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ユーベの3センターを崩壊させたインテルの王様 ~インテル×ユベントス~

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<ユーベの3センターを崩壊させたインテルの王様 ~インテル×ユベントス~

今週は久方ぶりのセリエAをマッチレビューします。
カードはイタリアデルビー。

Fデブールを招聘したインテルがなかなか面白いサッカーをしていたのと
単勝オッズ1.0倍の絶対王者ユベントスの躓きの原因を検証していきたいと思います。

両チームのスタメンはコチラ↓
インテルユーベ0922

まずはインテル。
昨年まで「とりあえず筋肉集めてみました」みたいだった中盤に待望の司令塔バネガが加入。
これでチームにDFと前線をつなぐ1本の筋が通りました。
更にEUROのポルトガル代表で評価を高めていたマリオをスポルティングから獲得と何だか今季の補強には明確な「意図」を感じるぞ!

それもそのはずベンチにはアヤックス復活で評価を高めた「今が旬」やり手のFデブールが座っています。


迎え撃つは「セリエAのナリタブライン、ディープインパクト」
今季も既に連覇は確定とも思える凶悪な補強を敢行。

手薄だった「黄金の3バックの控え」にはセリエAでの実績も充分のベナティアを、
そしてスクデット争いの対抗馬ナポリから絶対的エースのイグアンとローマの司令塔ピアニッチを強奪。
ライバル達の戦力を削り自軍の戦力を上げるバイエルンさながらの補強で国内での地盤を固めてきました。

今季はこれまでチームの看板だった3センターからポグバが抜けマルキージオが離脱中。
ポグバの位置には急ごしらえでアサモアを当てがってますが問題なのはアンカーポジション。
これまでエルナネス、レミアあたりが起用されてきましたがいずれもアッレグリを満足させるには到らず。

そこでアッレグリはこのデルビーにレジスタとしてピアニッチを起用。
本職はもう1列前で輝くこの天才司令塔に中盤の指揮を任せます。



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<ピアニッチを経由しないユーベのボール>

個人的にはトップ下で自由に動けるピアニッチが見たかったのですが
過去ピルロがレジスタとして開花した例もあるので蓋を開けてみない事にはどうなるか分からないこの抜擢。

しかし実際の試合ではピアニッチを経由してボールが動く、動く・・・という事にはなりませんでした(笑)
序盤からユベントスのビルドアップ、崩し、いずれの局面でもピアニッチ自身はボールを受けようと顔を出しているものの、
まだチーム内での信頼感がローマほど絶対的なものでないのかとにかくパスが来ない。


ピア使われず1-1

局面は右から左へ攻めるユーベのビルドアップから

中盤からピアニッチがボールを受けようと降りてくるものの・・・・



ピア使われず1-2

ピルロがいた時代からピルロがマンマークで抑えられた時の「第二の司令塔」として散々鍛えられてきたボヌッチ。
ここは中盤を経由しない対角のサイドチェンジでWBを走らせるパスを選択。

なんか後ろはお呼びじゃないみたいなんで前線の崩しに絡もう!


ピア使われず2-1

前線でボールを受けたディバラをサポートするピアニッチ。
ローマではここからピアニッチに預けてサイドチェンジなり中へのドリブル進入なりあとは王様の閃きを待つばかりだったのですが・・・



ピア使われず2-2

ディバラは自力で局面を打開して逆サイドへサイドチェンジ



ピア使われず2-3

WBの利点を活かして左右に揺さぶったれーって事でここでもピアニッチのお呼びでない感・・・。

このようにユーベは後ろの司令塔としてボヌッチが、前の司令塔(&受け手)として前線~中盤を幅広く動き回るディバラが既に確固たる地位をチームで築いています。
これに中盤の王様ピアニッチを加えた三党体制へ移行するにはもう少し時間が必要なのか、
それともそもそも「船頭多くして」何とやら・・・なのか。

ピアニッチの両脇もどちらかと言うと使う選手ではなく使われる側であるアサモアとピッチをドタバタ駆け回る安定のケディラ。
従ってこの日のユーベの攻撃は3センターを経由したものではなく本線は外⇒外のサイド攻撃になっていました。
そこには3バックと4バックのミスマッチを戦術的に突くというアッレグリの狙いもあります。


【外⇒外で崩すユーベの攻撃】
ユーベ外⇒外0922-1

ユーベのビルドアップから崩しの狙いは明確。
まず3バックを使ってインテルのファーストラインである3トップを剥がします。
具体的にはサイドに開いたCBにインテルのWGを食いつかせるところから始めます。

ここではイカルディとエデルがポジションを入れ替わっていますが要は左WGを右CBに食いつかせてWBに展開


ユーベ外⇒外0922-2

4-3-3(4-2-1-3)のインテルは中盤に明確なサイドプレイヤーがいないのでユーベのWBにアプローチするのは基本的にはSBが多くなります。

↑ここでもリヒトシュタイナーに逃がしたボールにはSBのサントンが対応


ユーベ外⇒外0922-3

・・で、サントンを食いつかせた裏にFWか3センターの両脇を流すという攻撃でシンプルにチャンスを作っていたユーベ


試合自体は終始インテルペースだったにも関わらずシステムの利点を活かしたWBからWBへのクロスで
少ないチャンスをものにするあたりさすがのアッレグリですよ。

【ユーベの先制点】
ユーベ先制0922

大外のWBがダイアゴナルにゴール前に入って来る動きは守る側からすると捕まえずらい事この上なし

逆SBのサントンが上手く見ながら絞りきれませんでしたねー。
これならNAGATOMO使っとけとも一瞬思ったけど、よく考えたら長友もこの守備苦手だからきっと防げてないわ(笑)


で、話をユーベに戻すと先制点も奪っているように外⇒外の攻め筋は確かに戦術的には正しいかもなんですが、これだとピアニッチいらなくないですか?
しかも攻撃面でメリットが薄いなら懸案事項でもあるピアニッチをアンカーに起用した事による守備力の方はどうなのよ、と。



<強度が落ちた鉄壁の3センター>

ここ数年のユーベの強さ、国内は勿論CLでもバイエルンやバルサといったメガクラブと戦力と資金力で劣りながら互角に渡り合ってこれたのは3センターのクオリティと完成度の高さにあります。

中盤3枚の息の合ったチャレンジ&カバーと横スライドは近年の欧州サッカーでも頭一つ抜けた完成度で
対戦チームはとにかく中盤から前へタテパスが入れられない、という現象が頻繁に起こっていました。

しかしピルロが抜け、ポグバが抜け、マルキージオが離脱している今の3センターは明らかにクオリティが低下。
しかも敵将Fデブールはこのユーベの心臓である3センターに対し明確な崩し手を用意していたのです。


【インテルが仕掛けた3センター崩し】
バネガ3センター脇0922-1

まずインテルが狙うのは3センターの内最もボールに食いつきグセのあるケディラ。
バックパスでエサを撒きます。


バネガ3センター脇0922-2

するとこのように必ずケディラが食いついてくるのでバネガが背後を通ってサイドのスペースへ
奥の高い位置でSBがユーベのWBをピン止めしている上、
アンカーのピアニッチからすると出ていきずらい死角のスペースが生まれています。インテルはフリーのバネガへパス


バネガ3センター脇0922-3

バネガがフリーで受けるとさすがにピアニッチが対応せざるを得ず、
アンカーがサイドに引きずり出されてしまってバイタルが空くという寸法です。
インテルからすると狙っていた攻め筋なのでスムーズにエデルが流れてきていますね。


この攻め筋がFデブールによって事前に計画され準備してきたものだったという確証は
ボールに絡む選手が変わっても全く同じ手筋が繰り返された事からも間違いありません。


3センター脇0922-1

これも同じようにバックパスでケディラを釣り出して・・・



3センター脇0922-2

今度はボランチのマリオがケディラの背後を通ってサイドの死角へ




3センター脇0922-3

ピアニッチがつり出された背後のバイタルにエデルが入り・・・




3センター脇0922-4

ほら、エデルがバイタルでフリーで前を向けました。



これはあくまでインテルによって3センターが「崩された」形ですが、
ユーベは3センターの顔ぶれが変わった事で明らかに強度自体も落ちていました。
従って崩されるかたりばかりでなく「崩れている」状態というのも試合でたびたび目にするようになります。

例えばこの場面↓

【強度が落ちたユーベの3センター】
3センター距離×0922-1-1

局面は右から左へインテルがユーベ陣内でボールを回している場面ですが明らかに3センターの距離感が遠すぎます
そのせいでボランチのメデルの前にはボールを受ける広大なスペースが



3センター距離×0922-1-2

本来、ボールサイドのケディラが対応しているのであれば逆サイドのアサモアはもっと絞ってアンカー(ピアニッチ)との距離を縮めないとカバーが出来ません。
仮にここまで絞っていればメデルにパスが出てもアンカーではなくアサモアがこのパスには対応出来たはず。




3センター距離×0922-2

しかし現実にはメデルにスペースを使われてボールを運ばれるとユーベは後退する守備を強いられてしまいます。
そしてリヒトシュタイナーが自分のポジションに帰る矢印を利用して絶妙のタイミングでバネガが逆の矢印を入れてスッと引いてきます。
(これでフリーになれる)



3センター距離×0922-3

するとバネガからイカルディへど真ん中を割られるパスを通されてしまいます。


コンテが下地を作りアッレグリが熟成させたユーベの3センター。
その生命線はタテパスを入れさせない事、とくに中央は絶対に割らせない強度に自信があったはず。

しかし今の顔ぶれだとアサモアはしょせんただの便利屋に過ぎず、ピアニッチにアンカーの守備は無理でしょう。
ケディラも残りの2枚が「あいつ(ケディラ)には好きに行かせて俺らでバランスは取るよ」という大人のMFが相棒なら活きるでしょうが、今のメンバーでは1人浮いたタイミングでボールに突っ込む野犬のような状態。


この場面なんかSBからCFに直接タテパス入れられてますからね↓

真ん中割られる0922-1

SBのサントンからCFのイカルディへ・・・



真ん中割られる0922-2
アカンでしょコレ


少なくとも去年までのユーベだったら絶対に見られないシーンでした。

開幕戦でアンカーに起用したレミナはそこそこ気の利く守備が出来ていたので
ピアニッチのアンカーには見切りをつけて本来のポジションに戻すべきでしょうね。


結局試合はこれまでのユーベであれば試合内要など関係なく1点先行した時点で試合を閉じて渋~く勝ち点3を強奪していたパターンが
3センターの安定感がないのでアッサリ逆転されてむしろインテルの準備の良さFデブールのとポテンシャルの高さだけが印象に残る試合となりました。





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<輝けなかったピアニッチ 王として君臨したバネガ>

この試合の明暗は何と言っても輝けなかったピアニッチと中盤の王様として君臨したバネガの両者でしょう。
特にバネガはビジャレアル時代のリケルメを彷彿とさせるオールドファッションなトップ下として完全に試合のテンポをコントロールしていました。

やはりセリエAにはまだこういうトップ下が輝ける下地がありますよ。

近年確かにシルバや香川といったよりモダンなトップ下の台頭が著しいですが、彼らはゴール前でラストパスやシュートという
よりゴールに直結した仕事をするタイプなのに比べてバネガはその一つ前の過程で何度も顔を出しては試合の流れをコントロールする仕事に輝きを見出すタイプ。

完全に古き良き時代のトップ下なのです。

そしてセリエAでは古くからシステマチックな戦術が下位チームに到るまでカチッと組み上げられているからこそ
その組織を一瞬でズタズタにする天才の閃きこそが一種のカタルシスとしてファンタジスタの系譜も受け継がれてきたのでしょう。


例えばそれは僕のような一部変態からするとバネガの何気ないプレーでご飯何杯でもいけちゃいますよ!っていう事なんですけど↓
【バネガのご飯3杯いけるプレー】
バネガ0922-1

局面は自陣の深い位置で三方向から囲まれるバネガ
現代サッカーのセオリーで言えばセーフティーファーストで蹴り出すかワンタッチで近くに味方にはたいてプレスの網を回避するかの二択になりますがバネガは・・・



バネガ0922-2
足裏の切り返し一発でターン!

この自信!この不敵!
「奪われた時のリスク」から逆算するのが現代のセオリー、「奪われない事」を前提にベストな選択肢を探るのが俺のジャスティス!YO!YO!




バネガ0922-3

そして自陣DFラインの前をまるで散歩でもするかのように優雅に闊歩しながらCBとワンツー




バネガ0922-4

リヒトシュタイナーが詰めて来れば・・・




バネガ0922-5
股抜きウィィィ・・・・yeeeeea!!


ユーベの組織的なプレスを優雅にかわすこの技巧こそ額に入れて家に飾りたいカルチョのファンタジーアですよ。

確かに勝利やゴールに直結するプレーではないし、効率が良いかと言われたらそれはまた別の話。
昔は後ろから組み立てて⇒中盤で作って⇒アタッキングサードで崩して⇒ゴールという段階を経てましたが
今はもうボール奪う⇒ゴールみたいなサッカーになってきてますからねー。

これは時代の必然でもあって将棋界でも昔は序盤にしっかり自陣の陣形を整えてそこから中盤⇒終盤の勝負どころへ…という流れだったのが
今はもう序盤と中盤がどんどん削られて一気に勝負どころへ持ち込むような戦術が主流派になってきているらしいです。


でもこの変態ブログではそういう時代の最先端、主流を追いつつもこういう「古き良きもの」もしっかり拾い上げていきたいんですよ!

そんな訳で今季も誰も見て無くても僕はセリエAを追い続けるつもりですよ。

アッレグリの事ですからきっとすぐに3センターは修正されるでしょうし、
Fデブールみたいな理論派を加えた知将達のやり合いはやっぱり目が離せませんからね。







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「ショットガン」対「0トップ」 ~ユベントス×ASローマ~

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<「ショットガン」対「0トップ」 ~ユベントス×ASローマ~

「セリエAはお忘れですか?」

一部のセリエクラスタからそんな声が聞こえたような気がしたので改めて確認してみたところ
何と最後にセリエAを取り上げてから既に丸2ケ月半が経過しているではないですか・・・!

ただ、今思い出したようにセリエAを取り上げると今度は逆に
「結局お前も本田でイタリアを思い出したクチか…」と思われるのが癪なので
敢えて今ユーベ×ローマの試合を取り上げてみようと思います(爆)

…否、むしろこの2ケ月半でセリエAがどのような動きを見せていたのかを確認する上でも
この首位決戦は外せないビッグマッチと言えるでしょう。


実はこの試合、戦術的観点で見ても
ピルロをQB(クォーターバック)化させたユベントスの「ショットガンフォーメーション」
CFに置いたトッティを自由に動かす事で「0トップ」の状態を作り上げるローマとの非常に興味深い一戦でもあります。


【ユベントスのショットガンフォーメーション】
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↑の図のようにピルロをアメフトで言うところのQB化させ、
そこからタッチダウンパスを狙うのがユーベのショットガンフォーメーション。


【トッティの0トップ】
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↑一方のローマはCFに置いたトッティを中盤に降ろして起点とし、
パスの受け手が彼を追い越すようにランニングを仕掛ける戦術。


どちらかと言うと選手全員が均等にタスクをこなす全員サッカーが主流になってきた昨今、
チーム戦術においてこれだけハッキリとしたキーマンがいて、
そこから逆算して作られているサッカーというのは非常に希なケースとなってきました。

ピルロとトッティ。

彼らは近代サッカーに「90年代」の香りをほのかに運ぶ貴重な遺産と言ってもいいかもしれません。
よりスピーディーになっていくゲームにおいて、1人独特のリズムでタメを作ったりテンポを変えたりする存在は
うまく活用すればまだまだ大きな武器となり得る事でしょう。

実際、ビジャレアルのカニや横浜マリノスの中村俊輔など
今このようなタイプのプレイヤーに再び脚光が当たり始めているのは面白い現象ですよね。


<両雄、相まみえる>

さて、ここで話をこの2ケ月半におけるセリエAの動向に移しますと
開幕10連勝で首位を快走していたローマが失速。

原因は戦術のキーマンでもあるトッティの離脱で、以降整備された守備は相変わらず機能しているものの
点が取れずに勝ちきれないゲームが増えてきました。

結果、未だに無敗ながらトッティ不在の7試合で【5引き分け】と勝ち点1ゲームが響いて首位から陥落しています。

そのローマに変わって首位に立ったのはやはり王者ユベントスでした。

彼らの強みは既にコンテ体制3年目というチームの熟成度であり、
もはやピルロがいなくても大きくチーム力を落とさない安定感があります。

ただ幸いにもこの試合はトッティも復帰して双方役者が揃った中での首位決戦となりました。


【ユベントス×ローマ】
ROMAJYUBE.jpg

さて、予想通り両チームともほぼベストメンバーが顔を揃えたオーダー。
故に最初のポイントとして見たいのはメンバーではなくフォーメーションの噛み合わせの方になります。

中でも試合展開に大きな影響を与えたのが「多分、ローマの前プレは無理っぽいぞ」と思わせる4-3-3と3-5-2の相性問題ですね。

つまりユベントスのビルドアップ時を想定した場合、
この3バックにローマの3トップが前プレを仕掛けるとこういう事が起きます。↓

【"前プレ出来ないローマ"のロジック】
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4-3-3と3-5-2の中盤センターは3対3の均衡が保たれていますが
ユーベの3バックにローマの3トップが前プレをかけてしまうと両脇でユーベのWBが空いてしまうんですね。

ここを抑えようと思ったらローマはSBをこの位置まで上げなければならないんですが
そうすると今度は最後尾でユーベの強力2トップ(ジョレンテ&テベスは今セリエA最強)に対して
2対2で守らなければならない状況が発生してしまうので、つまりこれは前プレ不可って結論に落ち着く訳ですな。

【ローマの前プレとユーベのビルドアップ】
ROMAMAEPURE1.jpg

↑実際の試合から、これユーベボールのキックオフから一旦DFラインまで下げられたボールに
ローマの3トップが思いっクソ前プレをかけていく場面なんですが・・・


ROMAMAEPURE2.jpg

3バックから両脇のWBに展開されるだけでアッサリここが空いちゃうんですよ。

なのでキックオフのこの攻防を見ただけでもその後のローマの修正も自然と読めますよね。


【全軍!一時後退せよ!】
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「全軍!一時後退!」って、まあ要するに自陣に引いてリトリートするしかないでしょう。

実は今季のローマの守備自体、一度相手に前を向いて運ばれかけたら
思い切ってトッティまで自陣に下げたリトリートに切り替える趣向が強かったので
これ自体リュディガルシアからしても大きな誤算という訳では無かったはず。

↑の構図で面白いのが対ユーベ戦ではどこのチームでも重要な役割となるピルロ番にトッティが付いている事ですよね。


【リトリートに切り替えたローマの守備】
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ボールがこれだけ離れた逆サイドにある場面でもトッティはピルロにピッタリ張り付いてますね。(ピルロ番)

奇しくも両チームにおける戦術のキーマンであり、
この試合の勝敗をに握るであろう2人が直接マッチアップする構図となりました。


<トッティを消すピルロの巧みな守備>
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さて、トッティがピルロをマークするという事は攻守が入れ替われば当然、
今度はピルロがトッティを見る関係になる訳ですね。

こうなるといよいよ試合は両者のマッチアップが大きな焦点となってくるのですが
ユベントスはピルロの守備を上手く利用してローマのキーマンを試合から消していきます。


【バイタルエリアの番人】
pirukanshi0116-1.jpg

局面は右から左へと攻めるローマのデロッシがボールを持ってバイタルエリアへ降りてくるトッティへのクサビを狙う場面です。

これに対してユーベは赤丸で囲った3枚の3センターがバイタルへパスを通させないよう中を閉める訳ですが、
ここで肝となってくるのが守備時にも発揮されるピルロのルックアップ力なんですね。

↑の場面を見ても分かる通りボールが自分の前にある局面でも小まめに首を振って背後で間受けを狙うトッティのポジショニングを確認。

トッティもユーベの中盤が前を向いた状態(つまりトッティには背中を向けている)なら
巧みに隙間に入ってタテパスを受ける事が出来ますが、
このように背中にまで気を配られてしまうとパスコース自体が消されてしまいます。


pirukanshi0116-2.jpg

するとローマはアンカー(デロッシ)からトッティへ直接打ち込むクサビは無理と判断。

一度サイドにボールを振ってユーベの中盤を引っ張り出す狙いに切り替えます。
(ここではポグバを引っ張り出す狙い)


pirukanshi0116-3.jpg

ポグバが引っ張られた事で、それまでポグバが守っていたエリアに今度はピルロがスライド。

次にピルロがそれまで守っていたエリアに本来ならビダルがスライドするのが基本なのですが
ここではややビダルが離れたポジショニングを取っていた為、即座にスライドするのが難しい状況になっていました。

こういう時、ユーベは2トップの内のどちらか1枚を中盤まで下げてその穴を埋めるメカニズムが浸透しているので・・・


pirukanshi0116-4.jpg

このようにピルロが寄せてそのカバーをプレスバックしたジョレンテが担う連動がほぼ完璧に行われています。
これだとローマはいつまで経ってもトッティへのタテパスが打ち込めず攻め手が見つからない状態。

セリエAで無敵を誇るユーベの何が強いのかって、
このバイタルを使わせない中への絞りがチームとして完璧に機能している点なんですね。

現代サッカーが益々「バイタルエリアを巡る攻防」に特化していく流れの中で
この肝となるエリアを相手に使わせないチームが勝ち点を稼げるというのは至極ロジカルな結果だと思うのです。

リーガやプレミアの派手な打ち合いもいいんですが、
普段あまりセリエAを見ないという方も是非一度ユーベの3センターが見せる横へのスライド美だけでも注目していただけると充分お金が取れるエンターテイメントだと気付いていただけるかと。

特にバイタルエリアの番人と化しているピルロの首振りと
タテパスをインターセプトする際の巧みな読みはそれだけでご飯3杯ものです(笑)


<テベスとかいう名の化物>
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トッティが消された事で攻め手を失ったローマですが、
ならユーベも同じようにピルロを徹底マークで消してしまえば五分の展開に持ち込めるだろう…というとそうもいかないのが王者ユベントスたる所以。

では実際の試合からピルロをケアするローマとそれをものともしないユベントスとの攻防を検証していきましょう。


【ピルロが使えなくても・・・】
kusabi0116-1.jpg

↑は左から右へと攻めるユベントスが3バックからビルドアップを図る場面。

ローマはトッティがピルロ番として張り付いていますが
コンテ体制3年目となるユベントスはショットガンの銃口がピルロだけの単発ではなく複数に増えているところにその妙があります。
(3バックの展開力はこの3年でだいぶ鍛えられました)

具体的に言えば3バックからピルロを経由せずに直接トップへタテのクサビを打ち込めるようになっているんですね。
なのでここでもユベントスはマークされているピルロを飛ばしてタテパスを入れます。


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そしてこのクサビを可能にしているのが二つ目のポイントとなるテベスの加入です。

そのテベスですが、彼は身体と身体をぶつけてマイボールの空間を奪い合うアルゼンチンサッカーの象徴のようなプレイヤーと言っていいでしょう。

↑の場面での身体の使い方も「いかにも南米だな~」という巧さで
DFを背負いながら尻を使って幅を確保しボールに触らせません。

彼の加入によってユベントスはトップへのボールの納まりが格段に向上し、
ピルロに頼らないパスルートもより強固なものへとなりました。


kusabi0116-3.jpg

テベスはファーストタッチで自分の足元にボールをコントロールすると
今度は腕を使ってDFをブロックしながらパスの体勢へ。


kusabi0116-4.jpg

これでユベントスはDFのクサビから一度中に起点を作って外へという展開ルートをピルロ抜きで確保出来ています。

つまりユーベは例えピルロが抑えられたとしても次のプランBがあるのに対し、
ローマにはトッティを抑えられた際の有効な攻め筋がまだ固まっていない段階なのです。

ここがコンテ体制3年目の熟成されたチームと
リュディガルシアが今まさに作り上げている最中のチームとの差と言えるのではないでしょうか。

それは守備でも同様で前述したユベントスの3センターによる「バイタル封鎖」
ローマのそれとを比較しても明らかです。


【クサビに対するローマ3センターの対応】
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局面は左から右へと攻めるユーベの攻撃をローマが4枚のDFライン+3センターでいかに抑えるかという攻防から。

ローマのバイタルエリアでは先程のトッティ同様、間受けを狙うテベスがいますが
さすがのピルロと言えどもここから中を通すのは不可能なのでローマもそうしたように一度ボールをサイドへ展開。


roma3cen-2.jpg

この隙にテベスが動き直して3センターの脇からタテパスをもらおうとしていますが
ここでのローマの対応はユベントスの3センターと比較した場合、
まず誰も首を振って背中で起きているテベスの動きを確認していない事が決定的な差です。

そしてシステム面で見ても基準点がトッティの1トップだったローマに対し
ジョレンテとテベスの2トップを敷くユーベは起点が2つあってそもそも抑えづらいという難点もありますね。


roma3cen-3.jpg

ポグバからタテパスを受けられる!と確信したテベスのこの「くれくれ!」の待ち方www

先程と同じようにDF(ベナティア)を背負いながら背中と尻で壁を作っているので
ここでタテパスが入ると後ろのDFはまたボールに触れない…という焦りが生まれているに違いありません。


roma3cen-4.jpg

サッカーにおけるディフェンスで最も重要なのは「焦らない事」です。
DFがオフェンス側にやられる際の一番多いパターンが焦れて一発で飛び込んだ結果、まんまと裏をとられるケースですね。

↑の場面ではこれまでのテベスのプレーから「一度パスが足元に入ってしまったらコイツからボールを奪うのはノーチャンスだ」という刷り込みがDFに植えつけられていた為、
守る側からするとテベスからボールを奪うには【パスを受ける前にインターセプトを狙うしか可能性は無い】という心理状態に追い込まれていたと推測出来ます。

よってベナティアはこのタテパスに対し前に出てインターセプトを狙いますが
テベスはこれを「待ってました!」とばかりに半身でベナティアをブロックしながら
ボールが自分の横を抜ける直前にDFと入れ替わる狡猾さ


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インターセプトを狙って前に重心が出ていたDFはもう修正が効きません。
(前につんのめって転倒)

結果、フリーでボールを受けたテベスがゴールへ向けて突進…という一番得意なパターンに持ち込んでいます。

このストリートサッカー仕込み特有の背負ったDFとの駆け引きと身体の使い方、
南米サッカーの真髄ですよね!


…とまあ、確かにテベスは異常なFWなんですが
だったら尚の事、ローマはこのタテパスを簡単に入れさせてはダメなのです。

そもそものクサビに対する中央の閉め方がユーベの3センターと比較するとまだまだなんですよね。


では最後にこの試合で見せた彼の真骨頂とも言えるプレーを一つ取り上げてみたいと思います。

【テベス無双】
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局面は左から右へと攻めるユベントスのDFから、ここでもピルロを経由せず直接トップへ打ち込むクサビの流れ。

(ローマはこれを入れさせたらあかんねん・・・)


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クサビを受けるテベスは背後から寄せるDFの気配を感じているのでここでもターン一発で入れ替わる上手さ爆発。

(もうこのテベスとかいう化物語にクサビ入れられたらほぼ終わりやんwww)


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…で、すぐに横のビダルにボールを預けてパス&ゴーで今度は裏抜け


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この裏抜けにはDFが慌てて戻ってきてカバーに入ると
今度はその動きを逆手にとってテベスは戻りながらボールを受ける動き直し。


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戻りながら受けるテベスにはデロッシがカバーに入るも
背負った状態のテベスがボールを奪われる事はほとんど無いと知っているビダルはリターンを信じたパス&ゴーでもう動き出している。


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狙い通りテベスからの落としをもらったビダルからジョレンテへ


tebekusabi0116-7.jpg

するとビダルからジョレンテへのタテパスが出た瞬間、
テベスが三度目の動き直しで今度はジョレンテからの落としをもらうフォローを入れている。


tebekusabi0116-8jpg.jpg

残念ながらジョレンテの落としが少しズレてしまったので
当初落とし⇒そのままシュートを狙っていたテベスだったが左のアサモアへのパスに切り替えた。


さて、改めてこの一連のプレーにおけるテベスの動きの経路とボールへの関わり方を図にするとこうなります↓

【テベス無双し過ぎワロタwww】
tebezu0116-2.jpg

よくDFの視野から外れる為の弧を描くような動き直しをプルアウェイなんて用語で呼びますが
テベスの一連のプレーは何度も弧を描くように動き直しを入れつつ
その道中で2度3度プレーに連続的に関わって動く⇒受ける⇒はたく⇒動き直す⇒受ける⇒を繰り返すモビリティーに溢れています。


試合では前半14分にデロッシがこの化物に切り返し一発で振り切られると
フリーでフォローに入ったビダルに繋がれてユーベが先制。
(このテベス×ビダルのラインは最近益々怖さが出てきたな・・・)

その後は落ち着きを持って自陣に引いてローマを待ち受けるユーベと
そもそもローマもシステムの噛み合わせ上リトリート守備を選択(前述)しているので試合は実にカルチョらしい膠着状態へ。

こういう展開で試合を決めるのは・・・そう、往々にしてセットプレーですよね。

という訳でここでも王者が一枚上手のところを見せつけて
後半開始直後の時間帯にセットプレーからユーベが追加点を決めてしまいます。

最後は二点差をつけられた上に有効な攻め手も見い出せないローマが焦りから退場者二人を出す自滅で
終わってみればユーベが3-0の快勝。

当たり前っちゃ当たり前ですが、まだまだチームの完成度が違うなと思わせる試合内容でした。


<王者ユベントスを倒すには?>
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では最後に【じゃあこのユベントスを倒す有効策は何か?】を考えて締めにしましょう。

今回の試合ではそもそものチームの完成度に違いがあった事が勝敗の主要因ではありますが
ローマもローマでそんなユベントス相手に少し正攻法で崩す事にこだわり過ぎた感は否めません。

まあ、そういうサッカーを志向してきたのが今季リュディガルシアが作っているローマの良さでもあり開幕10連勝を支えた強さでもあるんですが、
ハッキリ言ってあれだけバイタルエリアの閉鎖が上手いチーム相手に「パスで崩し切る」のはかなり確率の低い攻めになります。

「じゃあどうすりゃいいの?」っていう話になるんですが、
この試合でもローマで一番効いていた攻め手がジェルビーニョのゴリゴリ行く単独突破だったように
ユーベのロジカルなディフェンスってのは案外ドリブルでゴリゴリ来られるような攻撃に脆さを見せる事があるんですよね。

まあ、これはバイタルの番人であるピルロがパスのインターセプトには滅法強い反面、
ドリブルで来られると身体で止め切れないという弱さを持っているからでもあるんですが…。(^^;


CLの対マドリー戦を振り返ってみても
コンテは相手のロナウド、ディマリアという両サイドの強力アタッカーに対し
セリエAではほとんど見られない4バックを採用してサイドに厚みを持たせ、
必ずマドリーの両ウイングがボールを持った時は2対1の数的優位で対応するというロジカルな解決策を提示してみせました。

ところが肝心の試合では2対1で対応してもロナウドとディマリアの突破を止める事が出来ずに敗れたという例もあります。

対応した選手達からすれば「なんやコイツら・・・こんなエゲつないドリブラーはセリエAにはおらん(涙目)」って感じで、
まあ個の力で打開出来るアタッカーってのはいつの時代も一番高額で売買される故、
今のセリエAにはそういう【理(ロジック)を個の力で覆す怪物】みたいなのはほとんどいないのが現実です。

故に現在のカルチョってのは個々の駒の良し悪しよりいかにチームとして有効なロジックを持って戦えるかの知恵比べみたいなところがあるんですが、ユーベの守備はそういうセリエAでは鉄壁を誇っても欧州の舞台に移ると必ずしもそういう相手ばかりじゃないぞ…という一面もある訳で。


【対ガラタサライ戦の失点シーン】
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↑の試合はユーベのグループリーグ敗退が決定したCLガラタサライ戦から
ユベンティーノは「もう二度と見たくねえよwwっ」ていうシーンを取り上げてみたいと思います(爆)

状況を補足しますと引き分けでもグループリーグ突破が決まる最終戦でスコアは0-0のまま後半残り5分の場面ですね。

まあそもそもこんなピッチ状態でサッカーするなよwwwっていう根本的な疑問はさておき、
とにかくガラタサライの攻撃は「バイタル?ピルロ?何それオイシイの?」って感じで
こっから中盤を飛ばしてドログバ目掛けてドーン!と蹴っ飛ばすという…よく言えば豪快な、悪く言えばアバウト過ぎる代物。


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しかーし!(マルカトーレ青島風)
ドログバの尋常ならざる跳躍力によってこれが立派なパスとして繋がってしまうと・・・
(にしてもドログバの空中到達点www)


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落とされたボールをスナイデルがドゥーン!と打ってジ・エンドな訳ですよ。

ガラタサライの攻撃自体は何の事はない
DFラインからバーン!と蹴ってドログバがドーン!と落としてスナイデルがドゥーン!
パス2本で得点ですからねwww
(戦術ドログバ万歳!www)

セリエAでも唯一黒星を喫したフィオレンティーナ戦ではクアドラードとホアキンというドリブラーがいたという事も併せて、
なんとなくユーベ攻略の道筋もここから見えてきそうな気がしませんか・・・?



【参考画像:ガラタサライ戦後のコンテ監督】
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コンテ「ドログバ半端ないって!タテポンのボールめっちゃ高く飛びよるもん!
セリエじゃそんなん出来ひんやん普通!」




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芸術の都フィレンツェと魅惑のパスサッカー ~フィオレンティーナ×ユベントス~

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<芸術の都フィレンツェと魅惑のパスサッカー ~フィオレンティーナ×ユベントス~

プレミアリーグファン及びリーガエスパニョーラファンの皆様、
セリエA強化週間シリーズもこれでラストですので今しばらくのご辛抱を(^^;

(次回からはクラシコとCLのマッチレビューに移るのでしばらくの間セリエは放置プレーとなる予定ですww)

というのも昨季から個人的にも推してきたつもりのフィオレンティーナをここらで一度やっておかねば…という使命感に駆られたのであります(笑)

何故、そんなにヴィオラを推すのかと言えば、まず都市とフットボールとの間にある背景が魅力的だと思うからなんですね。

ご存知の通り、このチームがホームとしている都市フィレンツェはレオナルドダビンチやミケランジェロとも縁の深い芸術都市で
それはピッチ上でもRバッジョやルイコスタらのファンタジスタが愛されてきた歴史と風土に表れています。

(その昔、日本で公開された「冷静と情熱の何たら…」とかいうクソ映画の舞台としても有名ww)


昨季、モンテッラが就任してからもチームはその期待に応えるように
「セリエAで最も美しい」と言われるサッカーを展開してきました。

「パスの為のパス」を延々と繋げられるバルサのサッカーと比較すると
元来イタリアのサッカーはゴールから逆算してパスも考える傾向が強かったのですがヴィオラだけは話が別です。

現在イタリアで最も美しいプレイヤーと言われるピルロでさえ、
一番評価されている点は【たった1本のパスでゴールに結びつく決定機を演出出来る】という事からも分かる通り、
やはりカルチョという文化の元では結果に直結しないものはあまり評価されないと考えるべきなのですが
モンテッラは周囲の雑音に惑わされる事なく己のサッカーを貫ける強いパーソナリティを持っています。

故に横パスとバックパスで相手を焦らして焦らしてスパッ!と一刀両断する快感がこのチームのサッカーには確かにあるんです。

勿論、昨季からその「異端」である事の強みが結果として結びついているからこそ今があるとも言えるんですけどね。


<イタリア(冷静)とスペイン(情熱)のあいだ>
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そんなフィオレンティーナのサッカーはイタリアとスペインのいいとこ取りを目指したものと言えるかもしれません。

バルサのサッカーも行き過ぎれば「パスを回す事が目的」となってしまい、これが典型的な負けパターンにもなっていますが、
他方で一直線にゴールを目指すサッカーも行き過ぎれば単調な攻めとなってしまいますし、
あまりに結果を重視した守備的サッカーも臆病過ぎればかえって「勝ち」を逃す失態にもなりかねません。

つまり理想的なサッカーのバランスとは色々な要素の中間にある訳ですが、
モンテッラはそれをイタリアとスペインの関係に見ているのかもしれませんね。

前置きが長くなったところで、それではいよいよマッチレビューに移っていきましょう。

【フィオレンティーナ×ユベントス】
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フィオレンティーナは3-5-1-1とも言える中盤を厚くした布陣でこの試合に臨みます。

最終ラインにSBも出来るロンカグリアとボールの持ち出しを苦にしないサビッチを両脇に並べた3バックは
明らかに「後ろから組み立てる」事を意図したものです。

ロッシを最前線に置いた1トップも中盤と絡ませる0トップ寄りの傾向が強いものと言えるでしょう。

3-5-1-1から3-6-1、そして3-7-0にもなり得るシステムがこのチームの性格を現しています。


一方のユベントスは中盤の要ビダルがW杯予選で連戦をこなした影響もあってベンチスタート。

代わりに今季はポグバの目処が立っているのが大きいですね。

2トップはテベス、ジョレンテという最強のポストワーカーを2枚並べたところから見ると
コンテはピルロ、ないしは最終ラインからのタテパスで直線的にゴールへ迫る事を意識したメンバーを組んできたと言えそうです。


<パスサッカーの負けパターン>

さて、試合ではユーベの巧みな「前プレ外し」にモンテッラがどう出てくるかが序盤の注目ポイントでした。
これまでセリエAの多くのチームが3バック+ピルロが絡むユベントスのビルドアップには苦労させられてきたからです。

はたしてモンテッラの出した答えは驚くべきものでした。

それは特別なピルロ対策も前プレもせず真正面から打ち合うというもの。

元々このチームはセリエAでは珍しく、どこが相手であろうと自分達のサッカーをぶつける気質を持っていましたが、
それはユベントス相手であろうとビルドアップ対決であれば負けないという自信の裏付けでもあります。

かくして後方からテベスへクサビが入れ放題となったユベントスは
ゴール前でボールを受けたそのテベスの突進からPKを獲得し先制に成功。

モンテッラからすればこのプランを選んだ時点で多少の失点は覚悟していただろうし、
打ち合いになれば自分達にも充分勝機があると睨んでいたはずです。

ではそのフィオレンティーナのビルドアップはどうだったかを見ていきましょう。

現代サッカーではビルドアップの際、両SBを上げて中盤からアンカーを降ろすチームがますます多くなっていますが、
このチームは3バックが自力でビルドアップが出来るので中盤の枚数を減らす事なくそれを可能にしています。

このユベントス戦を例にとれば両WBを高い位置に上げてバレーロ、ピサーロ、アンブロジーニの3センターで組み立てを構築していきます。


【フィオレンティーナのビルドアップ】
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具体的には守備時5-3-2で守るユベントスに対し、中盤でユーベの3センター脇に出来るスペースを使ってボールの落ち着きどころを確保。

まずはビルドアップの段階でユーベの前プレを空転させる事には成功しました。
これだけでも他のセリエAのチームとは大きな違いと言えるでしょう。

しかし王者ユベントスの強みは引いて守る事も出来るし、
何よりヴィオラのように簡単には中央へクサビのパスを通させない守備の完成度です。

では実際の試合からユーベの守備を見ていきましょう。


【ユベントスの中央にはヤツがいる】

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局面は左から右へと攻めるフィオレンティーナのビルドアップの場面。

ここまでの段階で右から左、左から右へとボールを丁寧についないで揺さぶりをかけたビルドアップから
満を持してバイタルエリアで間受けを狙うロッシへクサビのタテパスを狙います。


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ピルロ『・・・・そこは通行止めだ』

やはりユーベ相手にバイタルエリアを狙う際は常にこの男の存在がそこに立ち塞がるのです。

コンテはフィオレンティーナに対し、横へはいくらでも繋がせる代わりにタテパスだけは絶対に通さないという割り切った守りで対応。

前半終了間際には引いた守りからのカウンターで鮮やかに2点目もゲットしています。
(この引き出しの豊富さが王者の強み)


一方、パスでの崩し一点突破でユーベ攻略を狙うモンテッラのヴィオラは
横パスばかりが積み重なっていく典型的なパスサッカーの負けパターンへ。

クサビが打ち放題のユーベとタテパスが通せないフィオレンティーナ。

試合は60分まで完全にユベントスのものでした。


<ドリブルというエッセンス>
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ところが試合は60分を堺に一気にその様相を変貌させていきます。

キッカケはモンテッラが切った一つの交代カードでした。

アクイラーニ OUT⇒ホアキン IN

これに伴い、布陣も4-3-3へ変更。

【フィオレンティーナ 後半の布陣】
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クアドラードを一列上げて守備から開放させると
右のホアキン、左のクアドラードという両翼に中央がロッシという並びの3トップが完成。

ユベントスとすれば実に試合の3分の2を掌握し、スコアは2-0。
あとは試合をクローズさせるだけという絶対に勝ち点3は落とせない展開だったのですが、以降思わぬ濁流に飲み込まれていく事になります。

まずそれまで横パス一辺倒だったフィオレンティーナの攻撃にドリブルという要素が加わり、
クアドラード、ホアキンという目の離せないドリブラーが両脇一杯に構える為、
それまで中央を閉めていた守備ブロックがどうしても横へ広げられてしまいます。

それではこの交代と布陣変更で実際にピッチ上で何が起きていたかを検証していきましょう。


【ドリブルを挟む事でクサビが入る】
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局面は右から左へ攻めるフィオレンティーナの攻撃。

ユベントスの守備はまずボールホルダーのピサーロにマルキージオが当たる事で
この瞬間にアンカーのピルロが首を振って背後を確認

バイタルエリアで間受けを狙うFW(ロッシ)の動きと位置を確認して中を通すボールに対する予測と準備を行っています。

要するにピルロをプロテクトする3センターの両脇(マルキージオ、ポグバ)がまずボールに当たる事で
その隙にピルロが守備でもその能力を最大限に発揮出来るようチームのメカニズムが組み立てられている訳ですね。

ところがこの場面ではそれまで散々切れ味鋭いドリブルを見せてきたホアキンが右の大外に張る事で
その存在にユベントス守備陣の意識がどうしても引っ張られがちになってしまいます。


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ピサーロはこれを逆手にとって自ら中へドリブル。

ユベントスはマルキージオが剥がされるとピルロが直接カバーリングに向かわざるを得ない為、
ピルロの視野がボールに固定されて後方の確認が出来なくなってしまいます。


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ピサーロはホアキンという存在を利用しドリブルを挟む事でクサビを入れる事に成功。

この場面からも分かる通りユベントスの守備はピルロが直接ボールホルダーに応対するようになると非常に苦しいんですね。


続いてフィオレンティーナは右がホアキンならば、左はコイツだと言わんばかりにもう一つドリブルを効果的に使った崩しを見ていきましょう。

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今度は左でクアドラードがボールを持ってポグバにドリブルで仕掛けていく場面です。


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クアドラードが中へカットインするドリブルを挟んだ事でポグバが引き出された上に
ここが抜かれた際のカバーリングに備えるピルロの意識も同時に引き付けています。

結果、中へのパスコースが空きました。


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ここでも途中でドリブルというエッセンスを加える事でクサビのパスを活かしています。

CLでミランと戦ったアヤックスもそうでしたが、いくらパスサッカー、パスサッカーと言ったところで
やはりパスだけで現代サッカーの…特にカルチョの守備網を破っていくのは難しいと言わざるを得ません。

時代はパスサッカー全盛をベースに、いかにドリブルという味付けをここに加えていくか…という戦いに突入しているのです。

ベイル、ネイマール、アザール…etcと近年の移籍市場における人気銘柄を見てもそれは明らかと言えるでしょう。


<一歩遅れた一手>

試合はこれでゴール前にクサビが入るようになったフィオレンティーナが後半21分にMフェルナンデスの突破からPKを獲得。

まあこれは前半にテベスが得たPKの帳尻合わせという要素も多分に強かったのですが、
とにもかくにも試合のペースが一気にへと傾きスコアは1点差まで迫っています。

これを見たコンテは慌ててビダルを投入して中盤のバランスを取り戻そうとしますが
続くヴィオラの追加点はピッチ脇でコンテがビダルに指示を与えているまさにその時に生まれてしまいます。


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局面は後半30分―

その時、ユベントスのベンチはビダル投入へ動いていました。


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一方、ピッチでは1点差に追いついてイケイケのフィオレンティーナが前プレを敢行。

この場面ではボヌッチからの球出しにプレスをかけてボールを引っ掛ける事に成功。


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引っ掛けられたこぼれ球がピサーロに拾われるとユベントスはいきなり大ピンチ。

何故かと言えば攻撃に向けて動いていたこの場面でいきなり攻守が入れ替わってしまった為、
ピルロの両脇にガードがなくモロにオープンスペースとしてさらけ出されてしまっているからです。

というのもこの場面におけるピルロは守備範囲からいってこのスペースを広くカバー出来るプレイヤーではなく、
かといって身体をぶつけて攻撃を止める事も得意としていません。

つまりユーベが守備で一番陥りたくないのがまさにこの局面であり、
この後のプロテクト役マルキージオ、ポグバの戻りに全てが懸かっていると言っても過言ではありません。


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ボールはピサーロからMフェルナンデスに展開されますが、ここはさすがユベントスのレギュラー。
マルキージオの迅速な戻りが何とか間に合いました。

しかし一方でポグバの戻りは何とも緩慢・・・完全に日曜のお父さんよろしくジョギング走りで
本来自分がカバーすべきバイタルエリアで待ち受けるロッシの危険性が全く理解出来ていません。


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やっぱりね…という感じでフリーのロッシへ展開されるとここから左足一閃!
右へ逃げて落ちるシュートが見事にゴール左隅へ決まりました。

(やや厳しい事を言えばゴールマウスにいたのがブッフォンだったので、せめて触って欲しかったシュートではありますが…。)


それにしてもコンテにしてみればビダル投入が本当にあと一歩早ければ…と悔やむに悔やみきれなかった失点に違いないでしょうね(^^;


<中盤のバロ○ッリ>
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ここでもう一つ厳しい事を言えばやはりポグバという選手の存在について言及せざるを得ないでしょう。
というのも同点に追いつかれたコンテの打った手がマルキージオを下げてビダルを投入する一手だったからです。

個人的にはポグバを下げてビダルを投入するものとばかり思っていたのでこれは少し意外でした。

同点に追いつかれた事で逆転へ向けた攻撃力を残した…という判断だったのかもしれませんが
やはり従来のレギュラー組としてピルロのガード役を務めてきたマルキージオ、ビダルと比べると
ポグバのプレーはまだまだ甘さが残っていると言わざるを得ません。

純粋に持っているポテンシャルだけで見ればポグバは文句無しでレギュラーを張れる逸材なのですが
プレーの判断、トップレベルの試合がどういうディティールで勝敗が分かれるかという認識、
つまり勝負における厳しさという点でまだ不十分なのです。

ミランにおけるバロ○ッリはヤンチャっぷりや無理なプレーをしたところで
まだFWなので直接失点に絡む可能性は低いのですが、(退場リスクは常にあるとしてもww)
ユーベにおけるポグバは言わば「中盤に置いたバ○テッリ」です(爆)

この試合でも勝敗を決定付けたフィオレンティーナの3点目の場面にそれがよく表れています。


【フィオレンティーナの3点目を検証】
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局面はピルロからのパスをビダルが受ける場面ですが、背後からこれを察知したバレロが迫ります。


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いい出足を見せたバレーロがビダルのファーストタッチを読み切ってインターセプト!

攻守が入れ替わり、ユベントス各選手のインテンシティの強さが問われる場面になりました。


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試合は既に後半30分過ぎ。
しかしユベントスの選手達にとってここでものを言うのは単純な体力ではなく勝負に対する厳しさであり、
現代トップレベルのサッカーがどういうところで勝敗を分けているのかという正しい認識です。

そしてそれは苦しくてもこういう攻守の切り替わりの場面でしっかりと全力を出し切れるか否かにあります。

この場面ではボールを奪われた張本人のビダルは勿論、全ての選手が守備に切り替えていますが
肝心のガード役であるはずのポグバが1人、遅れが目立っています。


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この後、ボールはバレーロから左のクアドラードへと展開されますが
ユベントスは何とかピルロとビダルの帰陣も間に合ってボール周辺で数的優位を回復させる事が出来ました。


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ところがクアドラードにドリブルで粘られた末にパスクアルを経由してバレーロへ展開されてしまうと・・・


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ポグバ!後ろ!後ろ!www

ここで1人遅れてフラフラ~っと戻ってきたポグバでしたが、
肝心のマークすべき相手であるホアキンを離してしまっているので逆サイドで完全にフリーになっています(爆)

バレーロからここにラストパスが出されてジ・エンド。

確かにどちらの失点も直接ポグバがボールを奪われた訳ではないのですが、
味方選手が持っていたそのボールは「チームのボール」として奪われたら同じように追うべきなのです。

コンテのチームで3シーズン鍛えられたレギュラー組と比較して
特に中盤を担わせるにはポグバはまだまだ積むべき経験がいくつも残っているように思われます。


試合では逆転を許したユベントスがこれまでの引いて守る守備から一転して総攻撃へ打って出たものの、これは完全に裏目に出ていました。(^^;

【ユベントス 捨て身の全員攻撃】
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気持ちは分かりますが、カルチョの舞台でこういうバランスを崩した攻めというのは得てして裏目に出る事が多く・・・


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カウンター食らったらもうボヌッチ1枚しか残ってねぇwww

(ユベンティーノ「それでも・・・それでもボヌッチなら・・・・・あ、アッサリ失点したww」)

まあ、こうなりますよね…(^^;という見本のような失点で4点目。

何とユベントスは後半30分から僅か5分の間に3失点というちょっと信じられないような崩れ方で逆転負けを喫してしまいました。


<予測不能な今季のセリエA?>

但し・・・それでも個人的にはユベントスが今季のスクデット最有力候補という見方に変わりはありません。

60分までの完璧な試合運びと引いて守ってカウンターでもOKという引き出しの多さはやはりセリエAでは頭一つ抜けていると思うからです。

(メンバー固定による負の側面も否定出来ませんがね)

無論、この試合で見せた意外な脆さからも分かる通り、
それは昨季までの絶対的優勝候補というほど磐石なものではないというのもまた事実であります。


この機会にその他のチームも眺めていくとローマに関しては攻めは多彩ですが守備戦術の完成度自体はまだ人海戦術に近いものがあって
未だに何故あれだけ失点が少ないのか不思議なんですが、とにかく未知数な部分が大きいチームだと思っています。

ナポリは戦力は揃った感じですが、かえって普通のサッカーをやる普通のチームになってしまったな…という印象。

セリエAでは戦力的優位に立っているので格下からは確実に勝ち点を稼ぐ一方、
ポゼッションスタイルの地力で上回るローマに敗れたように、同格、格上相手には疑問符がつきます。

(ポゼスタイルの最上級ガナーズ相手には何も出来ずにチンチンにされている)

まあ、今はベニテスがチームに染み付いたカウンタースタイルからの転換を図っている真っ最中なのでこれからのチームではありますが…。

(ミラノの2チームについてはCL圏争いが現実的なところかな・・・?(^^;)


このように改めて今季のセリエA序盤戦を眺めていくと従来のユーベ、ナポリ、ミランに
復活したローマ、インテル、そして着々と地力をつけているフィオレンティーナも加わって久しぶり面白いシーズンになりそうな予感があります。

それこそ、かつて7強によって優勝争いが繰り広げらていた「7姉妹」の時代再来を期待したいですね―



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自分達のサッカーを押し付ける強さ~ユベントス×ACミラン~

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<自分達のサッカーを押し付ける強さ ~ユベントス×ACミラン~

最近、「セリエAブログに鞍替えですか?」とツッコまれそうな本ブログですが、
たまたまここ最近のセリエAに好カードが続いただけですので他意はございません(^^;

今週はCLでビッグカードが目白押しですし週末にはクラシコも控えてるのですぐにいつものごった煮に戻るはずです(笑)


さて、今日はそんなセリエA強化週間に相応しいこのリーグの黄金カード「ユベントス×ミラン」の一戦を検証していきたいと思います。

ミランと言えばつい先日CLアヤックス戦で取り上げたばかりですが、
活きのいいオランダの若手は経験でねじ伏せられても同じカルチョの盟主相手にはそうは問屋が卸しませんでした。


<セリエAの苦しい台所事情>
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開幕からまだ2ケ月半だというのに怪我人に泣かされている両チームによる対戦。
(このへんはやはりセリエAの劣悪なピッチコンディションが遠因になっているのでしょうか・・・?)

ではまずはミランから見ていきましょう。

率直な感想としては「まるでプロビンチャのような…」というよりこれはもはや
プロビンチャそのものと言ってもいいんじゃねえか?(涙目)
という気がしなくもないスターティングオーダーですねww

それでもアッレグリはユベントス相手にやれる事はやろうといつもの4-3-3ではなく何故か4-3-1-2を採用。簡単にはやられないぞとの意思表示と見ました。
(この狙いについては後ほど)


対するユベントスはヴチニッチが欠場の前線は今季豊富な持ち駒で問題なくカバー出来ていますが、
リヒトシュタイナー不在のWBは戦力的にも泣き所。

この試合ではパドインが抜擢されていますが、
セリエAでも三本の指に入るWBのリヒトと比べると一段ならぬ三段ぐらい格落ちの感は否めません。
(昨季のCLバイエルン戦でロッベリー相手にチンチンにされていたのがこの人ですねハイwww)

一方でマルキージオが復帰した3センターは開幕から好調だったポグバがベンチに下がっているので少し勿体無い感じもします。


今やプレミアやリーガの上位対決ではこれぐらいの怪我人だと
ほとんどその痛手を感じさせないオーダーを組めるものですがセリエAの台所事情はこれが現実といったところでしょうか。

まあ、セリエAではその分まだ無名の選手達が緻密な戦術の元、渋~く光っていたりするのを見るのが一つの楽しみ方であり、
この試合でもキックオフから18秒で突如ゴール前に現れた"あの男"が
「何故、お前がそこにいる…!?」でお馴染みのムンタリゴールを炸裂させる安定感を披露してくれました。(笑)

(多分、まだサッカーを始めて3ケ月あたりの天才初心者にありがちなプレーだと思いますww)


<相手に自分達のサッカーを強いる横綱ユベントス>

ユベントスからすると自宅の駐車場を出た瞬間に原付と事故ったような出会い頭のこの失点。
気を取り直して再びキックオフとなった試合は、やはり王者ユベントスペースに落ち着いていきます。

ユベントスが何故セリエAで安定した横綱相撲が出来るかというと
相手に自分達のサッカーをさせず、逆に自分達のサッカーを相手に強いる事が出来るからですね。

例えばアヤックス相手には前半、無駄にボールを取りに行く事はせず、
自陣に引いた守備で巧みにスペースを潰していたミランでしたがユベントス相手に同じやり方は通用しません。

何故ならば・・・ピルロという厄介な存在がいるからです。

ユーベ相手に敵陣でビルドアップを自由にさせてしまうと、ピルロが低い位置から好き放題高精度のミドルパスを発射してくるのでミランとしては守備である程度前から制限をかけに出ざるを得ません。

ところがコンテが鍛えたユーベは敵の前プレをいなす事にかけてはセリエAでもナンバー1の上手さを持ったチームです。

と言うのもユベントス相手にはピルロを消してくるチームが大多数を占めるので
当初はピルロにパスを預けるだけだった3バックの選手達も次第にピルロを飛ばして直接前線へクサビのパスを打ち込むシーンが増えていきます。

そしてコンテ政権で3年が経過した今、ユベントス不動の3バックはセリエAでも随一の展開力を持つバックスに成長しました。


【ピルロを経由しない3バックからのビルドアップ】
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局面は右から左へ攻めるユーベのビルドアップ。

ボールを持ったボヌッチにスペースを与えるようにピルロがバックステップでモントリーボを引きつけます。


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すると前線へのパスコースが中央にバックリ空いたのを見逃さなかったボヌッチからピルロを飛ばして直接FWのテベスへクサビのタテパス。

ちなみに今季新加入のテベスはDFを背負った状態でも絶対にボールを奪われない強さを持っているユーベが切望していたFWです。

昨季まではせっかくDF陣がクサビを打ち込める能力を持っていたにも関わらず
前線に満足なポストプレーヤーを欠いていたという事情がありました。

ジョレンテ、テベスという今季の補強からもコンテがどういうタイプのFWを望んでいたかは明白であり、
熟成されてきた戦術に必要な駒が揃った今、ようやく完全体のユーベが見られそうな予感もあります。


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そのテベスの巧みなポストプレーから一度飛ばしたボールを再びピルロが前を向いて受けるという危険なシーンに繋げています。


コンテはこの3バックスの展開力+ピルロの存在感という個々の資質に加え、
システム面でも4バックから3バックへ変更する事でビルドアップを強化してきました。

【3バック+ピルロで敵の前プレをぼかす】
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こちらも同じく右から左へと攻めるユベントスのビルドアップですが、
2トップ+トップ下でユベントスの3バック+ピルロをケアしなければミランの前プレは数の論理から言っても必ずどこかが空いてしまう理屈になっています。

ここでも3バックスのキエッリーニが外でフリーになっていますね。


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ユーベの3バックの中でも最もドリブルが上手いキエッリーニはこの形から単独で敵陣までボールを運べる強みがあります。

勿論コンテもそれを分かっているのでユーベのビルドアップでは明確な狙いの一つとして彼のドリブルを活用している事はこのチームの試合を見続けていると誰でも分かる戦術意図です。


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敵陣までボールを運んだキエッリーニからここでもピルロは経由せずにビダル⇒テベスの流れ。


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テベス&クアリラレッラの2トップが4バックのミランCBと2対2の数的同数を作り出す狙い通りの形になりました。


試合ではこの前プレ外しでテベスに安定的にボールを供給出来るユーベに前半15分、
ゴール前でそのテベスの突破をファウルで止めたFKからピルロの美しい同点弾が生まれます。

このようにセリエAでは前プレ外しのスペシャリストであるコンテのチームに対し、
他チームはそれが分かっていても前プレを強いられる苦しさがあります。

つまり相手に自分達のサッカーをさせる事なく、自分達(ユベントス)のサッカーを相手に押し付ける論理ですね。

この構図こそがユベントスの横綱相撲と安定した勝率を支えてきた事は間違いありません。


<アッレグリの悪あがき>
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しかしミランの指揮官アッレグリもそんな状況を黙って見過ごすだけの男ではありません。

そもそもこの試合で普段着の4-3-3を捨てて4-3-1-2とした狙いはどこにあったのでしょうか…?

それはやはりトップ下のポジションを作る事でそこにモントリーボを起用したかったと見るのが妥当と言えそうです。

これまでユーベと対戦するチームがトップ下を置く場合、それはピルロ番としての役割を持たせる事がほとんどであり
去年までのミランであればここにボアテングの運動量をぶつけていたはず。

しかし今やそのボアテングはチームにおらず、
代わりに獲得したのはミラニスタの不満を抑える為のアイコンに過ぎない「KAKA」というスペランカーであります(爆)

そこでアッレグリはピルロの守備範囲の狭さに着目し(ピルロは読みは利くが守備範囲は決して広くはない)、
モントリーボをピルロに付けるという守備の発想からモントリーボをピルロのマークから剥がすという攻撃面での狙いに転換させたのです。

より具体的に言えば攻撃時、モントリーボをピルロが追って来れない中盤の低い位置まで下げる事で
絶望的なまでに展開力の低い自軍のDFラインと3センターのフォローをさせる狙いがありました。

(ミランはこのDFラインと3センターの顔ぶれではちょっとビルドアップは絶望的ですよねー(^^;)


【モントリーボをトップ下に置いたアッレグリの狙い】
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局面は左から右へと攻めるミランのビルドアップの場面。

ユベントスのようにDFラインに展開力が無く、
しかも前線にクサビを納められるバロテッリという絶対的な核を失った現在のミランでは
モントリーボが低い位置でバックスからの受け手となり攻撃ルートもサイドへ迂回させざるを得ない苦しさがあります。

(本来なら間受けを狙いたいトップ下のモントリーボ自身がビルドアップの担い手にならなければいけない状況とかペップだったらとっくに職場放棄してるわwww)


しかもユベントスは3センターの中央への絞りが巧みなのでこの場面のように
一度サイドに展開してマルキージオとアサモアを引き付ける事でユーベのブロックを横に広げてからロビーニョにクサビを受けるスペースを作ってあげる必要があります。


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これだけの手順を踏んでようやくノチェリーノからロビーニョへワンツーパスが入るのですが、
ミランが苦しいのはここからいくらクロスをゴール前へ送ったところで
結局待ち受けているのがマトリ(orロビーニョ)という無理ゲー状態なんですよね(^^;

(この2トップではユーベの3バックには勝てませぬ・・・。)

…そんな訳でミランはやっぱり外を迂回させてから中央突破へ繋ぎたいとなるんですが、
そこに立ちはだかるのがやっぱり"あの男"ですよ。


【サイド迂回ルートから中央突破を狙うミラン】
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局面は先程と同じように最終ラインから低い位置まで降ろしたモントリーボを経由してサイドのアバーテへ繋ぐミランのビルドアップ。


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今度はロビーニョを飛ばして奥のマトリまで中央を割るクサビを入れるぞ!ってなもんよ


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ピルロ『残念・・・そこは私の守備範囲だ』

ええ・・・中央のエリアにはこの読みの鋭さとインターセプトがいましたっけね…。
個人的には世界遺産としてユネスコに申請したいぐらいですわ…この男のインターセプトってのは(笑)

まあとにかく、これがあるからユーベはピルロをアンカーとして置いておける訳ですね。

ピルロの守備は低い位置まで降りたモントリーボは追えない(追わない)けれど
選手それぞれがチームから与えられている仕事を全うすれば自ずと勝利は転がり込んでくるという自負が王者ユベントスにはあるはずです。


アッレグリは限られた資源で何とか手は尽くしている感じなんですが、残念ながら悪あがきにしかならないっていう悲しさ・・・(^^;

しかもDFラインからモントリーボにつなぐまでのビルドアップもかなり怪しいので
ユーベの前プレを受けると3回に1回はショートカウンターを食らう感じでした。
(特にサパタとかサパタとかサパタとか)


<選手層の差とコンテが求める献身>

それでも結局前半は1-1のまま折り返して後半へ。
その後半はじわじわと両チームにおけるベンチメンバーの差が露わになっていく展開となりました。

まずコンテは後半10分に明らかにクオリティが不足していたパドインに代えてポグバを投入。
本職ではないWBでそのまま起用されたポグバですが、以降明らかにユベントスの右サイドは脅威を増し、攻撃の起点になっていました。

この交代で流れを決定的なものとしたコンテは続いてジョビンコというカードを切ると
その2分後に切れ味鋭い彼のドリブルから見事な逆転ゴールが生まれます。

ミランからするとDFラインから直接最前線へ打ち込まれるクサビ、
一瞬でも目を離すとショットガンパスを放ってくるピルロという厄介な存在、サイドからは脅威を増したポグバの突進、
そしてテベスのキープ力にジョビンコのキレキレドリブルまで重なっては失点も時間の問題と言えたでしょう。

やはりセリエAというカテゴリーで見ればユベントスの戦力は頭一つ抜けているのです。

その後ジョビンコ投入から7分足らずで2枚のイエローを頂戴したメクセスと
そのFKからトドメの3点目を決められた事で試合はほぼ決着・・・と思いきや後半45分にまさかのムンタリ砲炸裂のオマケがつきました(笑)
(こういう試合で謎のドッピエッタをしてこそのムンタリであるww)

ゴールを決められた後のブッフォン激おこぷんぷん丸な表情を見ても分かる通り、
これは自陣ゴール前でのあってはならないイージーな自滅が招いた失点です。

それは後半45分、時計を見て既に勝ちを確信していたポグバが自陣ゴール前で自慢のキープ力を見せ付けるように
いらぬボールキープを披露していると3枚に囲まれボールロスト。
そのままムンタリのミドルに繋がっています。

持っているポテンシャルから考えるとベンチに座らせておくには勿体無いように思える逸材ポグバですが、
こういうプレーをしている内はマルキージオ、ビダルからレギュラーを奪うのは難しいでしょうね。

それはコンテがこのポジションに限らずチーム全員に要求している献身性を
そのマルキージオ、ビダルが率先して体現しているからで、それはこんなプレーからも窺い知る事が出来ます。↓


【ピルロの弱点をカバーするビダルの献身】
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局面は後半、左から右へ攻めるユベントスのビルドアップで最終ラインから出たタテパスをビダルがピルロに落とそうとしたところ、パスが僅かにズレてピルロの重心と逆方向に転がってしまいます。

これを見たモントリーボがボールの回収を狙います。


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実はアッレグリがモントリーボをトップ下に置いたもう一つの狙いがフィフティボールでピルロとの競り合いになれば、
フィジカルで優位に立つモントリーボが拾える可能性が高いという読みです。

(ピルロのところでボールが奪えてショートカウンターとなれば展開力の低いミランにとって最大の得点チャンスですからね)


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↑この場面では狙い通りピルロとの競り合いに持ち込んだところからモントリーボがボールをGET。
(ピルロは倒されていますが正等なチャージの結果なのでノーファウル)

コンテはチームの構造上、ピルロがボールを失ったこの瞬間こそが最も失点の危険性が高い事を把握しています。
故にこのような場面では周囲の選手(特にビダルとマルキージオ)のピルロをプロテクトする献身性が問われるのです。


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ここでルーズボールがピルロとの競り合いになった段階ですぐに動き出していたビダルの献身性が光ります。

モントリーボがマイボールにしたと思った次の瞬間には背後から巧みに身体を入れて・・・


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見事にボールを奪い返しました!

(こういう正等なチャージの応酬によるボールの奪い合いはサッカーにおける醍醐味の一つですが
残念ながらJリーグでは選手が倒れた段階で無条件に笛を吹く主審が多過ぎます)


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次の瞬間にはもうユベントスの速攻がピルロから始まっているというこの機能性の高さ!

(まだモントリーボは倒れたままですがビダルは既に速攻に走り出しているタフさwww)


個々を見ればビダルにピルロのようなプレーは出来ないし、逆にピルロもビダルのようなプレーは真似出来ないはずです。

しかしそれぞれの長所がお互いの短所を上手く補完し合い、
美しいハーモニーを奏でているのがコンテが3年かけて作り上げた傑作なのです。


ただ、それ故にメンバー固定からくる勤続疲労とマンネリズムのせいか
今季のユベントスはふと気が抜けるような時間帯があり、90分を横綱相撲で押し切った昨季までの強さがまだ影を潜めているのも事実。

この試合でもあってはならない失点で終了間際のロスタイムにとんだドタバタ劇を演じてしまいました。
(ムンタリに始まりムンタリで終わるwww)

更に言うならば、ミラン他多くのチームがユーベのような前プレ外しを持っていないセリエAでも
デロッシを最終ラインに降ろすローマと「つなぐ力」ではユーベをも凌ぐフィオレンティーナに対しては果たしてどうでしょうか?

この試合では「ちょっとした隙」で済んだ開始早々と終了間際の時間帯も
ロナウド、イスコ、ベイルを擁する白い巨人相手には致命傷にもなりかねません。

今季はセリエA代表という看板を背負うユベントスの欧州での戦いぶりにも是非注目してみて下さい。



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0トップ戦術のリバイバルで躍進するローマ ~ローマ×インテル~

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<0トップ戦術のリバイバルで躍進するローマ>

今回はセリエAで今季開幕から大躍進を遂げているASローマのサッカーについて取り上げてみたいと思います。

相変わらずこの国ではセリエAの注目度が低いせいもあって不当に評価も低い気がしますが、
香川が試合に出るか出ないかの話題よりもこの開幕8戦8勝のチームについてもっと報道されてもよい気がします。(^^;

まあ、そんなチームに光を当てるのがこのブログの使命だと勝手に思っていますが(笑)


ではまず今季のローマを取り上げるにあたってトッティでもなければ新監督ルディ・ガルシアでもない1人の最重要人物をフォーカスせねばなりません。

それは2011年、パレルモから引き抜いてきた辣腕スポーツディレクター、ワルテル・サバティーニ その人であります。

まあサバディーニと聞いてすぐにピンと来る人はごく一部のイタリアサッカーマニアだけなのでここでざっとその経歴をご紹介させていただきますと
例えば2004年から4年間SDを務めたラツィオでは決して潤沢な資金力を持つ訳ではなかったチームに当時はまだ無名だったコラロフ、ベーラミ、リヒトシュタイナー、パンデフらを見出し2007年にはCL権を得るという望外な結果を手にしています。

その後パレルモに籍を移した後もあのパストーレを僅か6億円で発見すると
その2年後には47億円の移籍金でPSGへ移籍させる大仕事をやってのけたのもこの男であります。

ここローマでも既にピアニッチ、ラメラ、オズヴァルド、ストロートマンらを見出してきました。


もう一つ、ローマ躍進の下地となっているのが監督の継投によるチームスタイルの確立です。

その転機となったのが当時バルサBの監督を務めていたルイスエンリケの招聘。
ここでイタリアサッカーの常識とは一線を画すスペイン流ポゼッションサッカー導入への下地を固め、
翌年にはゼーマンにバトンを繋いで「超攻撃的マインド」をチームに注入。

そして今季新監督に指名されたのはリーグアンで地味な戦力ながらもその鮮烈なパスサッカーをして
現地では「フランスのバルセロナ」とまで言わしめたリールを作り上げた男、ルディ・ガルシアでした。

このように監督の顔ぶれこそ毎年変わっていますがチームが目指すスタイルは一貫しており、そこに確実な"積み上げ"を見る事が出来ます。

又、そうでなければ今季新監督のガルシアが就任早々開幕から8連勝というスタートは有り得なかったはず。


サッカー界では高額な選手を獲得出来ないチームこそ「有能な監督を」とよく言われますが、
更に視野を広げて見るとその監督を選ぶSDまで含めたクラブ全体の組織作りがいかに重要なのかを今季のローマは教えてくれています。


<ローマ×インテル マッチレビュー>

では長々と前置きしたところで、そんなローマの戦い振りを先日のインテル戦から検証していきたいと思います。
(今季セリエAで絶好調同士の対戦はローマの真価を図る試金石とも呼べる試合でした)

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まずインテルはすっかり今季定着したプロビンチャ仕様の3-5-2。
ポゼッションとか組み立ては半ば捨てる形で中盤の運動「量」を確保しつつ、質より量で戦うスタイルです。

攻撃でボールを運ぶ仕事は今季絶好調のアルバレスがいるからこそ何とか成り立っている戦術と言えるかもしれません。


対するローマは布陣こそゼーマン時代と変わらぬ4-3-3ですが、その中身はだいぶ様変わりしています。

ゼーマン時代は左WGだったトッティがセンターに戻って、
代わりにMFが本職のフロレンツィがその飛び出しを買われてWGにポジションを上げたりとマイナーチェンジが幾つか。

加えて期待の新加入ストロートマンはフットボールインテリジェンスが高く
無駄にボールをこねずにシンプルに受けて捌くスタイルで早くもチームにフィットしています。


<トッティの0トップ 再び>

そのローマが今季取り入れているのが、かつて「時代を10年先取りした」と言われたトッティの0トップシステムです。

それは05/06シーズン、FWに怪我人が続出して遂には本職のFWが0人という緊急事態に陥った当時のローマが
苦肉の策として取り入れた「ひょうたんから駒」のシステムでした。
(以降、ローマはこのシステムを採用して躍進を続ける事となります)

【07/08シーズン ローマの布陣】
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このシステムでは1トップのトッティが自由に中盤へと降りてくる代わりに
機動力溢れる2列目の3枚が前線に飛び出して4-2-3-1から攻撃時4-2-1-3へシフトする可変式にその妙味がありました。

展開力とキープ力に長けたトッティのポジションをぼかす事で相手チームのマークを難しいものとし
降りてきたトッティから彼を追い越す3枚にキラーパスを通す形がハマった結果、このシーズンのローマは大躍進を遂げるのです。

今でこそ0トップ的な考え方は別段めずらしいものに感じられない時代になりましたが、
当時は過去例を見ない戦術として対策も練られておらず特にセリエAでは無敵の強さを誇っていたものです。

(「時代を10年先取りした」と言われていた戦術も一般化するまでに5年かからなかったと考えるとやはりサッカーが進歩するスピードというのは驚異的ですね)


そんな当時のセリエAを見ていた人間からすると懐かしくもあるシステムが時を超えて今季のローマで復活する事となりました。

【13/14シーズン ローマの0トップシステム】
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ディティールでは当時のシステムと若干の差異こそあれ、
トッティが降りてきて周囲が追い越すという発想自体は全く同じと考えていいでしょう。

ジェルビーニョとフロレンツィなんかはそれぞれマンシーニとペロッタの代わりと言ってもいいぐらいプレースタイルも似ています。

変更点で言えば後ろでアンカーのデロッシをDFラインに降ろし両SBが高い位置をとる現代版ビルドアップのトレンドを取り入れている点がより進化したハイブリッド版と言えなくもないかもしれません。

では実際の試合からこの新しい0トップシステムを検証してみましょう。


【13/14 トッティの0トップを検証】
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局面は右から左へと攻めるローマのビルドアップの場面です。

今、中盤から降りてきたピアニッチに最終ラインからタテパスが入るところですね。

この段階ではまだトッティは通常のCFの位置に入っていますが、ここからの動きがポイントになります。


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降りてきたピアニッチにカンビアッソが少し食い付いたのを見逃さなかったトッティが
ピアニッチが前を向いたそのタイミングで中盤に降りてきます。

(このタイミングがいつも絶妙!)


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通常、ここでピアニッチから降りてきたトッティにタテパスが入るのが本来ローマが狙いとしている本線です。

しかしこの場面ではインテルのCBフアンがトッティに付いてくる素振りを見せたのでローマの狙いは第二段階へシフトされる事となりました。

トッティが警戒されていてタテパスが入れられない局面では次にジェルビーニョとフロレンツィの両WGが中に絞りながら2トップ気味に構えつつ、その両脇を高い位置を取っていたSBが突くという形になります。


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↑このようにトッティ、ジェルビーニョ、フロレンツィのトライアングルが中に絞る事で両脇をSBに突かせる事が出来ます。

その意味でトッティが抑えられると機能不全に陥っていたかつての0トップシステムより進化したバージョンと言えるかもしれません。


守る側のインテルにとっても難しいのはこのトッティの動きを警戒する事でローマのビルドアップを容易にしてしまう事でした。

前回インテルをマッチレビューしたユベントス戦に比べるとこの試合では状況に応じて前プレをかけてからショートカウンターも狙っていましたが、結果的に空転させられてしまいます。


【前プレで中盤のラインを押し上げるとトッティの稼動領域が拡大】
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↑このようにインテルは不用意に中盤のラインを押し上げるとその間のスペースをトッティに使われて稼動範囲を広げてしまう危険性が高いのです。

故に中盤のラインを低めに設定せざるを得ず・・・・

【かと言ってトッティのスペースを制限すると中盤が空いてしまう】
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これを利用してビルドアップに加わるピアニッチとストロートマンを抑える事が出来なくなってしまいます。


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ピアニッチとストロートマンはこういうフットボールインテリジェンスが高いので実に嫌らしいポジショニングでインテルの泣き所を利用してきました。(したたかですね~(^^;)

そう考えると彼ら2人にデロッシを加えたローマの中盤トリオはセリエA随一の「質(クオリティ)」が高い組み合わせと言えるでしょう。

かたや遅攻ではグアリン砲という飛び道具以外、運動「量」しか武器の無いインテルは実に対照的でした。


<量のインテル、質のローマ>
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とは言え、このローマのシステムは間違いなくトッティという傑出した存在なくしては成り立たない代物です。

例えばこの試合で生まれた前半18分のローマの先制点。

後方で物量にものを言わせた守備を強みとするインテルに対し、
目の前に5枚もの青い壁が立ちはだかったトッティは迷い無くその隙間を鋭く抜けるシュートをゴールに突き刺します。

その低く抑えたシュート技術は圧巻の一言でトッティを中央に戻した利点が活きた先制点でした。
(守るインテルとしてもやれるだけの事はやった上での失点なので、もはやトッティを褒めるしかなかったはず)


加えてもう一点、インテルは自分達がCKを得る度に逆にピンチに陥るという不思議な現象も起きていました。

これはトッティという「質」に対し「量」で守ろうとするインテルのジレンマが生んだものです。

実際の試合からインテルのCKの場面を抜粋して検証してみましょう。


【自分達のCKがピンチに繋がるインテルのジレンマ】
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局面はローマ陣内でインテルのCKのこぼれ球がトッティの前に渡った瞬間です。

自陣のCKで守備に加わらないトッティはカウンターの発動装置となるのですが、
当然マッツァーリもここは警戒しているのでセットプレーの際は長友をマンツーマンでトッティに付かせている場面が多く見受けられました。

ここでも長友はトッティに前を向かせないよう0距離まで背後から寄せています。


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それでもボールを上手く隠しながら個の力で前を向くトッティ。

しかし長友が上手く時間を稼いだお陰でインテルも3枚で囲む状況へと追い込んでいます。

にも関わらずこの状況のおいてもトッティのこの落ち着きときたら・・・異常!(笑)

3枚に囲まれながらも全くボールを奪われる気配を見せないトッティはたった1人で3秒・・・4秒と超絶キープを披露していきます。
(この間にローマは周囲の選手達が上がって行く)


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終まいには長友が後ろからシャツを引っ張りますが尚もプレーを止めないトッティの鬼キープwww


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散々1人で時間を作ったトッティから前線へ向けてキラーパス炸裂!


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このタテパスが通ると局面は一気にローマの数的優位に!

インテルはトッティに物量をぶつければぶつける程、周囲のスペースが空いていくというジレンマに陥ってしまいます。


それにしてもたった1人で時間を作りながら溜めて溜めて最後にキラーパス一閃!とか
どこの神谷篤司だよwww
(by 「シュート!」より)

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長友「気をつけろ…!敵には時間を止めるスタンド使いがいるぞ!」


実際に試合ではこの形からローマが試合を決定付ける3点目を決めています。


<ローマの限界から見るセリエAの停滞>

結局試合は前半の内に3-0としたローマの完勝で幕を閉じました。

インテルも懸命なプロビンチャスタイルで頑張ってはいましたが、
ちょっとローマとはスタイルの噛み合わせが悪過ぎたようにも思います。


ではこの好調ローマですが、果たしてこのままどこまで突っ走る事が出来るでしょうか?

選手層は万全とは言えず、例えばトッティが怪我したらチーム戦術が根底から揺らいでしまう危険性もあるので先の事は何とも言えませんが、上手くいけばCL圏内からスクデットも狙える可能性も案外あるのではないでしょうか。

それに実はこの卓越した個のクオリティ(トッティ)をチームに活かすために周りの戦術的なスキームを組む…というやり方はユベントスを筆頭に近年のセリエAでは必勝のトレンドとなりつつある流れを感じます。

ここ3シーズン無敵の強さを誇っているユベントスはご存知の通りピルロという卓越した個を活かす為のショットガンオフェンスですよね。

【ユベントスのショットガンオフェンス】
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もう勘の鋭い方はピンときてるかとは思いますが、基本的には今季のローマもこれと発想は同じですね。

【ローマの0トップシステム】
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と言うのも逆に言えば近年のセリエAにはこうした卓越した個のクオリティを持つタレントが不在だからこその流れなんです。

(ちなみにミランのアッレグリもバロテッリを軸にスキームを組み始めていますが
肝心のバロテッリ自身の波が激しく、その上出場停止もあって稼働率が安定しません(^^;
アッレグリ「本田早よ…!(涙目)」)


プレミアでは既に終わったと見られていたマイコンが普通にローマでは活躍出来ていたり、
ジェルビーニョがアーセナル時代には一度も見せた事のないような無双っぷりで躍動していたりと
ローマにとってはポジティブな現象も見方を変えればセリエAの停滞を示唆していると言えなくもありません。

そもそも過去に無敵を誇ったトッティの0トップシステムをローマ自身が一度封印する事になったのは
国内では無敵を誇ったこの戦術がCLの舞台ではマンチェスターUの圧倒的なインテンシティの高さの前にトッティが完全に潰されてしまい、7失点の大敗を喫したせいでもあります。

(この頃のユナイテッドは間違いなく強かったのにどうしてこうなった・・・OTL)


…そう、ローマのこのシステムは言うまでもなく「トッティはボールを奪われない」事を前提に組み上げられているので彼が持った瞬間にチーム全員の攻撃スイッチがオンになる意思統一を可能にしているのですが、
それは反面、もし彼がボールを奪われた際のリスクの大きさを示しています。

実は今季の試合でもそれは充分に確認出来るので、第4節のローマダービーから以下の場面を見てみて下さい。

【トッティがボールを奪われた際のリスク】
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局面は右から左へと攻めるローマの攻撃です。

今トッティがボールをキープしている場面なのでローマの攻撃スイッチはON。
後方から次々と選手がトッティを追い越して行きます。


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ところが溜めて溜めて出したトッティのパスがインターセプトされてしまいました。

(手前のタッチライン際をSBのバルザレッティが上がっているのがこの後効いてきます)


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周囲がトッティを信じて上がっている分、フィルターも薄く、SBが上がった裏のスペースはがら空きのローマ。


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インターセプトからパス1本でローマはCB2枚での守備を強いられる厳しい場面に。


確かに今季のローマは国内リーグに集中出来るのでプレミアのようなフィジカルでトッティが潰される心配も無ければ、時間を作っている間にバイエルンやドルトムントのボール狩りに遭う事もない境遇です。

実際にセリエAではトッティのクオリティはずば抜けており、リスクよりリターンが勝っているからこその全勝街道なのでしょう。

しかし一歩欧州トップレベルの戦いに身を投じれば、
あの時と同じように全く歯が立たないのでは…という一抹の不安は拭えません。


それは昨季、セリエAでは無敵を誇ったユベントスのショットガンオフェンスが
バイエルンの激しい前プレを受けてピルロが孤立し潰されたあの悲劇を思い起こさせるからなのでしょうか-



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