『ティキタカとの決別』~バイエルン×ドルトムント~

<『ティキタカとの決別』 ~バイエルン×ドルトムント~>
先週は多くのビッグカードが組まれたおかげで頭を悩ませましたが
戦術的にも多くの発見と驚きがあった「バイエルン×ドルトムント」のカードを検証していきたいと思います。
今季の流れと現代サッカーの最先端を観測していく上で外せない試合となりました。
ではまず両チームのスタメンから

バイエルンはいつも通り3バックをベースとした3-4-3気味の布陣。
攻撃時はミュラーが前線に張り出せば3-3-4となります。
王者らしい自分達のサッカーをこの大一番でも全面に押し出してきました。
対するチャレンジャーサイドのドルトムント。
クロップ政権から新監督トゥヘルを迎え、サッカーもリニューアル。
前監督の代名詞であった変態プレス(Gプレス)は封印し、守備はオーソドックスな方に少しバランスを取り直して
昨季相手に引かれると頭打ちだった攻撃はポゼッションで主導権を握る形にも真正面から取り組んでいます。
これに伴い、布陣はヴァイグルをアンカーに置いて香川とギュンドアンがCHに並ぶ4-3-3を基本にしてきました。
しかしバイエルン相手に4-3-3をぶつけた場合、トゥヘルには懸念材料があったはず。
それはバイエルンの攻撃の起点であるアロンソをフリーにしてしまうという事。
【トゥヘルの懸念 (4-3-3をぶつけた場合)】

その上、バイエルン相手に中盤で3対4の数的不利を自分達から作るのは自殺行為に等しいのではないか・・・、そんな疑問が浮かんでも当然な程、今季のバイエルンは開幕から強さを見せています。
そしてもう1点、個人での仕掛けが「人間兵器」とも言えるレベルのドウグラスコスタ。ここを抑えずに勝機は無い。
最終的にトゥヘルはバイエルン対策として4-3-1-2を選択。
【トゥヘルのバイエルン対策】

まず人間兵器にはドルトムントの中で最も対人に強いパパスタソプーロスをマッチアップ。
左SBには怪我のシュメルツァーに代わって右SBのピシチェクを回し、CBにベンダーを入れた緊急布陣。
そしてアロンソには香川をマンマークで付けて3バックの両脇アラバとボアテングにも簡単にボールを運ばれないよう2トップをワイドに張らせて対応。
試合後、フンメルスと香川がインタビューでドルトムントのゲームプランについて触れています。
フンメルス「ボールを持った時のボアテングとアラバに時間を与えないこと」
香川「シャビアロンソをフリーにさせるな、と言われていました」
その代償として3バックの中央にはある程度ボールは持たせてもOK!という割り切った戦術を採用してきました。
<先手を取ったトゥヘルとペップの応手>
トゥヘル「アタッキングサードでの仕掛けは結果に結び付かなかったが、最初の20分は悪くない出だしだった」
トゥヘルが言うとおり、結果的にこのバイエルンシフトは序盤、ある程度機能していたように思います。
ではその序盤の攻防からドルトムントの狙いがよく表れているシーンを一つ検証してみましょう。
【バイエルンシフトの狙い】

局面は右から左へ攻めるバイエルンのビルドアップから
この日は3バックの中央に入ったハビマルティネスが放置プレーとなります。
アロンソは香川にコースを消されているのを見てDFラインに降りる

「アロンソ番」の香川は当然アプローチに行くのでハビマルが浮く形に

但し、先ほども言ったようにドルトムントからするとこれは想定内。
フンメルス「ビルドアップではアロンソとボアテングにロングボールを蹴らせない事を第一とした」
ハビマルティネスはビエルサ時代のビルバオでも見せていたように
基本的には中盤を飛ばしたロングボールではなく左右にグラウンダーのパスを丁寧に散らすタイプのスペイン産レジスタ。
ここでもシンプルにサイドのチアゴ・アルカンタラを選択。

受けたチアゴから大外で待つドウグラス・コスタの足元へ「中⇒外⇒外」のビルドアップ。
確かにこれはこれでバイエルンの強みではあるんですが、この攻め筋はドルトムント側が誘導したものでもあり、
最後に1対1の勝負となるドウグラスにはその為のパパスタソプーロスをマッチアップさせています。

トゥヘルの期待通りにパパスタが粘り強く対応して、その間に中盤がゴール前までプレスバック。
ここではドウグラスが上げようとしたクロスをカットしていますが、仮にゴール前まで上げられたとしても人数は充分揃えていて準備万端という按配。
バイエルンは一見ボールは回っているように見えてもトゥヘルの手の内で回させられているだけなので決定機にはつながりません。
これを観たペップが早速、応手に動きます。
3バックの並びを変えて右にハビマル、中央をボアテングに。
【ペップの応手 (ボアテングをフリーにさせる)】

局面は3バックの並びが変わった事でアラバとハビマルにドルの2トップが、アロンソに香川がマークに付いて中央(ボアテング)がフリーという構造自体には変わりはありません。
しかしボアテングのビルドアップはハビマルとは違い、ドイツらしい中盤を飛ばした長いパスにその持ち味があります。
しかもペップ政権でその精度は目覚しく向上中。
ここでもピルロがよく見せているような中盤を飛ばしての・・・

レバンドへのクサビをグサッと通してきます。
先ほどの「中⇒外⇒外」と違い「中⇒中」で通されると守備側は中央に絞らざるを得ず、外が空いてしまいます。

ほら、これだと外で受けるドウグラスがこの高さでフリーになれるので、ボールを受ける前段階で攻撃側が圧倒的にアドバンテージを握れるんですよね。
これが「中⇒中⇒外」の攻め筋が持つ強み。
続いて必殺の対角パスも↓

ドルがボールサイドに寄せているのを見て・・・

現代サッカーのトレンド筋「対角パス」!!
レバークーゼン戦で先制点とったパターンや!
これやられたら守る方はズルズル下がるしかないし、ドウグラスはファーストタッチでペナ内進入出来るから迂闊に足出せん!
このぐらいから失点の匂いが漂ってきていたドルトムントですが、案の定前半の26分にバイエルンの先制点が生まれます。
↑の2つと同じように起点は構造上、フリーになっているボアテングからの1発のロングパス。
ドルトムントとしては最も警戒していた形ですが何故アッサリと裏をとられてしまったのでしょうか?
【バイエルンの先制点】

う~む、レバンドフスキを警戒させといて中途半端な位置にいたミュラーがダイアゴナルランで裏を取ってるのね。
バイエルンはこの時3-3-4の並びになっていて左SBのピシチェクには大外のゲッツェというマークがいるので
CBとSBの中間に位置しているミュラーはどうしても浮いてしまった訳です。
ハッキリ言って今季のミュラーはもう、ボールさえ持たなければ「世界一の受け手」です。
DFの背後を取るフリーランは芸術の領域で、ドルの最終ラインとしても対応は極めて難しかったと思います。
【ミュラーが裏を取った瞬間の配置】

青丸がそれぞれのマッチアップとマークの意識で、この時ドルの最終ラインとバイエルンの前線は一見4対3に見えて実は4対4でした。
ボアテングがフリーでキックモーションに入れるのを見て、又ドルの最終ラインがボールの出し手と自分のマークに意識が集中するその瞬間を狙ってミュラーがバイエルンの前線を「3」から「4」に変えているので、まあ空いちゃいますよね。
<バイタルエリアの覇者>

一方、反撃を試みたいドルトムントですがなかなか決定的な形を作る事が出来ません。
今季のドルの攻撃は基本的にブロックの外でヴァイグル、ギュンドアン、フンメルスらが中心となってボールを動かし
相手に横スライドを強いてタテパスのコースが空いた瞬間に香川が顔を出す・・・という形が基本。
しかし香川が守備でアロンソをマークしていたという事は、香川がアロンソにマークされるという事でもあります。
つまり両チームのキーマンがバイタルエリアで覇権を巡る争いを繰り広げていたのでした。
【アロンソの香川封じ】

局面は自陣でドルトムントがボールを奪った瞬間、カウンター発動のチャンスです。
バイエルンからするとこの時、一番避けたいのが香川にタテパスを入れられてターン⇒香川無双発動ですが、ここはアロンソが素早く寄せて真っ先にケア。
絶対にタテパスは入れさせない構えです。

仕方なく一度外に迂回させてからナナメのパスコースを探るドルトムント
アロンソにボールと香川を同一視出来ない状況を作り出しますが、アロンソは守備でも首を振って香川の位置取りを確認。
ボールと香川の間に常に自分が立てるポジショニングをキープしてパスコースを徹底的に寸断し続けます。

ここに揺さぶりをかけたのがカストロでアロンソの背後を斜めに抜けていきました。(ナイスフリーラン!)
ここで中盤の底を1アンカーに任せているチームにありがちなのが、このランニングにアンカーが外に引っ張り出されて
空いたバイタルにクサビを打ち込まれるシーンです。
ダブルボランチなら1枚が付いて行ってもう1枚が絞ってカバーすれば良いですが
1アンカーは文字通り「そこにいる」事が仕事になってくるので常に今、一番ケアしなければならないゾーンとマークを判断し続ける事が重要。
アロンソはここでも迷いなくカストロは後ろのボアテングに受け渡し・・・

自分は引っ張られるどころか逆に前に出てバイタルを明け渡しません。
これでパスコースの無くなったムヒタリアンが逡巡している内にバイエルンのプレスバックが間に合って取り囲んでしまいました。
これが現代サッカーのアンカーに求められる守備で、アロンソは常にボールの次の出所を巡ってギリギリのリスクマネージメントを行っています。まさに「ピッチ上の監督」ですね。
(ちなみにマドリーの試合を観て分かる通りクロースはこのセンスが致命的に欠けている。故にトレードは正解)
おかげでドルトムントはタテパスが出せずに攻撃が停滞。
横パスとバックパスを出しているうちにバイエルンのボール狩りの餌食・・・という悪循環へ。
ならばこっちもボアテングよろしく、タテポン一発で勝負だ!
最前線のオーバメヤンをヨーイドン!させて裏とったるでー!
【ドルトムントのタテポン戦法】

局面は同じく自陣でボールを奪ったドルトムントから。
やはり香川へのタテパスはここでもアロンソが寄せて封じています。
という事で中盤をすっ飛ばしてタテポン!

この形でオーバメヤンを走らせたら2回に1回は勝つ!

残念、そこはノイアー
(コイツの守備範囲も反則だろww)
トゥヘル「八方塞やんけ・・・」
こうなったらドウグラスはいないけどドルも外の攻め筋から仕掛けるぐらいしか手が残されていません。
【ドルトムントの外攻め】

4-3-1-2のドルトムントのワイドはSBが使うしかありません。
という事で、SBのピシチェクが縦勝負。

アッサリ奪われたー!
やっぱりドウグラスコスタみたいはいかん!個の力に差がありすぎる・・・。

逆にSBが上がった裏を使われてバイエルンのカウンター発動!
このカウンターからPKをゲットしたバイエルンが追加点。
バイエルンの攻め筋が次々決まっていくのに対してドルトムントは全てが裏目、裏目。
前半にして勝負の大勢が決まったかに思われましたが、この得点シーンの最中、バイエルンベンチを映したカメラに僕が釘付けとなりました。

なにやらラームがペップに駆け寄り戦術の確認を行っていると思わしき一幕が。
一見、全てが順調に運んでいるバイエルンにしてはラームの表情がひっ迫しています。
これはこの試合、まだ何かある-
僕はそう確信したのでした。
<ラームの不安とは?>
ではラームは何をあんなに必死に訴えていたのでしょうか?
それを探る為、試合をバイエルンの追加点のシーンからほんの少し巻き戻してみましょう。
バイエルンの追加点が決まったのは前半の33分ですが、その3分ほど前の30分前後に実はドルトムントが布陣を修正していたのです。
香川が封じられた上、ボアテングをフリーにするなど攻守に機能しない4-3-1-2から、より普段着に近い4-2-3-1へ。
並びはオーバメヤンを1トップにその下に香川、左にムヒタリアンで右にカストロ、ボランチがヴァイグルとギュンドアンのコンビになりました。
これでピッチでは何が起こったか・・・?
ラームの不安の種を探っていきましょう。
【ドルトムントの修正】

局面は左から右へと攻めるドルのビルドアップから。
SBパパスタソプーロスからSHのカストロを越した一つ奥へタテパスが入ります。

この場面では引いて受ける動きをしたカストロにはボアテングが付いていったので3バックの中央は変わりにアラバが入ってます。
ドルトムントからするとこのSHが引いて食いつかせた裏に香川がナナメに出て行く動きは4-3-1-2では出ない攻め筋であり早速4-2-3-1に修正した利点が出ました。
バイエルンからすると香川の稼動域が広がったせいでアロンソのマークも後手を踏み始める危険な流れ。
しかも↑の場面、斜めに抜ける香川にはアラバがカバーに入って対応するので
オーバメヤンをハビマルが見るまではいいですが3バックだと大外のムヒタリアンが空いてしまいます。
なのでラームがこの穴埋めのカバーを行う事に

香川へのボールはアラバが先に触るもセカンドボールはギュンドアンの元へ。
バイエルンの守備は先ほどの流れでムヒタリアンにラームが付いていますが、ムヒタリアンは大外で張っているタイプではなく自由に中にも入って来るSH。
(役割的には去年までのシティのシルバと同じ)
バイエルンは1アンカーのアロンソがボランチのギュンドアンに対応しているのでその脇は弱点となるスペース。

ムヒタリアンがアロンソの背後で受けて、この試合初の間受け成功。
これを見て香川とカストロが前線でモビリティを発揮

ムヒタリアンから香川へのタテパスは間一髪のところでボアテングが跳ね返しますが注目していただきたいのがこの時のバイエルンの守備陣形です。
先ほどまでのドルの攻め筋と違って「外⇒中⇒中」を使われているので全体がギュッと中に絞らされてますよね?
こういう状況でクリアをしてもですね・・・

ホラ・・・必然的に外でセカンドを拾うのはドルトムントになるでしょ?
(このスペース、本来はラームのカバースペースなんですがここに到るまでのドルの攻撃のせいで中に絞らされた結果、こういう事態に)
アロンソは急いで両手を広げて全体に横へ広がるように指示していますが、これがラームの感じていた不安の正体です。
ちなみにこの後、ドルは左サイドのピシチェクへ展開してさきほどの2点目のシーンへ繋がる訳ですが、
こう見ていくとバイエルンの追加点は順風満帆の流れで生まれたのではなく実は紙一重だったんですね。
要は守備の時にバイエルンの陣形が崩されているので、狙った形でセカンドボールを回収出来ていない・・・と。
(にしても、ピッチ上にいながらたったこのワンプレーでそれを察知したラームの戦術眼なww)
そしてこういう戦術的要因が元の不安やひずみは必ずピッチ上に具現化されるのがサッカー。
バイエルン追加点の僅か2分後に生まれたドルトムントのゴールはもはや必然と言えるでしょう。
【ドルトムントのゴールを検証】

局面は右から左へ攻めるバイエルンのビルドアップから。
ドルが4-2-3-1にした事でもうボアテングがフリーじゃなくなってしまいました。
こういう時の頼みの綱はドウグラスコスタという事でパスは外⇒外

・・・が、中を経由していないのでパパスタがここまで寄せられる&遅らせている間にSHのカストロが戻れる。
これがサイドに2枚置いている4-2-3-1の強みですね

中盤のこの位置で2対1で仕掛けるのはさすがのドウグラスでもリスクしかないので一旦下げる事に

しかし下げられたアラバからのパスコースがありません。
ボアテングには1トップのオーバメヤンが、アロンソへのコースは香川が切ってるし、チアゴにも背後からアルカンタラが寄せています。
こういう時のバイエルンは・・・・そう、「レバンド頼んだぞ!」

・・・おっとそこは通さない。
前線の守備が機能し始めた事でバイエルンのパスコースが限定⇒後ろがインターセプトを狙える好循環。
さあ、ドルのカウンター発動だ!

奪ったベンダーから、またまた随分中に入ってきているムヒタリアンへタテパス。
アロンソは香川をケアしているので背後から中に入ってきているSHのムヒタリアンはケア出来ません。
従ってここでもまたラームがケアする事に。
そしてラームが食いつかされた事で大外はゲッツェが下がってカバーするしかない状況

ゲッツェが下げられた事でバイエルンの前線が薄くなり、フンメルスがフリーに
ここからフンメルスがボールを運んで・・・

フンメルスからの次のパスが勝負の分かれどころでした。
こういう時、フンメルスから香川へのタテパスはデータ的にも最もドルで頻繁に見られるラインです。
アロンソもはやり香川を警戒して前傾姿勢になっていますが、その背後でまたもや自由なポジショニングのムヒタリアンが空いてしまいました。

ドルの4-2-3-1は攻撃時、右のカストロは外に張っていますが左のムヒタリアンは香川の隣まで入ってきて2シャドーになるのでアロンソがカバーしきれなくなってきていました。
バイタルで前を向いたムヒタリアンと3バックでボールサイドに寄せていたバイエルンの守備陣
大外で空いたカストロからダイレクトで中に折り返したところをオーバメヤンが詰めて前半は1点差で折り返す事に。
結果的にラームの不安は的中してしまいました。
システムの噛み合わせで見ると序盤は4-3-1-2のドルに対して3-3-4気味に前から守備が出来ていたバイエルン↓
【序盤の噛み合わせ】

序盤はラームがカストロとヴァイグルの中間地点から局面によって上手くぼかしつつ1人で2人を見れていました。
【ドルが4-2-3-1にした事でラームに不安が生まれる】

しかし30分過ぎにドルが4-2-3-1に変えた事で中途半端に中へ入って来るムヒタリアンが捕まえづらくなります。
CBがこれに付いてしまうと最終ラインが2バックになってしまうので難しく、ラームがムヒタリアンに引っ張られる事で
ボールの出所のヴァイグルがフリーになり、時間が作れるようになった事でSBピシチェクが上がってこれるようになりました。
これがドルトムントのゴールが生まれる戦術的な布石になったのです。
<ティキタカとの決別?>
ハーフタイム、今度はペップが修正に動きます。
後ろが3枚じゃ足りていないのとアロンソの両脇が狙われた事で4-2-3-1へ。
【ペップの修正】

ラームを右SBに入れてボランチはチアゴとアロンソの2ボランチに。
ドルトムントとすればいい時間帯に1点取れた事で後半は反撃の狼煙を上げたかったはずですが、後半開始早々にプランは脆くも崩れ去るのでした。
【バイエルンの3点目】

局面は後半、キックオフのボールをノイアーまで下げたバイエルン。
これにスタートから勢い良く飛び出たオーバメヤンが追いますが、これは完全にバイエルンの罠でした。
1トップのオーバメヤンがノイアーに食いついたらCBのボアテングが空いてしまいます。

そしてフリーのボアテングが持った瞬間の別アングルがコチラ↑
先制点の流れがまだ脳裏に焼き付いているフンメルスは瞬間、ミュラーに意識がいっていました。
この隙を今度はレバンドフスキが突きます。

ボアテングからロングボールが蹴られると、フンメルスはミュラーに気をとられた分、隣のベンダーのカバーポジションを取る深みが足りずCB間に生まれたギャップをレバンドフスキに突かれてキックオフの流れから失点。
いい流れで前半を終えていただけにこの3点目は痛かった・・・。
それにしてもペップのバイエルンはCBのタテポンで2得点って・・・ティキタカは一体どうしたのか?
象徴的なのはここまでただのオトリに過ぎないゲッツェや脇役のチアゴ、アロンソだって守備面でしか目立っていません。
エンリケのバルサもイニエスタの存在感はますます薄くなるし、これが世界の流れなのか・・??

<これがペップの二刀流!>
後半開始早々に1-3となった事でドルトムントは最低でもあと2点が必要になりました。
ここでいつもの4-3-3解禁です。

前半から両サイドに個で仕掛けられる駒が無かったのでロイスとヤヌザイの投入で両ワイドからも圧力をかけられる布陣に。
アロンソに消されていた香川と解き放たれたムヒタリアンではどちらをピッチに残すかは明白だったので日本人としては残念ですが致し方ないでしょう。
しかしドルが4-3-3にした事でアロンソのマークは緩くなるはず。
果たしてバイエルンはこの布陣変更にどう出るか。

局面は左から右へ攻めるバイエルンのビルドアップにドルの前プレ発動。
ノイアーにオーバメヤンが寄せて本来空くはずのアロンソにはロイスとムヒタリアンが寄せて「前プレ」によって守備のウィークをカバーしつつ、ここで奪ってショートカウンターがトゥヘルの狙い。
しかしドルが前プレに出た事でバイエルンの攻め筋がここで一変します。

相手が取りに来るなら剥がすだけと言わんばかりに2人に寄せられたアロンソはその間を通して続くヴァイグルの寄せもワンタッチパスで回避

ヴァイグルの二度追いも軽くいなしてワンツーでミュラーへ
ドルはアンカーが剥がされているので・・・

ミュラーに対応するのはもう最終ラインしか残ってません。
SBピシチェクの寄せも鼻先でパスを裏に通されると・・・

もう2バックしか残ってない!
バイエルンはGKからのビルドアップで前プレを1枚づつ丁寧に剥がされて最後はCB2枚と2対2の状況を作り出す事に成功。
これを逃すはずもなくゲッツェから芸術的なクロスが出てレバンドが4点目。
相手が中盤に網を張って待ち構えているなら一発で裏を取るし、
取りに来てくれるならいくらでも剥がしますよ?というペップの二刀流・・・恐るべし。
後半は前半脇役だったアロンソ、ゲッツェ、チアゴが主役になり、ドルのプレスをいなす事、いなす事。
象徴的なのは5点目でバイタル進入からチアゴのアシストで最後はゲッツェが決めました。

<『ペップのバイエルン』は『ペップのバルサ』を超えたのか->
ティキタカの一点突破を芸術の域まで高め、結果と内容を両立させながら頂点を極めたペップのバルサ。
そこからのシーズンは一転してポゼッション迎撃からの一発で裏を取るカウンターが盛り返し、
ここ2シーズンはその年「最高のカウンター」を持ったRマドリーとエンリケのバルサがビッグイヤーを獲っています。
従来のペップのサッカーはこれに見事にハマって大量失点というパターンが続いていました。
相手はペップシフトとして中盤とDFラインを狭くした2ラインでコンパクトな網を張って中央密集、
そこにあえてタテパスを打ち込んで崩そうとするもボールを狩られて薄くなった背後にカウンター⇒失点
【従来の負けパターン】

とにかく「間受け命!」って感じのサッカーで、これに対する相手の常套句は「CB放置」「中央密集」「DFはハイライン」
まあ、相手からすれば待っていればそこに進入してきてくれるので、ここで狩るか
それともバルサが細かいワンツーとメッシ無双で突破するかの切り合いを演じてきたわけですね。
一方、今季のバイエルンは違います。
「CB放置」と「DFはハイライン」を逆手にとって、じゃあその裏を一発でとったらええやん、というカードを持っています。
【今季のバイエルン】

これで「CB放置」が出来なくなったチームが前プレを仕掛ければ、ティキタカの香り漂うパスワークで丁寧に剥がして仕留めようという二刀流ですね。
前者のサッカーだとボアテング、アラバ、レバンドフスキ、ミュラー、ドウグラスらが躍動し、
後者のサッカーだとゲッツェ、アロンソ、チアゴ、ハビマルらが躍動するので相手の出方に応じて主役と脇役を入れ替えています。
(ラームはどちらのサッカーでも輝くエクストラカード)
以前よりこのブログでは「いずれCBが司令塔になる時代がくる」と言ってきましたが
この試合ではボアテングが2アシストでドルトムントの得点も起点はフリーになったフンメルスのタテパスからでした。
ペップですら「自分達のサッカー」一点突破ではなく相手の出方によるカードを増やす時代。
ますます攻守は一体化し、前線の守備力やGKとCBの展開力が試合の勝敗を左右するようになってきました。
そんな時代にCBにテリー、ケーヒル、スモーリング、メルテザッカー・・・etcの「跳ね返し屋」を起用しているリーグがCLで苦戦を強いられているのはある意味当然の帰結と言えるでしょう。
昨季、致命的だった「ロッベリー不在時の限界」はこの試合を見る限り完全に克服されています。
果たしてここにロッベリーが戻ってきた時、ペップは一体どんなサッカーを見せてくれるのか。
あの『ペップのバルサ』を完全に超えたサッカーが今季、観られる予感がする-
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