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奇跡の価値は ~CL準決勝リバプール×バルセロナ~

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<奇跡の価値は ~CL準決勝リバプール×バルセロナ~

「奇跡」 「感動」 「アンフィールドの魔力」

ドラマティックな決着となったCL準決勝リバプール×バルセロナの一戦はCLの長い歴史の中でも今後語り継がれていくに相応しい名勝負となりました。

勿論、この試合の勝敗に「人智を超えた何か」が介在した事を完全に否定するのは難しいでしょう。
しかし、本ブログではこの試合を単なる奇跡で片付けるのではなく、あくまでそこにあったロジックを紐解く、いつも通りのアプローチでこの名勝負にも挑みたいところ。

奇跡が起こる必然性、圧倒的な優位を活かせなかったバルサの敗因とリバプールの勝因に迫りつつ、現代サッカーにおける戦術史の中でこの試合をどう位置づけるかも考察していきたいと思います。



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<奇跡を招いたバルサの構造的欠陥>

試合はキックオフから一方的にバルサ陣内でゲームが進んでいきます。
1stレグを0-3で落として後のないリバプールがスタートから激しいプレッシャーをかけてくる事は誰もが分かっていたので、問題はバルサがそれを真っ向勝負で剥がしに行くのか、リスクを冒さず受けに回るのか。
ところがバルサはリバプールの捨て身のハイプレスを前につないで剥がそうとすれば捕まり、ロングボールで回避しようとすれば簡単に回収される、実に中途半端な出方で完全に主導権をリバプールに握られてしまいました。

その流れのまま得たリバプールのCKをバルサが跳ね返したところから奇跡に到る第一歩、前半6分の先制点が生まれます。

この試合の勝敗を振り返る時、アンフィールドのサポーターに背中を押されたリバプールのプレス強度が挙げられる事に異論は無いですが、この所謂ゲーゲンプレスを支えていたのは逆説的に言えば「バルサ側のプレス」とそこから発生するこの試合が持つ構造に遠因があったと確信します。

それを象徴するリバプールの先制点の場面を見てみましょう。


【リバプールの先制点を解析】
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リバプールのCKが自陣まで跳ね返された後、GKアリソンを経て再びリバプールが自陣からボールをつなぎ始めたのがこのシーン。

ボールの出所に前残りだったJアルバがプレスをかけ、パスを受けるシャキリに対しては背中からブスケスが寄せる連動したプレス。



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パスを受けたシャキリに前を向かせる事を許さなかったバルサ。ここまではバルサのプレスの流れに問題は無し。
あとは戻ってきたファンダイクへの横パスにメッシとスアレスが挟み込む形でプレッシャーをかければボールを奪えないまでもリバプールのビルドアップ精度を大幅に削る事が出来るはず。




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しかしメッシは棒立ちでファンダイクを眺めるだけ。スアレスも絶賛ジョギング中。

結果的にファンダイクは完全にノープレッシャーのまま対角パスをバルサ陣内深くに蹴る事が出来ます。
せっかく高い位置までプレスをかけていたJアルバはこれが逆に仇となり、自分の背中のスペースを埋める為に急いでプレスバック。

DFが長い距離を背走させられるとボールを見ながら、つまり進行方向に背を向けながら走らされる事になるので周囲の状況を充分に認識する事が出来ません。Jアルバがイージーとも思えるバックパスをマネにかっさらわれた背景としてはファーストディフェンスとしてプレッシングのスイッチを入れに前へ出たものの、セカンドディフェンスがメッシだった為にプレスの連動がここで断ち切られ、前に出た事がリスクにしかならない状況になってしまったという側面があります。

結果的にJアルバが割を食う形となったこのリバプールの先制点にこそ、この試合が持つ構造が凝縮されていました。

プレッシング戦術はボールに対するアプローチが2つ、3つと連動しなければ、前に出て陣形を縦方向に圧縮している分、背後に蹴られた時に守備の矢印が全て引っくり返ってしまうリスクを構造上抱えています。
バルベルデのバルサが前からのプレスを捨てて、基本的にリトリートを採用しているのはこの為ですね。
つまりメッシとスアレスの2トップを守備の組織に組み込めないという特殊事情に他なりません。

しかしこの先制点の場面では試合開始から一方的にバルサが押し込まれていた事もありCKを跳ね返したボールをせっかく一度はGKアリソンにまで戻させたので、ここで一気に押し上げて陣地を取り返したい(自陣ゴール前から少しでもボールを遠ざけたい)という、DF心理としては到って真っ当な行動原理がJアルバに働いたと見ます。


では、そもそも何故バルサは一方的に押し込まれてしまっていたのか?

まずバルサの布陣は守備時、4-4-0という極めてイビツな構造になっています。
となるとリバプールはこのシーンに限らずCBのファンダイク、マティブ、そしてアンカーのファビーニョは常にフリーな状況を確保出来ていました。

キックオフからリバプールの攻撃の起点は明らかにこの3枚で、特にCBのファンダイクは得意の対角ロングフィードをノープレッシャーな状況から徹底的にバルサDFの背後に放り込んでいます。
但し、ここまではある意味、バルサ側(バルベルデ)も割り切って受け入れた試合構造。
これを回避したければCBに対して最低限のファーストプレスが必要なので、今季のバルサは敵陣でのボール回収を諦め、回収地点を自陣深くに設定→ここからのロングカウンターからスアレスとメッシの個の暴力で相手の骨を断つ、というチーム構造になっていました。


確かに、持ち駒で圧倒的な優位性を持つ国内リーグであれば、これは充分収支で採算が取れる戦術です。
バルサは別に4-4の8人で守ってようがDFラインを低く設定し、背後のスペースさえ消していればピケらCBの個人能力で最後は守れる計算が立ちます。仮にそこを突破されようとその後ろにはテアシュテーゲン神が控えていますしね。



しかし相手がリバプールクラスになってくると話はそれほど単純には進みません。
まずファンダイクのロングフィードは正確無比の精度を誇り、マネやシャキリのフィジカルモンスター相手に常にヨーイドンで競り合わなければならないバルサのSBは災難だった事でしょう。
なんせJアルバやSロベルトは自由に蹴れる状況のボールに対し、背走しながら、ボールとマークの同一視が出来ない状態(相手WGは常に自分の背後を取ろうと走っている)でシャトルランを繰り返し強要される状況ですからね。

一方、このボールをヨーイドンで走り出すマネやシャキリは前向きのまま、ボールと自分をマークするDFとを自然な身体の向きで同一視したまま、自分のタイミングで走り出せば良いだけです。
だからこそ現代サッカーではファーストライン(前線)がこのボールの出所に何らかの制限(パスコースを限定する、ボールホルダーの時間を制限するetc)を与えないとズルズルと押し込まれる事になる訳ですが・・・。なんせバルサの布陣は現代サッカーではアブノーマル過ぎる4-4-0。


この構造こそが、リバプールの、否クロップサッカーの強みを最大限に発揮させる下地となっていました。
何故ならクロップのサッカーは攻撃も守備も常に「前向き」に矢印が出ている時、その推進力を最大限に発揮出来るからです。

バルサ側のファーストプレスが皆無だった事で、リバプールは常に前向きにロングボールを蹴れる⇒バルサは常に後ろ向きに走らされる事から守備も攻撃も始まる⇒リバプールはこのロングボールがマイボールになろうとバルサボールになろうと構う事はなく、ただひたすら前向きに次のプレスをかければいいだけ


これほどゲーゲンプレスを行うに恰好な状況が果たして他にあるでしょうか?


当然の帰結としてリバプールの2点目も、基本的にはこれと同じ構造で生まれています。

【リバプールの2点目】
リバ2点目0518-1
局面はSBアーノルドに対し、バルサはボールサイドのコウチーニョを基準にディアゴナーレのL字ラインを形成。
しかしここでも本来アンカーに蓋をすべきFWのメッシが独自の立ち位置(笑)にいる為、ファビーニョはフリー。
バルサは4-4の中盤ラインが守備のファーストラインになるのでかなり苦しい状況である事がよく分かる局面と言える。






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ファビーニョに対してはブスケスが出て行く形に。
と同時にラキティッチは横スライドしながら絞ってカバー







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ボールは逆サイドのミルナーまで振られるとバルサの中盤ラインは全体がピッチの横幅68Mをスライドさせられるハメに。
ここまでボールの出所に全くプレッシャーがかかる事なくサイドを変えられている







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次の横パスに対しては再びブスケスがチャレンジ、ラキティッチがカバー
相変わらずファビーニョはずっとフリー。バルサはどこでボールを奪うのか守備の基準点が定まらない。








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メッシが蓋をしないファビーニョには仕方なくラキティッチが遅れて出て行く事になるが、ボランチの2枚がチャレンジ&チャレンジという極めてイビツな守備になっている。
ボールは上がってきたSBアーノルドにもう一度振られる事に








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アーノルドにはコウチーニョが出て行く事になるのでバイタルを埋めるのはボールにチャレンジしたばかりのラキティッチ




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ラキティッチがきっちりスライドした事でここでボールを回収






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ハイ、問題のシーン

ここで回収したボールをJアルバに預けた横パスを掻っ攫われて失点。
失点につながったのはボールを回収したラキティッチの身体の向きで、リバプールのプレスをモロに受ける方向でプレーしてしまった事が痛恨でした。







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無論、正しくは逆サイドに身体を開いてプレーする事で、その向きならば隣のブスケスと一つ奥でフリーのメッシに展開出来ていた場面。

しかし・・・・である。


ラキティッチがここでボールを回収するまでの流れを巻き戻して考えてみましょう。
①ボールサイドのカバー⇒②ブスケスのチャレンジに対するカバー⇒③サイドを変えられて横スライド⇒④再びブスケスのカバー⇒⑤メッシの代わりにファビーニョに寄せる⇒⑥サイドを変えられて横スライドしながらカバー⇒ボールを回収

右から左、左から右へと振られながら3回、身体の向きを変えさせられている。
同じ守備でもボールを主導的に追い込んでいるのと、相手に自由に動かされてリアクションで走らされているのとでは奪った瞬間の余裕、ポジショニング、全体のバランスは大きく変わってきます。
やっとの事でボールを回収したラキテッチにこの時、周囲の状況に対する認知と余裕はほとんど無かったはず。
これも1点目と同様、人一倍ハードワークした選手(ラキティッチ)の余裕の無さがゲーゲンプレスの餌食にされた恰好と言えるでしょう。





仮に・・・・もし仮に、ここでボールを回収したのが極東に放牧させたあの男であったなら・・・・

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この位置でのボールロストは有りえなかったはずですが、そもそもこのポジションがイニエスタであったら今度はラキティッチと同様のハードーワークが出来ず、結果ボールを回収出来てはいないというジレンマ。

このジレンマこそバルベルが率いるバルサの本質である、と確信します。



<質を確保する為に量で担保する>
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バルベルデのバルサが苦しいのは、このメッシ+スアレスの「質」を確保する為に、他のパーツで量を担保するというその構成にあります。

第一の被害者はリバプールから鳴り物入りで獲得したコウチーニョでしょう。
元来、通常のチームであればメッシやスアレス側にいるはずのこの王様が彼らの分の量を補う便利役で使われている配役にまず無理があると思います。

過去、この役割を背負わされた選手は肉体的にも精神的にも疲弊し、やがてクラブを後にする命運を辿ってきました。
バルサで前任者でもあるネイマールは、再び王様へと返り咲くためにPSGへ移籍し、今では「パリの王様」を謳歌しています。
マドリーでこの役割を担わされてきたベイルは不満を露に移籍寸前という状態。


バルサでコウチーニョのパフォーマンスが批判の対象になるのは分からないではないですが、あのポジションで使うなら他の選手を獲って来るべきだったのではないでしょうか。
(個人的には「戦術コウチーニョ」が可能な中堅クラブで輝く彼のプレーが見たいものです)


第二に4-4の2ラインで守るアブノーマルなシステムを機能させる為に、中盤も質より「量」を重視した構成にならざるを得ないという悩みです。

本来、「バルセロナの中盤」という選手像から最も合致するはずのアルトゥールがこの大一番でベンチに座り、代わりにピッチではビダルが獣のように泥だらけになっている姿がその象徴とも言えるのではないでしょうか。


しかし、メッシ+スアレスを起用する為のビダル抜擢が、この試合その2人の存在感を消す一因になっていたというのは皮肉という他ありません。



【メッシが消える中盤ビダルの弊害】
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局面はバルサの中盤での組み立ての場面で、ビダルにボールが入る瞬間。
脇にメッシが得意のポジションで控えており、ビダルは前向きにボールを受けて預けるだけの簡単なお仕事です





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・・・が、しかし。ビダルは身体の向きを変えられず、そのままの姿勢でバックパス






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1本バックパスを挟んだ事でその間にリバプールのスライドが間に合って、メッシへのパスコースは死に筋に






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その後、待っていてもボールが出てこないメッシが我慢出来ずに中盤の低い位置まで降りてくる悪循環へ。
代わりにビダルが本来メッシが受けて欲しいスペースにいるというこのアンバランスさである





結局バルベルデは0-3になってから慌てて中盤の優位性を取り戻そうとSロベルトを中盤に上げる+ビダルを下げてアルトゥール投入という後手後手の采配。

しかし今の攻守分業、質より量で勝ってきたバルサがいまさら中盤の優位性で勝負に出ようとしても中途半端感は否めません。
その象徴とも言えるシーンがリバプールの勝利を決定づけた4点目のCKにつながるバルサのボールの失い方に現れています。


【リバプールの4点目につながるバルサのボールロストを検証】
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後半、バルサに必要だったのはクロップによって極限までハイテンポに上がったゲームのリズムを一旦落ち着かせる事。
この場面ではリバプールのファーストラインから鬼プレスを受けているDFラインを助ける為にアルトゥールが落ちて数的優位と時間を作り出しました。
加えてブスケスを消そうと相手が食い付くなら、脇のスペースを使えるSロベルトという3人が有機的に連鎖した配置。
これぞ我々が知っている”本来のバルセロナの姿”です



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Sロベルトの間受け成功(この試合、一体バルサは何回の間受けを成功させたのか・・・記憶に薄い)

あとはここにメッシ+SBが絡んで、後ろで作った優位性を前線まで運ぶだけ!






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ところが一度狂ったバルサのイビツな構成はとてもじゃないですが、0-3の試合状況から中盤の優位性を取り戻せる状態ではありませんでした。

もはや大外を取り囲むラインの「間」にポジションを取っているのはブスケスとSロベルトのみという、
一体どこのモイーズが指揮しているのか!?状態の配置。

この配置に一体いくつのトライアングルが描けるというのか?(ファンハール先生も激おこ)
天国のクライフにセメドが延々クロス60本を上げるファイトボールを見せる気か?

勿論、この後中央で孤立したSロベルトがリバプールのボール狩りの餌食にされたのは言うまでもありません。
ここからカウンターを食らい、その流れのCKからしょーもない失点が生まれ、それが勝負を決めたのです。
(きっとクライフ先生からの天誅)



<量で質を凌駕するクロップのロック魂>
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本ブログではバルサやマドリーの守備構造を常々「貴族守備」と評してきましたが、それと比べるとクロップのリバプールはまさに「炭鉱の労働者」で固めたような勤勉さとハードワーク、そして魂が感じられます。

唯一リバプールで特権に近い役割が与えられていたのがサラーでしたが、元々の構造がバルサとは違うので、この大一番でサラーとフィルミーノという「質」を欠く状態に陥ってもリバプールは4点取って逆転出来うる下地を持っていました。
反対にバルサがこの状態からメッシとスアレスを欠いていたとしたら100%逆転の芽は無かったと言えるでしょう。

両チームの10番を背負った選手のプレーにこの試合の全てが集約されています。


【後半ロスタイムの赤の10番】
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時間は後半ロスタイム。もはやリバプールの攻め手は前線のターゲット、オリギめがけて放り込むのみという、どこぞのイニエスタが今極東で味わっている絶望のような光景(勿論4-0で勝っているので当然)

しかし、この神頼みのようなロングボールにですら、もしこぼれてきた時のワンチャンを律儀に狙い続ける10番マネの姿がその傍らに必ずありました。
この走り続ける10番の姿勢こそが、Jアルバを疲弊させ、ラキティッチの判断を誤らせ、ひいてはリバプールの大逆転を生んだのです。



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GKのテアシュテーゲンの手にボールが収まった瞬間には、何事も無かったように守備へ戻る10番の姿が
これも90分繰り返されたプレーです





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そのまま自陣DFラインまで吸収されて、大外のJアルバをケア。
DFラインがこの地味なカバーにどれだけ助けられた事か、想像に難くないでしょう。




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リードしているチームの終盤守備固めに有りがちなのがこのままズルズルと下がって人数だけはゴール前にかけて、何故かやられるというフットボールの不条理パターンですね。
しかし、あくまでも受け身で守備をしなクロップのチームにあって、チャンスと見ればこの横パスにGO!をかけるマネ




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そしてこの寄せのスピードよ。ブスケスがファーストタッチする瞬間にはもう背中にマネの息づかいを感じるこのアプローチ





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更に奪った瞬間にはカウンターの先陣を切り・・・・







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気付けばもうゴール前!!


スタンド観戦のポジェッティーノ
『すでに試合は90分を回ったというのに、まるで今始まったかのようなあの動き・・・・あの赤の10番は脅威!』


一方、キックオフからすでに後半90分のような運動量だったバルサの10番。
果たしてどちらの10番が”世界ナンバーワンの10番”と言えるのか?

そこに誰も明確な答えが出せないところにフットボールの奥深さがあるとは思いませんか-




<停滞していた現代フットボールの戦術史が動き出す予感>

近代表紙

ここ5シーズン、チャンピオンズリーグのタイトルはBBCやMSNといった、組織よりも個の質にものを言わせて殴り勝って来た王者達によって独占されていました。


「選手こそが戦術」

勿論、それもフットボールが持つ紛れもない一面ではありますが、そういう意味で個人的には近代戦術史に若干の停滞感を感じていたというのが本音のところでした。
攻守分業、貴族守備のチームが札束で殴り合う最高峰の舞台に。

しかし、今季のチャンピオンズリーグではその潮目に変化の兆しが見られます。
強者必衰、スペインの貴族チームに「それで勝てる時代は終わった」という痛烈なカウンターパンチを浴びせた挑戦者達による頂上決戦。

ハードワークをベースに戦術的な幅と深みを持ったチームが今季のファイナリストに顔を揃えました。

俊英アヤックスの躍進は「札束から育成への原点回帰」というアンチテーゼなのか?

迷えるバルサは「クラブの哲学」を見直す転換期を迎えているのか?


現代サッカーの戦術史にとって節目となりそうな予感が漂っている。


















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テーマ : 欧州サッカー全般
ジャンル : スポーツ

【CL決勝 レアル×ユベントス】策を力でねじ伏せたマドリー

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<策を力でねじ伏せたマドリー 【CL決勝 レアル×ユベントス】

16/17シーズンのCLはレアルの連覇達成という偉業を持って幕を閉じました。
自分が初めてこの大会を観た25年前から連覇したチームがいなかったという事実はチャンピオンズリーグというコンペティションのレベルの高さを物語っています。

歴史を変えたマドリーの勝因とは何だったのか?

今回はこのビッグマッチを時系列を追って解析していきたいと思います。

【両チームスタメン】
0608CL決勝スタメン

アッレグリのユベントスは4-4-2。
とは言え、攻撃時ディバラが1・5列目に下がってマンジュキッチがゴール前まで進入すればイグアインとの擬似2トップになりますし、SBのサンドロが高い位置を取ってバルザーリが絞れば3バックのようにも出来ます。

更に押し込まれた時にDアウベスが下がってくれば5バックにも可変可能と、各ポジションに2つ以上の戦術タスクをこなせる選手を配置しているので交代カードを切らずとも色々とチームを変化させる事が出来る知将アッレグリらしい編成になっています。


対するジダンのマドリーは一応4-3-1-2のような並びとなっていますが、良い意味でも悪い意味でも選手の自由度が高くかなり流動的な代物。
特にイスコはトップ下だったりSHだったりウイングだったりと現役時代のジダンさながらの自由度です。

アッレグリもそこは良く分かっており、前日会見で「イスコの奔放な動きは時にチームの守備組織を乱す諸刃の剣だ」という主旨の発言をしていました。

このようにそれぞれチームの事情は違うものの、局面に応じて初期配置がいくつもの変形を見せるという点は共通しており、これはもう時代のサッカーがいよいよフォーメーションという数字の羅列を過去の産物にしていこうという兆候なのかもしれませんね。




<ピッチからディバラを消したレアルの包囲網>
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さてこの試合、個人的に最も注目していた選手がユーベのディバラでした。
今季はまさに「今が旬」というプレーぶりで、ボールが無い時にいつの間にかフリーになっているポジショニング、ファーストタッチでDFを剥がすボールの置き所、そしてゴール前でのフィニッシュの多彩さは芸術的。

特にユーベの守⇒攻のトランジションはほぼ全てディバラを経由していると言っても過言ではなく戦術的にもキーマンと言える存在です。

勿論ジダンも「ディバラはユーベで最も危険なアタッカー」と最大級の警戒を払っており、実際にこの試合では徹底したディバラ包囲網でピッチから消し去る事に成功。


ディバラのプレーの真骨頂は自軍の守備時から常に相手ボランチの背後、死角で間受けの準備ポジションを取っておき、味方がボールを奪うやいなや1本目のタテパスを前を向いて受ける事でユーベのカウンタースイッチを入れるところ。

しかし、この日のレアルはアンカーのカゼミーロを中心に常にディバラのポジショニングに目を光らせており、パスコースの前に立ってユーベDFからのコースを消す守備を徹底。


【ディバラへのパスコースを消すカゼミーロ】
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従って、このようにユーベは自陣で奪ったボールをディバラに預けようにもパスコースが消されている場面が目立ちました。
仮にサイドに流れても今度はクロース、モドリッチが捕まえて離しません。


ならばと得意の間受け(DFラインと中盤の間で受ける)を試みるも・・・


【間受けは迎撃守備で対応】
ディバラ迎撃1

局面はまさに今、ディバラが間受けを狙っているところ。
ここで前を向いてDFを剥がしていくプレーこそ彼の真骨頂です。

CB(ラモス)との距離感を意識してDFからすると出ていこうにも間に合わない実に嫌らしいポジショニングが妙味




ディバラ迎撃2
Sラモス『甘いわっ・・・!!!』


ディバラ迎撃3
ディバラ『グハッ・・!!!』

まさかの人外、高速の寄せでディバラがファーストタッチで前を向こうとする瞬間にはもう狩られてました。


ディバラ「ウソやろ・・・こんなDF,セリエAにはおらんかった・・・」

ラモス(手を差し伸べながら)「フッ・・・ならば貴様もリーガに来い。本物の世界を教えてやる」


このSラモスとヴァランの異常な守備範囲とインターセプトの強さでユーベのセリエA最強2トップは完全に沈黙。
特にラモスは前半だけで3回以上のインターセプトを決めてました。

これによりディバラは「前にはカゼミーロ、背後からSラモス」という地獄のような挟み撃ちに遭い、ピッチから完全に姿を消す事になってしまいました。



<レアルの構造的な脆さを突くアッレグリの緻密さ>areguri06090.jpg

エースのディバラを封じられたアッレグリ。
しかし、それでもレアル相手に攻め手が無い訳ではありません。

アッレグリが突くのはレアルの構造的な「隙」です。
ジダンのレアルは守備時、そもそも4-4-2で守るのか4-3-3で守るのか、からしてかなりアバウト。

トップ下のイスコがSHまで下がれば4-4-2になるのですが、それを決定するのはイスコ自身の気まぐれなので戻ってこない事も多く、それに加えてロナウドとベンゼマのファーストラインはほとんど守備のていを成していません。
(アッレグリがイスコを「戦術的な穴」を見ているのはこのせいで、確かにカルチョの視点で戦局を捉えれば穴以外のなにものでもない)

従ってレアルの守備は基本、4-3の2ライン守備です。(この時代に2ラインで守るとかww)
ちなみにバルサの守備構造もこれと全く同じです。
要は守備免除2枚(ロナウド&ベンゼマ メッシ&スアレス)+気まぐれ1枚(ネイマール、イスコ、ベイル)の構成ですね(笑)

これはレアルとバルサの2クラブが普通、チームに1人までしか置いておけないようなエース級を3枚も4枚も保有しているが故のジレンマと言えるでしょう。

まあロナウド、ベンゼマクラスであれば守備でハードワークさせるよりも前残りにしておいてカウンター時に仕事をさせる・・・という方が結局トータルの収支ではプラス。
それは90分の流れで見ると不安定なようでいて、結局最後は力技で勝ちを積み重ねるという今季のレアルの勝ち方と成績にも表われています。


ただCL決勝のような一発勝負で、しかも相手が知将アッレグリだった場合どうなるのか・・・?

実際の試合から確認していきましょう。


【レアルの4-3守備構造】
モド鬼スライド1

局面は右から左に攻めるユーベの攻撃を自陣で迎撃するレアルの構図。

しかしレアルの中盤は3枚でピッチの横幅68Mを守らねばならず、やはり逆サイドにはかなりのスペースが空いてしまいます。

じゃあ、このスペースに展開された場合、どう守るのか?と言うと・・・



モド鬼スライド2
根性の戻リッチで鬼スライド!!wwww

ちなみにバルサだとラキティッチが同じ役割をやらされているのでクロアチア人は社畜体質なのかもしれません(爆)

但し、いくらモドリッチが根性を見せたところで「ボールは人より速い」のです。
なので常にノープレッシャーのCBボヌッチあたりから一発の対角パスでサイドを変えられた場合・・・



ユーベサイドは2対1
必然的にサイドではユーベが2対1の数的優位になります。

つまりユーベはサイドに振れば簡単にマドリーゴール前まで運べてしまうので(1対2の数的不利ではSBカルバハルは後退するしかない)このジダンマドリーの構造的な脆さが、序盤のユーベ攻勢を招いた要因です。


では、一方のレアルの攻撃はどうったのか?

ユーベがサイドに2枚を配置出来る4-4-2でサイドを優位にしていたのなら、中央を厚くしたジダンの4-3-1-2は中で優位性を作れるはず。
しかしジダンがディバラを警戒していたように、アッレグリもレアルのキーマンがモドリッチとクロースのインサイドハーフである事は見抜いていました。

そこでこの2枚には常にボランチかSHが受け渡しながら捕まえて、その代わりカゼミーロは放置、と対応がハッキリしています。

【アッレグリの守備】
前半CL決勝図

しかしフリーのカゼミーロからは気の利いたタテパスが入らずむしろパスミスを量産。
勿論、こうなると読んでいたからこそアッレグリはカゼミロを放置していた訳ですが、こうなるとレアルのパス経路は自然とフリーのSBへの安全な横パスが増えていきます。

しかしレアルのサイドにはSBの前に人がいません。


【孤立するレアルのSB】
マドリーsb孤立
よって、SBに回したところで常に孤立した状態で攻撃をスタートさせねばならない苦しい立ち上がり。


マドリーsb孤立2
左も同様、マルセロが1対2で対応されてしまいます。


これを見たベンゼマが気を利かせてサイドに流れますが・・・


マドリーsb孤立3
左に流れたベンゼマが局面を2対2にしてワンツーからマルセロにサイドを突破させるも・・・



マドリーsb孤立4
中がロナウド1枚ではユーベのDFにガッチリ捕まえられてしまっています。
このサイド攻撃では今大会3失点の鉄壁ユーベディフェンスから得点を奪うのは難しいところ。


ジダンの誤算としてはイスコが守備はともかく攻撃でも機能しなかった事でしょうか。

完全に自由を与えたイスコが攻撃のタクトを振るうはずが、間受けしようにもユーベのコンパクトな3ラインにスペースを見つけられず、窮屈なエリアで受けてバックパスをするか、ブロック内を嫌がって外に下がって受ける場面が目立ち始めます。

これで中盤と前線をつなぐリンクマンが不在となり2トップも孤立。
レアルはほとんどマイボールでチャンスらしいチャンスを作れない時間が続きます。





<それぞれの"理"が生んだ得点>
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ここで両チームに起きている状況をまとめてみましょう。

【レアル】
<攻撃>
・SBが孤立
・モドリッチ、クロースの両インサイドハーフが守備に追われている
・イスコが間で受けれない

<守備>
・ディバラとイグアインはCBが完封
・サイドで数的不利に立たされている


【ユベントス】
<攻撃>
・2トップが消されている
・サイドからゴール前まで運ぶのは容易
・CBはノープレッシャーで対角パスが出せる

<守備>
・ほぼ完璧にレアルの攻撃を抑えている


両監督の狙いではややアッレグリ優勢ですが最後のゴール前では人外CBのラモスとヴァランがユーベの2トップを完全に抑え切っているので致命傷には到らず。
従って戦術的にはアンバランスでも微妙に試合は拮抗しているのでした。

こうなると得点はカウンターかセットプレーが勝負を分けるのがフットボールの理。
マドリーの先制点はやはりカウンターからでした。


【マドリーの先制点を検証】
レアル1点目0608-1

局面はユーベがサイドからレアル陣内深く攻め込み、右サイドからのクロスをマンジュキッチとカルバハルのミスマッチを突いてファーで押し込もうとした場面から。

この攻め筋は確実にアッレグリが狙いとしていたところですが、クロスを上げる前にディバラがボールをロスト


レアル1点目0608-2

回収したボールをつないでレアルのカウンターが始まるとクロースがこの日初めて長いドリブルを見せてユーベの第二防波堤(ボランチライン)を突破。

ボランチが剥がされた状態でボールを運ばれているのでユーベDFラインは後退せざるを得ず


レアル1点目0608-3

ベンゼマがフリーでボールを収めると、ここでもこの試合初めてロナウドがサイドに流れてボールを受けるかたちに。

そしてカウンターの開始地点では守備でマークしていたマンジュキッチをスピードで振り切ったカルバハルが既にフリーになりかけている
(アッレグリが高さでミスマッチを作ったポイントが反転速攻では逆にスピードでミスマッチになってしまった)



レアル1点目0608-5

ロナウドがサイドに流れた事でユーベのSBが初めてロナウド+SB(カルバハル)と1対2の数的不利で対応する局面に



レアル1点目0608-4

先ほどの中がロナウド1枚だけの状況と違いベンゼマが奥でDFを引っ張っているのでロナウドがマイナスでフリー

レアルはこの試合、クロスでは徹底してグラインダーの速いボールを狙っていました。
(ロナウドの奥にもクロースが待っているのでこのクロスは完全なゲームプラン)
確かに鉄壁のユーベ守備陣に対して平凡なハイクロスでは分が悪いのでこれは"理"に適っています。

試合の主導権は握られていても必ず起こるカウンターという状況から
前残りにしておいた圧倒的な個の力で得点は強奪出来るだろう・・・というのがジダンの、マドリーにとっての"理"でした。


しかし戦術的にはアッレグリの"理"が試合を支配しているので、すぐさま返す刀でユーベが同点に追いつきます。

【ユベントスの同点弾を検証】
ユーベ得点0608-1

局面はレアル陣内に攻め込んだユーベのボヌッチがノープレッシャーで逆サイドに対角パス
これは相手2トップのプレスが無く、サイドで数的優位が作れている・・・という状況に即したアッレグリの手筋ですね



ユーベ得点0608-2

逆サイドではSBのカルバハルがゴール前に侵入したマンジュキッチに付いているのでその大外にSBのサンドロが上がって来ると必然的にフリーになれます。

↑この場面では気付いたイスコが一足遅れて戻ってきていますが完全に間に合っておらず、これを見たカルバハルがカバーの対応に向かっているのが分かります。



ユーベ得点0608-3

サンドロからダイレクトでゴール前のイグアインに折り返されると、カバーに向かった分カルバハルとマンジュキッチとの距離がこれだけ離れてしまっています。
この距離がマンジュキッチに胸トラからシュートにいける余裕を与え、得点に繋がりました。


前半はアッレグリ、ジダン、それぞれの理で1点づつを取り合って後半へ。



<狙われたバルザーリ>

後半、前半は得点シーンのカウンター以外、ほとんど攻め手の無かったレアルが明らかに攻め筋を変えてきました。

ユーベのコンパクトな3ライン間にパスを入れても囲い込まれるだけなので、それならばとDFライン裏へキックオフから立て続けに2本蹴っています。
狙われたのはこの試合、右SBに配置されたバルザーリ。

バルザーリがSBに起用されているのは3バックにも可変出来る事や、マドリーのストロングサイドである左サイド(マルセロ)への守備を強化しようなどの理由があったからですが、SBが本職の選手と比べるとやはりスピードには欠ける分、背後への対応やタッチライン際での1対1は不得手としています。

マドリーが突いたのはまさにそこで、後半からイスコを左サイドに張らせただけでなく、ロナウドやベンゼマも積極的に左へ流して後半開始僅か15分の間に6回も左サイドでの仕掛けを見せています。

【マドリーの露骨なバルザーリ狙い】
バルザリ0608-1

バルザリ0608-2

バルザリ0608-4

バルザリ0608-5

バルザリ0608-6

そしてこの後半15分のベンゼマとバルザーリの1on1からクロス(またもやグラウンダーでマイナス)⇒こぼれ球にどフリーだったカゼミーロがドン!で勝負有り。


アッレグリからすると後半の攻め筋変更に修正が間に合わないうちに放置していたカゼミロに決められるという痛恨の失点。
しかもリードされてしまうと攻撃にパワーを加える手持ちのカードがほとんど無いのが苦しいところ。

気落ちするユーベを見た王者マドリーは「ここが勝負どころ!」と一気に畳み掛けてきました。




<勝負どころを逃さない勝者のメンタリティ>
DBbPVaWVoAA-Gtb.jpg

結果的に勝負を決めたレアルの3点目も後半の攻め筋が伏線となっていました。

バルザーリの背後をスピードで狙われ始めた事で少しづつユーベのDFラインが後退。
これにより中盤の2列目も合わせて後退し、これまでマドリーのキーマン(モドリッチ、クロース)を抑えていたボランチ、SHとの距離が僅かに開いてしまいます。

しかし、モドリッチ&クロースレベルの選手にとってこの僅かなスペースがあれば試合を決めるのに充分過ぎる程でした。
というのもユーベの守備はマドリーのように個の能力で解決するものではなく、3ラインが一体となって守備をする事でその強度を保っているからです。

ユーベにとって2トップと2列目のライン間が離れるという事は守備の強度とボールポゼッション、ひいては試合の主導権を明け渡すのと同義でした。

試合はこの時間帯、2点目が決まったのを合図に一方的にマドリーがボールを支配し始めるのですが、一体ピッチでは何が起こっていたのでしょうか?

実際の試合から解析していきましょう。


【マドリーの五角形が機能し始める】
五角形2-1

局面は最終ラインからビルドアップするレアルに前プレをかけるユーベの図。
レアルはCB2枚とアンカーのカゼミーロ+両インサイドハーフ(クロース+モドリッチ)で作る五角形でユーベの2トップに対し数的優位を作りながら鳥カゴの要領でボールを回し始めます。

この流れでSHが少し離れた位置からインサイドハーフにプレスをかけたとしても・・・


五角形2-2

このように簡単にいなされてしまいます。

これで構造的にボールを握れるようになったレアルにとって追加点は必然でした。




【レアルの3点目を検証】
レアルティキタカ1

3点目の起点もこのようにレアルの五角形がユーベの2トップのプレスを無効化しているのが分かります。
それでいてユーベの2列目は左右のSHが大外に開いたSB(マルセロ&カルバハル)に引っ張られているのでボランチの方が中途半端に前に出てしまってかなりのアンバランス。

仮にケディラとピアニッチがこの五角形に食いつくと今度はイスコ、ロナウド、ベンゼマのいずれかに背後で間受けを狙われて、
ならばとそれをDFラインが迎撃守備で食いつこうものなら一発で背後を取られる危険性があります。
(何故ならボールの出所にプレッシャーがかけられない状態だから)

とにかくこの時間帯のマドリーは全体のポジションバランス、距離感、機能性、相互関係が素晴らしく、↑の図でいくつのトライアングルとパスコースが描かれているかを可視化するとこうなります↓

レアルティキタカ2
う・・・・美しい

ポイントはユーベの1列目と2列目が各トライアングルの間に立たされて、それぞれのエリアで鳥カゴをされてるような状態なので守備が全く機能しなくなっているんですね。

この圧倒的な支配感とポジショニングバランス・・・どこかで見た覚えがあるなーと思ったら、これユニフォームの色さえ変えてしまえば各選手の名前をこう書いても誰も気付かないと思うんですよ(笑)↓

レアルティキタカ3
マドリディスタに怒られるからやめれwww

いやー、未だにあの頃のペップバルサの映像を見返す事があるんですが、最近気付いたんですよ。
彼らの何が他と違うのかって、足元の技術よりもポジショニングの秀逸さだな・・・って。
本当11人全員が意図と意味のあるポジションを取っているので無駄が無いんですよね。

おっと、話が逸れかけたので3点目の流れに戻りましょう。


レアル2点目0608-1

構造的にフリーになるアンカー(カゼミーロ)から構造的にフリーになる大外のカルバハルへサイドチェンジ



レアル2点目0608-2

・・・・で、案の定カゼミーロのパスはパスミスになるんですけど、この布陣全体でユーベの守備ブロックを包囲するようなバランスで攻めていると仮に途中でミスが起こっても必ず近い距離間でボールに対して守備に切り替えられるのと前向きにアプローチ出来るという利点があります。

ここでもパスカットからつなごうとしたユーベの1本目のパスをモドリッチが前向きにインターセプトし、ショートカウンターからまたもやロナウドで勝負有り。
(地味にここでもベンゼマがファーに流れてDFを釣っている)


勝負どころを見逃さずに一気に畳み掛けたマドリーはその後も手を緩ませず、ユーベの切り札として投入されたクアドラードが早々にイエロー1枚をもらったと見るや2枚目を誘ってピッチから追い出す徹底振り。

更にユーベに心身共に疲れが出たと見るやスピードスターのベイル、アセンシオ、モラタを立て続けに投入してトドメのトドメまで忘れない。

このディフェンディングチャンピオンでありながら、マドリーが最も勝ちに対して貪欲な姿勢を見せていたというのが今季の決め手の一つだったのではないでしょうか。



<マドリーの黄金期到来なのか?>
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遂に成し遂げられたCLの連覇。
国内リーグも含めて今季の成績を見ればマドリーの黄金期到来とも思えるが、彼らの強さをどうみるべきだろうか。

戦術的な観点で見ればジダンは何一つ特別な事はやっていない。
彼の勝利の方程式は明確で「最高の選手達が最高の状態でプレーすれば負けるはずがない」というシンプルなもの。
徹底したローテーションで天才達の磨耗を防ぎ、シーズン最後のこの試合でも「最高のプレー」を発揮させました。

一見、戦術的にも「隙」が多いのだが、それが見方を変えると選手に託した「余白」にもなっており
試合展開次第でどうにでも出られる戦い方の幅が気付いたら最後に逆転している不思議な勝ち方につながっている。


「策」で挑む挑戦者としては現在、世界でも最高峰のアッレグリを持ってしてもこの完敗劇。
だが続投を決めたこの男は同じ相手に二度は負けないのが真骨頂だ。今からリベンジの秘策を練ってくるに違いない。

そして・・・来季は「策」で挑む手強い挑戦者達が欧州の舞台に帰ってくる。
コンテ、クロップ、モウリーニョに加えてラングニックの息がかかるライプツィヒや新時代の旗手ナーゲルスマンなどいずれも曲者揃い。


マドリーの黄金期が続くのか、はたまた群雄割拠の新時代が始まるのか-







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ジダンはいてもマケレレ不在? ~ドルトムント×Rマドリー~

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<ジダンはいてもマケレレ不在? ~ドルトムント×Rマドリー~

今回は「何か毎年やってんなお前ら」という顔合わせになったドルトムント×Rマドリーのカードをレビューしていきたいと思います。
ジダンの真価が問われる2年目のマドリーと昨年途中で路線変更したトゥヘルのサッカーが今季どうなっていくのかに注目してみましょう。

では両チームのスタメンから↓
レアルドルスタメン0930

今季のレアルは大型補強無し。
なんだかタレントの質はゴテゴテ派手だけど戦力の厚みが物足りない、いつぞやの銀河系みたいな戦力バランスになってきたマドリー。
これも一つのクラブ哲学なのか。

しかし気が付けば「代えの利かない駒」になっていたカゼミーロが離脱して以降、目下成績は下降気味。
マケレレがいなくなると勝てなくなるのも過去の歴史が証明しています。

ジダンはカゼミーロがいる時はアンカーを置いた4-3-3がメインでしたがこの試合ではアンカーの適任者がいないという事でモドリッチとクロースの2ボランチで急場を凌ごうという算段か。

ハメスロドリゲスには現役時代の自分同様ある程度の自由を与えて前線はもちろんBBC。
中盤より前が全員攻撃に持ち味を発揮する駒という布陣はジダンの哲学というよりは現状のイビツなメンバー編成の表れと見るべきでしょう。


一方のドルトムントは4-1-4-1。
今季のチームは司令塔ギュンドアンが抜けたものの新戦力の補強もあり中盤の厚みが増しています。

特に2列目は復帰したゲッツェ、昨季よりトゥヘルの信頼も厚い万能型カストロ、開幕からブレイク中のドリブラーデンベレ、実力は間違い無しのシュールレ、「秘密兵器」として途方もないポテンシャルを感じさせる天才プリシッチ、誰なんだお前はエムレ・モル、そして我らが香川という多種多様な顔ぶれ。

この中からその日のコンディション、対戦相手、ゲームプランを考慮してトゥヘルがベストの組み合わせを送り出す激しいレギュラー争いはチームとしてはプラスですが香川からするとかなり苦しい立場に追い込まれています。
レアル相手に攻撃3:守備7のゲームプランが予想されるこの試合で香川がベンチ外というのはある意味順当な結果でしょう。





191388.jpg
<ディアゴナーレの喪失>

試合の展開を決める権限は主にレアル側のジダンにある訳ですが
ジダンのサッカー観は極めてオーソドックスで何か戦術的に仕掛ける引き出しはなく
良く言えば「自由」、悪く言えば「選手次第」の代物です。

実際の試合では序盤こそドルトムントのビルドアップに対して前から行く姿勢を見せていましたが
トゥヘル指揮下でポゼッションも強化しているドルトムントがGKを使ってレアルの中途半端な前プレをいなすと
ジダンは無理に深追いする事なくアッサリと自陣でのリトリート守備を選択。

伝家の宝刀カウンターを持っているレアルがリトリートを選択するのは悪手ではないですが
問題はこの日のメンバーでブロックを敷いた際、どういう事が起きるかというところです。


【両チームの噛み合わせとレアルの戦術的な問題】
レアルシステム0930

まず最前線ではドルトムントの2CBに対してベンゼマが1対2の数的不利の状態からスタートします。
ハメスはふわっと「ヴァイグルを見とけ」ぐらいは言われていたのかもしれませんが攻撃時に自由にポジションを取っている為、油断すると外しているレベルの曖昧なマンマーク。

ジダンとすれば4-4-1-1で守りたかったのかもしれませんが両ワイドのベイルとロナウドは守備時全然絞ってこないので実際は4-2で守る事になります。

しかも2ボランチのモドリッチ、クロースも守備時のチャレンジ&カバーでディアゴナーレのポジショニングが取れないので2人の間を通すパスがバイタルに入れ放題の惨状。

では実際の試合からレアルの守備組織を検証していきましょう。


【ロナウド、ベイルの絞らない両ワイド】
ボラ脇0930-1

局面は左から右へ攻めるドルトムントの攻撃を自陣で守るレアルの図

ボールが自陣まで運ばれているにも関わらずロナウド、ベイルの両SHは全く中央に絞る素振りも見せていないのでボランチの両脇はガラガラです。



ボラ脇0930-2]

従って序盤からこのスペースでドルのSHに自由にボールを受けられる場面が頻出



ボラ脇0930-3

ドリブラーのデンベレに前を向いて仕掛けるスペースを与えてからボランチのモドリッチに1対1で止めて来いと言われても・・・




ボラ脇0930-4

アッサリはずされてシュートまで持ち込まれています


続いては自陣でブロックを敷く守備を検証

【マドリーのブロック形成】
レアルブロック守備0930-1
局面はマドリーが自陣で4-4-2の3ラインらしきブロックを形成してる守備の場面

ファーストラインはベンゼマとハメスの2枚ですが2人が並列なので中央の「門」をドルのCBに簡単に通されてアンカーのヴァイグルへ



レアルブロック守備0930-2

ヴァイグルにノープレッシャーでボールを運ばれて・・・




レアルブロック守備0930-3

引いてきたゲッツェに簡単にバイタルで前を向かれてしまってます。


これだけタテパスがポンポン入る原因は守備時のチャレンジ&カバーでカバー役の選手がいわゆるディアゴナーレ(ナナメ後ろのポジション)を取れていないからです。
一言でいえばジダンのレアルには「ディアゴナーレ」の文化が喪失しています。


【ディアゴナーレの喪失】
SBディゴナ0930-1

↑通常このようにボランチのモドリッチがボールにチャレンジしたら隣のSBカルバハルはナナメ後ろのポジションを取ってカバーに入らないといけません




SBディゴナ0930-2

何故ならこのように2人同時に前に出て「チャレンジ&チャレンジ」になってしまうと2人の間をタテパスで簡単に通されてしまうからですね



SBディゴナ0930-3
アッーーーー!!!


ディアゴナーレの最も基本的な関係はダブルボランチのペアが分かりやすいでしょう。
1人がボールにチャレンジしたらもう片方はカバーに入ってバイタルにタテパスを入れさせないという基本的なグループ戦術ですね。

ではモドリッチとクロースの2ボランチの守備を実際の試合から見てみましょう。


【モドリッチ&クロースの守備】
Sラモス迎撃0930-1
清々しいほどにど真ん中空いてるんだよね・・・

モドリッチとクロースのペアは守備時、お互いの動きとか一切見ていないから単体で動いてるし、簡単に並列になっちゃうんで



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Sラモス迎撃0930-2
ラモス『誰がガバガバだって・・・?』







Sラモス迎撃0930-3
出たー!対メッシ封じでお馴染みの迎撃インターセプト!




普通、そっからCBが出てきて間に合っちゃうのかよ・・・!!










numa.jpeg

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そうなんですよねー。
ジダンマドリーの守備は前がどんだけガバガバでも結局最後のところでSラモスとヴァランの個人能力で何とかしてしまうから凶悪なんですよ。


ただ、この2バックに全投げ守備はかなりリスキーな代物。
それはもうCBの迎撃が失敗したら即アウトっていう綱渡りの守備を90分やるんかい、っていう事なんで↓


【迎撃守備が失敗した場合】
迎撃失敗0930-1

ここでもロナウドが全く絞ってこないからボランチ脇のバイタルはCBのSラモスがカバーするしかない



迎撃失敗0930-2

しかしカストロにそれを見越されてワンタッチでラモスの背後に流される・・・と。

まあ、CBがボランチも兼任してるようなイビツなシステムが現代サッカーで通用するはずが無いですよね。





bitraminc.jpg
<マドリーに欠けていたビタミン"C">

要はベンチにジダンはいるけどピッチにマケレレがいないぞ、って事なんです。

勿論今のマドリーに欠けているのはビタミン"C"(asemiro)で、カゼミーロがいる場合の守備と比較するとそれは鮮明になってきます。


【比較検証:カゼミーロがアンカーにいる守備ブロック】
カゼミロ0930-1

こちらは今季のリーガエスパニョーラ第2節のマドリーから。カゼミーロがアンカーにいる守備を見ていきましょう。

今、まさにバイタルにタテパスが打ち込まれようとしている場面です。



カゼミロ0930-2

カゼミーロはバイタルをケアする意識が高いので真っ先にカバーに向かいます。
寄せられた相手は一旦パスでボールを逃がすしかありません。



カゼミロ0930-3

カゼミーロは続けてボールに対し常に中央へのコースを消すポジションを取るので相手からするとタテパスが出せません




カゼミロ0930-4

するとこのように相手の攻撃ルートが外へ、外へ流れていく訳ですね。
この守備だとSラモスの迎撃の出番が少なくて済むので一部の変態からは物足りないかもしれませんが(笑)



続いてカゼミーロのディアゴナーレを検証。

カゼミロディアゴナーレ0930-1

局面はボールに対しモドリッチがアプローチする時のカゼミーロの動きが重要になる場面





カゼミロディアゴナーレ0930-2
これがディアゴナーレの基本

1人が出たら1人がカバー
このポジショニングをとられると守備に角度が付いてタテパスが入れられなくなります。

実際にこの場面でも横パスを選択させていますね





カゼミロディアゴナーレ0930-3

どうですか?ドルトムント戦と比較して明らかにCBの出番少なくないですか?
相手の攻撃がタテではなく横に横にと誘導されてるのがよく分かりますよね。


だから問題はカゼミーロがいない事・・・では無い


この基本的な守備をチームに仕込めないジダンの手腕が問題なんです。
アッレグリだったらピルロが抜けようがポグバが抜けようが「3センターに求める動き」自体は変わらないので
必ず時間をかけて戦術的な動きは仕上げてくるはずなんですよ。

勿論、その上でボールを奪い切る守備力だったりとか足の速さの問題で守備範囲とかは誤差が出てくると思いますが
現在のマドリーのように「3ラインが作れない」「ディアゴナーレが喪失している」「カゼミーロがいないと即崩壊」みたいな事にはならないと断言出来ます。




e6f6d0bb.jpg
<ドルトムントの組織的なボール狩り>

一方のドルトムントですがクロップ仕込みのGプレスをトゥヘルが少しマイルドにしてはいますが
一度チームに染み付いた「ボール狩り」は健在です。


Gプレス◎0930-1

ドルトムントの守備の特徴・・・というか、そこから派生したインテンシティ強化の流れで現在はどのチームでもベーシックに装備されているものですが、ボールを奪われた瞬間にその肝があります。

↑の場面はゲッツェからデンベレへのタテパスが奪われる瞬間ですが、ここからボール狩りが始まります





Gプレス◎0930-2

まずはパスを出した張本人のゲッツェがすぐに切り替えてファーストプレス







Gプレス◎0930-3

クロースの進路を横にして時間を稼いでいる間に前線からのプレスバックで一気に包囲網を作ります





Gプレス◎0930-4

クロースはたまらずロナウドへバックパス
ボールは奪いきれなくてもタテパスを出させていないところが重要です
(ヴァイグルがタテパスのコースを切っている)





Gプレス◎0930-6

ロナウドの進路も横にしてドリブルさせるとセカンドディフェンスとしてヴァイグルがボールにアプローチ
ここも横パスにさせるとサードディフェンスとしてゲレイロがGO!

ボールを失ってから相手の攻撃進路を全て横パス、バックパスにさせているのでドルトムントの守備が前向きの矢印でアプローチ出来ているのが分かるかと思います。

このように守っている方が攻撃的に、攻めている(ボールを持っている)方が守備的にならざるを得ない状況に持って行くのが現代サッカーの守備で、ハリルが広義に「デュエルが足りない」と言っているのも、そもそもの守備文化が違うという意味も含まれているのではないかと。





Gプレス◎0930-7

ゲレイロの前向きのアプローチによってパスコースが限定されているので後ろのDFが確信を持ってインターセプトを狙える状況




Gプレス◎0930-8

受け手が少しでも時間をかけたら一気にプレスバックで包囲!


どうです?守備の質量、つまりインテンシティがジダンのマドリーとは段違いだと思いませんか?



と・こ・ろ・が

これで先に失点するのがドルトムント、というのがフットボールの面白いところでね。


【マドリーの先制点を検証】
Gプレ剥がす先制0930-1

局面はドルトムントのクロスが跳ね返されてマドリー陣内深くでこぼれ球を拾われる瞬間。
ドルトムントはすぐに切り替えてこのボールにアプローチしたのでマドリーはバックパスを選択





Gプレ剥がす先制0930-2

下げられたボールをドルのセカンドアプローチより早くモドリッチが得意のアウトサイドキックで前線へ





Gプレ剥がす先制0930-3

正確なパスがベンゼマへ届くとドルはCBとSBが2枚がかりでアプローチ

ここで奪いきれないと・・・・







Gプレ剥がす先制0930-4
一気に数的不利の大ピンチ!

前に人数をかけている分、剥がされると後ろが薄いというリスクがこの守備にはあります。
それにしてもドルのプレスを丁寧に剥がしていく過程でマドリーに技術的なミスが1つも無いのは脅威的ですね。
これがタレントを揃えているチームの強みでしょう




Gプレ剥がす先制0930-5

得点の流れを振り返ると自陣からモドリッチ⇒ベンゼマ⇒クロース⇒ハメス⇒ベイル⇒ロナウドとつないでゴール。

中盤より前に配置した銀河系が仕事をして生まれた得点を見れば守備のマイナス面と相殺して強引にプラスに持って行くのがこのマドリーというチームの勝ちパターンである事が分かる事でしょう。


結局試合はこの後お互いにセットプレーから1点づつを取り合って2-1、マドリーの1点リードで終盤へ




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<トゥヘルは香川を必要としていないのか?>

トゥヘルのドルトムントはボールを失った瞬間のボール狩りと、それで取りきれなかった場合のリトリートを上手く使い分けて安定感のあるチームに仕上げていました。

勿論、先制点の場面のようにパーフェクトな個の技術で連続して剥がされたら厳しいですが、そういうチームは世界でもそうそういないのでブンデスでは安定した成績が出せるはずです。
マドリーと違ってロナウドやハメスがいない事がドルトムントの強みと言えるでしょう。


となると現在のドルトムントで求められている一定水準の守備力・・・特に守備戦術の理解力において香川がレギュラー争いで苦戦しているのは先のW杯で日本代表を見ていた我々には合点がいく事でもあります。

この試合でも中盤で最も守備の穴になっていたゲッツェが後半真っ先に下げられていたのは象徴的でもありました。


ただ一方で攻撃面ではドルトムントに決め手がなく試合が膠着しています。
現在のゲッツェは以前のような間受けのキレがなくブロックの外まで降りてきてボールをはたいた後の「次の仕事」にとりかかれない香川と同じ症状を発症中。

唯一変化をつけられるのはデンベレのドリブルぐらいですが、まだまだ荒削りでおしいところまではいくものの決定的な仕事に結び付きません。


特に試合を見ていてもどかしかったのはこういうシーンです↓

間受け出来ない0930-1

そう、カゼミーロがいないこの日のレアルならバイタルにパスは入れ放題なんですよ!




間受け出来ない0930-2

いやーそっちにトラップしちゃうかー!

身体の向きとファーストタッチがねー、でもカストロはその仕事が本職じゃないし他で色々頑張ってるからなー・・・



こういうザル守備が相手の時こそ・・・・












kagawashinji20160229-thumb-500x344-120200.jpg
日本が誇る"間受け職人"がいたら面白くないですか?


実際、香川がこの分厚い選手層の中でレギュラー争いに食い込むとしたら苦手な守備の改善ではなく
得意の「間受け」で全盛期のキレを取り戻し、トゥヘルに有無を言わせないパフォーマンスで示すしかないと思うんですよね。

だってこのチーム、明らかに中央で変化を付けられる選手が不足してるもの。




そんな事は当然分かっとるわ!と言わんばかりにトゥヘルも1点ビハインドで迎えた後半70分過ぎに
シュールレとプリシッチというサイドアタッカーを一挙の投入。外⇒外でマドリーのザルディフェンスを揺さぶりに来ました。

この狙いがピタリと的中したドルトムントの同点ゴールを見ていきましょう。


【ドルトムントの同点ゴール】
ドル2点目0930-1

局面は右から左へ攻めるドルトムント。
早速サイドのプリシッチに振ると対応するのはダニーロ




ドル2点目0930-2

不用意に飛び込んだダニーロをファーストタッチで中に外すプリシッチ。
(才能を感じさせる18歳や!)






ドル2点目0930-3

中に外された上に転倒して置いていかれるダニーロ
(マドリディスタ「抜かれるにしてもせめて中を切って外に行かせろや!」)






ドル2点目0930-4

とは言え中はまだ2対2
カルバハルが大外シュールレの存在を首を振って認識していれば守り切れるはず・・・・






ドル2点目0930-5
ボールに釣られてしまったかーー!!







ドル2点目0930-6
やっぱこうなるよね


トゥヘルからすれば交代で入れたプリシッチの突破⇒クロスからこれまた交代で入れた大外のシュールレが決めるというしてやったりの勝ち点1

お見事。






pcimage.jpg
<足し算で作るチームの限界>

どちらかと言うと勝ちに等しいドローだったドルトムント。
前線の層の薄さはオーバメヤンが怪我したらどうするの?とは思うが面白そうな若手もいるのでまたブレイクさせてあのクラブに強奪されていく事でしょう。
(これがブンデスの食物連鎖)

香川、ゲッツェというブンデス屈指の「間受け職人」がいながら、両者が全盛期のキレを完全に失っているせいで中央の攻撃ルートが死んでいるのは勿体無い限りですがロイスの復帰とこの2人の復活があれば赤い巨人を食うポテンシャルはあると見ます。



一方、ジダンの限界・・・というか予想通りの展開になっているのがレアル。

勿論カゼミーロが復帰すればある程度チームのパフォーマンスは安定するでしょうが
未だに「マケレレショック」の二の舞をジダンを監督に据えてこのクラブは繰り返しているのか・・・というのが本音のところ。

世界中から超一流のパーツを買い漁って、それぞれの長所と短所を補完関係で埋め合わせる足し算のチームは
素材の総和以上の力は絶対に生み出せない上に1つでもパーツが欠けると戦術でカバーが利かない脆さが同居しています。

アッレグリやコンテのように素材ではなく「調理」でチームを一定のレベルに保てる料理人か
ペップやビエルサのように足し算ではなく「かけ算」の選手起用で新たな化学反応を引き起こす哲学者を指揮官に据えない限り、
「カゼミーロ欠乏症」は何度でも繰り返されるだろう。








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ボールを捨ててCUPをとった決勝戦 ~Rマドリー×Aマドリー~

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<ボールを捨ててCUPをとった決勝戦 ~Rマドリー×Aマドリー~

CL決勝の激闘からはや1週間-

世間ではやれEUROだコパだキリンカップだ平愛梨だとすでに次の話題に興味は移りつつあるが、
15-16シーズンの総決算であり象徴とも言えるこの試合を語らずして現代サッカーの"今"は見えてこないだろう。

そこで今回はこの決勝戦を時間軸に沿って徹底的に検証する事で
両チームの狙いと勝敗の分れ目、そして来季以降の現代サッカーの未来像まで探っていきたいと思う。

そうさ、僕らにゃフットボールがあるじゃないか!

アモーレ・フットボール!


<革命は「持たざる者」の側から起こる>
CL決勝スタメン0604

両チームとも現状のほぼベストメンバーが顔を揃えたこの試合。

現代サッカーの「格差社会」を象徴する両者が相まみえる事となったが
格差の上に位置するマドリーやバルサは驚くべきほど似通った構成になっているのは面白い。

前線に超ド級のスーパースターを3枚並べて(MSNとBBC)、
2列目のインサイドハーフに確かな技術に加えて気の利いたプレーが出来るボールの運び屋(モドリッチ、クロース、イニエスタ、ラキティッチ)を配置
そしてアンカー(カゼミーロ、ブスケス)で守備のバランスをとらせるという構成だ。

前線の3枚から逆算したチーム作りであるし、彼らにいかに気持ち良くゴール前で仕事をしてもらうかを考えた合理的なバランスになっている。
いわば「選手が戦術」であり、もう少し身も蓋も無い言い方をしてしまえば「スターこそ戦術」なのである。

これに対抗する庶民代表の「持たざる者」側は前回の記事でも取り上げたように
最終ラインは対空兵器、中盤はハードワーカー、サイドに運び屋、最前線にカウンターマスターという
「戦術から逆算した選手配置」になっている。

これが今、「持たざる者」の側から新たな戦術トレンドが生まれる流れの背景といえよう。



<リスクを冒さない攻め筋「戦術BBC」>
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では試合の時系列に沿ってレビューを進めていきたい。


【前半0~15分】

試合の展開を決めるのは当然レアル側に決定権があるが、彼らからすると最も警戒しなければいけないのはアトレチコのカウンターである。
ボールを持っていない時のアトレチコほど警戒が必要だ。
アトレチコの守備は中に絞った4-4-2の3ラインを極限までコンパクトに保ち、中に入ってきたパスをかっさらって鬼のカウンターが発動する。

一時、ペップバルサから発生したポゼッションサッカーの流れは
4-4-2のラインとラインの「間」で受ける「間受け」が威力を発揮して4-4-2を時代遅れの産物へと追いやった・・・はずだった。

しかし攻撃側の戦術が進化すれば必ずその反動で守備戦術の発展があり、
自陣撤退の10人ブロックで「間受け」を迎撃する守備が進化すると「間受け」のリスクは増大。
今季もアトレチコが積極的にライン間を利用するペップバイエルンとバルサを打ち破って決勝まで辿り着いたのは決して偶然ではないだろう。


こういった背景を踏まえて、この試合でジダンが選んだ初手は「外⇒外」のサイド攻撃であった。
相手が中に網を張っているなら外からリスクを負わずに攻めようという魂胆である。

外⇒外0601

具体的にはビルドアップ時、CB⇒SB⇒WGへとつないであとはBBCの個の能力に任せよう・・というもの。
したがってこの時間帯はクロースやモドリッチのボールタッチがほとんどなく、まるで司令塔はマルセロとカルバハルという様相であった。

実際の試合から見てみよう。


【マドリーの外⇒外】
マドリ先制0602-1
局面は左から右へと攻めるレアルのビルドアップの場面。
試合中、ベイルとロナウドは頻繁にポジションを移していたがここではベイルが左に流れてきている。

マドリーの攻め筋は前述の通りCBのペペから⇒SBマルセロを経由してサイドに流れるBBC(ベイル)へ


マドリ先制0602-2
こんなシンプルな攻め筋でも前線の圧倒的な個人能力で何とかなってしまうのが富裕層の攻めともいえる。

したがって守るアトレチコはここでも簡単にベイルに受けさせるわけにはいかず、序盤からかなりタイトに当たっていたが、これがファウルをとられ、このFKからレアルが先制。

ニアでフリックさせる得意の形だったが、レアルとアトレチコは今、欧州で最もセットプレーが強い2チームだと個人的には思っている。
拮抗した戦いになればなるほどセットプレーが勝敗を分ける要因として大きくなっていくものだが、ここまでの勝ち上がりでも両者セットプレーが重要な役割を果たしており、そういう意味でも最後にこの2チームが勝ち残ったのは必然といえる一面はある。


<「4-4-2殺し」のインサイドハーフ落とし>

【前半15~30分】
大方の予想に反して試合は序盤から動いた。

これでシメオネは「待ち」120%の守備から、ある程度自分達からも積極的にボールを奪わなければいけないという動議が出来てしまったと言えるし、
一方のジダンは相手が取りにくるならゴールに向かわないポゼッションでもそれをいなしてやり過ごすのも悪くないという余裕が生まれている。

この両者の機微が試合展開に影響しない訳はない。
レアルは先制後、一転してポゼッションで試合のリズムを落としにかかった。

勿論主役は2人のインサイドハーフ、モドリッチとクロースである。
この2枚を4-4-2の泣き所、2トップの脇まで落としてしまう。

【2トップ脇で起点になるモドリッチ】
2トップ脇0602-1
これをされると4-4-2のアトレチコは対応が難しい。
もしボランチをそこまで出してしまうとブロックの密度が薄れるしSHは外のSBをケアしなければならないからだ。

では実際の試合からレアルがどのようにインサイドハーフを使ってアトレチコのプレスをいなし始めたのかを見ていこう。

【レアルのインサイドハーフ落とし】
2トップ脇0602-2
局面は一度深い位置まで降りてきたモドリッチがフリーでボールを受け逆サイドのマルセロへサドチェンジ


2トップ脇0602-3

マルセロからトーレスの脇まで降りてきたクロースにボール渡るとアトレチコは仕方なくボランチのガビがアプローチ


2トップ脇0602-4
・・・が、インサドハーフのクロースとモドリッチをケアすると今度はアンカーのカゼミーロが空いてしまう。

レアルはフリーのカゼミーロを経由した再び右サイドへ振って揺さぶりをかける


2トップ脇0602-5
勿論アトレチコはその度に横スライドを強いられる訳だが、この隙にモドリッチが「間受け」のポジションを取る。

「横」にスライドしている最中に「縦」の動きでライン間に入るのは人間の視野から言っても最も捕まえづらい動きと言えよう。

アトレチコは逃げるインサイドハーフを捕まえに出ている内に少しづつブロック間にスペースを空けさせられていた。
したがってこの時間帯はボールと主導権を握ったマドリーの時間帯だったと言えるだろう。


<いびつな組織を個のバランスで補うマドリー>
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【前半30~45分】
1点をリードしているレアルは守備時4-1-4-1のブロック形成を意識して序盤からベイルとロナウドの両WGも守備要員に組み込んだ守りをしていた。

しかし前半も30分を過ぎたこの時間帯から2人の守備がかなり怪しくなってくる。
プレスバックが遅れ始め、アトレチコのSBにフリーで攻め上がりを許す場面が増えてきた。

ここでジダンは発想の転換をする。
だったらいっそ「アトレチコにボールを持たせよう」
(この戦術的柔軟性はちょっとアンチェロッティっぽい)

ボールを持たないアトレチコは欧州最強だが、ボールを持たせたら欧州レベルでは並のチームである。

ここから試合はロナウドやベイルといった攻撃のスターを抱えるチームがボールを放棄し、
欧州最強のカウンターチームがボール持たされているという何ともイビツな展開になっていく。

アトレチコのボール運びはぎこちないがレアルの守備ブロックもかなり怪しい代物だ。

こうやってお互いアンマッチな状況に持っていって試合の膠着を狙うジダンの発想はカルチョっぽいとも言えるが
レアルには組織のアンバランスを個で帳尻を合わせるアトレチコにはない力技があったのも計算の内だったのではないか。


一言でいうなら・・・ボールを捨てたらカゼミーロ無双発動である。

【カゼミーロの守備を検証】
カゼミロ0602-1]
局面はアトレチコ陣内でレアルがボールを失った瞬間。
この時、最も警戒しなければいけないのはアトレチコのカウンターである。

カゼミーロはアンカーポジションから飛び出してボールの出所に急行


カゼミロ0602-2
一気に距離を詰めてタテパスのコースを塞ぎ、アトレチコの最初のパスをバックパスにしている。

これでアトレチコのカウンターはなくなった、あとは遅攻にして守るだけ


カゼミロ0602-3
カゼミーロはカウンターの芽を摘むと、すぐに自分の元いたポジションへ戻る
無論、自陣でのブロック守備に備える為だ


カゼミロ0602-4
アトレチコはSBがボールを運ぶと(この時間帯、レアルのWGの守備は全く機能していない)
ここから中へのタテパスのコースはアンカーのカゼミーロが消すセオリー通りの守備

カゼミーロはボールの移動に合わせてポジションを常に修正し、アトレチコのタテパスを消し続けていた


カゼミロ0602-5
タテパスを消して横パスを出させたら、すかさずそこにはアプローチ

ブロック内へのパスコースを消しながら隙あらばインターセプトを狙っている教科書通りのプレー


カゼミロ0602-6
結局アトレチコの遅攻はタテパスが出せずに逆サイドへ迂回。

ここからSBにクロスを上げさせる分にはペペとラモスの最凶コンビが最後は跳ね返しますよ・・・というのがジダンの「せや!ボール持たせたろ」の狙いだったのではないだろうか。

この時間帯、クロースとモドリッチの存在感が消えたら今度はカゼミーロが輝き始めるというのがレアルの強みだろう。




<シメオネの応手は「4-3-3殺し」の4-1-4-1>
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【後半45~60分】
ハーフタイム、シメオネが動いた。スーパーサブのカラスコを投入。
システムを4-4-2から4-1-4-1に変更した狙いは以下の2つだろう。

①アンカー(カゼミーロ)の両脇に出来るスペースを2シャドーで狙う
4141狙い

②WGが守備を放棄しているレアルのサイドでカラスコのドリブル突破を活かす


そして①の狙いについては後半開始早々から早くも効果覿面であった。

【カゼミーロの両脇を狙うアトレチコ】
カゼミロ脇0604-1
局面は左から右へと攻めるアトレチコ。
アンカーのカゼミーロの両脇に2シャドーが明らかに狙って位置している。

そして1アンカーのガビをマドリーは捕まえられない。


カゼミロ脇0604-2
これで何が起きるかと言うとあっさりバイタルに通されてシュートまで持っていかれてしまうって事。

今度はシメオネが個の力でバランスを取っているマドリーの守備を組織で崩してきた。
そしてこの狙いが後半開始1分に功を奏す。


【シメオネの応手】
PK0604-1
局面はマドリー陣内深い位置からのアトレチコのスローインからの流れ
マルセロが奪い返したボールを渡したロナウドのドリブルが大きくなりボールを失う


PK0604-2
ロナウド傍観!

自分が取られたボールだってのに、まるでどこぞの都知事みたいな開き直りっぷりが清々しいゼ・・・!

ま、結果的にはこの守備放棄が響くんだけどね。



PK0604-3
ガビにボールを運ばれるとアンカーのカゼミーロがボールサイドにスライドして対応。

しかしマドリーは守備の出発点で失ったロナウドが戦線離脱しているのでボールホルダーのガビにはクロースが出ていかされている。
という事は元々クロースが見るはずだったシャドーのコケがフリーになっており、カゼミーロは1対2の対応を強いられてしまう事に。


PK0604-4
数的不利ではさすがのカゼミーロも厳しい。

ここを突破されるとレアルのバイタルエリアはスライドしてきたモドリッチ1枚で対応しなければならない。

これはアカンな・・・。

そう確信した瞬間にグリーズマンからモドリッチの股を通すクサビがトーレスに通ってPK獲得。

さすが王子!
これまで45分間消えていたのはこの為の布石だったのか・・!!

このようにシメオネの応手がビタッとハマって得たPKだけにグリーズマンの失敗は痛恨や・・・。OTL


<後半60~75分>
次に2つ目の狙いである「②WGが守備を放棄しているレアルのサイドでカラスコのドリブル突破を活かす」で攻め筋を探すアトレチコ。

だが、こちらの狙いについては思った通り機能しなかった。

何故だろうか?
実際の試合から検証してみよう。

【機能しなかった左サイドのカラスコ】
アトレ左サイド後半1
アトレチコの左SBは幅をとってサイドを上下動する事に長けたFルイス。
この試合でもマドリーのWGが守備をしない隙を狙って完全にボール運びの役割を担っていた。


アトレ左サイド後半2
しかしマドリーのサイドが無人の高速道路と化している事でSBがボールを運ぶと
本来ワイドに張ってドリブル突破を図りたいカラスコが中に入ってスペースを空ける役割になってしまう。

これではドリブラーのカラスコを入れた意味がない。

かと言ってカラスコを無理にワイドに張らすと・・・


アトレ左サイド後半3
今度は左サイドが渋滞してしまう
(同点弾を決める直前で途中投入のカラスコを下げようとシメオネが準備していたのはこの為だろう)


むしろこれなら前半のコケとFルイスのコンビの方が左サイドは機能していた。


【アトレチコの左サイド(前半)】
アトレ左サイド前半1
前半、左SHに入っていたコケは度々中に入り込む動きでSBのカルバハルを引っ張っていた。


アトレ左サイド前半2
こうする事で大外のSB(Fルイス)がフリーでクロスまで上げられるというシンプルな構造が機能していたのだ。


ならば後半のアトレチコの左サイドはどうすればよかったのか?
SHをワイドに張らせたいのではれば原則同ラインにSBがいると攻撃は機能しない。
(言い換えれば守備側が守りやすい状況を自ら作っている事になる)

なのでペップバイエルンにおけるラームやアラバのようのSBがある程度インサイドのポジションから運んでSHに幅を取らせるべきであった。

シメオネはトレードマークの4-4-2の他にオプションとして4-1-4-1の完成度も数年前から高めているが、まだまだ遅攻の部分では未完成に思える。

このアトレチコの攻撃がチグハグしていた時間帯にジダンが動く。
運動量に陰りが見え始めていたクロースに代えてイスコ、サイドの守備を固める為のルーカス・バスケスを投入。
ロナウドをCFにして残りの20分を逃げ切る作戦に出た。


しかしサッカーとは分からないもので、アトレチコが当初狙いとしていた左サイドが機能しない事で右に振ってみたら一発で同点ゴールが生まれてしまった。

ザルセロの軽い守備から裏を取られてクロスを許すとカラスコが逆サイドから飛び込んだ。
当初の狙いとは逆のサイドからではあったがシメオネの4-1-4-1にした狙いは活きたと見る。


【後半75~90分】
同点に追いついたシメオネのこの後の決断が勝負の分れ目となった。

このまま4-1-4-1で逆転を狙うのか、それとも4-4-2に戻して当初の一からのプランに戻すのか-

同点には追いつけたものの、後半4-1-4-1にしてからのアトレチコの守備はかなり危うい場面を作られていた。
ガビの1アンカーではマドリーのカウンターに対する防波堤としては不十分で、むしろマドリーの追加点の方が早いのではないかという流れだったので
シメオネの4-4-2に戻す決断は到って全うなものだったと思う。

試合はラスト15分に到ってようやく4-4-2で守りを固めるアトレチコの守備を
マドリーが技術でこじ開けようとする戦前に予想されていた展開に着地していく。


しかし、マドリーは既に3枚の交代カードを切っており新たな打開策はなく
自陣に10人で4-4-2を敷くアトレチコのブロックは堅牢そのもの。

後半アトレ442
何というシメナチオ!!


試合は膠着したまま90分を終えるのだった。



<敗者なき決着が示す現代サッカーの"今"とは>
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結果的に30分の延長戦は蛇足に過ぎなかった。
90分の激闘で既に気力、体力を使い果たしていた両チームはリスクを負って勝ちに出られる状態ではなく、サッカーにならなかった。

延長突入の時点で見れば交代枠を残しているシメオネに分があるかと思われたが
途中から入ってきた選手のパフォーマンスを見るにカラスコ以外、このレベルの試合で信頼に足りる手持ちのカードがシメオネには無かったと見る。

公式記録は引き分けであり、PK戦はあくまで決着を決める為の手段でしかないが
この戦力で120分間ドローに持ち込んだシメオネとアトレチコの奮闘は称えられてしかるべきだろう。


さて、この決着が指し示す現代サッカーの"今"とは何だろうか?
120分戦って勝者無し、つまり決着は持ち越されたというのが今季の結論だろうと個人的には思っている。


ジダンやルイスエンリケは戦術的には何ら革新的なものは生み出してはいない。
彼らに言わせれば「選手こそが戦術」であり、攻守のバランスが明らかに偏っていたチームに
カゼミーロというバランサーを置いただけでレアルは蘇った。

ジダンは魔法を使ったわけではなく、欠けていた最低限の約束事と自由を与えたに過ぎないが
レアルのようなクラブに欠けていたのはまさしくそれだったのだ。

ペップバイエルンも最終的には両ワイドからの外攻めを中心にした「選手ありき」の戦術に落ち着いた。
まさかペップのサッカーでゲッツェが干されるような事態になるとは予想外だったが、そういった事が起こるのもまたサッカーの魅力だろう。


数年に渡って優勢だったポゼッションと攻撃サッカーの時代に対する反動から
ここ3年はその年最高のカウンターを持ったチームがCLで勝ち上がっており(BBC⇒MSN⇒BBC)
今季はレスターのプレミアリーグ優勝も含めて「持たざるクラブ」達がその流れに追いついてきたシーズンと言えよう。


多くのクラブで監督のサイクルが一回りした来季、果たして新たな潮流は生まれるのだろうか


ペップ、モウリーニョ、クロップ、コンテらが集うあのリーグが何を見せてくれるだろうか?


ああ・・・もう既に来季が待ち遠しい。




アモーレ・フットボール。








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苦悩するユベントス ポグバの憂鬱 ~マンチェスターシティ×ユベントス~

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<苦悩するユベントス ポグバの憂鬱>
~マンチェスターシティ×ユベントス~


前回、予告みたいな終わり方しといてなんですが、CL第1節はやはりこのカードでしょう(笑)

好調シティが開幕未勝利のユベントスをホームに迎えた一戦。
僕の記憶が確かならばユーベって昨季の準優勝チームだったと思うんですが戦前の予想は圧倒的なシティ優位。
ベスト8を超えた事がないチーム相手に何故かユーベがチャレンジャーという構図が現在の両チームをよく現してました。

今日はこの試合を検証しつつ、ユーベ不調の原因にも迫っていきたいと思います。


<新可変式システム 4-5-2>
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まずはさり気に早くも今季2回目の登場となるシティから。
チェルシーを圧倒した布陣をベースにこの日は直前のリーグ戦で負傷交代していたアグエロをベンチに温存させてボニーが先発。

ペジェグリーニの本音を探れば怪我4割、温存6割といったところじゃないでしょうか。
ユーベ相手に温存とはなめられたものですが、戦前の空気ではユーベに格下感すら漂っていたのでそれも影響したか。
だって・・・・多分、相手がバルサだったらアグエロ先発させてたでしょ?ぶっちゃけ(笑)


一方のユーベは決勝でバルサと激闘を演じたチームからピルロ、ビダル、テベスといったキーマンが抜け、マルキージオも怪我で離脱中。
マルキージオはピルロの後釜として今季はアンカーに据える構想だったんでしょうが、急遽エルナネスを獲得してその穴埋めをしています。

昨年もノーマークだったユーベがCLで決勝まで上ってこれたのはタレントの弱さを可変式システムなどの戦術面でカバーしてきたからこそでした。
4-3-1-2(4-3-3)と4-4-2のいいとこ取りを実現したシステムは言わば「4-4-3」でユーベは相手に対し「+1」の状態を擬似的に作り出していたのです。

ところがその可変式のキーマンであったビダルが移籍。
これで今季はアッレグリも可変式を断念せざるを得ないだろう・・・と思っていたのですが、
この試合ではモラタを攻撃時には2トップに据えた4-4-2、守備時には左SHに下げた4-5-1という可変式をぶっ込んできました。

すわなちこの日のユーベは「4-5-2」システム。

【ユーベの4-5-2】
可変モラタ1

局面はシティのビルドアップに対するユーベの守備です。
スタートはマンジュキッチとモラタが2トップ気味なんですが・・・


可変モラタ2

そこからSBまで展開されるとこれに付いて行くのはモラタ。
全体がスライドして4-5-1に変化します。

思うにこれはCL決勝のバルサ戦で4-3-1-2だと相手のSBをフリーにしてしまうという反省を経て
アッレグリが今季新たに「欧州用」として用意してた秘策なのかもしれませんね。
ただ、そのキーマンとして本来得点源になってもらいたいはずのモラタに大きな守備の負担がかかるので、これはかなり諸刃の剣にも思えますが・・・。

(ビダルみたいなチートはなかなかおらんよ(^^;)


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<覚醒したボールハンター>

現在、シティの好調を支える最大のキーマンはボランチのフェルナンジーニョだと思っています。
守備時4-4-2の3ラインで守るシティの中盤はヤヤトゥーレが攻撃7割で考えている選手だという事を加味すると
実質フェルナンジーニョ1人でバランスを保っている状態です。

この試合でも中盤に3センターを配置しているユーベの方に数的優位はあったはずなんですがピッチの上ではそれが顕在化される事はありませんでした。


【中盤の番人】
フェルナン0927-1

局面は右から左へ攻めるユーベのビルドアップで3センターの利点を活かし、DFラインからストゥラーロへつなぐところ


フェルナン0927-2

シティの中盤は基本、DFライン手前でフェルナンジーニョがバイタルをケアしているんですが
相手の中盤に低い位置でもボールが入れば一気に飛び出して捕まえに行くスピードが尋常じゃありません


フェルナン0927-3

ストゥラーロがコントロールして前を向こうという頃には自陣バイタルから飛び出してきたフェルナンジーニョの餌食になってます。
仮にユーベが中盤を飛ばしたボールを入れた場合でも、フェルナンジーニョはプレスバックでボールに絡めるので
およそ5~60メートルの縦幅を1人で守備範囲にしているチートなボランチと言えるでしょう。

とにかくユーベはまずこの中盤の番人を攻略しない限り攻め手がありません。


2フェルナン0972-1

すると今度は「お前ら雑魚どもには任せちゃおけねえ!」って事で血気盛んなユーベの王様ポグバが猛然とドリブルで仕掛けていきます。
まずは軽くヤヤトゥーレを置去りに


2フェルナン0972-2
ポグバ「どけどけ!雑魚ども!」




2フェルナン0972-3
団長『・・・・若い』

セリエAでは天下無双のポグバをもってしても子ども扱いか・・・(ゴクリ)


となればこういう時は必殺ピルロシフト『アンカー飛ばし』の出番だ。

フェルナン(ピルロローテ)1

シティの2トップに対して2CB+アンカーの3対2を作るユーベ
(去年まではエルナネスのとこにピルロがいた)


フェルナン(ピルロローテ)2

アンカーのエルナネスが相手の2トップを動かして片方のCBをフリーにするお馴染みのやつ。
アッレグリが新加入のエルナネスにも仕込んでおります。


フェルナン(ピルロローテ)3

そして空いたCBから中盤を一つ飛ばしてFWへ長いクサビを打つ・・・これぞユーベの前プレ対策「アンカー飛ばし」や!



フェルナン(ピルロローテ)4
フェルナン団長『その攻め筋は読んでいる』


もはやどこでも出てくるな!

昨年までであれば、ここでクサビを受ける役目はテベスだったんで鬼キープから反転してゴリブル・・・という流れもあったんでしょうが今季はモラタですからねー。

とにかく今のフェルナンジーニョは個でボールを狩らせたら世界ナンバー1かもしれません。
この背後にコンパニ兵長が控えているシティのCB~CHのエリアは強固そのものです。


<両チームが抱える諸刃の剣>

なかなか攻め手の見つからないユーベは外⇒外からのクロス攻撃に望みを託します。
右に張らせたクアドラードからのクロスですが、この時ばかりは左SHのモラタがゴール前でマンジュキッチと2トップになる選手配置になっていますので予めアッレグリが用意していた攻め筋と見て間違いないでしょう。

もしかすると現有戦力でシティ相手に攻め筋が「戦術クアドラード」になる事態も想定していたのかもしれません。


【ユーベの戦術クアドラード】
ユーベはアーリー1

局面はなかなかシティの守備ブロックの懐に入れないユーベ。
モラタからクアドラードへバイタル侵入を促す横パス



ユーベはアーリー2
残念、そこはフェルナンジーニョ


ユーベはアーリー3

中を閉められてしまったのでこぼれ球を拾って外へ展開
ただフラットな横パスだとDFも背後から強気にアプローチ出来るので・・・


ユーベはアーリー4

結局下げるハメに


ユーベはアーリー

・・・で、ここからゴール前のマンジュキッチとモラタに放り込むだけのお仕事ですってのがユーベ唯一の攻め筋となっていました。


では、一方のシティの攻め筋はどうか?
こちらは戦力充にものを言わせた多彩さを見せます。

それもユーベの戦術的ウィークポイントを狙って。


【シティの外⇒中⇒外】
クアド絞り0927-1

局面は左から右へ攻めるシティに対するユーベの守り
中盤に5枚フラットに並んでその前にマンジュキッチ。全体を自陣に撤退させたリトリート守備がこの日の基本線。


クアド絞り0927-2

シルバにボールが渡ったところでセンターからポグバがアプローチ
すかさず外のモラタが中に絞ってカバーリングのポジションをとります(ディアゴナーレ)

ところが逆サイのクアドラードは大外に張ったままなのでスターリングの前にスペースが・・・
(ゾーンで守るならスターリングをケアして大外を捨てるのが基本)


クアド絞り0927-3

シティはまんまとこのスペースを使って外⇒外ではなく外⇒中へクサビを打ち込める寸法です。


・・・そうなんです。

攻撃ではユーベ唯一の攻め筋になっていたクアドラードも守備に回ると一転してウィークポイントになってしまうのがサッカーの面白いところ。
クアドラードは格下がほぼ約束されている国内のゲームなら「単騎無双」も可能ですが、
シティのようにボールを持たれるレベルの相手だとメリットよりもデメリットの方が目立ってしまうリスクが大きい駒でもあります。

ハッキリ言って「こまけぇこたぁいいから、外に張っとけ!」
これ以上の指示を与えるのは彼の戦術メモリーからいっても容量オーバーになってしまいます(笑)

しかしシティはそこを容赦なく突くのでした。


シティはえぐる1
↑これもボールを持ったシルバにエルナネスがアプローチに行っている場面ですが
クアドラードが中を閉めないとスターリングにカットインされながらボールを受けられてしまいます。
(コレ、香川も得意な受け方ね)

しかしクラドラードは背後の配置を認識した上で守備が出来る選手ではないので
この時の意識は視界の前にいる大外のSBコラロフの方に引っ張られています。


シティはえぐる2
案の定、中を通されるとクアドラードは棒立ち。

通されたスターリングにはリヒトシュタイナーが向かうしかありませんが、すると今度はSBの裏が空いてしまいますね


シティはえぐる3
ユーベと違い、シティは一度中にボールを入れられるので外⇒中⇒外の攻め筋となり、
クロスもアーリーではなく深くえぐってから角度をつけた得点率の高いものになります。


このように序盤の攻防で中を使いたい放題なのがバレると、シティの間受け職人達があからさまにクアドラードのサイドへ集結↓

シルバナスリヤヤ
シルバ&ナスリ&ヤヤ「ひゃっほーい!ヘイヘイーイ!ボールはここだぜー?」

・・・お前ら、あからさま過ぎんだろwwww


セリエAには絶対にいないレベルのタレントにこの距離感でトライアングル組まれて、ぐぬぬぬ・・・!!
そりゃ水色のベンチに座ってるのはどれもセリエAきたらエースで四番だよ!これが持たざる者との差なのか!?

僕だって間違って「イケメン」「ミュージシャン」「モテトーク」「一つ屋根の下」の四役が揃えば「吹石一恵」っていう役満あがれるはずだったのに・・・!!


試合は事前の予想通りの展開で圧倒的なシティペース。
非モテ・・・ならぬユーベも何とか凌いでいたんですが、後半頭にシティのCKをキエッリーニがドンピシャヘッドで合わせてシティが先制。
さすがのブッフォン大先生も味方のヘディングは防げませんでした。


うーむ、これでユーベ詰んだかな・・・と思いきや唐突に同点ゴールが生まれるのでした↓
今度はシティの戦術的ウィークポイントが顕在化されます。

【ユーベの同点ゴールを検証】
ユーベ1点目0927-1

局面は左から右へ攻めるユーベ。ポグバ経由でサイドのエヴラへ


ユーベ1点目0927-2

エヴラに寄せたところでポグバへのバックパス
4-4-2のゾーンで守るなら、シルバがボールサイドに寄せる場面です


ユーベ1点目0927-3

・・・が、シルバの守備なんて基本こんなもんです。やはり棒立ちです。
攻撃では誰が見てもシティのキーマンなんですが、守備だと一転して諸刃の剣なのでした。


ユーベ1点目0927-4

そして問題は中の守備もアレでして、前には滅法強いフィジカルモンスターのマンガラも背後はザルという按配。
完全にボールウォッチャーになっていてマークのマンジュキッチを見失っていました。

シルバのお陰でどフリーで中を見る時間がタップリあったポグバがそれを見逃すはずもなく、あっさりユーベ同点です。


このようにユーベ、シティ共にクアドラードとシルバという攻撃面ではある種「アナーキー」な存在が
守備でも「穴ーきー」になってるのが非常に面白い噛み合わせだなと思う次第。


<王様は並び立たず>
GettyImages-489131552-500x345.jpg

ペジェグリーニは失点から1分後に慌ててスターリングに変えてデブライネを投入。

デブライネは昨季まで文字通り「ヴォルフスブルクの王様」でした。
チームは完全に「戦術デブライネ」のキングダムサッカーで自由を与えた代わりに必ずゴールかアシストを演出するという結果で返すという選手だったのです。
(ペップのバイエルンを1人で血祭りに挙げた試合は衝撃的)

ですがこの日のピッチには既にシルバナスリという王様が2人います。
スターリングはこれでいて中から外に流れたり、また外から中に入ってきたりと2人の王様とのバランスを見て器用にポジションを取っていましたが、デブライネは基本それをしてもらう側の選手。

点が必要となったら「とにかく中盤に上手いヤツ並べとけ!」といういかにもペジェグリーニらしいテクニシャンフェチの采配がいい味出してます。
個人的には嫌いじゃないですが、機能させる為の算段とメカニズムは果たして用意されていたのでしょうか・・・?

【シルバ、ナスリ、デブライネの同時起用を検証】
シティ中盤カオス1

局面は右から左へ攻めるシティの図。
ナスリが中に入ってきてシルバが外に流れている位置関係ですが、この2人のこういうポジションチェンジと阿吽の呼吸は既にチームに培われてきたもの。

問題はこれにデブライネがどう絡むのか?という点です


シティ中盤カオス2

ボールが右サイドに展開されると左SHのデブライネは無意識にボールサイドに流れて安住の地トップ下の位置へ


シティ中盤カオス3
もらいたいゾーンが見事に3人かぶってるー!!www

ナスリ「俺が最初にいたし」 

シルバ「俺入るから流れて」 

デブライネ「俺の間受けでバイエルンにも勝ったから」

・・・うん、基本もらいたいエリアとプレービジョンが似てるんだよね、この3人(笑)
こりゃさすがにフェルナンジーニョも出せんわwww
(ペジェグリーニが何の仕込みもなしに「単に並べてみました」なのがバレたね!でもそんなとこが好きさ!)


それでいてデブライネのポジションはトップ下ではなく、あくまでSHなので当然守備もしてもらわないといけません。

デブルイ低い0927-2

↑こういう場面でもSB(コラロフ)の裏が空いたり、相手のSBが攻撃参加していく場合はその穴埋めをするのがプレミアのSHたる勤め。


デブルイ低い0927-3

いやー、あの王様デブライネがこんな低い位置までサイドの守備に駆り出されている姿は見たくなかったなー。

現代サッカーの絶滅危惧種であるトップ下の王様をよくもまあ、こんなに集めたものだと言いたいけど使うならやっぱり守備は免除しないと輝かないと思うんですけどね。


<試合は戦力勝負から采配勝負へ>
img773.jpg

ここまで戦況をじっと静観していたアッレグリ。
相手を先に動かさせて、その対応を見極めるという横綱相撲はこの日も健在。

後半30分、コンパニがアクシデントにより負傷交代。
代わりにオタメンディが入ってCBの組み合わせがマンガラとのガチムチストッパーコンビになりました。

この瞬間、アッレグリが動きます。
同点弾を決めたマンジュキッチに変えてセカンドトップが本職のディバラを投入。
前線の組み合わせを「高さ」から「機動力」へスイッチさせました。

この狙いはどこにあるかと言えば、先ほどの同点シーンのようにマンガラの食いつき癖は明らか。
そこに1・5列目のような中途半端な位置取りをするディバラを投入した訳ですね、ハイ。

【ユーベの逆転ゴールを検証】
ユーベ2点目0927-1
局面は右から左へ攻めるユーベ

前線がモラタとディバラの2トップになり、中途半端な位置にいるディバラに早速マンガラが食いつきます。
ユーベは一度ボールを下げてから裏へロングボールを蹴りこみました。


ユーベ2点目0927-2

先ほどマンガラが食い付いた分、DFラインは逆V字型。
クアドラードと競り合うコラロフのカバーポジションにCBがいない状態です。


ユーベ2点目0927-3

これを見たオタメンディがカバーの為に絞りますが、不運にもボールはコラロフの背中に当たり逆方向へ。

オタメンディが絞った分、今度は逆サイドのサニャのカバーが重要になってきますが、サニャに危機感は薄くジョギングの戻りなので自陣のバイタルエリアはフリーに


ユーベ2点目0927-4
こぼれたボールが右45度のモラタゾーンへ

モラタ「もろた!」

ペジェグリーニ「オワタ!\(^o^)/」

得意の角度からファーに巻いて遂にユーベが逆転に成功。

ペジェグリーニは慌ててアグエロを投入してボニーとの2トップに変えるも既に試合は83分。
アッレグリもこの動きを見てからモラタを下げてバルザーリを投入。
あのRマドリーをも完封した5-4-1の勝ちパターンで磐石の構えです。

【ユーベの5-4-1】
ユーベ5バック0927-1

試合終盤、攻め手を探るシティですがユーgベの5-4-1ブロックは鉄壁。
一度サイドを変えて横スライドの遅れを誘いに出ますが・・・


ユーベ5バック0927-2
5バックだから横スラ余裕っす(笑)

エヴラはほとんど動いてないけどそもそも横68Mに5枚並べてるから横スライドの必要が無いんだよね。(^^;

万策尽きたシティがまさかの逆転負けを喫するのでした。


まあ、何ともシティらしい負けパターンではありましたが、内容では圧倒してましたし、
怪我人さえこれ以上でなければ最終的には勝ち点でも逆転してグループ首位で抜けるんじゃないでしょうか。
(この戦力と内容で逆転負けしろと言われても10回やって1回あるかどうかっていう難しさですからww)

一方のユーベはシティの自滅を見逃さずアッレグリがピンポイントで勝利をもぎ取ったような試合でしたが
昨季欧州で躍進したチームの試合内容と比べると苦しさは一目瞭然。

国内ではユーベに対して自滅するようなチームは皆無に等しく、逆にユーベの隙を虎視眈々と伺っているようなチームばかりなのでこういう類の勝利はあまり期待出来ません。


そのユーベ苦戦の要因は何と言っても昨年との比較で明らかに中盤のクオリティが不足しています。

思えば昨年も守りを固める相手を攻めあぐねた結果、最後は「テベス」という飛び道具で強引に勝ち点3を強奪する試合の何と多かった事か。
(それこそ他のカルチョクラブはそんな理不尽に歯軋りしてたはず)

ビダル抜きのチームに可変式はどうやら無理そうだし、ピルロという砲台もなくなって、マルキージオが戻ったところで彼は基本縁の下の力持ち。

結局、「誰をチームの中心に据えるのか?」となれば、”あの男”しかおるまいて・・・


GettyImages-486213748.jpg
<ユーベの苦悩 ~ポグバの憂鬱~>

今季からナンバー10を背負うのは勿論この男、もう一つのマンチェスター何とかっていうチームがタダで放出した奇跡の逸材です。

これだけ中盤のクオリティが下がってしまったなら、もうユーベはポグバ中心の攻撃の型を構築するしかないんですよ。
ところが実際は昨季、ずいぶん大人になったと思ったポグバが今季は開幕からイライラしている姿ばかり目に付くんですよねー。

ではそのポグバの憂鬱の種を検証してみましょう。


【ポグバの憂鬱】
ポグバ苦悩1
局面は左から右へと攻めるユーベの速攻。
両手を広げて「クレクレ」アピールしてるのがポグバです


ポグバ苦悩2
ボールがポグバに渡ると周囲の味方は一斉にポグバを追い越していきます。

そうそう、ここから高精度のショットガンが裏に1本出るのがユーベのカウンターだよねー


ポグバ苦悩3
・・・って無理だわ! てか、誰もパスコースにいねえ!


ポグバ苦悩4
結局ボールを下げて前線を怒鳴り散らしているポグバwww

続いてこんなシーンも↓

ポグバ0927-1
局面は右から左へ攻めるユーベ

中盤でボールを受けたポグバのイメージは落ちてきたストゥラーロに当ててリターンを受けつつ、相手を食い付かせて次の展開へ・・・といったところでしょうか。


ポグバ0927-2

まー裏抜けちゃうよねー、上空から落とすようなスルーパス待ちだよねー


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身体に染み付いたクセって怖いよねー


ポグバ0927-3

結局カセレスが上がって来るのを待ってから外に預けるだけしか選択肢無し。
出した後のポグバ激おこ(笑)


ポグバってああいう見た目で損してますけど、フットボールインテリジェンスは極めて高いモダンな選手なんですよね。
なもんで、ある程度2手~3手先まで共有出来る味方と適度な距離感で「食いつかせ」「トライアングル」「間受け」で中盤打開したいイメージなんでしょう。

要するにポグバがやりたいのはこういう崩しです↓

【ポグバを中心に据えた崩しの型】
ポグバのやりたい1

局面は中盤でボールを受けるポグバから


ポグバのやりたい2

自分にDFを2枚食い付かせている隙に・・・ストゥラーロが”降りて”きた!
(このサポートがポグバには必要。一発のミドルスルーパスみたいな変態パスが出せるのは世界でもあの人だけですからww)


ポグバのやりたい3

ポグバはストゥラーロに預けてパスゴー!


ポグバのやりたい4

外⇒外で回して相手のSBを食いつかせた裏に走り込むポグバ


ポグバのやりたい5
SB裏で受けているので守る方はCBが釣り出されてしまうこの攻め筋。
ゴール前に残っているDFはCBとSBの2枚でここにマンジュキッチらのFW陣を突っ込ませれば・・・というのが最初の段階で描いていたポグバの画でしょう。

この外⇒外⇒中の攻め筋があるとアーリー一辺倒だったシティ戦とはだいぶ違ってくるはず。


ただ・・・周りがストゥラーロとかペレイラとかパドインといったクオリティだとなかなか厳しいかなー(^^;
エルナネスも悪くないけど果たしてアンカーとしてはどうなのか?


やっぱ・・・・

















俺待ちか?
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