12/13シーズンのセリエAを総括

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<12/13シーズンのセリエAを総括>

さて、今日はシーズンオフの恒例企画、各国リーグの今季を通信簿形式で振り返っていくシリーズ。

まずスタートを飾るのはセリエAから。


優勝は2年連続でユベントスでしたね。

最終的な勝ち点は87で得失点は+47

ちなみに無敗優勝の昨季は最終勝ち点が84で得失点が+48

つまりユーベは昨年の強さをそのまま維持して悠々とレースを進めていた事になります。

ではこのユーベと優勝を争うべき2位以下のライバル達はどうだったか?


昨年の2~4位はこんな感じ↓

【11/12 セリエA順位表】

1位 ユヴェントス 84(勝ち点)
2位 ミラン 80
3位 ウディネーゼ 64
4位 ラツィオ 62


で、今年はこう↓

【12/13 セリエA順位表】

1位 ユヴェントス 87(勝ち点)
2位 ナポリ 78
3位 ミラン 72
4位 フィオレンティーナ 70


ポイントは1位と2位ではなく、2位と3位以下の勝ち点差ですね。

比較するに昨年はミランだけがユーベに食い下がったシーズンで
今年はユーベに食い下がるチームが不在だったものの、セカンドクラスのチーム数が増加し実力が肉薄していたと思われます。

これをユーベからの目線で身も蓋も無い言い方をしてしまえば、
ライバル達が勝手にコケて下界で足の引っ張り合いをしていたシーズン・・・となる訳ですね(爆)

それぐらい優雅に1人先頭をひた走っていた1年でした。


まあ、ユーベ以外に昨季からの補強で確実に戦力を増したと言えるチームがほとんどいなかったのがイタリアサッカーの現状ですからこれも無理はありません。

むしろ他国からの草刈り場となった感のあるセリエAで戦力を現状維持出来ればかなりマシな話で
ミランに至っては開幕前からお通夜ムードが漂っていた始末www


但し、一方で各クラブの戦力が小粒になり格差も小さくなった分、
駒の質ではなく頭を使って(つまり戦術で)他を出し抜こうという知恵比べは益々洗練されたシーズンだったとも言えるでしょう。

「ユーベ封じ」の進化や各クラブそれぞれの戦術カラーも鮮明で、個人的には非常に楽しめた12/13シーズンでした。

無論「ストップ・ザ・ユーベ」は来季以降に持ち越された格好で、今季はその為の助走となるシーズンだったのかなと結論付けたいと思います。


ではいつものように各クラブの通信簿を渡してホームルームを終了としましょう。


<12/13 セリエA クラブ別通信簿>

*評価は「大変よく出来ました」「よく出来ました」「ふつうです」「もう少しがんばりましょう」「もっとがんばりましょう」の5段階評価となります。


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【ユベントス (1位)】
[評価:よく出来ました]

昨季からの戦力を落とさないまま補強の成果もまずまずで、最後まで優勝レースを支配。

シーズン前半を監督不在でも乗り切れたのは、既に昨年に確固たるベースがチームに出来ていた証。

唯一の心残りは文字通り「カルチョの代表」として臨んだCLで
カルチョファンの心を打ち砕いた対バイエルンでの完敗劇。

確かにグループリーグではチェルシーと互角以上に渡り合っているし
今季のバイエルンと当たってしまったのは単に「クジ運が無かった」とも言えるが
本気でベスト4以上を目指すのであればもう1つ上の階段を登る必要がある事を痛感したシーズンとなった。

果たしてクラブはコンテに対し来季以降の明確なヴィジョンを示して監督残留に導けるのか…?



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【ナポリ (2位)】
[評価:よく出来ました]

トリデンテの一角ラベッシを抜かれながらも2位でフィニッシュ。

自慢のカウンターで長い距離ボールを運べるラベッシ不在の穴は最後まで埋まらず、
その切れ味は昨年と比べると若干落ちた感は否めない。

カバーニへの負担も増し、このエースが得点を取れない時期は全く勝てないというスランプにも陥ったシーズンだった。

それでもこの順位を維持出来たのは速攻以外の部分で安定感を磨き、チーム全体で欠けた穴を補ってきた事によるもの。

来季以降の課題としては遅攻でも崩しきれるゲームメイカーが必要不可欠のように思われる。



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【ACミラン (3位)】
[評価:大変よく出来ました]

すまんが今季はもう一つスクデットを作ってこのチームにも上げてやってはくれないだろうか…?(爆)

シーズン開幕前に「ミラン オワタwww」とかdisっていた愚か者は今ここで焼き土下座するように。










_| ̄|○ 「あ・・・じゃあまずは僕からwww」


いやはや・・・全く、監督がラニ○リだったら降格していたかもしれないシーズンでしたが、
どんなブラック企業だろうが立派に努め上げる社畜・・・もとい名将アッレグリの真価が発揮されたシーズンだったのではないでしょうか?

(本来、ガリアーニはアッレグリに足を向けて寝れないはずなんだがww)

イブラ&Tシウバ&ネスタの3人だけで年間勝ち点30は減ってもおかしくない大穴が空いていたはずだったんですがね・・・(^^;

無料で取ってきたモントリーボに中盤の舵取りを任せ、エルシャーラウィの覚醒を促し、
しまいには途中で加入させたムンタリまで総動員させるその活用術。

(なんかムンタリまでやたらいい選手に見えてくるから不思議ww
ベンチでカカを腐らせているチームは猛省するようにww)

又、デシーリオやニアンを使い続けた事による今季の成長はミランの未来を明るく照らすものになるだろう。



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【フィオレンティーナ (4位)】
[評価:大変よく出来ました]

今季、個人的にも楽しませてもらったのがこのチームで、
間違い無く「今、イタリアで最も美しいサッカーをするクラブ」である。

イタリアにはめずらしく「ポゼッションの為のポゼッション」を我慢して続けられる特異なスタイルが他とは一線を画す。
(相手の守備に穴が出来るまで根気よくボールを回し続けられるという意味で)

中盤のピサーロ、Vバレーロ、アクイラーニに加え、0トップに据えた天才ヨベティッチが絡むパス回しは
芸術都市フィレンツェに相応しい美しさ。

来季是が非でもCLの舞台で拝みたいチームである。





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【ASローマ (6位)】
[評価:普通です]

ま~、もちろんゼーマンを解任してなければそれだけでもう1つ上の評価あげれたのにさ(爆)

まあそれでも一度ゼーマンが植え付けた攻撃マインドとトッティの完全復活という遺産はチームに残っていますけどね。

(反対にゼーマンのスタイルに合わなかったが故にシーズン前半戦を棒に振ったデロッシは過去最悪のシーズンでしたが(^^;)

フロレンツィの成長にラメラ&ピアニッチの大当たりと来季に向けて明るい材料は揃っているので期待していいんですよね・・・?





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【ラツィオ (7位)】
[評価:もう少しがんばりましょう]

よく言えば「手堅い」、悪く言えば「つまらない」サッカーをするチーム。

シーズン前、密かに名将という噂だったペトコビッチ監督だが今のところ普通の監督かな?
(試合中の采配は的確だけどね…。)

4-5-1で手堅く守りを固めて、奪ったボールをクローゼとエルナネス(+成長したカンドレーバ)で攻め切るイメージです。

1トップに入るクローゼのポストプレーと周囲を使えるセンス、そして抜群の得点力あってのサッカーなので
彼を欠いた時期はスランプに入ってしまいましたね。

相手ボールの時はとにかく的確にポジションを取って輝いてるチームなんですが
マイボールになった時の迫力というか娯楽性が・・・(^^;

まあ、あくまで僕の主観混じりのやや厳しい評価なんで、客観的評価ならもう1つ上が打倒だとは思います(爆)




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【インテル (9位)】
[評価:もっと頑張りましょう]

どうしてこうなった・・・。 _| ̄|○


…ええ、皆さんの期待通りオチはこのチームが務めてくれますww
(この手の企画はこういうチームが1つはいてくれないと成り立たないんで有難いんですけどねww)


何と言っても日替わりのスタメンとフォーメーションは、
毎週インテルの試合を見続けている物好き熱心なインテリスタでさえ週末の予想スタメンは不可能なほど。

これが今シーズンのインテルを象徴していたかと思います。

試合中の修正では的確な手腕を見せるストラマですが、
1シーズンを通してのチーム構築と展望という点で大きく不満が残るシーズンでした。

来季以降に向けてはとりあえずスナイデルの代役が務まるトップ下(ゲームメイカー)を確保する事。
(グアリンorアルバレスでゲームを作るのは無理!コバチッチではまだ若すぎる!)


でもそれよりも何よりもまずは・・・











メディカルSTAFFの全員解雇が先かな?wwww

(インテル病棟乙であります!)


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ハインケスの最高傑作に相応しいフィナーレ ~バイエルン×ドルトムント~

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<ハインケスの最高傑作に相応しいフィナーレ ~バイエルン×ドルトムント~

どう見ても神試合です。ありがとうございました。

個人的にはここ10年の中でも最高の決勝になったと思われる今年のCL。

試合前には「ドイツ決勝は地味だ」なんて声も耳にしましたが
恐らくそういう人達すらも実際に試合を観た後ではぐうの音も出ないような内容だったと思います。


絶え間無き攻守の切り替えとハードワーク。

プレッシャーの中でも発揮される高い技術。

そして試合を引き締めるGKの好守に極めてフェアなボール奪取の応酬と
現代サッカーの最高峰が全てあの日のピッチにはありました。

もちろん、来期以降のトレンドを探るヒントもこの試合から探し当てる事が出来るはずです。


そこで今日は今季最後を飾るに相応しいCL決勝のマッチレビューから両軍の駆け引きとバイエルンの勝因、
そして来期以降の戦術的なトレンドを探っていきたいと思います。


<手の内を知り尽くした者同士の名人戦>
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両軍共に予想通りの順当なメンバーが顔を揃えました。

(但し、ドルトムントはゲッツェが使えないのが相当痛手)

ここ3シーズンほどブンデスの覇権を争ってきた両チームだけに、
お互いの手の内は知り尽くしている両者。

そんな背景もあってか、この対決はまるで将棋の名人戦のような駆け引きがピッチ上で展開されてたように思います。
(将棋の名人戦も何度も打ち合った者同士の戦いになりますからね)

まずは主導権争いの序盤戦から一進一退の中盤戦へと移り、そして「詰み」にかかる終盤戦という具合に。


そんな名人戦を試合の経過に沿ってマッチレビューしていきたいと思います。


<ドルトムントの仕掛け 【0分~10分】

サッカーが将棋と違うのはキックオフ時、お互いの持ち駒が全くイーブンの将棋とは異なり
両チームの持ち駒に若干の戦力差があるという事です。

ただでさえエースのゲッツェを欠くドルトムントは飛車抜きで試合を始めるようなものですが、
そもそもクロップ率いる若き挑戦者達は単純な持ち駒の質ではどうしてもバイエルンに劣る為、
足元の技術差を極力出させない試合展開に持ち込む事で彼らと互角以上に渡り合ってきました。

そんな彼らですから、この決勝でも「待ち」の姿勢は有り得ません。

最初からいけるところまで飛ばしてハイペースの試合に持ち込み、
自分達の流れの内に試合を決めてしまうというプランしか「詰み」への道筋は無いのです。

実際、試合が始まるとドルトムントのハイプレスは凄まじいものでした。

バイエルンが最終ラインからボールを持ち出す時、ドルトムントは以下↓のように前プレを仕掛けていきます。

【ドルトムントの前プレ図】
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バイエルンの4バックに4枚をぶつけて、シュバとハビマルのボランチにもギュンドアンとベンダーを前進させてマンツーマン気味に。

両サイドのリベリー&ロッベンにはSBがどこまでも追ってしまう事でバイエルンをビルドアップの段階でハメてしまうんですね。

(ミュラーとマンジュキッチのところが若干空くものの、そもそもここまでボールを運ばせなければ御の字という守備)


では実際の試合からドルトムントが前プレでバイエルンの組み立てをハメてしまっている様子を検証してみましょう。

【ドルトムントが前プレでハメる】
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局面はバイエルンが最終ラインからビルドアップを図るシーンですが、
ご覧の通りドルトムントはバイエルンのDFラインにガッツリ前プレを当てているので
ボールを持ったSBのアラバにもパスコースを探す時間的猶予が全くありません。

ここでは前からボールを受けようと降りてきたリベリーへのタテパスぐらいしか物理的にコースが見つかりませんよね?


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で、実際にリベリーへタテパスを送っても当然ドルトムントは分かっていて誘っているので
SBのピシチェクがリベリーの背中にくっつくぐらいの0距離まで自信を持って寄せ切っています。

さすがのロッベリーと言えどもサイドで前を向けないこの展開では局面打開は厳しいところ。


クロップはバイエルンの最大の武器である両サイドのタテ関係を遮断すると共に
見事に試合をハイテンポなリズムに持ち込んで序盤の主導権を握る事に成功しました。

ハインケス(試合後の談話)
『序盤、我々はなかなか本来の調子が出なかった。
逆にドルトムントが素晴らしかったね。積極的にプレスをかけられ、自分たちのリズムをつかめなかったよ。』


序盤から積極的に仕掛けて主導権を握る戦法は将棋でも挑戦者側でよく用いられるものですが、
この戦法の弱点は仕掛けを全て"受け"切られてしまうと終盤に手も足も出なくなってしまう事。

ドルトムントは一方的にペースを握っているように見えて、その実この展開の内にアドバンテージを握っておかないと
(すなわち先制点を取っておかないと)
後々苦しい状況に追い込まれる事は目に見えていた。

無論、それはクロップ、ハインケス共に分かっており、
ドルトムントはいかにこの流れを持続させるか、バイエルンはいかにこの苦しい時間帯を耐えしのぐかという我慢比べが既に始まっていたのだ。


<シュバインシュタイガーの対応 【10分~】

さて、試合ではドルトムントのハメ技プレスに対しバイエルンがどういう対応を見せるのかに注目していたのだが、
早速シュバインシュタイガーが動きを見せる。


【シュバイニーがDFラインまで降りて数的優位を確保】
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自分達のDFラインが4対4の数的同数に追い込まれてアップアップしてる内は中盤もクソもねぇ!って事で
シュバインシュタイガーがDFラインまで降りてきて最後尾での数的優位確保を画策します。


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ドルトムントの4枚ハメプレに対し、5バック気味に対応する事で何とか最終ラインでの落ち着きを確保する事に成功。

しかし最終ラインに人数を裂いた分、中盤が薄くなっているのでここから⇒中盤⇒前線へと繋いでいくいつもの形は難しいところ。

ここでバイエルンが賢かったのは、バルサやRマドリーと違い、Gプレスに遭った展開で無理に中盤を経由して繋ごうとしなかったところにあります。

バイエルンはこの時間帯、中盤を半ば放棄して最終ラインから前線のマンジュキッチ目掛けて放り込みに徹する割り切った姿勢を見せます。

準決勝でバイエルンと対戦したバルサはバイエルンが待ち構えている中盤の網を無理にこじ開けようと繋ぎにこだわった結果、
まんまとバイエルンの注文にハマる形でボールを絡め獲られ⇒ショートカウンターの破滅パターンに陥っていましたが、
バイエルンは相手の出方によって引き出しを変える臨機応変さが決勝まで勝ち進めた要因だったのではないでしょうか。

とは言え、神頼みのようなマンジュキッチへのロングボールはほとんどフンメルスとスボティッチに拾われていましたが、
それでも自陣の低い位置で奪われて⇒ドルトムントのショートカウンター発動という最悪のパターンだけは免れる事に成功していたと思います。


<GKの好守から一進一退の展開へ 【20分~】

リスク回避を主目的としたバイエルンのやけっぱちロングボールをことごとく拾ったドルトムントは
ロイスを中心に鋭い攻めを見せます。

もしドルトムントが拾ったボールを横パスも織り交ぜて大事に展開してくれれば
バイエルンもマンジュキッチのプレスバックを筆頭に必殺のプレス返しが出来たのでしょうが
元々バイエルンを自陣に押し込んだ状態でボールを拾っているドルトムントは
ほとんど横パスを挟まずにタテへタテへと展開する事でバイエルンの良さを出させないクロップの手腕が光ります。

それでも「ここは耐える時間」と割り切っているバイエルンはDFラインを完全に崩させる事だけは避ける専守防衛に努めます。

その背景にはDFラインの手前から打たせる分にはウチにはSGGK(スーパーグレードGK)が控えているゼ…!という信頼のようなものが感じられました。

そしてノイアーはその信頼に見事応える好パフォーマンスで一方的なドルトムントの時間帯に失点だけは許さない構え。


一方のドルトムントのGプレスですが、これはこれで結構リスクを負った守備だったりします。

その危うさと紙一重のGプレスを実際の試合から検証していきましょう。

【ドルトムント(Gプレス)が抱えるリスク】
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局面はサイドでボールを持ったSBアラバをドルトムントが前後で挟み込もうというシーンですね。(これは狙い通り)

で、アラバはここからミュラーへ繋ぐんですが、バイエルンがこのコースしかないのはドルトムントは百も承知って事で中盤全体を一気にボールへ寄せてここで奪ってしまおうという狙いです。


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・・・が、ここでアラバからのパスをミュラーに上手く身体を使われて入れ違いに抜け出されてしまいました。

こうなると全体がミュラーへと寄せていたドルトムントは・・・



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逆サイのロッベン師匠がどフリーだがや・・・!!

まさかクロップも「ヤツならフリーにさせても大丈夫だ…」と思った訳ではないでしょうが(笑)、
狙った位置でボールが取れていればイケイケな展開になるドルのGプレスも一歩狙いを外されると一転して大ピンチに陥るリスクと隣合わせなのが分かるかと思います。

このシーンをアングルを変えてもう一度↓


【ボールに全体を寄せるドルトムントのGプレス】
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↑これはアラバからミュラーへパスが出た瞬間の別アングルなんですが、
黄色で囲ったボール周辺のエリアにいかにドルが密集地帯を作り出しているかが一目瞭然かと思います。


ただ、この決定機も今度はドルトムントの守護神ヴァイデンフェラーの好守で防ぎ切り、
両GKの活躍で試合が非常に締まったものになりました。


<受け切ったバイエルンが反撃開始 【30分~60分(中盤戦)】

このロッベンがGKと1対1を迎えた前半29分のチャンスから試合の流れが少しずつ変わっていきます。

ドルトムントのような前プレ戦法は面白いようにボールが奪えている内は全く疲労を感じないものですが、
面白い事に一度相手に突破されただけで途端にDFラインは後ろ髪を引かれだし、前線は肉体的疲労を思い出したりするもの。

ドルトムントはこのシーンを契機に少しずつ自慢のプレスに綻びが見えるようになります。


【甘くなるドルトムントの寄せとバイエルンの切り替え】
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局面はバイエルンが最終ラインからビルドアップを図るシーンですが、試合開始当初に比べると
明らかにロイスのCB(ダンテ)への寄せが甘くなっています。

バイエルンレベルのCBだと、これぐらいの寄せでは簡単にタテパスを出せる技術を持っていますから・・・


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中盤に降りてきたミュラーへの縦のクサビを経由してサイドのアラバへ展開。

バイエルンは中盤を省略したロングボール一辺倒の攻めから
ドルトムントの寄せが甘くなってきたのを悟ると攻撃方法の切り変えにすぐさま打って出るしたたかさ。

それを確信させる似たようなシーンをもう一つ。↓


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もはやこのシーンではバイエルンの2CBに対し、1トップのレバンドフスキが1枚で前プレを行うような形になってしまい、
バイエルンはシュバを中盤に残したまま余裕で縦へのクサビが打ち込めるようになっています。


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こうなると中盤でうるさいのがミュラーの神出鬼没な動きで
CBのクサビからミュラーの間受けがバシバシ決まり出すバイエルン。

序盤のドルの猛攻を受け切り、遂にバイエルンが反撃開始。


試合は0-0で迎えたハーフタイムを経て後半になると益々ドルトムントの前プレが苦しくなっていく。

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局面は前半には無かったロイス&レバンドの前線のラインと中盤の間のスペースをハビマルに使われてしまっているシーン。

更にドルトムントは守備ラインをズルズルと下げていき・・・・


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気が付けば、もう普通にシュバとハビマルのボランチから両サイドに展開されるバイエルン得意の形が出始めている…と。

試合を観ながら「ああ、こうなるとドルの失点は時間の問題かなぁ・・・」と思っていたのですが、やはり案の定でした。
(サッカーとは必ず失点に繋がる兆候があるものですよね)


<無理なGプレスを逆手にとったバイエルンが先制 【59分】

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局面はバイエルン陣内でボールを持ったシュバインシュタイガーにドルトムントが一斉にGプレスを仕掛けている場面。

但し、それぞれの出足が前半に比べると鈍く、誰一人として充分にシュバイニーに身体を寄せ切れていない為
ここで無理して囲い込むのはやや無謀なGプレスだった事は否めません。

シュバインシュタイガーは状況を冷静に判断し、ここで一旦GKまでバックパス。


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このバックパスをノイアーが見事なコントロールからドッカンと前へ蹴り出すと・・・


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見事な精度のボールがマンジュキッチからロッベンへ。

問題はドルトムントの前衛がシュバイニーに寄せたところから、このロングボールにどれだけ素早く帰陣出来るかです。

(局面は5対4)


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はい、ロッベンにボールを運ばれている間、その背後から戻ってくるドルトムントの選手が1人も見えない厳しい状況。

これで局面は5対4のままズルズルと後退を余儀なくされているドルなんですが、
問題はこの試合で初めてロッベリーが同サイドに流れたコンビネーションを見せているという事ですね。

ロッベリーに前を向かせた状態で2対2の数的同数で対応ですか・・・、これは失点の危険性大です。


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最後、リベリーからロッベンに渡るシーンですが、ボールを持ったリベリーに3枚当たりに行って股を通されているのは確かに大失態なんですけど、
それ以上にドルの守備枚数が最初の5枚から全く増えていないところに問題があるんですね。

ドルは元々ボールに持っている選手に2~3枚は常時当たりに行くので、
ましてやゴール前の危険なエリアでボールを持ったのがリベリーとなればこれは致し方ない面もあるのですが、
そのカバーに誰か1人でも戻っていればロッベンに1枚はマークを当てられていた可能性はあったんじゃないかと思うのですよ。


となると、これはもう最初の段階で無理にシュバイニーのところで取りに行った前プレを上手くバイエルンに逆手に取られたかな~と。

前線と後衛がやや間延びしてきた時間帯でのGKを使ったGプレ回避はこのシーン以外にも何度か見せていたので
ハインケスが用意していた一つの策と考えるのが妥当でしょうか。


<開放されたフンメルス 【60分~】

ただ面白いもので、バイエルンは先制を機に一旦引いて「受け」の守備になっていくんですね。

これは監督の指示というより、自分達でも気付かない内に知らず知らず気持ちが「大事な1点を守り切りたい」という方向に向いてしまった人間の性みたいなものでしょう。


するとドルトムントはこれまで玉の近くで最後尾の守りを担当していた「居飛車」ことフンメルス将軍の前にポッカリとスペースが出来て
一発で敵陣まで得意のロングパスを放てるようになります。

(*「居尾車」とは将棋の戦術の一つで、飛車を攻めではなく自陣の守りに置いておく戦法)


【解放されたフンメルス将軍】
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局面はフンメルスが最後尾からビルドアップを図る場面ですが、
明らかにバイエルンは自陣に引いて「待ち」の守備に切り替えてしまっています。

ドルトムントの強さは代名詞のGプレス+ショートカウンターだけでなく
遅攻ではCBにフンメルスがいるという強みがある事ですね。

フンメルスにこれだけスペースを与えてしまうと、ここから見事なタテパスがグラウンダーで・・・


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バシッ!と中盤のグロスクロイツへ間受けを通してしまいます。

(こうなると両サイドの香車(グロクロ&ブラシチ)や桂馬(ロイス)も利いてきて一気にめんどくさい事になりますぞ)


こうして高い位置でボールが取れなくなっていたドルトムントですが
バイエルンが一旦引いてくれたお陰でフンメルスの展開力が蘇り、再びペースを握る事に成功。

「これはバイエルン、最後まで逃げ切れるか・・・?」と思っていた矢先の事でした。


<バイエルンの受身が生んだ同点弾 【66分】

では必然とも言えるドルトムントの同点ゴールを見ていきましょう。

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局面は再びドルトムントの最後尾からの組み立てですが、まずここでフンメルスにズルズルとフリーでドリブルさせてしまった事が失策でしたね。

フリーのままフンメルスはサイドのスペースへ浮き玉を送ります。


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この浮き球からの展開をグロスクロイツに拾われると裏に抜け出したロイスへ繋がれて・・・


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ペナルティエリアの中で一番危険なロイスに前を向かせてボールをコントロールさせてはならない!
という気持ちが働いたのでしょう。

ダンテが浮き玉を処理するロイスから無理にボールを掻き出そうとした結果、思い切り腹パンならぬ腹蹴りでPKを謙譲。

ギュンドアンが決めてドルトムントが同点に追いつき、試合は混沌としたまま終盤戦へ。



<経験を生かしたバイエルンが詰みへ 【70分~】

この同点ゴールの直後、試合開始からずっと立ちっぱなしだったクロップとは対照的に
それまでベンチでじっと戦況を見守っていたハインケスが真っ赤な顔でテクニカルエリアに飛び出してきました。

僕はドイツ語は分かりませんが、その時彼が選手達に向かって叫んでいた内容はおおよそ見当が付きます。

『お前ら!去年の二の舞になりたいのか!?』

自分達のペースで進んでいた試合から先制点を取った後、変に守りに入って同点ゴールを食らう。

これは去年の決勝でチェルシーのドログバに決められた流れと全く同じです。

まあ、試合も終盤の極限状況で普通監督が何を叫んだところで選手の耳には届いても頭には入らないものですが、
バイエルンが幸いだったのは昨年の決勝で死ぬほど悔しい想いをした選手のほとんどがこのピッチに残っていた事です。

「このままズルズルと延長戦突入だけは絶対に避けねばならない。90分で決着を付けるんだ…!!」

そんなバイエルンの選手達の想いがここからピッチ上で具現化されていきます。


前線からの積極的なプレスと素早い好守の切り替え。

前半から飛ばしていたドルトムントと違い、充分に余力を残していたバイエルンは90分内で決着を付けるべくここでギアをトップに入れてきました。


苦しくなったのはドルトムントです。

中盤は明らかに疲弊していましたが、ゲッツェの欠場でスタートからグロスクロイツを使っているこの布陣では
交代の持ち駒がそもそも不足しています。

(仮に1点リードしている展開ならケール投入で守備固めの一手もあったのでしょうが同点の状況では・・・)


更に昨年の失敗から90分決着で意思統一されていたバイエルンと違い、
クロップは延長戦に備えてハインケスより先にカードを切る事に躊躇していた様子も伺えました。


しかしピッチ上ではドルトムントの限界はもう明らかで、それはこんなシーン↓からも見てとれます。

【限界のドルトムント】
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局面は終盤に訪れたドルトムントのカウンターのチャンスから。

中盤から前線で待つレバンドフスキへタテパスが送られる。


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これをサイドに流れつつ受けるレバンドフスキ。

1トップに張る彼の強みはここで1人で時間を作れる事。
その間に後ろから味方が次々と飛び出してくるのがドルトムントの強みになっている。


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ところがレバンドフスキがどれだけ時間を作ってみても
後ろから飛び込んでくるドルトムントの選手は皆無。
(普段なら黄色く囲ったスペースにドルの選手達が走りこんできている場面)

そうこうしている内にバイエルンの帰陣の方が早く、孤立したレバンドは囲まれてボールを失ってしまう。

ドルトムントはこの時間帯、完全にレバ&ロイスの前線が切り離された前後分断サッカーに陥ってしまっていた。



これと対照的だったのが88分に生まれたバイエルンの決勝点の場面。↓

【バイエルンの決勝点を生んだ味方のサポート】
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ロングボールを受けるリベリーの後ろからミュラーとロッベンが適切なサポートで走りこんでいる。

結果的にはこのサポートがあったからこそ、リベリーの踏ん張りが活きてロッベンの決勝点が生まれた訳だ。

(しかしロッベン師匠は最後に男になったな(笑) 一瞬、王子とかぶったわww)


試合は最後に昨年の経験を糧にしたバイエルンが地力で上回った勝利と見る。


<そして最強チームはペップに引き継がれる>

このようにお互いに手の内を知り尽くした両者だからこそ
ちょっとした心理面の揺れさえもピッチ上の流れに大きく影響し、
その上で共にベストを尽くした好ゲームが展開されたように思います。

そして、この決勝から導き出される来期以降のトレンド、言い換えれば欧州で勝つ為のマストは
【時代は自分達のサッカーを貫くだけでも、相手のサッカーに合わせるだけでも、もはや不十分である】という事。


仮にこの試合、バイエルンが最初から中盤でつなぐサッカーにこだわっていたらドルトムントの注文にハマって
ショートカウンターから大量失点を許していた可能性は高いだろう。

反対にドルトムントがカウンター一本槍だったとしたらバイエルンが受身に回った際の同点弾は生まれなかったに違いない。


つまり、これからのサッカーでは試合の局面と相手の出方に応じて自分達の引き出しの中からベストなものを瞬時に開けられるチームだけが勝ち残っていける時代になると予想する。

それは単に「ドイツの時代到来」とか「時代はGプレス」といった短絡的なものではなく
もっと広い視野で見た時、チームの幹に備わっていなければならないものだ。


一方で「最高の結果を残したハインケスを切ってまでペップを召集した意味はあるのか?」という声も聞こえてくるが、
個人的にはバイエルンの判断はベストだったと確信する。

昨年からの流れを考えてモチベーション的に見ても「ハインケスのバイエルン」は今季が一つのピークを迎えたと見て間違い無い。

仮に来期もハインケスでいったところで、ブンデスは取れるだろうがCLの連覇は難しいところだろう。

それはちょうどペップがバルサで3冠を取った翌シーズンと同じ事である。


内心、ペップ自身は今頃「マジかよwww 来期のハードル上がりすぎww」と思っているかもしれないが(笑)
今季の成績はどうあれ、バイエルンの長期的なプロジェクトとして来期からは新しいサイクルに入る事が決まっていた訳で
その意味では選手達のモチベーション的にも大きな問題にはならないだろう。

監督、チームSTAFF、サッカースタイル、そして選手の顔ぶれまで一新されるチームに停滞感を心配する必要は無い。


もちろん未知への挑戦となる以上、一気にチームが崩れ成績を落とすリスクは付き物だ。

だがサッカーの世界で「現状維持」を目指した瞬間、そのチームは下降線を辿っている事もまた事実なのである。



最後に、来期以降の展望だが、この結果を持って「ドイツの時代到来」とするのは時期尚早だ。

コンディションさえ整えばメッシやイニエスタにネイマールまでが加わるカタルーニャの雄は依然として世界最高の名に相応しいサッカーを見せるだろう。

モウリーニョが去り、新たなサイクルに入ったマドリーも侮るべきではない。

そのモウリーニョが復帰するプレミア勢は巻き返しを狙っているだろうし、
益々力を付けるPSGも不気味な存在だ。

欧州の舞台で力の差を見せ付けられ、本気の強化をフロントに直訴したコンテ率いるカルチョの王者も外せない。



・・・そう、これは「ドイツの時代到来」ではなく横一線の戦国時代、乱世が幕を開けたのだ-


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拝啓、親愛なるゼーマン殿

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<拝啓、親愛なるゼーマン殿>

貴方がASローマを解任されてはや3ケ月が経ちました。

今季、開幕前からあの4-3-3が再び見られると心躍らせていた1人として、
又このブログでもイチオシのチームとして取り上げていた事もあり大変残念に思います。

貴方のいないセリエAはまるで「大島優子のいないAKB」「ドリブルしないイニエスタ」「シュートを外さないトー○ス」のようで何か物足りないように感じられます。


そもそも何故、解任されなければいけなかったのでしょうか?

今季のローマは「ゼーマン就任」で期待される効果は全て発揮されていたのにも関わらず―


就任の際の公言通り、解任される時点でローマの総得点は「リーグナンバー1」でした。

え?総失点? そんなものは知った事ではありませんし、
貴方を招集した時点で覚悟しておかなければならない基本料金のようなものです。


まさかローマの首脳陣はゼーマン政権で優勝を狙うなどという馬鹿げた夢物語を描いていた訳でもないでしょうが、
「ゼーマンのサッカーが見られる」という幸福はスクデットにも劣らない価値があるはずです。

貴方の攻撃サッカーの元、ローマの王子はすっかり全盛期のパフォーマンスを取り戻しました。

(同じようにユベントス移籍で蘇ったピルロと共にトッティを司令塔に、スーパーサブとしてデルピエロを招集すればアズーリの2014W杯は揺るがないものになると思うのですが…ww)


深夜2時過ぎにセリエAで「退屈なスコアレスドロー」を見る心配もローマ戦に限っては無用です。

なんたって貴方が率いるローマはキックオフの時点からもう目が離せません。


【ゼーマンローマのキックオフの図】
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いきなりハーフラインに8枚を並べるなんて素敵過ぎますwww


で、ここからキックオフされるとCB2枚を残して一斉に攻め上がるって・・・・




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一体どこのアメフトだよwwww


もう最高です。


物分りの悪い輩はしたり顔で「もしここで取られたらイキナリCB2枚しか残ってない大ピンチに陥るリスクが…」とか抜かしてますが


だから面白いんだろう?(キリッ!)という事が何故分からないのでしょうか。


カテナチオの国で誰にも理解されずに己の道を貫くその変態魂に乾杯。

このサッカーの真髄をマッチレビューで検証する機会が無かったのは残念ですが、
一刻も早くまたどこかのクラブで「ゼーマンの4-3-3」が見られる事を願っています―


敬具。





追記:そうそう、Jリーグ各クラブのGMの皆さん!

今、日本サッカーに必要なのはこういう「色」を持ったチームカラーじゃありませんか?

この変態を招集してくれた暁には、僕が毎週スタジアムに通ってマッチレポートをUPする事をお約束します(笑)


是非、ご一考を・・・!!





<【予告】CL決勝をツイッター上で実況解説します!>

昨年、一昨年に続き、「リアルタイムマッチレビュー」今年もつぶやきます!

今季最後を飾る大一番を一緒にツイッター観戦しませんか?

ハーフタイムにはサッカー談義で眠気を吹き飛ばすのもアリでしょう(笑)

フォローはコチラから!⇒

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せめて、チェルシーらしく ~EL決勝 チェルシー×ベンフィカ~

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<せめて、チェルシーらしく ~EL決勝 チェルシー×ベンフィカ~

初のCL王者⇒EL王者の流れで2年連続欧州を制したチェルシー。

モウリーニョ時代のポルトのようにEL⇒CLという順でプレステージを駆け上がっていく例はあっても
その逆というのはなかなか珍しい。(笑)

(そもそも昨年のCL覇者が翌年グループリーグ敗退でELに回る事自体がアレなのだが・・・(^^;)


ただ試合内容については昨年のCL決勝(対バイエルン戦)同様、
今年も実に"チェルシーらしい"試合運びで勝ち切ったと見る。


<若さのベンフィカと経験値のチェルシー>

今年のEL決勝会場は僕の個人的なサッカー観戦歴の中でもトップ3に入るスタジアム、アムステルダムアレーナでの開催となった。

イングランドのスタジアムに比べるとピッチへの近さという点では一歩譲るものの、
とにかくこのアレーナは観客席の傾斜がサッカーを"見る"為に計算されているのかどこの席からでもピッチ全体がよく見渡せるようになっている。

特に二階席からの眺めは素晴らしく、それでいてピッチ上との一体感を決して損ねてはいない。

なるほど、これならアヤックスの試合でピッチ全体に選手が散らばる4-3-3の様式美が確認出来るだろうなと妙に納得させられたもので、
オランダ人にとってのサッカー観までをも垣間見た思い出深いスタジアムである。


…まあスタジアムの話はこれぐらいにして、肝心のマッチレビューへと移っていきましょう。

まずは両チームの布陣から。

【チェルシー×ベンフィカ
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ベンフィカはここ数シーズン、ヴィツェル、ディマリア、Dルイス、ラミレス、コエントラン…etcと毎年中心選手を高値で売りさばきながらも結果を残してきた勝ち組のクラブ。

この日のスタメンの中にも何人か聞き覚えの無い選手が混じっているが、近い将来メガクラブへと羽ばたいていく金の卵が潜んでいる可能性は大きいかもしれない。

そんな見方をしても面白いチームだと思う。


対する元CL王者はテリーに加え、直近のリーグ戦で負傷したアザールが使えない。

そこで普段はボランチでの起用が多いラミレスを右に回して、
代わりにDルイスのボランチ起用というベニテスのオリジナルオーダーを採用していた。

このDルイスの使い方はベニテスが考案し、既に今季も何試合か使われているものだが
どちらかと言うと苦肉の策という趣が強いように思われる。

それと言うのも現状、チェルシーのボランチ陣はどの組み合わせにしてみたところで
「帯に短し襷に長し」なのだ。

例えばミケル(笑)・・・もといミケルを使えば半ば中盤からの展開は放棄せねばならず
かと言って展開力に優れたロメウはフィジカル面でプレミア適応に未だ不安があるのか
相変わらずどの指揮官になっても干され続けたまま。

全盛期に比べて機動力は落ちたランパードだが未だ健在の得点力は魅力。
しかしこれもそのカバー役としてラミレスと組ませてしまうと今度はラミレス最大の武器である機動力があまり活きてこない。

だったら最終ラインで使うにはその攻めっ気の強い性格が度々災いしてきたDルイスを
一列前で使ってしまおうというベニテスの活用術なのである。

実際、布陣としてはなかなか機能している試合もあり、失敗とまでは言えないのだが仮にも欧州王者、
他にもっとマシなボランチはいないのか?というのが正直なところ(笑)


ありきたりな言い回しにはなってしまうが、改めて両軍のメンバーを確認してみると
将来性を秘めた若きタレント達が生み出す"勢い"が武器のベンフィカと
既に完成されたプレイヤー達がその豊富な経験を活かして受けて立つチェルシーという構図がハッキリと見て取れる。


<ベンフィカによって外されたチェルシーの狙い>

試合を見ていく上で、まずこの布陣から分かる事が一つ。

左にオスカル、右にラミレスを置いたチェルシーの狙いは明確だろう。

オスカルは単独突破でサイドをえぐるタレントでは無い。
となれば当然、左に流れるのが好きなマタとのコンビでまず左で起点を作り、
空けた逆サイドにラミレスを走らせてその機動力を活かす・・・という画が自然と描かれる訳だ。

【左で作って右へ流すチェルシーの狙い】
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ところがいざ蓋を開けてみるとベニテスの思惑通りには事が運ばなかったのである。

前半の45分間(まあほぼ90分と言ってもいいがww)、ボールを一方的に支配し続けたのはベンフィカだったからだ。

ベンフィカは実にポルトガルのチームらしく、最終ラインから小気味いいパスの繋ぎにドリブルを織り交ぜたボール運びでチェルシーの守備網を軽々と突破。

このテクニカルなサッカーこそポルトガルのクラシカルなフットボールだろう。
(そのポルトガルサッカーの代名詞とも言えるRコスタがこのチームのテクニカルディレクターに就いているのは偶然ではあるまい)


では実際の試合からベンフィカの崩しと、チェルシーの狙いが機能していない様を検証してみよう。


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局面はベンフィカが左サイドから攻め込もうというシーン。

ベンフィカの攻めはここからパスだけでなくドリブルも織り交ぜてくるので、
Dルイスはアスピリクエタが抜かれた際のカバーリングに備えてどうしても一度サイドまで引っ張り出されてしまう。


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実際にベンフィカはドリブルでボランチのDルイスを引っ張り出しておいてから右へ展開。

すると次は当然ランパードがボールへ寄せる役目となる。

(試合序盤からこのパスとパスの間に一度ドリブルを挟む攻撃がチェルシーの守備を困難なものにしていた。)


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ここでもベンフィカはランパードをかわしておいてから更に右へと展開。

Dルイス⇒ランパードと次々外されているチェルシーは次のオープンスペースをケアする為、急いでオスカルが守備へ戻ってきている。



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最後はそのオスカルの献身的なスライディングで何とか難を逃れたチェルシー。


確かにオスカルは決して得意とは言えない守備を最後まで献身的に続けていたプレーぶりが印象的だった。

しかし、本来は攻撃の起点として展開役を期待されていたはずのオスカルにここまで低い位置で守備をさせてしまうと当然左で作って⇒右で崩すという試合前の狙いは期待出来なくなってしまう。


実際、かなり低い位置でのリトリートした守備を強いられたチェルシーは
ボールを奪ってもベンフィカの素早い切り替えから前プレを受けて満足にボールが繋げない。

仮にタテパスが上手く入ったとしても前線はトーレスとマタが完全に孤立してしまっていた。

【孤立する前線 前後分断のチェルシー】
koritu.jpg


そう、ベンフィカは決して勢いだけで勝ち上がってきたチームでは無かった。

最終ラインからの丁寧な繋ぎと奪われた際の素早いボール奪取という
まさに現代サッカーのトレンドを高いレベルで実践している好チームだったのだ。
それは試合を見ていた誰もが気づき始めていた事だろう。

特にマイボールの際、アンカーの位置に陣取るマティッチのボール捌きは美しく、
ベンフィカの攻撃のほとんどは彼を経由して始まっていた。

しかもこのマティッチ、よくよく経歴を調べてみれば他でもないチェルシーが
ベンフィカからDルイスを獲得する際のバリューセットとしてタダ同然で手放しているというではないか…!

そのDルイスを苦肉の策としてボランチ起用しているチェルシー相手に
マティッチが悠々とゲームを組み立てる様は何とも皮肉である(笑)

(それにしてもチェルシーはマクイークランと言い、ロメウと言い、プレーメーカーにとって生き地獄みたいなチームになっとるなww)


<チェルシーの落ち着き>

思わぬ苦戦を強いられたチェルシーだったがそれでも有効な攻め筋はあったと見る。

フォーメーション表記では4-2-3-1となっているものの、
試合ではペレスが高い位置を取ってマティッチの1ボランチ気味になるベンフィカに対しては
アンカーをサイドに誘き出した後のバイタルエリア侵入が効果的だ。

【ベンフィカに対する有効な攻め筋】
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↑の局面のようにトップ下のマタがマティッチを引き連れて流れ、
空いた中央のスペースにランパード(orラミレス)が進出するという形をチームとしてもっと明確に狙っていく事は出来たようにも思えるのだが・・・?


だがベンフィカと違ってチェルシーが苦しいのはそもそも最終ラインから繋げるチーム構成になってはいないという事だ。

それは↓のような何気ないシーンからも伺う事が出来る。

【チェルシーの最終ラインからの繋ぎ】
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局面はチェルシーがCBのケーヒルからボールを繋いでいこうというシーン。

ここでベンフィカに限らず、現代サッカーのCBに求められているのは相手の前プレをかいくぐって中盤の間受けへと繋げる展開力である。

↑のシーンでは⇒のコースを通してラミレスへ繋げれば一気にバイタルエリアまで侵攻するチャンスになる。


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ところがここで間受けのコースが見られないケーヒルは、ボールを受けてからもたついた後、
苦し紛れの逃げパスをサイドのDルイスへ。

(まさにボールを受けた方が困るという典型的な"ありがた迷惑パス"だ(^^;)


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結果、まんまとサイドの苦しい位置で追い込まれたDルイスがこの後ボールを失ってしまった。

今更バルセロナなんかを持ち出すまでもなく、後方からの繋ぎという面で
このチームにクオリティが不足しているのは明らかだろう。


・・・・が、しかしである。

一転して相手にボールを明け渡した時の開き直った強さもまたこのチームのらしさだったりする。

これでもかというほどベンフィカにボールを繋がれ、チャンスを作り続けられているというのに
チェルシーの面々の落ち着きといったらどうだ…?

まるで「あーハイハイ、今年もこのパターンね。
じゃ、どうぞ好きなだけボールと戯れていて下さい。
僕ら優勝CUPだけ持って帰りますんで(^^)」

という彼らの心の声が聞こえてくるような試合展開ではないかwww

(なるほど、この試合運びならオスカルを度々ベンチに置いてまでベニテスがモーゼスとかいうポンコツ…もとい、有能な労働者を重用する訳だww)


逆にベンフィカはポルトガルサッカーのダメな部分で"らしさ"が顔を覗かし始める。

いくらボールを好き放題繋げるからと言ってゴール前の最後の部分で綺麗に崩し切ってやろうと躍起になり、遊び過ぎた感は否めない。

国内リーグの相手ならそれでも最後は押し切ってしまえるのだろうが、
欧州の舞台でこのクラスが相手だと時にサッカーは残酷な一面を覗かせるものだ。

何よりチャンスを手放し続けたチームに微笑むほどサッカーの女神は甘くはない。

なにせ青いチームにはこの女神に愛さ続けた空気の読めないアイツがいるのだから・・・。










『呼んだ・・・? 』|ω・`)(チラッ)
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<決勝と言えばこの男!>
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そう・・・決勝と言えば空気の読めないこの男!

W杯決勝⇒勝利

2度のEURO決勝⇒勝利

CL決勝⇒もちろん勝利

EL決勝⇒NEW!



もはや決勝戦におけるニート・・・もといチート!

後半14分、チェルシーはツェフのロングスロー⇒マタがダイレクトでDFの裏へ落とす⇒何故かそこにいたトーレスの独走⇒GKかわしてゴール!

出た!www

ベンフィカがこれでもかとパスを繋ぐ一方でツェフのスローからパス1本で1点とかwwww
(ハッキリ言ってチェルシーは最後尾からの展開で最も精度が高いのがツェフのスローかパントキックなんだよなww)


それにしてもこのゴール、どこかで見たような・・・と思ったら


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完全一致なんですけどwwww
(上=ベンフィカ戦 下=昨年のCLバルセロナ戦)

だから何でいつもお前は気付いたらGKと1対1なんだよwwww



アシストになったマタのパスもトーレスを狙ったというよりは
苦し紛れの態勢からとにかくDFラインの裏へボールを落としただけ・・・という感じのパス。

でも王子にはそっちの方が大好物だったようで・・・(^^;

(やっぱりこのドMストライカーの裏に出された雑なパスへの反応は常軌を逸してるわww)


<せめて、チェルシーらしく>
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試合はその後、アスピリクエタのハンドから得たPKを決めたベンフィカが一度は追いつくものの
最後は後半ロスタイムのCKから"予定通り"イバノビッチが決勝点を決めて決着。

試合後、ツェフは語っている―

『2点目は決まると思っていたよ。PKは運がなかったけど、僕は自分たちが勝つと分かっていたんだ』



見過ごされがちだが、93分にチェルシーが得たこのCKは敵陣深くのゴールライン際でこぼれ球を拾ったラミレスが
恐ろしい程の冷静さでもってDFの足にボールを当てて外に出したワンプレーがキッカケになっている。

この時間帯においても尚ビッグプレーを狙わず確実にCKを取りに行った判断には背筋が凍る思いだ。
こんな何気ないワンプレーにチェルシーの底力を見たような気がする。
(恐らくベンフィカだったら1対1の仕掛けからクロスを狙っていたはず)


恐らくツェフのようにハッキリと口にはしなかっただけで、
チェルシーの選手達はみな試合が進むにつれ自分達の勝利を確信していったのではないだろうか。

スコアボードこそ0-0のままなのだが、前半からベンフィカが一つチャンスを潰すごとに
見えないベンフィカのバロメーターが削られ、チェルシーに加点されているような・・・そんな不思議な感覚を覚えたのは僕だけではあるまい。


何よりチェルシーにはこの戦い方で勝ってきた幾多もの経験が備わっている。

昨年のCL決勝では独特のファイトボール(通称「戦術ドログバ」)に上手く適応出来なかったマタが
この試合では割り切ったカウンター攻撃で特に後半は持ち味を再三発揮するなど新たな一面を見せていた。

その意味で挑戦者のベンフィカはあまりにピュア過ぎたと言うか、
勝負に対する厳しさという点で2年連続の欧州王者から学べる事は多かっただろう。



最後に今季のチェルシーについてまとめてみると2年連続でシーズン途中の監督解任⇒暫定監督で欧州制覇という流れになった訳だが、これをどう評価したものか?

昨年はビラスボアスが理想のサッカーを目指したところからディマティオのモウリーニョ路線への回帰となり、
今年はアザール、オスカルらを加えて再び理想のサッカーを目指したディマティオから現実路線のベニテスで軌道修正という茶番劇。

まずこのクラブに必要なのはユナイテッドやアーセナルのような「継続性」だろう。


ベニテスに関しては課せられた最低限のノルマは達成したといったところだろうか。
特にトーナメント戦に強いチーム作りは健在だった。

一方でリーグ戦で頭一つ抜け出せるチームをなかなか作れないというのもまた彼らしかったかもしれない。


サッカーのスタイルという点で言えばCLのベスト4(バルサ、マドリー、バイエルン、ドルトムント)が多かれ少なかれ皆、
【素早い攻守の切り替えと高い位置からの前プレ、マイボールは最終ラインから丁寧に繋いでいく】
という現代のトレンドに乗っているのに対し、
真逆をいくチェルシーという異分子が昨年に続き欧州王者に輝いているところにサッカーの奥深さを見た気がする。

これで来季がモウリーニョという事であれば、存分にチェルシーらしいサッカーで再びプレミアを席巻する可能性もあるのだろうか?

(独力で長い距離を運べるアザールはロッベン、Cロナウドの役割を担えるだろうし、オスカルはきっとエジルばりに守備を鍛えられるのだろうww)


やはりこのクラブは下手に格好つけたサッカーで負けるよりも、開き直った時の強さでヒール役を演じ続けてもらいたいものだ。


そう、例え負けるにしても せめて、チェルシーらしく―


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今季のマンUから垣間見る未来像とファーガソンの決断

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<名騎手の手綱さばきがユナイテッドを優勝に導いた>

12/13シーズンのプレミアリーグはマンチェスターUの優勝で幕を閉じた。

思いもかけぬ引退宣言でファーガソン監督のラストシーズンとなった今季だったが
終わってみれば稀代の名将の見事な手綱さばきがチームを優勝に導いたと見る。

開幕から常に好位置につけ第二コーナーを曲がったあたりで先頭に立つと
マンチーニやベニテスが直線で馬群に沈んでいくのを尻目に4馬身以上の差を保ったままゴール。

(尚、リバ○ールに至っては第一コーナーで落馬した模様www)

競走馬の能力にそれほど差は無くても騎手の差は歴然としていたシーズンと言えよう。


確かに個々の試合を振り返れば、目を見張るようなサッカーも時代をリードするような戦術も無かった今季のユナイテッドだったが
どんな内容でもしっかり勝ち点だけは取るという安定感は他の追随を許さなかった。


<ファーガソンの決断>

ここで時計の針をシーズン開幕まで巻き戻すと、
そもそも今季は「打倒バルセロナ」で始まったシーズンだった。

既にファギーが20年以上の歳月をかけて作り上げてきたいわゆる"ユナイテッドのサッカー"
プレミアリーグを制する事が出来るのは誰でも知っている。

だが欧州の覇権を握るには、絶対王者バルセロナを倒すには
このままのサッカーでは無理な事も分かってきた。


そこで今季補強されたのが香川とファンペルシーである。

時代のトレンドがバイタルエリアを巡る攻防に流れているのを感じたファーガソンは
ブンデスリーガでバイタル攻略の名手として躍進する香川と単なるストライカーという枠に留まらず中盤に引いてきても仕事の出来るVペルシーを指名したのだった。


しかし実際に蓋を開けてみるとファンペルシーがすんなりフィットしたのに対し
プレミア初挑戦の香川には時間が必要で、しかも早々に怪我による離脱を強いられてしまう。


名将の決断は早かった。

すぐさま従来のユナイテッドサッカーに舵を戻すと間もなくしてプレミアリーグでの独走が始まった。


監督の中には「理想と心中」する者も多く、
それはそれで一つの美しい生き様だとは思うが、それでは20年以上の長期政権は務まらないだろう。

結果的に見てファーガソンの判断が正しかった事は優勝という結果で証明されている。

まあ、そもそも昨季の戦力でさえあのシティと最終節まで優勝を争ったのだから
Vペルシーが訪れるチャンスを確実に得点へと変えてくれればこれも順当な結果なのだろう。

(ルーニーも自分と同じレベルの画を見てくれる選手がチーム内にいる事で明らかに負担が減った)


個人的にはプレミアで独走するユナイテッドを見ながら「香川の融合」「新しいユナイテッドへの挑戦」
来季以降に持ち越されたと見ていたのだが、今となってはそれも叶わぬ夢となってしまった。


だからこそ今、ファーガソンが本当に目指していた「新たなるスタイル」を
今季前半戦の試合から検証し、少しでも垣間見る作業が必要なのではないか?

この作業なくして、今季のユナイテッドの本当の姿は見えてこないし、
「ありがとうファーガソン」と「モイーズとは何者か?」に染まる報道を見ながらその想いは強くなるばかりである。


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<ユナイテッドの未来像>

今季のユナイテッドを振り返る上で外せない試合が第6節のトッテナム戦だろう。

個人的にはシーズンベストゲームだと確信しているのだが、
特に後半の45分間で見せたサッカーはここ数年のユナイテッドの中でも最高の部類に入る。
(但し、スコアは2-3の負け試合)

この試合が貴重なのは後半にVペルシー、ルーニー、香川、スコールズが同時起用された数少ないサンプルになったからだ。

僕はこの試合にファーガソンが目指していた"新たなユナイテッドの未来像"を垣間見たのである。


それではこの試合の後半に的を絞って検証を進めていきましょう。

まず後半開始時点で2点のビハインドを追うユナイテッドはこのような布陣になっていました。↓

【第6節 トッテナム戦 後半の布陣】
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まあユナイテッドが前半を終えて2点を追う展開というのはシーズンでもそうそう起こる事ではないのですが、
それが故にこのようなめずらしい超攻撃的布陣が組めたとも言えるでしょう。

基本的には右のナニと上がりっぱなしにした左のエヴラで相手のDFラインを横に引っ張って
空けたバイタルエリアをVペルシー、ルーニー、香川、スコールズと間受けの出来る名手達が
入れ替わり立ち変わりに突くというサッカーになっていました。

もちろん、バイタルへ向けて鋭いタテパスを通せるキャリック&スコールズという出し手が2人いる事も重要です。

(どことなくトップから降りてくるメッシを筆頭にシャビ、イニエスタ、セスクらが同じようにポジションレスで
バイタルエリアを制圧したペップのカオスバルサを彷彿とさせるものがありますね。)


では実際の試合からユナイテッドの多彩な攻めとバイタル攻略の道筋を検証していきましょう。


【ダブル間受け】
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まず単純に考えて常に間受けを狙っていて尚且つそれを実行に移せる駒が2人以上いるのはそれだけで大きな利点になります。

↑のシーンではVペルシーとルーニーがDFラインを引っ張り、スコールズと香川が間受けを狙っていますが
他にも香川&ルーニー、Vペルシー&香川など組み合わせも多彩です。

守る側のアンカー(サンドロ)はどちらを潰してもどちらかが空いてしまうので非常に難しい判断を迫られています。



【間受けのローテーションから時間差攻撃】
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続いては間受けのローテーションから時間差攻撃へと発展した形です。

まず中盤の浮き球を処理するスコールズから得意のエリアで待つ香川へ。


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受けた香川には背後からマークが付いた為、無理せずボールを一度下げながら
自身も流れる事でマークを引っ張り、空けたバイタルエリアを次の選手へ使わせようという意図が伺えます。

これは試合中、香川がよく見せるプレーでもありますが
この次への展開を踏まえた意図を誰かが感じていないとただのバックパスで終わってしまうのが難点で
実際にユナイテッドの試合ではそういう事がよくあります。


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しかし、これだけバイタル攻略への意図を持った選手をピッチに揃えていればその心配はありません。

空けたバイタルにルーニーが前線から降りてきているのと同時に
バックパスを受けたキャリックも香川の意図を充分に理解したタテパスを通せる事が重要です。


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ハイ、見事な時間差による間受けが成功しました。

スコールズ⇒香川⇒キャリック⇒ルーニーと誰1人欠けても実現しない連携は非常に貴重な形を生み出しています。



【香川の裏抜け】
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今度はVペルシーとルーニーが中盤に降りて、代わりに香川が最前線に飛び出すパターンですね。

この流れからVペルシーのスルーパス⇒香川の見事なターンでゴールが決まったので
このシーンを覚えている人は多いかと思います。

中盤まで引いてもアシストで高いレベルの仕事が出来るVペルシーというタレントと
裏抜けからの得点感覚も併せ持つ香川の良さが活きたシーンと言えるでしょう。



【サイドに起点を作って中を開ける】
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最後にサイドでも起点を作れるパターン。

左に流れた香川がボールを受けると同時に最前線のVペルシーも同サイドへ流れる事でCBを引き出します。


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香川から真ん中へ抜けるルーニーへパスが通って決定機へ。

俯瞰の視点から見ると単純な連携のようにも見えますが、
香川、Vペルシー、ルーニーが同じ画を描いていないと実現しないプレーなのです。



いかがでしょうか?

両サイドへポーンと素早く展開して、それをウイングがぶっち切って中へのクロス⇒CFがズドン!という
従来のユナイテッドとは明らかに一線を画す"バイタル攻略色"が強いサッカーが展開されているとは言えないでしょうか?

僕はこれこそが香川とVペルシー獲得の意味であり、ファーガソンが本来目指していた形だったのではないかと今でも思っています。


しかし重要なのは結果的にこの試合は2点を取りながらもカウンターから追加点を許した負け試合だったという事。
(今季5敗しかしていない内の一つ)

元々スピードに乏しいDFラインを果敢に上げて、ベイルがいる相手にここまでスペースを与えてしまうと
やはりカウンターからの失点は必然だったと言えるかもしれません…。(^^;

バイタル攻略に枚数をかけて両サイドを上がりっ放しにしたまま、
尚且つDFラインまで上げて相手を押し込むサッカーを実現するにはある程度1対1でカウンターを跳ね返せるスピードを持ったDFが不可欠という結論に達するのかなと。


故にこの試合がターニングポイントとなって以降のユナイテッドはDFラインを下げて
バイタル攻略に特化しない従来のサッカーへ徐々に舵を戻していく事になります。


・・・では来季以降はどうなるのか?



ご存知の通り、ファーガソンに加えてスコールズも引退し、ルーニーにまで移籍の噂がある以上、
このサッカーの続きを見る事は叶わなくなってしまいました。

来季以降、ユナイテッドは新しいサイクルに入ると見るべきで
我々日本のファンとしては果たしてどこまで香川を活かせるサッカーをしてくれるのか?というのも気になるところ。


しかし返す返すも「戦術的には古臭いタイプ」とも見られる事もあるファーガソンの先見性と挑戦する心意気、
そしてRマドリー戦で見せた神の一手まで含めてこのじーさんは本当に最後まで底が知れなかったな・・・と(笑)

今まで長い間お疲れ様でした・・・と言いたいところですが、

どうせ来季以降もユナイテッドがちょっと連敗でもしようものなら
もうあの真っ赤な顔で上からガンガン激が飛んでくるんでしょう?(笑)


"生涯現役"の貴方を期待していますよ。



追伸・もちろん来季以降のモイーズユナイテッドについての検証もご期待下さい。


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JリーグにGプレスは定着するか?

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<時代はポゼッション賛歌からGプレスへ?>

皆さん"Gプレス"って聞いた事ありますか?

最近サッカー雑誌なんかでよく見かける目新しい単語で
なんでもこれはドイツ語の「ゲーゲンプレッシング」の略らしく、
ドルトムントのボールを奪われた瞬間に高い位置で奪い返すプレスの事を指すんだとか。


なんとなくカッコイイ用語を出してくるのはこの国のメディアがよく使う手法の一つですが
「奪われた瞬間の守備への切り替え」なんてもはや現代サッカーでは当たり前の話で別段新しい戦術でも発想でもありません。
要はどこまで徹底出来るかという程度が問題なんです。
(多分「Gプレス」という言葉自体は定着せずに終わると思いますがww)

今季ドルトムントとバイエルンが凄いのは「そこまでやるか・・・」という徹底具合が半端じゃない事。


CLではバルセロナとRマドリーがドイツ勢の「Gプレス」に惨敗を喫した事で
「プレッシングがポゼッションサッカーの時代に終止符を打った」という見方も一部でされているようですが
そもそもクロップ自身、Gプレスはバルセロナの守備から着想を得たと話しているように本家は他でもないバルサの方なのです。

(今季バルサの失点が激増しているのは明らかに前からのプレッシング強度が落ちたせい)


ただ「バルサの時代」到来と共に彼らが世界中へ影響を与えたのは「ポゼッションサッカー」の方で
世界中のクラブが「プチバルサ化」を進めていたのが昨今のサッカー界の現状でした。

戦術のトレンドがポゼッションサッカーへと舵を切れば、次にプレッシングの流れが来るのは必然の流れでもあります。

何故ならGKから丁寧に繋いでくるサッカーに対し、律儀にDFラインを下げてリトリートしてもバカらしいじゃないかという話なんですよ。

最初からDFラインの裏にタテパスを放り込まれる心配が無いならラインなんか上げたもん勝ちですよ(笑)

この本家バルサにも有効な戦い方は当然プチバルサ相手ならばもっと有効な訳で
つまりトレンドが一つの方向に集約されると時間差でカウンターカルチャーが台頭してくるのは歴史の必然でもあります。

しかもポゼッションサッカーの方は選手の技術レベルとチームの完成度という点で高いレベルと長い時間を要するものですが、
プレッシングは高い位置でボールが奪えるならチマチマとパスで崩す必要も無いので両得です。

(ペップバルサはポゼッションとプレッシングの両方を高いレベルで兼ね備えていたから伝説のチームに成り得たんでしょうね)


仮に今後は「Gプレス」のトレンドが世界中に伝播すると仮定すると
今度はその前プレを打破するカウンターカルチャーとしてテクニックで前プレを無効化するチームだったり
中盤を省略してドログバみたいな選手に縦1本放り込む真反対のチームがコロッと勝ってしまったりするのがサッカーの面白いところで、
これが「戦術の歴史は繰り返す」と言われている所以でしょう。


ただ、前から取りきってしまうにしろ一旦リトリートするにせよ
この尋常では無い「攻守の切り替え」自体は今後現代サッカーで勝っていく為のマストなものとして定着していくはずです。



marinos 2013
<JリーグにGプレスは定着するのか?>

一方、日本のサッカーは今後どのような航路を取っていくのでしょうか?

CLの鮮烈な残像が残る頭で、先日久しぶりにJリーグ観戦へ行ってきました。


「横浜Fマリノス×鹿島アントラーズ」という上位対決は最後までお互いに譲らない白熱したシーソーゲームだったのですがいくつか気になる点も目につきました。


まずポジティブな面では改めてJリーグの試合は非常に洗練されているという事です。

どちらのチームも組織的な完成度は高く、特に守備ブロックの形成は迅速かつ秩序立ったもので
欧州のクラブシーンと比較しても全く見劣りしません。

又、選手個々で見ても中村俊輔選手や野沢選手のテクニックとプレーヴィジョンは世界のどこに出しても恥ずかしくない代物です。


ただ一方で"ボールを取られた瞬間に奪い返す"というカルチャーはまだまだ根付いていないように思われました。

Jリーグの試合はボールを奪われた瞬間に全員が持ち場に戻って満足していて
誰も"自分がボールを奪うんだ"という直接のアクションを起こさない言わばサラリーマンサッカーという印象を強く受けます。

本来、サッカーにおける守備の最終目的とはボールを奪い返す事にあるはず。

ところが鹿島も横浜も各自が己の持ち場を順守する"手段"の方が"目的化"されていて相手のミス待ちという感じが拭えません。


試合を見ながら僕はふと"そもそもこの選手達はCLの試合を見たのだろうか?"という素朴な疑問も湧いてきてしまいました。

あのリベリーがボールを奪われた瞬間、鬼の形相でスライディングをかますシーンをちゃんと見ていたのだろうか…?と。

仮に僕がプロのサッカー選手だったらあの試合は最低でも5回は見返します。
(まあ、結局プロじゃなくても変態なので見返すんですがwww)

そういう価値のある試合だったと思うし、
なによりプロサッカー選手ならサッカーについて1日25時間は考えているのが当然だと思うのは僕が変態だからでしょうか・・・?(^^;


日本人の特性から考えて「Gプレス」という戦術が根付く下地はあると思うのですが
それにはまず「守備=受身」という根本的なメンタリティーの方から改革していく必要があるのかもしれませんね。

ふとそんな事を考えてしまった有意義なJリーグ観戦でした。


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モウリーニョ 『打倒バルセロナ』の向こう側 ~Rマドリー×ドルトムント 2nd~

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<『打倒バルセロナ』の向こう側 Rマドリー×ドルトムント 2nd

今日は来季の去就も注目されるモウリーニョの事実上マドリーラストマッチ(?)となったドルトムント戦の2ndから
話題の一手(後半の選手交代)を取り上げつつ彼の3年間の総まとめで締めくくる構成でいきたいと思います。


果たして「優勝請負人」がマドリーにもたらしたものとは―



<宿題は忘れないモウリーニョ>

ではまずドルトムント戦の2ndレグを振り返ってみましょう。

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ドルトムントはクロップ監督の前日記者会見で残した言葉が印象的。

クロップ
明日の試合では極端に引いて守りきる事も、また追加点を狙って攻撃一辺倒になる事もしない。
いつも通りバランスをとって戦う。我々のサッカーではバランスこそが生命線である』


その言葉通り、いつものスタメンが顔を揃えた。

それにしてもあの運動量の多いサッカーでよく1シーズン、最後まで固定メンバーを貫いたものだ。



かたや奇跡の逆転に一縷の望みをかけるモウリーニョ監督は1stレグの課題を的確に修正してきた布陣と言えるだろう。

まずレバンドフスキに完敗のペペに代えてSラモスをCBへ戻し、バランと機動力のあるCBペアを形成。

試合を見ていた我々も含め1stレグではレバンドフスキというプレイヤーをやや過小評価してしまっていた感は否めないマドリー。

SラモスをSBで起用し、試合感も不十分なペペにあの確変中のストライカーを任せたのは今考えれば明らかに荷が重かった。

右SBにエッシェンを起用してまでSラモスをセンターに戻した並びからはそんな後悔が滲み出ている。


加えてビルドアップの貢献が限りなく低かったケディラもベンチスタート。

3点を狙うのだからスタートからアロンソ、モドリッチのペアも当たり前だろう。


そしてサイドに回された事で完全に存在感を消してしまったエジルを本来のトップ下へ戻し、
待望のディマリアが右に復活。


当たり前と言えば当たり前すぎる修正だが、1stレグの宿題を全てクリアにしてくるあたり、さすがのモウリーニョである。


<勝負を分けた15分間>

蓋を開けてみると最初の15分間は完全なるマドリーペースで始まっている。

別にドルトムントが受身に回ってしまった訳でもなく、
マドリーは最初から適材適所で戦えばこれぐらいの力があるという事をまざまざと見せつけた格好だろう。


特に右SBに本来は中盤の底からパスも展開出来るエッシェンを置いた事で
この日のマドリーはアロンソ、モドリッチ、エジルに加えてSBのエッシェンと攻撃の起点が一気に倍増。

右サイドを完全に制圧すると、ここから本来の位置に戻ったエジルへ間受けのタテパスがビシビシと決まる。

【復活したエジルの間受け】
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更に右サイドで溜めを作っている間に、この試合ではめずらしく逆サイドのロナウドが50Mの全力疾走で一気にDFラインの裏をとるなど久々に本気を見せていた。

(ロナウドはボールを持ってからももちろん怖いタレントだが、あのスピードで裏まで走られると実はマークで付き続けるのは不可能に近い)


【右で作って逆サイを抜けるロナウドへ】
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他にもアロンソのレーザービーム⇒引いたイグアインのポストプレー⇒裏へ抜け出たエジルなど
1stレグとは打って変わって最初からエンジン全開のマドリーは開始15分でノルマの3点を奪うチャンスすらあったのでは?と思うほどの猛攻を見せる。

ロジカルに考えてマドリーのベスト布陣が機能すれば、こういう力関係になっても何ら不思議ではない。


但し、モウリーニョにとって痛恨だったのはこの15分間に1点も挙げられなかった事で
結果的にこれが勝敗の分け目だったと思う。


15分を過ぎると次第に試合を落ち着かせようとするドルトムントと先制点を急ぐマドリーという
ちょっと不思議な構図になっていったのは面白かったのだが(笑)

(いつもなら試合のテンポアップこそが生命線のドルトムントなのだが・・・(^^;)


そしてこの15分~30分の時間帯にドルトムントが見せたサッカーこそが彼らの成長の証だったように思う。

ギュンドアンとフンメルス将軍を中心に後方のポゼッションで試合のリズムを巧みにコントロール。

アップテンポ一本槍だった昨年のチームであれば、マドリーペースの濁流に飲み込まれていたであろう。


クロップも押し込まれた序盤をベタ引きにならないよう懸命にタッチライン際で声を枯らしていたが、
会見の言葉通り『バランスを崩さず』に冷静にマドリーの猛攻に対処していた姿が印象的だった。


結局前半は0-0で折り返す事に。



<モウリーニョの神の一手を検証>

そして後半12分、モウリーニョが試合後の焦点ともなった一手を放つ。

カカとベンゼマを投入し3-2-3-2という異色の布陣に最後の望みを託したのだ。

【選手交代で3-2-3-2へ】
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試合後、一部でこの交代を「神采配」とする向きもあったようだが、
何度試合を検証しても達する結論はこうだ。

この布陣は単なるパワープレイで機能性は著しく低く、得点との因果関係も薄い。


確かに前半はクロスを上げてもフンメルス、スボティッチ相手に分が悪かった空中戦でロナウドを使いたいという狙いは分からなくもない。

エジル、ディマリアをそれぞれ利き足のサイドに置いてクロスの発射台とし、中でロナウド・ベンゼマなら前半より勝負になる。


だが一方で裏を狙うイグアインを下げた事でマドリーの攻撃は明らかに奥行きを無くし、
ロナウド、カカ、ベンゼマはボールをもらいたいエリアが重なっていて中央は明らかに手詰まりになっていた。

そもそもカカもロナウドもスペースがないと120%の活躍は厳しいタレントではないか?


サイド攻撃でもSBがいなくなった事でディマリア、エジルの個人能力に託された感が強く、厚みが出てこない。


【両サイドは単騎突破へ】
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このようにサイドにボールが展開されてもSラモスはCBとしてマークすべき相手がいるのでディマリアのフォローに向かえない。

しかもドルトムントは布陣を崩していないので2対1で冷静に対処出来ている。

(これなら前半に右サイドで見せていたディマリア、エッシェン、モドリッチ、エジルの流動的なサイド攻撃の方が
遥かに機能性も高く厚みもあった。)



もしかするとモウリーニョの狙いは両サイドでドルトムントのDFラインを左右に引っ張っておき
空けた中をカカ、ロナウドらに使わせる狙いだったのかもしれないが・・・・

【両サイドでドルトムントのDFラインを引っ張って中を開ける】
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だとするならば尚更トップ下には間受けの名手エジルではないのか?

カカをトップ下に置いても真ん中のゴチャゴチャしたところでロナウドらと絡みながら崩してく役割には向いていない。
(スペースのあるロングカウンターの推進力こそカカの真骨頂)


いずれにせドルトムントの4バックに4トップ気味の前線をぶつけて個の力で凌駕しようという乱暴な狙いも
ドルトムントが布陣を崩さず冷静に対処した事でむしろ手薄になった後ろをカウンターで突かれてあわやトドメの失点という場面の方が目立っていた。

結果的にDロペスの神がかり的なセーブで何度か難を逃れたものの、
一歩間違えば「神の一手」どころか「直接の敗因」として集中砲火を浴びていた可能性の方が高い采配に思われる。

故にファーガソンがマドリー相手の2ndレグにルーニーを先発から外し、
ギグスを起用した文字通り「神の一手」と同列に扱うべきではないだろう。


恐らくモウリーニョの算段としては前半の内に2点・・・最低でも1点は返しておき
最後のスクランブルとしてこの布陣を用意していた可能性は高い。

この布陣がロジカルに考えて穴の方が大きい事は百も承知だったろうし
だからこそ0-0にも関わらず後半12分の段階まで我慢していたのだろう。

ロジカルな展開の内に1~2点を返しておき、最後は捨て身のスクランブルから博打を打つはずが、
ドルトムントに横綱相撲でガップリ四つに組まれ、最後はこちらから何か仕掛けて試合を動かさねば…というところまで追い込まれてしまった。


<クロップの焦り>

それでも後半82分、マドリーに待望の先制点が生まれる。

この布陣が唯一機能した先制点は起点がGKのパントキックなのでそれすら微妙なところではあるが、
とにもかくにも前線に頭数を並べておいたメリットが活きて右のエジルから中のベンゼマへ。


だが、冷戦に考えれば遅すぎた先制点である。


ところが意外にもこの1点が試合をロジカルなものからモウリーニョが望んでいたスクランブルなものへと変貌させていく。

奇跡の逆転へ微かな光明を見出したサンチャゴベルナベウはその空気が一変。

腐っても相手は20世紀最高のクラブ、あのRマドリーだ。

ホームの大観衆に背を押された白いユニフォームはクロップ率いる若き挑戦者には文字通り白い巨人に見えたに違い無い。


後半87分―

それまでマドリーのどんな策にもあくまでバランスを崩さず対処してきたクロップが遂に音を上げた。

レバンドフスキ OUT ⇒ ケール IN

マドリーにとって一番怖いエースがいなくなった事で、DFラインも含めて総攻撃に打って出る態勢が整った。

Sラモス 執念の追加点が生まれたのはこの交代の1分後の事である。


だがやはり全てが遅すぎた・・・。

最後は中盤を削ってCBのサンタナを投入し、なりふり構わず6バックで守り切ったドルトムントが辛くも逃げ切りに成功する。


<『打倒バルセロナ』の向こう側>


とは言え・・・だ。

85分間は試合前の会見通り"バランスをとって"いつも通りのサッカーを展開したドルトムントの勝ち抜けは順当な結果だったと見る。

ロジカルな展開でマドリーのベスト布陣と互角に渡り合ったその戦いぶりは
若さとか勢いとか番狂わせといった表現が似つかわしくない程に逞しいものだった。


一方、マドリーの敗因はどこにあっただろうか?


昨年のCL準決勝バイエルン×Rマドリーを見返してから、再度今年のバイエルン×バルセロナとこの試合を見てみると
バイエルンはマドリーとPK戦を戦ったあのチームから今期は明らかに一回りもふた回りもその凄みを増している。

片やRマドリーは昨年からの上積みがあまり感じられないのだ。


思い返せばクラシコでのマニータから始まったモウリーニョ政権は
クラブとしてリソースの全てを『打倒バルセロナ』に捧げてきた月日だった。

バイタル封鎖にメッシ封じ、サイド放棄にラインディフェンスの解体と彼らは常にその筆頭であり続けた。


そう、確かにあの頃、バルサを倒す事と世界一のクラブになる事はイコールで繋がっていたのだ。

故にマドリーは「対バルサのスペシャリスト」として先頭を走ってきたのだが、
一方でマドリーに対して対策を施してくるチームへのリソースは明らかに足りていなかった。


そして今期、コパデルレイも含めバルサに完勝するなどバルサコンプレックスを完全に払拭した彼らは
国内リーグで「その他大勢」と見なしていたチーム相手に勝ち点を落とし続け
ドルトムントのように真正面から力でぶつかってくる挑戦者には力負けを喫してしまう。

(バルサのような一種アブノーマルなサッカーに慣れ過ぎてしまったのか?(^^;)


確かにバルセロナを倒す為にはロナウドは絶対に必要な武器だろう。

例え守備を疎かにしてもロナウドを前残りにしておく事でカウンターから得られるメリットは大きい。

もはやロナウドの方もバルサの守り方は熟知しており、ピケなんかは手玉に取っている感すらある。


だが、ドルトムントと戦った180分でロナウドが絶対的な武器として機能していたかというと話は別だ。

ドルトムントにロナウドクラスのタレントは不在だが、一方でロナウドを必要としないチームが完成している。



果たしてモウリーニョは打倒バルセロナのその向こう側に何を見ていたのか、
それとも見えていなかったのか―



気が付けば・・・


クラブの哲学に基づき己のサッカーと心中したバルセロナ、

そのバルセロナを倒す事にこだわり過ぎたマドリー、

ピルロという特定のタレントに頼りすぎたユベントスらが姿を消し、


最も攻守の"バランスに優れた"二つのクラブが決勝に残った。



それを「ドイツ対決」という安易な表現で括るのもいいだろうが、
もっとフラットな目で欧州サッカーを見渡してみた時、そこに一つの必然性が見えてはこないだろうか。


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奇跡は三度起こらず ピッチにあったのは必然の勝利のみ ~バイエルン×バルセロナ~

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<奇跡は三度起こらず ピッチにあったのは必然の勝利のみ>


『バイエルンはすべての面で僕らを凌駕していた。彼らを祝福しなければならない』

試合後、バルサの公式HP上にUPされたシャビの完敗を認めるコメントを持ってバイエルンの完全勝利がここに達成された。


無論、我々がバルサの敗北を見るのはこれが初めての事ではない。

それは既に過去チェルシーやインテルやRマドリーらによって達成された事だ。


だが、いずれの試合にも共通するのはマイボールを放棄し、
耐えて耐えてカウンターの一発に賭けるという展開だったという意味で
今季のバイエルンは明らかにそれらと一線を画している。


無論、これまでの前例もその戦い方がバルサを倒すのに有効だったから取られた訳で
実際に彼らは結果を出しており、そこに非難されるいわれはどこにも無い。

但し、シャビ先生の有名なコメント「アンチフットボール」発言に象徴されるように
バルサの哲学からすれば"試合に勝って勝負に負けた"というのが偽らざる本音だろう。


…いや、何もここで「アンチフットボールとは何か?」とか「ポゼッションは正義か?」とか
そういうややこしい話を蒸し返すつもりは毛頭無い。

ただ、シャビの発言はバルサ側から見た偽らざる感情を代弁しているだけであり、
多分そこに周囲が感じている程の悪意はないのだろう。

むしろここで重要なのは彼らがどこかで「次やったら勝てるだろう」という思いを抱いている事であり、
であればそこに次のステップへの進化と必要性を感じるはずもないという事だ。

(ペップの苦悩は勝ち続けている最中に次への進化を模索し続けていたからこそであろう)


時代を謳歌していたバルセロナが次への一段を踏み出すには彼ら自身に完敗を認めさせる経験が不可欠だったに違いない。

つまり言い換えればフットボールの次なる進化はバルサの完敗が必要条件であり起爆剤で
時代がそれを求めていたのである。


故にこの試合はバイエルンの手によって遂にその重い扉が開かれた歴史的なゲームと言えよう。


既にこの試合単体におけるバルサの敗因(バイエルンの勝因)は方々で語り尽くされている感もあるので
今日はまず前半部分でこの試合のマッチレビューをサラッとおさらいし、
そこから見えてくるバルサの課題と今後、そして未来のフットボール像を考えていきたいと思います。


<先発メッシ 控えビジャの意味>

まずは1stレグから順に振り返ってみましょう。
(と言ってもこの試合でほぼ決まってしまったのだが・・・(^^;)

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バイエルンは累積警告で出場停止のマンジュキッチに代わり、
ゴメス師匠が入った事で前線からの守備力という点では若干の不安は残るものの
それでも持ち前の戦力充を活かした充分な布陣が組めたと言えるだろう。


一方のバルサはCBに怪我人続出で遂にバルトラの手まで借りる事になった苦しい台所事情が見てとれる。

…が、それ以上に重要なのはミラン、PSGを立て続けに葬り去った3-4-3(可変式)布陣ではなく
ビジャを外して通常の4-3-3を採用している点だ。

これは明らかにバイエルンのこれまでの圧倒的な破壊力を見て
ニセWGのビジャがCFとして中に入ってしまうとバイエルンの強力なサイド攻撃を抑え切れないと見てのものだろう。

リベリー&アラバ、ロッベン&ラームの凶悪コンビを警戒して
世界一守備をするFWことペドロと純粋なウインガーとしてサイドのポジションを守るAサンチェスを両サイドに配置したのは打倒な判断か。

そして試合の度に足の状態悪化がありありと見て取れるメッシを結局この試合でも先発スタートで使わざるを得なかったという点。

まあそれも出場僅か20分足らずで大仕事をやってのけたPSG戦の勝ち上がり方を考えれば致し方無いと言えるが・・・・。


<バルサ対策の集大成>

バイエルンがこの日見せた戦いは、これまでのバルサ対策の集大成と呼ぶべきものだった。


「サイドの放棄とDアウベスの放置」「バイタル封鎖」「中盤は下げるがDFラインは下げない」
「カウンターはSBの裏を高速ドリブルで突く」「セットプレーでは徹底した空中戦勝負」


これらは過去、「打倒バルサ」に挑んできた偉大なる挑戦者達が手にした苦労の結晶である。

どこまで実行出来るかというレベル差を別にすれば
もはやリーガの下位チームでもバルサを相手にする時は日常的に見られる光景となったが
そこにはモウリーニョ、ヒディンク、アッレグリ…etcといった先人達の努力が背景にあるのだ。


バイエルンはそれらの成果を受け継ぎつつも「対バルサ」を意識し過ぎる事なく
あくまで自分達のサッカーをベースに細かいディティールにだけアレンジを加えるという程度に収めていたのも奏功していたと思う。

何故なら今季、バイエルンの異常な強さを支えているのはアーセナル戦やユベントス戦でもそうだったように
"自分達のサッカーに対する絶対的な自信"だからだ。


確かにアーセナル戦やユーベ戦に比べるとプレスの開始位置こそ低めに設定されていたとは言え(具体的にはハーフライン)
ひとたび自陣へボールが入るや否やあの鬼プレスと囲い込みは健在だ。

バルサはバイエルン陣内でボールを3タッチ以上するともう前後から挟まれている勢いだった。


それでは以下に具体的なバイエルンの戦い方を検証してみよう。


【バイエルンの守り方】
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↑の図はバルサの最終ラインからのビルドアップを想定したものだが、
基本的にバイエルンは黄色い丸で囲った選手がドイツ伝統の強みを活かしたマンツーマンに近い形で守っていた。

とは言え固定したマーカーに90分付くというものでもなく
局面によってはマーカーを受け渡し、結果として「誰か」が人にマークで付いていれば御の字という具合。


一方で彼らの強気な姿勢が出ているのがバルサの最終ラインへの警戒も諦めてはいない事だ。

ミランがDFラインでのボール回しには完全放置を決め込んで
最初から中盤を5枚にして(時には1トップまで中盤に加勢させて)守備を固めていたのとは対照的である。

無論、バルサ相手にこれまでのようにガッツリと前プレで取りに行く訳にもいかないのだが
中へのコースを切って最終ラインからの球出しを妨害する姿勢は忘れていなかった。


故に試合は序盤からバルサが最終ラインでボールを回すも中々バイエルン陣内にボールを入れられない膠着状態が続いていく。

だが、バルサも試合中に相手の出方に応じて柔軟に対応してくる力はピカイチのチーム。
すぐにバイエルンのマンツーマン気味の守りを見て揺さぶりをかけてきた。


実はバイエルンの守り方で肝になってくるのはブスケスのポジショニングである。

ビルドアップの際、ブスケスが通常通り最終ラインまで降りてくれば↑のような図になるが
もし降りてこずに中盤の底に留まり続けたらどうなるだろうか?


【ブスケスが降りない場合は前線がタテの関係になるバイエルン】
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ブスケスが降りない場合は前線のどちらか(ゴメスかミュラー)がそのままブスケスをマンツーで見て前線が縦の関係になるバイエルン。

バルサはこれで最後尾のエリアで2対1の数的優位が確保出来て多少ビルドアップが楽になる。これが【第一段階】
(バルサ側から見るとブスケスを降ろした3対2の数的優位よりマークがハッキリして2対1の方が球出しが行いやすい)


次にイニエスタとシャビをブスケスのラインまで降ろすと・・・


【出た!メッシの0トップでバイタルを制圧】
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そう、この動きに連動させてメッシを下げる事で「メッシのフリー化」が起こるいわゆる0トップの発動だ。

バイエルンはCBがSラモスぐらいの機動力とスピードがあれば下がるメッシにCBを付ける方法もあったのだろうが
ボアテングとダンテではそれは望めない。
(多分、付いていくリターンよりリスクの方が大きい)


バルサ側からすると「じゃあメッシいつ下げるの?」⇒「今でしょ!」ってな按配でバイエルンに揺さぶりをかけるのだが、
この攻防が非常に高レベルで興味深かった。

実際の試合から検証してみよう。


【メッシの0トップとバイエルンの攻防】
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局面はバルサの最終ラインからのビルドアップで2CBの前にブスケス、そして横には降りてきたシャビという構図。

バイエルンはブスケスにゴメス、DFラインへのプレスにミュラーという関係にここではなっている。

(この場面からもバイエルンが決して人に固定して付くのではなく、局面によってマーカーは柔軟に受け渡している事が分かる)


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バルサはCBの2対1という数的優位を活かし、フリーになった方のいピケから展開を図る。

当然シャビにはシュバインシュタイガーが付くのだが、この時既にシャビは一度首を振って降りてきたメッシがフリーになっている事を確認。


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メッシもシャビがボールを受けた段階で自分の前にあるスペースとCBが背後から付いてきていない事を確認。
ドリブルでのメッシ無双発動への条件が整った。

(それにしてもシャビ、メッシとそれぞれパスを受ける一つ前の段階で必ず次の展開に備えたルックアップを挟むという地味ながらも確かな技術は素晴らしい)


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パスを受けたメッシが一気に加速しようかというその瞬間にミュラーが猛然とプレスバック!



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メッシのドリブル進路を塞ぎ・・・・



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あっと言う間にアッレグリミランが見せた4-5-1の迎撃態勢が完成。

バイエルンは前プレからの【ファーストプレス】
これが突破された際には前線がプレスバックして【セカンドリトリート】という2つの迎撃ラインを巧みに使い分けていた。


バルサはゲームを作りメッシにタテパスを配球するブスケス、シャビ、イニエスタがドイツ流のマンマークに苦しめられ、
Dアウベスへボールを迂回させてもリベリーが休まず追ってくるのでボールの渡しどころに苦労していた様子。
(Aサンチェス、ペドロの両WGはラーム、アラバに1対1で完敗していた。)


その上でバイエルンは奪ったボールをリベリー&ロッベンを使った高速カウンターに繋げ
CKとファウルを量産させてセットプレーから空中戦勝負に持ち込むというお手本のような戦いぶりで次々とゴールを生んでいく。

バルサ狩りのテンプレに走力、プレスバック、素早い攻守の切り替えと自分達の強みを加えた圧勝劇であった。


<メシアも三度は奇跡を起こせず>
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一方、バルサ側から見た敗因は文字通りメシア(救世主)が三度目の奇跡を起こせなかった事に尽きる。

ミラン戦、PSG戦に続きバルサの勝利はメッシの足に懸かっていた事は試合を見た誰もが痛感した事だろう。


ところが怪我を引きずって連戦に耐えるメッシの足は明らかに限界で
この試合で記録した6kmという走行距離は現代サッカーではGKの記録と大差無い。

事実上バルサは1人少ない状態でバイエルンと戦っていた事になるが
バイエルンは1人1人が1・2人分は走るので体感人数では10対13ぐらいの開きがあったのではないか。


最前線のメッシが動けないとなれば、バイエルンはボールを奪った際、
前プレを受けずに自由にカウンターを繰り出せる事を意味する。バルサは全てが悪循環だ。


されどもベンチはメッシを下げず。

否、下げられなかったのだ。
もはや今季のバルサはメッシがいないと試合にならないチームになり始めていた。


<2ndレグに見たバイエルンの本気>

4点の大量リードを持って2ndレグに臨む事になったバイエルンだが、
彼らはリードを守るのではなくむしろかさにかかって攻めてきた。

1stレグを経て「今のバルサなら叩ける」という確信があったのだろう。

プレス位置を1stレグよりも高い位置に設定し直すとバルサ陣内でのボール奪取からショートカウンターという場面も見られるように。


奇跡を起こすどころか押し込まれる展開になってしまったバルセロナは
メッシの代役にセスクを起用する布陣をPSG戦に続き採用。

しかしセスクにメッシと同様の機能性を要求するシステムは先の試合で限界が見えたはず。

攻撃が機能しないバルセロナは守備でも脆さを晒け出していく。

そもそもが7割のポゼッションを前提に相手を一方的に押し込む事を目的として作られたチームだけに
守勢に回るとチャンピオンズリーグの水準を満たしていないザルチームへ一転。


なにより・・・今時、あれだけロッベンを自由にさせるチームは欧州にいないwww


<バルセロナは再び立ち上がれるのか?>
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一体、バルサの歯車はどこで狂ってしまったのか―


やはり最初のつまずきはビラノバの離脱であろう。

今季ペップの後を継ぐ形でコーチから昇格したビラノバ新監督はシーズン序盤、まだまだ監督代行という雰囲気を脱していなかったが、
まさにこれからがシーズン佳境というタイミングで持病が再発し治療の為にチームを一旦離脱。

代理のロウラに至っては代理の代理というレベルで、彼に出来る仕事は毎試合ベストメンバーをピッチに送り出す事。それだけだった。


ペップ時代、そのあまりの強さにバルセロナは「監督がいなくても勝てる」と言われた事があった。

確かにそれはある程度事実で、監督が不在でもシャビのパス技術は落ちないし、メッシは毎試合得点を挙げ続けるだろう。

実際に"置き物監督"のロウラでもバルサはリーガで勝ち続けた。


しかしペップの功績はこの何もしなくても強い最強メンバーに対して更にハードワークを課し、
ボールを奪われた際のカウンターという「打倒バルサ」への一筋の望みすら断とうとした点にある。

監督がいなくてもバルサはボールを回し続けられるしメッシがいればゴールも量産するだろうが
ハードワークを続けるにはチームの長が常に空気を引き締め続ける必要があったのだ。

ペップの元ではチームの為にハードワークが出来ない選手は
例えロナウジーニョであろうとイブラヒモビッチであろうと残る事は許されなかったのだから。


かたや今季のバルサは監督不在の間にすっかり"最強のサッカー同好会"に成り果ててしまい、
土壇場で戻ってきたビラノバにしてもCLでの大一番を前にチームの方向性を立て直す時間は無かったに違いない。

結果、毎試合ベストメンバーのツケが祟って勤続疲労を起こしたボロボロのメンバーが
「戦術メッシ」のメッシ抜きで戦ったのがこのバイエルン戦と見る。


事実上、ビラノバのチーム作り初年度は来季に持ち越された訳だが、
果たしてバルサが再び立ち上がれるかどうかはまだ何とも言えないだろう。

無論、この最強メンバーがいる限り来季もリーガの連覇は濃厚で
CLでも優勝候補の一つである事に間違いは無いのだが・・・。


それに彼らの課題はハッキリとしている。

進化し続ける「バルサ対策」を超える進化を彼ら自身が見せられるかどうかだ。


例えばセスクの使い方一つ取ってもまだまだ可能性は無限大に秘められていると思う。

ペップは晩年、バルサ対策の進化を予測していたかのように
新たなる3-4-3への挑戦とセスクを加える決断を下している。

本来、セスクはメッシの代役ではなく、むしろメッシとセスクを同時起用する事にその可能性を見出していたのではないか?

降りてくるメッシと後ろから飛び出すセスクの自在なコンビネーションはそれだけでDFラインを惑わす威力を秘めている。

「サイド放棄」に対しては今一度、ウイングの突破力が求められている。

Dアウベスは一人でサイドラインを任せられるスーパーなSBだが、クロスが攻めのオプションに無い以上、
個の力でより深くサイドをえぐれるタレントが不可欠だろう。

これに関しては人選とシステムを再考しストイチコフ、ベギリスタイン、フィーゴ、オーフェルマルスのようなタレントを復権させるもよし、
はたまたDアウベスの運動量に個の突破力と得点力を兼ね備えた更にスーパーなタレントが新時代のサッカーでは誕生してくるかもしれない。


サッカーが3トップ⇒2トップ⇒1トップ⇒0トップと進化し、一度「4-6-0」と言われるところまで行き着いたペップバルサの流れは彼自身の言葉を借りれば「フィールドプレイヤーの総MF化」へと向かっていた。

もう前線から中盤に降ろす駒がいないとなれば、次はDFラインから中盤に上げるしかない。

つまり4-6-0は3-7-0になり、遂にはCB以外が全員MFという2-8-0の時代が近い将来必ず来ると予測する。

そこでは誰もがゲームを作り、前線に飛び出し、プレスバックして全力の守備をこなしているはずだ。

もはやポジションの概念は限りなく形骸化しフラットになっていく事だろう。


例えばこのバイエルン戦にもそのヒントは埋まっている。

バイエルンがバルサの攻撃の中で最も対応に苦しんだのがCBの攻撃参加だった。

バルサを相手にする時はどうしてもCBは放置せざるを得ないので
ピケやバルトラにドリブルでボールを運ばれるとマークを担当出来る駒が理論上存在しないのだ。

実際の試合からちょっと確認してみよう。


【ピケのボール運びにマーカーが不在のバイエルン】
pike1.jpg

局面は最後尾からピケがパスの出しどころが無いので自らボールを運ぶ事を決心するところ。

ここからドリブルで持ち上がると・・・・


pike2.jpg

バイエルンの守り方ではマーク役が不在なのでノープレッシャーのままスルスルとバイエルン陣内までボールを運べてしまうピケ。
(ここまで侵入してもピケの前にはスペースがタップリ)


バルサ対策を破壊する為のヒントがここにあるような気がする。

ピケは現代サッカーにおいてはトップクラスのパスの展開力とドリブルの持ち出し技術を備えたCBではあるが、
次の時代はブスケス、シャビクラスの能力を持ったCBの出現が待たれる。

マスケラーノやブスケスのCB起用はその為の第一歩だと見る事も出来るだろう。



バルサが頭一つ抜け出していた時代からドイツを先頭にようやく周囲が追いつき時代は横一線の乱世へ。

初のドイツ対決となるCL決勝は来季以降の未来を見据える上でも重要な一戦になる―



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