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踏み出した一歩 ~日本☓スペイン~

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<踏み出した一歩 ~日本☓スペイン~


【プロローグ】

日本☓スペインの激闘から遡ること約一ヶ月-


強化合宿の最中、代表監督の森保一は悩んでいた。


森保(くそう…どの新聞を見ても「無能」だ「3敗」だと好き放題書きやがって・・・)

森保(だが実際、スペインは強すぎる・・・。)



森保は前夜、自室で繰り返し見たスペイン代表の残像が頭から離れなかった。

(ていうか…スタメンの中盤3枚がバルサってどういう事よ?もはやそれバルサやん!)


【スペイン代表 スタメン】
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森保の不安通り、スペイン代表の4-3-3で中核を担う中盤3枚はFCバルセロナの選手で占められていた。
ただでさえ上手い選手を揃えていながら連携面でも隙は見当たらない。





森保「いやーバルサ無理!バルサ怖い!」



??「果たしてそうですかね?」




森保「誰だ!?」









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鎌田「だって俺・・・バルサ倒した事あるし」



森保「オイオイ・・・マジかよ大地。ちなみにどうやって倒しか教えてくんね?」



鎌田「いやー、だからフランクフルトではこうして、ここでハメて・・・」



森保「ふむふむ・・・」


(*尚、この物語はフィクション・・・のはずです)








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<スペイン撃破の下敷きはフランクフルトのコピー>

それではスペイン戦のマッチレビューを始めていきましょう。
ですがその前に、まず鎌田の件に触れないわけにはいきません。


昨季、ヨーロッパリーグの準々決勝で鎌田擁するフランクフルトがバルサを撃破するジャイキリを起こし話題になりました。

この試合でMVP級の活躍をし、バルサ撃破の立役者となったのが何を隠そう鎌田だったのです。

バルサを完封したフランクフルトの戦術は以下の通りとなります。

まずバルサで抑えなくてはいけないのが4-3-3の中盤ブスケス、ペドリ、ガビの3人。
そう、スペイン代表とまるっきり同じ顔ぶれです。


そこでフランクフルトは守備時、5-4-1でブロックを組みます。


フランクフルト1
バルサのCBは放置し、両SHが内側に絞って背中でIHへのパスコースを消して、バルサのパスルートをSBへと誘導させます。
(ちなみに鎌田は左SHとして完璧にこの役割をこなしました)





フランクフルト2
SBに出たらSHが中切りで寄せてパスコースをWGの一択にします。
同時にこの時、バルサのIH(ペドリ、ガビ)はCBが捕まえています。




フランクフル31
バルサのWGに出させたと同時にSHとWBで挟みます。
この挟み込みで奪えればベスト。
もしバルサのSBへパスを戻した場合は・・・






フランクフル4
ハイ!ハマった!!

WBをニ度追いで押し出して、アンカーのブスケスにはVOが、CBへのバックパスは1トップのFWがハメます。
これでバルサには中盤3枚を使わせる事なくサイドのタッチライン際でハメる事が出来るのです







フランクフル5
しかも奪った後はバルサはCB2枚の2バック状態なので、3対2でカウンターが打てるという設計。
このシーンではFWがそのまま切れ込んでシュートを打ち、フランクフルトの得点が生まれています。



【フランクフルトの対バルサ戦術まとめ】

①5-4-1でCBは放置

②SBに誘導して奪うorバックパスをさせる

③バックパスにはWB+ボランチを押し出して、CBには1トップがGO!

④奪ったらバルサは2バック状態ウマー!(゚д゚)


この試合こそが、森保JAPANにおけるスペイン戦のゲームプランの下敷きになった事は間違いありません。
鎌田本人がインタビューに以下のように答えています。


鎌田「試合の2日前の練習では5バックの2トップを試していましたが、相手のCBからハメに行くための形なのに前から行こうとしないから、上手くいかなかった。選手たちも違和感を抱いていたなかで、フランクフルトでバルセロナと対戦した時にハマった3-4-2-1をミーティングで提案しました。」



試合の二日前に選手から提案されたプランがドハマりするという運命の巡り合せ。W杯ではこういう運も必要なのです。

なんせ説得力が違います。だってバルサを倒した事がある張本人が言うのですから。


そういう意味で、日本代表は圧倒的に監督よりも選手の方が世界で戦ってきた場数、ノウハウを持っています。
森保監督はそこで選手と下手に張り合おうとせず、謙虚に選手の意見を取り入れる姿勢が今大会はハマっていると思います。


これ、言うほど簡単な事じゃないんですよ。
海外の監督の中には、選手時代の目立った実績を持っていない監督がスター選手と対立する、なんて日常茶飯事ですから。
とかく監督という人種はプライドが高いのです。


加えて僅か二日でフランクフルトのコピーをスペイン撃破のレベルまで仕上げる早さも日本人が持つ強さの一つではないでしょうか。

「模倣に長けて獨創の才無し」
(*「獨創」・・・独自の発想でつくりだすこと)

文化人類学の方面からも日本人とは「想像よりも模倣が得意である」という声があるように、このコピー戦術は一定の成果を見せました。

ですが、相手は世界の強豪国スペインです。
当然、日本といえどクラブチームのフランクフルトのレベルまで練度を上げる事は難しく、特に前半序盤は一方的に押し込まれてしまいました。

ではこの時間帯の攻防をフランクフルトと森保JAPANの守備を対比させながら解析していきましょう。


【序盤ハマりきらなかった日本の5-4-1】
WBの違い1
スペインがボールを持つと日本は5-4-1のブロックを敷いてCBは放置。ここまではOK。




WBの違い2
SBにパスが渡ったのと同時にSH鎌田がファーストディフェンスで方向を限定。
アプローチのタイミング、身体の面の作り方(背中でガビを消している)、共に完璧です。
この選手はもう完全に欧州(ヨーロッパ)の選手ですね(笑)

ところが、鎌田が限定し、次のパスコースはWGのウィリアムズに絞らているにも関わらず、WB長友の寄せが遠い、遠すぎる…!




WBの違い4
その結果、鎌田がプレスバックして挟む前にウィリアムズに前を向かれてカットインを許してしまっています。

せっかくサイドに追い込んだにも関わらず逆サイドに展開されてしまい、これではハマるはずがありません。

左サイドの問題=WB長友が押し出せない


やはりか…。


この画ですが、実は試合前に想定してました。
日本が3バックで臨んだ場合、WBの押し出しが鍵になること、そして長友だと押し出しきれないであろう事を。





一方、日本の右サイドでは別の問題が起きていました。


WBの違い5

当然右サイドも同様SH久保がスペインのSBに出て方向を限定し、次のパスにWB伊東を押し出します。
このWB(伊東)の押し出すスピードと距離感、これが重要です。





WBの違い6
ボールを受けた時にはスペインのWG(ダニオルモ)が前を向けないこの距離感!
右WBの伊東はこれが出来るので、ダニオルモにカットインを許さず、狙い通りバックパスを出させています。
このバックパスには久保がハメに出ますが、FW前田の立ち位置に注目して下さい。

見て分かる通り、アンカーのブスケスをマークし続けています。
バックパスにはFWを押し出さないと、この後CBに下げられたら一からやり直しで、一生日本のプレスはハマリません。
ブスケスにはボランチの守田を押し出しているので、前田はマンマークを続ける必要は無いんです。



WBの違い7jpg
これでは一生ハマらん!


FWの前田は運動量はあるのですが、マンマークの文化が染み付いてしまっているんですよね…。
ボール状況に応じて、後ろのボランチ(守田、田中)と連動して、ブスケスを背中で消す守備からCBへGO!という守備が出来ないのでフランクフルトのようにせっかくバックパスを出させてもハマらないんです。


右サイドの問題点=FW前田がブスケスをマンマークで見続けている




スペインはCBが常にフリーなので、日本のプレスにハマリそうになったらCBに戻せばいいだけ。それで日本の守備はリセットされるんですから。

スペインはピッチの横幅68Mを目一杯使って、CBを中継点に右から左へ、左から右へとボールを動かし続けます。
日本はその度にひらすらスライドを強いられるのですが、物理的にも人が動くよりボールを動かす方が早いので、押し込まれ続ける展開になるのは自明の理でした。

先制点もその流れから。


スペイン先制1
日本はこの時間帯、ジリジリ押し込まれるので、最後は自陣ゴール前でサイドの1対1に晒されています。
ですが右WB伊東は1対1で対面のダニオルモをスピードで完封。
この場面でも伊東のアプローチの距離とプレッシャーが効いているので、ダニオルモがヘッドダウン(顔が下がっている)しているんですね。これではいかにスペインと言えど中の状況が確認できず良いクロスを上げるのは難しい状況です。(そもそもスピードで伊東が上げさせないが)

つまり右サイドでは最後の最後でダムが決壊しなかったのは伊東の個の力に大きく助けられていたからです。


この場面でもスペインはクロスを上げきれず、ボールは逆サイドへ





スペイン先制2
左サイドでWGのウィリアムズにボールが渡りますが、対峙した長友の距離がここでも遠すぎます。
ボールを持ったウィリアムズの視線に注目して下さい。
顔が上がっているので長友の背中を抜けるガビを自然に視野に捉えています。つまり突破しても良し、パスでガビを使っても良しという大手飛車取り状態。
スペイン代表クラスのアタッカーにこの寄せではなんらプレッシャーになっておらず、何でも出来る距離と言えます。



スペイン先制3
やはりガビを使われて、ペナルティエリアに侵入されてしまいました。
現代サッカーではポケット(ハーフスペース)と言われるこのエリアに侵入されるとデータ的にも失点率が跳ね上がるのですが、何故かというとここをえぐられたら全員が後ろ向きの守備をさせられるからです。

この場面でもSB長友、SH鎌田が自陣に向かって背走するかたちで守備をさせられており、それがこの後に効いてきます。




スペイン先制4
ガビのクロスは跳ね返したものの、日本は前田を含めほぼ全員がペナルティエリアに背走させられているので、セカンドボールがまず拾えません。
更にウィリアムズにSH鎌田が対応するという事は、上がってきたスペインの右SB(アスピリクエタ)を捕まえる人がおらず、完全にフリーになってしまうのです。

アスピリクエタが狙いすましたクロスを上げてスペインが先制。





tanakaaosupein.jpg
<ピッチ上の指揮官が動く>

この状況に最初にアクションを起こしたのはベンチでもテクニカルエリアで立つ森保監督でもなく、ピッチにいた田中碧でした。

失点直後から、CB板倉、FW前田らと積極的にコミュニケーションを取る様子が見られています。

そして前半15分以降、日本の守備が少しづつ修正されていきます。


【田中碧の修正】
田中碧1
前半18分過ぎ、これまで通り日本の右サイドでスペインのSB→ダニオルモのところでハメようというシーンです。

田中碧のアクションに注目して下さい。

田中碧はピッチ上で戦いながら、先述した日本の守備の問題点に気が付いていました。
そこでハメれる可能性があるとしたら左ではなく日本の右サイドだという事を確信したはずです。

これまでであれば、この後前田がブスケスをマンツーマンで付き続けるので、CBへのバックパスがハマらなかったのですが、SBにパスが渡る段階で既に前田に「ブスケスは俺が突くから一列押し出して!」という趣旨のコーチングを出していると思われます。




田中碧2
この試合、初めてブスケスをボランチ(田中碧)が見て、CBにはFW前田を押し出すフランクフルト型の完コピが実行されました





田中碧3
ほら!ハマった!!

前田が横パスのコースを切っているので1枚で2CBを見れるこの形!
ボールサイドに限定をかけているので、後ろのCB板倉も押し出せて、右サイドでは日本の数的優位が作れています。

ボールを持ったCBパウトーレスはパスを出そうにも出せる受け手は全て日本の選手に捕まっている格好。


田中碧4
こうなれば必然的にボールは奪えるんです。相手がスペインだろうと関係ありません。






ただ、日本が初めて意図的にボールを奪うまでに既に18分が経過してしまっています。

このレベルで修正が15分遅れたら手痛い代償を支払うのは当たり前といえるでしょう。
(この問題はドイツ戦、コスタリカ戦でも同様)

日本はスペイン相手に重すぎる先制点を失ってしまいました。


しかも修正がベンチワークではなく選手主導というのもなかな厳しいものがあります。

試合二日前に選手の提案を採用出来るフレキシビリティーと、その裏面としての状況把握の遅さ。
これは森保JAPANが持つ両面といえるのではないでしょうか。



ピッチ上に話を戻しましょう。

ピッチでは田中碧監督が更に日本の守備をもう一段押し上げるべく修正を図っています。



前半30分田中1
前半30分のシーンです。

スペインのボール回しが日本の左サイドに展開されようとしていますが、田中碧は左サイドで日本の守備がハマらない事はもう把握しています。(WBが長友なので)
つまりこの後、左ではハマらず、右にボールが戻ってくるだろうという事も。

田中は3手先の展開を読み、この時点で自分の背中にいるペドリを後ろのCB板倉に受け渡すよう手で指示しています。
何故ならこちらにボールが展開されてきた時、自身がペドリをマークしていたらCBのパウトーレスには前田が1人で追わないといけないからですね。

勿論、それでも前田は二度追いで後ろからプレスを掛け、先程のようにCB板倉でボールは奪えるかもしれませんが、そこから得点に直結するカウンターを繰り出すにはゴールが遠すぎます。
1点ビハインドを追っている状況ではもう一列高い位置でボールを奪いたいので、ボランチの自分を押し出してスペインのCBに2対2の状況を作る、その下準備を既に始めているのです。
(この人多分、将来優秀な監督になると思います。)



前半30分9
はい出た!5-4-1からの4-4-2可変!

CB板倉を一列押し出すこの可変こそ、5-4-1でドン引き一辺倒にならないソリューションなのです。

欧州などトップレベルで5-4-1を採用するチームは、この「いつ4-4-2に可変させて前プレのスイッチを入れるか?」という駆け引きこそが勝負の肝というのはもはや常識になっています。

CBに2対2の数的同数でプレスをかけられたスペインはもう、GKに下げるしかパスコースがありません。



前半30分田中3
GKへは前田がそのまま猛烈プレス。
右CBには左SH鎌田を押し出すので、隣の右SBにはWB長友が連動して後ろから押し出せれば、日本は敵陣でボールを奪える守備になります。



ところが・・・





前半30分田中52
長友・・・押し出せず・・・(無念)

鎌田(ブンデスと勝手が違いすぎる・・・)


では何故、長友は押し出せなかったのか?

それはスペインの巧みな配置に一因があります。



この場面での全体の配置を図で表すと下記の通り↓

nagatomo1203.jpg
長友はスペインの右WGウィリアムズにオフサイドにならないハーフラインギリギリで立たれているので、ここをマンツーマンで付き続けていたが故に、アスピリクエタには押し出せなかったという事になります。

このすぐ後にも似たようなシーンでスペインのGKシモンをNINJYA前田が前プレで追い詰めますが、同じように右SBに蹴られて打開されています。

本田解説委員『信じられへん…!!』

GKシモンは前を見ずに蹴っていますが、これは最悪右SBに蹴っておけばフリーになっているって予め分かっていたからこそ出来たプレーなんですよ。

何故なら日本の左WBは出てこれないから。



ここで強調しておきたいのは、この長友の対応は決して間違いではないという事。

だって、ウィリアムズを放置して前に出た結果、プレスが剥がされて裏に蹴られたら?


吉田麻也と1対1、もしくは吉田のカバーが間に合わずにタテポン1本でGK権田と1対1の可能性すらあります。

格上スペイン相手に、WBはステイして、全体を40M下げる。
こちらの方がむしろ常道でしょう。



それはその通りなんですよ。

それは、そうなんですが・・・




果たしてこれでスペイン相手に2点を取って番狂わせが起こせますかね?



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『負ける事を恐れるな。リスクを冒せ』


僕は毎回、日本代表がW杯に挑む度に思うんです。

挑戦者である我々に元々失うものはないじゃないか、と。

セオリー通り戦っていて、世界の強豪相手に勝てるのか?と。




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<日本サッカー史上、"最狂"の布陣>

ハーフタイム、指揮官の森保監督が動きます。


まずは久保に代えて堂安を投入。
久保はドイツ戦に続き、守備面での戦術理解を買われて先発に抜擢されている事がハッキリと分かる交代でした。
「前半は0-1でも我慢でOK」という森保監督のプランにおいて、前半のSHにはなにより守備の理解力が重要だからです。

反面、得点力という点においては堂安の方が買われているという事でしょう。
久保は森保プランにおいてはかなり可哀想な役回りを求められているともいえます。

そして押し出せないWB長友に変わってはアタッカーの三笘を投入。
これは前半の問題点を修正したというより、予め用意していたプランだったと思います。(ドイツ戦、コスタリカ戦と同様のベンチワーク)
前半の修正に関してはピッチで田中監督代行がやってくれていましたので。

ちなみにスペインもハーフタイムに右SBをカルバハルに変えていますが、もしかすると後半の三笘投入は読まれていたのかもしれませんね。


とにかく後半のピッチにはドイツ戦に続き、右WB伊東、左WB三笘という日本サッカー史上「最狂」の布陣が顔を揃えました。

その効果は後半3分、早くもかたちになって実を結びます。


堂安得点1
再び前田の前プレが発動した日本。
スペインのCBに鎌田を押し出し、SBにはWBを押し出せるのか・・・??







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森保『行け!!三笘!!』






堂安得点2
三笘のアプローチスピード速すぎwwワロタwww

スペインのSBカルバハルがボールを受ける時にはもうこの距離まで寄せています。

カルバハルはたまらず後ろを向いてバックパスをするしかなく、そのままGKまでパスが戻されます。



堂安得点3
GKに返されたボールには前田が三度追い(マジか!)

これではGKシモンに顔を上げる余裕は無い。



シモン(落ち着け…大丈夫だ。日本は右サイドでハメようと左WBをDFラインから押し出してきた。つまり逆サイドのSBに蹴っておけばフリーのはず)



はい、その通り。

この瞬間の全体の配置はこうなってました↓

後半WB1203
日本は最初左サイドでハメようと後ろから押し出してるんで、スペイン陣内に6枚かけてプレスしてるんです。(谷口も入れれば7枚)
で、スペインは左WGのダニオルモがハーフラインギリギリに開いて待ってるので、ここで伊東を押し出したら、剥がされなくても蹴られたらアウト。

つまり、左SBバルデにボールをコントロールされる前に一発必中で死んでも奪わないと終わります。



この状況で普通、行きませんよね?


でもね・・・この時の伊東の立ち位置が強気なんですよまた。
左WBの三笘もそうなんですがスペインのWGの背後からマンマークに付くのではなく、この時点でマークを背中に置いてるんです。
仮に背後に蹴られてもこの距離感ならヨーイドン!で追いつける自信があるから出来るんでしょうね。
自分を前に置いてるのは、いざ押し出すとなった時の距離を少しでも縮めておきたいから。

3バックで守っているチームがボールサイドのWBを押し出て4-4-2に可変させる事はままあります。
でも両WBを同時に押し上げるとなったら話は違います。
実質2バックになっちゃいますからね。





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森保『伊東!行けー!!』


あれ・・・?もしかして誰か憑依してません?




堂安得点4
本当に行ったよwww

敵陣に8枚の神風特攻プレス!


これだよ!俺が長年W杯で見たかったのは!!
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勿論、こんな守備が出来るのも両WBに本職がウイングを置いているという狂気のフォーメーションだからこそ。
この日本サッカー史上「最狂」の布陣にドイツに続き、スペインも全く対応出来ていません。


スペインが混乱に陥る最中、日本の追加点が生まれます。




田中得点1
日本陣内のFKからのリスタートですが、ここでも三笘、伊東の両WBは高い位置を取って日本は5トップ状態。

4バックのスペインは一枚落として守る必要があるのですが、ダニオルモ、お前のその位置取りは少々伊東を舐めすぎだ。



日本はGK権田のキック一発で伊東が背後を取る事に成功。

そこからサポートに入る田中碧にパスが渡る


田中得21
田中碧から堂安にラストパスが出ようという瞬間には、既に逆サイドで三笘がゴールに向かって走り出している。


オシム『日本では、うまい選手ほど少ししか走らない。それは逆だ。技術のある選手が、もっと走ればいいサッカーができる。』





田中得3
三笘がラインギリギリのボールに足を伸ばそうとするその瞬間、ゴール前のスペインの選手達を見てください。

全員足が止まっています。CBのロドリに至ってはオフサイド(?)を主張して手を上げている有様。


その中で一人・・・・、ただ一人田中碧だけが足を止めずにゴール前へ走り出しています。
そしてこの差が日本とスペインの勝敗を分けました。



オシム
『相手より5歩余計に走れば、その5歩がすでに勝利の5歩だ』




これね、普通は一瞬足が止まるもんなんですよ。
その証拠に日本の選手達だって、ラインを割るかどうか一瞬見てしまってますよね?


この瞬間に折り返される事を信じて足を動かせるのは、考えて走っていたんじゃ遅いんです。
思考を越えた反応で走っていないとこの田中碧の走りは説明がつきません。



その理屈を越えた反応の事を日本語でこう言います。










『信頼』と
mitomatanaka4.jpg


田中碧(試合後の談話)
『本当に小さい頃から一緒にサッカーをやってきたので。
最後まで信じて走ったので、それが最終的にはゴールにつながったので、彼を信じて良かったなって思います』



スペインの中盤にバルサの血が流れているならば、日本代表の中盤にはスカイブルーの血が流れていました。



オシムさん、見てくれていますか?


日本の選手達はこんなにも逞しくなりましたよ-





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<過去の悲劇が今日の奇跡を作る>

日本が逆転に成功したことで、FW前田はお役御免。浅野と交代になりました。
逆転に必要だった2得点で、前田が影のアシストを担っていた事は忘れるべきではないでしょう。
1点目はGKへの猛烈なプレスが最初のスイッチになっていますし、2点目も三笘と共に最後までゴール前に飛び込む執念を見せていました。

FIFAの公式スタッツでは62分の出場で60回のスプリント(勿論、この試合最多)を記録。
1分に1回スプリントするという驚異的なパフォーマンスで走り切りました。


一方のスペインは日本の狂気のWBを切り崩すためにサイド攻撃を強化。
左SBにレギュラーのジョルディ・アルバを入れて伊東が前に出てくる背後を2枚で突こうという姿勢を見せてきました。

すると返す刀で一分後に日本ベンチが動きます。



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森保「冨安、右サイドを封鎖だ」


この交代は完全に用意されていたプランでしたね。
さすがの伊東と言えど、スペインにWGとSB(アルバ)の2枚がかりで攻められたら分が悪いのは明らかです。
鎌田に代えて冨安を入れて、伊東は攻撃に専念出来るよう左のSHへ。
ここからはもう我慢からのカウンター狙いなので、鎌田のキープ力よりも伊東のスピードを残したかったという意図でしょう。

交代で入った冨安はこもミッションを完璧にこなし、Jアルバを完封。
当たり前です。サラーを完封した男なのですから。


以降の日本は5-4-1の10枚ブロックを引いて森保JAPAN得意の塩漬け戦法を開始。
この時間帯は押し込まれてはいますが、今大会最もコンパクトに戦えていました。
プレスバック、スライド、全体が一つの生き物のように連動。
スペインはどこにボールを動かしても全ての局面で日本が数的優位を作れているのでブロックの強度は崩れません。

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試合はさながら、スペインリーグでバルサがアトレティコに負ける時のパターンの様相です




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森保「我慢だ!粘り強く戦え…!!」



ここにきて森保監督が今大会でずっと強調してきた「我慢」と「粘り強さ」の最高峰を見せています。




一方のスペインの指揮官、ルイス・エンリケはこの終盤になって打つ手が無くなっていました。
スペイン代表の選手選考基準は明確です。上手くて賢い奴、それを26人集めました。
「我々が一番良いフットボールをしている」という自負と自信があったはずです。
誰が出ても上手い反面、足元は不器用でもでかくて強いアフロ頭とか、パスワークは苦手でも無骨に仕掛けるドリブラーといったタイプは今回のスペインにはいません。

交代カードを切る度、スタメンの劣化版が出てくるに過ぎないスペインに対して、日本は三笘、冨安、終いにはクローザーとしてブンデスリーガのデュエル王(遠藤)が出てくるなど、交代カードを切るたびにチームが強化されていきました。

ルイス・エンリケ
『森保半端ないって!ベンチから次々とエース級が出てくるもん!そんなんできひんやん、普通(涙目)』




森保JAPANには明確なスタイルもゲームモデルもありません。
だからこそ、上手いやつ、速いやつ、強い奴、何か一芸に秀でていればどんな選手でも選考対象になります。
「全員がレギュラー」と公言してきた森保JAPANは選手構成によってガラリと姿を変え、ドイツやスペインはその変化に全く対応出来ませんでした。
欧州と言わず、今大会世界中を見渡してもこんなチームは他に類を見ないからです。


特筆すべきはロスタイムの7分間、スペインに1本のシュートはおろか、CKさえ与えていない日本の戦い振りでしょう。
それは日本サッカーが積み上げてきた歴史が、ロスタイムの戦い方をピッチ上の選手達にインストールしてきたからです。


doha.jpg
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もしかすると観ているファンの脳裏には過去幾多のシーンが浮かんだかもしれません。
しかし昨日までの悲劇が、今日の強さにつながっているのです。



森保監督
「最後の1分くらいのときに、私のドーハの記憶が出てきました。でもちょうどそのときに選手が前向きにボールを奪いに行っていたところで、あ、時代は変わったんだな、と。選手たちが新しい時代のプレーをしてくれているということを思いました」



一方のスペインがロスタイムにした事。
それはCBからのタテポン放り込みでした。万策尽きたスペインは最後の最後に自分達のスタイルを捨てるしか手が無かったのです。

僕にはそれはスペインからの白旗のように見えました。


リスクを恐れずに一歩を踏み出した森保JAPANが日本サッカーに新たな歴史を作ってくれました。




moriyasusuoaein.jpg
<森保JAPANが見せた二面性>


この勝利の要因を分析すると森保JAPANが持つ二面性が見えてきます。


まずはドイツ戦に続いてこのスペイン戦でも森保監督の戦略がビタリとハマった事が最大の勝因になります。
日本がスペイン相手に「神風特攻プレス」をかけるなら15~20分が限界と踏み、それをどの時間帯で繰り出すか?

森保監督が出した答えは前半45分をひたすら我慢(0-1でもOK)して、後半の頭から三笘、堂安という人的リソースを投入し15分で勝負を賭けるというもの。そこでリードを奪えば今度は冨安、遠藤といったカードで試合をクローズさせる。


そしてこの神風戦略を成功に導いているのが日本の選手達が持つ自己犠牲の精神です。
考えても見て下さい。チームで一番ドリブルが上手い三笘と伊東が本番でいきなりWBをさせられて、賢明に守備でも頑張っているからこそこの戦略は成り立っている訳です。

これは南米や欧州の国だったらそう簡単な話ではないですよ。

だってネイマールやムバッペがいきなりWBやらされて、こんなに献身的にプレー出来ると思いますか?


普通は逆です。
今大会でもアルゼンチンやポルトガルの試合を見てみて下さい。GK権田より一試合の走行距離が少ないメッシやロナウドといった選手の負債をチームが肩代わりしている図式です。


これらの例を見ても日本人が持つ特性と森保監督の戦略がビタリとハマっている事は間違いないと思います。



一方で、では具体的にどう前半45分を耐えるのか?
スペインのポゼッションをどのように制限し、どこでボールを奪うのか?

そういった具体的な戦術に関してのベンチワークは今大会ほとんど見られていません。
2日前までは別のシステムでスペインに対峙しようとしていたんですから、それも無理はないでしょう。

現状は選手の「粘り強さ」に一任されている状態です。



だからこそ、強豪相手(ドイツ、スペイン)にビハインドを負い、やる事が明確になった時にこのチームは最大の強さを発揮します。
リアクションの強さと言い換えても良いかもしれません。

一方でドイツ、スペイン相手に快勝したのが森保JAPANの現実なら、コスタリカ相手に何も起こせず敗戦したのもまたこのチームが持つ一面なのです。歴史的勝利でそこから目を背けるべきではないでしょう。

コスタリカのように、相手に日本を研究されて、ボールを持たされて自分達からアクションを起こす時、このチームが持つ武器はあまりに少ないと言わざるを得ません。
過去の日本代表も「自分達のサッカー」と言い出した途端、負けパターンにハマってきた歴史があります。


果たしてベスト8を賭けたクロアチア戦で見られるのはどちらの森保JAPANなのでしょうか?






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テーマ : FIFAワールドカップ
ジャンル : スポーツ

森保JAPANの真実~日本☓ドイツ~

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<必然と偶然の狭間で~森保JAPANの真実~

変態の皆様、ご無沙汰しております。

ご新規の方々、どうも初めまして。

2022年カタールW杯、色んな意味で開幕しましたね。


今回の記事では先日のドイツ戦の完全解析を試みました。
森保JAPANをこのドイツ戦という点で見るのではなく、四年間という線で見ること。
その為に、お時間ある方は是非、こちらのアジアカップ決勝カタール戦のマッチレビュー⇒の冒頭部分だけで良いので、さらっと読んでから下に進んでいただけると幸いです。

今回のドイツ戦は、このカタール戦の敗戦と比較することで色々見えてくるものがあります。


↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
読んだら下へスクロール
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓



・・・はい、では今回のドイツ戦のマッチレビューに移りましょう。
まずスタメンですが、選考からの過程で一番の驚きはFW大迫の招集外でした。
代わりにFWには前田大然、浅野らの名がリストアップされていました。


この選考から分かる事とは何か?


それはドイツ、スペインと同居した組にあって、指揮官の頭に描かれたプランは恐らくロンドン五輪のスペイン撃破(NINJYA永井)のそれです。

nagai.jpg
ロンドン五輪の対スペイン代表の試合は、当時から圧倒的なポゼッション力を持つスペインに対して、永井の神風特攻プレスを体力の限界までかけ続け、狙い通りショートカウンターから勝利を収めたのでした。

このU-23日本代表を率いたのは当時、52歳だった関塚監督です。
現在、森保監督も54歳ですが、この世代の日本人のサッカー観として、「格上相手に採るべき戦術」の最もオーソドックスな型がこの神風特攻になります。

一昔前の高校サッカー選手権では、こんなサッカーをするチームがそこら中に溢れていました。

無理もありません。
日本がまだW杯に出るどころか、アジア一次予選で苦戦していた時代です。
世界のサッカーの情報など、インターネットもなければ、衛星放送の環境も整っていなかったのです。

その時代に選手としてサッカーの原体験を経てきた世代に、この国に当たり前にプロリーグがあり、W杯出場が当然という感覚を持った若い世代のサッカー観とギャップがあるのはある意味当然といえるでしょう。


大迫を呼ばないという事はボールを動かして相手を押し込む攻撃を半ば放棄しているという事です。
コスタリカ戦もあるので、個人的には「正気か!?」と思うところもありますが、ともかく明確な戦い方と覚悟は感じる選考でした。


このような経緯を経てドイツ戦で選ばれたスターティングオーダーは前田大然をスタメンに抜擢した4-4-2(4-2-3-1)でした。

ドイツも基本布陣は同じく4-2-3-1なのですが、ボール保持時には3バックに可変します。
これにより両チームの噛み合わせは以下のようになります。

【ドイツボール保持時の噛み合わせ】
日本ドイツ
ドイツは左SBのらラウムを高い位置に上げて前線を5枚にし、5レーンを占有。
これは欧州予選でもネーションズリーグでも見られたドイツの基本形です。

対する日本は4-4-2で3ラインを組み、ドイツの3バックに前田と鎌田の2トップでファーストラインを形成。
ドイツの3バックは2トップで牽制し、機を見てSHを加勢させて3対3の数的同数に持っていく狙いが本線になります。
ギュンドアンとキミッヒの2ボランチには田中、遠藤のボランチを当てて、ドイツの3バック+2ボランチをハメて高い位置でボールを奪うのが理想のプランだったはず。

ところがドイツのIH(ミュラーとムシアラ)が日本のボランチ脇まで落ちてくる事で、田中と遠藤がドイツのボランチではなくIHを捕まえざるを得ない形になってしまいました。特に右のミュラーはサイドに落ちてくるタイミングも絶妙で、非常に嫌らしい位置取りを終始徹底。

この動き出しにより、ドイツの2ボランチを捕まえられる選手が不在という事態が引き起こされます。
前半3分の攻防に両チームの狙いが早くも表れていたので、流れを追って解析していきましょう。

1125前半1-1
立ち上がりの攻防から。
ドイツの3バックに対し、日本は前田→鎌田→久保の順にプレスをかけていきます。





1125前半1-2
ズーレからボランチのキミッヒにパスが出されるという場面ですが、田中碧のポジションに注目して下さい。
前に出る久保の背後のスペースを狙って前線から落ちてきているミュラーの対応に向かっています。
これによりキミッヒがフリーになります。




1125前半1-3
フリーのキミッヒは簡単に前を向けるので、日本の守備ブロックは中央を割られるルートでハーフスペースで待つムシアラへ。
田中碧がミュラーからキミッヒへと動かされているのでバイタルは遠藤1枚しかおらず、このパスコースは消しきれません。

驚くべきはドイツは前半3分の段階で右のミュラーで田中碧を誘い出し、中央を空洞化させた上でボランチを経由しながら右から左へ展開、伊東の背後をラウムで突くという攻め筋を早くも見せています。これはドイツの先制点の形、そのままですね。
フリック監督の周到な準備が伺える場面でした。

一方、日本の視点で見ると本来、中央を通させるのではなく、SHの伊東をこの高さで留まらせた状態でボールを敵陣で奪い→ショートカウンターへつなげるのが狙いでした。

ところがこの後、ムシアラがパスミスした事で、伊東の目の前にボールがこぼれてきます。


1125前半1-4
ドイツの技術的なミスではありましたが、伊東がこの高さで守備をしている内は、奪えば伊東の単独突破によるカウンターチャンスが見込めます。

このシーンも単騎突破でサイドをえぐり、この試合初めてのCKを獲得しました。


そしてこのシーンの3分後に前田大然の幻の先制点が生まれます。
このシーンは日本陣内左サイドからのスローインだったので、逆サイドの伊東を高い位置に残したままリスタート出来たのが布石になりました。
遠藤と鎌田の挟み込みでボールを奪った瞬間、伊東がカウンターのスタートを切り、自陣で奪ったボールを50M運んでクロス→オフサイドというもの。

アジア予選で森保JAPANが見せた明確な攻めの形は事実上、伊東の単騎突破、これしかありません。
(後半、ジョーカーの三苫を投入するまでは)

日本の幻の先制点を見てデジャヴを感じた方はいませんでしたか?


アジア最終予選サウジ戦の先制点の場面をリプレイしてみましょう。

【アジア最終予選サウジ戦の先制点シーン】

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スローインのマイボール、相手ボールの違いこそありますが、ここからボールを奪って逆サイドに展開し、伊東がえぐるという形は全く同じ構造です。

要は左サイドのスローインは逆サイドで伊東を高い位置に残せるので、奪った瞬間にチャンスになると。
これは森保JAPANが持つ不変の構造です。

言い換えればリスタートではなく、インプレー時に伊東を高い位置に残す守備は偶発性(例えばムシアラの技術的なミス)に左右される、とも言えますが…。





<偶発性と必然性の違い>
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前半のスタッツはボール保持率でドイツが72%、日本17%(どちらのボールでもない状態が11%)、シュート数はドイツの13本に対して日本はわずかに1本という数字でした。

改めて数字で見るまでもなく前半は完全にドイツのペース。

日本が得た2本のチャンスは偶発的(ムシアラのミスとスローイン)なものだったが、ドイツは日本の守備がハマっていないという構造を突いた極めて再現性の高い攻撃を繰り返した45分といえるでしょう。

その主要因としてミュラーというトリガーにより空洞化した中盤で躍動したギュンドアンの存在が挙げられます。

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この場面ではギュンドアンが敢えてボランチのエリアから一度落ちて、FW前田を食いつかせ背後のスペースを作っている。



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ギュンドアンは右のズーレに展開した後、パス&ゴーで自分が作ったスペースに移動。
日本のボランチ(この場面では遠藤)は相変わらずミュラーに気を取られており、キミッヒ経由で再びボールはギュンドアンへ




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そして高い位置で守りたい伊東を自分に食いつかせて、日本の右サイドで2対1の数的優位を作り出している。
ボールはギュンドアンからムシアラ経由で大外のラウムへ




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ギュンドアンはこのルートでボールを運べばラウムにSB酒井が食いつく二手先の画が見えているので、そのままハーフスペースへ抜けるフリーランニング。これを捕まえられるのはボランチの遠藤しかいない。





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しかしボランチの遠藤がDFラインのカバーに入れば、当然バイタルエリアは空く。
ギュンドアンは文字通り「背中に目でも付いてんのかよ!?」というヒールパスで空いたバイタルエリアへボールを落とすのだった。

このシーン以外でも、前半の日本はとにかくギュンドアンを起点に崩されまくっていた。
決してアシストとか決定的なラストパスを出す訳ではないんだけど、その一つ前、二つ前には必ずこの男が絡んでいる。
最優秀助演男優賞みたいな存在。


『いやー、ギュンドアンうざいっすねー!』
(解説の某本田氏)

私もそう思います。



いや、サッカーファンならドルトムント時代から良い選手だという事は分かってたと思います。
でも当時はよく走れて展開力もある良いボランチだなってぐらいのイメージで
こんなポジショナルプレーマスターみたいな反則レベルの選手ではなかったはずでしょ!?

一体誰だよ!?


ギュンドアンにこんな魔改造施しやがったのは・・・!?







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犯人はお前かー!!!

全く、いつのW杯でも部外者みたいな顔しながら、優勝戦線に絶大な影響を与えてくれるじゃねーか。
この男の手によって強化された国、選手が一体どれだけ過去のW杯を荒らしてきた事か…。

対戦する身にもなってくれ!!(笑)



さて、日本とすれば、もうドイツのボランチをフリーにさせたままにはしておけなくなりました。
かといって日本の2ボランチ(遠藤+田中碧)はドイツのIH(ミュラーとムシアラ)の対応に追われているので動かせません。
となればもう残るは2トップがドイツの2ボランチを見るしかなく、15分以降の両チームの噛み合わせは下記のように移行します。

日本ドイツ2
日本は2トップを縦関係にするも、ドイツの3バック+2ボランチの5枚に対して2枚で鳥かごをされているようなもの。
ドイツの3バックにプレッシャーがかからないので、久保と伊東の両SHは引くしかありません。
ボールホルダーがどこにでも蹴れる状況で、自分の背後を空けるわけにはいかないからです。

そしてドイツのフリック監督はこの展開を想定していました。
それは左のCBにシュロッターベックを起用したことからも分かります。
この代表キャップ僅か4の若手CBは左利きを生かした展開力に定評のある攻撃型のCB。
ドイツはこの試合、日本を一方的に押し込んでボール保持の時間が長くなること、右からズレを作って左で崩すというルートを想定していたからこその起用でしょう。


ドイツの先制点は勿論、必然性の塊とも言える右からズラして左で生まれています。



【ドイツのゴールシーン解析】
ドイツ得点1-2
局面はドイツが中央でボランチを縦関係にし、パスの出し入れをしようとしている場面です。
ボランチの位置でパスを受けるキミッヒの身体の向きに注目して下さい。
この向きでパスを受けてダイレクトに攻撃方向にパスは出せないので、日本とすれば次のバックパスで全体を押し上げ、守備のスイッチを入れたいところ。

しかしまず日本のDFラインが低すぎます。この低さに合わせて二列目を引くので、日本のファーストラインとセカンドラインには大きなスペースが出来ている事が俯瞰で見るとよく分かりますね。
特に左サイドの吉田と長友がミュラーとニャブリをボカして見れないので、常にSHの久保を自分達の前に置いておこうと低い位置まで下げさせるので、ズーレに展開された時に出ていく久保の距離が遠すぎるんです。



ドイツ得点1
ズーレの前には充分スペースがあるので持ち運びが可能。
この時、ミュラーは久保の背中を既に取っていますが、久保がミュラーを気にする素振りを出したことで、ミュラーはズーレに対して手で「まだ出すな、運んで来い!」というアクションで指示を出してます。




ドイツ得点2
ミュラーはお決まりのサイドに流れた事で、久保はミュラーへのパスコースを切る為、外切りでズーレに対峙。
久保を外切りにさせた事でハヴァーツへの縦パスのコースが空きました。
そしてこのハヴァーツに対してCB吉田の距離の遠い事。当然です、最初の段階であれだけラインを下げていたのですから。
楽に縦パスを受けたハヴァーツからフリーのミュラーへ




ドイツ得点3
遅れて出てきた吉田の背中をハバーツに走られると、このカバーはボランチの田中碧。




ドイツ得点4
ミュラーからボランチへのキミッヒへ横パスが出されますが、田中が一度押し込まれているので、ここでも距離が遠い。
キミッヒは楽にオープンでボールを受けて逆サイドを走るラウムへ→PK

「右でズラして、左で仕留める」
ドイツの必然性が生んだ得点でした。






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<森保采配は本当に神采配だったのか?>

前半の日本の問題点をまとめてみましょう。

①ドイツの3-2-5に対して噛み合わせがズレていて(特に左サイド)全くハマっていない
②前からファーストディフェンスをかけたいが、2トップがドイツのボランチを見る格好になっている
③ボールの出どころとなっているドイツのCBに全くプレッシャーがかからないのでDFライン後退→両SH後退→5バック~6バック化
④自陣で回収してもSH(特に伊東)の位置が低過ぎて孤立した前田大然に蹴っても2秒で奪われる→カウンターが打てない


そもそも4バックでドイツの3-2-5を守ろうと思ったら、端から配置論では噛み合わないんですよ。
じゃあ、前半の日本は4バックでどうやって守るべきだったのか?

実は前半45分の間に、一度だけ日本がドイツ陣内の高い位置で意図的にボールを奪えたシーンがあります。


【3バック相手に4バックならこう守れ!】
日本前プレ1
局面は日本が蹴ったロングボールをドイツのシュロッターベックに拾われ、そこからリュディガーにパスが渡り、再びドイツのポゼッションが始まろうかという場面です。

パスを受けるリュディガーの身体の向きに注目して下さい。

後ろ向きで下がりながらパスを受けています。これを見た久保がスプリントの守備でスイッチを入れる。
→ボール状況を判断し、ファーストディフェンスを決める


日本前プレ2
後ろ向きでパスを受けたリュディガーに顔を上げる余裕はなく、久保が右サイドへ展開するコースを切りながら寄せているので、次のパスの選択肢は相当絞られました。

選択肢が絞れているので、次のパスに対して伊東、遠藤、前田が自信を持って狙いに出れています。
この瞬間、ボール周辺の局面は4対4の数的同数になりました。




日本前プレ3
シュロッターベックはパスを受ける前から伊東らのプレッシャーを感じているのでボールを守ろうと後ろ向きの体勢になってしまいました。
これを見た久保が素晴らしい二度追いで追い詰め、ボールを奪う事に成功。


この場面なんですが、上からの俯瞰映像で、全体を見ると↓こんな感じです。
日本前プレ4
そう、配置の噛み合わせ自体が変わった訳ではないので、実は前方では酒井に対してドイツは2対1の数的優位が作れていたのでした。
でもボールに対してファーストディフェンス→セカンドの連動と続いてるので、ボールホルダーの身体の向きと時間の無さから、そこは使いたくても使えないんですよ。

これがボード上のマグネットだけで見る配置論の限界で、ボールホルダーのアングル次第で、別に全てのポジションがハマってなくてもボールは奪えるんです。

だから3バック相手に4バックのままハメたいなら、そもそもマンツーマンでは無理で、どこかをボカして見ながら、ボール状況によって小まめにスイッチをオンオフし、ハメるとなった瞬間にファーストの決定→セカンドの連動→そしてニ追いで局地的な数的優位(または同数)を作って奪うのです。これが即ちゾーンディフェンスですね。




では、前半のこの構造的問題に対して日本ベンチは実際にどのような働きかけをしたのでしょうか?

今大会はアベマTVの放送だとカメラ切り替え機能が付いており、中でも「全体カメラ」は酔いやすいのが玉にキズですが、上から俯瞰の視点で見られるので重宝しています。
それだけでなく全体カメラ視点は実況+解説が無いので、ピッチ上の音声、特にテクニカルエリアまで出張っている監督の声を拾ってくれるので面白いです。

この視点でドイツ戦の前半を見てみればよく分かりますが、テクニカルエリアにいる森保監督の指示はおおまかにいって以下の2パターンでした。


「粘り強く!」

「我慢だ!我慢!」



これは苦しい展開の中で選手達を鼓舞する声がけではあるものの、現在陥っている状況を具体的に改善する情報は何一つ入っていません。必然として前半の45分間、ドイツの同じ攻撃パターンで日本は崩され続けていました。

勿論、90分を終えた結果を知っている観点から振り返れば、ハーフタイムまで修正を我慢した事で、ドイツにハーフタイムでの修正を許さなかった神采配、という見方も出来るでしょう。


果たして意図的に修正しなかったのか?それとも単に修正出来なかったのか?

こればっかりは当事者ではないので分かり得ない事です。



ですが、この采配をドイツ戦単体ではなく、3年前のカタール戦との比較で見てみるとどうでしょう?

3年前の試合では、カタールに同じように3バックで噛み合わせをズラされて、極めて似たかたちで前半の内に2失点しています。
修正したのは前半も終盤、ラスト10分を過ぎてからでした。

それ以外の試合においても、そもそも森保監督が前半の早い時間帯に修正に動いたことは過去なく、これは元々このチームが持っている体質のようなものだという事が分かります。

カタール戦とドイツ戦の違いは結果的に前半1失点で済んだか、2失点してしまったかの差しかありません。

無論、前半もラスト10分を切ってからは「この段階で修正するより、ハーフタイムまで我慢してドイツの修正を遅らせる」という意図は浮かんだ事でしょう。
怪我明けの冨安を3試合使うなら、出場時間はコントロールしたいという台所事情もあったはずです。


ただ、もし前半で0-2にされていたら、恐らく逆転するのは難しかったと思います。
なんならダメ押し弾をくらって前半0-3で折り返していた可能性すらあります。
前半の内容を確率論で捉えれば0-1は多分に幸運にも恵まれたもので、順当にいけば0-2,0-3の内容でした。

欧州のトップリーグではそれこそ両ベンチが監督を筆頭に5分単位で打ち手を繰り出す空中戦を展開することは、もはや珍しい光景ではなくなってきました。テクノロジーの進歩がそれを助長させている側面もあるでしょう。

もはや5分修正が遅れたら致命傷になる
そういうつばぜり合いをしているのです。

ドイツ戦の神采配は極めて偶発的な要素に依拠されたものだったという側面も忘れるべきではないでしょう。




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<瓦解した必然 ドイツの崩壊>

0-1で前半を折り返した日本。
後半に向けた修正パターンは大きく分けて二つあります。

①4バックのまま、噛み合わせるのではなくゾーンでの奪いどころを整理する
②3バックにしてミラーゲームに持ち込み、マンツーマンでハメる

いずれにせよ、左サイドが押し出せず、空洞化した中盤をボランチ経由で右サイドに展開され、しわ寄せを受けた伊東がいつも戻る形で走らされ半ば戦犯のようになっているこの状況。修正すべきは左サイドの押し上げで、その為には3だろうと4だろうと自信を持ってDFラインを押し上げられるスピードのあるDFが必要な訳です。


つまり・・・



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まず修正すべきは左サイド、冨安INだ。


最終的に森保監督が3バック(5バック)のミラーゲームを選択した下りは、もう散々多方面で取り上げられてるので詳しくは割愛。
とにもかくにも、このシステム変更により、前半はやりたい放題だったドイツの3バック+2ボランチに日本は5対5の数的同数プレスを突如敢行。


後半1
前半、背走するばかりだった日本の守備が、後ろから前向きに押し出すかたちになり、一転してボールを回すドイツの選手達の身体の向きがプレッシャーからボールを守ろうと後ろ向きに。ドイツが日本陣内にスムーズにボールを運べなくなりました。


更に冨安を入れた事のメリットがラインの高さです。


DFライン
ボールの出どころに対するマークが明確になったこともあり、前半とくらべて10Mはラインが高くなりました。
ちなみに前半は↑の最終ラインの高さに中盤のラインを引いてましたね。




DFライン2
ラインが高いのでバイタルに打ち込まれるクサビに対しても吉田が自信を持って潰しに出られる!
そしてカバーに入る冨安の動きに注目して下さい。

こういうシーンで従来の日本のCBはドイツのFWハバーツに裏を取られるのを恐れてハバーツより深さを取ってしまいがちなんですよ。ところがボール状況を見て冨安は吉田のカバーをしながらもラインを僅かに上げてハバーツをオフサイドポジションで殺せるんですね。


森保監督は後半の立ち上がり10分間を見て、守備がハマり出したことを確認し、満を持して三笘と浅野を投入します。

三笘をWBで起用したのは陣形を崩したくなかった事と、伊東は左に持ってこれないと考えたからでしょう。
どうしても三笘を一つ前で使いたいのであれば、相馬と三苫を左に並べざるを得ず、それはあまりにもリスキーという事か。
現実的に考えて3-4-3で三苫を使うなら、現状WBしかないと思います。
(長友と縦に並べると三苫の外を再三オーバーラップするので、かえって邪魔になる)

ただあくまでミラーゲームに持ち込んだ3バックへのシステム変更は、守備の噛み合わせでは上手くいったものの、攻撃面ではまだこの時点ではあまり上手くいってないんですよね。


日本ビルド1
後半はしっかり後ろからつなごうという意思を見せた日本。(恐らくハーフタイムの指示)
ですがGKからのリスタートで3バックが目一杯ワイドに開き、間にボランチが落ちてくるこの配置・・・あまり仕込まれてないんですよね。
まあ、実戦でほとんど試してこなかったので当たり前とも言えますが。
↑の場面でもGK権田からボールを受ける吉田の身体の向きが・・・・




日本ビル21
これでビルドアップは無理よ(泣)

吉田の視野からはワイドに張った冨安しか見えておらず、ドイツからしても次のパスコースは読み切りでしょこんなの。




日本ビル3
もらった冨安の方が泣きたくなるぐらい苦しいので、吉田に返すしかなく、追い込まれた吉田がタテポン→ドイツが回収。
これ、左の前には三苫がいるんですが、彼を活かすには下でつないでボールを渡すルートがないと駄目なんです。(ブライトン&川崎フロンターレ参照)
左のタッチライン際に吉田-冨安-三苫が一直線に並ぶこの配置を見ても、3バックのビルドアップが仕込みきれていない事がよく分かります。


そこで後半25分、森保監督とドイツのフリック監督が動きます。

まず森保監督は前半ミュラー番で動かされ疲れの見える田中碧に変えて堂安を投入。
鎌田を一つ下げてボランチにする事で、後ろからのビルドアップに顔を出せるように配置転換しました。

ドイツのフリック監督は日本の守備が後半ハマっているので打開策として交代だったのでしょうが、この一手が最悪の悪手でした。
これまでドイツの攻撃の肝を担い、前半日本を散々苦しめてきたギュンドアンとミュラーを下げてしまったのです。
交代ボードの番号を見た時、何かの間違いかと思いましたが、もしかすると戦前のプランではこの時間帯に2点差、3点差をつけていてクローズさせる想定だったのかもしれません。

とにかくこの交代でまずドイツのポゼッションと、それを支えていた立ち位置が壊滅的になります。


【後半のドイツの配置】
ドイツビルド1
局面は何とか噛み合わせをズラそうとボランチのキミッヒがDFラインまで落ちてボールを受ける場面ですが、もう1枚のボランチで入ったゴレツカはどこ行った?
いるべきスペース(前半はギュンドアンが使っていたエリア)にいないので、浅野も背中を気にすることなくキミッヒにアプローチ出来ています。



ドイツビルド2
仕方なくキミッヒが一度はたいて、自ら動き直して再びボールをもらおうとしますが、キミッヒの一人二役ではさすがに無理があります。
日本はただボールの動きを追ってキミッヒを前後から挟めば良いだけで、孤立したキミッヒから出せる次のパスコースがシュロッターベックぐらいしかありません。これなら堂安も読み切りでGO!



ドイツビルド3
これはドイツと言えど厳しいwww

ドイツの混乱を象徴するかのようなチグハグなボール回しでしたが、ポジショナルプレーというスタイルを緻密に積み上げ偶発的なチャンスではなく必然的なプレーの積み重ねで勝とうとするチームが陥りがちな負けパターンとも言えます。
チームが緻密に「自分たちのサッカー」で組み上げられているので、どこか一つ歯車が狂うと脆いのです。
ちょっとしたバグが大惨事を招くチーム構造と言い換えても良いかもしれません。

昨今流行りのポジショナルサッカー(定位置攻撃)ですが、実はその内実は、正確な立ち位置よりもギュンドアンのような状況に対応出来る余白と頭脳を持ったパーツが決定的に大事だったりします。そういう意味ではどこまでいってもサッカーには属人的な領域がまだ残っていると言い換えてもよいかもしれません。人間がプレーする限りは。


混沌(カオス)に陥るドイツと反比例するように、日本の攻撃には明確な再現性が見られるようになってきました。
ビルドアップに鎌田が絡めるようになったからです。

後半ビルド日本1
先程ハマっていた左サイドからのビルドアップですが、サイドに流れた鎌田は逆足の右が利き足なので寄せてくるDFから遠い方の足でボールを受けつつ・・・




後半ビルド日本2
自陣ゴール前で顔が上がるこの余裕!
なんかヌルヌルとドリブルしながら、いとも簡単に逆サイドに展開しちゃってます。




後半ビルド日32
このサイドチェンジ一発で、ドイツの前線を4枚置き去りですから、そりゃー板倉はフリーで敵陣まで運べます、と。
後半も終盤になってボランチ鎌田のビルドアップ関与により、日本は攻撃も整備されてきました。


良い流れの日本はアクシデントすら好機に変えてしまいます。
後半30分、酒井が左太もも裏を痛めるアクシデントが発生。
恐らくこのアクシデントがなければ、酒井はフル出場させる予定だったのではないでしょうか?
伊東に変わって南野だった可能性もあります。

ところが酒井が使えない事で逆に選択肢が削られ、森保JAPAN史上、最も攻撃的な布陣が完成しました。
酒井に変えて南野を入れ、右WBには伊東。
左WB三苫、右WB伊東、ボランチに鎌田と遠藤という3-4-3は、この土壇場で森保監督にビエルサの生き霊でも乗り移ったのかと思わせるほど、最高に狂気の采配だったと思います。(*注 褒めてます)


奇しくも日本の同点ゴールが生まれたのはこの交代の1分後でした-

日本1点目ー1
そうそう、3バックは無闇に開くんじゃなく、近い距離感に並んで、大外の幅はWBの三苫に取らせる…この配置が強みなんですよ。
冨安はSHのホフマンが寄せてきてから三苫へ。4バックのドイツは右SBズーレの前に南野と三苫がおり、日本が2対1の数的優位を作れています。
つまり前半のドイツがやっていた事と全く同じですね。前半と後半で立場が入れ替わってしまいました。




日本1点目ー2
ここで三苫が上手かったのが、タッチライン際でズーレに1対1を仕掛けて縦突破を選ばなかった事です。
恐らく両者のマッチアップなら、縦突破も可能だったはずななのに、です。

もしこのシーンで三苫が縦突破を選択した場合、ハーフスペースを抜ける南野をゴレツカがカバーする対応になったはずです。

その昔、どこかの天才選手が言った言葉を思い出します。

「1対1も選択肢の一つに過ぎねえ」

ドイツも当然、三苫のことはスカウティングしてきています。

この一つ前のプレーで三苫がボールを持った時には、瞬間2枚のDFが寄せてきました。

勿論、三苫もその対応を観ているので・・・



日本1点目ー3
カットインだと…!?

敢えて密集している中に切れ込む事で、南野をマークするはずだったゴレツカ、更にキミッヒまで加えて、三苫一人でドイツの守備陣3枚を引き付けています。

常々私はサッカーにおいてドリブルは一つの引力だ、という定説を唱えているのですが、これを理解している賢いドリブラーは自分に引き寄せてラストパスという第二の選択肢を持っているものです(メッシ、マラドーナ、ネイマールetc)

この場面でも三苫はフリーになった(させた)南野へパスを選択



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日本1点目ー4
ドイツの先制点の逆バージョンですね。
ドイツの4バックに対して、前線を5枚にして、左から切れ込んだら最後に空くのは・・・





日本1点目ー5
空くんですよ!ここが!!


続くニ点目もドイツの焦りからの自滅で生まれています。





【日本の2点目のシーン】
2点目
日本陣内のFKからなんだけど、ここでボールサイドのCBであるシュロッターベックの若さも垣間見られた瞬間でした。
1-1に追いつかれた焦りもあって、早く攻撃権を取り戻したいという意識からシュロッターベックはラインを止めてオフサイドで日本の攻撃を断ち切ろうと安易に決断するんですけど、事前にズーレの方までは確認してないんですよね。
真ん中のリュディガーは最初浅野の走り出しに付いて行こうとする素振りは見せるんですが、目の前でシュロッターベックがラインを止めたのを見て慌てて合わせる好判断。

ところが一番大外のズーレは元々スピードに自信が無いタイプなので、南野のダイアゴナルランに合わせて深さを取ってしまったのですね。これにより浅野がオンサイドで抜け出しに成功→どこのムバッペだ!?というパーフェクトトラップからノイアーぶち抜きの決勝点。


逆転を許したドイツにはもはや攻め手も明確なプランBも残っておらず、最後はペップとナーゲルスマンという智将から薫陶を受けたキミッヒが涙目になりながら前線目掛けてひたすらロングボールを蹴り続けるという醜態を晒して敗れ去っています。
(キミッヒ「うえっwww・・・前線にレバンドもいないのに無駄だろチキショーwwっw(涙目)」)


森保JAPANはと言えば、1点リードした試合を5-4-1で塩漬けにするのはお手のもの!と言わんばかりの躍動感。
WB三苫がロングボールを跳ね返し、堂安、南野も守備に奔走。
各々が「今やるべきこと」をベンチからの指示無しで実行出来る頼もしさ。

最後は自分たちの勝ちパターンに実力で乗せてきた、文句ない逆転勝利だったと思います。



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<日常の延長線にある強さ>

この勝利の主要因として後半のシステム変更でまとめるのは簡単です。

ただ、サッカーにおいて噛み合わせとはあくまで選手個々のタスクを明確化させる下地に過ぎません。
各選手が前向きに守備を行う為の適切な距離を作るものでしかないのです。
マンマークがハマったところで各々が1対1で負けていたら惨敗は必至。

その意味で今から20年前、同じ3バックでフランス代表に挑んだものの、個でまともに張り合えるのが中田英しかいなかった日本代表は0-5の惨敗を喫しています。
「サンドニの悲劇」と言われたこの試合ではフランス代表から「日本には中田しかいなかった」と屈辱の捨て台詞まで食らうオマケ付き。

あれから20年-


後半、森保JAPANの面々はドイツを相手に実に堂々とプレーしていました。


当たり前です。


マンマークが明確になれば1対1の局面が増えます。
そして日本の中盤にはドイツ・ブンデスリーガのデュエル王遠藤が君臨しています。


後半、むしろ遠藤にビビっていたのはゴレツカ、キミッヒの方でしょう。



同じくブンデスリーガで常にMF部門のトップ3のスタッツを叩き出している鎌田は、普段通りのプレーでドイツの大男達を翻弄していました。


プレミアリーグでサラーを完封した冨安にとってドイツのFW陣は脅威でもなんでもなく、アーノルドをキリキリ舞いにさせた三苫のドリブルは冴え渡っていました。



もはや、彼らにとってW杯のドイツ戦は日常の延長線にあるものなのです。
もしかするとドイツと日本との差を現実より大きく見せていたのは我々の中にある古い価値観のせいだったのかもしれません。


適切な戦略を敷いてあげれば、全く引けを取らない「個の強さ」を、今の日本代表は持っているのではないでしょうか。


本ブログで展開したいのは森保批判でも、はたまた掌返しでもありません。
あくまでピッチ上で起きた事実を明らかにするのが趣旨であり、それをどう判断するのかは読んでいただいている貴方次第です。








テーマ : FIFAワールドカップ
ジャンル : スポーツ

日本サッカーの歪さの象徴として~日本×サウジアラビア~

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<日本サッカーの歪さの象徴として ~日本×サウジアラビア~

お久しぶりの人、どうもご無沙汰しております。
ブログでは初めましての人、ようこそ変態の世界へ。

このブログを放置していた期間に色々身の回りに起きたものの、わたくしサッカー店長の原点はここ戦術ブログにあります。
初心忘れるべからず、今一度原点に回帰して、ブログを更新したいと思います。

というのも、更新していない間にもDM等で「森保JAPANは一体全体どうなってるんや!?」「来年のW杯大丈夫なの?」「むしろ、ここらで予選敗退も悪くない」などなどたくさんの意見をいただいておりました故。
わたくしも重い腰を上げて、そろそろ日本代表について一太刀入れるべき時が来た、といったところでしょうか。


まず、昨年11月のオマーン戦黒星をピークに沸騰したW杯大丈夫なのか問題について。
これについては個人的に全く心配しておりません。予選が始まる前から全勝は無いだろうが、どう間違っても予選通過ラインは突破するだろう、と確信を持っていたからです。(万が一、3位で大陸間プレーオフに回った場合も、それはそれで楽しめるだろうという楽観主義ww)

言い方を変えれば、それだけ日本サッカーの総力は現在においてもアジアでは上位に入ると思っています。
これは主に選手個々のクオリティの高さが担保されていることからくる安心感でもありますが。

今回はここらへんも踏まえて本題に入りたいと思います。
先日のサウジ戦のマッチレビューから森保JAPANの現在(いま)を検証していきましょう。


<事前準備の差が明確になった立ち上がりの攻防>
まず日本代表のスタメンは先日の中国戦から継続でした。これはまあ過去の采配からも想定通りでしょう。
巷では不満の声も一部聞かれましたが勝っているチームをいじるにはそれ相応の理由が必要です。
チームとして明確な形がなく、選手同士の連携をパッチワークのようにつなぎ合わせて作られている現在の日本代表において、パズルを組み替えるリスクは小さくありません。

いっぽうのサウジにしたって前線のメンバーこそ一部入れ替わっていますが、やってくることは前回対戦時とほぼ何も変わっていません。後ろからしっかりボールをつないでくる事、その際3バックに可変して噛み合わせをズラしてくることなどなど。DFラインはほぼ同じメンバーなのでSBを上げてボランチを落とす可変のパターンも全く同じでした。

つまり、日本とサウジはお互いにお互いの手の内が分かり切った上での試合だったはずです。
となれば試合の優劣を左右するのはチームとしての事前準備と、選手個々のクオリティの総和になります。

ではまず実際の試合からサウジアラビアの最初のビルドアップに対して、日本がどのような守備を行ったかを見ていきたいと思います。日本のこの試合に向けた準備が問われるシーンになります。


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サウジアラビアのフォーメーションは4-2-3-1。ビルドアップではそこからボランチが1枚落ちて3バックに可変するのが彼らの一つのパターンになっています。
これに対し、4-3-3の日本はCFの大迫が1枚でCBを見る守備を敷いていました。両WGは相手のSBが高い位置を取って来るのでそれに引っ張られるように後退。結果的に大迫が孤立するようなかたちになっています。システム的には4-5-1気味の守備とでも言いましょうか。

この守備では当然、ボールの出どころが1対3の数的不利なのでプレッシャーなどかかる訳もなく、自由に蹴られてしまいます。



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サウジに高い位置を取ったSBに振られて、これに対応するのはSBの酒井。
同タイミングで酒井が出ていった裏のハーフスペースにサウジの選手が走り込んでいます。
このオートマティズムは試合を通して見られたサウジの形であり、彼らの事前準備が見られたシーンと言えるでしょう。



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結果的にサウジに最初の攻撃からクロスまで持っていかれてしまいました。
サウジの最も基本的な攻撃パターンに対し、前半1分で後手を踏んでいることからも両チームの「事前準備」ではまずサウジに軍配が上がったと思える立ち上がりでした。

そしてこの日本の守備は前半を通してあまり大きな変化は見られませんでした。
次が前半30分過ぎのシーンです。

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相変わらず大迫1枚ではファーストディフェンスにならず、サウジのCBに自由にボールを運ばれているのが分かります。
右ウイングの伊東は背後で高い位置を取るサウジのSBが気になるので出て行けず、実に中途半端な位置取りになっています。


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日本の守備はボールの出どころに対してファーストディフェンスが定まらないので、結局中盤を経由されてSBを使われています。



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前半の日本の守備の問題は結局サイドを使われて、前線のWGが後追いで戻ってくることにあります。
この守備だと例えボールを奪えたとしても、カウンターで本来使いたいWGのスピードが活かせません。


前半の日本の先制点がサウジの右サイドのスローインから始まっていたのは偶然でも何でもなく、こちらから攻めてくれた場合のみ逆サイドの伊東が高い位置に留まれるからです。

【日本の先制点につながったサウジのスローイン】
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恐らくこのスローインが逆サイドからだったなら、日本の先制点は生まれていなかったことでしょう。




<最適解の修正>

後半、日本の前線の守備が修正されていました。
後半立ち上がり5分のシーンでそれが垣間見られます。

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サウジのCBがビルドアップでボールを持つと、日本は両WGの南野と伊東が背中でSBを消しながら外切りで猛烈なプレスをかけに出ているのが分かります。

このハイプレスで落ち着いてボールを持てなくなったサウジは、慌ててSBへ対角のパスを送りますが・・・



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このパスは後ろのSB長友を押し上げることでインターセプトに成功。
ファーストディフェンスでサウジの選択肢を削っているので、後ろのDFが次を狙いやすい状況を作り出していました。

この守備の利点は、ボールを奪った瞬間に前線の3トップが高い位置でカウンターに関われることにあります。
クロップ監督のリバプールなども得意としている4-3-3の守備ですね。
サラー…じゃなくて、伊東のスピードを活かすなら前半と後半、どちらの守備が良いかは一目瞭然。

願わくば事前準備の段階で、この守備を仕込んでおけば前半からもっとチャンスを作れたんじゃないかという気も?

この後半の修正もチーム主導なのか、選手達の判断なのかは内情を見た訳ではないので分かりません。
ですが、後半も選手交代で3トップの顔ぶれが変わるとまた元の守備に戻ったりしていたので、前半を戦い終えた選手達主導の話し合いで修正された可能性は充分あるな、と個人的には思いました。


<中盤の三銃士>
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では続いて、日本の攻撃面を見ていきましょう。

日本が最終予選の序盤で苦戦を強いられていた要因がこの攻撃面にあります。
これまでの日本の攻撃における問題点は「前線に幅がないこと」「柴崎が間で受けずに落ちてきてしまうこと」の二つでした。

↓の画像はオマーン戦からのワンシーンですが、日本の典型的なポジショニングがコレです。
【日本のポジショニングの問題点】
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このポジショニングの問題点はまず3トップを敷いているにも関わらず、何故かFWが3枚とも中央に寄っていて3トップシステムが持つ本来の良さを全く活かせていないということです。
そして中盤ではIHの柴崎が密集を嫌がって間のスペースを離れ、相手の守備ブロックの外に落ちてきてしまっています。

よく現代サッカーにおける攻撃の定石として「深さ」「幅」「間」の三点を抑えろと言われますが、↑の日本代表が体現している4-3-3(らしきもの)のポジショニングでは何一つ抑えられていないということが分かります。



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このポジショニングでいくらボールを回したところで、3トップが密集しているので相手の4バックも密集していしまい、前線は常に3対4の数的不利の状況。
加えて中盤の「間」に人(柴崎)がいないので、相手は何の躊躇いもなく3トップを潰しに行けます。

この状況でDFラインから無理な縦パスを打ち込んでは失っていたのがオマーン戦前半までの日本の攻撃でした。

ですが、この試合の後半に伊東と三苫が幅を取るようになり、中国戦からは中盤で守田が使われるようになって日本のポジショニングが大幅に改善されるようになりました。



ただ今回のサウジ戦も序盤は中盤の3枚が上手くボールに絡めない時間帯が続いていました。
アンカーの遠藤がサウジの2トップに上手く消されて狭いスペースに押し込められたことで、CBからアンカーにパスが出せず、外→外一辺倒の攻撃ではせっかくの3トップの幅を活かしきれません。

この状況にいち早く反応したのが田中碧です。
積極的にポジションをローテーションしながら動いて、CBからのパスを引き出す動きを見せ始めました。

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このシーンでは遠藤の代わりに田中がアンカーの位置に入って、中盤3枚のポジションがローテーションされています。
そしてアンカーの位置に入った田中碧はDFラインまで落ちるのではなく相手の2トップの間で我慢のポジショニング。ボールを受ける前に背後から寄せてくる敵がいないことを認知しておきます。


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だから2トップに挟まれていても余裕で前が向ける!
間で止めて(遠い左足)→前向いて→インサイドパス(右足)
この淀みないアクションがFWのプレスバックを許さない。



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このパスを間で受けた守田も余裕で前向けちゃう。
これがKAWASAKIスタンダードの『止める・蹴る』なのか…!?
やはり4-3-3は中盤3枚が間で受けて前を向けたら強い。
中盤の真ん中を割ってパスを通しているのでサウジの守備がギュッと中央へ絞っているのが分かる。
これで3トップが幅を取る意味が最大化され、出し手の守田が前を向けるからスルーパスも出し放題。

そして、これだけサイドにスペースがある状況でモハメッド伊東を走らせておけば…




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格が違うのだよ!格が!


これなんですよ、日本がアジアで取るべき正しい振る舞いは。
サウジの左SBが脅威とかいう事前報道もありましたが、相手はマルセロでもアルフォンソ・デイビスでもないんだから、問題無し!

田中と守田が中盤を制圧し、遠藤がボールを狩りまくる。
遠藤は前向きにボールを奪った後の最初のパスが必ず縦パスで一つ奥を狙っており、これぞブンデスリーガというMFに仕上がってきましたね。この試合の日本の2得点はいずれも遠藤がボールを奪った後の縦パスが起点になっています。

時にポジションをローテーションしながら阿吽の呼吸を見せる中盤3枚はモドリッチ、クロース、カゼミーロの領域に足を踏み入れつつあると言ったら言い過ぎでしょうか?

とにかくこの中盤3枚は現在の森保JAPANの核として機能しており、不動のトリオとして外せないユニットになってきました。


サウジの怪しいSBと違い、攻守で完璧なプレーを披露したSBの酒井。
「戦術伊東」と言わしめるほどの存在感を見せつつある伊東。
吉田、富安という守備の格を欠きながらも、危なげないプレーで無失点に抑えた谷口、板倉の急造CBコンビ。

サウジは怪我で欠場の主力ポジションに代わりに出場した選手が大きくチームのクオリティを落としていたのとは対照的に、日本はベンチも含めた選手層の厚さが際立っていました。
日本とサウジの選手個々のクオリティを見れば、一つ一つのプレーの精度の差は明らかです。

最終予選とは序盤は勢いで勝ち点を稼げても終盤戦ともなれば代表の総合力が問われる戦いになります。
だからこそ、日本の予選突破は最初から疑っていません。問題はその先にあります。

「戦術伊東」でフランスやブラジル代表のSBを果たしてこの日のサウジのようにぶち抜けるでしょうか?

守備のゲームプランを試合が始まってから組み立てているようでは、前半の内に致命的な失点を喫するリスクがないでしょうか?


選手という素材は間違いなく上質なものが揃い始めているにも関わらず、これを適切に調理出来る料理人が不在なだけでなく、使っている調理器具と厨房が20年前の時代錯誤な代物という日本サッカーの歪み。
森保JAPANの最終予選におけるチグハグな歩みはその歪みを象徴しているかのようです。

このままなんとなく予選を通過してしまうと、またもや「課題が見つかる」W杯本大会で終わってしまいそうなデジャヴ感。

ならばいっそ・・・本大会前に大陸間プレーオフで南米5位とガチの削り合いをしておくのも良い経験になるかもしれません(笑)




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奇跡の価値は ~CL準決勝リバプール×バルセロナ~

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<奇跡の価値は ~CL準決勝リバプール×バルセロナ~

「奇跡」 「感動」 「アンフィールドの魔力」

ドラマティックな決着となったCL準決勝リバプール×バルセロナの一戦はCLの長い歴史の中でも今後語り継がれていくに相応しい名勝負となりました。

勿論、この試合の勝敗に「人智を超えた何か」が介在した事を完全に否定するのは難しいでしょう。
しかし、本ブログではこの試合を単なる奇跡で片付けるのではなく、あくまでそこにあったロジックを紐解く、いつも通りのアプローチでこの名勝負にも挑みたいところ。

奇跡が起こる必然性、圧倒的な優位を活かせなかったバルサの敗因とリバプールの勝因に迫りつつ、現代サッカーにおける戦術史の中でこの試合をどう位置づけるかも考察していきたいと思います。



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<奇跡を招いたバルサの構造的欠陥>

試合はキックオフから一方的にバルサ陣内でゲームが進んでいきます。
1stレグを0-3で落として後のないリバプールがスタートから激しいプレッシャーをかけてくる事は誰もが分かっていたので、問題はバルサがそれを真っ向勝負で剥がしに行くのか、リスクを冒さず受けに回るのか。
ところがバルサはリバプールの捨て身のハイプレスを前につないで剥がそうとすれば捕まり、ロングボールで回避しようとすれば簡単に回収される、実に中途半端な出方で完全に主導権をリバプールに握られてしまいました。

その流れのまま得たリバプールのCKをバルサが跳ね返したところから奇跡に到る第一歩、前半6分の先制点が生まれます。

この試合の勝敗を振り返る時、アンフィールドのサポーターに背中を押されたリバプールのプレス強度が挙げられる事に異論は無いですが、この所謂ゲーゲンプレスを支えていたのは逆説的に言えば「バルサ側のプレス」とそこから発生するこの試合が持つ構造に遠因があったと確信します。

それを象徴するリバプールの先制点の場面を見てみましょう。


【リバプールの先制点を解析】
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リバプールのCKが自陣まで跳ね返された後、GKアリソンを経て再びリバプールが自陣からボールをつなぎ始めたのがこのシーン。

ボールの出所に前残りだったJアルバがプレスをかけ、パスを受けるシャキリに対しては背中からブスケスが寄せる連動したプレス。



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パスを受けたシャキリに前を向かせる事を許さなかったバルサ。ここまではバルサのプレスの流れに問題は無し。
あとは戻ってきたファンダイクへの横パスにメッシとスアレスが挟み込む形でプレッシャーをかければボールを奪えないまでもリバプールのビルドアップ精度を大幅に削る事が出来るはず。




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しかしメッシは棒立ちでファンダイクを眺めるだけ。スアレスも絶賛ジョギング中。

結果的にファンダイクは完全にノープレッシャーのまま対角パスをバルサ陣内深くに蹴る事が出来ます。
せっかく高い位置までプレスをかけていたJアルバはこれが逆に仇となり、自分の背中のスペースを埋める為に急いでプレスバック。

DFが長い距離を背走させられるとボールを見ながら、つまり進行方向に背を向けながら走らされる事になるので周囲の状況を充分に認識する事が出来ません。Jアルバがイージーとも思えるバックパスをマネにかっさらわれた背景としてはファーストディフェンスとしてプレッシングのスイッチを入れに前へ出たものの、セカンドディフェンスがメッシだった為にプレスの連動がここで断ち切られ、前に出た事がリスクにしかならない状況になってしまったという側面があります。

結果的にJアルバが割を食う形となったこのリバプールの先制点にこそ、この試合が持つ構造が凝縮されていました。

プレッシング戦術はボールに対するアプローチが2つ、3つと連動しなければ、前に出て陣形を縦方向に圧縮している分、背後に蹴られた時に守備の矢印が全て引っくり返ってしまうリスクを構造上抱えています。
バルベルデのバルサが前からのプレスを捨てて、基本的にリトリートを採用しているのはこの為ですね。
つまりメッシとスアレスの2トップを守備の組織に組み込めないという特殊事情に他なりません。

しかしこの先制点の場面では試合開始から一方的にバルサが押し込まれていた事もありCKを跳ね返したボールをせっかく一度はGKアリソンにまで戻させたので、ここで一気に押し上げて陣地を取り返したい(自陣ゴール前から少しでもボールを遠ざけたい)という、DF心理としては到って真っ当な行動原理がJアルバに働いたと見ます。


では、そもそも何故バルサは一方的に押し込まれてしまっていたのか?

まずバルサの布陣は守備時、4-4-0という極めてイビツな構造になっています。
となるとリバプールはこのシーンに限らずCBのファンダイク、マティブ、そしてアンカーのファビーニョは常にフリーな状況を確保出来ていました。

キックオフからリバプールの攻撃の起点は明らかにこの3枚で、特にCBのファンダイクは得意の対角ロングフィードをノープレッシャーな状況から徹底的にバルサDFの背後に放り込んでいます。
但し、ここまではある意味、バルサ側(バルベルデ)も割り切って受け入れた試合構造。
これを回避したければCBに対して最低限のファーストプレスが必要なので、今季のバルサは敵陣でのボール回収を諦め、回収地点を自陣深くに設定→ここからのロングカウンターからスアレスとメッシの個の暴力で相手の骨を断つ、というチーム構造になっていました。


確かに、持ち駒で圧倒的な優位性を持つ国内リーグであれば、これは充分収支で採算が取れる戦術です。
バルサは別に4-4の8人で守ってようがDFラインを低く設定し、背後のスペースさえ消していればピケらCBの個人能力で最後は守れる計算が立ちます。仮にそこを突破されようとその後ろにはテアシュテーゲン神が控えていますしね。



しかし相手がリバプールクラスになってくると話はそれほど単純には進みません。
まずファンダイクのロングフィードは正確無比の精度を誇り、マネやシャキリのフィジカルモンスター相手に常にヨーイドンで競り合わなければならないバルサのSBは災難だった事でしょう。
なんせJアルバやSロベルトは自由に蹴れる状況のボールに対し、背走しながら、ボールとマークの同一視が出来ない状態(相手WGは常に自分の背後を取ろうと走っている)でシャトルランを繰り返し強要される状況ですからね。

一方、このボールをヨーイドンで走り出すマネやシャキリは前向きのまま、ボールと自分をマークするDFとを自然な身体の向きで同一視したまま、自分のタイミングで走り出せば良いだけです。
だからこそ現代サッカーではファーストライン(前線)がこのボールの出所に何らかの制限(パスコースを限定する、ボールホルダーの時間を制限するetc)を与えないとズルズルと押し込まれる事になる訳ですが・・・。なんせバルサの布陣は現代サッカーではアブノーマル過ぎる4-4-0。


この構造こそが、リバプールの、否クロップサッカーの強みを最大限に発揮させる下地となっていました。
何故ならクロップのサッカーは攻撃も守備も常に「前向き」に矢印が出ている時、その推進力を最大限に発揮出来るからです。

バルサ側のファーストプレスが皆無だった事で、リバプールは常に前向きにロングボールを蹴れる⇒バルサは常に後ろ向きに走らされる事から守備も攻撃も始まる⇒リバプールはこのロングボールがマイボールになろうとバルサボールになろうと構う事はなく、ただひたすら前向きに次のプレスをかければいいだけ


これほどゲーゲンプレスを行うに恰好な状況が果たして他にあるでしょうか?


当然の帰結としてリバプールの2点目も、基本的にはこれと同じ構造で生まれています。

【リバプールの2点目】
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局面はSBアーノルドに対し、バルサはボールサイドのコウチーニョを基準にディアゴナーレのL字ラインを形成。
しかしここでも本来アンカーに蓋をすべきFWのメッシが独自の立ち位置(笑)にいる為、ファビーニョはフリー。
バルサは4-4の中盤ラインが守備のファーストラインになるのでかなり苦しい状況である事がよく分かる局面と言える。






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ファビーニョに対してはブスケスが出て行く形に。
と同時にラキティッチは横スライドしながら絞ってカバー







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ボールは逆サイドのミルナーまで振られるとバルサの中盤ラインは全体がピッチの横幅68Mをスライドさせられるハメに。
ここまでボールの出所に全くプレッシャーがかかる事なくサイドを変えられている







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次の横パスに対しては再びブスケスがチャレンジ、ラキティッチがカバー
相変わらずファビーニョはずっとフリー。バルサはどこでボールを奪うのか守備の基準点が定まらない。








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メッシが蓋をしないファビーニョには仕方なくラキティッチが遅れて出て行く事になるが、ボランチの2枚がチャレンジ&チャレンジという極めてイビツな守備になっている。
ボールは上がってきたSBアーノルドにもう一度振られる事に








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アーノルドにはコウチーニョが出て行く事になるのでバイタルを埋めるのはボールにチャレンジしたばかりのラキティッチ




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ラキティッチがきっちりスライドした事でここでボールを回収






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ハイ、問題のシーン

ここで回収したボールをJアルバに預けた横パスを掻っ攫われて失点。
失点につながったのはボールを回収したラキティッチの身体の向きで、リバプールのプレスをモロに受ける方向でプレーしてしまった事が痛恨でした。







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無論、正しくは逆サイドに身体を開いてプレーする事で、その向きならば隣のブスケスと一つ奥でフリーのメッシに展開出来ていた場面。

しかし・・・・である。


ラキティッチがここでボールを回収するまでの流れを巻き戻して考えてみましょう。
①ボールサイドのカバー⇒②ブスケスのチャレンジに対するカバー⇒③サイドを変えられて横スライド⇒④再びブスケスのカバー⇒⑤メッシの代わりにファビーニョに寄せる⇒⑥サイドを変えられて横スライドしながらカバー⇒ボールを回収

右から左、左から右へと振られながら3回、身体の向きを変えさせられている。
同じ守備でもボールを主導的に追い込んでいるのと、相手に自由に動かされてリアクションで走らされているのとでは奪った瞬間の余裕、ポジショニング、全体のバランスは大きく変わってきます。
やっとの事でボールを回収したラキテッチにこの時、周囲の状況に対する認知と余裕はほとんど無かったはず。
これも1点目と同様、人一倍ハードワークした選手(ラキティッチ)の余裕の無さがゲーゲンプレスの餌食にされた恰好と言えるでしょう。





仮に・・・・もし仮に、ここでボールを回収したのが極東に放牧させたあの男であったなら・・・・

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この位置でのボールロストは有りえなかったはずですが、そもそもこのポジションがイニエスタであったら今度はラキティッチと同様のハードーワークが出来ず、結果ボールを回収出来てはいないというジレンマ。

このジレンマこそバルベルが率いるバルサの本質である、と確信します。



<質を確保する為に量で担保する>
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バルベルデのバルサが苦しいのは、このメッシ+スアレスの「質」を確保する為に、他のパーツで量を担保するというその構成にあります。

第一の被害者はリバプールから鳴り物入りで獲得したコウチーニョでしょう。
元来、通常のチームであればメッシやスアレス側にいるはずのこの王様が彼らの分の量を補う便利役で使われている配役にまず無理があると思います。

過去、この役割を背負わされた選手は肉体的にも精神的にも疲弊し、やがてクラブを後にする命運を辿ってきました。
バルサで前任者でもあるネイマールは、再び王様へと返り咲くためにPSGへ移籍し、今では「パリの王様」を謳歌しています。
マドリーでこの役割を担わされてきたベイルは不満を露に移籍寸前という状態。


バルサでコウチーニョのパフォーマンスが批判の対象になるのは分からないではないですが、あのポジションで使うなら他の選手を獲って来るべきだったのではないでしょうか。
(個人的には「戦術コウチーニョ」が可能な中堅クラブで輝く彼のプレーが見たいものです)


第二に4-4の2ラインで守るアブノーマルなシステムを機能させる為に、中盤も質より「量」を重視した構成にならざるを得ないという悩みです。

本来、「バルセロナの中盤」という選手像から最も合致するはずのアルトゥールがこの大一番でベンチに座り、代わりにピッチではビダルが獣のように泥だらけになっている姿がその象徴とも言えるのではないでしょうか。


しかし、メッシ+スアレスを起用する為のビダル抜擢が、この試合その2人の存在感を消す一因になっていたというのは皮肉という他ありません。



【メッシが消える中盤ビダルの弊害】
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局面はバルサの中盤での組み立ての場面で、ビダルにボールが入る瞬間。
脇にメッシが得意のポジションで控えており、ビダルは前向きにボールを受けて預けるだけの簡単なお仕事です





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・・・が、しかし。ビダルは身体の向きを変えられず、そのままの姿勢でバックパス






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1本バックパスを挟んだ事でその間にリバプールのスライドが間に合って、メッシへのパスコースは死に筋に






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その後、待っていてもボールが出てこないメッシが我慢出来ずに中盤の低い位置まで降りてくる悪循環へ。
代わりにビダルが本来メッシが受けて欲しいスペースにいるというこのアンバランスさである





結局バルベルデは0-3になってから慌てて中盤の優位性を取り戻そうとSロベルトを中盤に上げる+ビダルを下げてアルトゥール投入という後手後手の采配。

しかし今の攻守分業、質より量で勝ってきたバルサがいまさら中盤の優位性で勝負に出ようとしても中途半端感は否めません。
その象徴とも言えるシーンがリバプールの勝利を決定づけた4点目のCKにつながるバルサのボールの失い方に現れています。


【リバプールの4点目につながるバルサのボールロストを検証】
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後半、バルサに必要だったのはクロップによって極限までハイテンポに上がったゲームのリズムを一旦落ち着かせる事。
この場面ではリバプールのファーストラインから鬼プレスを受けているDFラインを助ける為にアルトゥールが落ちて数的優位と時間を作り出しました。
加えてブスケスを消そうと相手が食い付くなら、脇のスペースを使えるSロベルトという3人が有機的に連鎖した配置。
これぞ我々が知っている”本来のバルセロナの姿”です



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Sロベルトの間受け成功(この試合、一体バルサは何回の間受けを成功させたのか・・・記憶に薄い)

あとはここにメッシ+SBが絡んで、後ろで作った優位性を前線まで運ぶだけ!






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ところが一度狂ったバルサのイビツな構成はとてもじゃないですが、0-3の試合状況から中盤の優位性を取り戻せる状態ではありませんでした。

もはや大外を取り囲むラインの「間」にポジションを取っているのはブスケスとSロベルトのみという、
一体どこのモイーズが指揮しているのか!?状態の配置。

この配置に一体いくつのトライアングルが描けるというのか?(ファンハール先生も激おこ)
天国のクライフにセメドが延々クロス60本を上げるファイトボールを見せる気か?

勿論、この後中央で孤立したSロベルトがリバプールのボール狩りの餌食にされたのは言うまでもありません。
ここからカウンターを食らい、その流れのCKからしょーもない失点が生まれ、それが勝負を決めたのです。
(きっとクライフ先生からの天誅)



<量で質を凌駕するクロップのロック魂>
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本ブログではバルサやマドリーの守備構造を常々「貴族守備」と評してきましたが、それと比べるとクロップのリバプールはまさに「炭鉱の労働者」で固めたような勤勉さとハードワーク、そして魂が感じられます。

唯一リバプールで特権に近い役割が与えられていたのがサラーでしたが、元々の構造がバルサとは違うので、この大一番でサラーとフィルミーノという「質」を欠く状態に陥ってもリバプールは4点取って逆転出来うる下地を持っていました。
反対にバルサがこの状態からメッシとスアレスを欠いていたとしたら100%逆転の芽は無かったと言えるでしょう。

両チームの10番を背負った選手のプレーにこの試合の全てが集約されています。


【後半ロスタイムの赤の10番】
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時間は後半ロスタイム。もはやリバプールの攻め手は前線のターゲット、オリギめがけて放り込むのみという、どこぞのイニエスタが今極東で味わっている絶望のような光景(勿論4-0で勝っているので当然)

しかし、この神頼みのようなロングボールにですら、もしこぼれてきた時のワンチャンを律儀に狙い続ける10番マネの姿がその傍らに必ずありました。
この走り続ける10番の姿勢こそが、Jアルバを疲弊させ、ラキティッチの判断を誤らせ、ひいてはリバプールの大逆転を生んだのです。



マネ0517-2
GKのテアシュテーゲンの手にボールが収まった瞬間には、何事も無かったように守備へ戻る10番の姿が
これも90分繰り返されたプレーです





マネ0517-3
そのまま自陣DFラインまで吸収されて、大外のJアルバをケア。
DFラインがこの地味なカバーにどれだけ助けられた事か、想像に難くないでしょう。




マネ0517-4
リードしているチームの終盤守備固めに有りがちなのがこのままズルズルと下がって人数だけはゴール前にかけて、何故かやられるというフットボールの不条理パターンですね。
しかし、あくまでも受け身で守備をしなクロップのチームにあって、チャンスと見ればこの横パスにGO!をかけるマネ




マネ0517-5
そしてこの寄せのスピードよ。ブスケスがファーストタッチする瞬間にはもう背中にマネの息づかいを感じるこのアプローチ





マネ0517-6
更に奪った瞬間にはカウンターの先陣を切り・・・・







マネ0517-7
気付けばもうゴール前!!


スタンド観戦のポジェッティーノ
『すでに試合は90分を回ったというのに、まるで今始まったかのようなあの動き・・・・あの赤の10番は脅威!』


一方、キックオフからすでに後半90分のような運動量だったバルサの10番。
果たしてどちらの10番が”世界ナンバーワンの10番”と言えるのか?

そこに誰も明確な答えが出せないところにフットボールの奥深さがあるとは思いませんか-




<停滞していた現代フットボールの戦術史が動き出す予感>

近代表紙

ここ5シーズン、チャンピオンズリーグのタイトルはBBCやMSNといった、組織よりも個の質にものを言わせて殴り勝って来た王者達によって独占されていました。


「選手こそが戦術」

勿論、それもフットボールが持つ紛れもない一面ではありますが、そういう意味で個人的には近代戦術史に若干の停滞感を感じていたというのが本音のところでした。
攻守分業、貴族守備のチームが札束で殴り合う最高峰の舞台に。

しかし、今季のチャンピオンズリーグではその潮目に変化の兆しが見られます。
強者必衰、スペインの貴族チームに「それで勝てる時代は終わった」という痛烈なカウンターパンチを浴びせた挑戦者達による頂上決戦。

ハードワークをベースに戦術的な幅と深みを持ったチームが今季のファイナリストに顔を揃えました。

俊英アヤックスの躍進は「札束から育成への原点回帰」というアンチテーゼなのか?

迷えるバルサは「クラブの哲学」を見直す転換期を迎えているのか?


現代サッカーの戦術史にとって節目となりそうな予感が漂っている。


















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テーマ : 欧州サッカー全般
ジャンル : スポーツ

『愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ』~日本×カタール~

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<愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ ~日本×カタール~

西野JAPANのロシアW杯ベスト16を引き継ぐ形で発足した森保JAPAN。
昨年のテストマッチでは南米の強豪ウルグアイを破る快進撃を見せ、アジア杯決勝を迎えるまで目下無敗という成績。
このカタール戦を迎えるまで、森保JAPANには追い風しか吹いていなかったはずが、たった1つの敗戦で今や空気は一変してしまいました。

それぐらい、衝撃的な完敗劇だったと言えるのではないでしょうか。

しかし今大会の勝ち上がりを見ても森保JAPANの強さはアジアでは際立っていたはずでした。
「絶対に先に失点しない」という森保監督の強い哲学が感じられるゲーム運びは、今大会で台頭した「日本の未来」こと冨安を中心にしたDFラインの安定感と5-4-1の撤退も辞さない「人海戦術の守備」が鉄壁を誇っています。

象徴的な勝ち方であったサウジ戦では脅威のボール支配率23%で1-0の勝利。
「ボールなどいらない、欲しいのは結果のみ」という割り切りが真骨頂のチームであり、確かにアジアでは日本が組織的に我慢比べを挑めば、必ず先に根を上げるのは相手チームの方です。
大会優勝最有力と見られていたイランも日本の我慢比べに根負けして結局自滅していました。

勿論、これが通用するのはアジアまでです。
日本サッカー界はW杯後の4年間で毎度アジアでイキって調子に乗り⇒世界に出て叩かれるのサイクルを繰り返してきた歴史があります。

だからこそ、このアジア杯では日本が優勝候補であり続けられる訳ですし、それは大会前から分かっていた事でした。
しかし、このアジアで欧州や南米の一線級を相手にした時のような完敗を喫したとなればこれは一大事です。
この一敗は前回大会でシュート37本を打ちながらPK負けしたベスト8の"アレ"とは全く別次元のものとして扱うべきでしょう。

ではせめてこの歴史的な一敗という「経験」から我々も最大限学べるよう、敗因を分析しながら試合を振り返っていきたいと思います。



<恐るべきカタールのポジショナルサッカー>
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日本の最大の敗因、それはカタールがこれまでのアジア諸国には見られなかった緻密なサッカーで日本を完全攻略してきたからでした。
この試合、これまでの日本の勝ちあがり方をスカウティングしたカタールは3-5-2の布陣を選択。
具体的な狙いは両チームの布陣の噛み合わせを見れば明らかです。

【日本×カタール 両チームの布陣噛み合わせ】
日本カタール2

後ろから丁寧にボールをつなぐカタールはビルドアップの始点で日本の2トップに対し3対2の数的優位。
加えて1・5列目をウロウロしているFW11番のアフィフがこのチームにおけるメッシ役で、機を見て中盤に降りてくるので中央エリアでは日本の2ボランチ×カタールの3MF+1FWという絶対的な優位性を築いています。

では実際の試合序盤のシーンからカタールの狙いと日本の噛み合っていない守備を検証していきましょう。


【カタールの4-4-2殺し】
カタールポジショナル1
カタールの3バックから始まるビルドアップに対し、日本は2トップで規制をかけようとしていますが、ここではカタールがCHまで加わって4対2の鳥カゴ状態になっているのがよく分かります。




カタールポジショナル2
3バックに規制がかからないので、間を通されてボールはCHへ。
このCHに柴崎が出て行くと、もう1枚のボランチ塩谷は前線から落ちてきたFWアフィフをケアするのでハーフスペースに落ちてきているIH(インサイドハーフ)が完全に浮いてしまいます。
しかも日本のDFラインはカタールの1トップ+WBでピン止めされているので、この落ちていくIHを捕まえられる選手は誰もいません。

3バックで2トップのファーストラインを剥がし、CHでセカンドラインのボランチ(柴崎)を食い付かせたら次はハーフスペースへ、という具合に日本の守備ラインを1列づつ剥がしていく狙いがカタールの配置に集約されていると言っていいでしょう。


そしてこれがいわゆるオーソドックスな配置の優位性を活かした4-4-2殺し、ポジショナルプレーの系譜です。

吉田麻也
『ボランチの脇で11番を誰が掴むのか。1点目も2点目もそこを起点にされて失点している。そこでの臨機応変さが足りなかった』




-3バックに対して2トップで守備をしていたらハマらない-


ならばSHを加勢させたらどうか…?


この安易な対応こそがカタールの罠であり、結果的に日本は2失点という重過ぎるしっぺ返しをくらう事になろうとは-



【日本の失点シーン検証】
カタール得点1-1
続いてもまたカタールの3バックから始まるビルドアップに対し、2トップ+SHの原口が加勢して3対3のプレスを敢行




カタール得点1-2
しかし、この時の原口の寄せる意識は完全に「人(CB)」に向いており、背中にいる敵と自分の内側のパスコースを切る意識が皆無と言って良いレベルで低いと言わざるを得ない。

ポジショナルプレーとはすなわち相手の出方を見た後での「後出しジャンケン」なので、カタールのCBは原口のこの寄せを見て隣のCBではなくハーフスペースへのクサビを選択




カタール得点1-3
やはりこの原口の寄せ方だとこのコースを通されてしまう。
守る側である日本からすると、このハーフスペースにクサビを入れられてしまうと一気に苦しい状態に追い込まれてしまうのだが・・・




カタール得点1-4
それは何故か?と言えば、中を通された場合、守備ブロックは一度中央に収縮させざるを得ない。
カタールはここでもそんな日本の動きを見た「後出しジャンケン」で今度は空いたサイドのスペースへ流れたアフィフへサイドチェンジ。
(この11番アフィフは本当に厄介な選手で、常に日本の陣形の動きを見た後で「空いたスペース」を察知し、そこへ顔を出す)





カタール得点1-5
上空からのアングルで見ても明らかな通り、中に絞った日本の守備ブロックと、サイドに空いたスペースが一目瞭然。
これだけスペースのあるサイドにボールを展開されたら守備側は後退するしか手は無い。







カタール得点1-6
↑はアフィフがサイドでボールを受けた後のシーンです。
カタールは次のクロスに備えて、FW+IHの2枚がゴール前に走り込もうとしていますが、そのポジション取りに注目。
きちんと5レーンにおけるハーフスペースのレーンをIHが走っています。
中の3枚が全員、日本のDFとDFの間のコースを取っている事にカタールの完成度が垣間見えます。
(明らかにこれまで対戦した中東の「前線個人頼みサッカー」とは一線を画している)






カタール得点1-8
で、実際にクロスが中央のFWに入った瞬間ですが、結果的にこの後、オーバーヘッドを選択してゴールにつながるこのシーン。
ゴールを決めたFWの両脇をIHがサポートに走り込んでおり、クロスが入った時点でカタールにはいくつもの選択肢があった事が分かります。
攻撃の確率とはいかに多くの選択肢を用意するかなので、この状況を作った事が既にカタールの勝利であり、
このゴールは結果的にその選択肢の中から自分でオーバーヘッドという選択を取ったに過ぎない。



そして続くカタールの2点目も全く同じ構図から生まれています。



【カタールの2点目を検証】
カタール得点2-1
このシーンでは左SHの原口と右SHの堂安がポジションを入れ替わって守備をしていますが、人が変わっても全く同じ状況が生まれている事にご注目。
ここでも3バックの右CBに堂安が寄せるが、やはり意識はあくまで「人(CB)]であり、背中にいる敵と自身の内側のコースを切る意識が希薄になっています。

↑このシーンを見て「堂安じゃなくて、ボランチの塩谷がこのコースを切ったら良いのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、もしボールに充分なプレッシャーがかかっていないこの状況でボランチの塩谷が堂安の背後をケアするポジションを取った場合、一体何が起こるのか?




カタール得点2-2
仮に塩谷のポジションが堂安の背後寄りにスライドしていたら、一番肝心な中央のFWへのクサビルートがポッカリと空いてしまいます。
そもそもボランチはこの一番打ち込まれたくないコースとスペースを消すのが役目なので、ここを空けてしまったら本末転倒。
故に、だからこそハーフスペースというのは現代サッカーにおいて有効と言える訳ですね。






カタール得点2-3
結果的に1失点目と全く同じパスコースを通されてしまう日本。
こうなると守備側は自陣ゴール前まで撤退あるのみ






カタール得点2-4
しかーし!自陣で4×4のブロックを形成しても、やはり堂安の中を閉める意識が低過ぎてバイタルへのコースがガラ空きやー!






カタール得点2-5
ここを通されてしまうと、CBの吉田と冨安はまず失点の確率を減らす為、DFライン背後のスペースを消す後退の一択しかない。
(もしここにスルーパスが出たらそれこそ致命傷)








カタール得点2-6
故にドリブルで中に切り込まれてそのままシュートを打たれるこの場面でも、一度背後をケアした分、CB吉田の対応が1歩遅れて寄せきれず⇒シュートコースが消しきれなかったというロジックですね。

TVの前で思わず「何で吉田、寄せんねん!」と思ってしまった方は、あの瞬間CBがボールに食い付いて、背後にスルーパス出された時には文句を言えないのでご注意下さい(笑)





<後手に回り続けた日本の対応>
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気付けば前半26分でスコアはまさかの0-2。
その原因ともなったこれまでの日本の守備の問題点をまとめてみましょう。

・3バックにされた事で2トップ×3バックだとプレスがハマらない
・空いたCBからCHを使われて、ボランチが出て行くと今度はハーフスペースにいるIHが浮いてしまう
・かと言ってSHを2トップに加勢させて3バックに「3対3」の同数でプレスに行くと中を通されて、これまたハーフスペースを使われる


うーん・・・こう書き出すとまさに八方塞りですね(^^;
つまり、これが「人」に付くだけの守備の限界であり、だからこそ4-4-2ではSHが守備の戦術インテリジェンスが低い場合、スコスコにやられるっていう良い一例なんですけどね。

3バックに対して4-4-2で守る場合、SHが内側のコースを背中で消しながらCBに出て行くという「1人で2人を見る守備」が出来ないと簡単に中を通されてしまいます。
この「1人で2人を消す守備」が日本で最も得意なSHは乾なんですが、その乾もスペインに渡ってからこのポジショニングを叩き込まれたので現状、日本の育成でこの守備は実装出来ていません。

ちなみに乾はエイバル時代のメンディリバル監督から「CBとボランチとSBの3枚を1人で見ろ!」と言われており、「1人で3枚を消す守備」を要求されていたというんですから、世界のトップはげに恐ろしき。
(具体的な方法は背中でボランチを消しながらCBを牽制し、SBに出されたら一気にスライドする、という頭脳とハードワークを兼ね備えた極めて高レベルのプレーでした)

そんな乾だけに試合後のコメントは悔しさが滲み出ています。

乾『2トップで3バックを見ていた。それだと絶対に(プレスは)はまらない。気づいていたのに言えなかった』



それにしても日本ベンチの対応は一体どうなっているのか?
0-2とされた後の日本ベンチが抜かれた画を見て、戦慄が走ります-

森保前半28分
まだ監督とコーチが対応を話し合っている・・・だと?

この試合、キックオフから5分もすればカタールの布陣とその狙い、そして4-4-2との噛み合わせの悪さは一目瞭然だったはず。であるならば遅くとも前半10分~15分までにはベンチから修正の一手が打たれるのはCLなどのトップレベルのサッカーでは当たり前の光景です。
それをもう前半も30分になろうかというこの時間帯でまだ対応策を決めかねている・・・というのでは現代サッカーでは致命的とも言える遅さ。

実際にそうこうしている内にスコアは0-2になってしまった訳ですから、勝敗の8割はこの前半30分までに決まってしまったと言っても過言ではないでしょう。


この後、ベンチの森保監督がタッチライン際に大迫を呼んで前線の守備を修正したのは前半35分の事。
森保前半35分

「どう修正してくるかな?」と注目して試合を見ていましたが、この修正が実際にピッチ上で具現化されたと思われる前半45分のシーンがコチラ↓


【前線の守備を修正】日本修正(前半44分)
カタールの3バックに対してはパスが出てからSHが出て行く形だと先ほどのように中を通されてしまうので、あらかじめ堂安、原口のSHを上げて大迫とマンツー気味の3トップを形成。
CHにトップ下の南野がマンツーマンで付いて、IHの2枚を2ボランチ(柴崎+塩谷)で、WBにはSBを押し出して、逆サイドのWBを捨てる事で最終ラインの「+1」を確保。

やはり「守備=人に付く」意識が強い日本の修正はどこまでいってもマンツー寄りではありましたが、こうする事でようやく守備に安定感が生まれ、前で引っかけるシーンも出てきました。


・・・しかし、時間はもう前半45分を過ぎたロスタイム。
あまりにも遅すぎた修正であり、終始後手に回り続けたこの試合を象徴するようなシーンでした。



<カタールのゾーンを主体とした守備>

一方、カタールは守備もポジショナルディフェンスと言うか、あくまで人ではなくボールとゾーンを主体にした見事な配置を見せていました。


【カタールの守備を検証】
守備カタール4
↑は守備時WBを下げて5-3-2で守るカタールの守備ブロックの図

2トップが縦関係で、中盤の3枚がボールサイドからL字型に綺麗なディアゴナーレ(チャレンジとカバー)を形成しているのが分かります。
カタールの守備は1人が1人に付く、というものではなく、ボールと味方を基準にしているのでこの時の各選手の果たしている守備の役割を可視化させると以下のようになります↓


守備カタール3
まず前線の大迫は3CBがいるので、大迫がどう動こうと3対1の完全数的優位で対応出来るので問題無し。
縦関係の2トップは1・5列目に入る11番のアフィフが背中でボランチ(柴崎)を消しています。
そしてボールホルダーのSB酒井にはIHが寄せますが、ナナメのコースを切りながら中から寄せるので結果としてボールに寄せながら背中にいる堂安も消せているので「1人で2人を」見れています。
そしてこのIHとディアゴナーレを組むCHは、あくまで味方のIHの位置を基準にナナメ後方に位置取る事で「相手(堂安)」に付くのではなくスペースを消しながら結果として目の前にいる堂安を見つつ、背中でトップ下の南野を消せているのでこれまた「1人で2人」を見れてしまいます。

このようにゾーンベースの守備はあくまでボールと味方を基準とした位置を取り、その結果として間のスペースに立っている敵(人)を消してしまう・・・という守り方です。

この守り方の利点は以下の通り
・人を前に置くのではなく、自分が前で背中で消しているのでパスが出てから寄せるのではなく、パスコース自体を消せている
・守備がリアクションではないので相手にどう動かれても陣形のバランスが崩れにくい
・SBが上がったらどこまでも付いて行く原口・・・というような属人的な過負荷が無いので運動量を節約出来る

そして最大の利点は「ボールを奪った瞬間にカウンターで優位性が持てる点」です。


【背中で消す守備の利点=カウンターの優位性】
カタール守備ゾーン1
↑はカタールのゾーン守備の優位性が明らかになったワンシーン。
まずカタールは縦関係の2トップがディアゴナーレを組む事で2枚で日本の2CB+ボランチ(柴崎)を消せているのが分かるかと思います。
3バックのカタールに3枚をマンツーでブチ当てないと守れない日本とはまず守備の始点で違いが明らか。





カタール守備ゾーン2
カタールはここでもボールと味方を基準にディアゴナーレを組むのでFWもCHも背中でコースを消せている状態。
追い込まれた吉田はグラウンダーのパスだと全てカットされるので浮き玉のロングボールを前線に蹴るぐらいしか選択肢が無い






カタール守備ゾーン3
まんまとロングボールを「蹴らされた」吉田だが、ここは逆サイドのIHが絞ってカバーしていたので難なく処理。
そしてこのボールを跳ね返す瞬間に、マークを自分の「前」ではなく「後ろに置いていた」事の利点が明らかに。
カタールはこのボールを前線に跳ね返せば、攻撃と守備の⇒が入れ替わるのでボランチ(柴崎)の背後でFWがフリーで前を向ける状態に





カタール守備ゾーン4
ハイ!出たこの形。2CBに2トップで向かって行ける極めて危険なカウンター。
日本は自陣から何でもないロングボールを一発蹴っただけで、跳ね返されたらもうこの状態である。


これが攻撃と守備を分けて考えるのではなく、連動したものとして
奪った瞬間のカウンターを想定した配置で守る、という考え方ですね。

これ即ち、ポジショナルプレーなり



<両指揮官の修正力の差が明暗を分ける>
20190202_6984.jpg

カタールから見れば前半を終えて2-0。あとは安全運転で後半を乗り切れば問題は無いだろう。
という事でハーフタイムにカタールのサンチェス監督は5-4-1へ布陣を変更して守備を固める一手を打ちます。
しかし、これは結果的に日本に息を吹き返すチャンスを与える悪手でした。


【5-4-1にしたカタール】カタール5-4守備1

日本は前半、ボランチもSHも上手くゾーンの中に取り込まれてパスコースを消されてしまい、結果的にCBやSBから長いアバウトなタテパスを入れるしか攻撃の手が無かったのですが、後半のカタールが5-4-1で撤退を選択した為に、前半ほとんど前を向いてボールを持てなかったボランチ、とりわけ柴崎がフリーで前を向けるようになったのは救いでした。

日本はボランチがボールを持てるようになるとSBが上がる時間を作れるようになり、攻撃に「幅」と「厚み」が生まれます。
更にこの状態でボールを持った柴崎はこの身体の向きから・・・・





カタール5-4守備2
このコースにタテパスを刺せるから!

柴崎はこういうオープンな姿勢からサイドに出すと見せて相手DFを動かし⇒厳しいコ-スにタテパスを通すのが真骨頂。
ちなみに4年前の前回大会でも、この形から日本のゴールが生まれていたのを憶えていますか?


【4年前のアジア杯ゴールシーン】
前回アジア杯
この身体の向きからバイタルで待つ本田にタテパスを通してゴールの起点を作っていました。

つまり、柴崎が前を向ける、というのは日本のバロメーターでもある訳です。
(以前は遠藤ヤットがこの役割)


実際に試合では5-4-1で撤退するカタールに対し、日本がボランチを中心に一方的にボールを支配する時間が続きます。
これを見てカタールのサンチェス監督は自身の一手が悪手だった事に気付き、すぐさま動きます。


カタール352修正1
後半15分、すぐさま選手交代で布陣を5-4-1から前半の5-3-2へ戻してきました。
やはりこの15分というベンチの反応時間が世界のスタンダードと言えるのではないでしょうか。
(前半、35分まで動けなかった森保監督と後半15分で動いてきたサンチェス監督)



カタール352修正
後半15分、カタールの守備陣形が5-3-2に戻っているのが分かります。


これで再び試合は拮抗するかに思われましたが、カタールはもう1つディスアドバンテージを抱えていました。
それは「中2日」という日程面での不利であり、後半20分過ぎからじょじょに足が止まっていきます。

この間隙を突いて生まれたのが日本の得点でした。



【日本の得点シーンを検証】
0203日本得点1-1
↑は後半23分のシーンですが、日本がSBからSBへUの字に横パスをつなぐと、特に中盤3枚で横幅68Mを横スライドするIHに明らかに疲れが見えて日本のSBへの寄せが甘くなっています。

これで余裕を持って前線を見れるSB酒井から、後半途中投入された武藤の裏抜けへ。
前半と違ってボールにプレッシャーがかからず、ナナメのコースも切れてないカタールは背走するしかない




0203日本得点1-2
前半、ほとんど入らなかったFWへのクサビが入るようになり、日本はカタール陣内で試合を運べるようになりました。
↑このシーンでもこの後、武藤はボールを奪われてしまうのですが、敵陣深くから守備をスタート出来るので・・・








0203日本得点1-3
奪った後の二次攻撃も敵陣深くからスタート。
SBも高い位置を取っているので、これを拾った酒井がカットイン






0203日本得点1-4
この流れから塩谷がタテパスを入れて南野が待望のゴール、という流れ。

勿論、日本からすると待望のゴールだった訳ですが、このシーンをよく見てみると前線4枚+両SBにボランチまで加勢して、まさに「神風特攻オフェンス」のごとき。後ろには2CBしか残っていません。

つまり森保JAPANとは先に先制してしまえば後は5-4-1の「人海戦術」で守って逃げ切るか、
このようにビハインドを追って攻めに出る時も2-2-6の「人海戦術」で特攻するしかないという、どこまで行っても「人を増やす事」でしか攻撃も守備も出来ないチームと言えるのではないでしょうか?


さて、この嫌な時間帯に1点差に追いつかれたカタールのサンチェス監督。
これがもし立場が逆であったなら日本は「これは追いつかれる流れ」「だから2-0は危険なスコアだとあれほど…」「とにかくアフロが出て来たら気を付けろ」とパニックになるところでしたが、日本の同点弾が戦術的なロジックではなく単なる「全員攻撃の特攻」による産物に過ぎない事を見抜いていました。



カタール後半修正
失点後、すぐさまMF(カリム)を呼び寄せて指示を与えるカタールベンチの動き。
IHに投入する事で、まず守備では疲れの見える横スライドの遅れ問題を解消するのがこの交代による狙いの1点。

そしてもう1点、日本が2CBを残して全員攻撃状態であるならば、狙うは勿論カウンター。
その時に2トップに+もう1枚、攻撃に上がって来れる元気なIHがいる事でカウンターの厚みを増し、得点率を高めたい。
これが失点の瞬間にカタールのサンチェス監督が描いたであろう青写真だったと見ます。


そして実際にこの交代から6分後に試合を決めるカタールの3点目が生まれます。



【カタールの3点目を検証】
カタール得点3-1
1点差に追い上げて、なおもイケイケ状態の日本。
当然両SBを前線に上げて、人海戦術の特攻攻撃継続中。

しかしここからボールを失ってしまうと・・・・






カタール得点3-2
ハイ、お馴染みのパターン!

これだけ広大なスペースでFWに前を向かれた状態になったら吉田は無力。
ズルズルと自陣ゴール前まで後退するしか術がありません。

そしてこれを見た途中投入のIH(カリム)が全速力で上がって来ます。






カタール得点3-3
局面はカタール2トップ+IHの3枚×日本の2CB+2ボランチの4枚。
IHのカリムが攻撃に厚みを加えていると言っても日本から見れば「4対3」
これは充分守れるはず・・・・










カタール得点3-4
・・・が、こういう広いスペースでのデュエルで攻撃のスピードを止められないのがジョルジーニョタイプに属する柴崎のウィークポイント。(スペインで使われない理由の一つ)

隣にカンテかせめて遠藤航がいるならまだしも、プレー半径の狭い塩谷が相棒ではカバーも間に合わず。
加えて吉田は背後にカリムがいるのでボールへ行くのはどうしても遅れる事に。(カリム投入の狙いがここで活きている)

結局このままシュートを打たれ、何とか足に当てて枠を外させたものの、これで与えたCKから吉田が痛恨のハンドでジ・エンド。


試合を振り返ってみると事前のスカウティングから試合中の修正に到るまで、森保監督とサンチェス監督の差が一つの勝敗の分れ目となった感は否めないのではないでしょうか。



<経験からも学べない愚者に未来は無い>
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その国のサッカーを強くするには一体何をしたら良いのか?

賢者は歴史から学ぼう。

フランスは1988年、国立の育成機関としてかの有名なクレーヌフォンテーヌ国立研究所を設立⇒10年後の98年W優勝&2000年EURO優勝の黄金期到来

ドイツは2004年のEURO惨敗による反省から育成を抜本的に改革⇒10年後の2014年W杯で優勝

そしてカタールは自国開催のW杯も睨み2004年に国が養成機関アスパイアアカデミーを設立⇒06年に現A代表監督であるサンチェスをスペインから招聘し10年に渡ってアンダー世代の代表チームを歴任させ、2017年に満を持してA代表の監督へ⇒2019年アジア杯優勝


サッカーの歴史は雄弁に語っている。
「サッカーにおける強化とは一見遠回りに見える『育成』こそが最短の近道である」と。
そして「成果は10~15年単位で現れる」と。


ではこの15年、日本は何をしていたのか?

15年前と言うとジーコJAPANの「自由なサッカー」がドイツでの惨敗に向けて歩みを一歩一歩進めていたあの時である。
そこからオシムの「日本化」⇒岡田の「全員撤退守備」⇒ザックの「俺達の…」⇒ハリルで「縦に速い」を経て西野、森保の「ジャパンズウェイ」である。

まさにその「ウエイ(道)」があっちへ行ったり、こっちへ行ったりなので、継続した強化のベクトルが生まれていない事が分かる。

古いことわざによると「経験から学ぶのは愚者である」という。

では経験からすら学べないとしたら、果たして日本サッカーに未来はあるのか?


愚者が一足飛びで賢者になるのは難しい。
我々にはまず、この「経験」から最大限学ぼうという謙虚な姿勢こそが今、求められているのではないだろうか-







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