光射す方へ ~日本×コロンビア徹底分析~

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<光射す方へ ~2018W杯 日本×コロンビア~


どうも半年ぶり、ご無沙汰です。
思えば前回のW杯から一体、何回更新したんだ?っていう本ブログではありますが、気が付いたら4年経ってました(笑)
時の流れは早いものです。

さて、ブラジルの地での惨敗から4年、まさかロシアW杯を西野監督で戦っているとは誰が予想したでしょうか?
本当に色々ありました。ありましたが・・・ここでは一旦置いておきましょう。
ここに到る経緯はもう散々メディアなりSNSなりで議論尽くされてきましたから。

本ブログはあくまで「ピッチ上のプレー、戦術にフォーカス」するのが基本路線なので。
何より・・・その手の話題は荒れるしね(爆)


では半年ぶりのマッチレビューは歴史的な勝利を飾ったコロンビア戦の勝因解分析です。
何故日本は勝てたのか?10人になった事で両チームに何が起きたのか?前半と後半の違いは何か?
そこら辺も含めて解析していきましょう。




<的中した選手選考&コロンビアの隙>
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まずは両チームのスタメンから↓

コロンビアスタメン0622

両チーム共にシステムは4-2-3-1

コロンビアはハメスロドリゲスがコンディション不良でまさかのベンチスタート。
一方の日本は本大会まで僅か3試合という強化試合を目一杯に使って西野監督は最適解を見出したと思えるスタメン選考です。
システムは当初、長谷部をCBに落とした3バックを試してみるも結局はやり慣れた4-2-3-1がベストという賢明な判断。
更に直前のパラグアイ戦で光明を見出した香川&乾のユニット、司令塔・柴崎のタテパス、南米のFW相手に対人で完勝してみせた昌子をCBに抜擢。

結果的に見ても前線、中盤、最終ラインでそれぞれ抜擢した選手が躍動し勝利に貢献してくれました。


では、この試合の行方を左右した”あの場面”から試合の検証を始めていきましょう。

前半-
試合開始と共に前からプレスをかける日本に対して、コロンビアにはどこか緩さが垣間見えました。
それは4年前の惨敗のイメージが色濃く残る我々の感覚が、彼らにしたら日本=大勝の感覚で残っていたと考えれば無理も無い事でしょう。

しかし、サッカーにおいてその油断は致命傷を招きます。

オシム『コロンビアが最初にピッチに姿を現したとき、私は彼らの傲りを感じた。南米選手にありがちな、そうした驕慢を私はよく知っている。そして彼らはピッチでその代償を支払うことになった。』



ではPKに到るシーンを少し遡って流れを見ていきましょう。

【前半3分のPKシーンを検証】
1点目0622-1-2
前半3分、コロンビアの左SBが浅い位置から早めのアーリークロスをゴール前に送る場面が↑になります。

まず、注目したいのがコロンビアの攻撃にかける枚数
両SBを同時に高い位置へ上げ、ボールより前に7枚を投入しているのが分かります。
(ネット配信で戦術カメラが観れるのは有り難い!)

前回対戦時の2014W杯のコロンビアは攻撃は前線の3枚~多くても4枚に任せて
4バック+2ボランチの6枚が常に自陣で待ち構えているカウンター主体のプランだったのを考えると2つの試合でコロンビアのアプローチが大きく違うのが分かりますね。

この両SBを同時に上げて攻撃に枚数をかけるサッカーはまさに前回のザックJAPAN、我々の姿そのもの。
これはコロンビア版「俺達のサッカー」なのか…?(笑)

とにかく、こんなところに序盤からコロンビアの傲慢さが垣間見えていた訳です。


日本は守備時、4-4-1-1で守るのでボールより前に残るのは香川+大迫の2人。
しかしコロンビアのボランチ+CBの3枚はそれぞれ、誰が誰を捕まえているのか?非常に中途半端なポジショニングになってるのが分かります。
(基本的には守備残りのボランチが香川を観て、CB2枚で大迫に対して「+1」を作る、というのが基本路線)

攻撃の最中から後ろはカウンターを防止する為の予防的ポジションを取る、というのは現代サッカーの必須戦術となっていますが、この場面におけるコロンビアの予防的ポジションはかなり怪しいと言わざるを得ません。(コロンビアのミスその①)




1点目0622-2
このクロスが跳ね返されて香川にこぼれた瞬間が↑になります。

ここで問題なのが何を血迷ったのか、香川に対してボランチではなく、後ろで大迫を見なければいけないはずのCBがボールにチャレンジする為に前へ突っ込んでいる事です。
またその距離を見ても、明らかに香川の方がボールに近く、先に触られるであろう状況なのにも関わらず、このCBのチャレンジはあらゆる意味から考えてセオリーを逸脱したコロンビアのミスその②です。

香川はドルトムントでもこのポジションでカウンターを発動させる為のスイッチとして機能している選手なので、
ボールを拾う前から自分の背後には大迫とコロンビアのCBが1対2の状況である事、自分が誰からも明確なマークされる距離にいない事を「観て」、分かっていました。

なのでコロンビアのCBが自分に突っ込んできてるのを周辺視野で捉えて、大迫が今この瞬間、自分の背中で1対1の状況である事を瞬時に察知します。しかしこの時、香川の視野はバウンドするボールに身体が向いているので大迫の動き出しまでは恐らく観えていません。そこで感覚で背後のスペースに、事故が置きやすく、かつ大迫がパスコースへの修正が効きやすいフワッとしたロブをスペースへ落としたのです。

これは今季クロップのリバプールを観ていた人には分かるかと思いますが、クロップのチームはセカンドを拾った瞬間にサラー、マネがヨーイドン!するスペースへ向かってアバウトに浮き球を落とすシーンが数多く見られます。(そしてこの2人はだいたいヨーイドン!に勝てるw)

香川は現代サッカーのトップ下に必要とされるこのセンスがとにかく抜群なので、真骨頂とも言えるシーンでした。
(更にパスを出した後に足を止めず、パス&ゴーでゴール前へ詰めていた動き出しがPKにつながったのもミソ)


1点目0622-3
↑は香川のスペースに落とされたパスに対して大迫とCBのDサンチェスが競り合っているシーンです。

ここで大迫と1対1のDサンチェスに求められたのはまずゴールに向かって帰陣し、大迫の突進を遅らせる守備でした。
しかしDサンチェスは所属するスパーズでも度々こういったプレーを見せているように、抜群の身体能力を過信したリスキーなプレー選択が見られるDF。

ここでも遅らせる事ではなく、自分で奪いに行く事を優先した矢印で大迫に向かってしまい、結果入れ変わられてしまいました(コロンビアのミスその③)

よく現代サッカーでは『ミスが3つ続くと失点になる』と言われますが、日本がPKを獲得したシーンは正にコロンビアの致命的なミスが3つ続けて起こった事による必然だったと言えるでしょう。

そして、その引き金となったのは香川の一瞬の判断とセンス、そして大迫の競り合いにおける粘り強さだった事も忘れるべきではないですね。


<10人で落ち着くコロンビア&慌てる日本>

開始3分で1点(PK)&退場で10人へ。
しかしコロンビアの選手達はベンチを見る事もなく自動的に4-4-1のオーガナイズで守備を再構築。
逆に慌てたのが1人多くなった日本で「…え?え?相手10人だけど、どうする?どうする?」と言わんばかりのチグハグさ。
何故、相手より1人多いはずの日本が有効な攻め筋を見つけられなかったのでしょうか?


そこでまずこの時、日本がすべきプレーは何だったのか?を考えてみましょう。

2トップの1枚を削って4-4-1で守るコロンビアに対しての定石はビルドアップの始点で起きる2対1の数的優位を上手く活用する事です。すなわち日本のCB2枚とコロンビアの1トップによる2対1のエリアですね。↓

【数的優位を活かせない日本の攻め筋】
ビルド0621-1
この場面はコロンビアの退場直後の日本のビルドアップから。

吉田と昌子のCBがコロンビアの1トップ(ファルカオ)に対し2対1の数的優位になっているのが分かります。
ここから昌子がボールを運んで・・・・


ビルド0621-2
日本はサイドに入れてコロンビアの矢印⇒を後ろ向きにし、1トップの背後でボランチが前向きに受ければそこからタテパスorナナメの間受けor逆サイドへの対角パスという崩しのフェーズに入ります。

要は1トップを剥がして常に残りの8枚と勝負!っていうのが9人守備を崩す始点になるという事ですね。



ビルド0621-3
しかーし!サイドの乾から横パスを受ける長谷部の距離と身体の向きが悪過ぎる!

日本のボランチ(長谷部&山口蛍)が抱える問題がコレで、要は間で受けて前を向く事が出来ないんですね。



ビルド0621-4
…で、苦しい体勢の長谷部はサイドの乾へリターンパス。

コロンビアはボールサイドに寄せてきているので、これは受けた方が苦しい、いわゆる死に筋のパス。
案の定、乾はこの後難なくボールを奪われてしまいました。


これが日本の左サイドの問題で、ボランチが長谷部、その後ろのCB昌子も運ぶドリブルやタテパスといった攻撃面が苦手という地獄の組み合わせなので、サイドの長友&乾が死んでしまっていたんですね。
(前半、乾のボールロストが多かったのは後ろからの配球側の問題も大きかったと見ます)


じゃあ、もう1枚のボランチ柴崎はどうか?という話になってきます。
続いて右サイドの攻撃ルートを見ていきましょう。

【右サイド(柴崎)の攻撃ルート】
柴崎1-1
局面はCB吉田がボールを持ったところで柴崎がかなり低い位置まで落ちてきてタテパスを引き出す場面


柴崎1-2
柴崎の特徴はこの低い位置からでも正確な長いタテパスを通せるという事です。
香川が欲しいタテパスはまさにコレなんですね。


柴崎1-3
香川は正確なタテパスさせ刺せば、狭いエリアでも苦も無く前を向く事が出来る職人
この場面でも得意のターンから原口へのスルーパスでサイドをえぐりました。

このように右サイドはCB吉田⇒ボランチ柴崎⇒香川⇒SH原口という中→中→外の攻撃ルートがあるのでアタッキングサードまで侵入出来る下地はありました。
左右の攻撃ルートの違いはそのまま長谷部と柴崎の違いと言っても良い訳ですが、ボランチというポジションにとっていかにボールを受ける際の「身体の向きを作るスキル」が重要であるか、この両者を見ていると良く分かります。


【長谷部と柴崎の身体の向きの違い】
長谷部0621-1
日本代表の試合を観ていて↑こういうシーンをよく見かける事にお気付きでしょうか…?

長谷部がこの身体の向きでボールを持っている事で守る側からすると逆サイドの柴崎&酒井は全くケアする必要が無く、非常にハメやすい持ち方であるという事が言えるでしょう。

実際、↑の場面でも柴崎が両手を挙げてアピールしていますが、長谷部の視野には入っておらず、狭い方の乾へタテパスを出してまんまと囲まれてしまいました。これは山口蛍でも同様のシーンを本当に多く見かけます。


身体の向き(柴崎)
続いて全く同じエリアでボールを持った時の柴崎の身体の向きを見て下さい。

この向きで持たれると、まず長谷部へのセーフティな横パスを確保しながらナナメの香川とも目が合うし、パスの選択肢が複数あるのでコロンビアのDFが寄せられないという状況を作っています。
そしてボールにプレッシャーがかかり切らないので同サイドの乾も迷う事なく裏へ走り出せる訳です。

ちなみにハリルJAPANはどちらもこの持ち方が出来ない長谷部&山口蛍という地獄のボランチコンビだったので、完全に日本の攻め筋から中→中→外というルートは消えていました。
もっぱらパスはCB→SB→SHとUの字型に外→外→外。同サイドで3本以上パスをつなぐので相手からするとハメやすく、苦しくなって大迫にタテポンという遅攻が目立ったのはこのためです。

なので個人的に日本のボランチは柴崎と大島の組み合わせしかないだろう、と思っていたのですが西野監督はその折衷案を取って1枚は柴崎or大島の司令塔タイプ、もう1枚に長谷部or山口のファイタータイプという補完性による組み合わせを基本に考えている模様。

であるならば、この日の日本は右サイドを中心に攻めたら良かったのではないか・・・?という疑問は当然湧いてくるのですが、コロンビアも事前のスカウティングでこの事をよく理解しており、対策を立てていました。


【コロンビアのビルドアップ対策】
柴崎ケア1
局面は日本のビルドアップ
1トップのファルカオは基本的に日本のCBは放置。その分、柴崎へのコースをケアする立ち位置で日本のビルドアップを左サイドへと誘います。



柴崎ケア2
・・・で、お馴染みのバックパサー長谷部。
こちらのルートはボランチに預けたところでサイドで詰まるか、バックパスが返ってくるだけなのでコロンビアからすると全く問題無し。



柴崎ケア3
この時のファルカオのポジショニングがミソ

首を振って背後の柴崎を確認し、ここのコースだけは死んでも空けないぞ!という構え。
恐らくコロンビアのペケルマンは当初2トップで柴崎へのパスコースをケアしながらチャンスとあればCBにプレスをかけるというプランだったのだと思いますが、1トップになった事で割り切って「柴崎を消す事」のみにファルカオの守備タスクを絞ったと見ます。

こうなると日本のビルドアップは右サイドに回しても柴崎回避の外→外ルートになるので・・・



柴崎ケア4
ハイ、待ってました~!とばかりに原口が囲まれてジ・エンド。


まさにこれがボランチを補完性のコンビで組んだ時の弱点で、スカウティングされて「片方だけ消す」という対策を講じられやすいんですね。

考えられる日本の打ち手としては「1トップのファルカオが疲れるまで後ろでひたすら回し、柴崎が空くのを待つ」か「長谷部を大島に変えて左右どちらからも攻められるようにする」の2つ。

前者が1-0リードを保ったまま隙あらば追加点を…の安全策で、後者が自分達から2点目をとって試合を決めてしまう積極策なんですが前半の日本はどっちつかずのまま試合を進めて、何となくコロンビアの守備にハメられてカウンターを食らうという展開になっていました。非常に勿体無かったですね。



<香川は何故、試合から消えたのか?>
20180619_shinji-kagawa3448.jpg

この状況に業を煮やした選手がいました。

トップ下の香川です。

気持ちは分かります。「待っててもボール来ねえじゃん…!」という心情だったのでしょう(笑)
こういう時は香川の悪い癖が顔を出します。


【ポジションを崩す香川】
香川落ちる1
局面は日本のビルドアップから。

我慢しきれなくなった香川が「ええい、オレが行く!」とばかりにボランチのポジションまで落ちてきてしまいました。
これでファルカオの1枚を剥がすのにイビツな3ボランチ気味の人数過多になってしまい、その分前の枚数が足りない状況へ自分達からバランスを崩してしまう日本



香川落ちる2
しかしコロンビアからすれば長谷部は捨てられるし、香川が一番怖いエリアから離れてるので、このエリアで受けるなら思い切り強く当たれるだけ



香川落ちる3
更にせっかく柴崎にボールが渡っても前線に香川がいないので大迫が孤立
これならコロンビアのCBも大迫一択で前にインターセプトを狙える状態が整っています



香川落ちる4
アッーーー!!!


日本はこの時間帯、バランスを崩した状態で無理なタテパスを入れてはカウンターを食らうという悪循環に陥ってました。しかもその流れで与えた不用意なセットプレーから痛恨の失点を喫しています。


パスマップのデータで見ても前半の香川のポジション移動は明らか↓

香川位置0624-1
香川位置0624-2

これが香川が諸刃の剣と言われる所以で、4年前のブラジル大会も彼の負の面の方が出てしまい、惨敗につながっているだけに悪い予感が漂う流れになってきました。




<バランスをとった知将ペケルマンの修正>
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一方、10人になったコロンビアの視点で前半を振り返るとどう見えるでしょうか?

ボランチのCサンチェスが退場になった後のコロンビアはトップ下のキンテーロをボランチに下げた4-4-1でそのまま試合を進めました。
実はこのキンテーロという選手、ハメスというクラックがいるから目立っていないだけで、クラシカルな南米の10番タイプとしてなかなかの実力者。事実、10人になった後のコロンビアで攻撃のタクトを振るっていたのはこのキンテーロであり、長いタテパスから何度もカウンターの起点になっていました。

しかし、一方でペケルマンにはこのキンテーロをボランチにした中盤のバランスに懸念はあったはず。
どういう事か、検証していきましょう。

【キンテーロをボランチで使うリスク】
キンテロ1
局面は右から左へ攻めるコロンビアのビルドアップ
キンテーロがボランチの位置でボールを受けます


キンテロ2
1人少ない10人で日本の守備を崩さないといけないという事もありますが、キンテーロの持ち味は強気なプレー
↑の場面でもドリブルで日本の中盤ラインを剥がすべくボールを運びます



キンテロ3
・・・ただ、いかんせんドリブルを始める位置が低い。
ボランチなんで仕方ないんですが、ここでボールを失った場合、前に5枚が取り残された状態で日本にカウンターを浴びるハメになります



キンテロ4
そのままカウンターを食らって、あわや決定的な2失点目を喫するところでした
(このシーンでは乾がシュートをふかして一命を取り留める)


更に守備ではこのようなシーンも↓

キンテロ守備
ファルカオに疲れが見えてきた前半25分過ぎ、日本で最も危険な柴崎が持った時にボランチのキンテーロが中を閉め切れないんですね。

このシーンを見たペケルマンはこのままオープンに日本とカウンターを打ち合うのではなく、一旦ボランチの守備バランスを修正する一手を打ちます。ただし攻撃面を考えると追いつく為には司令塔キンテーロは欠かせない。
という訳で中盤で最も守備力の低いクアドラードを下げて、守備型のボランチ・バリオスを投入。キンテーロを一列前に上げたSHに移します。
(10人になった時に最も守備で計算出来ない選手を下げるのは定石であり、94W杯のイタリア代表ではサッキが前半にあのRバッジョを下げた事で話題にもなった→結果は狙い通り勝ち点1を獲得)


0-1のビハインドを追いながらまずは守備を整え、キンテーロとファルカオの距離を近くして、このホットラインとセットプレーから同点ゴールを狙う。曖昧に前半を過ごした日本とは対照的に明確な姿勢を打ち出したペケルマンのしたたかさが光ります。


実際に試合ではボランチをキンテーロからバリオスに代えた事でまず守備が安定↓

コロンビア中閉め
しっかり中を閉められているので柴崎から大迫へのタテパスを消す事に成功。まず守備を安定させます


そして攻撃ではキンテーロをSHに上げたメリットで早速↓のような場面が生まれました

【キンテーロの間受け⇒ラストパス】
キンテロSH1
右から左へ攻めるコロンビアの攻撃。

右SHに上がったキンテーロはライン間に入ってボールを受ける得意なプレー
先ほどまでのボランチだった時と比べてボールを受けるエリアが一段高くなっている事が分かります。



キンテロSH2
間で受けてファルカオへのラストパス

この交代以降、日本の攻め筋は塞がれ、コロンビアのカウンターに脅威が増していきます。

香川が落ちて中盤のバランスが崩れた日本と、キンテーロを上げて中盤のバランスが修正されたコロンビア
前半の1-1というスコアにはそれなりの必然が潜んでいたと見るべきでしょう。



<最適手に見えた悪手 ハメス投入が勝負を分ける>
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1-1で折り返したハーフタイム-

試合を観ながら日本が勝ちのルートに乗る為の修正点は一つ、だと思ってました。
香川のポジショニングを修正出来るか?これに付きます。

果たして後半の立ち上がりに↓のようなプレーが観れたので「これはもしかすると…」の思いを強めた次第。


【香川のポジションを戻した日本の猛攻】
後半5分香川1
局面は右から左へ攻める日本。
後半はファルカオの電池が切れてコロンビアの1列目の守備が機能しなくなっていました。

加えて香川がしっかりとバイタルエリアにポジションを取っているのでコロンビアのボランチが香川をケアする為に引っ張られているのが分かります。

これでボールを持ったボランチ(長谷部)の前にフリーで運べるスペースが出来ており、さすがにノープレッシャーであれば長谷部も苦も無く前を向いてボールを運べるシーンが増えてきました。



後半8分香川1
↑勿論、それは柴崎とて同じ事。

要は1トップのファルカオが追えなくなってきた事+香川がコロンビアのボランチを引っ張る事で日本のボランチのエリアは完全なオープンスペースになっていたんですね。

香川はボールタッチ数こそ少なかった後半ですが、「いるべきところにいる」事で、日本ペースを生み出す主要因になっていたと見ます。


原口(試合後のコメント)
『ハーフタイムでは監督からポジショニングのことを言われました。せっかく相手が10人なんだからもっと相手の嫌なポジションで受けたら必ずチャンスができるという話だったので、各選手がポジショニングを考え直したと思います。』



・・・さて、日本はハーフタイムでキッチリ修正してきました。
対するコロンビアは規定路線の最適手(?)を打ちます。後半15分、エースのハメス・ロドリゲス投入。

この交代によりピッチでは何が起こったのでしょうか?


【ハメス投入で崩れたコロンビアのバランス】
ハメス守備1
投入直後からハメスの動きは明らかに鈍く、元々守備をほとんどしない選手なので基本は前残り。

それまで4-4-1で保たれていたコロンビアの守備ブロックがハメス投入によって4-3-2になってしまいました。
中盤の2列目が4枚から横幅68Mを3枚でスライドする事になったコロンビアの中盤、特にハメスが入った右サイドは完全にスペースが空いており、ここは香川が受けたいエリアでもあります。

戦術カメラアングルで見てもバランスの崩れたコロンビアの右サイド(日本の左サイド)で数的なバランスが崩れているのは明らか↓

ハメス守備2
これにより日本は左サイドで香川、乾、長友が常に数的優位を傍受しながら気持ちよくパスをつないで崩す事が出来ていました。



ハメス守備3-2
後半、乾のドリブル突破が突如復活したのはコロンビア側のバランスが崩れたからだと言えるでしょう。
(ハメスは乾の突破を後ろで傍観してるだけ)



柴崎(試合後のコメント)
『攻撃の部分で乾くんと(長友)佑都さん、真司さんの連係で左サイドを作りたかった。前半は右サイドに偏っていたので僕がなるべく左サイドでボールを持つようになって全体的にうまく回った印象があります。』




試合は残り20分、コロンビアのバランスが崩れて日本優位の流れ-
ここでぞれぞれの指揮官が次にどんな手を打つかが勝敗の鍵を握っている事は間違いありません。

まず日本の西野監督としては、当然あと1点を求めて勝ちに出たいところ。
コロンビアの中盤のバランスが崩れているという事を鑑みて、ここは中盤からミドルシュートで得点が期待出来る本田の投入を決めました。(香川はオープンスペースでボールを受けてもここまで自分で打つミドルは0本)

本田のメリットはご存知の通り、こういった大一番で決めてくれる得点力であり、デメリットは日本の中で最も運動量とスピードが低い事。
しかし10人のコロンビアは引いているのでスピードが必要な速攻はほとんど無いですし、本田の運動量のマイナス分はコロンビアもハメスがいるので帳尻が合うと踏んだのでしょう。


一方のペケルマン監督はどうか?
さきほどは崩れた中盤のバランスを修正する見事な一手で試合を振り出しに戻した知将。ここは1-1のまま勝ち点1をまず確保する、という選択肢もあったはずです。

しかし、4年前とは違い優勝候補の一つにも挙げられるほどの地位になったコロンビアで、グループ最弱と目されていた日本に「まず初戦で勝ち点3を確保する」以外のプランは頭に無かったとしても無理はないかもしれません。

ペケルマンは崩れたバランスを更に攻撃的に動かし、10人で2点目を奪いに行く一手を選択。
中盤で最も運動量のあるSHイスキエルドに代えてFWのバッカ投入で勝ちにきました。


この一手の明暗は本田のファーストプレーで明らかになります。

【試合の流れをベンチから見ていた本田のファーストプレー】
本田0622-1
バッカ投入でハメスが左、バッカを右サイドに移したコロンビアに対し、本田のファーストプレーはハメス側の右サイドに移動し酒井と2対1を作りに行っています。
これは明らかにベンチで試合の流れを見て、自分が出た時のプレーをイメージしていたであろう事が分かる本田の動きだと思います。




本田0622-2
狙い通り日本は右サイドで本田+酒井の関係性を作り出すと、ハメスは全く追ってきません。
従ってコロンビアの左SBに対して2対1の数的優位を作れています。



本田0622-3
フリーの本田に戻して、ファーストプレーでミドルシュートを選択した本田。
相手の状況を観て最適のポジションを取り、ベンチが求める「引いたコロンビアにミドルの脅威を」という役割を忠実にこなしています。


一方のコロンビアはバッカ投入でただでさえ崩れていたチームのバランスが更に攻撃過多になり4-3-2から4-2-3気味となって、これは日本の得点は時間の問題だろう…というカオス状態に陥ってしまいました。

後半73分、バッカ&本田投入の僅か3分後に生まれた大迫のゴール。
このCKを取る経緯となった日本の攻撃は必然といえる流れだったのではないでしょうか。


【日本の2点目を生んだ攻撃の流れ】
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局面はもはやコロンビアのファーストラインが崩壊し、フリーで持ち運び自由となった柴崎から乾へのタテパスが起点。
バッカはハメスよりは運動量がありますが、守備で中閉めが出来ないのでタテパスも通し放題



2点目0622-2
乾が間受けで前を向くとハメスは既にスイッチOFF
本田もそれを分かっているのでハメスの背後でスタンバイ



2点目0622-3
右サイドの本田&酒井で数的優位を作る日本。
ここに到る流れの中で既に20本以上パスをつなぎ右に左に揺さぶられたコロンビアはもう大外の酒井をケア出来ません



2点目0622-4
戦術カメラの視点で見てもコロンビアの守備組織がもはや4+2の2ラインで守っていて崩壊しているのが良く分かります。
乾が前を向いた段階でコロンビアは詰んでました。



<僥倖ではなく実力で掴んだ光明>
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この試合の勝敗を分けたポイントは誰がどう見ても「前半3分のPK&退場」で間違いありません。
しかし、それをもって「僥倖」「たまたま勝てただけ」「ラッキーだった」と日本の勝利の価値が下がったかのような論調も目に付きますが果たしてそうなんでしょうか・・?

コロンビアの退場とPKを生んだのは純粋に競技内における日本の一連のプレーでした。
もしあれを「たまたま」と言ってしまうのであればサッカーとはそもそも「たまたま」パスがつながって「たまたま」ドリブルで抜けてしまい「たまたま」シュートが入って勝ってしまう競技という事になってしまいます。

アルゼンチンには「たまたま」メッシがアルゼンチンに生まれてくれて、ポルトガルの好調は「たまたま」ロナウドがポルトガル人だったからでしょうね。ロシアは「たまたま」開催国だったから好調なのかもしれません。


勿論、11対11だったら結果はどうなっていたか分かりませんし、この1試合の結果で両国の実力は測れないでしょう。
しかし元々誰が監督であろうとコロンビアが格上なのは分かっていた事で、それを前提にいかに「10回に1回」の勝ちルートを探るかがW杯という大会ではないでしょうか。


今回の西野JAPANが見せたサッカーも「タテに速いサッカーの遺産」だとか「俺達のサッカー復活」だとかの二元論で語っていては今大会のレベルに日本サッカーが置いていかれるだけでしょう。

開始と共に前へ勢い良く出て来たコロンビアを逆手にとって「タテに速い」パスを2本つないだ前半3分の1点目。
10人になって引いた相手を右に左に22本のパスをつないで崩した2点目。

どちらも相手を観て、最適な判断でパスを繋いだ「日本のサッカー」に他ならないのですから。







*↓のRTと「イイネ!」が一定数以上集まったらセネガル戦のマッチレビューもやる・・・・かも!?

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テーマ : サッカー
ジャンル : スポーツ

アジア仕様の限界を露呈したハリルJAPAN ~日本×ブラジル~

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<アジア仕様の限界を露呈したハリルJAPAN>~日本×ブラジル~

アジア最終予選を突破し、本大会へ舵を切ったハリルJAPAN。
就任以降、世界の一線級との対戦が無かったこのチームの実力を測る上で、
ブラジル&ベルギーと組まれた今回の欧州遠征はとりわけ重要なものでした。

しかし蓋を開けてみれば、アジア予選では「隠れていた」課題が次々と浮き彫りになるかたちでいいところなく2敗。
とりわけ流れの中からほとんど崩せる事なく無得点に終わった内容は来年の本大会に向け指揮官が言うほど説得力のあるものだったとは言い難いのではないでしょうか。

ちょうど4年前、同じく本大会を半年後に控えたザックJAPANがオランダとベルギー相手に1勝1分、流れの中からの素晴らしい崩しで5得点を挙げていたのと比べると実に対照的です。

勿論、強化試合なので結果を単純に比較してもあまり意味はないですし、課題を見つける為の試合だったと指揮官は言うかもしれません。
しかし、今回の欧州遠征で見つかったのはチームを次のレベルへ引き上げる為の新たな課題ではなく、
どれもアジア予選の頃から「分かっていた事」で、アジアだから問題にはならかったに過ぎないというものばかり。


そこで今回はアジア予選の試合と比較しながら、ブラジルとの試合にフォーカスし、現在のハリルJAPANの問題点を分析していきたいと思います。


<ブラジルにボールを渡す自殺行為>

アジア予選でハリルの評価を一層高めたのは突破を自力で決めたホーム豪州戦でした。
実際、この試合では「相手の強みと弱みを分析して対策を立てる」というハリルのストロングポイントが良く出た試合だったと言えるでしょう。

オーストラリアは稚拙な技術力にも関わらず必ず自陣から繋いでくると分かっていたので
日本は中盤にボールハンター(井手口、山口、長谷部)をズラリと並べて中盤にプレスラインを設定。
DFラインにはある程度自由にボールを持たせて、そこから必ず出てくる中盤へ預けるパスに網を張り、次々とボールを奪取していました。

この試合の日本のボール支配率は35%でしたが、シュート数では15:4と圧倒。
まさにハリルからすると会心の勝利で、世間も「これがハリルのサッカーか」と評価を新たにしました。


しかし、この試合をしっかり観ていけば決してハリルJAPANの守備が強固だった訳ではなく、
オーストラリアがわざわざボールを失う為に自陣でパスをつなぐのに終始した、という特殊なチームスタイルとゲームプランにあった事は間違いありません。

ハッキリ言ってしまえば、本大会でこんな「マヌケなチーム」と対戦する機会はまず無いと言っていいでしょう。
(でも辛くもプレーオフで出場決めたけどNE!)

なので個人的にはこんなサッカーで本大会に挑んだら、まず間違いなく惨敗するだろうと確信したのですが、
予選突破の祝福ムードでチラッとそんな事をつぶやいたら炎上しました(笑)




・・・とまあ、前置きが長くなりましたが、そんな流れを踏まえて迎えた今回のブラジル戦。
ハリルのゲームプランは勿論、オーストラリア戦の流れを汲むもので、DFラインではブラジルにある程度ボールを持たせてボランチのところに入って来るパスを2枚のインサイドハーフ(井手口&山口)で狩る!というものでした。

では実際の試合でどうなったか見ていきましょう。


前プレ行かない1

画像はブラジルがGKからのパス出しでビルドアップ開始の瞬間。

日本はブラジルのダブルボランチにプレスラインを張ってCBは放置。

そう、確かにオーストラリアにはこれで良かった。
この「待ちの守備」で次か、次の次に出てくるパスに対して全体でGO!⇒ショートカウンター(゚д゚)ウマー!

しかし、この日の相手はユニフォームこそ同じ黄色だが、あのセレソンなのである。


前プレ行かない2

ボールが世界のマルセロに渡っても日本はステイ。
マルセロは難なく前を向いてオープンな姿勢でボールを持てている。

アジアのSBはだいたい走力やクロス精度自慢の選手が多く、ゲームメイクの能力は低い。
だからこの距離感で守っていても問題は無い。

だが世界のSBはもう「司令塔化」が進む流れだ。
そしてこのマルセロとかいうSBはそのトレンドの中でも先頭集団を走る手練れである。



前プレ行かない3

日本がボールサイドに寄せて次のタテパス狙いなのを見透かしたマルセロがボランチ経由のサイドチェンジを促すパス。
日本はファーストディフェンスでボールにプレッシャーがかかっていない為、後ろも押し上げられず実にチグハグな守備になっている



前プレ行かない4

フリーで受けたボランチから逆サイドに高精度のサイドチェンジを通されて、日本の横スライドは間に合わず。
68Mの横幅を目一杯に使われて右に左にと走らされるハリルJAPAN。

こんな守備でボールが奪えるはずがない。


一方、チッチのセレソンは世界のトレンドを組んだ超絶インテンシティの高いチームに仕上がっていた。
あのブラジルがここまでハードワークするのか・・・と驚いた人も多いのではないか。



【ブラジルの前プレ (ネイマールのハードワーク)】
ネイ前プレ1

局面は日本が攻め込んだ流れで長谷部にボールが下げられる瞬間。
相手のバックパスにタイミングで全体を押し上げてGOをかける、はセオリーではあるが、ネイマールの寄せのスピードが凄い。

ボールにプレッシャーをかける、という域を超えて完全に「奪う」為のプレスになっている。


ネイ前プレ2

ネイマールの寄せがすさまじ過ぎて、ボールを受けた長谷部は後ろを向かされている。
こうなるともう次の選択肢はバックパスしかないので、ネイマールのファーストディフェンスのおかげでブラジルはノーリスクでチーム全体を一つ押し上げられる。



ネイ前プレ3

長谷部からCBの吉田に下げられたボールにもネイマールは二度追い。
しかもスピードを落とさないどころかむしろギアを上げている。
チームの絶対的なスター選手であるネイマールが守備で40Mをフルスプリントできなければ使ってもらえないのがブラジルなのである。

このプレッシャーにより吉田⇒長谷部のパスが僅かではあるが弾んだボールになってしまう



ネイ前プレ4

受けた長谷部がファーストタッチでボールを浮かしてしまう。
その隙に背後からジェズスが猛烈なプレスバック



ネイ前プレ5

ジェズスに押し込まれた長谷部の身体の向きではパスコースはSBの酒井しかない



ネイ前プレ6

酒井にパスだ出た瞬間にブラジルは「待ってました!」とばかりに一気に3人で包囲。

これがアジアとは違う「世界の守備」「世界基準のインテンシティ」である。


あのネイマールが必死に日本のCB(吉田)にまでボールを自由に持たせないよう前プレをかけてくる時代に
日本がブラジルにボールを持たせるというのは自殺行為でしかない。

現代サッカーにおけるビルドアップも、この「前プレ」を前提に、それをいかに剥がすかの攻防が行われているのに対し、
日本の中盤は自分達ばボールを持つ事が主眼から抜け落ちた構成なので、ロクにバックパスすら回せない惨状では・・・OTL



<問題その② 原口の5バック化問題>
GettyImages-873175926.jpg

二つ目の問題はハリルJAPANの守備におけるポジショニングとゾーン設定がかなり曖昧なところ。
もっと言ってしまえば完全に選手任せなのか?という疑念も。

特にアジア最終予選のアウェイ豪州戦で顕著になった原口の守備ゾーンを思い返していただきたい。
原口は相手のSBが上がっていくとどこまでもマンツーマンでそれに付いていってしまう。

【SB化する原口と5バックになる日本】
香川低い1014-5

原口はSBを受け渡さず付いて行くし、槙野も「こりゃ助かるで」とばかりに放置してるのでチームとしては5バック化してしまうのがなかば常態化しているハリルJAPAN。

むしろ日本ではこれを「原口のハードワークすげー!」という論調すらあるが、とどのつまり日本サッカーの守備文化はどこまでいっても「マンツーマン」と「気持ち守備」の合作である証拠。

そしてアジア予選では「原口半端ない」で済んでてもブラジル相手にはチームとして何が問題かを突きつけられるのである。


【5バック化する日本 byブラジル戦】
原口5バック

局面はブラジルの最終ラインのビルドアップから。
この段階で原口はもはやSBではなく右WGのウィリアンを気にして早くもポジションを下げ始めている。





原口5バック2

原口がSB化しているので、日本の左サイドにボールを回されたら当然そこには誰もいない

しかも流れでアンカーに回っていた山口がブラジルの1トップ(ジェズス)を見ているんだから前の人数が足りるはずがない。
(一方で日本のDFライン4枚に対しブラジルはウイリアン1枚でピン止めに成功している)


この場面、ブラジルならこう守るというポジションを可視化してみます↓


原口5バック3

本来ジェズスのラインにCBが行けるようライン設定をすべきで、ウィリアンはオフサイドに置いておけば良し。
全体を一列づつ前に押し上げればブラジルのDFラインにもプレスがかかるはずなのだ。


原口5バック4
奪うならこのポジションバランスで前プレでしょ!





<問題その③ 3センターの鎖が繋がっていない>
img_8a5d5c2f166fe07786e2eed6fe115925197605.jpg

ハリルJAPANの基本形4-3-3(4-1-4-1)では中盤の3センターのバランスが肝になってきます。
「3センター」「ブラジル」で思い起こされるのが前回アギーレが戦った2年前のブラジル戦。


この試合でアギーレは森岡、柴崎、田口で3センターを採用。
しかし常に横スライドしながらお互いにチャレンジ&カバーを繰り返し一定の距離感を保つ、
まさにチェーン(鎖)で繋がれているかのような動きが求めらる3センターにあって、日本はこの意識が決定的に欠けています。


【前回アギーレJAPANの3センター】
3センター2

このように1枚(柴崎)がチャレンジしたら残りの2枚(田口&森岡)がカバーのスライドを行うという基本中の基本の動きすら怪しいレベル。


ではハリルになってそれが改善されたのかどうかを先日のブラジル戦から検証してみましょう。


長谷部いない1

前半いいようにブラジルにやられただけあって、さすがにハリルも「これ前から行かんとアカンわ!」と気付いたのか後半はプレスラインを高くして前からプレスをかける日本。

GKからのパスを受けるCBに久保が、そしてブラジルの両方インサイドハーフに井手口と山口が付いていますが、とするとこの2枚を結ぶ中間にアンカーの長谷部がいなければいけないはず。

しかし長谷部の姿は見えず、この場面では3センターのチェーンが切れて個々がバラバラに守っているのが分かります。



長谷部いない2

逆に展開されたボールに対して今度は山口と原口が出ていこうとしますが、やはり長谷部がいない。



長谷部いない3

で、これに気付いたカゼミーロに前に出られてポッカリ空いたバイタルで受けられるの図↑

肝心の長谷部はどこにいたのかというと、何と左SBのマルセロにマンツーマンで付いていた・・・という按配。

この場面では山口と井手口の間を割られて、後ろにアンカーがいないという3センターの布陣では本来有り得ないような事が起きてしまっている。

つまりアギーレもハリルも「3センター」というよりは、前者はボール扱いに長けた3枚を、後者はボールを奪うのに長けた3枚を、ただ中盤に並べただけという代物に過ぎないのではないか?



【問題④デュエルしてもボールが奪えない件】
GettyImages-872466440-min.jpg

4つ目の問題はボールにプレッシャーをかけたとしても、最後ボールを奪う、という個の能力が低くて奪いきれないという問題です。

日本サッカーにおける永遠の課題ですね。

ブラジル戦ではネイマールへの対応で、まず酒井が背後から寄せて、横からはアンカーの長谷部が、前からSHの久保がプレスバックして必ず数的優位を作って奪う、という約束事が徹底されていました。

しかし個々で奪えない集団で囲んでも結局3対1をネイマールに面白いようにいなされ、必死に寄せる酒井はファイルを量産するだけに終わりました。

実際の試合から攻防を振り返っていきましょう。


ネイ囲む1

局面はまさに今、酒井、長谷部、久保の3枚でボールを持ったネイマールを包囲しようというところ


ネイ囲む2

まず側面から寄せてきた長谷部を難なく右手のハンドオフ1本でボールに近付かせないネイマール
長谷部は右手1本の力で上半身がのけ反った上体にさせられており、肩から入れない



ネイ囲む3-1

そのまま右手で長谷部をブロックしながら足裏でボールをコントロール
前後からもう2枚が挟むように近付いてきているのを感じているネイマールは狭いスペースの中で最もボールを細かく動かせる足裏を選択したのだが、こういうのはストリートの感覚なのか南米の選手は本当に上手い。



ネイ囲む4

プレスバックしてきた久保がボールにアタックするが、まさに「足先だけ出す」という典型のような守備。

足裏でボールを保持していたネイマールは久保の出した足と重心をしっかり見て、逆を取る持ち出し


ネイ囲む5

足から行っている久保は逆をつかれたら完全に腰砕け状態で対応出来ない。
久保の矢印とネイマールの矢印を見れば上手くいなされているのが分かるだろう。
この後、久保を外したネイマールは難なくマルセロに返して包囲網を脱出。

1対1の守備では「肩から先に入れろ」や「腰(ケツ)から入れ」など選手によって色々やり方はあるのだが、
日本の選手の奪いに行く時の姿勢は総じて軽い、の一言に尽きる。






<またもアジア仕様を脱しきれず>
2017-11-11-halil_18dyy5wtmrjg819o3i2uqt384c.jpg

試合後の指揮官は「後半だけならブラジルに勝っていた」「ベルギー戦は負けに値しない」と何故か満足そうだが、
アジア予選で分かっていた課題を世界で改めて認識し直しているようでは5歩は出遅れている。

率直に言って、ブラジルW杯後の4年もまたアジアにドップリ浸かって無駄にしてしまったという感しかない。


このままハリルで行っても本大会は相手に合わせてその都度メンバーと戦術をいじり、ストロングを消しながら耐えて耐えての3試合。
上手くいけばベスト16ぐらいは可能だが、このてのチームは頑張ってもそこが限界というのはW杯の歴史が証明している。


個人的にはこの国にW杯で旋風を巻き起こすようなチームの構築を長年望んでいるので
アジア予選など全試合ハーフコートに押し込んで世界基準のインテンシティとポゼッションで圧勝するぐらいでいってもらいたいのだが・・・









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新しい風が吹いたハリルJAPAN ~日本×サウジアラビア~

表紙1122
<新しい風が吹いたハリルJAPAN ~日本×サウジアラビア~

どうも皆さん、1ケ月振りです。

その間、海外クラスタからは「完全に日本代表応援ブログやないか」と言われ、
代表ファンからは「ツイッターを炎上させてる暇があったらブログ更新しろ」「原口のインテンシティを見習え」「どうせガッキーのドラマ見てブヒブヒ言ってるだけだろ」などなど、数々のごもっともなお叱りを受けて猛省中のダメ人間です。



・・・さて、アジア最終予選シリーズもようやく折り返し地点まで来ましたね。
(これで次の更新まで3ケ月休め・・・ry)

今回は日本の快勝に終わったサウジアラビア戦からその要因を検証していきたいと思います。
では日本のスタメンから。

日本サウジ1122

前回、この最終予選でも最も厳しい試合となるアウェイのオーストラリア戦では
最悪「勝ち点1でもOK」のプランでボールを相手に譲り「受け」の姿勢で臨んだハリル。

世論は「香川&本田外し」に動いていましたが、老獪なゲーム運びで勝ち点1を確保する試合に指揮官が何よりも重視したのは「経験値」でした。

その結果、清武が外れ本田、香川の2トップ(縦関係)で守備のファーストラインを決めるという人選に到っています。


翻って今回のサウジ戦は残りのスケジュールを考えても絶対に勝ち点3を「取りに」にいかなければならない試合。

当然、守備でも受けに回るのではなく前から積極的に奪いに行くプランになるので
前線は経験値よりもインテンシティを重視した若手中心のメンバーに入れ替えてきました。


<間延びした4-4-2と日本のインテンシティ>

試合前、目下グループ首位、しかも指揮官はあのファンマルワイクという事で不気味さが漂っていたサウジ。
しかし蓋を開けてみれば恐れるに足らず、非常温いチームだったと言えるでしょう。


サウジは守備時4-4-2で2トップが前からプレスをかけにきましたが
組織的な連動性に乏しくDFラインの押し上げは極めて緩慢。

結果、現代サッカーではほとんど見かけなくなった「間延びしきった4-4-2」のラインとラインの間で日本の攻撃陣が躍動。
特にこれだけバイタルが広ければ清武は常にフリーで間受けが出来るカモネギ状態でした。


【間延びしたサウジの4-4-2】
清武間受け1122-1
20年前のプレミアリーグかよwww



清武間受け1122-2
清武(試合後のコメント)『今日は相手があまりついてこなかったので、常にボールを受けられました。』



この間受けを嫌がってサウジのSHが中に絞れば・・・


閉められたら外112-1
シンプルに外を使うまで


このように序盤からサウジの「中途半端な前プレ」と「間延びした4-4-2」という戦術的に最悪の組み合わせにつけ込んで日本は自由にタテパスを出し入れ出来ました。

勿論、サウジのDFラインが押し上げられなかった要因の一つとして、やはりこの男の存在は無視出来ますまい・・・・











7b7bf783.jpg
一体どこのイブラヒモビッチだよwww




この圧倒的な「預けとけばキープしてくれる感」は半端無い!
(むしろ赤いチームで喘ぐ本家より10倍機能してる)


原口『(大迫の存在は)大きかったですね。収まり方がやっぱりすごいので、僕も前を向いて仕掛けられるシーンがたくさんありました』


結局日本代表の構造として1トップが身体を張って2列目のタレントを活かすという構図はザックがCFに前田を置いていた時の作り方と全く同じです。

日本はいつの時代も2列目にタレントが集中するので、彼らを活かそうと思ったら自然とこういうチーム構成になってしまうんですよね。

そしてこのタテパスが入る状況に今回セレクトした「前線のインテンシティ」が加わるとハリルが狙いとしている「タテに速い攻撃」の全貌が見えてきました。

では実際の試合から日本代表が見せたブンデスレベルのゲーゲンプレッシング⇒連続攻撃のコンボを見ていきましょう。


【ハリルが理想とする攻守一体化】
タテパスGプレ1122-1

局面は中盤で日本がボールを奪い返した瞬間から。すぐに空いている清武にタテパスが入れられる





タテパスGプレ1122-2

このタテパスを清武がコントロールミス。しかしタテパスで失っているのでサポートに上がってきていた山口、原口がそのまま守備に移れる





タテパスGプレ1122-3

ボールを奪い返したサウジのCBに強度の高いプレス





タテパスGプレ1122-4

ファーストプレスでこれだけパスコースが限定されていれば後ろはインターセプトを狙いやすい

長友が狙い澄ましたインターセプトでサウジの1本目のパスを奪う





タテパスGプレ1122-5

サウジは中途半端に攻撃に出ている瞬間なので大きなチャンスに繋がる二次攻撃となった
(ゴール前に走りこんだ久保にタテパスが出て横で大迫がフリーの決定機につながる)



大迫のキープ力とサウジのDFラインを1人で引っ張れる存在感、清武の間受け、原口のインテンシティといったように日本のゲームプランとチョイスした駒がガッチリ噛み合っていました。

そのかいあって前半は日本が圧倒的に主導権を握り、ハーフタイム間際に大迫の超絶キープから2列目が追い越せ、飛び出せの波状攻撃を仕掛けてPKから先制点を奪う事に成功。





<思考停止のデュエルに潜む危険性>
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前回のオーストラリア戦が「受け身」の守備だった事もあって殊更このサウジ戦の躍動感が日本のファンに好意的に受け取られているのは分かりますが、メディアがその一面的な見方に乗っかってしまうのは危険ではないでしょうか?

この2戦の違いは本田、香川が「いる・いない」以上にそもそものゲームプランとそれに伴う駒のチョイスが全く違ったわけで・・・。


確かにサウジ戦の日本の守備はハリルの口グセになっている「デュエル」の一端を日本のサッカーファンに示すに充分だった事でしょう。

しかし、ここでは同時にそこに付随する危険性の方にも目を向けてみたいと思います。



【日本の特攻守備が持つ危険性】
ボラのチャレ&チャレ1

局面は守備時4-4-2で守る日本の守備から
(久保と原口は逆ね)

球際での「デュエル」を強調されている日本はここでもボランチの長谷部が厳しくボールに寄せる





ボラのチャレ&チャレ2

・・・・が、取りきれずにボールを逆サイドへ展開される。

この時の山口の動きに注目
見ての通り、逃がされたボールを追ってアタックをかけています。

しかしボランチの長谷部がアプローチして逃がされたボールに相棒の山口が出て行くという事は
ボランチの守備が「チャレンジ&チャレンジ」になっているという事。

つまりどうなるかと言うと・・・





ボラのチャレ&チャレ3
そりゃあもうバイタルがポッカリ空く!

ついでに言うと原口もボールに寄せているのでこの守備での日本の中盤4枚は「チャレンジ&チャレンジ&チャレンジ&チャレンジ」だ(笑)






ボラのチャレ&チャレ4

そんで、ここにタテパス打ち込まれたらDFラインは後退するしかない!


確かにボールに対して全員「デュエル」している・・・のかもしれない。
が、これでは中盤の連動性というものを全く欠いてボールにただ突っ込むだけの特攻守備になっている。

【日本の中盤4枚の動き】
チャレンジ&チャレンジ

本来中盤の4枚は1本のロープで結ばれているかのように左が出れば右が絞り、真ん中が出れば両脇が閉める・・・といった具合に一つの生命体として動かないとスペースが空いてしまいます。

日本人は言われた事を生真面目に受け取り過ぎるが故の思考停止ってのはカテゴリー問わず「日本サッカーあるある」ですなぁ・・・。



そしてもう一つ、日本の守備の継続課題となっているのが最後尾の押し上げ

間延び1122-1

局面はサウジがGKまで下げたバックパスを日本の2トップが追って前プレをかけているところ

しかし2トップの高さに対して中盤の2列目、そして2列目を押し上げる最終ラインが付いてきていません。
(本来は今2列目がいる高さにDFラインを敷きたいところ)




間延び1122-2

だから蹴られたボールに対してCBがアプローチ出来ない変な空間が生まれています。





間延び1122-3

結局、こぼれ球をこのスペースで拾われて、1人早めに深さをとる吉田とのギャップからDFラインはバラバラ。
前プレがサウジのロングボール1本で失点のピンチに。


このように圧倒していたに見える前半の戦い振りにも日本の守備が抱える危うさというものは確かにそこにあったという事を見逃すべきではないでしょう。






<プランBは「経験値」の投入>
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スターティングメンバーを「自分達から仕掛けて取る」メンバーで組んで狙い通り1-0リードで折り返した日本。
ハリルとすれば後半は当然リスクを抑えてサウジが出てきたところをカウンターで叩くオーストラリア戦に近いプランBへ変更となります。

となれば「経験値」の本田投入はこれ以上無い明確な戦術的交代だったのではないでしょうか。

実際、後半の日本は本田が入った事でタテへの推進力こそやや失ったものの、
バタバタした展開が消えて明確なハーフリトリートからのショートカウンター狙いに切り替わっています。

ちなみに本田はファーストプレーから続けて3本、受けたボールを「タテ」ではなくキープからのバックパスを選択。
指揮官の意図を汲み取って、まずチーム全体に後半は何をすべきかを示す極めて戦術的なプレーだったと思います。


ここからハリルは更に60分過ぎに「当初の予定通り」清武を下げて香川を投入。
よりオーストラリア戦に近いメンバー編成へ移行しています。

ではその本田&香川投入で日本の攻撃がどう変わり、追加点を生んだのか検証してみましょう。


本田2点目

局面は後半、西川のロングボールのセカンドを本田が拾い、それを見た原口が裏へ飛び出す瞬間

前半はここで裏に出してヨーイドン!が多かったですが・・・




本田2点2

本田はキープを選択してSBの長友が上がって来る時間を稼ぐと満を持して2人のコンビネーションでサイドを突破





本田2点3

時間を使った事で全体の距離感が近くなり、クロスに対する中の厚みも生まれています。
(香川のスルー?から原口が押し込んでダメ押し)


これが本田、香川、長友らザックJAPAN組が得意とする遅攻で同じクロスからの得点でも1点目と2点目の違いにハリルJAPANの幅が現れています。


但し、勿論メリットあればその裏にデメリットあり・・・なので、後半のザックプランだと当時と同じ課題が顔を覗かせてきます




【後半のザックプランが抱えるリスク】
本田守備問題1122-1

局面は日本が中盤でボールを回している場面。
注目は右SH本田のポジショニングでやはり「定位置」に入ってしまっている・・・




本田守備問題1122-2

で、この状態でボールを失うと日本は右SHがいない状態で守備をスタートせざるを得ない

長谷部がこれに気付いて山口に空いてる右サイドを埋めるよう指示




本田守備問題1122-3

急場しのぎの陣形で守る日本となるが、ここからサウジにボールを回されると・・・




本田守備問題1122-4
中盤の守備がカオス過ぎwwww

ブラジルW杯のコートジボワール戦の悪夢再び

これが本田を使う時のメリットとデメリットですね。




<ハリルJAPANに警鐘を鳴らす失点>

とはいえ、試合終盤までサウジのシュートを2本に抑えてホームで2-0。
あとはこのまま試合を閉じて文句無しの勝ち点3かと思われた後半90分、ケチのつく1失点でした。

この失点はサッカーの厳しさというか、やはり前半から確認されていた日本の守備の問題点が凝縮されたハリルへの警笛のようなものだったように思われます。


【日本の課題が凝縮された失点シーン】
失点1122-1

局面は終盤、パワープレー気味の攻撃に切り替えたサウジのロングボールから



失点1122-2

これをこの日、空中戦で無双していた吉田が跳ね返す。

と、同時に日本はDFラインを押し上げてセカンドを高い位置で回収しいきたいところ。

ところが・・・・



失点1122-3
ピクリとも押し上げないDFライン!


2枚上の画像、最初のロングボールを跳ね返した位置と比べても1センチも押し上げられていません。

これだとただのベタ引き守備でセカンド拾われてのロングボール地獄になるぞ~





失点1122-4

ほらねー、SHの本田がここまで落ちてきたらセカンド拾えませんって



失点1122-5

その必然として波状攻撃を受ける日本。
そして↑ここでも中盤4枚の連動性が皆無なので、山口と長谷部のボランチ2枚がディアゴナーレを作れず並列に並んでる状態。




失点1122-6

やっぱり中盤4枚が1本のロープで繋がってたらボールと逆サイドのボランチ&SHはここまで絞ってきて欲しいですよね




失点1122-7
ほーら、真ん中を真っ二つに割られたー!

ドリブルでボランチの間割られてバイタル侵入されたら守りきるのは厳しいですよ
(スルーパスを裏に通されて失点)


失点を振り返ってみると「押し上げてコンパクトに出来ない最終ライン」「連動性が皆無な中盤」という日本の課題がモロに露呈した形になっています。



<今だからこそ敢えて"ハリルのサッカーは世界で勝てるのか?"を問うべきだ>
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最終予選も半分を消化し日本は3勝1分1敗の勝ち点10で2位。

結局初戦のUAEで躓いたと言っても首位のサウジがこのレベルだったり、オーストラリアがタイに勝ち点を落としたりで終わってみれば順当な順位に落ち着くのがこの総当り戦というフォーマットなんですよね。

この5試合を振り返るとハリルのサッカー哲学というものも少しづつ分かってきたのではないでしょうか。

その日の相手、自分達が置かれた状況からゲームプランを導き出し、そこに最適なメンバーをチョイスする。
誰がエースで誰と誰だとベストメンバーという概念は多分この監督にはないはずなので日本のマスコミやファンが好むその手の話題は本質的には無意味だと内心鼻で笑っている事でしょう。


ハリル「私は毎回このチームの強みは組織だと言っている。もちろん、何人かの選手はトップパフォーマンスではない。ただ、私は躊躇なくより良い選手を選んでプレーさせた。全員をリスペクトしていて、私は「スター選手はチームだ」と言っている。」

「私はずっとこのやり方でやっている。今日はグループを見せてくれた。ひとつのチームは11人でできているわけではない。
16〜18人、それ以上の人数で決まるものだ。各自が先発を目指した競争がある。私はこういうやり方でやっていく。」



UAE戦後にはかなり騒がしかった周囲もだいぶ沈静化されてきました。
しかし、だからこそ今、敢えて問いたい。

「ハリルのサッカーは世界で勝てるのか?」


確かに日本の戦い方の幅はプランBを持たずに惨敗したザックJAPANより確実に広がっています。
その意味では前回のアンチテーゼに充分応えていると言えるでしょう。

しかし、あらゆる事態を想定して「事故」を起こさない準備の仕方は、どちらかと言うと強者が躓かない為のものではないでしょうか。


過去のサッカーの歴史を振り返ってみてもW杯で日本がアップセットを起こすとしたら一局集中型のスタイルによる一点突破しかないと思います。

そのスタイルがハマれば突き抜けるし、ハマらなければ何も出来ずに敗退・・・・これが弱者のあるべき姿だと思うのです。


ザックの4年間はハマった時の躍動感と打つ手が無い時の絶望感の落差が大きく、
肝心の本番の結果がトラウマになっているのは分かりますが、その経過と選択までが全て誤りだったのかどうかを誰も検証していません。


ハリルJAPANがこのままいくと恐らく本大会では悪いなりにもザックJAPANよりはしぶとく勝ち点を稼ぐ一方、
ハマったとしてもザックJAPANほどの確変は望めないだろうな・・・というのが今から透けて見えるのです。


忘れてはならないのは、我々はアジアを戦いながら同時に「世界も見据えなければならない」という視点だと思う次第。













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「俺達の」でも「タテに速い」でも無く「結果を求めるサッカー」の真価を問う~豪州×日本~

1015表紙
<「俺達の」でも「タテに速い」でも無く「結果を求めるサッカー」の真価を問う>
~オーストラリア×日本~


アジア最終予選シリーズ第4弾はアウェイの豪州戦です。
この試合の「勝ち点1」という結果をどう見るか?

最終予選を目の前の試合を1つづつ勝っていく「短期的」な戦いの積み重ねと考えている人は
試合前の日本の順位と勝ち点からそれこそマスコミ主導型の「絶対に負けられない戦い」で勝ち点2を落としたとなるでしょう。

一方で10試合トータルで最終的に2位以内(最悪3位)に入る「長期戦」のリーグと見れば
今予選の中でも最も勝ち点を取るのが厳しいこのカードは試合前から勝ち点1で御の字という構えでいたはずです。


しかし視点を更に広げてW杯本戦で結果を残す、というところから逆算した「残り1年半スパン」で捉えるとどうでしょうか。
この最終予選という真剣勝負の場で世界と戦うチーム力のベースを作っておかないと
結局またアジアと世界との差に絶望させられるだけという繰り返しになってしまいます。

故に自分としてはこの試合は最悪「勝ち点0」でもOK(それでも最終的に2位は充分射程圏内)
但し、それは内容を伴った上での勝ち点0である事。

ここまでの3試合、アジア相手に散々腰の引けた戦いを見せられてこのまま行ったら予選が終わる頃には
世界どころかアジアでもどれだけ退行した位置にいるのかとかなり絶望的な思いをさせられているので、
今一度勇気を持って豪州相手に打ち負けての勝ち点0であれば長期的に見れば大きな収穫になると思っていたからです。


ただ、結論から言うとハリルはこれまでと同じように「結果」を取りに行って
「勝ち点1」という結果を持ち帰ったのですからそこはプロとして正当に評価されるべきでしょう。
あのサッカーで挑んで負けていたら何も残らない悲惨な状況でしたが
とにもかくにも一番厳しい試合で得た虎の子の勝ち点1は最後に大きな意味を持ってくる可能性もあります。

マスコミのハリルに対する風当たりもかなり厳しくなってきましたが
好意的に観るのであれば"あのサッカー"こそがハリルが本来得意とするスタイルだったのかもしれません。

これまでは日本相手にどこも引いて来るのでボールを持たされる中、
最大限カウンターのリスクを排除して戦うハリルからすると不得意な土俵を強いられていましたが、
オーストラリアは今予選で初めて日本から「相手にボールを持たせる」という戦い方の選択肢が生まれた相手でした。


では仮にこの試合をハリルの真骨頂が発揮された、と考えた時に果たして世界相手に結果を残しうるサッカーだったのかどうか-
今回はそこら辺にも焦点を当てつつ、豪州戦から見えたハリルの手腕と日本の現在地を探っていきましょう。


<本田1トップに漂う岡田JAPAN臭>

日本豪州スタメン1015

まずはオーストラリアの布陣から。まさかの4-3-1-2です。
この布陣は中盤の4枚で絶対的なポゼッションが確保出来るという自信が無いとなかなか運用が難しいシステム。

両サイドの幅を作るのがSBだけなので押し上げるだけの時間を作ると共にSBが常時上がっていてもボールを失う事は無い、という強気の姿勢が求められるからですね。

世界では過去アンチェロッティのミランなどが代表例ですが、
やはりピルロ、セードルフを中心とした中盤のポゼッション力とカフーの常人離れした攻め上がりが記憶に残るチームでした。


対するハリルはこの大一番に彼の本質的なサッカー観の一面を除かせる決断を下していました。
岡崎が欠場という自体に攻撃陣の配置は事前からかなり注目されていましたが、その回答は「本田の1トップ」
トップ下には香川を復帰させて両ワイドの大久保&松井ならぬ小林と原口が馬車馬のように走り回るという・・・
紛れも無き岡田JAPANのリバイバル!

要は「リスクは冒せない」「ボールは相手に渡して結果を持ち帰る」という意思がこのスタメンに表われています。

前回イラク戦後のレビューでは加茂JAPANを例に日本サッカーの時計は20年巻き戻ったと言いましたが
ハリルは僅か5日でその時計を進め6年前の時点にまで戻してきました。ああ良かった、良かった!

ハリルにとっては未開のアジアサッカーという舞台で
日本がかつて見せてきた負の遺産を次々と引っ張り出してきては四苦八苦している姿に既視感が拭えません。

あれ・・?確かあのサッカーに限界を感じてザックを招聘してきたんじゃなかったっけ・・・?
(いや、あれが並行世界の出来事だった可能性や我々日本サッカーファンが繰り返される8年をエンドレスに彷徨っている可能性も微レ存。これをエンドレスエイトと名付け・・ry)




<ゲームプラン通りの先制点>
sensei10152.jpg


試合は序盤からハリルの狙い通りオーストリアがボールを握って日本がそれを待ち受けるという関係がハッキリとピッチ上で具現化されました。

我々からすると中盤を省略してボンボン蹴られた方が遥かに嫌だったはずですが目下オーストラリアはポゼッションスタイルへ移行中という事で、ある意味お互いが半周してそれぞれのスタイルが噛み合う構図になっていたのです。


オーストラリアは攻撃時、自陣から丁寧につなぐビルドアップで特にキーになっていたのが3センターの3枚(ヒゲ、ハゲ、パイナップル頭)。
日本の守備は序盤、本田が相手の2CBの片方を切って方向を限定し、前線に入れてくるクサビと3センターに預けるタテパスから本格的にプレッシャーをかけてインターセプト⇒ショートカウンターというゲームプランでした。

オーストラリアのポゼッションの中心である3センターを逆に日本のカウンターの起点にしてやろうというのがハリルの目論みだったようで、この3枚にはボランチの山口&長谷部だけでなくSHとトップ下の香川もパスコースをケアする姿勢が序盤から徹底されていました。


攻撃面でもこれまでは奪ってマイボールにしたまではいいけど、一体どうやって崩していくんだ問題で結局リスク排除の外⇒外⇒クロス量産に終わっていましたが、この日は奪った瞬間に明らかな目標物が日本の最前線に立っています。

これで余計な迷いが消えたのか長谷部などは奪ったボールをシンプルに本田に通すタテパスを連発、役割が整理された事で心も整えられた模様。

そして一番重要なのはこのタテパスが本田で収まる事!(ここ重要)

ここ3試合は相手にドン引きされる中でポゼッションしながらDFにベッタリ付かれている状態でタテパスを受ける受ける事が多かった本田ですが1トップになり岡田JAPANの頃の感覚が蘇ったのか、攻守のトランジションの瞬間にスッと引いてきてカウンターの1本目を納める動きが非常に利いていました。

では「狙い通り!」と言わんばかりのハリル会心の先制点を検証していきましょう。


【日本の先制点】
日本得点1014-1

局面はオーストラリアのポゼッションに対して日本がプレッシングを行っているところ。
相手の左SBが持ったボールに対して小林がプレスバックして挟みに行き、トップ下の香川もボールサイドにスライドして網を張っています。

これでパスコースのなくなったオーストラリアはCBまでバックパス


日本得点1014-2

CBが持ったところで相手のキーマンの1人であるアンカーのジュディナックを香川がケア
徹底してここにはボールを出させません。



日本得点1014-3

オーストラリアは中盤にタテパスを出せないのでCBからCBへの横パスしかコースが無い

するとこの横パスに合わせて今度はCHのムーイをケアする為に横スライドする香川。
ボールが横に動く度に3センターへのタテパスを横スライドしながら消し続けるトップ下の守備タスクはかなりの負担だったはず



日本得点1014-4

CBからムーイに入れて来たタテパスを狙い通り香川と原口で挟んでボール奪取⇒ショートカウンター発動!



日本得点1014-5

長谷部に預けたボールは迷い無く本田へ。
そして本田のキープ力を信じて原口と小林の両ワイドが馬車馬のように前線へ飛び出していくこの懐かしい感じ(笑)

まあ、1度成功しているモデルだしアジアでは尚更・・・って感じもしますが、とにもかくにもハリルのこの博打は開始早々に結果を出した事だけは間違いありません。



<ゾーンディフェンスの強み>

このように序盤から日本の守備はオーストリア相手に明らかにハマっていました。

4-4-2と4-4-1-1を使い分けながら前線がパスコースを限定して後ろがインターセプトを狙う形で面白いようにボールが奪えたのです。
(だってオージーったら明らかに下手なのに意地になって繋いできてくれるんやもん・・・)

やはり3ラインがコンパクトな状態で組織的なゾーンディフェンスが機能した時の日本は強い。(確信)
行き過ぎず、かといって引き過ぎずという絶妙なエリアで網を張れていたと思います。

では実際の試合から何故日本の守備があれだけ機能し、面白いようにカウンターが取れたのかをロジカルに検証していきましょう。


【3ラインで守備をする(ゾーン)】
右小林守備1014-1

局面はオーストラリアのCBがボールを運んでいるところにまずファーストディフェンスとして本田がパスコースを消しながら寄せる。
本田の寄せ方で逆サイドへの展開は無くなったので日本は全体をボールサイドに寄せながら網を張れます。

ポイントは右SH小林の背後をSBのスミスが追い越して走り出していますが、これを誰が捕まえるのか?という話。
マンマークで守るなら「人ありき」なので小林がそのまま付いて後退するのがセオリー。

しかしゾーンで守るなら小林がSBに付いて行ってしまうとこのエリアに誰も人がいなくなってしまいます。
あくまでゾーンでは「ボールありき」なので小林は自分のゾーンに残ったままポジショニングによってパスコースを消しつつ、背後は後ろの酒井ゴートクに受け渡せばいいのです。




右小林守備1014-2

オーストラリアが入れて来たタテパスに対して背後を狙うSBスミス
しかし日本もゴートクがカバーリングのポジションを取って裏はケア出来ているので・・・




右小林守備1014-3
ハイ、取れた~。

小林は別に必死こいて下がってくる必要ナシ!


このそれぞれが自分のゾーンを守ったまま、即ちチーム全体で3ラインを保ったまま守備をするゾーンディフェンスの利点は
何と言っても奪った後のショートカウンターまでが理論的に逆算出来るところにあります。

どういう事かと言うと口で説明するより見てもらった方が早いので↓

【ゾーンで奪えれば理論的にカウンターが成立する件】
奪ってSB裏1014-1

こちらも局面はさっきと同じように小林の背後をSBのスミスが狙っているという図式ですね。

小林はこれに付いて行って下がるのではなく、むしろ自分の持ち場を守る事でグラウンダーのパスコースを消しています。

じゃあ小林の頭上を越す浮き球で裏を取ればいいじゃないかというと・・・



奪ってSB裏1014-2

当然、この浮き球は後ろの担当になるゴートクが狙っています。

で、ここがミソで小林を下げる事なくボールを回収出来たら、オーストラリアはリスクを負ってSBを上げてきている訳ですから
今度は持ち場を守っていた小林のゾーンが自然とオープンスペースになっているのが↑の画像でも分かるかと



奪ってSB裏1014-3

奪った瞬間に自然とSB裏でカウンターの起点が出来るので慌ててオーストラリアのCBが寄せると
今度は大外でトップ下の香川が空いちゃうよ~という極めてロジカルなショートカウンター

これがゾーンディフェンスの強みです。


酒井高徳『前半は上手く守れていたと思う。悠くん(小林)とも話したんですけど下がってくるのではなくて敵のボランチやCBの方をケアしてもらっていたんです。それが上手くハマって前半は非常に良い手応えでした』



<左右非対称のイビツな守備>

ところがこのゾーンディフェンス、右サイドで小林と酒井高徳の連携が良好だったのに対し左サイドは少し様子が違った模様。

【左サイドの守備】
香川低い1014-5

局面は先ほどと同じようにオーストラリアのビルドアップですが、明らかに右SBマクゴーワンの上がりに対して
日本の左サイドの守備はSHの原口がマンマークで付いて下がって5バック化してるんですよね。

で、原口がいて欲しいエリアが無人になってしまうので香川がそこに降りてきて守備をしている・・・と。

この守備だと何が苦しいかって仮にボールを奪ったとしても・・・



香川低い1014-2

ボール回収地点は低くなるし、いて欲しいSB裏のスペースには当然原口はいません。(SB化してるので)




香川低い1014-4
さすがの香川もこれはキツイでしょ

ハッキリ言ってカウンターどころではない⇒苦し紛れにロングボールを蹴って⇒ソッコー回収されてオージーの二次攻撃⇒守りっぱなし

先ほどの右サイドの守備と比べて明らかに左サイドの守備は異質。
日本は右と左で守備の方法が違うという極めてアンバランスな状態になっていました。

もちろんチームとして何か狙いがあってそうしているならまだ議論の余地もありますが
試合後の選手コメントを見てもどうやらかなりそれも怪しい様子。

槙野『僕に求められたのは、原口の守備のオーガナイズをすること。サイドバックというより真ん中への意識が高かった』

槙野『本当なら原口をもう少し高い位置でプレーさせたかったんですけど、「ヘルタでもこういう仕事をしている」と言っていたので、普段のプレーを存分に出させるためにワイドの選手を彼に見させて、中を僕が潰そうと』


え・・・?


お前の判断なの?www



とにかく前半からこの左右非対称のアンバランスな守備が気になって仕方なかったのでしばらくベンチワークに注目して見ていたんですが、オージーの右SBが高い位置を取ってくるとハリルはしきりにそれを気にして「誰か付け!」みたいなジェスチャーを繰り返していたんですね。

右SB気になる

で、仕方なく原口が付いていく形になって、それを指揮官が目の前で見ていたのだからこれで良し、としていたのかもしれませんが・・・。


とにかく、この左サイド限定マンツーマンのせいで日本は5バックになり、香川がそこに降りて5-4-1へ。
日本が3ラインで理想的な守備をしていたのは実質立ち上がりの15分ぐらいなもので以降は自陣ベタ引きのひたすら耐えるだけの展開となっていきます。

試合を観ながらさすがにハリルもハーフタイムを挟んでこの左サイドの守備を修正してくるだろう・・・と思ってたら驚愕の後半が待っていました。

ハーフタイムの指示の一部を試合後、右サイドの酒井ゴートクがインタビューで語ってくれています。

酒井『後半は悠くんを少し後ろに下げすぎちゃった部分はあった。後半に監督から、向こうのSBに悠くんが付くようにという指示が出てより外に意識をと切り替えたところで失点してしまいました。そこは指示どおりにやらなきゃいけないのか、あるいは自分たちで考えて行動するのかしっかり判断したいです』



え・・・・?


むしろ右サイドをマンツーに修正するんだwww



これによって何が起きたのかはご存知の後半開始早々の失点場面が明らかにしてくれます。

【日本の失点シーン検証】
日本失点1015-1

局面は後半の立ち上がり、オーストラリアのビルドアップです。

前半の小林であればここは中盤の高さのまま守備をするのでCHのムーイをケアしつつ、背中で外を切るようなゾーンのポジションを取るはずですが後半は・・・



日本失点1015-2

左SBのスミスが上がって来るとハーフタイムの指示もあり外をケアする小林

結果、ムーイはフリーでボールを受けられる

失点要因①右サイドの守備を前半と変えてしまう



日本失点1015-3

フリーのムーイから再びジュディナックにボールが渡ると長谷部がこれにアプローチ

しかしSHの小林は外をケアしているのでバイタルへのパスコースは空いており、
ボランチ山口のスライドもまだ間に合っていないので実質バイタルエリアをケア出来る選手が不在。

失点要因②長谷部の不用意なアプローチ


日本失点1014-4

ジュディナックに狙いすまされたクサビをバイタルに入れるとここにSBのゴートクが無理目のアプローチ
基本それまでゾーンで守備をしてきた(川崎でも?)小林は背後を取るスミスには付ききれておらず、実質バイタルに入れられた瞬間にゴートクは1対2の数的不利であった

失点要因③高徳ステイ出来ず


日本失点1014-5

ワンタッチでスミスにはたかれてアーリークロスを上げられる場面。

これを観るとついつい「うわー!やべー!」って思ってしまう人は多いかと思いますがこの段階に到ってもまだまだ失点率はかなり低い場面というのがアジアサッカーの実情。

ここから上がるクロスの精度、中で合わせる人間の決定力を考えると失点率は10%以下、
要はアジアではこの程度のチャンスシーンでは10回に1回得点できるかどうかってとこが関の山なのでまだいくらでも失点を防ぐ手立てはあります。



日本失点1014-6

で、実際にクロスが出されて中のユリッチにピタリと合ってしまった段階。

それでもまだまだ大丈夫。
このシーン、受けるユリッチの⇒とファーストタッチで置きたい位置との矢印が90度違う方向なので
身体の流れはタテに行きつつボールは正面に押し出す感じで止めないとゴールに対して理想的なシュート角度を確保出来ません。

まあ、メッシとかだと難なくビタ止めから1、2でドン!と打ってきますけど簡単にやってるようで求められる技術水準は高いのです。



日本失点1014-7

・・・で、原口が後ろから倒した瞬間がコチラ。

ほら、やっぱりファーストタッチを外に流して膨らんでしまっているでしょ?

これだと仮に原口が戻ってきてなかったとしても腰が回りきらずにサイドネットか、
枠内に打ち込めたとして角度的に西川の正面で事なきを得ていた場面だと思うんですけどね。


理想的なのは原口が内側から外に追い込むようなコースで戻って飛び込まずに我慢してくれればベストでしたが、
あの「俺が奪う!」という勝ち気な守備が彼の良さでもあるので難しいところではあります。

ただこれまでの4失点がPK2、FK2なのでもう少し我慢強く守れば意外とサッカーは失点しないものだぞ・・・という老獪さは欲しいですよね。




<「タテに速いサッカー」はどこに行った?>
20160929-00000077-dal-000-view.jpg


1-0でリードしている段階であれば5-4-1のドン引き岡田JAPANだろうと耐え切れば勝ち点3という状況でしたが、
1-1になった事でその後のハリルの動きがこの試合の意図を明確にしてくれました。

指揮官がとった選択は・・・「現状維持」
当然です、この試合で欲しいのは勝ち点1という結果なのですから。

ハリル「オーストラリアはコーナーキックかFKからしか点が取れないので、そこの管理をする選手が必要だった。本田(圭佑)と小林(悠)には、FKでの正確な(対応の)役割を与えていた。齋藤や浅野だと経験がない分、プレッシャーに負ける不安があった。オーストラリアはアジアチャピオンなので、それほど多くのリスクは取れない。


セットプレーでの不安があるので本田と小林は変えられない。では香川はどうか?

ハッキリ言って岡田JAPANでその岡田監督自身が最後にメンバーから香川を外したように
このサッカーで香川に輝けというのはかなりの無茶振りだったように思います。

しかしハリルは香川を残した。
イラク戦であれだけのパフォーマンスを見せた清武を切ってでも香川を起用したのは指揮官からの信頼の厚さと2列目の序列がハッキリした事を表しています。


徹頭徹尾、リスクを排除しつつ「結果」のみを追い求めたサッカーで得た虎の子の勝ち点1。
これをどう評価すべきでしょうか?

まず、このサッカーこそハリルの真骨頂であり、弱者のサッカーはW杯本大会でこそ真価を発揮するであろうという見方について。

個人的には甚だ疑問です。
一つハッキリさせておきたいのはオーストラリア戦で日本が見せたサッカーは決して「タテに速いサッカー」でも何でもないという事。

前半15分までのサッカーであればボールは相手に渡してもその実、主導権を握っていたのは日本という意味で弱者が強者を負かしうるサッカーをしていたと言えるでしょう。
奪った瞬間は構造的にタテに速いカウンターが出せるようになっていますから。

しかし残りの75分見せていたサッカーはただの「引き篭もり」であって、後ろにかけている枚数の多さとボール回収地点から逆算すればどう考えても「タテに速い攻撃」は望むべくもありません。


日頃、ハリルがJリーグへの物足りなさを吐露する時に基準として持ち出す「世界基準のオーソドックス」に照らすのであれば、
本気でラングニックを発生とする「タテに速いサッカーの最先端」を目指すというのであれば、
相手の動きに引っ張られて5バック化するようでは話にならないし、右サイドにボールがある時の左SBのポジショニングはセンターサークルまで絞ってこなければいけないはず。


本当にフィールドの半分に10人全員が密集するインテンシティを日本代表に求める気概はあるのか?


え・・・?逆サイドにサイドチェンジ出されてしまったらどうするのかって?


だから絶対に出させない為の圧倒的密度とインテンシティがマストで求められる訳です。


普段、Jリーグの守備を「ズルズル下がるだけ」とハリルは言います。「もっと勇気を持て」と。
そこは完全に同意なのですが、しかしハリルが代表で見せているサッカーは勇気の欠落したサッカーそのものではないでしょうか。


奇しくも現在代表を苦しめている海外組のレギュラー落ち問題。
これはチャンピオンズリーグ等の世界最高峰の戦いに必要とされるインテンシティが日本人には足りない、と暗に世界からNOを突きつけられていると捉える事も出来ます。


確かに日本が世界で戦っていく方法論として、それが必ずしもポゼッションである必要はないでしょう。
近年は所謂「タテに速いサッカー」をしているチームが結果を残しているトレンドもあります。

しかしAマドリーやレスターには低い位置で回収したボールを個で運べるタレントがいる事、
今年のCLとEUROの優勝チームには奇しくもCロナウドというカウンターマスターがいた事、
これらを鑑みても尚、日本代表が取るべき方法論としてそれを選ぶというのならそのロジックも問いたいところ。


フットボールに正解はありません。

日本が取るべき理想的なサッカーの方法論もきっとそうでしょう。


しかし、少なくとも勇気の無い者にそれを探し当てる資格が無い事もまた確かなのではないだろうか-











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ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか~日本×イラク~

表紙1003
<ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか
~日本×イラク~


「ホタルゥゥゥ~!!」

ドーハの悲劇から23年-
イラク相手に劇的な逆転勝利を収めた日本代表

色々と示唆に富む試合だったので今回はこのイラク戦を検証していきたいと思います。


まずはスタメン




・・・はい、ご存知の通りです(手抜きかよ!)


ポイントは遂に10番香川が外れて代わりに清武がトップ下に入った事でしょうね。

世間ではこれをもって「世代交代」やら「香川限界論」が賑やかですがハリル自身も言っているように
単なるコンディションの比較で起用を決めたに過ぎないのでこれをもって序列が変わったとは言い難いと思います。

ハリル『清武は(所属クラブで)プレー時間が短い現状にあったが、(香川)真司より1日半早く帰国したので、そこのアドバンテージがあった。この時間が、私にとって重要だった』


要は選んだ選手の中で現状のベストを選択した、という事なのでしょう。


<驚きのゲームプランと間延びJAPAN>

さて、まず取り上げたいのがこの試合で日本が選択したゲームプランです。

序盤こそイラクの出だしの勢いをいなす為にシンプルにロングボールを蹴っていたのかと思っていましたが
そのまま前半の45分間を蹴り続けていたのには驚きを通り越して呆れてしまいました。


日本がロングボールを蹴って喜ぶのはむしろイラクの方でしょう。
相手が恐れているのは日本の組織力と技術の高さですが自分達からその武器が最も活きない戦い方を選択し
フィジカル勝負に持ち込みたいイラクの土俵にわざわざ上がっていってしまったのですから。


柏木「(縦に速い攻撃をするのは)チームとして決めていました。ただ、後方からのパスが多くなってしまった」


イラクの監督が序盤から「もっと前から行け!」としきりに叫んでいたのはこの日の日本が前プレをかければ簡単にロングボールを蹴ってくれるからです。



では何故ハリルはこの戦い方を選択したのでしょうか?

これは恐らく初戦の黒星が思った以上に利いている、という事でしょう。
この試合前も負けたら解任という噂がマスコミからしきりに持ち出されていましたが
現在のチームと監督のメンタル状況が「自分達の良さを出して勝ち切る」よりも「負けたくない」「つなぎをロストした時に変なカウンターを受けたくない」という方に流れていったのだと思います。

確かにロングボールを蹴っている以上、自陣で奪われるリスクはなくなります。
その代わり前半の日本はほとんどチャンスらしいチャンスを作れていません。

得点機と言えるのはロングボールのセカンドをたまたま高い位置で拾えた清武のシュートとショートカウンターからの得点シーンの2つぐらい。


原口の得点シーンは彼のプレスバックでボールを奪った瞬間の原口、本田、岡崎、清武の海外組が見せたトランジションの質の高さが光りました。

誰1人足を止めずに4枚がゴールに向かい、その過程で技術的なミスが一つも無かったのがゴールに結び付いておりアジアのレベルを超えた欧州クラスのカウンターだったと思います。
(唯一本田のパスを出すタイミングがやや遅れてオフサイ気味だったけど)


ただ2回の決定機で1点取れたのは結果論(行幸)に過ぎず、マイボールを自ら放棄するような遅攻ならぬ稚攻ばかりが目立っていました。

更にこのタテポンJAPANのデメリットは攻撃だけでなく守備にも及びます。
攻撃がロングボールで終わるという事は失った後の守備陣形が充分でなく全体的に縦に間延びしている状態になるからです。

実際の試合から日本の守備を検証してみましょう。


【間延びした日本の陣形】
間延び1008-3

局面は日本がイラク陣内で失ったボールにすかさずプレスをかけていくところ。

ファーストディフェンスの原口がイラクの攻撃方向を限定し、左サイドに追い込んでいます。
日本はボールを失った左サイドで数的優位を作ってこのサイドから出さずに奪いきりたいところ。

何故なら・・・


間延び1008-2

このプレス網を抜けられるとボランチ脇の空いているバイタルエリアを使われてしまうから

つまりボールサイドに人数を割いてこの弱点となるエリアを「使わせなければ」日本の勝ち。
プレス網を抜けられてしまうと日本の負けという守備ですね。

ただお互いがロングボール中心の蹴り合いの展開になっている関係で日本の陣形がやや間延びしているのが気になります。
イラクにここからロングボールを蹴らせると・・・



間延び1008-4

吉田が背後を気にして更に深さを取るのでイラクのFWをボランチの長谷部が下がって受け取る形に。

結果的に柏木の矢印がボールサイドに向かって前向きに、長谷部が後ろ向きになっているのでボランチ同士の距離も離れて
このロングボールを跳ね返したセカンドを拾うエリアに赤丸で囲ったイラクの2ボランチしか人がいない状態になっています。



間延び1008-5

本来であれば吉田がボールサイドのCB(森重)の高さに合わせてイラクの2トップをCBが見て長谷部にセカンドを拾わせる並びにしたかったところ。




間延び1008-7

ほらね、この間延びした陣形だとイラクのボランチにセカンド拾われちゃうでしょ?



間延び1008-6

で、空いたバイタルを使われてミドルシュート・・・と。


更にこの試合でも特にハリルが「デュエル!デュエル!」を強調していただけあって、
チャレンジ&カバーが怪しい戦術レベルの選手達が間延びした陣形の中で中途半端にボールにだけは強く行く意識を持っているもんだから性質の悪い話に。


【日本の特攻デュエル】
ディアゴナ1008-1

局面は日本陣内での守備の切り替え。失ったボールに対してすぐに柏木と原口が寄せてイラクにバックパスをさせると・・・



ディアゴナ1008-2
問題点①ディアゴナーレが無い

日本の特攻デュエル守備はこの下げられたボールにネコまっしぐらで向かってしまうので簡単に間を通されてしまうんですよね



ディアゴナ1008-3
問題点②バックパスに対する後ろの押し上げが甘い

せっかく相手にバックパスをさせたのだから吉田らの最終ラインを機敏に押し上げれば
ボランチの長谷部はもう一つ前で守備が出来て全体がコンパクトになったはず



ディアゴナ1008-4

さりとて特攻デュエルの結果は間を通され・・・・




ディアゴナ1008-5

逆サイドに展開されてスライドを強いられるしんどい展開。


結局マイボールは蹴り合ってしまうわ、守備は特攻だわで試合運びに全く安定感がありません。




<稚拙だったゲーム運びと選手起用>
2016-09-01-japan-halilhodzic_1puj8ealny1gw1p4onn800kck8.jpg

日本は僥倖の先制点を取った事であとはホームチームが試合を落ち着かせて焦って出てきたイラクの隙を付けばいいだけという理想的な状況が出来上がっていました。

にも関わらず「縦に早く(失う)」サッカーでみすみすイラクにチャンスを与え続けるのです。


【日本の稚拙なゲーム運び】
リスク1008-1

局面は酒井ゴートクが中盤でインターセプトを成功させたところですが試合のスコアと時間帯に注目。

1-0リードで前半ロスタイム。
やる事はこのスコアのままハーフタイムを迎えるだけです。

しかしゴートクはこのボールを中盤にパスで預けると・・・



リスク1008-2

いやーこの状況でSBがリスクを負って出て行って攻撃をタテに加速させる必要あるか?

しかも清武へのパスもズレていてボール状況も微妙⇒と思ったらやっぱり失ってイラクにタテポンされる




リスク1008-3

SBが上がっているので当然最終ラインは3枚+1ボラの不安定な状態

でも原口が機転を利かせてゴートクが上がったスペースをカバーしていた。ナイス判断。




リスク1008-4

でもやっぱり原口は守備が専門の選手じゃないからここでもボールに食いついちゃうんだよねー

(頼む、ここではもう相手の攻撃を遅らせるだけでいんだ。それで前半終わるから・・・)



リスク1008-5

あわや前半ロスタイムに追いつかれてハーフタイムでしたよ。


↑の場面はイラクの(アジアの)決定力に助けられて事なきを得ましたが
こういう稚拙なゲーム運びのA級ミスは世界相手だと確実に手痛いしっぺ返しを食らう事はザックJAPAN時代にも散々証明されています。


まあ、こんな感じなんで当然後半もバタバタとした展開を繰り返し、
ロングボールが増える⇒セカンドボールを巡る身体のぶつけ合いが増える⇒フィジカルで不利な日本のファウルが増える
の三段論法でいらないファウルからFKで同点弾。当然の帰結ですね。


そもそもこれだけ間延びした中盤でボールを狩ろうと思ったら断然柏木より山口蛍なんですが
投入が「少し遅れた」(ハリル)せいで日本の中盤が持ち堪えられずに失点してしまいました。

そのせいで1-1に追いつかれてから攻撃の舵取り役を下げて守備の選手を入れるというチグハグな交代に。


では今予選、初登場となった柏木には何が期待されての起用だったのでしょうか?
勿論ビルドアップの際の配球ですよね。

【日本のビルドアップ時の配置】
日本ビルド布陣1008

日本はイラクが自陣でブロックを作った時の遅攻の場合、両SBを上げて柏木がCB近くに落ち、配球役を担います。

序盤からこの形で両サイド目がけた対角パスをしきりに狙っていましたが
柏木のふんわりサイドチェンジは精度が悪く、しかも両サイドで受けるのがSBのW酒井では縦への突破はあまり望めません。

そもそも柏木が浦和で担っている攻撃の役割は外⇒外のサイドチェンジというよりは
バイタルへのタテパスやグラウンダーのパス回しが出来る距離感でのワンタッチフリックなど短いレンジのパスと崩しの連続性ではないでしょうか?

タテポンメインの間延びしたサッカーで長いボールでサイドを変えさせる役目として柏木という抜擢は選手起用のチグハグさを感じずにはいられません。



<"本田の時代は終わった"のか?>
honda10032.jpg

巷ではこのイラク戦を受けて清武、原口の躍動と本田、香川の限界説⇒『世代交代待望論』が根強いですが果たして本当にそうでしょうか?


その要因について考える上で続いて日本の攻撃を検証していきたいと思います。


この試合での日本の攻め筋はとにかく徹底して外⇒外で中への打ち込みは皆無といってよい状態でした。
何故なら中に打ち込んでロストした場合のカウンターが怖いから。



【ハリルJAPANの外⇒外】
間受け出さない1008-1

局面は左から右へ攻める日本のビルドアップ。本田が上手く相手ボランチの脇に入り込んで間受けを狙う得意の形。

SBの酒井が高い位置を取っているのと背後のDFの関係を首を振って確認しているので、間違いなく本田のビジョンには今⇒で書かれている中⇒外ルートとDFの寄せが甘ければ前を向いて裏へのスルーパスor清武とのワンツー等が頭に描かれているはず



間受け出さない1008-2

クルッと身体の向きを変えて逆サイドを見るベーハセ

え・・・?出さないの??

清武も出せって手を使って指示してるし本田も「マジかよ!?」みたいなリアクション




間受け出さない1008-3

あーCBに下げて逆サイへの対角にしちゃったよ・・・⇒吉田の40Mサイドチェンジは精度が低くて直接タッチラインを割る

これでマイボールがみすみすイラクのスローインから再開ですか。
まあ、確かにカウンターは受けずに済んだけどね!


続いてもう一つ


間受け1008-1

こちらもCB森重がフリーで運んでいるタイミングで本田が中、酒井が外の連動
イラクの左SBに対して2対1を作っているので今タテパスを打ち込まれるとイラクはアプローチ出来ない

よし!グランダーのタテパスだ!フンメルス!



間受け1008-2

え?ここでも外⇒外なの!?ビビってるの?



間受け出さない1008-4
何すか?この腰の引けたチキンサッカーは?

あの状況からGKへのバックパスって嘘でしょ?

これで「機能しない本田」とか本気ですか?


いや、確かに左サイドはこの外⇒外でもいいと思いますよ。左SHが原口だから。


【左サイドの外⇒外】
左原口1008-1

CB⇒CB⇒SB⇒SHというお手本のような外⇒外ルート




左原口1008-2

原口得意のファーストタッチでタテに外して・・・




左原口1008-3

そのままスピードに乗って仕掛けて大外の逆サイでは本田がゴール前へ
この形なら本田もセカンドトップとして機能するし左サイドの攻め筋は配置した駒と合致していたと思います。


実際、後半1-1に追いつかれて逃げ切りを図るイラクが5-4-1の守備に移行してからは
日本の攻め筋はこの左サイドの外⇒外しかなく実質「戦術原口」のような状態になっていました。


でもこの原口の単騎突破はアジアでは通用しても世界では確実に潰される事は分かっているはずなんですよ。
外を有効に使いたいなら一度中に打ち込んで相手の守備ブロックを絞らせる必要があるし、
中を使う為に外、外を使うための中を上手く使い分けていかないと戦術的に整備された守備ブロックなんて絶対崩しきれませんから。


だから本田を置いている右サイドはこういう崩しが必要だったんです↓


【本田を活かす右サイドの攻め筋】
右本田崩し1008-1

局面は右から左へ攻める日本のビルドアップから
SBの酒井が幅を取ってイラクのSHを外に引きつけた事で出来た中央のパスコースに本田が顔を出す

これが「外」をオトリに使った「中」の崩し


右本田崩し1008-2

この日の両チームの布陣を噛み合わせれば相手2ボランチの背後でトップ下の清武はフリーになれる配置になっていたんですが
外⇒外一辺倒の攻めだとその利点が活きていませんでした。

清武(香川)を活かすならやっぱりこの攻め筋、中⇒中でバイタルに落とし・・・



右本田崩し1008-3

相手の守備がギュッと中に絞ったところでワンツーからサイド突破!
中⇒中⇒外のこのルートこそ最後の「外」のスペースを広くしてあるので決定機につながるし、パスで先手を取っているので本田のスピードの無さは問題になりません。

これが左の原口とは違う右の本田を活かす攻め筋ではないでしょうか。


本田「ここに入れば簡単に崩せるのになという場面の意思統一。そこに関しては本当に改善が必要かなと思います。もっと簡単に崩れると思うんですよね。」




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<ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか>


ハリル『今までやってきた美しいつなぎは確かに出せなかったが、今回は強い気持ちと勇気でもぎとった勝利だった。』


試合後のコメントを読む限りハリルもこの試合の日本の戦い方が本来の戦い方とは思っていないフシは伺えます。
徹底したリスクの排除、相手の前プレはタテポンで回避し、ブロックを敷かれればカウンターを恐れて中にタテパスを打ち込む事なく外⇒外からの個人突破一辺倒。

この日の日本代表で最も”勇気”に欠けていたのは指揮官のハリルだったのではないでしょうか。


僕はこのイラク戦を見ながらその昔、といってもたかだが20年前の話ですが日本サッカーにとって「W杯出場」が悲願だった頃のアジア予選を思い出していました。

当時、日本サッカーと世界との距離など誰も正しく認識していなかったので宿敵韓国はドイツ、イランイラクなどはアルゼンチンばりの強敵に見えていた時代が確かにそこにあったのです。
(韓国相手にたかだか1点先制したら慌てて5バックでベタ引きを始めるような時代でした)

とりわけ中東勢のカウンターには繰り返し痛い目を見せられていたので日本の中東コンプレックスは根深く
当時の加茂監督は「中央でパスミスすると中東のカウンターが危険だから中央へのタテパスは禁止。サイドならリスクも低くて済む」と公言し、「中央突破禁止令」を敷いていたほど。

しかし世界のサッカーではまさにその時、バイタルエリアを巡る攻防が本格化し、その為の戦術多様化が始まっていた頃だったので衛星放送で食い入るように最先端のサッカーを見ていた中学生の自分は本気で発狂したくなるようなもどかしさをこの国の代表に感じていたものです。


あれから20年-
ハリルがイラク戦で見せたサッカーはまさにあの頃の日本代表そのものです。

何故今更、中東のカウンターにビビって腰の引けた日本代表など見せられなければならないのでしょうか?

イラクに逆転勝ちしたぐらいで精根尽き果てたようなフラフラの指揮官の姿を見ると不安になります。
モウリーニョだったら「君たちは今予選のレギュレーションを今一度よく確認した方が良いのではないか?10試合のリーグ戦で1勝1敗1分のスタートだったとしても突破には何ら問題は無い。だが今日は途中出場の選手が期待に応えてくれたお陰で更に良い状況になったね。それについては非常に満足しているよ(ウインク)」ぐらいケロっと言ってくれたはず。


采配面でもかなりグラついてきた感は否めません。

最後たまたま山口が逆転ゴールを決めた事で帳消しのようになっていますが同点の状況から勝ち点3を目指すカードとして
山口投入はロスタイムまで攻撃面での貢献度は低く、むしろチームの攻撃力を下げる交代になっていた点は見逃すべきではないでしょう。

そのロスタイム弾にしても結局外⇒外の戦術原口をイラクに見透かされて膠着していた状況に業を煮やした選手達が自発的に吉田のパワープレーを決断した副産物。

最後、打つ手が無くなったら結局「吉田のパワープレー頼みかよ」という状況は2014W杯時から何ら手持ちのカードが増えていない事も意味しています。


ゲームプランと選手起用のミスマッチも気になるところ。

外⇒外の攻め筋でいくなら右SHはそれこそ斎藤学で良かったのではないでしょうか。
逆にこの配置で行くなら当然右と左の攻め筋はそれぞれ異なるものにカスタマイズする必要があったのにも関わらずそこが徹底出来ていないせいで右(本田)が機能しない状況を自分達で作り出してしまいました。


最後に。

サポーターが目の前の勝敗に一喜一憂するのはいいですが指揮官がアジア予選ごときの勝敗でチームのスタイルをブラしているようでは世界では絶対に勝てないと断言出来ます。

サッカーでは37本シュートを打ったのに勝てない時もあれば、こんな内容の試合でもロスタイムにシュートが入って勝ててしまう時もあるのです。

「中東の笛」でゴールが取り消されれば「極東の笛」でオフサイドが見逃されもする。


だからこそ最終予選は10試合総当りで戦う事でそういった不確定要素が是正され、最終的にはチームの総合力が順位に反映されるフォーマットになっているのです。

一番危険なのはそういった内容の分析もなく目先の結果に引きずられて自らのスタイルをコロコロ変えてしまう事。


勝ち点3を取れたのだからこのスタイルで今後も行きますか?


今一度冷静になりましょう。


本日の閉めはそんな今の日本サッカー界にピッタリな明言を










『サッカーではリスクを冒さない選択こそが最もリスクの大きい選択となる-』










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