオーストラリアのCBがボールを運んでいるところにまずファーストディフェンスとして本田がパスコースを消しながら寄せる。
本田の寄せ方で逆サイドへの展開は無くなったので日本は全体をボールサイドに寄せながら網を張れます。

ポイントは右SH小林の背後をSBのスミスが追い越して走り出していますが、これを誰が捕まえるのか?という話。
マンマークで守るなら「人ありき」なので小林がそのまま付いて後退するのがセオリー。

しかしゾーンで守るなら小林がSBに付いて行ってしまうとこのエリアに誰も人がいなくなってしまいます。
あくまでゾーンでは「ボールありき」なので小林は自分のゾーンに残ったままポジショニングによってパスコースを消しつつ、背後は後ろの酒井ゴートクに受け渡せばいいのです。




右小林守備1014-2

オーストラリアが入れて来たタテパスに対して背後を狙うSBスミス
しかし日本もゴートクがカバーリングのポジションを取って裏はケア出来ているので・・・




右小林守備1014-3
ハイ、取れた~。

小林は別に必死こいて下がってくる必要ナシ!


このそれぞれが自分のゾーンを守ったまま、即ちチーム全体で3ラインを保ったまま守備をするゾーンディフェンスの利点は
何と言っても奪った後のショートカウンターまでが理論的に逆算出来るところにあります。

どういう事かと言うと口で説明するより見てもらった方が早いので↓

【ゾーンで奪えれば理論的にカウンターが成立する件】
奪ってSB裏1014-1

こちらも局面はさっきと同じように小林の背後をSBのスミスが狙っているという図式ですね。

小林はこれに付いて行って下がるのではなく、むしろ自分の持ち場を守る事でグラウンダーのパスコースを消しています。

じゃあ小林の頭上を越す浮き球で裏を取ればいいじゃないかというと・・・



奪ってSB裏1014-2

当然、この浮き球は後ろの担当になるゴートクが狙っています。

で、ここがミソで小林を下げる事なくボールを回収出来たら、オーストラリアはリスクを負ってSBを上げてきている訳ですから
今度は持ち場を守っていた小林のゾーンが自然とオープンスペースになっているのが↑の画像でも分かるかと



奪ってSB裏1014-3

奪った瞬間に自然とSB裏でカウンターの起点が出来るので慌ててオーストラリアのCBが寄せると
今度は大外でトップ下の香川が空いちゃうよ~という極めてロジカルなショートカウンター

これがゾーンディフェンスの強みです。


酒井高徳『前半は上手く守れていたと思う。悠くん(小林)とも話したんですけど下がってくるのではなくて敵のボランチやCBの方をケアしてもらっていたんです。それが上手くハマって前半は非常に良い手応えでした』



<左右非対称のイビツな守備>

ところがこのゾーンディフェンス、右サイドで小林と酒井高徳の連携が良好だったのに対し左サイドは少し様子が違った模様。

【左サイドの守備】
香川低い1014-5

局面は先ほどと同じようにオーストラリアのビルドアップですが、明らかに右SBマクゴーワンの上がりに対して
日本の左サイドの守備はSHの原口がマンマークで付いて下がって5バック化してるんですよね。

で、原口がいて欲しいエリアが無人になってしまうので香川がそこに降りてきて守備をしている・・・と。

この守備だと何が苦しいかって仮にボールを奪ったとしても・・・



香川低い1014-2

ボール回収地点は低くなるし、いて欲しいSB裏のスペースには当然原口はいません。(SB化してるので)




香川低い1014-4
さすがの香川もこれはキツイでしょ

ハッキリ言ってカウンターどころではない⇒苦し紛れにロングボールを蹴って⇒ソッコー回収されてオージーの二次攻撃⇒守りっぱなし

先ほどの右サイドの守備と比べて明らかに左サイドの守備は異質。
日本は右と左で守備の方法が違うという極めてアンバランスな状態になっていました。

もちろんチームとして何か狙いがあってそうしているならまだ議論の余地もありますが
試合後の選手コメントを見てもどうやらかなりそれも怪しい様子。

槙野『僕に求められたのは、原口の守備のオーガナイズをすること。サイドバックというより真ん中への意識が高かった』

槙野『本当なら原口をもう少し高い位置でプレーさせたかったんですけど、「ヘルタでもこういう仕事をしている」と言っていたので、普段のプレーを存分に出させるためにワイドの選手を彼に見させて、中を僕が潰そうと』


え・・・?


お前の判断なの?www



とにかく前半からこの左右非対称のアンバランスな守備が気になって仕方なかったのでしばらくベンチワークに注目して見ていたんですが、オージーの右SBが高い位置を取ってくるとハリルはしきりにそれを気にして「誰か付け!」みたいなジェスチャーを繰り返していたんですね。

右SB気になる

で、仕方なく原口が付いていく形になって、それを指揮官が目の前で見ていたのだからこれで良し、としていたのかもしれませんが・・・。


とにかく、この左サイド限定マンツーマンのせいで日本は5バックになり、香川がそこに降りて5-4-1へ。
日本が3ラインで理想的な守備をしていたのは実質立ち上がりの15分ぐらいなもので以降は自陣ベタ引きのひたすら耐えるだけの展開となっていきます。

試合を観ながらさすがにハリルもハーフタイムを挟んでこの左サイドの守備を修正してくるだろう・・・と思ってたら驚愕の後半が待っていました。

ハーフタイムの指示の一部を試合後、右サイドの酒井ゴートクがインタビューで語ってくれています。

酒井『後半は悠くんを少し後ろに下げすぎちゃった部分はあった。後半に監督から、向こうのSBに悠くんが付くようにという指示が出てより外に意識をと切り替えたところで失点してしまいました。そこは指示どおりにやらなきゃいけないのか、あるいは自分たちで考えて行動するのかしっかり判断したいです』



え・・・・?


むしろ右サイドをマンツーに修正するんだwww



これによって何が起きたのかはご存知の後半開始早々の失点場面が明らかにしてくれます。

【日本の失点シーン検証】
日本失点1015-1

局面は後半の立ち上がり、オーストラリアのビルドアップです。

前半の小林であればここは中盤の高さのまま守備をするのでCHのムーイをケアしつつ、背中で外を切るようなゾーンのポジションを取るはずですが後半は・・・



日本失点1015-2

左SBのスミスが上がって来るとハーフタイムの指示もあり外をケアする小林

結果、ムーイはフリーでボールを受けられる

失点要因①右サイドの守備を前半と変えてしまう



日本失点1015-3

フリーのムーイから再びジュディナックにボールが渡ると長谷部がこれにアプローチ

しかしSHの小林は外をケアしているのでバイタルへのパスコースは空いており、
ボランチ山口のスライドもまだ間に合っていないので実質バイタルエリアをケア出来る選手が不在。

失点要因②長谷部の不用意なアプローチ


日本失点1014-4

ジュディナックに狙いすまされたクサビをバイタルに入れるとここにSBのゴートクが無理目のアプローチ
基本それまでゾーンで守備をしてきた(川崎でも?)小林は背後を取るスミスには付ききれておらず、実質バイタルに入れられた瞬間にゴートクは1対2の数的不利であった

失点要因③高徳ステイ出来ず


日本失点1014-5

ワンタッチでスミスにはたかれてアーリークロスを上げられる場面。

これを観るとついつい「うわー!やべー!」って思ってしまう人は多いかと思いますがこの段階に到ってもまだまだ失点率はかなり低い場面というのがアジアサッカーの実情。

ここから上がるクロスの精度、中で合わせる人間の決定力を考えると失点率は10%以下、
要はアジアではこの程度のチャンスシーンでは10回に1回得点できるかどうかってとこが関の山なのでまだいくらでも失点を防ぐ手立てはあります。



日本失点1014-6

で、実際にクロスが出されて中のユリッチにピタリと合ってしまった段階。

それでもまだまだ大丈夫。
このシーン、受けるユリッチの⇒とファーストタッチで置きたい位置との矢印が90度違う方向なので
身体の流れはタテに行きつつボールは正面に押し出す感じで止めないとゴールに対して理想的なシュート角度を確保出来ません。

まあ、メッシとかだと難なくビタ止めから1、2でドン!と打ってきますけど簡単にやってるようで求められる技術水準は高いのです。



日本失点1014-7

・・・で、原口が後ろから倒した瞬間がコチラ。

ほら、やっぱりファーストタッチを外に流して膨らんでしまっているでしょ?

これだと仮に原口が戻ってきてなかったとしても腰が回りきらずにサイドネットか、
枠内に打ち込めたとして角度的に西川の正面で事なきを得ていた場面だと思うんですけどね。


理想的なのは原口が内側から外に追い込むようなコースで戻って飛び込まずに我慢してくれればベストでしたが、
あの「俺が奪う!」という勝ち気な守備が彼の良さでもあるので難しいところではあります。

ただこれまでの4失点がPK2、FK2なのでもう少し我慢強く守れば意外とサッカーは失点しないものだぞ・・・という老獪さは欲しいですよね。




<「タテに速いサッカー」はどこに行った?>
20160929-00000077-dal-000-view.jpg


1-0でリードしている段階であれば5-4-1のドン引き岡田JAPANだろうと耐え切れば勝ち点3という状況でしたが、
1-1になった事でその後のハリルの動きがこの試合の意図を明確にしてくれました。

指揮官がとった選択は・・・「現状維持」
当然です、この試合で欲しいのは勝ち点1という結果なのですから。

ハリル「オーストラリアはコーナーキックかFKからしか点が取れないので、そこの管理をする選手が必要だった。本田(圭佑)と小林(悠)には、FKでの正確な(対応の)役割を与えていた。齋藤や浅野だと経験がない分、プレッシャーに負ける不安があった。オーストラリアはアジアチャピオンなので、それほど多くのリスクは取れない。


セットプレーでの不安があるので本田と小林は変えられない。では香川はどうか?

ハッキリ言って岡田JAPANでその岡田監督自身が最後にメンバーから香川を外したように
このサッカーで香川に輝けというのはかなりの無茶振りだったように思います。

しかしハリルは香川を残した。
イラク戦であれだけのパフォーマンスを見せた清武を切ってでも香川を起用したのは指揮官からの信頼の厚さと2列目の序列がハッキリした事を表しています。


徹頭徹尾、リスクを排除しつつ「結果」のみを追い求めたサッカーで得た虎の子の勝ち点1。
これをどう評価すべきでしょうか?

まず、このサッカーこそハリルの真骨頂であり、弱者のサッカーはW杯本大会でこそ真価を発揮するであろうという見方について。

個人的には甚だ疑問です。
一つハッキリさせておきたいのはオーストラリア戦で日本が見せたサッカーは決して「タテに速いサッカー」でも何でもないという事。

前半15分までのサッカーであればボールは相手に渡してもその実、主導権を握っていたのは日本という意味で弱者が強者を負かしうるサッカーをしていたと言えるでしょう。
奪った瞬間は構造的にタテに速いカウンターが出せるようになっていますから。

しかし残りの75分見せていたサッカーはただの「引き篭もり」であって、後ろにかけている枚数の多さとボール回収地点から逆算すればどう考えても「タテに速い攻撃」は望むべくもありません。


日頃、ハリルがJリーグへの物足りなさを吐露する時に基準として持ち出す「世界基準のオーソドックス」に照らすのであれば、
本気でラングニックを発生とする「タテに速いサッカーの最先端」を目指すというのであれば、
相手の動きに引っ張られて5バック化するようでは話にならないし、右サイドにボールがある時の左SBのポジショニングはセンターサークルまで絞ってこなければいけないはず。


本当にフィールドの半分に10人全員が密集するインテンシティを日本代表に求める気概はあるのか?


え・・・?逆サイドにサイドチェンジ出されてしまったらどうするのかって?


だから絶対に出させない為の圧倒的密度とインテンシティがマストで求められる訳です。


普段、Jリーグの守備を「ズルズル下がるだけ」とハリルは言います。「もっと勇気を持て」と。
そこは完全に同意なのですが、しかしハリルが代表で見せているサッカーは勇気の欠落したサッカーそのものではないでしょうか。


奇しくも現在代表を苦しめている海外組のレギュラー落ち問題。
これはチャンピオンズリーグ等の世界最高峰の戦いに必要とされるインテンシティが日本人には足りない、と暗に世界からNOを突きつけられていると捉える事も出来ます。


確かに日本が世界で戦っていく方法論として、それが必ずしもポゼッションである必要はないでしょう。
近年は所謂「タテに速いサッカー」をしているチームが結果を残しているトレンドもあります。

しかしAマドリーやレスターには低い位置で回収したボールを個で運べるタレントがいる事、
今年のCLとEUROの優勝チームには奇しくもCロナウドというカウンターマスターがいた事、
これらを鑑みても尚、日本代表が取るべき方法論としてそれを選ぶというのならそのロジックも問いたいところ。


フットボールに正解はありません。

日本が取るべき理想的なサッカーの方法論もきっとそうでしょう。


しかし、少なくとも勇気の無い者にそれを探し当てる資格が無い事もまた確かなのではないだろうか-











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ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか~日本×イラク~

表紙1003
<ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか
~日本×イラク~


「ホタルゥゥゥ~!!」

ドーハの悲劇から23年-
イラク相手に劇的な逆転勝利を収めた日本代表

色々と示唆に富む試合だったので今回はこのイラク戦を検証していきたいと思います。


まずはスタメン




・・・はい、ご存知の通りです(手抜きかよ!)


ポイントは遂に10番香川が外れて代わりに清武がトップ下に入った事でしょうね。

世間ではこれをもって「世代交代」やら「香川限界論」が賑やかですがハリル自身も言っているように
単なるコンディションの比較で起用を決めたに過ぎないのでこれをもって序列が変わったとは言い難いと思います。

ハリル『清武は(所属クラブで)プレー時間が短い現状にあったが、(香川)真司より1日半早く帰国したので、そこのアドバンテージがあった。この時間が、私にとって重要だった』


要は選んだ選手の中で現状のベストを選択した、という事なのでしょう。


<驚きのゲームプランと間延びJAPAN>

さて、まず取り上げたいのがこの試合で日本が選択したゲームプランです。

序盤こそイラクの出だしの勢いをいなす為にシンプルにロングボールを蹴っていたのかと思っていましたが
そのまま前半の45分間を蹴り続けていたのには驚きを通り越して呆れてしまいました。


日本がロングボールを蹴って喜ぶのはむしろイラクの方でしょう。
相手が恐れているのは日本の組織力と技術の高さですが自分達からその武器が最も活きない戦い方を選択し
フィジカル勝負に持ち込みたいイラクの土俵にわざわざ上がっていってしまったのですから。


柏木「(縦に速い攻撃をするのは)チームとして決めていました。ただ、後方からのパスが多くなってしまった」


イラクの監督が序盤から「もっと前から行け!」としきりに叫んでいたのはこの日の日本が前プレをかければ簡単にロングボールを蹴ってくれるからです。



では何故ハリルはこの戦い方を選択したのでしょうか?

これは恐らく初戦の黒星が思った以上に利いている、という事でしょう。
この試合前も負けたら解任という噂がマスコミからしきりに持ち出されていましたが
現在のチームと監督のメンタル状況が「自分達の良さを出して勝ち切る」よりも「負けたくない」「つなぎをロストした時に変なカウンターを受けたくない」という方に流れていったのだと思います。

確かにロングボールを蹴っている以上、自陣で奪われるリスクはなくなります。
その代わり前半の日本はほとんどチャンスらしいチャンスを作れていません。

得点機と言えるのはロングボールのセカンドをたまたま高い位置で拾えた清武のシュートとショートカウンターからの得点シーンの2つぐらい。


原口の得点シーンは彼のプレスバックでボールを奪った瞬間の原口、本田、岡崎、清武の海外組が見せたトランジションの質の高さが光りました。

誰1人足を止めずに4枚がゴールに向かい、その過程で技術的なミスが一つも無かったのがゴールに結び付いておりアジアのレベルを超えた欧州クラスのカウンターだったと思います。
(唯一本田のパスを出すタイミングがやや遅れてオフサイ気味だったけど)


ただ2回の決定機で1点取れたのは結果論(行幸)に過ぎず、マイボールを自ら放棄するような遅攻ならぬ稚攻ばかりが目立っていました。

更にこのタテポンJAPANのデメリットは攻撃だけでなく守備にも及びます。
攻撃がロングボールで終わるという事は失った後の守備陣形が充分でなく全体的に縦に間延びしている状態になるからです。

実際の試合から日本の守備を検証してみましょう。


【間延びした日本の陣形】
間延び1008-3

局面は日本がイラク陣内で失ったボールにすかさずプレスをかけていくところ。

ファーストディフェンスの原口がイラクの攻撃方向を限定し、左サイドに追い込んでいます。
日本はボールを失った左サイドで数的優位を作ってこのサイドから出さずに奪いきりたいところ。

何故なら・・・


間延び1008-2

このプレス網を抜けられるとボランチ脇の空いているバイタルエリアを使われてしまうから

つまりボールサイドに人数を割いてこの弱点となるエリアを「使わせなければ」日本の勝ち。
プレス網を抜けられてしまうと日本の負けという守備ですね。

ただお互いがロングボール中心の蹴り合いの展開になっている関係で日本の陣形がやや間延びしているのが気になります。
イラクにここからロングボールを蹴らせると・・・



間延び1008-4

吉田が背後を気にして更に深さを取るのでイラクのFWをボランチの長谷部が下がって受け取る形に。

結果的に柏木の矢印がボールサイドに向かって前向きに、長谷部が後ろ向きになっているのでボランチ同士の距離も離れて
このロングボールを跳ね返したセカンドを拾うエリアに赤丸で囲ったイラクの2ボランチしか人がいない状態になっています。



間延び1008-5

本来であれば吉田がボールサイドのCB(森重)の高さに合わせてイラクの2トップをCBが見て長谷部にセカンドを拾わせる並びにしたかったところ。




間延び1008-7

ほらね、この間延びした陣形だとイラクのボランチにセカンド拾われちゃうでしょ?



間延び1008-6

で、空いたバイタルを使われてミドルシュート・・・と。


更にこの試合でも特にハリルが「デュエル!デュエル!」を強調していただけあって、
チャレンジ&カバーが怪しい戦術レベルの選手達が間延びした陣形の中で中途半端にボールにだけは強く行く意識を持っているもんだから性質の悪い話に。


【日本の特攻デュエル】
ディアゴナ1008-1

局面は日本陣内での守備の切り替え。失ったボールに対してすぐに柏木と原口が寄せてイラクにバックパスをさせると・・・



ディアゴナ1008-2
問題点①ディアゴナーレが無い

日本の特攻デュエル守備はこの下げられたボールにネコまっしぐらで向かってしまうので簡単に間を通されてしまうんですよね



ディアゴナ1008-3
問題点②バックパスに対する後ろの押し上げが甘い

せっかく相手にバックパスをさせたのだから吉田らの最終ラインを機敏に押し上げれば
ボランチの長谷部はもう一つ前で守備が出来て全体がコンパクトになったはず



ディアゴナ1008-4

さりとて特攻デュエルの結果は間を通され・・・・




ディアゴナ1008-5

逆サイドに展開されてスライドを強いられるしんどい展開。


結局マイボールは蹴り合ってしまうわ、守備は特攻だわで試合運びに全く安定感がありません。




<稚拙だったゲーム運びと選手起用>
2016-09-01-japan-halilhodzic_1puj8ealny1gw1p4onn800kck8.jpg

日本は僥倖の先制点を取った事であとはホームチームが試合を落ち着かせて焦って出てきたイラクの隙を付けばいいだけという理想的な状況が出来上がっていました。

にも関わらず「縦に早く(失う)」サッカーでみすみすイラクにチャンスを与え続けるのです。


【日本の稚拙なゲーム運び】
リスク1008-1

局面は酒井ゴートクが中盤でインターセプトを成功させたところですが試合のスコアと時間帯に注目。

1-0リードで前半ロスタイム。
やる事はこのスコアのままハーフタイムを迎えるだけです。

しかしゴートクはこのボールを中盤にパスで預けると・・・



リスク1008-2

いやーこの状況でSBがリスクを負って出て行って攻撃をタテに加速させる必要あるか?

しかも清武へのパスもズレていてボール状況も微妙⇒と思ったらやっぱり失ってイラクにタテポンされる




リスク1008-3

SBが上がっているので当然最終ラインは3枚+1ボラの不安定な状態

でも原口が機転を利かせてゴートクが上がったスペースをカバーしていた。ナイス判断。




リスク1008-4

でもやっぱり原口は守備が専門の選手じゃないからここでもボールに食いついちゃうんだよねー

(頼む、ここではもう相手の攻撃を遅らせるだけでいんだ。それで前半終わるから・・・)



リスク1008-5

あわや前半ロスタイムに追いつかれてハーフタイムでしたよ。


↑の場面はイラクの(アジアの)決定力に助けられて事なきを得ましたが
こういう稚拙なゲーム運びのA級ミスは世界相手だと確実に手痛いしっぺ返しを食らう事はザックJAPAN時代にも散々証明されています。


まあ、こんな感じなんで当然後半もバタバタとした展開を繰り返し、
ロングボールが増える⇒セカンドボールを巡る身体のぶつけ合いが増える⇒フィジカルで不利な日本のファウルが増える
の三段論法でいらないファウルからFKで同点弾。当然の帰結ですね。


そもそもこれだけ間延びした中盤でボールを狩ろうと思ったら断然柏木より山口蛍なんですが
投入が「少し遅れた」(ハリル)せいで日本の中盤が持ち堪えられずに失点してしまいました。

そのせいで1-1に追いつかれてから攻撃の舵取り役を下げて守備の選手を入れるというチグハグな交代に。


では今予選、初登場となった柏木には何が期待されての起用だったのでしょうか?
勿論ビルドアップの際の配球ですよね。

【日本のビルドアップ時の配置】
日本ビルド布陣1008

日本はイラクが自陣でブロックを作った時の遅攻の場合、両SBを上げて柏木がCB近くに落ち、配球役を担います。

序盤からこの形で両サイド目がけた対角パスをしきりに狙っていましたが
柏木のふんわりサイドチェンジは精度が悪く、しかも両サイドで受けるのがSBのW酒井では縦への突破はあまり望めません。

そもそも柏木が浦和で担っている攻撃の役割は外⇒外のサイドチェンジというよりは
バイタルへのタテパスやグラウンダーのパス回しが出来る距離感でのワンタッチフリックなど短いレンジのパスと崩しの連続性ではないでしょうか?

タテポンメインの間延びしたサッカーで長いボールでサイドを変えさせる役目として柏木という抜擢は選手起用のチグハグさを感じずにはいられません。



<"本田の時代は終わった"のか?>
honda10032.jpg

巷ではこのイラク戦を受けて清武、原口の躍動と本田、香川の限界説⇒『世代交代待望論』が根強いですが果たして本当にそうでしょうか?


その要因について考える上で続いて日本の攻撃を検証していきたいと思います。


この試合での日本の攻め筋はとにかく徹底して外⇒外で中への打ち込みは皆無といってよい状態でした。
何故なら中に打ち込んでロストした場合のカウンターが怖いから。



【ハリルJAPANの外⇒外】
間受け出さない1008-1

局面は左から右へ攻める日本のビルドアップ。本田が上手く相手ボランチの脇に入り込んで間受けを狙う得意の形。

SBの酒井が高い位置を取っているのと背後のDFの関係を首を振って確認しているので、間違いなく本田のビジョンには今⇒で書かれている中⇒外ルートとDFの寄せが甘ければ前を向いて裏へのスルーパスor清武とのワンツー等が頭に描かれているはず



間受け出さない1008-2

クルッと身体の向きを変えて逆サイドを見るベーハセ

え・・・?出さないの??

清武も出せって手を使って指示してるし本田も「マジかよ!?」みたいなリアクション




間受け出さない1008-3

あーCBに下げて逆サイへの対角にしちゃったよ・・・⇒吉田の40Mサイドチェンジは精度が低くて直接タッチラインを割る

これでマイボールがみすみすイラクのスローインから再開ですか。
まあ、確かにカウンターは受けずに済んだけどね!


続いてもう一つ


間受け1008-1

こちらもCB森重がフリーで運んでいるタイミングで本田が中、酒井が外の連動
イラクの左SBに対して2対1を作っているので今タテパスを打ち込まれるとイラクはアプローチ出来ない

よし!グランダーのタテパスだ!フンメルス!



間受け1008-2

え?ここでも外⇒外なの!?ビビってるの?



間受け出さない1008-4
何すか?この腰の引けたチキンサッカーは?

あの状況からGKへのバックパスって嘘でしょ?

これで「機能しない本田」とか本気ですか?


いや、確かに左サイドはこの外⇒外でもいいと思いますよ。左SHが原口だから。


【左サイドの外⇒外】
左原口1008-1

CB⇒CB⇒SB⇒SHというお手本のような外⇒外ルート




左原口1008-2

原口得意のファーストタッチでタテに外して・・・




左原口1008-3

そのままスピードに乗って仕掛けて大外の逆サイでは本田がゴール前へ
この形なら本田もセカンドトップとして機能するし左サイドの攻め筋は配置した駒と合致していたと思います。


実際、後半1-1に追いつかれて逃げ切りを図るイラクが5-4-1の守備に移行してからは
日本の攻め筋はこの左サイドの外⇒外しかなく実質「戦術原口」のような状態になっていました。


でもこの原口の単騎突破はアジアでは通用しても世界では確実に潰される事は分かっているはずなんですよ。
外を有効に使いたいなら一度中に打ち込んで相手の守備ブロックを絞らせる必要があるし、
中を使う為に外、外を使うための中を上手く使い分けていかないと戦術的に整備された守備ブロックなんて絶対崩しきれませんから。


だから本田を置いている右サイドはこういう崩しが必要だったんです↓


【本田を活かす右サイドの攻め筋】
右本田崩し1008-1

局面は右から左へ攻める日本のビルドアップから
SBの酒井が幅を取ってイラクのSHを外に引きつけた事で出来た中央のパスコースに本田が顔を出す

これが「外」をオトリに使った「中」の崩し


右本田崩し1008-2

この日の両チームの布陣を噛み合わせれば相手2ボランチの背後でトップ下の清武はフリーになれる配置になっていたんですが
外⇒外一辺倒の攻めだとその利点が活きていませんでした。

清武(香川)を活かすならやっぱりこの攻め筋、中⇒中でバイタルに落とし・・・



右本田崩し1008-3

相手の守備がギュッと中に絞ったところでワンツーからサイド突破!
中⇒中⇒外のこのルートこそ最後の「外」のスペースを広くしてあるので決定機につながるし、パスで先手を取っているので本田のスピードの無さは問題になりません。

これが左の原口とは違う右の本田を活かす攻め筋ではないでしょうか。


本田「ここに入れば簡単に崩せるのになという場面の意思統一。そこに関しては本当に改善が必要かなと思います。もっと簡単に崩れると思うんですよね。」




vahid-halilhodzicjapan-national-teamjpok_z3vegsuatimb1nybdcd2jlxzs.jpg
<ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか>


ハリル『今までやってきた美しいつなぎは確かに出せなかったが、今回は強い気持ちと勇気でもぎとった勝利だった。』


試合後のコメントを読む限りハリルもこの試合の日本の戦い方が本来の戦い方とは思っていないフシは伺えます。
徹底したリスクの排除、相手の前プレはタテポンで回避し、ブロックを敷かれればカウンターを恐れて中にタテパスを打ち込む事なく外⇒外からの個人突破一辺倒。

この日の日本代表で最も”勇気”に欠けていたのは指揮官のハリルだったのではないでしょうか。


僕はこのイラク戦を見ながらその昔、といってもたかだが20年前の話ですが日本サッカーにとって「W杯出場」が悲願だった頃のアジア予選を思い出していました。

当時、日本サッカーと世界との距離など誰も正しく認識していなかったので宿敵韓国はドイツ、イランイラクなどはアルゼンチンばりの強敵に見えていた時代が確かにそこにあったのです。
(韓国相手にたかだか1点先制したら慌てて5バックでベタ引きを始めるような時代でした)

とりわけ中東勢のカウンターには繰り返し痛い目を見せられていたので日本の中東コンプレックスは根深く
当時の加茂監督は「中央でパスミスすると中東のカウンターが危険だから中央へのタテパスは禁止。サイドならリスクも低くて済む」と公言し、「中央突破禁止令」を敷いていたほど。

しかし世界のサッカーではまさにその時、バイタルエリアを巡る攻防が本格化し、その為の戦術多様化が始まっていた頃だったので衛星放送で食い入るように最先端のサッカーを見ていた中学生の自分は本気で発狂したくなるようなもどかしさをこの国の代表に感じていたものです。


あれから20年-
ハリルがイラク戦で見せたサッカーはまさにあの頃の日本代表そのものです。

何故今更、中東のカウンターにビビって腰の引けた日本代表など見せられなければならないのでしょうか?

イラクに逆転勝ちしたぐらいで精根尽き果てたようなフラフラの指揮官の姿を見ると不安になります。
モウリーニョだったら「君たちは今予選のレギュレーションを今一度よく確認した方が良いのではないか?10試合のリーグ戦で1勝1敗1分のスタートだったとしても突破には何ら問題は無い。だが今日は途中出場の選手が期待に応えてくれたお陰で更に良い状況になったね。それについては非常に満足しているよ(ウインク)」ぐらいケロっと言ってくれたはず。


采配面でもかなりグラついてきた感は否めません。

最後たまたま山口が逆転ゴールを決めた事で帳消しのようになっていますが同点の状況から勝ち点3を目指すカードとして
山口投入はロスタイムまで攻撃面での貢献度は低く、むしろチームの攻撃力を下げる交代になっていた点は見逃すべきではないでしょう。

そのロスタイム弾にしても結局外⇒外の戦術原口をイラクに見透かされて膠着していた状況に業を煮やした選手達が自発的に吉田のパワープレーを決断した副産物。

最後、打つ手が無くなったら結局「吉田のパワープレー頼みかよ」という状況は2014W杯時から何ら手持ちのカードが増えていない事も意味しています。


ゲームプランと選手起用のミスマッチも気になるところ。

外⇒外の攻め筋でいくなら右SHはそれこそ斎藤学で良かったのではないでしょうか。
逆にこの配置で行くなら当然右と左の攻め筋はそれぞれ異なるものにカスタマイズする必要があったのにも関わらずそこが徹底出来ていないせいで右(本田)が機能しない状況を自分達で作り出してしまいました。


最後に。

サポーターが目の前の勝敗に一喜一憂するのはいいですが指揮官がアジア予選ごときの勝敗でチームのスタイルをブラしているようでは世界では絶対に勝てないと断言出来ます。

サッカーでは37本シュートを打ったのに勝てない時もあれば、こんな内容の試合でもロスタイムにシュートが入って勝ててしまう時もあるのです。

「中東の笛」でゴールが取り消されれば「極東の笛」でオフサイドが見逃されもする。


だからこそ最終予選は10試合総当りで戦う事でそういった不確定要素が是正され、最終的にはチームの総合力が順位に反映されるフォーマットになっているのです。

一番危険なのはそういった内容の分析もなく目先の結果に引きずられて自らのスタイルをコロコロ変えてしまう事。


勝ち点3を取れたのだからこのスタイルで今後も行きますか?


今一度冷静になりましょう。


本日の閉めはそんな今の日本サッカー界にピッタリな明言を










『サッカーではリスクを冒さない選択こそが最もリスクの大きい選択となる-』










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