バルサ時代の終焉か? ~チェルシー×FCバルセロナ~

*2012-04-29更新 (アーカイブ記事)




2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0452033611942511671.jpg
<バルサ時代の終焉か? ~チェルシー×FCバルセロナ~


”盛者必衰”

クラシコ⇒CL準決勝と続いた僅か1週間足らずで全てを失ってしまったFCバルセロナ。

グアルディオラ監督の退任も発表され、
いよいよもって"一つの時代"の終焉なのか。


そこで今日はCL準決勝「FCバルセロナ×チェルシー」の試合から


"今、バルサに何が起きているのか"


”何故、バルサは破れたのか”


今季の総括も含めて検証していきたいと思います。



<CL準決勝1stレグ おさらい>


バルサのCL準決勝の相手はビラスボアスの退任でかつてのファイトボールに舵を切り、
復調の兆しを見せているチェルシー。

今の彼らには開き直った者の強みがある。(笑)


今季のチェルシーの出来から考えるとここまで勝ち上がってきた事自体が僥倖であり、
準決勝の相手があのバルサとなれば、もはや失うものは何もないだろう。

従って、バルサ戦での彼らのプランは至ってシンプル。

「今、自分達にやれる事を徹底してやる」だ。


まずバルサ相手に足元の技術で対抗出来る選手は誰一人としていませんから
(唯一マタぐらいかな?)
「中盤の主導権争い」「ボールポゼッション」 こんなものは端から放棄。いりません。


そしてボアス時代には度々スピード不足を露呈した高く上げたDFライン。

こちらも機動力やスピードではチェルシーのDFラインは対抗出来ないのでドン引きの一択です。

結果、大方の予想通り、この試合では今やリーガの下位チームでもなかなかやらないような
9人で自陣を固め、前線にはドログバ1枚を置いた「4-5-0-1」の布陣が完成。

奪ったボールはとにかくドログバ目掛けてドカンと蹴り出す
カタルーニャのサポーターが見たら失神しそうな身も蓋も無いサッカーでバルサを迎え撃ちます。(笑)


パス回し? ポゼッション?

そんなものはクソ食らえ。

ラストパスは「ツェフのパントキック⇒ドログバ」で充分。
(これでチャンスを作れちゃうからタチが悪いww)


あとは敵陣で得たスローインはもれなくロングスローを放り込んでゴール前での混戦を演出。

ひとたびバルサのパス回しにリズムが出そうになれば、ファウルで試合の流れを断つ事も辞さない構えです。


要は徹底して「サッカーをさせない試合」に持ち込んだ訳ですが、
いくら勝つ為とは言え、もはやここまでくるとスポーツとかゲームというより
ただの「作業」に近い感じですね(爆)


ホームのスタンフォードブリッジでこのサッカーを徹底出来る開き直りこそが
現在のチェルシーが持つ一番の武器かもしれません(笑)


ビラスボアスの元、窮屈なポゼッションと不慣れな高いDFラインにどこか不安げだった彼らの姿はもう過去のもの。


自慢のフィジカルを生かしてファイトボールに徹する彼らは実に活き活きとプレーしています。

(ビラスボアスとは一体何だったのか・・・。 ○| ̄|_)



試合は序盤から圧倒的にバルサがボールを支配して怒涛の攻めを見せますが
チェルシーの身体を張った気迫のディフェンスとチェフの「界王拳3倍」、
そして12人目のディフェンダー「ゴールポスト」の頑張りもあり何とか45分を無失点で凌ぎ
きります。

そうして迎えた前半のロスタイム―

ゴングと同時にクリンチで凌いできた挑戦者の
この試合初めて繰り出したカウンターパンチが王者の顎を捉えます。


チェルシーからすれば【メッシからのボール奪取】と【Dアウベスの裏】というのは明確に狙っていた形でしょうし、
きっと"してやったり"の得点だったのでは。



後半は1トップのドログバまで半分中盤に下げたような「4-6-0」布陣で
守りに守ったチェルシーが逃げ切ってタイムアップ。


メッシを「偽CF」として使う時代の先端「0トップ」と
とにかくガムシャラに守りたいが一心で生まれた泥臭い「0トップ」の対決で
後者に軍配が上がったりするのがフットボールの実に面白いところですよね。



<そして勝負の2ndレグ>


2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600041711941208034.jpg


チェルシーは1stレグと基本的に同じ形。

というか彼らにはもう、これしかありません(笑)



バルサはやはりクラシコで温存しておいたセスクをスタメンから起用し、
3-4-3の総攻撃に出る構え。

(多分、3-4-3の成否はセスクが握っている事をペップも自覚してるんでしょう。)


クラシコではロナウド、ベンゼマらの機動力に対抗する為、
ピケをベンチに置いていたペップも
やはりファイトボールが前提の対ドログバ戦ではピケを先発に戻してきました。


Dアウベスのベンチスタートは驚きでしたが、
初期位置が高い3-4-3のウイングで足元でボールを受けてからの独力突破では
Dアウベスより純正ウインガーのクエンカに一日の長があるという起用でしょう。

逆に言うと低い位置から上がっていく上下動に持ち味があるDアウベスには
この3-4-3では適正ポジションが存在しません。


それでもペップは今季1年をかけて試行錯誤を繰り返してきた
"新たなるフットボールへの挑戦"3-4-3と心中する覚悟です。



<セスクのいる3-4-3>


試合は1stレグのリプレーを見るかのようにやはり圧倒的なバルサ支配。

クラシコで不発に終わった3-4-3と違い、
この試合では【最前線で動き回るアレクシス】【中盤に降りてくるメッシ】
そして両者の間を行ったり来たりする【神出鬼没のセスク】の3者が上手く噛み合って
決定機を次々と生み出していきます。


それでも何とか耐えていたチェルシーでしたが前半35分、
遂にブスケスにゴールを許して2試合合計1-1のタイスコアに。

これに苛立ったのか、直後チェルシーはキャプテンのテリーが
何を思ったのかいきなり背後からアレクシスに膝カックン・・・もとい膝蹴りを見舞って一発退場。

チェルシー陣営の動揺は隠せず、直後にメッシ無双⇒イニエスタでバルサが逆転に成功。


バルサ相手にキャプテンを失い、10人になったところで
更にリードを許すという絶望的な状況に追い込まれたチェルシー。


フラストレーションの溜まる1stレグ⇒カンプノウでのクラシコ敗戦と
ここ1週間で色々ウップンが溜まっていたバルセロニスタ達は
待ち望んだ「バルサタイム」に沸きに湧きます。

観衆の興味は早くも「さあこの後、一体何回ゴールショーが見られるのか?」に移り、
当然スタンドの後押しを受けたバルサは一気に「イケイケ」のスイッチがON。


まさにここが試合のターニングポイントでした。


あとから振り返ってみるとバルサは前半終了間際に2-0で勝ち抜けスコアに達したこの時点で
一旦前半を終わらせておく・・・という選択肢もあったように思います。

ただ、やはりリアルタイムで試合を観ていると
あそこで一度冷静になって…というのは難しかったかもしれませんが。


結局バルサは勢いそのままに得点後のチェルシーのキックオフから下げられたボールに
猛然と「前プレ」で襲い掛かったのですがこれが完全に裏目に出ました。


この前プレがロングボールでかわされると中盤で受けたランパードには
最終ラインから飛び出したマスケラーノが持ち前の機動力を活かして潰しにかかります。

と同時に3バックのセンターが飛び出したのを見たチェルシーは
またもや「カウンターのキーマン」ラミレスがこのスペースを狙っていました。

バルサの3-4-3ではCBが飛び出したスペースのカバーはブスケスが下がって埋めるのが約束事ですが、
やはりここでも1stレグのシャビと同じくラミレスとの「ヨーイドン!」では分が悪すぎます。


【直後に生まれたチェルシーのゴール】
2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0392048511941208035.jpg


ランパードはマスケラーノを背負いながら裏のスペースへスルーパスを送ると
これを受けたラミレスが鮮やかなループシュートで貴重なアウェイゴールをゲット。

それにしても【ランパード⇒ラミレス】の流れは1stレグのリプレイを見るかのような形でしたね。

(自分達の少ない武器を確実に活かしてきたな~。チェルシーは)


これで2試合合計タイスコアながらも、
アウェイゴールの差でここのまま終了ならチェルシーの勝ち抜けという状況でハーフタイムへ。



<ペップの焦り>


後半チェルシーはテリーが抜けた分、ドログバを中盤に下げて「4-5-0」の布陣で攻撃を完全に放棄。

【チェルシーの4-5-0】
2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0586035011940063617.jpg



当然、後半の45分は虎の子のアウェイゴールを守り切る作戦だ。

唯一の攻撃手札「カウンター」すらも半ば放棄した格好で
かえってピッチ上の10人のやる事がハッキリとし、より守備が堅固になった印象すらある。



一方のペップは試合後の会見で「何故負けたのか見当がつかない…」と語っていたぐらいですから
この時、相当焦っていたと思うんですよね。


後半にペップが打った二つの交代策がそれを物語っています。


まず最初の一手は右のクエンカに代えて左のテージョを投入。

これで前半、ピケの負傷退場に伴い最終ラインに入っていたDアウベスを最前線まで持ってくると
右にDアウベス、左にテージョの両翼で何とかチェルシーのブロックを横に引っ張って
僅かでも中央にスペースを作りたい一心からの一手でした。


しかし「右ウイングのDアウベス」が機能しない事は分かっており、
そもそもペップ自身もそれを認識していたが故のアウベス・ベンチスタートではなかったのか?



続く一手は最後となる3枚目のカードでしたが、
この交代が試合を決定付けたと思います。





セスク OUT ⇒ ケイタ IN



やってもうた・・・。 ○| ̄|_




【2つの交代で3-3-4へ移行したバルサ】
2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600041711941208032.jpg


確かにこの時間帯、Dアウベスとテージョの両翼の誘いにチェルシーが乗ってこなかった為、
中は固くても外にはボールが運べていたバルサ。

結果、外からのクロスボールが増えていたので、
であればCFの頭数にケイタを…という狙いは分からなくもありません。



しかし、この交代は自己矛盾ではないでしょうか。



そもそも適正位置が無いからDアウベスを使わなかったはずで、
セスクにしたって3-4-3における彼の重要性を分かっていたから
わざわざクラシコまで温存させたのではなかったのか…?


当然、これではセスクのいない3-3-4はますます機能不全に陥り、
焦って「死にポジション」に置かれたDアウベスの存在感は消えるばかり。


なによりセスクを下げてパワープレイ要員のケイタを前線に放り込んだという事は
バルサの哲学を捨てる一手だったと取られても仕方が無いと思います。



結局、最後は自滅に近い形でバルサが崩壊し、一つの伝説に終止符が打たれました。



<バルサの黄金時代>


ある意味、この試合はリーガでもアウェイで勝ち点を伸ばせず
優勝を逃した今季のバルサを象徴するかのようなゲームでした。



"何故、バルサは敗れたのか?"



多くの試合後のレポートでは「何とか守りきったチェルシー」となっていますが、


では”何故、チェルシーは守り切れたのか?



続いてはこの核心に迫っていきたいと思います。



ですが、まず"バルサの何がいけなかったのか?"を知るためには
そもそも"バルサの何がよかったのか?"の前提が分かってないと見えてきません。


そこで簡単にこの"異次元のチーム"の何がその強さのベースとなっていたのかをザッとおさらいしておきましょう。


まず彼らの特徴は「徹底したグラウンダーパスのつなぎ」「サイドを使わない中央突破」です。


多くのチームがロングパス1本や浮き球を放り込む局面を
バルサは短いグラウンダーのパスを刻んでボールを運んでいくのは皆さんもご存知の通り。

サッカーにおけるパスの成功率というのは、断然浮き玉よりもゴロのグラウンダーの方が高く
そしてパスの距離が長くなればなるほど低下するものです。

つまり、浮き球や長いレンジのパスを排除した事が
バルサの圧倒的なボールポゼッションとパスの成功率に繋がっていた訳ですね。


そして近年、サッカーにおける「クロスからの得点率」は年々減少してきているというデータがあります。

これは守備戦術の発達がサッカーにおける一つの定型とも言うべき「クロス攻撃」を
無効化するレベルにまで上がってきたという事を意味しています。


時を同じくして、本来ウイングだったメッシをCFにコンバートしたペップバルサは
いわゆる「メッシの0.5トップ」システムを武器に
完全に「中央突破」に特化したチームへと舵を切っていました。


それでも多くのチームがまだサイドも中央も
つまりフィールド全体を効率良く守る為の「ゾーンディフェンス」を採用しているので
実はサイドは囮に過ぎず、半ば”捨てている”バルサは
中央にその人員を投入し、局面での数的優位を作れるという「時代の優位性」を謳歌していました。


そして、中央を破る為にバルサが用意したメカニズムも
時代にピタリと合わせた最先端のものだったと思います。

それが「食い釣かせ」を目的としたパス回しと連動する動きです。


現代のゾーンディフェンスではそれぞれが担当する受け持ちの「ゾーン」で
入って来た「人」を抑えるのがその基本的なメカニズム。

バルサはこのメカニズムを逆手にとり、敢えて敵のゾーンとゾーンの切れ目や
2人以上のゾーンが被るディフェンスの密集した地域でボールを受ける事で
複数のディフェンスを引き付け(食い釣かせ)てから
空いた(空けた)スペースに別の選手を送り込むという攻撃で
「ゾーンディフェンス」そのものを攻略してしまいました。


「じゃあ、他のチームも真似すればいいんじゃね…?」というと
それがそうもいかない話で、敢えて複数の敵に囲まれる位置でボールを受けるには
絶対的な足元の技術と幼い頃から「ロンド」等の独特なボール回し練習で鍛えた
膨大な時間を要する下地が必要となってきます。

これがバルサの強さを指して「育成の勝利」と言わしめる所以であり、
バルサのサッカーはバルサにしか出来ないという優位性を元に
黄金時代が到来して現在に至る・・・と。


(昨季のCL決勝で「現代サッカーの最高傑作」マンチェスターUが
完膚なきまでにやられていたのは象徴的な試合だったと思います。)




<バルサの敗因を探る>


しかし、サッカーでいつまでも勝ち続ける事は不可能です。

現代サッカーの厳しさと進化のスピードは
バルサから次第に「時代の優位性」を奪っていきます。

そこで続いては前章で再確認した「バルサの優位性」が
どのように崩れていったかという流れを追いながら
チェルシー戦での直接の敗因を3つ挙げていきたいと思います。


まず近年、バルサがサイドを捨てているという事はもはや自明の理となり、
今では多くのチームが対バルサ戦で「サイドを捨てた守り」をするようになってきました。

そして「食い釣かせ」のメカニズムも分析され、
守備でエサに食い釣かない事と次のスペースに狙って入ってくる"本線"の方を抑えるという
高度な対応を見せるチームもCLではチラホラ見かけるようになってきます。


本来、守備で食いつかない=つまり、マークに付かないというのは
それはそれで怖さがあるものですが、
バルサの選手達は中盤でマークを離してもそこからのミドルシュートというのがまず無いので
これがある程度成立してしまいます。


そして、バルサの攻撃というのは
基本的にまず相手のファーストプレッシャー(前線のライン)をかわし、
次に中盤のライン⇒最後にDFラインと順番に相手のラインを剥がしていく律儀なもので
いきなり縦1本のロングボールでラインを素っ飛ばす事が無く、(長い浮き球は使わない)
よくよく考えれば守る側としてはDFラインの裏に気を配る必要がありません。


これを逆手にとったのがまさにチェルシーがこの試合で見せた守備でした。



【両サイドとDFライン裏を放棄したチェルシーのブロック守備】
2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600036211940063618.jpg


チェルシーは両サイドとDFラインの裏は捨てて(もちろんある程度はツェフに任せるが)、
黄色で囲ったバイタルエリアだけを極端に意識したブロックを形成。

手前の中盤のラインは、ブロックの外に引いてボールを受けるエサには一切食いつかず、
後ろのDFラインは裏のスペースを一切気にすること無く前傾姿勢でもって
この2ラインの間を極端にコンパクトに保つ事に成功。


それでもバルサはこの黄色いエリアに何とかしてボールを入れて
意地になって中央突破を狙っていたのが印象的でした。


それでは実際の試合から、
チェルシーが実践した「対バルサ用」の食い釣かない守備を確認してみましょう。


【チェルシーの食い釣かない守備】
2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600035611940063694.jpg


局面は1stレグから、バルサの中盤での崩しです。

迎え撃つチェルシーは4-5の2ライン+ドログバまでが守備に下がって徹底的に守る構え。


まずは敵陣からイニエスタが手前に引いてくる動きで
チェルシーブロックの「食い釣かせ」を狙います。



2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600033311940063785.jpg

ボールは引いてきたイニエスタへ展開されます。

しかし、チェルシーは”ブロックの外へ引く動き”に対しては一切、誰も食い釣かない約束事が徹底されていました。

チェルシーはボールを持ったイニエスタに飛び込まず、完全受身の姿勢。

かといってここからの「サイド攻撃」や「DFライン裏への浮き球」は選択肢に無いので
イニエスタは一旦最終ラインまでボールを下げて作り直しを図ります。



2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600038411940063695.jpg

ボールは最終ラインで受けたプジョルへ。

すると今度はチアゴが降りてきて次の「食い釣かせ」を狙いますが
当然チェルシーは誰もこの誘いに乗りません。

(バルサからすると手前のブロックがチアゴに食いつけばシャビへパスを入れたかった局面)


するとバルサはボールを一旦サイドのクエンカに迂回させ、更なるエサを撒きます。




2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600036811940063620.jpg


ボールはサイドで受けたクエンカへ。

と同時に今度はシャビが手前に引いて、
空けたこのスペースをチアゴに使わせる「食い釣かせ」を発動。

これにメイレレスが食い付けば一気にチェルシーのブロック内にクサビを打てるのだが・・・



2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600037211940063696.jpg

瞬間、ドログバが引いて受けるシャビではなく、
中に侵入してくるチアゴへの警戒を腕を伸ばしてコーチング。

結果、メイレレスはボールを受けるシャビ(エサ)ではなく
次のスペースを狙っていたチアゴ(本線)に付いてブロックを堅守。



2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600037211940063697.jpg

結果、崩れないチェルシーのブロックと入り込めないバルサという図式が出来上がります。


つまり、「時代の優位性」であったはずの
「サイドを捨てた中央突破」と「浮き球を使わないグラウンダーの繋ぎ」が
今度は一転、相手に読み切られる事で「バルサを縛る弱み」になっている事が分かります。


やはりサッカーの本質は騙し合いです。

サイドからのクロスに競り合いの怖さが無く、
縦1本のロングボールもミドルシュートも無いとなれば
バルサはジャンケンで予め何を出すのか予告しているようなもの。

まあ、それでもこれまでは「分かっていても止められない」で
その意地を通してきたバルサでしたが、
やはり相手チームが高いレベルだったり、対抗策も進化が進むと
段々と勝ち切れない試合が増えてくるのは時代の必然だったかと…。



そう言えば、3年前のCLでも同じようにチェルシーの徹底した守備戦術に手を焼いていたバルサを救ったのは
後半ロスタイム、Dアウベスのサイド突破からのクロスと
追い込まれたイニエスタが思い切りよく放ったミドルシュートでしたっけね。





<敗因はメッシ?>


敗因その2はこの際思い切って提唱しますが、
それは・・・・・



【メッシの劣化】だったと思います。


「ちょ・・・www」 「世界1億人のサッカーファンに喧嘩売ったったww」
「さてはコイツ、今季のバルサの試合見てないぞ」 


何か今、各方面からの一斉の非難を受けたような気がしますが、敢えて言おう。




むしろ心地よい と。 (キリッ!)

「ドM 乙」



いえいえ、何も今季もリーガとCLで合わせて50点超え・・・でしたっけ?(^^;

もはや何点取ったのかも分からなくなるほど
毎週当たり前のようにゴールを重ねるメッシのゴールパフォーマンスにはケチのつけようもございません。

むしろ、「まだ進化するのか この男は…」と半ば呆れる境地であります(笑)


しかしですね、今季はその反面、守備での貢献がますます下がり
もはやその貢献度は限りなく0に近くなってきたかな…というのが店長の見立てであります。


ではこのチェルシー戦からメッシの守備を見ていきましょう。


【メッシの守備】
2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0552033511940063924.jpg


局面は2ndレグから。
(アウェイユニのチェルシーが白ですね)


今、イニエスタからメッシへパスが入ります。



2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0536033911940063923.jpg


しかし、これを読んでいたチェルシーはメッシを囲ってランパードがボールを奪取。


ですがバルサの強みは、このボールを奪われた瞬間の迅速な攻守の切り替えと前プレです。





2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0600033711940063925.jpg


ボールを奪ってドリブルで進むランパードには
まずプジョルが最終ラインから寄せて進行方向を塞ぎ、
セスク、イニエスタもプレスバックして囲い込みを図ります。

ところがボールを奪われた張本人のメッシが棒立ち。

奪われた瞬間には前にいたはずのイニエスタに既に追い越されている始末です。





2012-04-29_17-37-18_entry-11234638221_o0555033711940064045.jpg


囲まれたランパードはたまらず一旦後ろのミケルへボールを下げますが
ここにメッシが寄せていなかった為、ミケルにフリーでボールを展開されてしまいました。


確かにこれまでもバルサの中で最も守備の負担が軽いメッシではありましたが
自分が奪われたボールには猛然と追って奪い返す負けん気の強さがにこの選手にはあったはず。


この局面でもランパードを囲んで⇒下げたボールをメッシが奪い返していれば
一転して大きなチャンスに繋がっていた可能性は高く、
こういった細かいディティールが結果としてバルサの得点機減少を生んでいると見ます。


そして何より、メッシ1人がサボった事で
プジョル、イニエスタ、セスクの献身的な守備が全て無駄になってしまい、
しかも最後尾から寄せに出ているプジョルの裏が危険なスペースとして使われる可能性も。


攻守が密接に連動しているバルサというチームでは
一つのプレーが守備と攻撃で同時にデメリットを生むリスクを抱えていると見る事も出来るでしょう。


一連の見事なバルサのプレッシング守備の中で
メッシだけがポツンとチームのメカニズムから浮いているのが僕は非常に気になるんですよね。


確かに「完全守備免除」となったメッシの破壊力は今季も凄まじいものがありましたが、
次第にそれは”守備を免除されている分、攻撃はメッシ頼り”という
攻守分業化と攻撃でのメッシ依存が進み、
あくまでメッシもチームの一員として攻守をこなしていた頃と比べると
むしろサッカーの質という意味では退化していく方向に見えました。


無論ペップもその事は分かっていた上で
今季も何とか軌道修正を図ろうと色々試行錯誤を繰り返していたフシは見てとれましたが
(3-4-3への挑戦もその一環なんでしょうね)
いかんせんチームが向かう大きな流れには逆らえず・・・。


<それでもこれがフットボール>


まあ、ちょっとメッシには厳しい見方をしましたが、
それでもこのプレイヤーが3年連続バロンドールに値するプレーを見せていた事に疑いの余地はありません。

その彼がこのチェルシー戦で決めていれば勝ち抜けていたであろうPKを失敗するのがサッカーです。


つまり第3の敗因は「ボールは丸い」という事ですね。


「何だそれは・・・ww」と思われるかもしれませんが、
突き詰めればフットボールとはそういうものです。

どれだけチャンスを作ろうとも丸いボールが1センチずれて転がれば
そこに天国と地獄が生まれるのです。


そしてサッカーの女神はいつの時代も常に”継続”よりも”変化”を好んできました。

かつて、サッカー史にその名を刻んだ数多説のチームもその大きな流れには逆らえず
必ず次の新しいフットボールが生まれてきたのです。


それにこれでもって必ずしも「バルサ時代の終わり」とは限りませんよ?


「バルサを超えるのはやはりバルサだった」
なんていうオチだって充分ありえる・・・



それがフットボールだと思います。


(つまり、王子が決勝でハットをかます可能性だってある・・・とww)



<バルセロナという幸福>


しかし、バルサの敗戦も去ることながら
僕がそれ以上に衝撃的だったのは試合が終わった後のカンプノウの雰囲気でした。


観客はスタンディングオベーションで今、敗れたばかりのチームを迎えたのです。


それはペップが作り上げた一つの芸術作品に対する惜しみない賛辞でした。



試合翌日のスペイン・ムンド・デポルティーボ紙の一面がコレ↓です。

2012-04-29_16-43-10_entry-11236656271_o0300037011941208033.jpg

「Ser del Barca es millor que hi ha

(バルサのファンであることはこの上の無い幸せである)」





今季の全てを失った試合後の一面が
敢えてメッシのガッツポーズとチームを労う紙面とか・・・・ちょっと考えられないですよね。


(クライフ『負ける時こそ美しく』)



しかし、この賛辞こそがクレ達(バルセロナのファン)の偽らざる心境だったんでしょう。


そしてもちろん店長も彼らと同じ気持ちです。



当然、このブログの読者にはバルセロナとは違うチームを応援している人だってたくさんいるでしょうし、
中にはアンチバルサ派の人もいるかもしれません。


しかし、その全ての人達にしても、これだけは言えるのではないでしょうか。



敵であれ、味方であれ、第三者であれ・・・・







『この時代に生まれ、バルセロナと出会えた事はこの上の無い幸福である』と。


関連記事
スポンサーサイト

貪欲な王者と傲慢な挑戦者 ~【ドルトムント×バイエルン】~

*2012-04-17更新 (アーカイブ記事)




2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0513027411920510398.jpg
<貪欲な王者と傲慢な挑戦者>

さて、今日は当ブログ初となるブンデスリーガのマッチレビュー。

先週行われたブンデスリーガの天王山『ドルトムント×バイエルン』をお届けします。


もちろん我らが香川のプレーぶりも検証していきたいと思います。



<バイエルンの収支は?>

2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600041711920510397.jpg

まずはこの時点で2位に勝ち点3差の首位を行くドルトムント。

察するに怪我のゲッツェ以外は現状のベストメンバーを送り出してきた感じでしょうか。

正直そこまで詳しい情報を持っていないので、そういう事にしておきましょう(笑)


そしてこの試合で首位奪還を狙うバイエルン。

前回レビューしたシティ戦を始め、
今季のCLでは今までのイメージを覆す非常に面白いサッカーを見せていただけに興味が湧くところ。

シーズン前半戦を仕様の怪我で欠場していたロッベンが復帰し、
この試合ではロッベン&リベリーの「ロベリーコンビ」が復活。

エースのロッベン抜きであれだけのサッカーをやっていたところに
とうとう飛び道具まで加わってしまった。

一体どんな事になるのか末恐ろしい・・・。


但し、今度は代わりに怪我明けの司令塔シュバインシュタイガーのコンディション万全でなく
ベンチスタートとなってしまった。


【ロッベンの復帰】【シュバインシュタイガーの離脱】と。

この2つの収支をどう見るかでこの試合の見立ては大きく変わってくるだろう。


個人的には今のバイエルンは(ドイツ代表も)、
「シュバインシュタイガーのチーム」だと思っているので収支では”ややマイナス”ではないかと見ていたのだが、
もう一つの見方をするのならばシュバインシュタイガーの代わりにはクロースがいるが、
ロッベンは換えが利かないという意味で”ややプラス”という解釈も出来るだろう。


いずれにせよ答えは試合が始まれば分かるはずだ。


<貪欲な王者>

ところで、両チームの布陣をパッと並べて見た時に
もはや我々はそれほど天王山としての違和感を感じなくなっているが
そこにクロップが作り上げたドルトムントの凄さがあるとは言えないだろうか。

フンメルス、香川、レバンドフスキ…etc

確かに今でこそブンデスリーガでも有数の選手として知られている名手達だが
つい3年前までJ2でプレーしていた香川は言うまでもなく、
その他の選手も加入時点では世界でもほぼ無名の集まりだったと言っていい。

ロッベン、リベリーらを筆頭とする「ブンデス選抜」のバイエルンはもちろんの事、
シャルケらのチームと比較しても明らかに一段劣る戦力の彼らが
何故昨年の優勝に引き続き、今季も首位を走る事が出来ているのか?


そこにクロップの凄さがある。


現在でも資金力では明らかに分の悪い彼らにとって
多くのチームに目をつけられているようなワールドクラスの獲得は望み薄。

実際、現在のチームを見ても
「個の力で突破出来る選手」や「試合のテンポを自在に操るゲームメイカー」いる訳でもなく、
「決定力抜群のストライカー」も不在の状況だ。

それどころか、CBながらゲームを作れるフンメルスを除けば、
足元の技術も平均か、それより下の水準にいる選手も多いのが現状だ。


では、クロップはこの持ち駒で勝つ為にいかなるサッカーを実践しているのか?


それは一言で言うならば「ミスを前提としたサッカー」だ。

ドルトムントは足元の技術が秀でている訳ではないので、
当然試合中にはミスが起こる頻度も高い。

いくらクロップが名将と言えども、
いきなり選手達の技術レベルを飛躍的に上げる事は不可能なので、
クロップは無理なところは切り捨てて今出来る事、つまり可能性の方に目を向けた。


それが

「自分達のミスを減らすのが難しいなら、
いっそ相手のミスを増やしてみたらどうか」

という発想の転換である。


当然、ポイントとなってくるのは、どうやって相手チームのミスが起こる確率を上げるかだが、
じゃあ一体全体、人はどういう時にミスをするだろうか?


サッカーで言えば

”プレーのスピードと精度は反比例の関係にある”

という大原則がある。



当たり前と言えば当たり前の話だが、
ノープレッシャーの状態でミスをする選手はいなくても
プレーのスピードが上がっていけば、当然ミスは出てきますよね?

クロップとすればオーガナイズされたテンポの試合で真正直からぶつかっては分が悪い。

だったらいっそ、ゲームのテンポを極限まで上げて
お互いにミスが頻出するようなハイテンポの試合に持っていけたなら勝ち目も出てくるだろうという寸法だ。


そこでクロップは技術に光るものがなくても
とにかく小さく細かく動き続けられる選手を安値でかき集めた。

(香川はその象徴的な選手の一人ですね。
まあ、彼の場合は足元の技術もブンデス平均の上をいくという嬉しい誤算もありましたがww)


故にドルトムントの試合はとにかくゴチャゴチャした試合が多い(笑)

見ているこっちが疲れるぐらい攻守の切り替わりが激しいアップテンポなゲーム。

それこそがクロップの狙いだからだ。


そして、一度自分達の土俵に引きずり込んだらドルトムントは半端無く強い。

事実、そうやって彼らは勝ち星を重ねて2年連続の王者を狙っているのだから。


普通、どこのリーグでもチャンピオンチームはこういうサッカーはしません。

敢えて言うならドルトムントは「挑戦者のサッカー」そのものです。


恐らく今季開幕スタートに失敗し、逆噴射を起こしていたのも
昨季チャンピオンになった事で少し「挑戦者」の気持ちが揺らいでいたせいではないでしょうか?


今季は「ディフェンディングチャンピオン」の肩書きを掲げながらも
彼らはどこまでも泥臭く、貪欲な「挑戦者」なのである―



クロップ『 お前達のいいところは勝ちに貪欲で変にエリートづらしないところだな。
頂上にいるお前らがいちばん勝ちに対してハングリーなら今年もウチが優勝だ。 』




<傲慢な挑戦者>

対照的にバイルンはどこまでも王道を突き進んでいる。

それはそうだろう。

元々、個々の戦力ではリーグでも頭一つ・・・・いや、三つは抜けているのだから(笑)


故にバイエルンとすれば、きちんとオーガナイズされた試合展開で
真っ向からサッカーでぶつかり合えばまず負ける事は無い。

基本的にリーグでは対戦相手を上から見下ろし、
堅牢で組織的な守備と最後はロッベン、リベリーらの圧倒的な個の力で屈服させる姿は独裁者そのもの。


そう、本来であれば昨季優勝を逃した彼らこそが「挑戦者」であるはずなのに、
この2チームの姿勢はまるで真逆なのだ。


かくして「貪欲な王者」と「傲慢な挑戦者」の一戦は
やはりその気構えの違いが出てしまった。



<ドルトムントのボール狩り>


キックオフから圧倒的なアップテンポで仕掛けるドルトムントに
全く"サッカーをさせてもらえない"バイエルン。

バイエルンの基本的な戦術は、両翼に開いたリベリー、ロッベンの足元にボールを入れて
悠々と一対一の突破を仕掛けるところから始めたいのだが
ギアが壊れた暴走車のようなドルトムントのテンポに飲み込まれて
ロッベン、ミュラー、ゴメスは完全に試合から消されてしまった。


なるほど、ドルトムント絡みの試合が自然とテンポアップしてしまうのは
彼らの独特な守備戦術にその肝があると見ました。

現代サッカーの守備では主に「ゾーン」を見るか、人を見るかの「マンツーマン」が主流ですが、
ドルトムントの場合はとにかく「ボール」が最優先事項。

ボールめがけて人垣を作り、もしそこを突破されてもすぐに次のアタックと
抜かれた人員のプレスバックでボールにプレスをかけ続けるので
常にボール周りに人がゴチャゴチャと密集しており、
ルックアップと大きなバックスイングを必要とする広い展開を許しません。

こうなると局面がボール周辺の狭い地域で進んで行き、
あらかじめ「細かく動き続ける能力」を優先して選手を集めてきたドルトムントに分があるのは明らかです。


まあ、ちょっと一昔前の高校サッカーみたいなノリですが(笑)、
故に大きなリスクを抱えている守備でもあります。


では実際の試合から、ドルトムントのボールを優先した守備とそのリスクを検証してみましょう。


【ボール優先のリスク】

2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0573036211920582900.jpg


局面はバイエルンの左サイドからの仕掛け。

見てお分かりの通り、この局面は攻めるバイエルンと守るドルトムントが3対3の数的同数の関係にあります。

普通に考えればそれぞれが1人づつマークを捕まえるのがセオリーであり無難な気もしますが
それでは相手にミスが起こるのを「待つ」姿勢になってしまい、ドルトムントの望む展開ではありません。

故に彼らは積極的にミスが起こるよう「守備」でこそ”仕掛ける”のです。


2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600036811920582903.jpg

ボールがリベリーに渡るとここでまず2対1の数的優位を作って仕掛けます。



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600036711920582901.jpg


ただ、ここまでであればボールを持ったのがリベリーですし、
普通のチームでもリベリーには2対1を作って残りの1枚がアラバを抑える
このバランスがベストだと言えるでしょう。

しかし、リベリークラスになると2対1でもなかなかボールが奪えません。


こういう時ドルトムントはどうするかと言うと・・・・



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600038611920582902.jpg


アラバのマークにあたっていたギュンドガンもリベリー(ボール)狩りへ援軍に向い
もう「3対1でリベリーを潰してしまえ!」という切るか切られるかに出る訳なんですよ(笑)




2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600036611920587749.jpg

するとこれを狙っていたリベリーからアラバにボールが渡ってしまい、一転して大ピンチに陥ってしまう・・・と(^^;


まあ、この場面は相手がリベリーじゃなければ普通は潰されていますし、
アラバに対する周りのカバーもちょっと遅れた失敗例を敢えて抜き出したので、
普段のドルトムントであればそうそう頻出する場面ではないのですが、
一応 彼らの戦術では「常にこういうリスクは背負っているんだよ」というのをお伝えしたかったまでです。ハイ。


そもそもただの「特攻守備」では、上手く勝ちを拾える試合はあっても
その逆に爆死する試合も必ず出てくる訳で
年間トータルでの優勝はとても望めません。

このリスクをチームとしてカバーしているのが
クロップがチームに徹底させているプレーが切れるまで全員が足を止めないメカニズムです。

では実際の試合からドルトムントのアグレッシブな守備を見ていきましょう。


【ドルトムントの足を止めない守備



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600034311920593500.jpg


局面はまたもやバイエルンの左からの攻撃。

ボールを持ったリベリーにまずはブラスチコフスキが当たりに向かいます。



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600036811920593501.jpg


リベリーに当たりに行ったところで上手くサイドのアラバにボールをはたかれると
今度は後ろからSBのピシチェクがアラバを強襲。

この間にリベリーに軽くあしらわれた
ブラスチコフスキが体勢を立て直し、
足を止めずに次の守備へ向かっているところにもご注目。



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600039611920593499.jpg


ところが、ピシチェクは一発でアラバにかわされてしまいます。

(このへんの「局面での1対1」を見るとやはりドルトムントとバイエルンの差が出ますね(^^;)



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600038311920593502.jpg

すると足を止めずにプレスバックしてきていたブラシチコフスキ(どうでもいいが言いづらいわww)が
アラバに二の矢として襲いかかります。



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600037211920596781.jpg

で、このブラシチもまたアッサリかわされるって言うね・・・(^^;
(悲しいけどこれが現実なのよね)

で、次の瞬間には予め”味方が抜かれる事を想定していた”かのように
ギュンドガンが三の矢となってプレス!プレス!

(実際に”いい意味”で自分達の力を自覚している彼らは、
常に「ミスが起こる事」「味方が抜かれる事」を想定しながらプレーしている気がする)


先に抜かれていたピシチェクとブラシチが再び体勢を立て直して次の守備に向かおうとしているのも後々効いてきますよ。




2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600038911920596780.jpg

アラバはギュンドガンの鼻先でクロースにボールを預けてパス&ゴー。

これでクロースから先に抜けていたリベリーにダイレクトパスが入れば
バイエルンの狙い通りの崩しが完成だ。



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600037511920596779.jpg


だがしかし、ここにブラシチとピシチェクが三度目となるボールへのアタックで
遂にこのパスをインターセプトする事に成功!


ゾンビか お前らはwww


1人が抜かれても2人目がアタックしに行っている間に
抜かれた1人目が蘇ってくるのがドルトムントの真骨頂。

実際、フィールド10人がこれを徹底して出来るチームは
相手からしたら本当にやりずらいはず。

揃えた駒もまた100M走はたいして速くないけど、
3M~5Mを走らせたら鬼のように小回りが効く粒ぞろいですわ(笑)


う~ん、クロップやりよるな~。(^^;


この人、インタビューでバルサ関連の話を聞かれる度に
「バルサの強さの秘密は守備にこそある」
って繰り返してたのも頷けるほど、基本的にはバルサの守備とよく似ていますね。

(世界でもこんな守備に分類出来るチームは未だバルサとドルトムントだけじゃなかろうか?(^^;))



ちょっと乱暴な言い方をしてしまえば

”バルサから足元の技術を引いたチーム”

っていうイメージかな。(笑)



一方のバイエルン側ですが、この2つの場面を見ても分かる通り
リベリーとアラバのコンビネーションを活かした左サイドの攻撃はチームの生命線になっていました。

このへんはただのドリブル小僧から味方も使えるモダンなオールラウンダーに転身した
リベリーの存在が大きいように見えましたが、
それだけに逆の右サイドで常に足元へのボールをただ待っているだけのロッベンは古臭くも見え・・・。
そもそも完全に死んでましたね。こっちのサイドは。

これに引っ張られるようにミュラーとゴメスも連鎖して試合から消えてしまった事もあり
前半45分は”ピッチ上にはドルトムントとノイアーしかいなかった”状態。


逆に言えば、これだけ押し込んでおきながら1点も取れずに前半を終えしまうのが
ドルトムントの挑戦者たる所以かな。

逆の展開だったら0-3になっていてもおかしくなかっただろうに・・・。



<バイタルエリアの支配者>
2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0383030311920603550.png



・・・で、我らが香川ですよ。

せっかくですから、この選手のプレーを検証しておかないとね。


まずは彼の成長に触れておきましょう。

このチームで鍛えられている訳ですから当然、攻⇒守の切り替えは鬼のように速くなってます。


ドルトムントの両CBはパスの展開力に大変優れているのが特徴です。

(あれだけバタバタしたサッカーを志向しつつも、
最も展開力のある選手を最高後に置くあたりクロップの狙いが透けて見えますよね)


で、このタテパスを活かすのが、こちらもパスを受ける「レシーブ能力」に優れた香川です。

ドルトムントの攻撃スイッチは大まかに言って2つ。
高い位置でボールを奪えた時か
さもなければ後ろからのタテパスがバイタルエリアの香川に入った瞬間です。

このタテパスをバイタルエリアで細かく動きながら受ける香川が相手のマークを引きつけつつ、ダイレクトで後ろのボランチ、又は両サイドに落とすことで、
ボールをもらった選手が前を向いて次のプレーに移れるだけでなく、
落とした香川もそのまま足を止めずに次のプレーに移れるという
まさに香川の良さを120%チームで活かし切る為のメカニズムになっています。



香川のプレーを見ていると

「日本人のアジリティーはいずれ世界の驚異になる」

「考えながら走り続けろ」


そんな言葉の本当の意味が最近ようやく世界の舞台で証明されてきているように感じますね。




それでは実際の試合から香川のプレー検証を。


香川が攻撃面で求められている役割を突き詰めれば
それは敵陣のバイタルエリアを支配する事です。

マンCのシルバ、バルサのメッシ、マドリーのエジルらを筆頭に
現代サッカーではこのDFラインとMFラインの間、
いわゆる「バイタルエリア」と呼ばれるゾーンで
上手くボールをもらえる選手の価値がますます高まっています。

当然、守る方もこのバイタルに入れさせない守備が進化してきており、
そのせめぎ合いが一つの勝敗の鍵を握っていると言っていいでしょう。


【香川のバイタル受け】

2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600035311920615105.jpg

局面はドルトムントが最後尾でボールを回しているところですが、
この段階で既に香川は背中のバイエルンDFラインをまず確認。

バイタルエリアの「間受け」が難しいのは人間の視野から言って
ボールを受ける選手がDFラインとMFラインを同時に視野に入れる事が不可能だからでもあります。

故に事前のルックアップこそが生命線になってくる訳ですが、
その意味で香川のルックアップはもはや充分に欧州トップレベルのそれ。




2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600033111920615107.jpg

ボールが動いている間に香川はもう一つ、今度はサイドの様子を確認。

この”いつボールから目を離すか”も重要なルックアップにおけるセンスの一つで
パスが味方から味方に渡るまでの間は当然自分へボールが飛んでくる事は無いのでここが基本です。



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600035711920615108.jpg


バイエルンの陣形と味方の配置を確認した香川は
さすがにタテパス1本で警戒されている自分が受けるのは不可能と判断。

一度、手前の右サイドにボールを展開するよう腕を伸ばして指示を飛ばしています。




2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600033811920616996.jpg


空いた右サイドを使わせる事でクロースを引きずり出し・・・・






2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600036711920616995.jpg


一度サイドを経由した事で空いたバイタルエリアで香川がボール受けに成功。

まさに香川が思い描いた通りの展開がピッチ上で具現化され、
彼の2手、3手先を読んだ構想力とそれに見事応えた周りのレベルの高さが同時に伺い知れる一連の流れだが、
果たしてこのプレーは日本代表でも再現可能だろうか?

今野⇒内田⇒香川で同じ事が出来ただろうか?


いや、出来るようにしなくてはなるまい。

眠らせておくには香川のこの能力は勿体無さすぎる。

(でもそうすると本田と香川のトップ下問題、再びか・・・?(^^;)




<危険な存在>
2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0448033611920618774.png


試合は後半、ハインケスがたまらずシュバインシュタイガーを送り込んで
まずは試合のリズムを落としにかかります。

クロースも決して悪い選手ではないんですが、
やはり1人で試合のテンポに緩急をつけられるレベルまではまだ達しておらず
ドルトムントの濁流に飲み込まれつつあったハインケスもここらが限界と見たのでしょう。


シュバインシュタイガーが入ると、
彼がボランチから両CBの間やSBの位置まで引いてきてはボールを受け、
短く緩い横パスをはたいては再び受けるという一見意味の無いような捨てパスを織り交ぜて
早速試合のテンポを落としてきました。

これで試合の流れは五分五分に傾いていきます。


クロップもすかさず消耗の激しい中盤から
香川とギュンドガンを下げてパーツ交換で応戦。


すると試合が綱引きのように膠着し始めた後半32分ー

CKから遂にドルトムントが先制に成功。


これで流れから言ってもこのままドルトムントの逃げ切りが濃厚に見えましたが、
それでも相手はバイエルンです。

終盤の粘り強さは驚異的なものがあり、最後まで油断出来ません。

そしてこのラスト10分の勝負どころで鍵を握ったのはやはり、エース・ロッベンでした。


総攻撃に出たバイエルンに対し、
一転亀のように引いての懸命なディフェンスに回ったドルトムントもよく守っていたのですが、
終盤にPKを与えてしまいます。

キッカーはここまで全くと言っていいほど試合に乗り切れていなかったロッベン。

彼がPKスポットに立った時点で何となくの予感が漂っていましたが、
やはりシュートのコースが甘く、GKの素晴らしい読みもあって痛恨のPK失敗。

ロッベンはこの後、試合終了間際にもゴール前2Mの距離から
空のゴールに外すという大ブレーキになってしまいました。


そんなこの日のロッベンを象徴するプレーを一つ検証してみましょう。




2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600038411920620942.jpg

局面はドルトムントの中盤での組み立てから。

ボールを持ったケールがレバンドフスキにクサビのパスを狙いますが、
背後には既にバドシュトゥーバーが迫っています。

昨季のように1トップがバリオスであればこのクサビでもポストプレーやキープが望めるかもしれませんが、
今季レギュラーのレバンドフスキは背負ってもらうのが得意ではなく、
どちらかと言うと動きの中で欲しがるタイプのFW。


このへんはちょっとケールのパス選択も甘かったかな~と。






2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600037711920620945.jpg

やはりクサビのボールはバドシュトゥーバーにカットされてバイエルンボールに。

パスを受けたグスタボはサイドのロッベンにボールを回しカウンター発動か?

(ボールを奪われたレバンドフスキは当然もう守備に戻り始めている)




2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600036711920620944.jpg

ところがロッベンがドリブルを始める頃には既にドルトムントの帰陣が済んでおり
ロッベン1枚に対して3枚が壁のようにラインになる事で
ロッベンをサイドの狭いエリアに押し込んでいきます。



2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600036311920620943.jpg

もうロッベンにはゴメスへの縦パスしか選択肢が残されておらず、
ドルトムントは狙い通りのコースへパスを出させてから・・・・




2012-04-17_00-42-56_entry-11225256823_o0600037211920621006.jpg


はい、待ってました~!



この一連の流れでのポイントはボールを持ったロッベンに対し、
後ろからのフォローが一切なかった事です。


これはそもそもドルトムントとバイエルンにおけるプレーテンポの差とも言えますが、
それ以上にボールを一度持ったら離さない彼のプレースタイルと

ベッケンバウアー
『ロッベンはゴールした時にも、アシストした選手のところへ駆け寄ろうともしない。
あれでは単なるエゴイストのようではないか。』

そんな彼のメンタリティーがチームから孤立しているように見えて仕方ありません。


これならロッベンが欠場していたシーズン前半戦の方が
遥かにチームに流動性があって、いいサッカーをしていたと思うのです。



オシム『相手チームにとって最も危険なプレイヤーは
時として我々にとっても危険な選手となりえる』


この試合を見る限り『ロッベンの復帰』はマイナスに出たかな・・・と。


結局試合は1-0で勝利したドルトムントが連覇に大きく近づきました。


関連記事
プロフィール

soccertentyou

Author:soccertentyou
年間300試合観戦のサッカー馬鹿によるサッカー馬鹿の為の戦術分析ブログ

【メールアドレス】
wowow_2000(あっとまーく)yahoo.co.jp

サッカー店長のつぶやき
最新記事
最新コメント
カテゴリ
読んだ記事が面白かったら1クリックをお願いします↓
サッカーブログランキング
更新カレンダー
03 | 2012/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
マイベストサッカー本10選
広告リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
リンク