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ユベントスの美しき無敗優勝 ~4つの要因を検証~

*2012-05-27更新 (アーカイブ記事)



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<ユベントスの美しき無敗優勝>

今更言うまでもなく今季のユベントスは無敗優勝というそれはそれは素晴らしいシーズンを送ってきた訳ですが、
結果以上に僕が興味を惹かれたのがその試合「内容」の方でして。


あくまで個人的な意見ですが、
"僕が見てきた過去15シーズンのユベントスの中で最も良いサッカーをしていた"
と思います。


中でも過去のチームと決定的に違うのは、その”ボールを大事にする姿勢”です。

これまで、どちらかと言うと後ろでゴチャゴチャとボールを回すリスクは避けて
シンプルに縦にボールを蹴る力強いサッカーのイメージが強かったユーベにあって、
今季のチームが見せたGKブッフォンを使って最終ラインからの丁寧なビルドアップにこだわったサッカーは
目新しい光景でした。


とにかく「ボールと人がよく動く」ユーベの試合は見ていて楽しかったし、
そんなスタイルに引っ張られてかマルキージオなんて
「え…?コイツってこんな上手い選手だったっけ…?」(失礼すぎるだろww)
なんていう新たな発見もあり…。(笑)


「結果が全て」というカルチョの国にあって、
ここまで「結果と内容がリンクしたチーム」のしかも"無敗優勝"というのは特筆すべき事例だと思います。

(これまでは「カルチョ」「無敗優勝」なんて言えば、それこそカペッロでしたからねぇ・・・ww)



そこで、続いてはユーベの無敗優勝達成の要因を4つに分けて探っていきたいと思います。






【要因その1 ~新戦力が軒並み大ヒット!~】
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今季のカルチョメルカートの勝者は何と言ってもユーベでした。

欧州全体で見ても新たに獲得した選手達がここまで”大当たり”続出だったチームは他にありません。


ピルロは言わずもがなですが、1シーズンでセリエAでも5本の指に入るMFである事を証明した鬼の運動量ビダルや、
ピルロとのラインはもはやカフーの領域まであと一歩まで迫った右SBのリヒトシュタイナー、
チームの攻撃にその独特なリズムによってアクセントを加えた天才ヴチニッチ、
「特定の選手に頼る事なくチーム全体で点を取る」を体現した献身的で稼働範囲の広いCFマトリなどなど。


彼らの存在を抜きにしては今季のユーベは語れません。




【要因その2 ~試合数~】

冒頭にも書いた通り、今季のユーベは欧州CUP戦に参加していません。

したがってミランやインテルと比較すると試合数も少なく
例えばミッドウィークにバルサ戦を控えた状態で週末にレッチェと試合をする…なんて事も有り得るチームに比べ、
精神的にも肉体的にもセリエAに集中して臨めていたのは間違いありません。

そしてこれが”故障者ほぼゼロ”でシーズンを乗り切れた要因でもあるはずです。

はっきり言って今季のユーベの選手層はスカスカで
特に中盤のピルロ、マルキージオ、ビダルの3枚には代えがおらず、ほぼシーズンフル稼働です。

その他のポジションも似たり寄ったりで、
ピルロに至っては不在の際には別のチームと言ってもいいぐらい重要なピースでした。

もし主力の2~3人に長期離脱が発生していたら・・・無敗優勝は危うかったのではないでしょうか。


そしてこの”週1試合”というペースは
(厳密にはコッパがあるから毎週という訳ではないが)
チーム戦術の熟成にも大きなアドバンテージがありました。

現代サッカーにおけるトップクラブはほぼ”週2試合”、
試合が詰まっている時期には”週2.5試合”なんていう過密日程は当たり前の時代です。

しかし、このスケジュールでは試合と試合の間のチーム練習を
コンディションの回復とその維持を最優先させた軽めの調整にせざるを得ません。

その点、1週間をキッチリとチーム練習にあてられるユベントスは
シーズンを追うごとに着実に完成度が増しているのを目にする事が出来ました。


(「じゃあ、欧州戦線に参加してない某リバ○ールは何だったんだ・・・」というのは禁句ww)




【要因その3 ~走って走って走れ!~】


要因その3は、何より今季のセリエAでユベントスが一番よく走ったチームという事です。

プレシーズンのキャンプからとにかくハードな走り込みを徹底させたというコンテ監督でしたが、
現代サッカーのトレンドを外さない”走れるチーム”というのは
モダンなサッカーを実現する上で、もはや外せないファクターになってきました。


コンテの「走れない選手は使わない」という姿勢は終始一貫しており、
ピルロにも彼が出来る最大限の走りは求めていたし、
デルピエロをスーパーサブに固定し、クラシッチは戦力外へ。

確かに「走らない」「守備は期待出来ない」クラシッチですが、
時折試合で見せる”クラシッチ無双”の甘い誘惑があると
普通の監督はついつい頼ってしまいがち。

しかし、チームにこういった特別扱いのパーツがあると
結局は全体の士気低下と歪んだ攻守のチーム編成から
徐々にモダンなサッカーからレールが外れて行ってしまうもの。


その点でもチームの世代交代に失敗し、最も献身的に走っている長友が戦犯扱いされるようなチームは論外として、
イブラを組み込んだモダンなサッカーへ転換を図っているアッレグリのミランと比較しても
コンテのユベントスが最もモダンで走れるチームであった事は間違いありません。




【要因その4 ~コンテの柔軟性~】
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今季がセリエA初采配となったコンテ監督の見事な手綱さばきにも触れない訳にはいかないでしょう。

開幕前はセリエBのシエナで旋風を巻き起こした4-2-4の斬新なシステムに期待がかけられていたコンテでしたが、
開幕数試合で「あ・・・これはやっぱAでは無謀だわ」と気付いたのでしょう(笑)

これが機能しないと見るやすぐに4-1-4-1の現実的な路線へチームをシフトさせました。


これ、一見簡単なようですけど、
自分の過去の実績やコダワリの戦術に絶対の自信を持っている監督っていう人種は、
えてして自信がいつしか固執に変わり、一つの戦術と心中するパターンだって
今季の青いチームと若き指揮官で僕らは目の当たりにしてきた訳で・・・(^^;


結果的にこのシフトチェンジは大正解でした。

普通に2ボランチでは死んでしまうピルロも
両脇をマルキージオ、ビダルという3人分走れる選手でガードさせると
チームのバランスは一気に向上。

ここに「クォーターバック・ピルロ」とショットガンオフェンスという
今季の軸となる戦術が固まりました。


更にコンテは当初、対戦相手が4バックなら4-1-4-1、
3バックなら3-5-2と相手のシステムに合わせて2つのシステムを使い分けていました。

最初は守備面での噛み合わせを考えて、相手にフリーな選手を作らせない為の要素が強かったこの使い分けも
シーズン後半を迎える頃にはそれぞれに強みを持った独自のシステムとして
試合状況や得点経過に合わせて自分達の都合で能動的に動かせるようになってきます。


特に3バックでは次第に攻撃面にも大きなメリットを見つけ出しました。

ちょっと検証してみましょう。


通常、ユベントスが4バックでビルドアップを始める際は
両SBを高い位置に押し上げて2枚のCBと司令塔のピルロによる3枚が組み立ての始点を担います。

これに対し、相手チームは2トップならば1枚が最終ラインに、もう1枚がピルロに付く縦関係に、
3トップ、1トップ系の布陣であればCF+トップ下が同じく縦関係になって前プレにあたるので
どちらにしろ同じ3対2の関係が築かれます。




【4バックのユーベに対し3対2の関係になる始点】
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こうなると基本的には空いた方のCBに展開して縦につなぐパターンが多く、
対戦相手の研究も進んでくるとなかなかピルロを使えないシーンも増えてきました。


更に、相手の2トップが機を見てユーベのCBに2枚で前プレをかけてくると
苦し紛れのボールを大きく蹴り出すようなシーンも。


【2トップの前プレを受けるユーベの2CB】
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こうなるとピルロへのパスコースは完全に死んでしまいます。

(ユーベのCBボヌッチ、バルザーリはピケやフンメルスのタイプと違い、
ドリブルでのボール持ち出しにはリスクが大き過ぎる。)


そこで布陣を3バックにすると後ろの関係が4対2になって
抜群にビルドアップが安定するという強みが分かってきました。



【3バックで4対2の関係に】
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さすがに3対1だとDFラインではボール回し放題です(笑)


これで例え2トップが前プレにきたとしても・・・・



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3バックでのパス回しに相手が食いつけば容易にピルロへ展開出来るという強みが。


はたまた、相手の2トップが「その誘いには乗らないぞ」と我慢してピルロに付き続ければ・・・



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今度は主にドリブルでの持ち出しも得意なキエッリーニを使って、
2トップの守備を難なく突破出来るという要領です。


これはあくまで一例ですが、この他にもチームとして「ピルロを使わないビルドアップ」を熟成させた事、
そしてピルロ自身がミラン時代からこのスタイルでもう何年もプレーしてきた経験があるので
マンマークされても絶妙なターンとステップワーク、
そして相手の目を盗むポジショニングで巧みにマークを外す個の力があった事。

それぞれが上手く機能し合って、
どこのチームも一度は考える「ピルロさえ潰せば・・・」のピルロ潰しは終ぞどこも成し得る事は出来ませんでした。

(その意味では、それが予め分かっていたのか全く「ピルロ対策」を講じずに
正面からぶつかってきたアッレグリはさすがだなぁ・・・)


一見、現役自体のプレースタイルと頑固親父の風貌から
お堅いタイプをイメージしてしまいがちなコンテですが
(正直、店長もそう思ってたww)、
その実、非常に柔軟性を持った采配が活きていたコンテ監督。

(勝負どころでのデルピエロの使い方とかね…!)



当然+aでの補強は絶対条件としても
来季のCLでは主役を張る力は充分あるだけにこのチーム・・・要注意ですぞ?


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バルサの3-4-3は何故失敗に終わったのか?

*2012-05-25更新 (アーカイブ記事)





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<バルサの3-4-3は何故失敗に終わったのか?>


さて、今季のバルサはまだ国王杯決勝が残っているとはいうものの、
店長の希望的観測ではこのタイトルはビエルサビルバオの初タイトルとなるはずなので(笑)、
今季のタイトルはシーズン開幕前の「スーペルコパ」のみという事になります。



・・すいません、ビエルサ愛のあまり調子に乗りました。m(_ _)m

(本当はペップへ国王杯のタイトルという餞別を渡そうと
モチベーション100%で臨んでくるバルサにガクブルです・・・。)



とは言え、バルサが今季も最大の目標としていたCLとリーガという2大タイトルを取り逃してしまった事は
既に規定事実であり、そこには何らかの原因が潜んでいた事は間違いありません。



そこで今日はバルサの今季を徹底総括!

大反省会のていでお贈りしたいと思います(笑)



<3-4-3に抱いた夢>



今季のバルサを語る上で外せないのが【3-4-3への移行】です。


開幕戦となったビジャレアル戦で衝撃的なお披露目(5-0で虐殺)を果たすと
当初は格下相手や限られた時間帯のオプションに思われていた3-4-3は
じょじょにその出番を増やして行き、
遂にはシーズンの行方を左右するクラシコやCL準決勝(チェルシー戦)の大一番で用いられるまでに。


見方によっては、今季は【3-4-3と心中したシーズン】と言えなくもありません。


昨季、既に完成の域にまで達していた4-3-3を敢えて一度壊し、
更なる高みを目指した今季のペップ。


そもそも何故、そこまでする必要があったのでしょうか?



サッカーには『勝っているチームはいじるな』という昔からの格言もあります。



そこでまずはペップが3-4-3へ挑戦するに至った理由を主に四つに分けて確認していきたいと思います。




【理由その1】 ~飽くなき理想の追求~


これはまさに一言で言ってしまえば『それがペップという男なのサ…』という部分で(笑)

彼にとってフットボールの原体験とはカンテラからプロに引き上げてもらった
クライフ率いるドリームチームに他なりません。


ペップバルサの肝とも言える「メッシの0.5トップ」の原型も既に当時クライフが実践していたものでした。


周囲は何かとドリームチームとペップのチームを比較したがりますが、
当のペップ本人は事あるごとに「比較論」ではなく「系譜論」として自分のチームを語っています。


つまり、「ドリームチームやライカールトのチームがあったからこそ、今のバルサがある」と。


そういう意味では、"バルサの監督になった者は常にバルサを進化させ続ける義務を負っている"と見る事も出来るかもしれません。

(「バルサを」の部分を「フットボールを」に置き換えてみてもいいですね)



そんな彼が今季ドリームチームの代名詞である3-4-3を取り入れ、
そこに独自のエッセンスを加えた全く新しいフットボールへ挑もうとした事はもはや必然と言っていいでしょう。


「現状に甘んじる者にバルサの指揮を取る資格はない」



彼のそんな心の声が聞こえてくるような気概に満ちたシーズンが始まったのです。





【理由その2】~モチベーションの維持~


さりとてペップを初めとする選手達だって人間です。

昨季、取れるタイトルは全て取り尽してしまった彼らにとって
何か新しい事に挑戦するというモチベーションは今季を考える上で不可欠だったのもまた事実。


チームに刺激を与えるというペップのメンタルマネージメントという一面は
【3-4-3への移行】を考える上で外せないファクターになってきます。



【理由その3】~セスクの加入~


「埋められた最後のピース」

"セスクの加入"も当然3-4-3へ舵を切る大きな理由の一つでした。


周囲からは

「そもそも必要か…?」「せっかくの理想的なチームバランスを崩す恐れがある」

そんな声も上がる中、ペップがセスクの加入にこだわったのは
何も彼を「シャビの後継者」や「イニエスタの控え」としてベンチに座らせる為ではありません。



当然、ブスケス、シャビ、イニエスタ、メッシ、そしてセスクと
このバルサが誇るカンテラーノ達を同時起用するプランこそペップが頭の中に思い描いていたもの。



となるとこれまでの4-3-3からDFの数を削ってでも
中盤もしくは前線にセスクの居場所を作る必要があります。


そう考えた時、最も現実的でシックリ来るのがこの3-4-3という訳です。



【理由その4】バルサ対策への対応~


「理由その1」が「理想」だとするならば
「現実」的な問題として今季のバルサに突きつけられた命題がこの【バルサ対策への対応】です。


日進月歩を繰り返す現代サッカーにおいて「常勝バルサ」は全てのチームのターゲットになっています。


既に多くのチームが色々な「バルサ対策」である程度の成果を出してきていた事もあり、
当のバルサの方も「進化」を迫られているという現実的な問題がそこにはありました。



そして実際にペップが目指した3-4-3は
バルサ対策を打ち破る為のギミックが幾つも盛り込まれていたのですが、
これがペップが思い描いてたいたようには機能しなかった・・・。



ここに今季の敗因があります。



続いての章では「何故3-4-3が機能しなかったのか?」


その核心に迫っていきましょう。




<3-4-3が機能しなかった3つの原因>



ペップのバルサを苦しめた各チームの「バルサ対策」の中でも最も早く広まり、
今や完全に対バルサ戦の【テンプレ】ともなりつつあるのが
【サイドを捨てて中を閉めるディフェンス】です。



これはバルサの心臓部であるブスケス、シャビ、イニエスタ+「降りて来るメッシ」の中央攻撃を防ぐ為、
外のエリアはある程度捨ててでも中に人員を投入して密集を作ってしまうという守り方です。


外からの単純なクロスとDFラインの裏を狙った一発のロングボールが
バルサの攻撃のメカニズムにほとんど組み込まれていない事を逆手に取り、
DFラインは後ろを気にせずある程度の高さを維持しつつ、
MFのラインを下げてこの2ライン間のスペースを消失。


守備のラインはいずれもペナルティエリアの横幅を取る事で、
とどのつまり守備ブロック全体を前後左右から中へ圧縮させたような守り方と言えるでしょう。


【サイドを捨てて中を閉める守備】

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これではさすがにメッシも前を向くスペースがほとんど無いばかりか、
シャビ、イニエスタらが入り込む余地も無く、パスを通す事もままなりません。


要はバルサが一番使いたいエリアのスペースが極端に消されている状態です。


ペップはこの膠着状態を打破する為、
今度は自分達の手で相手の守備網を前後、左右から引っ張って間延びさせる事を狙います。

その為の秘策こそが純正ウインガーを両ワイドに置いた3-4-3でした。



予断ではありますが、この両翼が敵のDFを左右に引っ張って中を空けるという発想は
元々クライフのドリームチームが採用していた戦術でもあります。



クライフ「左右のウイングは常に両足でタッチラインをまたげ」


なんていう逸話も残っているぐらい
当時のバルサは4番がフィールド中央で顔を上げた時、
両翼の選手は左右のタッチライン目一杯に開いているのが基本でした。


その後、やはりオランダ人のファンハールが率いていた時代にも
4番(ペップ)とフィーゴ、リバウドの両翼という関係は鉄板のまま。


そしてこれが当時、絶大な効果を上げていた背景には
サッキが提唱した「ゾーンプレス破り」という側面があったからだと言われています。



つまり当時からの時代の流れを追ってみるとこういう事です。↓



90年代前半~【サッキ革命】

フィールドのコンパクト化が進み、「スペースレス」「タイムレス」の時代へ。

「ウイング」と「ファンタジスタ」が消滅し、
技術や閃きよりも体力と筋力に優れた選手が重宝されるように。





90年代後期~2000年代中盤【ウイングの復権】


一方、極限までコンパクト化が進んだ流れに
技術でもってこれを打破しようというのがクライフを源流とするスペインで起きた【ウイングの復権】。

クライフはサッキのゾーンプレスなどには付き合わず、
あらかじめフィールドの広い範囲に選手を配置して
技術の高さを生かしたパスのつなぎでゾーンプレスの網をかいくぐる方向性を示した。

実際に狭いエリアに選手を集中してボール狩りを行うサッキのゾーンプレスは
その網をパスで逆サイドに繋がれた時に完全な機能不全を起こしてしまう。


4番の展開力と両翼の突破力+クロス精度は【ゾーンプレス殺し】には持ってこいで、
以降、時代は再びフィーゴ、ロナウジーニョ、ロッベンらの【ウイング復権】へと傾いて行く。

(ファンハールがあれほど「リバウドのウイング起用」に拘ったのもこのせいだと思われる)


時を同じくして欧州の覇権は【ゾーンプレス】のイタリアからスペインへ。




2000年代中盤~後半 【サイド閉鎖】


横へと幅が広がった攻撃に再び門を閉じたのは時代の寵児モウリーニョ。

これまで攻撃の花形ポジションであった両ウイングに全力での守備を求め、
敵のウイングがボールを持った際にはプレスバックして自陣まで帰り、
味方のSBと挟み撃ちするかたわら、中からはボランチまでが加勢する事で
「攻撃の主戦場」であった両サイドのエリアを完全閉鎖へと追い込んだ。


特に「カテナチオ」の文化とピタリ一致したインテルでの2年目には
「サイド攻撃の象徴」とも言える当時のバルセロナを見事なサイド閉鎖と
一転繰り出される鋭いカウンターで沈めて見せた。

時代は「技術」を「ハードワーク」が凌駕する流れへ。

(プレミア勢が欧州で強さを発揮)





2011年~ 【メッシの0.5トップシステム】登場

ペップのバルサがメッシを偽CFに置き、
両翼にもウイングを置かない「ウイングレス」の3トップを発明。

横68Mの横幅を効率よく守る事を前提として作られた従来の守備システムを
局地的な数的優位とポジションレスから繰り出される「中央突破」で切り裂いた。

こうしてバルサだけがこの時代では特殊なシステムを使って戦う事で「時代の優位性」を謳歌した。




2012年~ バルサ対策の中央閉鎖

各チームがバルサ対策を進め
一度横に広がった守備システムが中を閉める流れへと傾いていく。



まさに攻撃と守備のイタチごっこと言える戦術史の流れを受けて
ペップは再び「時代の守備システム」を横に広げようと試みた末の3-4-3だったと考えられる。


奇しくもそれは、師クライフがサッキのゾーンプレスに対抗する為に歩んだのと同じ道であった。

(これが時代を経ても変わらないバルサイズムなのか?)



しかし皮肉にもその後、両者の歩む道は対照的な結果となる。




<【原因その1】機能しなかったオトリ>


これまで両翼のスタメンを担ってきたビジャやペドロは「外」に張るのではなく
斜めの動きで「中」に進入する事で持ち味を発揮してきたプレイヤーでしたが、
今季はこの両翼にいわゆる純正ウインガー(クエンカ、テージョ、Dアウベス)を置く事でワイドの位置取りをキープしてきました。


言わば彼らを"オトリ"に使って敵守備網の注意を横に広げ、
再び中にスペースを作り出そうという狙いです。

(この移行に伴い、今季はペドロの出番が激減。使う場所が無いからです)


【両ワイドをオトリに使ってDFを横に広げる (セスクver)】
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このように例えばセスクが前線に入るのであれば、
空いた中のスペースをメッシと共有する事が可能だし、


セスクの代わりにアレクシスが入るのであれば・・・




【アレクシスver】
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アレクシスが得意とする裏抜けでDFラインを後ろに引っ張る事で
今度は空いたバイタルエリアでメッシ無双が発動・・・という寸法です。


当初このペップの狙いは上手く行くかに思えたのですがここに大きな落とし穴が潜んでいました。



敵のDFが両翼に"食いついてくれなかった"のです・・・。



そもそもペップ就任以降のバルサは純粋なウイングとCFを敢えて不在にして戦ってきました。

という事は裏を返せばここ2~3年のバルサはウイングとCFの育成が
ポッカリと空白期間になっていたという事でもあります。

事実、ペップの戦術にピタリと符合したペドロ、ビジャ、チアゴが持ち味を発揮する反面、
ボージャン、イブラ、ジェフレンらがチームを去って行きました。




そう考えると今季、ペップがアレクシスの加入にあそこまでこだわったのも
「3-4-3への挑戦」に「ウイングの必要性」を感じていたからこそだったのかもしれま
せんね。



結果、望みどおりにアレクシスとセスクを手に入れたペップでしたが
ここで大きな誤算となったのが「ビジャの長期離脱」でした。


これを機に、それまではウイングとして使われる事が多かったアレクシスが
CFで起用されたり、裏を取る動きで相手DFラインを引っ張ったりという
これまで「ビジャが担ってきた役割」を課せられる事が多くなっていきました。


代わりにウイングの役割にはクエンカ、テージョをカンテラから戦引き上げて補充。



"足りない戦力はカンテラから探す"



これまで通り、ペップの一貫した姿勢が垣間見えます。



ところが、シーズン半ばでカンテラから突如引き上げられた若者達に
「新時代を切り開くバルサの3-4-3」とその戦術的キーマンという役割は少しばかり荷が重過ぎました。


結果、消化不良を起こした彼らはチームの中で明らかに浮いており、
怖さの無いウイングに「オトリ」としての効果は到底望めるものではありません。


こうなると多くのチームが
「クエンカ、テージョはボールが渡ってから対応しても充分間に合う」という
割り切った対応でDFが釣られず、横に広げるというペップの狙いが活きないばかりか、
効果を発揮しないオトリとして両翼に張り続けるウイングの2枚分、
バルサは数的不利で戦っているようなもの。


国内リーグはまだしも優勝の行方を左右するクラシコやCL準決勝といった大一番でも
彼らと半ば心中する覚悟で臨んだペップの決断は完全に裏目に出ていたと思います。

(ペドロを戻しての4-3-3でよかったような気がしたんですけどねぇ・・・(^^;)



その上、両ウイング以外の選手達が
そもそもサイドを縦に切り裂いての折り返しという攻撃に対応した選手達ではなく、
特にメッシなんかはテージョ、クエンカが縦に勝負を挑むたびに叱りつけていた始末。

(まぁ、そこを正攻法で折り返されてもメッシは何も出来んしなぁ・・・(^^;)



総合的に見てチームにはまだ3-4-3をやれるだけのベースが無かったように思います。




<【原因その2】消えたDアウベス>


もしかすると3-4-3導入の最大の犠牲者はこのDアウベスかもしれません。


これまで4-3-3では守備時にSBをこなしつつ、
攻撃時には最前線まで上がってきてウイングとして振る舞うなど
彼の最大の持ち味はその活動量にこそありました。


右サイドのタッチラインを1人で受け持てる彼の存在は
実質的にバルサが1人多い人数で戦っているようなもの。



ところが最前線にオトリとして固定される3-4-3では
彼のいいところが全て死んでしまったかのような劣化ぶり。


守る方としても止まっているアウベスに怖さは無く、
こちらもオトリとして全く機能していませんでした。


いずれにせよ「Dアウベスのポジション固定」
随分と相手を楽にしていたように思います。




<【原因その3】守備の崩壊>



3-4-3導入の亀裂は攻撃だけでなく、
当然後ろの守備陣にも大きな影響を及ぼしていました。


3バックだろうと基本的に「前プレ」でボールが奪えている時は問題無いのですが、
いざそこを突破された時、3バックの両脇に出来たスペースは完全に狙い撃ちにされていました。

特にリーガでは両サイドに個の突破力に優れた選手を置くチームが多い事もあり
相手に格好の狙いどころを与えてしまった感も否めません。


【狙われた3バック脇のスペース】
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もちろん3バックにする以上はペップもそのリスクは予め想定済みだったのでしょうが、
今季は「少数精鋭」による「連戦」の疲れから主力のコンディションが低下しだしたシーズン佳境で
明らかに「前プレ」の鋭さが鈍り出したのは誤算だったはず。


メッシなどは完全に「守備放棄」に近い状態になり
「前プレ」が効かない3バックは、その弱点が常に晒されているようなもの。



加えて今季はピケのパフォーマンスが著しく低下していた事もあり
3バックにはしばしばマスケラーノやアドリアーノまでもが駆り出されていましたが、
この編成には若干の無理がなかったでしょうか?



プジョルも加えていずれも「前」に強いCB陣の編成と
CBだろうと前からアグレッシブにマークを捕まえに行くバルサの戦術は
インターセプトのメリットと自陣ゴール中央のエリアが空くリスクと常に隣り合わせです。



特に本職がボランチのマスケラーノがピケの代わりに3バックの真ん中に入った際は
中盤まで上がって寄せるマスケラーノの良さ以上に、
3バックの中央が空くというリスクの方が目に付きました。


実際にCLの舞台を後にする羽目となった準決勝のチェルシー戦では
前に出たマスケラーノの裏にスペースをカウンターからラミレスに突かれて失点しています。


【対チェルシー戦の失点場面】
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空いたスペースはブスケスが降りてきてカバーする約束事があるとは言え、
相手のレベルが上がった際の高速カウンターと精度の高いパスには
毎回毎回ブスケスも対応し切れません。




・・・以上、バルサの3-4-3を検証してきましたが、
個人的にはペップの現状に決して満足せず、
常にその上を狙う求道者としての姿勢は非常に好感が持てるものでした。


挑戦には常にこういった失敗はつきものですし、
また必ずやこの男はサッカー界に帰ってきて理想の続きを追うであろうと店長は確信しています。



まずは来季、ビラノバがペップが描いた夢を引き継ぐ形でチームを始動させるのか、
それとも独自の色を加えた「新しい方向性」を見せるのかに注目です。



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Footballの不条理 ~CL決勝 バイエルン×チェルシー~

*2012-05-22更新 (アーカイブ記事)





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<Footballの不条理 ~CL決勝 バイエルン×チェルシー~>

今季のCLは誰もが予想しなかったチェルシーの優勝で幕を閉じました。


これで開幕前に『今季の注目はチェルシー(ビラスボアス)』と言ってきた
店長の目に狂いは無かったと・・・敢えて言わさせていただきますww(キリッ!)

(STAFF「コイツ・・・いつかチェルシーファンと王子ファンからフルボッコにされるで。きっと」)


・・・と御託はこれぐらいにして今季フィナーレ(?)を飾る
CL決勝のマッチレビューに移って参りましょう(^^;。



<ベストメンバーを組めない決勝戦>


両者共にサスペンションで大幅な布陣変更を迫られた決勝戦。


両監督がどんなオーダーを並べてくるかは一つの勝敗の鍵を握ってくるはずです。

それでは早速注目のオーダーを見ていきましょう。


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バイエルンは出場停止のCBにティモシュク、左SBにコンテント、
ボランチにはクロースを下げて空いたトップ下にミュラーを置いてきました。


SBに関しては右にラフィーニャを置いてラームを左に回す手もあったのだが、
ハインケスはあまり選手の配置をいじるのは良しとしなかったのかもしれない。

それにしたってこの状況下ですら使われないのであれば
もはやラフィーニャは戦力外も同然だろう。

確かに守備面に大きな課題を残しており、
肝心の攻撃でもロッベンとのコンビネーションが絶望とあれば
ハインケスでなくとも二の足を踏みたくなるところ。


これなら攻撃面では期待薄でも、
ある程度守備に計算が効くコンテントの起用は理に適っていると言えなくもない。




対するチェルシーは右のSHにベルトランドを置くというサプライズ起用を用意していました。

恐らく右に置いたカルーとの左右の守備バランスと
バイエルンの生命線であるラームの攻め上がりを想定した起用だったと思われます。

とにかく大一番での抜擢にベルトランドは献身的に指揮官の要求をこなしている姿が印象的でした。

(*彼の起用については後で詳しく)




<ファイトボールが起こす不条理>


キックオフされた試合はやはり守りをベースに自陣深くブロックを築くチェルシーと
両サイドを基点にその堅守を崩しにかかるバイエルンがボールを持つという鮮明な構図に。


そのチェルシーの守備については試合後、各方面から賞賛されていましたが、
あくまで純粋な戦術的完成度で見ればお世辞にも褒められた代物ではありません。


サッカーにおける守備の優先順位は
まず【シュートを打たせない】⇒【スピードを遅らせる】⇒【ボールを奪う】の順に
達成されていくべきものですが、
チェルシーのそれはシュートorラストパスの最後の局面で何とか凌いでいるに過ぎません。

(つまり守備戦術の達成度では最も低いエリア)


これもよく比較として使われる「モウリーニョ時代」のチームは
サイドのエリアでの迅速な囲い込みから意図して"ボールを奪えて"いただけに
当時の守備と比較してもその差は歴然だ。



但し、普通これだけ深く引いてしまったら後はもうやられっ放しのすき放題にされてもおかしくないのだが、
チェルシーはこの守り方で案外安定してしまうのだから不思議なものだ。


そこには今季一度どん底を経験してきた彼らならではの開き直った強さがある。


「中盤の主導権争い」「ボールポゼッション」「DFラインの押し上げ」


もはやそんな奇麗事に彼らは一切こだわってはいない。


ただ、ただ・・・ゴール前へ入ってくるボールと敵に対して競り合い、


跳ね返し、


時には身体を投げ出す。



まるでフットボールの起源時代に逆行したかのようなファイトボールスタイルだが、
彼らはこのスタイルで時代の最先端を行くバルセロナを倒し決勝まで勝ち上がってきたのだ。


時にフットボールはそんな不条理が起こるから面白い-




<ベルトランド起用の真意>


とは言え、ディマテオ暫定監督もバルサ戦での反省点をしっかり修正しようという試みは随所に見られました。

特にバルサ戦ではドログバ1人だけを前線に残して全員が引いた事で
完全に亀になって守るだけだったのが
この日は「やられっ放しではない」という姿勢を明確に打ち出していました。


それがバルサ戦の4-3-2-1から変更されたこの日の布陣です。


このメンバーで一番懸念されるのがこれまで攻撃時ボールを運ぶ推進力に加え、
前残りのドログバとDFラインを繋ぐ役割を一手に担っていたラミレスの不在。


戦力面ではバルサ戦よりカウンターの威力は落ちている状況で
いかにラミレスの損出分を補うか。


そこでディマテオが白羽の矢を立てたのが、先のバルサ戦では空気で終わったマタでした。


この日のチェルシーは守備時、両SHは一度下がるものの
マタは前に残した4-4-1-1が基本の並びなのですが、
2列目の「1」にマタを残したのはここをカウンターの起点とする為。


それでは実際の試合から見ていきましょう。


【マタを残した狙い】
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局面はバイエルンの左サイドからの攻撃。

チェルシーは4-4の2ラインのブロックからマタは外して前残しにしているのが確認出来ます。

バイルンのサイド攻撃は当然リベリー+SBのコンテントが仕掛けていくのですが・・・



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ボールを持ち込んだリベリーからロッベンへのパスがカットされて攻守交替。

チェルシーのカウンターが発動します。




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このカウンターからバイエルンの空いた左サイドのスペースに流れていたマタがボールを受けて
一気に攻撃の仕上げへ。

こうなればマタはドリブルで自ら運ぶもよし、ドログバにラストパスを通すも良し、
一旦キープして味方の上がりを待つもよしと何でも出来る選手。


バルサ戦でマタが空気になってしまったのは
彼をサイドに置いたせいで守備時には自陣の深い位置まで帰らざるを得なかったからです。


つまり、一見サプライズ起用の奇手に見えたベルトランドの抜擢も
その本当の狙いは「マタを守備の負担から開放する事」であり、
実はベルトランド自体にそこまで大きな仕事が課せられていた訳ではありません。


このへんの選手配置をいじって攻守のバランスを調整する感覚にイタリア人監督は秀でており、
まるで九九を暗記しているかのごとくスラスラと最適な解答を導き出してしまう。

(あのマンチーニもこのバランス感覚を活かした配置修正はシティで効果を発揮している)



一部では決勝でのチェルシーの戦いぶりを「アンチフットボール」と揶揄する声も聞かれたが、
そういう方も含めて是非もう一度試合を見ていただく事をお勧めしたい。


試合をつぶさに検証していくと前半終了時のスタッツに意外性は無く、
チェルシーが決してやられっ放しだった訳ではないばかりか、
狙い通りのカウンターも見せており、むしろどちらかと言うとチェルシーペースとさえ言える。



<バイエルンの拙攻>


さりとてチームの完成度、攻撃陣の顔ぶれ、更にはホームアドバンテージまで加わり、
本来圧倒的優位の立場だったはずのバイエルンが攻めあぐねたのには
もちろん彼らの側にも大きな責任があります。


まず生命線の右サイド。

ここは完全にロッベンの暴走で死んだも同然でした。


試合を通じてラームの攻撃参加は数える程で、
ロッベンは強引にシュートを打っては青い壁に跳ね返されていました。


チェルシーの

「ペナルティエリアの外から打たせる分にはウチのSGGKツェフ
(スーパーグレートゴールキーパー)が100%止めてくれる…!!」

事を前提とした飛び込まずに青い壁になる守備も効いていましたが、
ロッベンに切れ込んでからのシュートフェイク⇒スルーパスのようなバリエーションもあれば、チェルシーのDF陣はもっと対応に苦しんだはず。


【ロッベンのカットインシュート】
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ロッベンのカットインからのシュートにチェルシーのDFが4枚引きつけられているので
中と逆サイドでは完全にフリーな選手が出来ているのですがロッベンは一度も使わずに
強引にシュートへトライしては青い壁に跳ね返されていました。



後半になると、ロッベンのみならずムキになって打ちまくっていたバイエルンでしたが、
端からシュートと見切られている攻撃は守る方を楽にするだけです。


『シュートとパス。1つに絞れないから考える。
ディフェンスは後手になる。今度は・・・抜ける。』




バイエルンの先制点がシンプルに逆サイドを狙ったクロスから生まれているのは何とも象徴的ですね。





一方、逆のエリア-

左サイドも苦戦を強いられていました。


リベリーはロッベンと違い、視野を持ったままドリブルが出来るので
突っかけてからパスも出せるのですが、こちらの問題は相棒の方。

コンテントは果敢に上がって行く姿勢は見せるものの、
レギュラーのアラバと違い、ドリブル突破、クロス精度は持ち合わせておらず
実質的には攻撃面で全くリベリーをフォローする事が出来ていませんでした。


チェルシーもバイエルンが左から攻めてくる時は
外と中でダブルマーキングを徹底させており隙を見せません。


【チェルシーのダブルマーキング】
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(*ちなみにリベリーの背後でフラフラしてるのがコンテントですww)


コンテントが頼りにならないとなれば、次第にリベリーも独力で突破を図るシーンが増えていき、
こちらも右サイド同様、機能不全に陥っていくのでした。




<勝負を分けたボランチの差>


生命線となる両サイド攻撃が断たれたバイエルン。

しかし、本当に両者で決定的な差が出たのはセンターエリアでした。


この試合、バイエルンは出場停止のグスタボに代えてクロースを一列下げて
シュバインシュタイガーとボランチと組ませています。

どちらも決してボランチが出来ないという選手ではありませんが
展開力で見れば最強のペアである反面、守備の連携には不安を残す組み合わせでもあります。


対するチェルシーはミケル、ランパードというこちらはバリバリの本職ボランチペア。


結果的に、このセンターペアの差は明らかだったと言えるでしょう。


ではまずチェルシーのボランチコンビが見せる抜群の連携を実際の試合から。



【ランパードとミケルの守備連携】
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局面はバイエルンの最高尾からの組み立て。

ボールを持ったティモシュクにランパードが寄せてプレッシャーをかける動きを見せて
ミケルが後方に残るボランチの基本的な関係が築かれています。


ところがここでシュバインシュタイガーがランパードの背後を狙う動きを見せると・・・




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ランパードはこれを見逃さず一旦引いて、自陣のスペースを埋めます。

この時、ランパードは背後に抜けるシュバをミケルに任せてもいいのですが、
この試合のチェルシーはそういったリスクは一切負わず、
少しでも危険な空気が漂えばまずは引いて自陣のスペースを埋める動きが徹底されていました。



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バイエルンは一度ボールをサイドに展開してから、引いて受けるクロースへ。

すると今度はミケルがこれに寄せてランパードがカバーリングに残ります。

(引いて受ける敵にプレッシャーはかけつつも、リスクは決して追わないというバランス感覚が秀逸)



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ミケルに寄せられたクロースはそのまま後ろにボールを下げると再びボールはサイドのラームへ。


すかさずシュバインシュタイガーがラームの前で「門」になっているパスコースに顔を出しますが
これにはしっかりとランパードが反応。

そして注目すべきは、このランパードの反応に連動して、
もうミケルがその穴を埋める動きを見せている事。




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結局ラームは前へのパスは諦めて後ろにボールを下げるしか選択肢がありません。

このように終始ランパードとミケルは抜群の連携を見せて
バイエルンに中へのクサビを全く許しません。

一見何気ないボランチで言えば基本中の基本とも言える連携のように見えますが
こういう連携をさり気なくこなせるコンビというのは実はそうそういるもんじゃあありません。


では続いてバイエルンのボランチコンビの連携を見ていきましょうか。


【シュバイニィとクロースの連携】
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局面はチェルシーの中盤での組み立てから。

ボールを持ったミケルに対し、シュバが寄せるような素振りを見せます。



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ミケルからランパードへ展開されると、これに猛前と寄せるクロース。


あれ・・・? 


でもこれだとボランチ2人が同時に寄せちゃってるんじゃ・・・・




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ランパードから再びミケルを経由されて2人の間を通されると
当然両ボランチが飛び出したバイタルエリアはポッカリ状態\(^o^)/


グスタボがいればお互いの役割もハッキリするんでしょうが、
この2人では攻撃でもお互いの持ち味が被ってしまい、消し合っている印象。

試合ではその恩恵を受けていたのがマタという関係でした。


こう見ていくと両サイド、中央、
共にチェルシーが互角以上に渡り合っていたので拮抗した展開は必然だったと言えるかもしれません。



<勝敗を分けた采配?>


不在ポジションを埋める「配置変え」で後手に回った感が否めないハインケスでしたが、
それ以上に苦しいかったのが手持ちのカードの歴然とした差でした。


切り札(?)トーレスを始め、スピードでかき乱せるスターリッジに
一度展開を落ち着かせたければロメウ、
中盤に運動量が欲しければエッシェンと豊富な手札を持つディマテオに対し、
ミュラーを先発で使ってしまっているハインケスは持ち駒0の将棋です。

(今季のオリッチに試合の流れを変える力はもはや無し)



ではここで、試合後話題になった交代策を考えてみましょう。


後半38分、ミュラーが先制点を挙げた直後に両監督が打った交代策がそれです。



攻めるしかなくなったチェルシーは当然、直後に切り札のトーレスを投入。

対するハインケスは殊勲のミュラーを下げてCBのファンブイテンをピッチに送り出し、
まずクロースを本来のトップ下に戻して、シュバの相棒にボランチが本職のティモシュクを一列上げる。
そして空いたCBにファンブイテンをもってくるという守備の狙いが色濃い一手である。


しかし、この交代の僅か一分後、
チェルシーに劇的な同点弾が生まれてしまう。


この一連の流れから
「ハインケスの守備固めが同点弾を生んだ」という見方が出るのは当然だとしても、
果たして本当にそうなのだろうか?



何度か一連の流れを繰り返し検証してみた結果、店長の出した結論は
「交代と失点の因果関係は限りなく薄い」というものです。


まず、失点そのものが生まれたCKについてはバイエルンの守備より
ドログバの執念とヘディング技術の高さを褒めるべきでしょう。

(ニアで反らしたヘディングシュートが名手ノイアーの腕をはじく勢いとか…www)


そしてCKが生まれるまでの流れに
バイエルンの交代で影響を受けた選手はほとんど絡んでいません。


むしろ、ギクシャクしたボランチペアの連携を解消させるこの交代策は
0-0の段階のもっと早い時間帯で行ってもよかったぐらいで、
結果的に延長戦では本職のボランチに戻ったティモシュクの守備が効いて
バイエルンの攻守のバランスは格段に向上しています。

加えてファンブイテンはドログバとの競り合いでも良い勝負を見せるなど
何ならスタートからこの布陣で良かったのでは…と思うぐらい
戦術的には何ら問題の無い一手だったと見ます。



失点の要因を探るのであれば、むしろチェルシーの交代策・・・

いやもっと言ってしまえば、ベッカムの跡を継ぐ「プレミア屈指のイケメンクロッサー」
トーレスのドリブルがそもそもの起点となっている事を見逃してはいけません(笑)


ハインケス『何故・・・トーレスがそこにいる・・・!?』



今季、チームの新たなエースとして得点力が期待されていたはずが
気が付けば何故かサイドのエリアから、これまた何故か良質なクロスを提供するウイングに目覚めた王子。

(チェルシーサポーター『いや・・・お前がクロスに合わせなくてどうする・・・』)


まさか今季の最後の最後にこれが活きてくる伏線だったとは・・・。


その後もゴール前で不器用なシザースを挟んで妙に落ち着きがあるところを見せたかと思えば、
一転軸足にボールをひっかけてつまずきかけるなど


「コイツ・・・余裕があるのかテンパってるのかどっちなんだよ・・・」


と敵味方、果ては視聴者までをも惑わすプレーを連発。




う~む・・・もしかすると我々は王子の手の平の上で踊らされていただけなのかもしれん。



<フットボールの道理と不条理>

試合は1-1のまま突入した延長前半に
ペナウティーエリアでリベリーを倒したドログバのプレーがPKをとられるも
ロッベンがこれを外してジ・エンド。

このようにチェルシーの守備は実はかなり深いところで守っているのと
ドログバのように守備が本職でない選手までもがここまで下がって守備に参加する為、
ゴール近くでのFK、そして下手をするとPKというリスクを常にかかえていたんですよね。

それでもFKにスペシャリストのいないバルサとバイエルンには効果的でしたが、
他のチームに通用するかは微妙なところ。


一方、バイエルンのPKですが、ロッベンがキッカーとて向かった段階で恐らく多くの人が

「あ・・・これは外すな」 「完全に死亡フラグ」 「何故、誰も止めない?」


とPK失敗を確信したように、これも一つのサッカーが持つ道理かと。

むしろ、こういった現場の空気感を感じ取れなかったハインケスにはちょっと残念でしたね。

同じようにこの大舞台でゴメスが師匠になるのも試合前から分かりきっていた仕様でした(笑)



それにしても未だに何故チェルシーが優勝したのか、
これまでの道のりを振り返ってみてもそこに「道理」が導き出せない僕がいる訳ですよ。

優勝したチェルシーサポーターの多くだって、
きっと自分たちが今、欧州で最強チームだとは思っていないように
『最強だから勝つのか、勝ったから最強なのか』
の禅問答に答えはないのですね(笑)



一つ確かなのは、モウリーニョ就任以降続いてきた
チェルシーというチームの一つの時代は確実にこれで終焉という事です。

ビラスボアス解任からの開き直りと、
「経験」という財産がことごとく大一番(CL決勝、準決勝、FA杯)で生きたチェルシー。

このチームでの最後の一蹴りとなったドログバの落ち着き払ったキックに
これまで彼らが歩んできた長く険しい道のりを思わずにはいられません。


きっと来季は全く別の顔をしたチームがそこにいる事でしょう。



片やバイエルンは泣き崩れるシュバインシュタイガーの傍らに
このチームの輝かしい未来を予感させる宝石達が横たわっていました。

むしろ、このチームは”これからのチーム”と言えるでしょう。


「ロッ○ン」を外し、経験を積んで更に一回り成長したクロース、ミュラーらを中心とした
新たなチームの方向性が僕に輝かしい未来を確信させるのです。



黄金時代を謳歌していたはずのバルサが壊れ、
チェルシーが優秀の美を飾り、多くのレジェンド達がチームを去った今シーズン


この決勝は「一つの時代の終わり」と「新たな時代の到来」、

そして”フットボールでは何が起こるか分からない”という不条理を

改めて僕らに教えてくれた・・・ そんな試合だったのではないでしょうか。


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Author:soccertentyou
年間300試合観戦のサッカー馬鹿によるサッカー馬鹿の為の戦術分析ブログ

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