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貴方が死ぬ前に一度は見なければいけない試合 【ボカ×リーベル】

*2011-06-27更新 (アーカイブ記事)









今朝、地球の裏からにわかには信じがたいニュースが飛び込んで来ました。
【アルゼンチンの超名門クラブ『リーベル・プレート』が1901年のクラブ創設以来初めての2部降格決定】



降格決定となった昨夜のプレーオフの試合では

終盤、いよいよリーベルの降格が現実味を帯びてくると

サポーターが暴徒と化し、遂には放水車が出動⇒試合は残り1分を残して打ち切り。



大きな驚きと悲しみに包まれたブエノスアイレスでは

翌朝の一面に【信じられない。しかし現実だ】の一文が掲載された―




いや~、あのリーベルが降格ですか~。


時の移ろいを感じずにはいられませんね。




しかし、この降格で何よりも重大な事実は

これであの【スーペルクラシコ】が消えてしまった・・・という事なんじゃないでしょうか?




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<死ぬ前に一度は見なければいけない試合>



言うまでもないですが【スーペルクラシコ】とは

アルゼンチンで・・・・いや、世界で最も熱狂的なサポーターを持つ2大クラブ、

ボカとリーベルが戦う試合の事ですね。



イギリスの新聞オブザーバー紙が選出した

『貴方が死ぬ前に一度は見なければいけないスポーツイベント50』では

「スーパーボウル」や「W杯決勝」「オリンピック」などを抜いて

見事1位に輝いたのが【ボンボネーラで開催されるスーペルクラシコ】だったんですよねぇ。




店長もこのスーペルクラシコだけは

死ぬ前に絶対一度は生観戦する!と心に決めています。



それと言うのも

一度ボンボネーラでリベルタドーレス杯準決勝を生観戦した時の体験が

僕のサッカー観を根底から覆すセカンドインパクト級のカルチャーショックだった事に由来しています。



「W杯」「EURO」「チャンピオンズリーグ」「現地でのクラシコ体験」など、

これまでフットボールにおける色々な試合を現地で体感してきましたが、

それらが「フットボール」という枠の中で出力される最大級の芸術作品だとすると、


ボンボネーラで見た”それ”は



もはやフットボールを超越していました。



試合を観ながら、僕の頭の中では自然と

かの偉大なる監督ビル・シャンクリーが残した名言が思い出されたものです。


『フットボールは生死に関わる問題だと主張する人々がいるが、

ハッキリ言って私は彼らの姿勢に失望を禁じえない。』



『・・・何故なら、フットボールは

人の生き死によりも遥かに重要な問題だからだ』




試合を観たのは4年も前の話ですが、

今でも克明に覚えているものですね~。



・・・・さて、

そこで今日は2008年の店長メルマガに掲載した

『店長のボンボネーラ観戦記』を本ブログにて初公開。
(まあ、正確には店長が「店長」になる前の話なんですがね・・・(笑))



初めて読む人はモチロン、

当時のメルマガ読者の方も懐かしついでに読んでいただければ幸いです。




<『店長のボンボネーラ観戦記』>


~~~~~前回までのあらすじ~~~~~~~~~~~~~~


突然の思い付きで、地球の裏、南米大陸縦断の独り旅へ出発した

”日本が誇るサッカーバカ”がアルゼンチンのブエノスアイレスに降り立った。


目指すはモチロン、あのスタジアム―!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


いち日本のfootballファンの眼から見て、
実際にアルゼンチンの地を歩いてみて分かった事。

それは・・・ボカ人気の凄さ。


日本ではアルゼンチンのサッカークラブと言えば


「ボカ・ジュニアーズ」と「リバープレート」(リーベル)


の2大クラブが伝統的に凌ぎを削っている。


おおよそ、そのようなイメージではないでしょうか?



しかし、実際にアルゼンチン、いや南米大陸を回ってみると”ボカ圧勝”である。



ブエノスアイレスでも、

リーベルのお膝元=ちょっとコジャレた雰囲気の郊外まで行けば
リーベルのユニフォームを着ている人を見かける事はままある。



しかし、ボカのユニフォームを着ている人々の数は圧倒的だ。


ブエノスの街中はもちろん、
アルゼンチンのどこにいってもまず見かけるのはボカだし、

驚くべき事にブラジルやベネズエラですら
ボカのユニフォームを見かける事がある。


"ボカのユニフォームを着たブラジル人"


これはちょっとした衝撃映像だった。



さて、ボカの魅力といえば何と言ってもそのHOMEスタジアム"ボンボネーラ"。
実はこの南米の旅の大きな目的の一つとして

「死ぬまでに行ってみたい、いや行く スタジアムベスト3」の一つ。


ボンボネーラでのサッカー観戦があった。



中学の頃からボカがTOYOTACUPで来日する度に
TVの特集番組で流れるボンボネーラの映像は

僕の"footballの血"を熱くたぎらせてきたのである。



”あの熱狂の渦中にこの身を置きたい・・!”



観戦する試合も飛びっきりのカードに狙いを付け、

苦労しながらも現地のボケンセ達と列に並んで何とかチケットを確保。




そして試合当日―



 "サッカー観戦の醍醐味"


それは人それぞれが持っているものだとしても、
僕は駅からスタジアムへ向かう道中の高揚感もその一つだと確信しています。


それが異国の地ともなれば格別。



コパリベルタドーレスカップ準決勝第2戦―


in ボンボネーラ



試合当日のボンボネーラ周辺の雰囲気はボケンセ達の高揚感と、

ほのかに漂う危険な香りも隠し味。



その場で焼いてくれる露店のハンバーガーがおいしくて
僕はキックオフまでに3個も平らげてしまった。
(是非、国立競技場前にも欲しい!)



さあ、いざボンボネーラの中へ―



スタジアムに入った瞬間のあの感覚を何と表現すればいいだろうか。


ちょっと言葉が思い浮かばない。


EUROもW杯も欧州サッカーも、どれも熱気がありすごかった。



しかし、南米はケタ外れだ。



今、地球上で一番熱い場所がここだと確信出来る。



10代の頃、TVで見て憧れた僕の予感は間違いでは無かった。


サッカーという窓口が自分をこの地に導いてくれた事を感謝せずにはいられない。





スタジアムが揺れている。




金網によじ登って半狂乱のようにボカの旗を振まくっている男、
二階席の屋根から身を乗り出して半分落ちかけながらも必死の応援を続ける男。








・・・・おい、まだ試合前だぞ?www




とにかく、超満員のスタジアムはボカ一色であった。


このスタジアムで公平なジャッジを行える人間がいたら、まともな神経の持ち主ではないだろう。
もしボカに退場者でも出そうものなら、ちょっとここから無事に帰れる気はしない。



試合前のウォーミングアップの為にまずはアウェイチームが姿を現す。


途端に耳をつんざくような8万人の大ブーイング。


シュート練習している彼らに向かって、ありとあらゆる敵意、憎悪が向けられている。


トイレットペーパー、携帯電話、花火、爆竹、発炎筒が投げられ、
ついには「これではアップは無理」と判断したのか
早々に彼らはベンチに引き返してしまった。



してやったりの8万人。




続いてボカの選手達がアップの為に姿を現した。


打って変わって一気に沸き立つ8万人



ゴール裏の超ドデカ横断幕
(ゴール裏エリアを全て覆いつくすデカさ!)


恒例の紙ふぶき(大量)、トイレットペーパー、発炎筒


半裸で金網を揺さぶるサポーター達




THIS IS SUDAMERICA(南米) !!




これぞ南米。



これが観たかったのだ。



これを体験したくて、わざわざ地球の裏からやって来たのだ。



今なら確信出来る。


例えどれだけの人に「バカ」と呼ばれても、自分が選んだ道は決して間違っていなかったのだ― と。





キックオフがこれまたすごかった。


選手が散らばり「さあキックオフ!」という時になっても、アウェイチームのGKがポジションに着けないでいる。
何故なら、彼の背中に向ってゴール裏から色々な物が飛んでくるからだ(笑)



哀れ、ボカのゴール裏スタンドに最も近い位置に立ち続けなければいけない彼は、
90分間の拷問を受ける囚人である。


そんな中、構わずキックオフしてしまうのがまた南米らしいのだが(笑)、
アウェイチームのキックオフで始まるこの試合。



センターサークルぎりぎりの位置にボカの選手が4人、
獲物を狙う猟犬のような姿勢で、キックオフの笛を今か今かと待っている。


予想通り、キックオフの笛と同時に一斉に4人がボールに飛び掛かかった!


たまらずDFラインまでボールを下げるアウェイチーム。


しかし、ボカの選手達もお構いなく4~5人の選手がボールめがけて猛ダッシュ!


「勘弁してくれ!」
と言わんばかりに慌ててロングボールを大きく前に蹴り返したDF。



が、そのボールを蹴り返したDFに向かってボカの選手3人が、勢いそのままにタックル敢行!!


某サッカー漫画「キャプ○ン翼」のように吹き飛ぶDF。





もちろん・・・・・





ファウルは無し!www




南米サッカーは一味違うゼ・・・・。


その後も相手選手を吹き飛ばす度にスタジアムは大盛り上がり。



結局、試合を完全に支配したボカが3-0で勝利。
(審判をも巻き込んだスタジアムの空気の勝利)


見事決勝へ駒を進めました。



ちょっと、この日のスタジアムで、アウェイチームが勝利する光景は想像しがたいものがある。


(現在の最強バルサでも厳しいのではないか・・・?(^^;)




尚、この日を境に日本に1人、
『にわかボケンセ』が誕生したのは言うまでもない―



====(メルマガ原稿 終わり)==========


・・・いかがだったでしょうか?(^^;



我ながらまだ20代の勢いと青臭さが文章からかもし出されていて

正直こっ恥ずかしさがありますね(笑)


(・・・え? 今もたいして変わっちゃいないって?)



とにかく、この観戦記で伝えたかったのは

自分が愛するチーム、そしてフットボールに人生の全てを捧げる―


そんな人々が作り出す”ボンボネーラの空気”そのものでした。



この先、映像配信技術がどれだけ進歩しようとも、

 あの日、 あの場所で 僕が感じた"何か"は絶対に現地でなければ得られないものでした。




その"何か"を僕自身が再び確かめる為にもスーペルコパの復活を願うばかりです。


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『3-4-3を巡る冒険』 ~番外編~ 【ビエルサという男】

*2011-06-23更新 (アーカイブ記事)









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<ビエルサの3-4-3>


今日は『3-4-3を巡る冒険』を締めくくる【番外編】


この人抜きに3-4-3は語れないだろうと言うビエルサネタでまとめてみました。







前回の記事で取り上げた「オランダ発 攻撃型の3-4-3」ですが、

現在のサッカー界でこの布陣を採用しているチームは皆無と言っていいでしょう。



バルサもクライフの哲学は継承しつつも布陣は4-3-3を採用していますし、

「最強アヤックス」を作り上げたファンハールも

現在はバランスのとれた4-4-2をメインに使っています。



理由はいくつか考えられますが、

やはり「リスクが大き過ぎる事」と「緻密なシステムゆえ、チーム構築に多大な時間を要する事」が

大きな原因ではないでしょうか。



そんな世知辛いご時世にあって、

今でも尚「3-4-3」を使い続ける男がいます。



「ロコ=(変人)」の相性で呼ばれる

アルゼンチンが生んだ名将ビエルサ その人です。



若い頃からサッカーにおける戦術とシステムの研究に心奪われたビエルサは

たまの休日だろうが、どこの監督も努めていないフリーの期間だろうが、

もっぱら部屋に閉じこもって、日がな一日 世界中から取り寄せたサッカーのビデオを食い入るように見るのが日課だそうな。



そんなビエルサのキャラクターがよく表れた昔のインタビュー記事が今でも忘れられません。



ビエルサ

『私にとっては どんな高級な服も 絶品の料理も 絶世の美女も興味に値しない。

フットボールの進化を見極める。

その崇高さに比べたら全てが陳腐に見えるのだ』






これを見た時は思わず


「実は俺の本当の父親ってビエルサじゃねえのか・・・?」


と思ったものです(爆)



ビエルサさん、あんたカッケーよ・・・・。




サッカーの監督というよりは「研究者」と言った方が近い

世界でも非常に稀な人物と言えるでしょう。



彼にとって目の前の試合の勝ち負けはそれほど重要ではなく、

勝った試合の会見で不機嫌そうにしている時もあれば、

負けた試合で満足そうにしている事も。



全ては自分のチームが

思い描く理想のサッカーが出来たかどうか


彼の興味も 監督をする理由も 全てはそこにあります。



そんな筋金入り戦術マニアのビエルサが

自身の生涯をかけて取り組んでいる研究が「3-4-3」の進化に他なりません。



何故、このシステムにそこまで拘るのかは定かではありませんが、

世界中のあらゆるシステムを研究し尽くした結果、

この「3-4-3」こそが最も難易度が高く、研究しがいがあると考えたのかもしれません。



今ではすっかり「3-4-3と言えばビエルサ」と呼ばれるまでになりました。




ビエルサはまず、

オランダが生み、クライフが世界に示した「3-4-3」の改良を試みます。



具体的に言えば、それは「流動性を加える」というものでした。



クライフが「サッキのゾーンプレス」打破に向けて編み出した3-4-3は

その基本理念として「ポジションを崩さない」事が念頭にありましたが、

つまりこれは各ポジションで選手個々が相手を圧倒する技量を持っている事が前提になります。


これではバルサのような世界有数のビッグクラブならいざ知らず、

そうではない世界の多くのチームでは採用しようがない

非常に汎用性の低い代物です。



まあ、ここらへんは元々サッカー史にその名を残す名プレイヤーだった

クライフらしさが滲み出ていると見る事も出来るでしょう。



つまり、クライフにとってのシステム観とは

「いかにプレイヤーの能力を引き出すか」であって

システムはその土台に過ぎない と。


あくまで「選手>>>システム」の関係ですね。




対するビエルサは、現役時代は無名の一選手に過ぎず、

そもそも25歳の若さで見切りをつけて引退しています。


そんな彼にとってのシステム観は

「戦術とはプレイヤーの能力を補うもの」であって、

戦術次第では選手個々の能力で劣るチームが勝つ事も出来るのだから

プレイヤーは戦術の土台に過ぎない と考えているフシがあります。


つまり「選手<<<システム」という捉え方ですね。



この辺は試合中、ピッチを見るよりメモを書いている時間の方が長いファンハールも同じ部類に入りますが。




この2つの考え方については、どちらが正しいというものでもなく、

"どちらの意見も一片の真理を突いている"というのが私見ですが、


とにもかくにも【3-4-3】なんていう極端なシステムを志す人間は

性格も極端だなぁ・・・・なんて思ったり(笑)




話が横道に逸れました(^^;

話題を「ビエルサの3-4-3」に戻しましょう。



ビエルサはそれまでポジション固定型だった3-4-3に

ポジションチェンジの動きとプレッシングを加える事に着手します。



そうです。


それまで「プレッシング」を打破する為のシステムだった3-4-3に

「プレッシング」そのものを持ち込んだのです。


このへんは、プレイヤーとしての変なこだわりや哲学が無く、

あくまで「サッカーの進化」の為には

良いものは何でも取り入れようという貪欲な姿勢が表れていますね。



(クライフさんが聞いたら怒るで しかし・・・・)




ビエルサにとっての「流動性」とは

逆説的ではありますが「オートマティズム」そのものです。



基本的にビエルサは選手個々の閃きや判断というものを信用していません。


選手個々のレベルが高ければ、

局面ごとの判断を選手に任せて上手くいく事もあるだろうが、

それでは選手の質で劣るチームは一生勝てないし、

そもそもチームの行く末を一個人の閃きに賭ける事自体リスク以外の何物でもない と。



そこでビエルサは長年の研究から

サッカーの試合で起こるあらゆる局面における選手個々の動きを最適化、

つまりパターン化し、極限までオートマティズム性を高めようと試みます。



よって彼が行うチーム練習では、

「SBのポジションが10cmズレている」という理由で

一から戦術練習をやり直すなど

とにかく徹底してディティールにこだわります。


(一説ではスローインからの展開パターンだけで50を軽く超えるとか・・・・)



自身が頭の中に思い描く、完璧なチーム、完璧なサッカーへと限りなくチームを近づけていく・・・。



そんなビエルサの最初の作品が

98年から4年をかけて作り上げた2002年W杯のアルゼンチン代表です。




ええ・・・、ご存知の通り、「優勝候補筆頭」と持ち上げられながら

アッサリとグループリーグで敗退したあのチームです(笑)



ただ、結果こそ出なかったものの

僕はこの2002年のアルゼンチンは素晴らしいチームだったと

今でもそう思っています。


何より南米予選で見せたパフォーマンスは圧倒的だったし(ブラジルを子供扱いにしたった)、

練り上げられたオートマティズムが生む攻撃サッカーは圧巻でした。



特筆すべきはオルテガのドリブルさえ、

チームの中のオートマティズムに組み込んでしまう懐の広さ。


(オルテガが中にカットインした時、残りの9人がとるべき動きとポジショニングが完璧に組まれていて

例えそこでボールを奪われても微塵にもピンチにならないよう仕組まれていました。)



しかし、この完璧さは「脆さ」と表裏一体。


チームの重要なパーツであるベロンが不調に陥った本大会では

そこからチームの歯車が狂いだし、崩壊。


代えのパーツがあれば何の問題もなかったのですが、

システムの完成度を上げるため、

4年間をほぼ固定したメンバーで戦ってきたツケが最後に出てしまいました。




もしこれがクライフの【選手の資質に寄り沿った】「3-4-3」なら

ベンチに能力の高い選手さえいれば何とでもなったでしょうが、

反面、選手の質に恵まれないチームでは手も足も出なくなる「脆さ」を抱えているのとは対照的。



ビエルサの「3-4-3」は

訓練さえ受けていれば選手個々の資質に頼らない強みがあるものの、

反面、どんなに質の高い選手がいても、

チームのメカニズムを理解していないと全く使えないという「脆さ」を抱えています。



・・・まあ、一長一短ですね。





このW杯の失敗の後、ビエルサは2004年のアテネ五輪に向け

若いチームでもう一度、一からのチーム作りに着手します。


実績は無くても能力の高い選手が集まったアルゼンチンのアテネ世代。


(テベス、マスケラーノ、ダレサンドロ、ルーチョゴンザレス、コロッチーニ…etc)



W杯での反省を活かし、控え選手も含めたチーム全体の底上げを計った

このアルゼンチン五輪代表(アテネ)のチームは


あくまで個人的な意見ですが、

僕が過去見た全てのアルゼンチン代表(フル代表も含む)の中で最強チームだったと

未だにその考えに変わりはありません。



「選手個々の能力」と「組織のオートマティズム」が高次元で融合したチームは

圧倒的な強さで金メダルを獲得。


大会初戦から決勝戦に至るまで

他の出場国とは、まるで「大人と子供が戦っている」ぐらいの差があったように思います。




この大会で、一つの到達点と達成感を得たビエルサが

次の新天地にチリ代表を選んだのもごく自然な流れだったかと。



いよいよもって自身の理論に自信をつけたビエルサが

「個々の能力で劣るチーム」で研究を開始。


このへんが「研究者魂」の面目躍如、

マッドサイエンティストらしいじゃあ~りませんか(笑)



チリ代表監督に就任したビエルサは

早速、国内の無名な若手を集めた壮大な実験をスタート。


これまでのアルゼンチン代表の面々と違い、

選手個々の我が薄いお陰で

チームはより「ビエルサ濃度」の高いものへ・・・。



これが功を奏して南米予選を2位という好成績で抜けると

ハイライトは本大会ベスト16で実現した「対ブラジル」戦。



優勝候補筆頭のブラジル相手に

チリは無謀にも(?)3-4-3で挑みます。



この試合で、店長が忘れられないシーンがあります。




【チリが見せた3-4-3のオートマティズム】
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局面は中盤でボールを持ったチリ(白)がブラジル相手に果敢に仕掛けるところ。


前線は3トップ(一番左のWGは見切れ)、中盤は流れの中でやや形が崩れているものの、ダイヤ型。



実に7人もの選手を敵陣に送り込む姿勢もアッパレですが、驚愕のシーンはこれに続く流れにあります。



右サイドから崩しを図るチリ。


ここで3-4-3のオートマティズムが発動。



カルチョ初の3-4-3と違い、オランダ発の3-4-3の大外と言えば・・・・??



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テッテッテッテテ テッテッテテッテ~♪

 (マリオのスター発動音)


右CB「さぁさぁ!こうなったら俺を止める事は出来ないぜ~~!!」




大外を物凄い勢いで1人駆け上がってきました。


確認するまでもなく、彼は3バックの1枚。右のCB(SB)です。



ブラジル相手に8人目を攻撃に動員する この潔さ。



普通のチームだったら後ろ髪を引かれるものですが、

彼らにとってはコレが普通なんです。


サイドを崩す時は、躊躇無くCBが大外を駆け上がる。


このオートマティズムこそが、ビエルササッカーの強み。



これで右を崩したチリが中へクロスを上げると・・・・



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ブラジルはこのクロスをドッカンクリア。


チリCB(あぼ~ん・・・)



このボールが大きくチリ陣地へ跳ね返されると・・・・




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チリは2バックしか残ってねぇwwwww




まあ、3バックの内の1枚が上がっていけば、そりゃこうなりますわな。



本来、右のCBが守る黄色い丸で囲ったエリアはポッカリとオープンスペースが空いており、

ここをロビーニョに使われるとブラジルのカウンター発動で失点。



しかし、そんなリスクは最初から百も承知。


個々の能力で劣るチームが攻撃で相手を崩そうと思ったら

数的優位の確保が必須。


故に、それを迅速に作り出す為のオートマティズムであり、

実際このシーンでもクロスを上げるところまでは成立しているのですから。



結局、試合には敗れましたが、

この大会で言うならばブラジルが見せたガチガチのカウンターサッカーより

よっぽどチリの方が忘れられないチームでしたよ。ええ。





<3-4-3の難しさ>




これを見ると、何となく

現在のサッカー界から「3-4-3」が消えている理由がお分かりいただけたかと思います。(^^;



これまで見てきたように過去の3-4-3の成功例は

どれもチームと監督の奇跡的な出会いが必要条件です。



クライフは自身の絶対的なカリスマ性を用いて

選手達に自らが理想と掲げる新しいサッカーを提示し、


ファンハールとビエルサは

まだ若く無名ながら、それでいて持っている能力はべらぼうに高いという

奇跡的なチームに恵まれて、


それぞれ結果を出してきたのは偶然ではありません。





この先、果たしてそのような奇跡的な出会いはあるのか・・・?



確率で言えば、ツチノコを探すようなものかもしれません。




でも、だからこそ店長は「3-4-3フェチ」が止められないのである。




(・・・以上、3回のシリーズに渡り、長々と店長の暴走にお付き合いいただき、ありがとうございましたww)


関連記事

『3-4-3』を巡る冒険 ~後編~ 【オランダ、アヤックス、バルセロナ】

*2011-06-22更新 (アーカイブ記事)



本日は「3-4-3を巡る冒険」の【後編】と題しまして、

もう一つの3-4-3、「オランダ」「アヤックス」「バルサ」をキーワードに掘り下げていきたいと思います。


(まだ【前編】を読んでないという方は一つ前の記事からどうぞ。)



今日もディーープにいきまっせ~♪




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<最強アヤックスとの出会い>



自他共に認める「3-4-3フェチ」の僕にとって

そのキッカケとなる出会いが94/95シーズンにおける伝説のチーム「最強アヤックス」でした。



当時はまだインターネットはおろか、TVでも海外サッカーの試合放送は皆無という時代。



まだ中学生だった僕は海外サッカー誌に掲載されていた

僅か2ページのカラー特集「最強アヤックス」に目を奪われました。



目新しい「3-4-3」のフォーメーション、


「超攻撃的サッカー」の文字、


1年半に渡る「58試合無敗記録」など


初めて見た赤×白のカッコイイユニフォームと相まって

それはそれは強烈な印象を残したものです。




一度気になりだしたら、その目で確かめずにはいられない性分の少年。



すぐに某海外サッカーSHOPに足を運び、

そこで流されていたアヤックスのビデオを日がな一日眺めるという愚考に走ります。


(中学1年のお小遣いではサッカービデオはそう何本も買えるものではありませんが、

よい子は真似しないように・・・(^^; )




そこで僕の目に飛び込んできたのは衝撃的な映像でした。


デ~ンと両サイド一杯に  さも偉そうに構えたウイング、


次々と選手が湧き出てくるような躍動感溢れる攻撃、


それまでの「トップ下」の概念を覆す 新時代の「トップ下」リトマネンの輝き、


ベンチで何やら気難しそうな顔をして、ひたすらメモを取るファンハール監督、




こ・・・・・・





コレだ!!




何がコレなのか説明しろと言われればサッパリなんですが、(笑)


とにかく、当時の僕は何故かそう確信するものがあったんですね。



この伝説のアヤックスの布陣がコチラ↓


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どうです?


どこも「10年に1人」というレベルの逸材が偶然にも揃った

まさに”奇跡”と呼ぶに相応しいチームですよね!




余談ですが、その年のトヨタカップに来日したとあって

国立競技場に駆けつけたものの、

何故かお目当てのアヤックスが絶不調で0-0のPKというショッパイ試合・・・。


そんな青春の苦い思い出(遠い目)




改めて言いますと僕が愛して止まない「3-4-3」は【前編】で紹介したものではなくて、

あくまでコチラ↓の3-4-3なんですよ。



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・・・・え?



中盤の並びが「フラッ」トか「ダイヤ」かだけで、大して変わらないじゃんって?




こっ・・・・













このバカもんがーー!!!!


(バチコーーーン!!)






一見、似ているようでも大きく違う・・・!!






そうだな、例えて言うなら・・・・





















AKBとアイドリングぐらい別物だ!!


(・・・あれ? 大して違わなくね?)







<オランダ生まれの3-4-3>



【前編】で紹介しましたカルチョで生み出されし3-4-3。



注目していただきたいのは、ある偶然からザックが

「後ろが3枚でも守れる」という確信を経て

前線に駒を割き、誕生した布陣という事です。



つまり、あくまで最終ラインの安定から逆算して布陣を考えるのが

イタリア=カルチョの考え方なんですね。



これに対し、全く逆の観点、


前線から逆算して布陣を考える国があります。

それがオランダです。




オランダではフォーメーションを考える時、

まず最前線の3トップは絶対に曲げられないポイントです。



オランダのリーグ戦では、2トップなんかで戦おうものなら

スタンドから相手チームのサポはもちろんの事、

自分達のサポーターからも


「この臆病もの!!」


と野次が飛ぶそうです。




(つい最近もオランダ代表を率いたファンバステンが2トップ&1トップの導入に際し、

国中から非難を受けていたのは記憶に新しいところ、)



となると残りの7枚をどうDFとMFに振り掛けるかという話ですが、

普通に考えればDF4枚の中盤3枚が最もバランスが良く、

ここが無難な落ち着きどころになる訳ですね。



故に、「4-3-3」といえばオランダ 


オランダと言えば「4-3-3」




つまり、オランダ人にとってのフットボールとは

両サイド一杯にピッチを使ったワイド攻撃が前提で

ウイングがガンガン縦に仕掛ける様に興奮し、

勝っても負けても「面白いサッカーが見れたら、それでええやん・・・」


そんな感じなんですよね~。



これは「内容はともかく勝てばいい」というイタリアのサッカー観とは間逆に位置するもので、

実際EUROを現地観戦なんかすると

両国のサポーターが見せる対照的な国民性が面白かったり。(笑)



この両極端なサッカー観は、もちろん各ポジションに対する概念にも当てはまります。


ザッケローニが守備に長けたDFを3枚置いて

ひたすら相手の攻撃を跳ね返す事でディフェンスの安定感を得たように、


イタリアにおけるCBの概念は文字通り「最終防衛壁」です。


(まあ、これに関してはここまで極端ではなくとも、サッカーの一般的な概念に近いかもしれませんね)




しかし、オランダ人は全く逆の発想。


CBこそが「攻撃の起点」と考えたのです。



「CBから攻撃が始まり、CFから守備が開始される」


さすが”トータルフットボール”を生み出したお国柄。



この一点だけを見ても、オランダにおけるフットボールが

最終ラインから丁寧にパスを繋いでいく”あのスタイル”を連想させるというものです。




故に、イタリアではCBを選ぶ際、

とにかく屈強で相手の攻撃を跳ね返す能力に長けた選手を重点的に選ぶのですが、

オランダでは守備と同等に攻撃の能力、とりわけ中長距離の展開力が重要視されます。


古くはクーマン、Fデブール、

最近ではオランダの流れを汲んだ育成で生まれた近年最高傑作のCBピケなど。



その為、オランダの4-3-3では

展開力に長けたCBが2枚並んだりする事もしばしば。



しかし、せっかく展開力に長けたCBが2枚いても

彼らが横並びにいては、パスは横につながるばかりで

いつまで経っても攻撃が前に進んでいきません。



そこで攻撃の際は、

CBのどちらか1枚が中盤のボランチの位置に上がって縦並びの関係をとる事で解消。


この動きで、ボランチの選手は一列押し上げられてトップ下へ。


(このCBの縦並びの関係は、ちょうど今のバルサでいうピケとブスケスの関係に似てますね。)



【オランダの4-3-3  CBの1枚が中盤に上がる】
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【CBが上がって3-4-3テイストに】
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この布陣変更におけるポイントは、3バックの左右を勤めるDFが

CBではなくSBの選手という点。


イタリア生まれの3-4-3では3バックは、その生い立ちからとにかく守備専業でしたが、

こちらの3-4-3では当然、両脇のDFは攻撃の際、SBのごとき上がりも許されています。



同じ【3-4-3】で表記されるフォーメーションでも

「バランス重視」のカルチョ版と

とにかく「攻撃重視」のオランダ版。



ここが両者の大きな違いですね。




そして、攻撃だけでなく、守備の時にも

引いて待ち受けるだけではなく、積極的にCBが中盤に出てきてインターセプトを狙う動きも併せて、

サッカー界に初めて【3-4-3】を持ち込んだのが74年のクライフを中心としたオランダ代表と言われています。



クライフは攻撃でも守備でもシステムに縛られる事なく、

局面ごとに選手個々の判断で変化する、より柔軟なサッカーを頭に描いていたんでしょう。


これは当時まだマンツーマンディフェンスとシステム固定が全盛の時代において

時代を20年先取りする画期的な発想でした。




そのクライフが現役を引退後、監督としてFCバルセロナを率いる為に現場に戻って来た時、

長年思い描いていた理想のサッカーへ着手したのもごく自然な流れだったと言えるでしょう。




時は90年代中盤―



【前編】でも触れた通り、当時ヨーロッパサッカーは

サッキが編み出した「ゾーンプレス」に支配されていました。


どこのチームも「ディフェンス」を基準にしたチーム作りと

「質より量」の選手起用が主流の時代。



そんな時代にクライフは1人、真っ向から立ち向かって生きます。


それは「オフェンス」を基準にしたチーム作りと「量より質」の選手起用でした。




当時のクライフの哲学が伺える有名なコメントが残っています。




クライフ『プレッシングなど優れたテクニックの前では無力だ』



これに続く言葉が

『いつも攻撃していれば、これより楽しいことはないし、試合に敗れることもない』

『選手がうまくプレーできないのは、ポジションが適正じゃないからか、才能がないかのどちらかだ。』




イタリアだったら 張っ倒されそうな発言ですが・・・(^^; 




当時、「ゾーンプレス」全盛の時代にあって、

どの試合でも「ゾープレス」対「ゾーンプレス」の様相を呈するのが常でした。


ピッチ上では両チームの選手が密集した状態が続き、

こうなるとプレッシングでボールを奪ったまではいいものの、

すぐさま相手チームからのプレスを受けるというジレンマ。



結果、試合は密集した人だかりの中で

ボールが行ったり来たりするザマで

これを観たクライフが「まるで、子供のサッカーだな・・・」と鼻で笑ったとか。



そんなクライフが考え出した「ゾーンプレス打破」への秘策が【3-4-3】システムでした。


自身が現役時代、4-3-3の派生系として現れる

この「3-4-3」の布陣に手応えを感じでいた事も導入の裏付けになったのでしょう。


バルセロナで、この布陣を本格的に導入した初のチーム作りに着手。

【クライフバルサの3-4-3】
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この布陣のポイントは、ゾーンプレスの基本「ボールに向かって人を集める」の間逆を取る

「人は動かず、ボールを動かす」という基本理念の元に作られた点です。



ボールの周辺に人が密集するから、せっかくマイボールになってもすぐ奪われる


であれば、最初から各選手をピッチに広く分散させ、

この布陣を元にボールを動かしてプレッシングを無効化させようという寸法です。



基本的に各選手は自分が与えられたポジションを守り、

そこから大きく崩す事はしない。


(但し、一旦攻撃の展開に成功すれば後ろからの上がりはアリ。)




この発想で布陣を考えた時、この【3-4-3】は実に理に適ったものです。


何故ならピッチ全体の各エリアにまんべんなく選手が配置されており、

尚且つフォーメーションが静止された状態で多くのパスコースを生み出す為に

あらゆるフォーメーションの中でも最も多くのトライアングルが出来る仕組みになっているからです。



【3-4-3が生み出す12のトライアングル】
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この白いラインに従ってパスが繋がれていく訳ですね。



それぞれの選手があらかじめどこにいるのか決まっているので、

バルサの選手達は改めてアイコンタクトをしなくても

どこに誰がいるのか分かっているというアドバンテージは大きなものでした。




更に、

この布陣をよく見ていくと【オランダの4-3-3】の進化形である事もよく分かります。


最終ラインの「2番」と「5番」はあくまでSBなので攻撃にも加わるし、

この布陣で最も重要な「4番」の位置に入る選手の背番号が

元々はCBから一列上がったことの名残りである事も納得がいくはず。



同時に、クライフは「4番」の選手(グアルディオラ)に対し、

「お前は試合中、絶対にセンターサークルから出るな!」と

口酸っぱく指示していたそうです。



これは全てのパスの基準点となる4番の位置が崩れてしまうと

チームが総崩れになる事をクライフが危惧したのでしょう。




それにしても、何と思い切った布陣でしょうか。



ウイングは常にド~ンと両サイド目一杯に開いているし、


ボールを持った味方選手が複数の敵に囲まれていてもフォローに行くなというのですから。


(「フォローに向かう事で逆に密集を作り出すから、それは逆効果」という考え方)




この布陣にはピッチで戦うバルサの選手達に

常にクライフがこう囁いているようにも思えます。



「お前のテクニックがあれば、そんなチンケなプレッシング。

当然、打開出来るだろう・・・?」 





自分達のテクニックに絶対の自信が無ければ、とても採用できない代物です。


ですが、一度これがハマると

相手のプレッシングを面白いようにパスでいなしていく様は痛快そのもの。


この快感は病み付きになりますよ(笑)



元々オランダで生まれた概念をクライフがバルセロナに持ち込んだ事で

オランダではアヤックスが、スペインではバルサがこの流れを脈々と受け継ぎ、

今日の最強バルサに繋がっていく・・・

そんな一つの壮大な冒険ストーリーと見る事も出来るのではないでしょうか。






・・・・どうです?



これでもまだカルチョ発の「3-4-3」と

「中盤の並びがちょっと違うだけ」なんて仰いますか?



どこのTVを見ても雑誌を見ても

「3-4-3は攻撃的」なんていう我が国の現状を

思わず憂いてしまった店長の気持ち、ちょっとは分かっていただけたでしょうか・・・?




・・・え?

長くてちゃんと読んでなかった?




カーッ・・・!もーっ!



じゃあ、しょうがない。



次回は【番外編】として、

店長が敬愛する「変人ビエルサ」ネタ行っちゃうよ・・・!!www




(「こうなってしまったら内部電源が切れるまで暴走モードは解除出来ないわ・・・!!」)


関連記事

『3-4-3』を巡る冒険 ~前編~【ウディネーゼ、ミランを経てザックJAPANへ】

*2011-06-21更新 (アーカイブ記事)


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<【3-4-3】を巡る冒険>



先日のキリンCUPにおいてザックJAPANが3-4-3を披露した事から、

ここ最近 TVや新聞で「3-4-3」に関する活発な議論を目にしてきた。




曰く、「超攻撃的布陣」「両サイドが下がって5バックにならないように」・・・なんかは

耳にタコが出来るぐらい聞いたものだ(^^;





・・・もちろん、

賢明な本ブログ読者の皆様におかれましては

フォーメーション議論の際にしばしば陥る「机上の空論」の無意味さや

そもそもサッカーにおける本質が数字表記に無い事は重々承知と思われる。



しかしながら、以上の事を前提とした上で

フットボールをもう1歩深く楽しむ醍醐味の一つとして

各フォーメーションへの個人的な嗜好や持論は大いに結構。



ある者はオランダ式の4-3-3から連想する その攻撃精神に心をときめかせるも良し、

或いはプレミア式の4-4-2同士が見せるガップリ四つのぶつかり合いに男気を感じるも良し。



むしろ大人のたしなみとしては、


「いや~実は僕、キックオフ時に両ワイドに開いた

4-3-3の綺麗な並びを見るだけでハァハァ出来るんだよね」


ぐらいのフェティズムは持っていてもらいたいものである。(キリッ!)


(・・・変態でしょうか?  いいえ、手遅れです。)





そこで今日は、自他共に認める日本有数の廃人・・・


もとい「3-4-3フェチ」店長が贈る「3-4-3のたしなみ方」。



クライフバルサからアヤックス、ウディネーゼにミラン、

そしてザックJAPANへと巡る「3-4-3の歴史」に加え、


「3-4-3とは何か?」 「果たしてザックJAPANの3-4-3は本当に攻撃的なのか?」 「その可能性は?」

などなど【前・後編】に分けて一段とマニアックに切れ込みたいと思います。(笑)




(・・・やっぱり読むべきブログを間違えたのだろうか?  いいえ、手遅れです。 きっと 貴方も )






<カルチョの文化と偶然が生み出したザッケローニの【3-4-3】>

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まずは何と言っても現日本代表監督であるザッケローニが

初めて3-4-3と出会った そのドラマについて触れない訳にはいかないだろう。




時は1996年にまで遡る―



当時、・・・90年代前半~中期にかけてのイタリアサッカー=(以下、「カルチョ」)では

サッキが生み出し、一大旋風を巻き起こした新時代の戦術「ゾーンプレス」が隆盛を極めていました。



必然的に各チームが敷いた布陣も「ゾーンプレス」と相性の良い「4-4-2」が主流となり、

その「サッキの流れを受け継ぐ次世代の監督」として当時まだ売り出し中だったザッケローニがいたのです。




ちなみに何故「4-4-2」がゾーンプレスと相性が良いのか?と言うのは図を見れば一目瞭然。



左右両サイドと真ん中に均等に選手が配置されており、

それぞれの選手が受け持つエリアに偏りが無い。


よって、相手がどこから攻めてきても

どこにボールがあっても バランスよくそれぞれの「ゾーン」で「プレス」をかける事が出来る理想布陣なのだ。




その一方で、フィールドの10人全員に同じように仕事を課した事で

それまで「専門職」を売りにしてきた「職人プレイヤー」及び「ファンタジスタ」の居場所が

ピッチから消えるという現象もこの時期のカルチョで起こった象徴的な事例である。



ドリブラーで鳴らしたウイングが消え、Rバッジョがベンチに座り、ゾラはプレミアへ亡命。



この頃、カルチョの選手起用では「質より量」が重視され、

一発の特技を持つ選手より、攻守両面で働ける労働者が重宝された時代だった。





話を我らがザックに戻そう。


もちろん、当時ウディネーゼを率いていたザックは

この4-4-2を用いたゾーンプレスを採用していました。



ところが一つの偶然から起こったドラマによって、

彼の運命は劇的に回り始めるのである。




96/97シーズン―


ザックのウディネーゼは当時、セリエAの王者に君臨していたユベントスとの大一番を迎えます。


ちょうど就任から1年半が経過し、アモローゾとビアホフという2枚看板を軸にしたチームに

ザックは手応えを感じていた時だった。



ところがこの大一番、

あろう事か前半2分にSBのジェノーがレッドカードを提示され一発退場。


王者ユベントスを相手に残り88分を10人で戦う苦境に追い込まれたザック。



通常、サッカーにおいてこの局面に立たされた監督の9割以上が

FWを1枚削ってDFを補充する一手を打つ事だろう。



ところがザックは考え抜いた末、

前半2分でチームの2枚看板である2トップのいずれかを下げるのは得策では無いとして

このまま3-4-2の布陣で戦い続ける事を決断。



元々、中堅チームだったウディネーゼのチーム構成は

DFラインに守備に長けた選手を配置し、中盤は「ゾーンプレスの申し子」らしく攻守に働ける労働者を並べ、

得点は2トップの決定力に賭けるというものだった。



10人になった事で、余計な事は考えずとにかく守備だけに専念する3バックが かえって安定感を増し、

中盤の4枚は持ち前の運動量を駆使して攻守にフル稼働。



結果、試合はザックの狙い通りビアホフとアモローゾで3得点を叩き出し、3-0の快勝に終わる。




この一戦で3-4-2の布陣に確かな手応えを感じたザック。



カルチョの国で鍛えられたDFは守備に専念させる事で3枚でも充分いける。

であれば、余った1枚を前線に回してみたらどうか?―




ここにザックの3-4-3が誕生。




翌シーズン、ザックは3-4-3を本格導入するとセリエAで3位に食い込む大躍進を遂げる。


この手腕が認められ、ザックは遂にACミランの新監督として抜擢されるのである。





ミランを指揮するにあたって、

ザックは自身のサッカーを実現する為の欠かせない駒として

得点源のビアホフと、彼にクロスを供給する役目を担うヘルベグをセットで連れてきた。


早速ミランでも3-4-3の導入に着手し、

シーズンが開幕する頃、辿り着いたのが↓の布陣である。




【98/99シーズン ミラン (開幕時)】
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結果は・・・・・これがまた大失敗。



各選手の個性と採用した布陣の

ここまでハッキリとしたミスマッチもなかなか無い。



圧倒的な個の力と得点力を売りにするウェアをゴールから遠ざけ、

中央でゲームを作るのが本職のレオナルドとボバンは窮屈そうにサイドに押しやられている。


その上、持ち味ではないサイドの守備に体力を削られ、

肝心な攻撃では持ち味を発揮出来ない悪循環。



結果、機能した攻撃はヘルベグ⇒ビアホフ1本という

ウディネーゼ時代から何も進化がなく、せっかくの豪華な顔ぶれも宝の持ち腐れ状態。



つまり、ウディネーゼの手駒ではベストマッチした3-4-3も

ミランが抱える豪華な持ち駒にはフィットしなかったのだ。




元々、個の力で違いを作り出せる選手は高年俸であり、

中小クラブに雇う財力は無い。



故に「質より量」のチーム構成で「高い質」を持つビッグクラブを倒そうと考えた時、

その一つの回答としてザックの3-4-3は最適だった。




だが、この布陣はDF陣にへたに攻撃能力があったり、

中盤にファンタジスタや職人がいたり、

FWに個の力で得点出来る選手がいたりすると かえって機能性が低下する。




これに気付いたザックはシーズン中盤に布陣にテコ入れを施す。



ウェアをCFに戻し ビアホフと2トップを組ませ、

ボバンをトップ下の位置に置いてゲームメイクを任せるという

持ち駒の資質に寄り添った3-4-1-2に変更。





【98/99 ミラン (中盤~後半)】
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これで息を吹き返したミランは後半戦に猛追を見せ、

最終節で劇的な優勝を飾る。




・・・以上の流れから見ると

我が国では「超攻撃的」と言われている「3-4-3」だが、

その実、ザックが自身のモットーにも挙げる「バランス重視」の布陣であり、


強者よりも、むしろ弱者に向けたものと見る事も出来るのではないか。



<ザックJAPANの3-4-3>



翻って、話は先日のキリン杯で試されたザックJAPANにおける3-4-3である。




見方によっては、この布陣は日本相手に守備を固めてくるアジア予選向けと見る事も出来るが、

実はW杯を見据えた「対・格上用」の布陣と見る事も出来まいか?




W杯における日本代表がセリエAにおけるウディネーゼであるように。




事実、散々「攻撃的」が強調された2戦は「スコアレスドロー」で終わっているように

この布陣の可能性については、もう少し時間を持って見極めていく必要があるだろう。




最後に、この2戦における日本の戦いぶりの中で 非常に興味深い事が起きているので、

そちらを紹介して【前編】を締めくくりたいと思う。




【チェコ戦 ザックJAPAN (3-4-3)】
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↑が【3-4-3】のスターティングオーダーだが、

この布陣だと攻撃の全権を担う本田がサイドに追いやられている。



アジア杯で示した通り、ザックJAPANの生命線は

前後左右に動く本田を経由したボール回しと崩しにある。



やはりと言うか、事前に懸念されていた通り、

この3-4-3でスタートした日本は

攻撃の基準点を失い、明らかにチームが機能不全を起こしていた。



これを察知した本田が

すぐさま自己の判断で中央寄りのポジションに修正し、

これで日本のボールが回り始めると

前半も20分を過ぎた頃には遠藤、長谷部らと完全に中盤のトライアングルを形成していた。



この本田の動きによって布陣は【3-4-3】から【3-4-1-2】へ。




そう、ちょうどミランにおけるボバンと同じ現象が日本代表でも起きていたのだ。




【本田が中盤に下がり、前線は2トップに】
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興味深いのは、本田のこの判断を見てザックが何も言わないどころか、

むしろ手応えを感じたような表情でピッチを見つめていた事。



既にミランで得た経験から、この布陣変更をポジティブに捉える余裕があったのかもしれない。




・・・というより、もしかすると始めから局面によってこの形にシフトする可能性を見越した上での

3-4-3導入だった気もしてくる。





う~む・・・このチョイワル風オヤジはとんだ食わせもんだゼ・・・。






・・・・さて、長々とカルチョから発生した【3-4-3】の流れを追ってきた訳ですが、


実は【3-4-3フェチ】を自称する店長にとって

このカルチョ版3-4-3は全く僕の好みではございません・・・・!!wwww




次回の【後編】では、いかにして僕が「3-4-3」の虜になったのか?


その起源ともなったもう一つの3-4-3。


「クライフ」「アヤックス」「バルサ」発の

【3-4-3】を掘り下げていきたいと思います。




関連記事

『【店長版】 10/11シーズン フットボール テクニカルレポート』 公開

*2011-06-13更新 (アーカイブ記事)







さて、今日はシーズンオフ企画として

この【10/11シーズン】に見えてきた最先端のフットボールシーンにおける戦術のトレンドを探っていきたいと思います。



題して、 『【店長版】 10/11シーズン フットボール テクニカルレポート』 !!




<バルサは例外中の例外>



まず、今季10/11シーズンのトレンドを探るにあたって
その最強チームであり、且つ最も注目を集めたFCバルセロナは除外させていただく。



「トレンド」と言うには、現在のFCバルセロナは

あまりにも例外中の例外と言うべきチームになってしまった。



もちろん、今後バルサの流れに追随していくチームが現れる可能性は充分にあるが、

少なくとも現時点、この【10/11シーズン】に限って、

バルサのサッカーはバルサでしか実現するのが不可能な代物であった事は間違い無い。



より正確に今季のフットボールシーンを探っていくのであれば、

バルサを除いた残り全体を一つのシーンとして俯瞰していく事こそ

その実情に より深く迫れるものと個人的には確信している次第であります。




<「安定型」のチームが結果を残したシーズン>


そのバルサが圧倒的な印象を残した事で

今季のフットボールシーンを「攻撃サッカー 隆盛の時代」と片付けるのは気が早いというものだろう。



むしろ今季見てきたのは「イケイケの攻撃サッカー」ではなく

より「安定型のサッカー」が結果を出しているという事実である。


プレミアを制したユナイテッドは数年前のチームと比べるまでもなく

現在、「安定型」の最たるチームの一つであるし、

セリエAを制したミランもリーグ最小失点の「安定感」がものを言ったシーズンだった。


念願のCL圏内入りを果たしたマンチェスターCも

その豪華な顔ぶれに似合わず、「守備的過ぎる」「つまらない」と揶揄されながら

近年のイケイケ路線から しっかり守って⇒カウンターからテベス!のサッカーに姿を変えて結果を残した。



反対に持ち前の「イケイケ路線」を突き進んだトッテナムは惜しくもCL圏内から脱落。


(まあ、このチームの場合はそれよりもCLとの「二束の草鞋」による影響大と見るべきだが・・・。)



言うまでも無く「安定型」の権化であるモウリーニョを召集したRマドリーは

バルサさえいなければ ”ぶっちぎり優勝” の勝ち点に加え

CLベスト16の呪縛を解き、宿敵を倒してのコパデルレイ制覇と一応の結果は残している。




ただ、「安定型サッカー」の武器である「自陣に引いた時の守備の固さ」と「カウンターの鋭さ」という点だけで見れば、その完成度、機能性、共に09/10シーズンのCL覇者【モウリーニョのインテル】が依然、その頂点に君臨すると見る。



< チームが持つ「幅」が優勝の決め手に >


しかしその反面、【モウリーニョのインテル】には


「安定感はあるが爆発力は今ひとつ」


「速攻の完成度に比べて遅攻の完成度は…?」

(引いた相手を崩せない)


「チームのバランスが【個】<【組織】に傾き過ぎているきらいがある」

(例えばエトーが持つ「野生のストライカー」という一面は完全にチームの犠牲になっていた)



・・・などの課題が内在していた。




それに比べると、今季のユナイテッドやミランは

「カウンターサッカーの完成度」では一歩劣るものの、

チームが持っている「戦い方の幅」は圧倒的に広い。



速攻でも遅攻でもチームとして一定のレベルを兼備しつつ、

守備の安定感も抜群。



それでいてチームの中で「ルーニー」や「イブラヒモビッチ」「パト」らの

【個】を活かすメカニズムをもバランス良く備えている。



(前者は速攻ではエルナンデスの裏抜け&ナニのカットイン、遅攻ではギグスのゲームメイクからルーニーへの黄金ライン。

後者は速攻でパト、ロビーニョ、カッサーノらの絡み、遅攻でイブラへの縦1本)



彼らの強みは長いリーグ戦の中でどのようなチーム状況、試合展開に陥ろうとも 大崩れしない事だ。


土壇場での逆転勝利、はたまた完全な負け試合を「勝ち点1」に持っていく・・・etc


そういう小さな積み重ねが最後に大きくものを言うのがリーグ戦の覇者というものなのだろう。




では、来季以降は全てのチームが

【戦い方に幅を持たせたチーム】を作り始めるかと言えば、話はそう単純でもない。



ユナイテッドは名将ファーガソンが数年をかけてチームを熟成させてきた結晶であり、

ミランは「ロナウジーニョを含めた3トップ」⇒「戦術イブラ」⇒「イブラ抜きのハイブリットver」と

持ち駒とチーム事情が激変したこのシーズンを乗り切った末の賜物であるからだ。




事実、チェルシーとインテルは今季、チームの戦い方に幅を持たせようと試みた結果、見事につまずいた。



元々カウンターの鋭さとパワーには世界屈指のものを持っていたチェルシーだったが、

今季は課題とされていた遅攻での崩しに取り組んだ結果、攻撃の迫力がすっかり消えてしまった。



しかも冬の移籍では「カウンターの申し子」と言うべきFトーレスを獲得するなど

現場とフロントの意思もバラバラで、

70億をはたいた新戦力を使わない訳にはいかないアンチェロッティに至っては

シーズン後半は涙目になりながら背番号9を使い続け・・・・そして交代させ続けた。ww

更に、攻撃のリズムが狂うと守備まで崩壊するのがサッカーの怖いところ。


無駄に中盤でパスの本数が増えたチェルシーは

不用意なボールロストが目立つようになり

昨季では考えられないような失点シーンも度々目にするようになってしまう。



チマチマとパスをつなぐランパード、止まってパスを繋ぐエッシェン、

ヘディングをしないドログバ・・・って、これ誰得なんですか?(笑)



この面子が揃ってるなら、ランパードにはバシッ!とミドル打たせて

エッシェンには荒野を駆けるチーターごとく走り回ってもらって

ドログバさん目がけてドカーン!と蹴っとけばよくないですかね?(^^;




一方、昨季 その「カウンターサッカー」が一つの完成形を見たインテルは

今季 新たなチャレンジに挑まざるを得なかった。



もちろん、「欧州を制したのだから このチームを大きく変える必要はない」というのも一つの手だ。


それで今季よりいいシーズンが送れた可能性もあるが、

同時にチーム内にマンネリズムとモチベーションの低下が渦巻き、

もっとひどいシーズンになっていた可能性だって充分にある。





ここがサッカーチームの難しいところだ。





ただ、一つ言えるのは今季、「安定型」で結果を出した前者のチームは

どこも ”より切実に「結果」を欲していた” と言う事だ。



依然、その飽くなき「勝利への渇望」に衰えの無いファーガソン率いるユナイテッドはもちろんの事、

宿敵インテルにセリエA5連覇を許していたミラン、

大金を投じた大型補強で、もはやCL圏内確保は【至上命題】となっていたマンC。



彼らは今季、誰よりも結果を欲していた。



それに比べると昨季、既に結果を出していたチェルシーとインテルにはまだ余裕があり、

今季は【結果】に加えて【内容】も追求しようと欲張った末の悲劇だったとも言えるだろう。




サッカーにおいて、ある戦術やシステムが一定のレベルに達した時、

そのチームが採るべき進路は大きく分けて3つある。




一つは「現状維持」を選ぶ道だ。


あまり大きくチームに手を加える事はせず、

基本はそのままの選手、そのままのシステム、そのままの監督で戦い、

必要があれば、この内どれか1つぐらいはマイナーチェンジするという程度に留まらせておく。


この道を選んだチームの行く末は、多くの場合「なだらかな下降線を描く」事になる。


劇的に転落するリスクは小さいので、その下降線の間にまた新たな道を探る事も可能。

上手くいけばマイナーチェンジがハマり、下降線から再び上昇線を描くケースもある。






もう一つは「チームの幅を横に広げる」道。



これは先にも述べた

ユナイテッドとミランが成功し、インテルとチェルシーが失敗したパターンで、

成功のリターンと失敗のリスクも今季の彼らの姿 そのままである。



だが、「横に広げる」事で結果を得ることに成功したユナイテッドにしてもミランにしても

そのサッカーが果たして【現代サッカーを次のステージへと進化させたのか?】となると話は全く別である。



絶妙なチームマネージメントでシーズンを乗り切った彼らだが、

果たして今季のユナイテッドの (又はミランやマンCの)サッカーに

【新しい発見はあっただろうか・・・?】





そこでもう一つの道の登場である。




それは チームを更なる高みへと 【縦に伸ばす】という道だ。



<オンリーワンが起こすジャイアントキリング>



この【縦に伸ばす】という方向性を取れるのは

常時優勝が義務付けられるクラブではなく、むしろその一つ下。


いわゆる「中堅・新鋭」と呼ばれるチームの特権だ。



何故なら、この道は他の2つに比べて

膨大な時間を要する上、結果がついてくるかどうかすらも未知数。



今季、インテルやチェルシーがすぐに監督解任や新戦力補強で軌道修正を図ったように

彼らのような常時結果が求められるビッグクラブにとってこの道は"茨の道"。



反面、ビッブクラブに対抗すべき「中堅・新鋭チーム」にとっては

この道を選ぶメリットも大きい。



もし、彼らまでもがビッグクラブと同じ道を採った場合、

あとは個々の選手の差や、保有する選手層、

つまり物質的な「質」と「量」の戦いになってしまい、

そもそも同じ土俵で戦うのは彼らにとって不利なのだ。




そこでこのクラスのチームは”一点突破”を試みる。



ビッグクラブには編み出せないような斬新な戦術、新たな方向性を模索し、

結果をそれほど気にせず、時間をかけて進化させる。



そこで得た彼らにしか持ち得ない”オンリーワン”を持ったチームというのは

時代時代において”ジャイアントキリング”を巻き起こしてきた。



今季で言えば、「パスサッカーの権化」の道をひたすら行くビジャレアルであり、

「3-6-1」が斬新なナポリ、果敢に3トップで挑むパレルモや

どこまでも「イケイケ」なトッテナム・・・etc がそれにあたるだろう。




そして、何と言ってもこの道を行く長老的な存在といえばアーセナルを置いて他にない。



なんて言うと、もしかするとガナーズファンの方にフルボッコに遭うかもしれないが・・・(^^;



ただ、個人的には”いい意味で” アーセナルは本来この道を行く先駆者だと思っていたのに、

最近では他の2本の道を行く【優勝が義務づけられているチーム】と同じに見られてしまっていると感じる。



チームの予算規模や手持ちの駒を考えても

毎年CL圏内を死守している事はもっと評価されてもいいはずだが・・・(^^;


(トッテナムやシティと比較しても雲泥の差が・・・)



ただ、もちろんチームをひたすら【縦に伸ばす】事に腐心してきた結果、

このチームが持つ横幅(戦い方の幅)というのは圧倒的に細い。



この道を採るリスクは、チームが一つの【限界】という壁にぶち当たった時、

軌道修正が容易ではないという事だ。


(故に、本来その時代の最も優秀なプレイヤーを集めているはずのビッグクラブはこの道を選ばない)




現在のアーセナルが「どうしてもタイトルを」と言うのであれば道を変えるか

もしくは資金を投入して選手の「質」を上げるか どちらかを採るしかないのだが、

個人的には「長老」のままでいて欲しいとか思ったり・・・(汗)



<近代サッカーというトンネル>


結局、近代サッカーを進化させる「新たな発見」を担うのが【縦に伸ばす】チームであり、

それを熟成させ、一つのトレンドとして定着させていくのが【横に広げる】チームという

相互補完関係によって現在のフットボールの進化は成り立っている。




以上を踏まえ、

最後に「近代サッカーにおける進化の最前線」をトンネル工事に例えて、まとめてみようと思う。



(「・・・何故?」とは聞くな。)





トンネルの先端でスコップ片手に持ち掘り進んでいる一団が

チームを【縦に伸ばす】中堅・新鋭チームだ。


彼らはそれぞれが信じる方向へ思い思いに掘り進んでいく。


もちろん、途中で崩落事故に遭ったり、

気が付けばとんでもない方向に掘ってしまう事もある。



その様子を高みの見物で決め込んでいるのがビッグクラブの面々だ。

彼らは電気ドリルなどの充実した機器を持って後ろに待機している。


そして前衛を行くトンネルの内、

より良い過程を進んでいると認められたトンネル同士を繋げる事で【幅を広げ】一つの広いトンネルにし、

崩落しないようコンクリートで舗装して立派な「道」としていく。



最後に工事が完成したトンネルを

後続の「その他大勢」(残留争いチーム等)が続くという流れだ。





だが、今季に限って言えば、

脇目も振ることなく、ひたすら1つの道を掘り進んでいたバルセロナというチームが

途中、何度も崩落の危機に遭いながら、

気が付けばスコップからブルドーザーに道具を変え、信じられないスピードで掘り進んだ結果、

ビッグクラブの一団が舗装に駆け付けた頃には遥か遠くに見えなくなっていたという現状だ。



しかもこのトンネルの先は見えず、今も伸び続けているという・・・。




後を追う彼らが、この道をそのまま進めば

トンネルは1本の細い道となるが、

それで果たして先頭を行くバルサに追いつくチームは現れるだろうか・・・?



であるならば、道中

やはり独自の横道を掘り始める連中が出始める事であろう。



もし、その横道が一定の深度まで達すれば

トンネルは横に広がりを見せ始め、

先頭を行くバルサとて、その進路に影響されずにはいられない。







・・・・まあ、結局はそんな彼らの生死を懸けたドラマを

一番の高みから見物出来る僕らが勝ち組って事ですかね?(爆)



関連記事

『サッカーが上手い』とはスコールズの為にある言葉である 【引退に寄せて】

*2011-06-10更新 (アーカイブ記事)









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<"サッカーが上手い"とは・・・?>



『サッカーが上手いって どういう事なんでしょうかね・・・?』




それが 例え昨日からサッカーを見始めた人の無垢な問いかけだろうが、

20年以上サッカーを見続けてきた人からの深い追求だろうが、


僕ならその問いには一言  こう返す事でしょう。










『それならば スコールズのプレーを見ればいい』







<スコールズという男>




また1人、サッカー界から偉大な選手が去りました。



"ポール・スコールズ"




あのジネディーヌ・ジダンをして



『彼のプレーはほぼアンタッチャブルだ。彼のプレーを見るのに、飽きたことはない。
完全なフットボーラーに出会うことはほとんどないけど、スコールズはそれに限りなく近い存在だ』


『後悔していることの一つは、キャリアの中で彼と一緒にプレーする機会がなかったこと』



ここまで言わせる選手は他にいない。




他にもスコールズを賞賛するコメントを後を絶たないが、

とりわけ彼は同じプレーヤーから評価の高い選手だった。


反面、ファンやメディアからは「世界で最も過小評価されている選手」でもある。




確かに彼は派手なフェイントや華麗なテクニックを試合で披露する事はまずない。


メッシのような「ごぼう抜き」の個人技も

Cロナウドのような派手なパフォーマンスも皆無だ。



そもそもパスを受けて3タッチ以上ボールに触れる事すら稀なので当たり前なのだが、

反面、彼のプレーには一切の無駄がない。




フットボールからあらゆる無駄な要素をそぎ落とした 一つの完成形とも言うべきプレーヤー



それがポール・スコールズという男である。




常に味方の一番いて欲しいポイントを見逃さないポジショニング、


ピッチ全体を見渡す広い視野、


短く刻むパスと広く展開する絶妙のサイドチェンジ、


時折見せる極めて効果的なドリブルと鬼のように正確なミドルシュート。


守備でもひとたび危険を察知すれば深いタックルを見舞い、チームを鼓舞する熱い魂。





いつだってユナイテッドはスコールズがいるだけで別のチームに生まれ変わる。




走・攻・守をこれだけ高いレベルで兼ね備えた選手が

毎年、バロンドール候補のトップ3にすら入らないのであれば、

もはや「バロンドールとは何なのか…?」という疑問すら沸いてきてしまう。





<スコールズの代名詞>


月並みですが、個人的な彼のベストゴールは

やはり08/09シーズンのCL準決勝「対バルセロナ」戦で見せた決勝ゴールですかね。


(↑の画像のやつですね)



あそこにボールがこぼれてくるだろうという彼ならではの予測と

あの距離からミドルを枠の隅に飛ばせる技術の高さが光った素晴らしいゴールだったと思います。




ただ、あくまで彼の代名詞であり真骨頂と呼ぶべきプレーは

決して弾丸と称されるあのミドルシュートではありません。


(ユーチューブなどでもスコールズの動画を探してみたが

ほとんどがミドルシュートのゴール集だったのは残念(^^;)



店長がスコールズのプレーの中で一番のお気に入りであり、

且つ彼の真骨頂とも呼ぶべきは世界一の「パス&ゴー」にこそある。



これまた地味なスコールズらしく

言葉で説明するのも「大変伝わりにくい」ワンプレーなのだが・・・(^^;




要するに、センターサークル付近で横パスを受けたスコールズが

それをダイレクトでCFの足元へ向け「ビシッ!」と音の出るような

強烈なグラウンダーパスを送り、同時に自らは「パス&ゴー」!



CFからの落としを再び"前を向いて" "フリー"で受けたスコールズ。


ここからはもう何でもありの「スコールズタイム」だ。



そのまま鬼ミドルをぶっ放すもよし、

再びワン・ツー・スリーのダイレクトタッチで裏へスルーパスを送るもよし、

一旦、サイドに展開して深くえぐるもよし。




つまり、自陣で横⇒横⇒とパスを展開していたリズムから

スコールズが一転、ピッチ中央を切り裂くようなタテパスを送る事で

一気に攻撃のギアを上げ、相手チームを置き去りにするこのワンプレーこそ彼の真骨頂であると思う。



一見、非常に地味に見えるこのプレーは

敵陣で確実に数的優位を作る為のこれ以上ない効果的なプレーであり、


横パスの連続でチームの攻撃が停滞しかけると

必ずスコールズが顔を出してこの世界一の「パス&ゴー」を見せてくれたものだ。




FWに送るタテパス1つとってもヨーク&コールから始まり

ファンニステルローイを経てルーニーに至るまで

受ける選手によって微妙にパスを調整するというニクイ心遣いまで・・・・。



ああ・・・・それにしてもスコールズのタテパスを受けてきたFWの顔ぶれを見ていくだけで

ユナイテッドの歴史を語れてしまうなんて胸熱だなぁ・・・(しみじみ)





特に思い出深いのは


ロイ・キーンからの横パスを受け⇒ニステルの足元に鬼パスをぶつけ⇒リターンを受けると右のベッカムへ展開⇒ベッカムの美しいクロスから再びゴール前へと走りこんだスコールズの頭へ・・・!!





もうね、こんな1シーンが見られた日にゃあ、




「お母さん!今週はゴハンのオカズいらない。

僕、このスコールズがあれば1週間これで生きていける・・・!!」




そんな心境になったものですよ(笑)





(変態でしょうか? ・・・いいえ、店長です。)






そのスコールズが自身のラストマッチとなったCL決勝の試合後、

真っ先にピッチ上で”あの男”と交換したユニフォームを着て

戦友のギグスと話し込んでいる後ろ姿を店長は見逃しませんでした。


(まあ、身体のサイズが違いすぎるので、バルサのユニがピッチピチだったのを見て吹いてしまったんですがww)





今となって見ると、あれはきっと自身が17年のプロ生活で追求してきた

”フットボーラーの完成形”への夢をヤツに託したのではないかと・・・・




そう思ってしまうんですよね。







だって、きっとそれを託すなら世界に"ヤツ"以上の適材はいないでしょ?




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ギグス (ピッチピチやんけ・・・・・)

関連記事

挑んだマンUと受けたRマドリー 【異次元バルサを巡るストーリー】

*2011-06-03更新 (アーカイブ記事)







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<挑んだマンUと受けたRマドリー
【異次元バルサを巡るストーリー】>





あれからCL決勝を3回ほど見直してみました。


しかも3回目は90分をまるまるスロー再生にしてww


(注* 1試合見終わるのに2時間半かかります。よい子はマネしないように。)





何故って・・・?






坊や・・・(ry



だからとかではなく、

かと言って「他にやる事ないのか?」という事でもありません!(キリッ!)





何故ならば、あの試合が来季のサッカーシーンの"一つの基準"となるからです。



もちろんバルサはあれを更に超えるサッカーを模索していくシーズンになるでしょうし、

他のチームはまずはあのバルサに対抗し得るサッカーを探っていくシーズンになるでしょう。



そこで今日は、90分スロー再生で見えてきた 試合のポイントを検証しつつ、

そこに来季以降の展望を加えてお贈りしたいとおもいます。




【ベルバトフ外しの是非】
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試合後、一部では「ファーガソンの采配ミスでは?」とも囁かれている「ベルバトフ外し」


メンバー発表の際のちょっとしたサプライズだった訳だが、

店長はこれを観て「さすがはファーガソン・・・」と感心していたクチである。



というのも試合前から個人的には


「この試合でベルバトフの使い道は無いだろう」


と思っていたからだ。



あるとすれば途中投入と見ていたが、

その場合は既に試合はユナイテッドの負けパターンになっているはず。




CL決勝という大一番の試合で、

ボールはバルサに取り上げられる事が分かりきっている。


そのような厳しい試合で、

ベルバトフの 時に淡白な一面を見せるプレースタイルでは

そもそもピッチ上の熱気を帯びたテンションとは噛みあわないだろう・・・と。




この試合、ユナイテッドのCFに求められる役割は

「泥臭くてもいいからバルサから1点を奪う事」である。



今季のプレミア得点王を捕まえて言う事ではないのかもしれないが、

ベルバトフは決して生粋のストライカーではない。


今季積み重ねた得点の内容を見ても

ほとんどが固め打ち、もしくは格下相手に3-0、4-0と試合が壊れてから決めている得点の割合が高い。


試合を決定づける得点が大半を占めるエルナンデスとは非常に対照的だ。



したがって、「虎の子の1点」を狙うならば、

手持ちの駒の中で最も"点取り屋"としての気質が高いエルナンデスの起用は理に適っている。



あらゆる試合展開での交代策をも見据え、

ベンチに座る持ち駒に至るまで「戦える選手」で揃えてきた姿勢にファーガソンの本気を見た。



*補足ではあるが、店長の個人的な好みで言えば

断然エルナンデスよりベルバトフ派である事は付け加えておきたい。(笑)


(あの淡白さと表裏一体の「得点への美学」がツボww)




【無視されたエルナンデス】
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今季開幕前、まさかCL決勝の大一番に

この"チチャリート"がルーニーと2トップを組んでいるとは

ユナイテッドのサポーターでも予想だにしなかったのではないか。



エルナンデスのアドバンテージは何と言ってもルーニーとの相性の良さだ。


DFラインに張り付いて常に裏を狙う姿勢が、

結果的に相手DFラインを押し下げ、開いたスペースでルーニーをフリーにさせるのがチームの狙い。



両WGが前残りになって、CFのメッシが自ら降りてくるバルサと

CFをオフサイドポジションに上げて結果的にルーニーをセカンドトップとするユナイテッド。


方法論こそ違うものの、両チームの狙いは「10番をフリーにさせる」という点で一致している。




だが、エルナンデスにとって飛躍のシーズンを締めくくる大一番は苦い思い出となった。



この試合でもいつも通りの動きを見せたエルナンデスだが、

バルサのDFラインはその動きにつられる事なく、エルナンデスを無視するようにラインを高く保ち、

オフサイドによって彼を無効化した。


(この試合でエルナンデスが記録したオフサイドは両チーム最多となる5)



オフサイドを恐れ、手前に引いたりサイドに流れてボールを受ける場面では

百戦錬磨のピケ、マスケラーノを前にキープすらままならず完敗。



とはいえ彼は今季がデビューシーズンとなるルーキーだ。

この経験を来季への糧としてくれるだろう。





【ルーニーは別格?】
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試合後、各方面で「やはりルーニーだけは別格」といったものから

「ルーニー対バルサ」のような極端なものまで

『ルーニーだけは違った』という論調の記事を見かけたが、個人的にはこれに異を唱えたい。



確かにシュート数2本で1点を奪った決定力はさすがの一言だが、

2年前の決勝と比較して出色の出来だったとは思わない。



左SHとして起用された2年前の決勝では攻撃面では完全に「消えて」いたものの、

その献身的な運動量でSBの上がりを抑制していた。


今年は本来のFWに移された為、攻撃面でその持ち味を発揮したが

チーム全体における守備という観点で見れば、後方の負担は2年前より確実に増している。


(Dアウベスは完全に蘇ってしまった)



個人的には、攻撃ではFWとして絡みつつ、

もっと守備面でもブスケスを潰す働きを期待したかったのだが、いかがだろう…?





【ギグス起用の功罪】
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試合前のプレビュー記事でも【ギグス起用の是非】は注目ポイントの一つとして挙げさせていただいた。

結果的にファーガソンは想定された中で最も攻撃的な選択肢である

CHの一角としてギグスを起用してきた。


今季終盤戦で機能していた形をそのままバルサにもぶつけた事になる。



この日も守備時におけるギグスは、度々中盤のエリアを飛び出し

積極的にバルサのアンカーであるブスケスの位置まで深追いしてプレスを敢行。


この判断自体は2枚のCHの内、1枚がチャレンジし、もう1枚がカバーで残るという

いわゆる「プレミア式4-4-2」におけるオーソドックスな形。



しかし、バルサはこの動きを狙っていた。



撒き餌はピケ、マスケラーノ、ブスケスで作る最終ラインのトライアングル。


彼らによるパス回しでルーニー、エルナンデス、ギグスをおびき寄せ、

手薄になった中盤をシャビ、イニエスタ、メッシで徹底的に突く形がハマり出す。



残ったキャリックをフォローする為、パクとバレンシアがフォローに入るも

数的同数、時には数的不利の状態でバルサの中盤と渡り合うのは

いかにユナイテッドと言えども不可能だった。



一度撒き餌で振り切られているギグスには

戻りのスピードと運動量は期待出来ないし、ルーニーもこの日は前残り。



見かねたファーガソンが後半、パクをセンターに移してギグスを左サイドに出してみたものの、

今度はDアウベスの運動量にギグスが付いていけず、再三左サイドの裏を取られてしまう。


(マーカーがパク⇒ギグスに変わったDアウベスは後半、やりたい放題の4トップ状態に)



やはり守備という観点からはギグス起用のリスクがもろに出てしまった格好だ。



しかしその反面、攻撃ではギグスしか中盤で効果的な起点が作れておらず、

唯一の得点もやはり「ギグス―ルーニー」の黄金ラインによるワンツーから生まれている。



ファーガソンからすれば守備のリスクは重々承知の上で

「勝ち」に出る為に致し方ない采配だったと見るべきだろう。





【個々の質でも量でも・・・】



そもそも37歳のギグスを90分、そしてルーキーのエルナンデスを先発起用せざるを得ないユナイテッドは

単純な戦力値の比較でも劣勢は必至だった。



ギグスの起用は、バルサで例えれば 未だに守備は目を瞑ってロナウジーニョを起用し続けているようなものであり、

本来エルナンデスと同じ扱いでもおかしくないペドロ、ブスケスの若手組は既に様々な大一番を経験し、

今では大ベテランのような風格すら漂わせている。




更に、選手個々の「質」だけでなく、「量」でもバルサはユナイテッドを凌駕した。



試合後のスタッツではチームの走行距離で優ったのはもちろん、

特にパス本数のデータはこの試合を如実に物語っている。



先日のレビューでも述べた通り、バルサで最多のパスをさばいたのはシャビの136本だが、

ユナイテッドにおけるパス総数の1位と2位はCBのヴィディッチ(51本)とファーディナンド(40本)であり、

3位のギグス(43本)を加えたトップ3の合計でもシャビ1人分に及ばない。



個々のプレー分析でも、データ上の数値でも

改めてバルサの圧勝だった事が確認出来る。




<バルサの食いつかせるパス回し>
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この試合でも随所に見られたバルサにおけるパス回しの基本「食いつかせパス」について。


最も基本的な3人で行う形を解説していこう。



ここでは分かりやすく パスの出し手役をA、食いつかせ役をB、パスの受け手役をCとする。



まずはBが敵の守備陣形の中心にポジションを取る事から全ては始まる。

(出来れば2~3人のDFがブロックになっているそのど真ん中が最も望ましい)



ボールを持ったAはBへパスを出し、Bは2~3人のDFを引き付けつつパスを受け、

すぐにAへリターン。



この時、Cは既に "Bに相手DFが引き付けられた事で新たに生まれたスペース"へ移動を始めている。



Bからリターンパスを受けたAは、ワンタッチないしツータッチの素早いパスでCへ展開。



Cはフリーで、尚且つ前を向いた状態でボールを受ける。


(これで攻撃のスイッチがONに)





原理的には至って単純で、これは算数の問題だ。


B1人に対し、相手は2~3人を充てているので、

必然的にCは数的優位を傍受出来るという理屈である。



バルサはこのパターンを時に4~5人の選手が絡み、

相手が完全に食いつくまで徹底的に繰り返して行く。




だが、もちろん実際に行うのは言うほど簡単ではない。

特にBの役が肝となる。



当然だろう。


通常、パスの受け手はマークからなるべく離れて、よりフリーで受けようとするものだが、

それを敢えて敵のど真ん中で受けろというのだから。


もしここでボールを奪われてしまえば、

一気に3人以上がカウンターに置いていかれるリスクを負っている。



故にAとCの役は常時、局面によって誰もが請け負うが、

「食いつかせ役」のBだけはそのほとんどの場面で必ずシャビ、イニエスタ、メッシの内の誰かが

その役割を担っている事がスローによる検証で確認出来た。



(言うまでもなく、チームの中で最もボールロスト率が低い3人に限定する事でのリスクマネージメント。)





<『食えない男』>
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このバルサの「食いつかせ」に対し、一切「食いつかない」事で対抗したのが

"クワトロ・クラシコシリーズ"におけるモウリーニョだった。


バルサのDFラインで行うパス回しには徹底的に無視を決め込み、

3センターで中盤を閉鎖し続けた。



敢えて果敢に奪いに行ったファーガソンと 徹底的に"待ち"の姿勢に徹したモウリーニョ。


(イグアイン、ベンゼマ、アデバヨールをベンチに並べ、カウンターの起点エジルも途中で下げた。)



現在のところ、後者の方が結果は出ているが、

これはこれで難しい一面もある。



ユナイテッドやマドリーといったクラスのチームが

自分達のやり方を捨てるのはそう簡単な話ではない。



事実、モウリーニョのRマドリーも初対戦となったクラシコ(in カンプノウ)では

それまでリーグ首位を走ってきた自慢の布陣をそのままぶつけ、

そして0-5で惨敗している。



モウリーニョは新たなチームに就任して、キャンプから半年かけて作り上げ 確かな手応えを感じていたチームに


ファーガソンはあの決勝でバルサに敗れてから、2年の歳月をかけ、より完成度を上げていたチームに



それぞれ絶対の自信を持っていたはずだ。



もし、今すぐにでもファーガソンに再戦の機会が与えられたならば、

全く違ったアプローチで試合にあたるのではないだろうか。






<歴史は巡る・・・・>



最後に来季以降、このバルサへの対抗策として出現するであろう新たなトレンドを

店長の妄想を加味して、ここで一発ぶち挙げてみたいと思う(笑)



それは、もはや時代遅れの遺産と言われた

「マンツーマンディフェンス」と「3バック」の復権だ。



バルサがゾーンディフェンスの継ぎ目、隙間を付いてくるのなら

それに対抗するにはマンツーマンディフェンスしかない。



同じように、バルサがサイドを捨て徹底的に中央を崩してくるのなら

いっそこちらもサイドを捨て、

3バック+中盤3センターによる「完全中央封鎖」を試みても面白いんじゃなかろうか・・・?





歴史上のあらゆる名将と呼ばれた監督達は口々に言っている。




『戦術に古いも新しいもない。 歴史はまた 必ず巡る』


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