2013サッカー流行語大賞

・・・え?

さっさとベルギー戦の更新をしろって?(^^;

いやー、そっちの更新は検証作業やら何やらで時間かかりそうなんで
たまには息抜き更新もいいじゃないですか(笑)

書く方にとっても読む方にとってもネ!


という訳で今日は「もうそんな時期か…」という今年の流行語大賞ですね。

本家の方は「今でしょ!」「倍返し」「じぇじぇじぇ」の三強だと個人的には思ってるんですが果たしてどれが選ばれるんでしょうか?


…あ、もちろんこのブログでやるのはあくまで「サッカー界」の流行語大賞ですからね。

2013年を象徴するワードと、このブログ読者なら一度は聞いた事のある単語が目白押しとなっておりますので
これさえ読めば今年のサッカー界の常識を知ったか出来るはず!(?)

<2013サッカー流行語大賞>


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【Gプレス】

正しくは「ゲーゲンプレッシング」の略。
ドルトムントのクロップ監督が提唱した戦術で、通常のプレッシングとの区別をつける為に作った単語みたいです。
意味は【自分たちがボールを失った瞬間、すぐにボールを奪い返そうとするプレスのこと】

まあ、ドルトムントの試合を見てたらよく見かけるアレですね。
昨季はバイエルンのハインケス監督が取り入れた事で恐ろしいチームが完成し、
バルサをボコってそのまま欧州王者になりました。

今後の近代サッカーでは一つの主流となっていきそうな戦術ですね。




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【ジーニアス】

英語で「天才」を意味する言葉で、主にこの国のサッカー界では柿谷曜一朗選手の事をそう呼んでいます。

出自はスポーツライターの金子達仁氏がU17W杯での柿谷のプレー(フランス戦の50Mゴール)を見てそう名付けたそうですが、そこから彼のキャリアはJ2まで転げ落ちるのである意味「逆フラグ」の師匠とも呼ぶべき神(笑)

その後、柿谷のキャリアはV字回復し「どん底からの這い上がり」「クラブの魂」「エースナンバー8の後継者」と
日本人好みの浪花節ストーリーが彼の人気を「ただの上手い選手」とは一線を画したものにしています。

果たして来年はブラジルの地に立っているのでしょうか・・!?







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【DJポリス】

ザックJAPANが2014W杯出場を決めた6月4日の夜、渋谷の地に突如その救世主(メシア)は現れた―

いつの日からかこの国は日本代表が試合で勝つ度に・・・否、負け試合ですら
試合後のスクランブル交差点でfu●Kin'リア充どもが狂喜乱舞する様が恒例となってしまったが
この狂乱を巧みな話術によって統制した様がユーチューブやツイッター等で広まり、一躍時の人へ。

しまいにはこんな↓Tシャツまで発売されててクソワロタwww
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DJ ポリス/DJ POLICE Tシャツ(ホワイト)⇒


尚、同じ頃、日本代表の試合を1人部屋でブツブツ言いながら観戦するのが日常のしがないサッカーブロガーは
「ぬるいわ…!いっそあいつらには発泡許可を出すから上から片っ端に・・・(以下自主規制)」などとコメント。






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【脳筋サッカー】

今年、日本中の香川ファンを敵に回した悪の親玉モ○ーズによって
わざわざ夜中に眠い目をこすってスカパーをつけたら20年前のサッカーを見せられるという事案が発生。

「シアター・オブ・ドリームス」を一夜にして「悪夢の劇場」へと変えたその手腕は推して知るべし。

これによって
「スタメン表にバレンシア、ヤング、ウェルベックの名を見るとウンザリする」
「TVで見ていてもプレーが同じで区別がつかん」
「ただでさえウイイレのオンライン対戦でこういうプレーをするニワカにやられて殺意を覚えていたところ」
などなど日本中から苦情が殺到。

熱烈な香川ニスタとして知られるドイツ在住のK氏も早々に「シンジ、戻って来い!」とラブコールを送る始末。





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【香車】

香川ではありません。将棋の駒の「香車」です。
↑の「脳筋サッカー」とセットで今年このブログに一番登場したキーワードかもしれませんね(笑)

あのチームの両ウイングが完全に香車の動き方と一致した為にそう呼ぶ事にしたのが発端です。

ちなみに僕が作った↑の香車画像が2ちゃんに貼られるという珍事も発生しましたww
【リンク】誰だよwww2ちゃんに貼ったのwww⇒







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【ウギャル】

由来は「内田を熱烈に応援するギャル」の略で「ウギャル」

正確には今年作られたワードではないものの、
この単語を一躍全国区に広めた事件こそが今年5月30日に行われた親善試合対ブルガリア戦での事。
テストマッチという事で後半、内田に代わってゴリ・・・もとい、右SB酒井宏樹が投入されると
内田目当てでスタジアムを訪れていた一部のファンが帰るという事件が発生。
(よりにもよってジャニ顔⇒ゴリ顔の交代せんでも・・・ザックよ・・・。)

ただでさえプラチナチケット化している現在の日本代表戦で試合途中に帰るという行為が多くのサッカーファンの反感を買ってしまった。
この時、彼女達の事を指して「ウギャル」と呼ぶ名が定着。

完全に余談ではあるがグーグル先生に「ウギャル」と入れて検索すると謎のギャルアイドルグループ(?)が出てくる。
なんでも【若者に魚食の魅力を伝え、漁業を支えようという趣旨のギャルグループ】らしく全国の港町を回ってライブ活動を行っているんだとか。

興味のある方はコチラから【ウギャルプロジェクト】⇒






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【2ステージ制】

ある意味「Jリーグの現状ってそんなにヤバかったのか…」を知らしめたニュース。

全国のJリーグスタジアムでサポーター一同が満場一致で「断固反対」の意を示すも
あれよあれよという内に理事会の強権発動で決定してしまった経緯も去る事ながら
やっつけで作った「スーパーステージ」なるプレーオフシステムは決定報から僅か2週間でその制度の穴を指摘され一旦白紙に戻るという茶番劇。

ただ、個人的にはそれでも未だ一般の人にはほぼ知られていないというJリーグのニュースバリューの方が本気でヤバイんじゃないかという危惧も…。





☆2013流行語大賞☆

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【インテンシティ】

コンパニがいないとDFガタガタなのは別のシティなのでお間違いないように。

厳密に言うと従来からあったサッカー用語のようですが、
今年になってザックが試合後の会見でよく口にするようになった為に一気にサッカーファンの間で広まりました。

一般の認知度は今ひとつだとは思いますが、もはや戦術用語の一つとしては完全に定着したように思われます。

意味はサッカー的に訳すと「攻守の切り替えの速さ。チームの強度」といったところでしょうか。

日本代表の試合を仲間や女の子を誘って見る時にとりあえず「今日のザックJAPANはインテンシティが今ひとつだな…」などと呟くと何となくサッカー通っぽく見えるので便利な単語ですが、
調子に乗って「今のアシストはインテンシティからだね」
「そろそろ途中交代でインテンシティを入れよう」
「え…?もう新しい彼氏出来たの?とんだインテンシティ女だな」などと無闇に乱用し過ぎると
サッカー通からただのサッカー痛になってしまうので要注意。




P・S 今日のコメント欄には他に貴方が選ぶこれぞ!という今年の流行語があれば是非教えて下さいね!



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"半端ない"ゴールと価値ある引き分け ~日本×オランダ~

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<"半端ない"ゴールと価値ある引き分け ~日本×オランダ~

ザックJAPAN再始動―

ユニフォームも新調されて心機一転という訳でもないでしょうが、オランダ⇒ベルギーと続いた今回の欧州遠征は
ここ最近ザックJAPANに漂っていた停滞感を払拭させるに充分なものとなりました。

「2連敗必至」と言われた世界の強豪を相手にザックが目指す日本のサッカーが躍動。
来月の本大会組み合わせ抽選に向け、もはやどこが来ても怖くはありません。

それでは今日はまず日本中で「半端無い」が連呼されたあのオランダ戦を振り返りながら
世界トップクラスと戦った時の日本のサッカーと、そこで何が通用して何が足りなかったのかを検証していきたいと思います。

(松木さん!何故オランダ戦の試合前もかつ丼食ってくれなかったんですか…!?)


<新しい風を吹き込む>
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オランダ
代表はオランダ+ファンハール=4-3-3という定番の形。
但し、エースのファンペルシーはいません。

ファンハールとしてはせめてこれで左にリベリーでもいてくれたら…というのが本音かもしれませんが(^^;


対する我らがザックJAPANは驚きのスターティングオーダーを組んできました。

セルビア、ベラルーシ相手にも頑なにベストメンバーを崩さなかったザックがようやく重い腰を上げて
「これぞテストマッチ」という布陣を組んできたのには彼の中でも「この停滞感を払拭させるキッカケが必要だ」という思いがあったのかもしれません。

中2日で組まれている後のベルギー戦を睨んだ完全なローテーション制を採用し、
GK西川、ボランチ山口、FW大迫はテスト色の強い起用となっています。

一方で左の清武については「ロッベン対策」の意味を含んだ起用となりました。

本来レギュラーであるはずの香川は持ち場の左サイドから自由に中へ出入りして持ち味を発揮するプレイヤーなので
反面、守備になった時に「左サイド無人問題」というリスクを常に抱えているのも事実。

そこでとりあえず前半は比較的自分の持ち場をしっかりと守る清武でロッベンサイドを空けずに
後ろの長友と連動してしっかり2対1の数的優位で対応しようという狙いだったのではないでしょうか。

いずれにせよ、ザックのオランダ相手に抑えるべきところはしっかり抑えつつ、
日本代表に新しい風を吹かせようという意図が伝わってくるオーダーと言えるでしょう。


<現代サッカーにおけるビルドアップを巡る攻防>

さて、この試合における最初の焦点は両チームのビルドアップを巡る攻防です。

伝統的にボールを主体とした組み立てるスタイルのオランダはもちろん、
ザックJAPANがこの3年半で積み上げてきたサッカーも2010W杯との決別、つまりポゼッションを軸に置いたそれです。

そして守備時、4-4-1-1の陣形を基本とするザックJAPANと両WGを中盤まで下げて4-5-1気味に構えるオランダ代表とがピッチ上で相対すると実は中盤もサイドも数的同数のガッチリ噛み合った構図になるんですね。

【オランダ×日本 (ピッチ上の噛み合わせ)】
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共通しているのは両SBを同時に高い位置へ押し上げて2枚のCBからビルドアップを図るという狙いで、
この両チームに限らず現代サッカーでは守備時、中盤と最終ラインで数的同数~数的優位を保つ為に
どうしても自陣ゴールから最も遠い敵CBに対しては数的不利で守るという構図が主流となっています。

この試合で言えばオランダの2CB(フラール+デフライ)を大迫が1人で見る関係と
日本の吉田&今野をオランダのCFシーム・デヨングが1人で見る関係性ですね。

【CBとCFの2対1の数的関係】

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要するにこれはどちらのチームもCBからボランチへ簡単にタテパスを入れさせたくないという思惑があるからです。
何故なら普通に考えてチームの構成上、CBよりボランチの方が展開力を持った選手が配置されるので
ボランチを自由にさせるとイコール試合の主導権を握られてしまうからですね。

つまり現代サッカーのビルドアップはいかにこの最初の数的優位(2対1)を活かしてCBがボールを散らす、ないしは運んでいくかが鍵となります。


以上を踏まえて、まずはオランダのビルドアップに対する日本の守り方を見ていきましょう。

ザックの狙いとしては何よりもまず「アンカーのデヨングにボールを持たせない事を主眼に置いていました。
実際にオランダのチーム構成を見てもこれは理に適っていて、オランダはデヨングがボールの散らし役となっている反面、DFの展開力とボールを運ぶ能力は明らかに問題があります。

では序盤戦からザックの狙いが上手くハマっている前からの守備を確認してみましょう。

【オランダのビルドアップと日本の守備】
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局面はキックオフ直後、左から右へと攻めるオランダのビルドアップの場面。

日本はまずボールを持ったオランダのCBフラール以外の選手を中盤より前で的確に潰しています。
そして1トップの大迫もフラールからの横パスを切る位置取りで、
要するにこれは敢えてCBに長くボールを持たせてドリブルでボールを運ぶしか選択肢を与えないザックの狙いなんですね。

つまりオランダのフィールドプレイヤーの中でも最もボールスキルが不安定なCBの2枚(フラール&デフライ)にボールを持たせてビルドアップの質を落とそうという訳です。


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日本は狙い通りCBのフラールにドリブルで持ち上がらせると早速そのドリブルが大きくなり過ぎてボール奪取のチャンス到来。

岡崎が待ってました!とばかりにボールへアタック。
(ザキオカ「待ってるだけで勝手にボールからこっちに来てくれるなんて(゚Д゚)ウマー!」)


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岡崎がボールを奪って一気に日本のカウンターチャンスへ。

このように試合は序盤からザックの狙い通りオランダのCBに敢えてドリブルのコースを空けてやる事で
オランダのビルドアップを不安定なものにさせていました。

はっきり言って今回のオランダ代表も前はFW充ですが、後ろのDFラインはワールドクラスからは程遠い、いつもの前輪駆動型チーム

この手のチームはハマった試合では破壊力抜群ですが、相手チームからすると対策も容易でありW杯優勝は厳しいような気もしますね。

(クーマン、ライカールト、Fデブールのクラスが1人後ろにいるだけでだいぶ違うんですが・・・。)


まあ相手の事はさておき、対する日本のビルドアップはどうだったのか?が重要です。

では続いて実際の試合から日本のビルドアップとオランダの前からの守備の攻防を見ていきましょう。


【日本のビルドアップ(今野)】
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局面は右から左へ攻める日本のビルドアップの場面で、
黄色く囲ったエリアで日本の2CBがオランダに対して2対1の数的優位で始まっている事が確認出来ます。

やはりオランダも日本同様に相手のCBを空けて、中盤から前の選手を潰すという守備隊形を取ってきました。

よって、この場面ではボールを持った今野が先程のオランダCBフラールと同様にボールを運ぶ事となります。


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ですが今野は本来ボランチを本職としていた選手でもあり、ボール運びとパスの展開を苦にしていません。

この場面でも空いた(オランダが空けた)スペースを利用して実に堂々とボールを運び、
しかもサイドへ安易に散らす事なく積極的に中を通すコースへクサビを打ち込んでいます。

続いて吉田麻也の場面も見ていきましょう。


【日本のビルドアップ (吉田麻也)】
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局面は同じように日本のビルドアップから今度は吉田がボールを持ち出す場面。

並のCBだとここから安易にロングボールを前へ蹴ってしまうものですが・・・


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吉田は敵のプレスを引き付けてから中でフリーの味方をしっかりと視野に捉えて、的確にグラウンダーのパスを繋いでいます。


そうです、日本はオランダと違ってCBがボールを持たされる状況を苦としないチームなんですね。

これがザックが就任以来どれだけ批判されようと一貫してCBを吉田と今野のペアに固定してきた理由で、
日本協会のリクエストが「2010との決別」「人とボールが動くサッカー」であるならば、
ザックはクライアントの依頼に応えるプロの職人と言えるでしょう。

今野の高さ不足と「吉田麻也不要論」(それに続く「中澤+闘莉王 待望論」)を声高に叫ぶ人は
前線にVペルシーもロッベンもいないチームがCBにフラール(ビルドアップが不安定な選手)を置くリスクも同時に考えているでしょうか?

世界の強豪相手に柿谷、大迫、前田に向けてCBが後ろから放り込むチームで本当に勝機があると…?
(マイク「ェ・・・」)

選手起用に関する議論とは本来、チーム全体のバランス、戦術的観点も含めて総合的になされるべきだと考えます。


<遠藤のいない中盤 山口蛍という選択肢>
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さて、日本がオランダのビルドアップを妨害する上で、その成否の鍵を握っていたのが1トップのファーストプレスと中盤の守備です。

まず1トップ(大迫)の役割としては1対2の数的不利の状況下、
上手く横パスとアンカー(デヨング)へのタテパスのコースを切りつつ、オランダのCBをドリブルせざるを得ない状況へと追い込んでいく役割が求められていました。

そしてこの仕事を大迫は完璧にこなしていたと言ってもよいでしょう。

ジーニアス柿谷の抜擢以来、前田不在のファーストプレスは明らかにその質を落としていましたが
大迫は鹿島に根付くブラジルイズムがそう鍛えさせたのか単に運動量で追い回す前プレではなく位置取りと身体の向きで老獪にCBを追い込む守備を実践していました。

(ベベトやロマーリオ他、いつの時代もブラジル人FWって決して運動量は多くないんだけど、このコース切りが実に巧みなんですよね。地味にそんなところにもブラジルの歴史と伝統を感じさせますな)

ザックとしては水ものであるゴールという結果以上に、
「戦術的に計算が立つ」という意味で大迫の評価を大きく変える試合となった事でしょう。

個人的にもこの1試合だけで大迫>柿谷などと言うつもりは毛頭ありませんが、
既に戦力として分かっている前田に加えて1トップを巡る横一線のレースに大迫が食い込んできた事は間違いないと思います。


日本はファーストプレスが機能しているとなれば、次は中盤の守備が重要です。
この点に関しては遠藤の代わりに中盤を託された山口蛍が好パフォーマンスを見せてくれました。

【山口蛍の可動領域の広い潰し】
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局面は左から右へ攻めるオランダのビルドアップから。

ここでも大迫がデヨングへのコースを切りながらフラールからの展開を誘っていますが、
せっかくここまでお膳立てしてもこの次のパスに対して日本が中盤でしっかりと潰せない意味がありません。


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こういう場面で活きるのが山口のこの距離感まで寄せる守備の激しさです。
(試合ではここでボールを奪って日本のカウンター発動)

遠藤のアリバイ守備ではこうはいかないのが日本の守備における現状なのでなおさら山口の寄せは際立って見えてしまいました。

更にボランチがここまで可動範囲広く動けると前プレを試みる場面でも大いに役立つものです。

【オランダがGKまで下げたところに日本の前プレ】
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オランダがGKまで下げたボールに対し本田が積極的に追って出たので、代わりに空いたデヨングを山口がここまで高い位置を取って潰しています。

長谷部、山口のボランチコンビが敵陣のここまで高いエリアに進出する事は以前の遠藤を絡ませたコンビだとなかなか見られる場面ではありません。

勿論、遠藤不在のデメリットは主に攻撃面で大きく出るのですが(後述)、
香川と違い持ち場を守った清武の存在がロッベンを抑えていた事も併せて前半は特に守備でザックの狙いがよく機能していたと言えるでしょう。

それはつまりオランダで驚異となる「デヨングの散らし」とそこから発生する「ロッベン無双」というBADイベントを上手く避けながら試合を進めていくという狙いです。

その上でCBからの展開を高い位置で奪い、ショートカウンターに繋げるというのが前半のプランで
遠藤&香川をベンチに下げながらもオランダにとってみると日本が非常に「辛い」ゲームプランで臨んできた事で
バイエルン時代、ファンハール監督がインテルのモウリーニョにやられたようなやりづらさを覚えたのではないでしょうか。

ザックのカルチョ魂、本領発揮であります。


<世界はS級のミスを許さない>
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このように試合は序盤から日本が狙い通り主導権を握って進め、決定機も幾つか作り出していたのですが
何故か先制点はオランダに生まれてしまいます。

では前半13分に生まれたオランダの先制点を流れを追って検証していく事でその「何故か」をあぶり出していきましょう。


【オランダの先制点を検証】
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局面は左から右へと攻めるオランダのビルドアップから。

ここでも日本は狙い通り、大迫がデフライのドリブルを誘い、中盤より前のパスコースはしっかりと潰しています。

ここまではOK。


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ところが何を思ったか長谷部が一瞬デフライからのタテパスをケアするような動きを見せた事で
本来中盤で潰すはずのストロー男・・・もといストロートマンが空いてしまいました。

(ちなみにこの場面でデフライからのタテパスを受けられる選手はいなかったし、いてもそこはCBがケアするプランだったはず)


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長谷部が一瞬空けてしまった事でボールを受けたストロートマンに前を向く余裕を許し、
この隙がラフィー(ファンデルファールト)の裏抜けとそこに至るロングパスを誘発させてしまいます。

(ストロートマンの左足の精度は今季ローマの試合を見ているカルチョファンならご存知の通り!)


・・・で、このロングパスから例の内田の"やらかし"が生まれる訳ですが
このミスが生まれる過程を内田の視点になってカメラアングルも変えつつ検証してみたいと思います。


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↑の場面はストロートマンからパスが放たれる直前ですが、そもそも内田の身体の向きがボールとラフイーへ向いていません。

何故でしょうか?

それは長谷部がストロー男を完全にフリーにしてしまったせいで、
内田からすると自分の裏を超えた大外(レンス)へのパスも警戒しなければならなかったからですね。

厳しい事を言えば、本来前を向いたストロートマンが自由にボールを出せるこの場面では
一旦DFラインでオフサイドを取る事は諦めて吉田の斜め後方の位置取りからボールの出どころとラフイーを同時に見つつ横目でレンスを捉えられる身体の向きが正解だったかもしれません。


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で実際にストロートマンからパスが出されても内田はこれに背を向けているのでボールを視野に置く事が出来ません。


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慌てて内田がターンしますがボールに背を向ける方向のターンを選んだ事で一瞬の空白の時間、ボールロストの間が生まれてしまいます。

エンマサ「アマチュアターンだ!」
(スカパーユーザーしか分からんネタですいませんww)


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・・・で、ボールを視野から離していた時間があった為に内田はこのパスの落下点の見極めが遅れてワンバウンドを許してしまう事になります。

ただ・・・未だこの時点に至ってもまだ失点へと繋がらないルートはいくらでもありました。
例えばこぼれ弾は拾われてもいいから無理せずヘディングで前に跳ね返しておくという無難な選択などがそうです。

しかし内田は自身がベストの身体の向きを取れず落下点に入るのが遅れたこの場面でもなお
「オランダの攻撃を切ってマイボールにする」というリスクの高い選択をとってGKにヘディングでボールを渡そうとした為、ファンデルファールトに棚ぼたの先制点を許してしまう事となりました。


この失点を最初から振り返ってみると「長谷部の判断ミス」+「内田の身体の向き」+「内田の最終選択」という3つのミスが立て続けに重なった自滅の結果である事が分かります。

以前、コンフェデ杯イタリア戦のマッチレビューでも指摘させていただきましたが
世界のトップクラス相手にS級のミスを続けてしまうとそれは必ず手痛いしっぺ返しを受ける事につながる訳です。


ハッキリ言ってザックからすればほぼ完璧な対オランダ用のプランを考えて実行させていても
カルチョの視点から見ればこんな中学生レベルの稚拙なミスが3つも続いたら「ザックJAPANの守備崩壊(キリッ)」もクソも無いと思うんですよ(爆)

ただ、内田の「相手の攻撃を切ってマイボールにする」という狙い自体は決して間違いではありませんのでそこは勘違いしないようにしたいですね。

問題はどの場面まではギリギリまでリスクを追ってマイボールを追求し、
どこからはリスクを避けて安全に蹴り出すプレーを選択するかという判断が今後の課題でしょう。


<オランダの修正力>

とは言え、元々は長谷部が従来の狙い通りにストロートマンをケアしておけば生まれなかったはずの失点。
これを機に再び日本が序盤からのプラン通りに試合を進めていけば日本ペースに揺るぎはなく同点、逆転は充分に射程圏内のはずでした。

しかしオランダは前半の20分前後から、日本の「デヨング消し」と「CBのドリブル誘導」を見抜き、ビルドアップに修正をかけてきます。

【オランダのビルドアップ修正】
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局面は前半19分、右から左へ攻めるオランダのビルドアップから。

(*注 今回使用した試合画像は色々な方面から集めてきた為、左右のアングルが入れ替わっている物もありますのでご了承下さい)

ボールを持ったCBフラールがタテパスを出すような仕草を入れて岡崎を誘導します。


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岡崎がこれに釣られたのを見てフリーになったSBのブリントへ


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慌てて岡崎がSBへ向かうと、ワンタッチではたかれてフリーになったデヨングに繋がれてしまいます。

1点を先行された日本がオランダの2CBに対し、
本田と大迫の横並び2トップで更に前からプレッシャーを強めてきたのを逆手にとったオランダのしたたかさが実に見事。

しかもこういう修正を試合中にベンチの指示なく、ピッチ上の選手達が自発的に行えるのが世界トップクラスの駆け引きなんですね。

これ仮に立場が逆だったとしたら、日本はハーフタイムまでCBからのビルドアップを拾われ続けていたと思うんですよねー(^^;


実際の試合ではこのあたりの時間帯から失点に落胆した日本の動揺にも付け込んでオランダがペースを握り返すと前半39分には追加点。

ファンデルファールトのサイドチェンジから恐れていたロッベン無双が発動すると
一度は長友と長谷部の2人で2対1の数的優位を築きながら日本中の視聴者が
「そこ切り返してくるぞ!」「中に切り返しだからな?」「長谷部!中!中!」「志村、後ろ!後ろ!」との叫びも虚しく
一番警戒していた形から失点してしまいました。○| ̄|_


<ザックの修正から生まれた日本の先制点>

一方この頃、日本ベンチではオランダがビルドアップの修正からペースを握り返し始めたのを見てザックがしきりにベンチから指示を飛ばしていました。

それは大迫&本田の焦れた前プレに引っ張られるように前傾姿勢となっていた岡崎に対し
「相手の揺さぶりに釣られずにしっかり後方の位置取りをキープして陣形を乱すな」というもの。

そして前半終了間際に生まれた反撃の狼煙となる日本のゴールは、まさしくこの指示通りに序盤の守りを思い出したような守備から始まっています。

【日本の1点目を検証】
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局面は左から右へと攻めるオランダのビルドアップの場面。

岡崎が我慢してSBのブリントをケアし続けた事でフラールからの選択肢はタテパス1本に絞られました。
これでCBの吉田も確信を持ってパスの出先に向かえます。

(オランダはCBのドリブルがリスクにしかならない事を察知して、その選択肢はもう削られている)


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ここで吉田がラフィー(ファンデルファールト)からボールを奪うと日本のショートカウンター発動。

長谷部からプルアウェイの動きで上手く外へ流れた大迫へ渡って日本が1点を返します。



その時、TVの前では日本中がこんな顔になっていた!↓
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さりとて、選手達が20分も立たない段階で自発的に修正をかけてきたオランダと
ベンチの指示から前半終了間際にようやく立て直し始めた日本との自力の差は依然として大きいと見ますが・・・。


<明暗を分けた交代カード>

ハーフタイム、なんとか1点差まで詰めた日本でしたが、守備とショートカウンターはともかく前半は遅攻の形がほとんど作れていないというジレンマも抱えていました。

勿論原因は司令塔遠藤の不在と岡崎、清武が守備を考慮して両サイドに張り付いた事で2列目の流動性が消え、
本田がデヨングにマンマークされる形で完全に潰されていたからですね。

そこでザックは後半、満を持して温存していた遠藤香川を投入。
中盤に展開力と流動性を復活させていきます。

一方のオランダ、ファンハール監督はパスの起点となっていたデヨングが負傷で交代。
仕方なく代わりに前半はSBだったブリントをアンカーポジションに移す苦肉の策に出ます。

ただでさえ前半終了間際のゴールで追い上げムードみなぎる日本は
主力を温存していたお陰で余力バッチリの後半なのに対し、オランダは明らかに泣きっ面にハチ状態。


すると後半はすぐに日本の交代策の効果が出て試合の主導権を握り始めます。
再び流れを呼び込んだのは交代出場した遠藤の展開力と香川の「間受け」でした。

【中盤で香川の間受けが復活】
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香川の中に入る動きとオランダ守備網の隙間を見つけるセンスが長友のオーバーラップも復活させて日本が主導権を握ります。

しかもオランダの右サイドはロッベンが髪だけでなく守備意識も薄いので常に香川か長友のどちらかがフリーになってしまうという構造的欠陥を抱えていました。


【本田が引いて空いたバイタルエリアに香川】
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更に日本はそれまでアンカーに張り付かれていたトップ下の本田が自分がマークを引きつけた後のスペースを使ってくれる香川がいる事で何度も2人の連携でオランダのバイタルエリアを攻略していきます。

試合を見ている誰もが「日本の攻撃が躍動しておる…」と確信していたそんな後半15分、遂に日本のパスワークが最高の形で結実します。

それは中盤の遅攻からJ2⇒シャルケ⇒マインツ⇒ロシア⇒シャルケ⇒鹿島⇒再びロシアと地球を1周半ぐらい回る形で繋がった美しいゴール!
(一体どこのアーセナルだ!?)


オランダ人「ジャポン半端ないって!」
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(*イメージ画像)

そのまま後半は終始日本ペースで進んでいきますが、トドメの3点目が取れずに惜しくも2-2のドロー。

とは言えテストマッチと考えれば最高の内容と言えるでしょう。


<天才 ジーニアスの苦悩>
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タイムアップの笛の後、ピッチ上で全ての選手が手応えを掴んだ表情を見せる中、1人こうべを垂れる選手がいました。

日本中の待望論を受けて招集されてきた柿谷です。

(ベルギー戦を見た今でこそだいぶ彼に対する印象は違いますが問題の根本は依然くすぶっていると見ます)

この試合では後半途中から文字通り「試合を決める」役割を任されての登場でしたが、
この日も日本中の期待に応える事は出来ませんでした。

僕は別に後半に訪れた"あの決定機"を外したワンシーンを見て彼を批判するつもりは全くありません。
(この日は大迫が決めて柿谷が外しただけで、別の試合では逆のパターンだって充分有り得ますからね)

そういう単発的なシーンではなく、遠藤×本田×香川によって蘇った中盤の流動性に全く絡めていない事が大きな問題だと思うのです。

それは例えばこんなシーンですね↓


【柿谷と周囲のズレ】
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局面は後半、左から右へと攻める日本の攻撃。

山口からのパスを本田が受ける直前ですが、この時本田は首を振って前方を確認。

内田⇒山口⇒本田と横⇒横につないだ展開から、出来れば次はタテパスのクサビを打ち込みたいというのが世界のスタンダードであり本田の意識も当然それなのです。


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・・・が、バイタルエリアとクサビに対する柿谷の意識は皆無で棒立ちのまま。

(ドルトムントに移籍したらCBフンメルスからだってこのタテパスのコースには出てくるんだぞ!(^^;)


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仕方なく本田は大外の長友へパスを切り替えています。


このシーンに限らず、柿谷はここだ!と思う時に全く反応していなかったり
かと思えばまだ出し手がパスを出せない状況で早く動きすぎてしまったり(結果オフサイド⇒柿谷あるある)と
自分がどういう形でもらいたいかの理解の浸透と周囲に動き出しを合わせるアジャストがまだまだという感じ。

試合見ていてもそもそもどういう形でボールをもらいたいのかがよく分からない面もあり・・・↓

【柿谷のパスくれアピール しかし・・・?】
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局面は左サイドでボールを持った香川がゴール前を伺っている場面ですが、
オランダの大男2人に囲まれたこの状況で柿谷が両手を挙げて「パスくれ!」アピールをしても出し手としては出しづらいと思うのですよ。

コンパニ不在のベルギーからああいう形でゴールも取ったのでもしかすると柿谷はこれでゴールが取れるという確信があるのかもしれませんが、どうにも僕は世界で柿谷が…ひいては日本が得点する為にCBに挟まれた味方へ放り込むという形が得策には思えないんですよね。

C大阪では誰もがボールを持ったらまず自分を見てくれる戦術でそれは心地よいとは思うのですが、
そこから世界に出ていく為には周囲の選手にハッキリと「自分」をアピールしていかないと厳しんじゃないかと。

それこそ本田とか香川なんてまだずいぶん聞き分けの良い方で
中には世界トップクラスのマクレスターなんとかってチームに移籍したけど周りの選手がボールを持ったら全部ドリブルで縦に仕掛けてしまい聞く耳も持ってくれません…なんていうブラック企業もあるとかないとか…?(爆)


まあ、柿谷についてはまたベルギー戦のマッチレビューで改めて検証していきましょうか…という事で今回はこれまで。



*ベルギー戦も半端ない更新期待してます!と思った貴方はクリック!↓

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リバプールの3バックを検証する ~アーセナル×リバプール~

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<リバプールの3バックを検証する ~アーセナル×リバプール~

まずはアーセナルファンの皆様、
ドルトムント⇒リバプール⇒ドルトムント⇒ユナイテッドと続いた地獄の4連戦シリーズお疲れ様でした(^^;

中盤意外は冗談みたいな戦力(爆)で五分の星というのはまずまずの成果だったのではないでしょうか。
先月がセリエA強化月間だったとすると日程的に今月はアーセナル強化月間になりそうな気もするので一つよろしくお願いします。

という訳で早速今回は4連戦シリーズの第2戦、リバプール戦を振り返っていく内容となっております。

とは言え、今回フォーカスするのはプレミアで3バックなどという面白い試みを見せていたリバプールの方ですが―


<プレミアリーグで3バック>

今季開幕序盤戦を妖怪「噛み付き男」抜きで戦っていたリバプール。
ようやくこの手癖、歯癖の悪いエースが帰って来た事で一つの問題が生じます。

それはロジャースが信条としてきた4-3-3にはCFの椅子が一つしかないという事ですね。
でもせっかくだからプレミア最強の2トップとも名高いスアレス&スターリッジ(通称SASコンビ)は絶対に使いたい。
出来れば2人とも本職のCFで。

だったら4-4-2でいいじゃない、君達プレミアだし・・・というとこちらはこちらで別の問題が。

それは中盤でのポゼッションをモットーに掲げてきたロジャースにとって
中盤のセンターにMFが3枚いる事は譲れない条件だったんですよねー。

つまり4-3-3だと文字通り中盤が3センターとなっているんですが、
プレミア主流のフラットな4-4-2だと中央が2CHになってしまう訳です。

【4-3-3対4-4-2の図】
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これの何が問題かと言うとそもそも4-4-2に対して中盤のセンターで3対2の数的優位を築ける事が
ロジャースにとってポゼッションサッカーへの担保となっていたからなんです。

となると「CFの2枚起用」「中盤の3センター」を同時にクリアするにはもう3-5-2ぐらいしか手が残っていません。

とは言え4バック全盛の現代サッカーで3バックの成功例なんてあるんかいな・・・?という心配が今度は頭をもたげる訳ですが・・・・



・・・あ!






あったわ。
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<リバプールがユベントスになれない4つの理由>

プレミアにユベントスシステムを輸入させる。これはなかなか面白い発想です。

そもそもユベントスが何故3バックにしたかを考えても
最終ラインからのビルドアップ時に相手の前プレに対して3バック+ピルロの絶対的な数的優位を築ける強みがあるからですね。

とすれば2トップないしは1トップが主流の今のプレミアで
ロジャースのポゼッションスタイルが3バックを導入する…というのは理にかなっているようにも思われます。

実際に3バックを導入してすぐのサンダーランド戦、クリスタルパレス戦はそれぞれ3点をぶち込んでの快勝。
そんな流れで迎えたのがこのアーセナル戦でした。

【アーセナル×リバプール】
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アーセナルはいつものスタメンなので割愛(^^;

リバプールのロジャース監督はさすがに今季絶好調で首位を走るアーセナルを警戒したのか
それまでトップ下に配置してきたコウチーニョ、モーゼスをベンチに下げて
ルーカス、ジェラード、ヘンダーソンによる文字通り3センターを組んできました。

図らずともこれでコンテのユベントスと全く同じシステムとなった訳です。
ところがいざ試合が始まってみると色々と厳しい結果が見えていくのでした・・・。


【その① 前プレを受けると展開出来ない3バック】

3バック導入に伴い、いきなり組まされた感もあるサコ、トゥレ、シュクルテルによる3バックは
アーセナルぐらいの勢いで前プレをかけてくる相手に対してそれを剥がす展開力を持っていません。

コンテのユーベはボヌッチ、キエリッーニ、バルザーリの3バックを固定して使い続けた末に現在の完成度がある訳で
当初はボヌッチのやらかしパスとかかなり怪しい場面もあったものの、今ではアズーリの最終ライン=ユーベのDFラインというぐらいにまで成長しました。

リバプールもせめてシュクルテルをボヌッチぐらいにまで成長させる気概がないと厳しいかもしれません。


【その② 両WBのクオリティ不足】

3-5-2における過労死ポジションと言えば両サイドをたった1人で上下動し続けるWBですが、
Gジョンソンとエンリケのレギュラー格を欠いた状態だと圧倒的なクオリティ不足を露呈するハメに。

ユーベのショットガンシステムは両WBを同時に高い位置まで上げて攻撃時3-3-4の並びになるのが肝ですが
アーセナルの猛攻にさらされて守備に手一杯となったこの試合では完全に5バック状態に陥っていくのでした。

NAGATOMOみたいなのが1人はいないと厳しいよね・・・(^^;)


【その③ ピルロ役がルーカスって・・・】

・・・うん、厳しい。


<イングランドから「BOX to BOX」は死滅したのか?>
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そして④つめの理由がショットガンの弾となるべきビダル&マルキージオ役のジェラードとヘンダーソンにあります。

イングランドサッカーでは昔からボランチ(CH)を務める選手で
守備では自陣のペナルティBOXから攻撃になると敵陣のBOXまでピッチを所狭しと駆け回る様をして「BOX to BOX」と呼ぶ文化がありました。

近年その代表格とも言えるのがジェラード&ランパードの2人でしたが
未だにイングランド代表でこの2人が中盤の主軸となっている事自体、かなり後継者探しには苦労している様子。

しかし現実的にはこの2人も、もういい年齢です。
チェルシーで見る今季のランパードは勿論、やはりリバプールのバンディエラも
最近はかなりそのパフォーマンスが落ちてきていると言わざるを得ません。

では実際の試合からリバプールの中盤が抱える苦しさを見ていきましょう。


【ルーカスの両脇を狙われるリバプール】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルの攻撃の場面。

基本的に現在のリバプールでは相手のボールホルダーに対して勢いよく飛び込んで奪い取る気概のある選手はルーカスぐらいしかいないのですが、まあそれはそれぞれ選手のタイプもあるのでいいとしましょう。


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問題はルーカスが飛び出た後のスペースを埋めてあげようという周囲の意識が希薄な事です。

特に最近のジェラードは動き出しが乏しく守備でも後追いになる姿が目立ってきました。

↑のシーンのように飛び出したルーカスが外されている場面でも全くカバーの意識が働いていません。


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結果的にリバプールのバイタルエリアはアーセナルに蹂躙されていく事となります。

アーセナルは試合序盤ですぐにルーカスの両脇にピルロをプロテクトするビダル&マルキージオのような機能性が薄い事を察知すると明らかにこのスペースを狙い打ちにしてきました。

【アーセナルの狙い】
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リバプールの両WBはSBを押し上げる事で引き付けて完全に5-3-2へ押し込んでしまうアーセナル。

その上で3センターの両脇に出来るスペースを
ロシツキー、エジル、カソルラ、ラムジーらが入れ替わり立ち代りで利用します。

リバプールはここにルーカスが飛び出してしまうと先程のようにバイタルエリアを狙われる為なかなかケアに迎えず、
2トップが前残りなのでアンカー役のアルテタは常にフリーでボールを受けていました。


このような事情もあり、試合は序盤から圧倒的なアーセナルペースで進んでいきますが
前半19分に生まれた先制点はリバプールの厳しさを物語るものでした。

【アーセナルの先制点を検証】
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局面は左から右へ攻めるアーセナルのビルドアップに対してリバプールが前プレをかけにいく場面。

ところがアルテタが思いっきり空いているのとジェラードが未だに初期ポジションに戻れていないのが大きな問題です。


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予想通りアルテタに繋がれると簡単に前を向かれてしまいました。この時点で前プレは失敗。

(というかジェラードはそこで一体何を守っていたのか・・・?)


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そのままフリーでアルテタにボールを運ばれるとやはりここでもルーカスの両脇が思いっくそ空いています(^^;

リバプールは苦しい撤退守備を強いられて・・・


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アルテタから裏へ走り出すサニャへスルーパス。

ルーカスがボールサイドへ寄せた為、ここはジェラードが戻って空いたカソルラをケアしたいところだが・・・


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全く追いつく気配無し!(むしろ離されてる)

ここからジルーがCBを引っ張って大裏を抜けるフリーのカソルラへサニャからクロスが送られるとアーセナルが先制。

もはやジェラードに「BOX to BOX」と呼ばれていた頃の面影は無く
定点ポジションから時折鋭いミドルパスこそ見せる事はあってもゴール前まで駆け上がって行っての豪快なズドン!はそういえばここ何年か見ていない気もします。

(こりゃ来年のW杯じゃま~た珍グランド代表とか呼ばれるハメになるなww)


<戦術SASの限界>

さてジェラードは体力的(年齢的?)な限界が問題だった訳ですが、一方のヘンダーソンはどうでしょうか?

このブログのヘビー読者であれば、僕の個人的なヘンダーソン評についてはよくご存知かと思いますが(笑)、
パス=普通、ドリブル=並、得点力=並、守備=並というウイイレでいうとコナミの制作班もよく知らずに作った選手みたいな印象なんですよね(爆)

特筆すべき事項が無いというか・・・一言でいうなら「危険な香りがしない選手」という事になります。

百聞は一見にしかずという事でちょっと僕が伝えたいニュアンスを実際の試合から検証していきたいと思います。


【ヘンダーソンの物足りなさ】
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局面は右から左へ攻めるリバプールのビルドアップの場面。

アンカー役のルーカスから2トップへ縦のクサビが入ります。

(勿論ピルロと比較する訳にはいきませんが、それでもルーカスは苦手だったパスさばきでも確実に成長の兆しが見られますよね。ちょうどユーベで言うボヌッチのように)


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このクサビはスターリッジの足元に収まりますが、こういう場面でヘンダーソンにはもっと危険なスペースへ入り込んで来て欲しいんですよねー。

具体的に言うならバイタルエリア侵入からの間受けを意識して欲しい訳です。

リバプールの3-5-2システムは後ろから中盤が飛び出してこない限り、↑の場面のように2トップが孤立気味になってしまうので尚の事。


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スターリッジには下げるパスコースしか無かったので、再びボールはルーカスへ下げられてからヘンダーソンへ。


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ヘンダーソンはサイドに展開して・・・


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ヘンダーソン「ふー、一仕事したな(キリッ!)(`・ω・´)」

いやいや…無難な横パス1本繋いだだけですし!wwww

そのままバイタルまでは入ってこいよ!

これ、ビダル&マルキージオだったら絶対ピルロに預けた後はパス&ゴーで飛び出してくるじゃないですか。
こういうところがヘンダーソンからは危険な香りがしないって言いたくなっちゃうんですよね・・・。(^^;
(なんかいつも相手の守備ブロック外の無難なエリアで受けて無難に繋ぐだけっていうイメージが…)

結果的に前半のリバプールは後ろから飛び出してくる選手がいないので2トップ(SASコンビ)が完全に孤立。

【SAS対アーセナル】
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まあ、それでもたった2人だけで何度かチャンスを作ってしまうあたりさすがだな…というか
アーセナルのディフェンスもどうなのよ?って話ですが(爆)


要するにヘンダーソンってのは根っからのスペアプレイヤーなんですよ多分。

スペアプレイヤーってのはシティで言うシルバに対するミルナーみたいなもんで
一方がポジションに縛られず自由に動く事で相手のディフェンスを破壊する役割なら
もう一方はその分のバランスを取る役割っていう関係ですね。

リバプールで言うとコウチーニョみたいな自由を与えれば決定的な仕事が出来る選手が中盤にいれば
ヘンダーソンはその分のバランスを補う…みたいな仕事をさせればいい訳です。

そういう気の利いたプレーをさせたら間違い無く「使える選手」ですから。


<プレミアらしい打ち合いへ>

試合は後半、ロジャースがやはりCBを1枚下げてコウチーニョを投入し4バックへ修正してきました。

【リバプール 後半の布陣 (4-4-2)】
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こうなるとヘンダーソンも意味が出てくるというか、
コウチーニョとは月と太陽のような関係でいいバランスが中盤で築ける事になります。

【コウチーニョとヘンダーソン】
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コウチーニョが中へ絞った位置取りで間受けを狙う一方、ヘンダーソンがブロックの外でボールを受けるという関係ですね。
やはりリバプールの攻めはSAS+コウチーニョがいる事で始めて迫力が出てくると思うのですよ。


これで試合はリバプールの攻めが改善された事で一気にプレミアらしい打ち合いへ。

ここで「プレミアらしい」という表現を使ったのは、現在首位を行くアーセナルも守備はたいがいだよな~というのが本音だからです(笑)

それは例えばこんな場面ですね。↓

【アーセナル 謎の守備】
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もはやどっから突っ込んでいいか分からないぐらいの場面ですがwww

それでも敢えて指摘するならCB離れすぎ!メルテザッカーもスアレスとかさっさと捨てて中に絞ってくれwww


個人的には僕も打ち合いの試合は好きですが、
それは両チームの堅い守備をそれを上回る攻撃の応酬で打ち破る試合であって、
ザル守備故のピンボールゲームは例えばイタリア人が見たら「大味の雑な試合」と一蹴されてしまうかもしれません。


・・さて、話を試合に戻しますと4-4-2にして生き返ったリバプールだったんですが、これにはちょっとした落とし穴が潜んでいました。

それは中盤を2CHにした事であの「プレミア最強のBOX to BOX」をケア出来なくなってしまった事です。

【フリーになるアーセナルの2ボランチ (後半)】
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このようにリバプールの4-4-2とアーセナルの4-2-3-1を噛み合わせると
どうしてもアーセナルの2ボランチが浮いてしまうんです

アンカー役として常にDFラインの前に残るアルテタはともかく、今季絶好調の"あの男"をフリーにした代償は大きかったと言えるでしょう。


【アーセナルの2点目を検証】
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局面は後半、右から左へと攻めるアーセナルの崩しから。

サイドに流れた位置でボールを持つエジルを中心に右サイドを厚くした攻めを展開するアーセナルに対し
リバプールはジェラードとルーカスの両ボランチがボールサイドへの対応に追われています。

これで空いたバイタルエリアにラムジーが3列目から走り込んでくる形は守る側にとって非常にケアしずらく、
これがハマって今季プレミアでは得点を量産中。

(特に中盤のセンターが2枚の4-4-2が主流のプレミアだとラムジーにはFWが付いて下がってくるしかない?)


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エジルからラムジーにパスが出て・・・


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ここから見事なミドルを突き刺してアーセナルが2-0の快勝を飾っています。

(やっぱりラムジーには狭いスペースで細かな事をやらせるより3列目から長い距離を走り込ませる形が一番生きますね!)


<インテンシティの差>

さて、リバプールの3バックは今後も継続されるのか、それともただのオプションの一つに過ぎなかったのか。

このアーセナル戦の結果を受けて先週のフルハム戦では怪我人の復帰もあり、
早速4バックに戻して4-0の快勝でしたが今後は果たして…?

最後に、この試合で一つ気になったのが両チームにおけるインテンシティ(攻守の切り替え)の差です。

ドルトムントと戦ったCLでの試合ではアーセナルとクロップに鍛えられた戦士達とのその差が顕著でしたが、
この試合ではまるでアーセナルがドルトムントでリバプールがアーセナルのように感じられたものです。

アーセナルが直前にドルトムントと試合をして刺激されたという訳でもないでしょうが、
同じように今季CLでバイエルンにその差を見せつけられたシティと併せて考えても
欧州トップレベルで求められる基準からプレミアがやや遅れをとり始めた可能性もあるのでしょうか?

(そもそも前プレではなく自陣でのリトリートディフェンスを主とするチェルシーとユナイテッドは同じ土俵に上がっていないが…。)


アーセナルの前プレにしても走れるファンタジスタのロシツキー、モウリーニョに鍛えられたエジル、
そして今やプレミア最高の「BOX to BOX」となったラムジーらが攻撃の勢いそのままに個々のレベルで行っている段階で、
ドルトムントやバイエルンのレベルでビルドアップが出来るチームには簡単に剥がされてしまう事がCLでは既に証明済みです。

「国内の優勝争い」という視点で見れば、間違い無く今一番エキサイティングであるプレミアリーグの大混戦が
下からの押し上げによるものなのか、それとも上の停滞によるものなのか―

今季が終わる頃にはその答えも出ているのだろうか。




*この逆フラグで今季のプレミアはリバプールがもらった!と思った貴方はクリック!↓

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クロップが目指す攻守のシームレス化 ~CL第3節 アーセナル×ドルトムント~

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<クロップが目指す攻守のシームレス化  ~CL第3節 アーセナル×ドルトムント~

ドルトムント強し・・・。

先日のブンデスリーガでも恐るべきスコアで健在ぶりを見せつけたクロップの戦士達。

とは言え本ブログでは今季まだ一度もこのチームを取り上げていなかったばかりか
CLの「死の組」も、ついでに言うならエジル加入後のアーセナルもそうだったので
この際まとめて今夜の第4節前の復習にこの試合を取り上げてしまおうという魂胆です(^^;

ではまず今日は試合のレビューへ進む前に一躍アーセナルの主役へ躍り出たこの人に登場してもらいましょう。


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<エジルは高価な買い物だったのか?>

そーなんです、なにはともあれ「エジル フィットし過ぎ問題」なんです!

中には66億の移籍金で獲ってきたエジルに対して「高すぎる!」などと書いていた某サッカーブログ⇒などもあったようですが、
よっぽど書いている人に見る目が無いか己の逆フラグ力を誇示したいかのどっちかでしょう。

実際に60億の移籍金に見合うプレーを早々に見せられてしまうと「ぐぬぬ・・・!!」としか言いようがありません(笑)


【参考記録:ロンドン在住F氏の場合 (移籍金:60億)】
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『シティ戦からが俺の本気だし・・・(震え声)』


但し、エジル自身がいくら60億に見合うプレーを披露しようと
やはりアーセナルが「タイトルを獲れるチーム」に近づく為には20億のDFとGKを3人連れてくるべきだったという考えに今も変わりはありません。
(ロシツキー、ウィルシャー、カソルラ、ウォルコットあたりの誰かをベンチに下げてまで使うポジションが現状の最優先補強ポイントだったとは到底思えず)


ですがエジルの加入によってアーセナルのサッカーが素晴らしいものへと変貌したのもこれまた事実。
今季は「プレミアで一番ハズレ試合の少ないチーム」としての地位も取り返し、
よくやくアーセナルらしいアーセナルになってきたな…という感じですかね。

いわばエジルはチームの最大出力を従来の100からMAX値120~150まで引き上げた補強だったんですが、
実は長いリーグ戦で優勝するチームというのは内容の悪い試合でいかに勝ち点の取りこぼしを減らすかが重要なので
最大出力を上げるよりアベレージを安定させる補強の方が結果には直結するものです。

確かに現在のアーセナルは一度乗った試合では手がつけられないサッカーを見せますが
そうでない試合の時にしぶとく勝ち点1をもぎ取るような底力があるかは未だ未知数と言えるでしょう。

このへんもまたベンゲルらしい補強とチーム作りで
彼はこれまでも常に理想のサッカー追求の為、チームの最高到達点のみにその照準を絞ってきました。

故に今後もアーセナルがタイトルを取るとしたらシーズンを通して最高のサッカーをし続けるような
それこそ「シーズン無敗優勝」のごとき完璧なシーズンを送るしか道は無いのかもしれません。


<今季、充実の両チーム>

それでは試合を振り返っていきましょう。

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アーセナルは今季序盤戦の好調を支えた1人、フラミニが使えなくても代わりがアルテタという無駄な豪華さ。
(やはり中盤は磐石で補強ポイントではない)

そしてもう1人のボランチには遂に覚醒したラムジーが入りました。
今季、そのあまりに鮮烈なパフォーマンスから「プレミア最高のセンターハーフ」の称号も近づいていますが
このラムジーとエジルの2人が序盤の快進撃を支えていた事は間違いありません。

更に1年の冬眠からようやく目覚めたジルーも加えて中盤から前は全く隙の無い充実ぶりですが、
一方でDFラインとGKは相変わらず何と言うか・・・な顔ぶれ(^^;

(やっぱり汚れ役を買って出る選手にもGシルバ、キャンベル、レーマンクラスが1人はいないとね・・・)


片や昨季のファイナリストで今季雪辱を期すドルトムントは
ゲッツェの抜けた穴に補強したムヒタリアンがすんなりと収まっています。

(香川⇒ロイス⇒ムヒタリアンと本当に補強で外れの無いチームですね!フロント力も高杉晋作!)

ゲッツェをあっさり放出した割にレバンドフスキを意地でも手放さなかったのは
恐らくここの代役は見当らなかったからなんでしょう。

ここら辺がただ単に移籍金を積まれれば放出していくチームとの違いで、
代役の計算が立っているポジションのみビジネスとして換金していく逞しさと言えるでしょうか。

ギュンドアンをはじめとする怪我人も数名抱えていますが
ホフマン、オーバメヤン、パパスタソプロフとベンチメンバーにも計算の目処が立ってきて昨季と比べても戦力に厚みを増しています。

そして今季のドルは何と言っても・・・レバンドフスキの充実ぶりが異常

恐らくキャリアの最盛期を迎えているこの25歳のストライカーは
FWとして得点が量産出来るだけでなくクサビのタテパスに対する収まりが「半端無いって!」(by 中西隆裕君)

とにかく今、世界最高の「理想の1トップ」と言えばこのポーランド人で間違い無いでしょう。
(こういうCFがいるチームは無理に0トップのトレンドを追う必要も無いですよねー)


改めて見ると両チームにエジル、ラムジー、レバンドフスキと今季好調の選手がたくさん揃っているのは楽しみです。


<標的にされたラムジー>

さて、試合前の注目ポイントはアウェイのドルトムントの出方にありました。

というのも第2節でアーセナルと戦ったナポリは彼らをリスペクトし過ぎる出方が完全に裏目に出て
序盤からチンチンにボールを回されていたからです。

基本的にプレミアでもアーセナルを相手にするチームは彼らをリスペクトした入り方をする場合が多いのですが
実はベンゲルのチーム相手に序盤から気前よくボールを渡してしまうと彼らの思うツボなんですね。

DFラインから一旦中盤にボールが渡ってしまうとアーセナルのウィークポイントはあまり目立たないのですが、
最終ラインのつなぎに大きな問題を抱えるこのチームにはいっそ前プレをガンガン仕掛けていった方が得策なのです。

(それか引くならいっそチェルシーのように完全にドン引きにして裏のスペースを潰してしまうかですね)


クロップの場合は相手がバイエルンだろうとハノーファーだろうと自分達のサッカーを押し通すので
これはナポリの二の舞にはなるまい…とは思っていたのですが、
いざ試合が始まってみると予想以上にドルの前プレが機能する結果となりました。

試合開始直後の↓のシーンをご覧下さい。


【クロップ「アーセナル…?だからどうした?そんなの関係ねぇ!」】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルのビルドアップ。

中盤の低い位置まで降りてきたエジルが一度DFラインからのボールを受け取るという今季のアーセナルでよく見かける場面ですね。

エジルは逆サイドへの展開を探りますがここに選手がいなかった為、少し溜めを作ろうとすると・・・


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ドルの前プレがすぐに寄せてきたので一旦矢印の方向へターンしてボールを逃がそうとしますが・・・


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あっと言う間に前後から挟まれてボールを奪われてしまいました。

この場面ではすぐにファウルをとってもらえたので助かりましたが、
アーセナルはプレミアの試合では未体験とも言える果敢な前プレを受けて明らかに出だしから困惑していた様子。

基本的にドルトムント相手に3タッチ以上したらもう前後から囲まれていると思って間違いないでしょう。
(全くもって恐ろしいチームです・・・(^^;)

そしてこの未体験の前プレの餌食となってしまったのが皮肉にもこれまでアーセナルを引っ張ってきたラムジーです。

ラムジーはプレミアでは(特にアーセナル相手には)3列目のボランチにまで積極的にプレッシャーをかけられる場面は少ないという利点を活かし、
後方からの長い距離を走った飛び出しや中盤の空いたスペースをドリブルで持ち上がる機動力を武器としてきました。

しかし狭いスペースでの素早い状況判断とボールテクニックではまだまだ向上の余地があり、
基本的には目の前にスペースを必要とする選手なので中盤でドリブルの2タッチ、3タッチを挟んでいる間に囲まれるシーンが序盤から目立ってしまいます。

もう1人のアルテタの方はさすがバルサで育っただけあり、
無駄の無いツータッチのボール裁きで無難にこなしてはいましたが
やはりラムジーという縦の推進力を殺されると前にボールを運べなくなる苦しさがこのチームにはあります。

クロップとしてはまずアーセナル好調の推進力となっていたキーマンの一人を消す事に成功したと言えるでしょう。


<消された間受けとアーセナルの甘さ>


ではもう一人のキーマン、エジルはどうだったでしょうか。

勿論エジルもドルの果敢な前プレをかなり嫌がっていた様子ですが
クロップからするとこの選手のプレーで最も警戒しなければいけないのがバイタルエリアでの間受けです。

昨年~一昨年ぐらいまでのドルトムントだと前プレも一本槍なところがあったので
エジルも巧みなポジションどりでボールを引き出せていた可能性もあったのですが、
今のドルトムントは単に前から取りに行くだけのチームではありません。

中盤の守備でも効果的に中を切って消すべきパスコースとエリアを潰せる巧みな守備を見せるようになっています。


【中を切る守備で間受けも無効化】
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局面は左から右へ攻めるアーセナルの中盤でエジルがボールを受けた場面。

ドルトムントからするとここで一番避けたいのがエジルに反転されて中のパスコースをラムジーへ繋がれる事です。

したがってベンダーがすぐにケアへ向かいます。


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結果的にエジルは反転せず、そのままメルテザッカーへボールを渡したのですが
こうなると今度は新たにバイタルエリアで間受けを狙うウィルシャーへのパスコースが出来てここが危険なエリアへと局面が切り替わりました。

これを見たベンダーがラムジーのケアからこちらのケアへと切り替えている判断がまず速い。


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続いてロイスとシャヒンもサイドではなく「中を切る」共通意識を持っているので
メルテザッカーには中を通すパスコースが完全に消滅してしまいました。


アーセナルはこのレベルの守備で中を切られるとエジルの間受けが死んで、こちらも試合から消されてしまう事に。

となればキーマン2人を潰されて得意のパス回しを寸断されたアーセナル相手に
試合序盤からドルトムントが主導権を握ったのは当然の結果と言えるでしょう。

そしてこういう展開で守勢に回らされると途端に脆さが見え始めるのが今も昔もアーセナルというチームの体質なのですね。

何故かというと「相手にボールを持たれた時」・・・つまり守備の詰めがドルと比較しても明らかに甘いからです。


【アーセナルの中切りを検証】
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局面は今度はドルトムントのビルドアップの場面ですが
アーセナルはラムジー&アルテタの両ボランチの絞りが甘く中を通すパスコースが空いてしまっています。

ドル相手にここのコースを空けてしまうと先に待ち構えるのは"あの男"なんですね・・・。


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このチーム相手にCBから直接レバンドフスキへ縦パスを通してしまうようでは話になりません。

ドルトムントに比べるとアーセナルの守備は「どこから消すか?」という優先順位が明確になっていない場面が目立っていました。

勿論それは前プレにも表れています。


【アーセナルの前プレを検証】
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局面は右から左へ攻めるドルのビルドアップに対し、めずらしくアーセナルが前プレを仕掛けていく場面。

但しチームの約束事として細部まで練られているドルのそれと比べると
アーセナルの前プレはほとんど選手個々の判断に委ねられた、ある意味気まぐれというようなものでしかありません。


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アーセナルは引き続き下げられたボールを追っていきますが中でシャヒンがフリーになっています。


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あっさりここを使われると懸命に追っていたジルーが「何でここが空いているんだ!?」とばかりに不満のジェスチャー。

これだと前プレは単なる徒労に終わってしまうんですが、要するにドルとの違いはチーム全員が連動していないという点に尽きます。

この場面でも何がいけなかったかと言うと「ボール近辺の密度を上げて逆サイドは捨てる」という
プレッシングの基本事項が徹底出来ていなかったせいですね。

つまり局面を一つ遡って・・・


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この場面でロシツキーとアルテタは一つずつポジションを上げた前進守備で押し上げる必要があっただろうし、
ボールから遠いサイドのエジルももう少し中に絞り気味のポジションをとるべきだったのです。

要するに突発的にボール周辺の3枚だけで追ったところでそれは無駄走りで終わるよ…という話。
(特にCLレベルでは尚の事)


選手補強もそうですが、ベンゲルが守備の詰めに関してそこまで関心が無い事はもはやガナーズサポーターの間でも周知の事実として定着している感すらありますよね。(^^;


<『考えるな!走れ!』>
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とは言え、これまでの比較はそれがちょっと守備についてはアレ…なアーセナルが対象だったので、
続いてはクロップが目指す本当の狙い、現代サッカーで頭一つ抜け出す為の他とは一線を画す武器を検証していきたいと思います。

それは「攻守のシームレス化」と呼べるものなんですが、
とどのつまり人間が行うサッカーというスポーツにおいて攻守が切り替わる瞬間に出来るコンマ数秒…
ほんの一瞬のエアポケットというべき空白の時間を限りなく0に近づける試みです。

これを理解する為にまずは普通のチーム、アーセナルの場合を見てみましょう。
ちなみにこれはアーセナルに限らず他のどのチーム、それこそ世界中のトップレベルのチームでもごく当たり前に見られる光景なのでその事を念頭に置いて見ていただくといいかもしれません。


【攻守の切り替わりに現れる一瞬のエアポケット】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルの攻撃で、今ボールを持ったウィルシャーからロシツキーへパスが出される場面。

ところがここで両者の意図が食い違っていて、とりあえず前のロシツキーにボールを預けたいウィルシャーと
スペースへ流れてからその先でボールを受けたいロシツキーという齟齬が生まれてしまいます。

(これ自体はサッカーではよくある事)


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で・・・ウィルシャーからパスが出された頃には時すでに遅し。

両者共に「えっ!?そっちかよ・・!」ってのが本音ですが、実際の試合はそんな瞬間にも止まってはくれません。


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・・・ハイ!ココ!

サッカーでは攻⇒守に切り替わった瞬間をネガティブトランジションと言うように
攻撃が失敗して守備へ切り替わる瞬間は人間どうしても気持ちが後ろ向きになってしまうものです。

それが味方のミスとなれば尚の事ですが、それが起きた後に天を仰いだり、
このロシツキーのようにパスがミスに終わった事はもう分かっているのにそのまま惰性で何歩か走り続けてしまう事はサッカー経験者なら「あるある」の場面なはず。


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これはつまり視覚でボールが奪われた場面を認識していても脳が「攻⇒守」へと即座には切り替わっていない、
というか人間のメンタルは構造上そうすぐには割り切って考えられない為、
頭の中はそのままパスを受けようとしていた状態で思考停止に陥っているが故に現れる惰性の無駄走りというべきものです。

ですが繰り返すように、これは何もアーセナルに限った話ではなくバルサでもレアルでもユナイテッドでもどこにでもある日常の光景。
相田み○お先生じゃないですが、だって人間だもの

ところがクロップはここにメスを入れようとしているのですね。
つまり人間のメンタルと頭の中を改革しようと言う訳です。

その成果は今季のチームにも確実に表れていました。


【ドルトムントの攻⇒守 (ネガティブトランジション)】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルのコシエルニーがドリブルでボールを運びますが
中盤で引っ掛けられてボールを奪われそうになっている瞬間です。

この時既に守⇒攻へ切り替わる気配を察知したロイスが既に走り始めています。
(いわゆるポジティブトランジションで、これはメンタル的な負荷が低く誰でも出来る)


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ところが奪われるかに思われたボールがこぼれ球となってロシツキーの前へ。

普通の人間ならばせっかくカウンターに備えて走った分がそのまま無駄走りとなった上に
自分の背後で攻守が切り替わったこのような場面ならば一瞬切り替えのエアポケットが出来てしまうもの。

ところがロイスは攻守の切れ目なく(まさにシームレス)すぐに守備へと頭と身体を切り替えられています。


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その後、ロシツキーからラムジーへボールが渡りますがロイスは諦めずに帰陣し続けて・・・


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最後ラムジーがシュートを打つ瞬間にはギリギリ間に合って背後からプレッシャーをかける事に成功しました。
(シュートは枠を外れる)

このようにトップレベルの試合になればなるほど、
こういう場面であと一歩戻りきれているかどうかが得点と勝敗に直結してくるのが現代サッカーなのです。

それを証明するように前半16分に生まれたドルトムントの先制点が雄弁に物語ってくれているのでちょっと見ていきましょう。


【ドルトムントの先制点を検証】
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局面は右から左へと攻めるドルトムントの崩しの場面。

左サイドでボールを持ったロイスがレバンドに預けてパス&ゴーでリターンをもらおうと走り出しますが
このパスが少しズレてアルテタへ渡ってしまいます。


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結果的にこのパスをインターセプトする形になったアルテタからラムジーへ。

ところがこの瞬間、まさにドルトムントが「攻守のシームレス化」を体現する動きで思考のエアポケットなく守備へ切り替えている動きが見事過ぎます。


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気がつけば前を塞がれていたラムジーが取り敢えずボール逃がそうと左へ持ち出しますが・・・


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なんかもう囲まれてるし!奪われてるし!

この場面に至っても周囲のアーセナルの選手はまだ棒立ちの状態が目立ち、
明らかに切り替えの意識という点で両チームに段違いの差が表れています。


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ドルトムントはパスをインターセプトされてから僅か4秒後にはシュートを放っています。
(遂に近代サッカーはここまでスピード化が進んだか・・・。)

まさに切り替えの意識が生んだゴールと言えるでしょう。

最初にインターセプトされた瞬間にエアポケットの時間を作ってしまうと一転してカウンターを食らうピンチの場面でしたが、
サッカーではその瞬間に差をつける事で一気に得点のチャンスへと変換出来てしまう可能性をクロップが証明しています。


<カウンターのピンチこそ優先順位を>

これでドルトムントの守備は従来の前プレと遅攻に対する中切りに加え、奪われた瞬間のGプレスも完璧。

となれば次は考えうる中でも最悪の場面、Gプレスがかわされた時のカウンターに対する守りですがこれも見事に整備されています。


【ドルトムントの守備 (カウンターへの対応)】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルのカウンター!

ここでポイントとなるのがボールサイドにいるベンダー&シュメルツァーの対応です。


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サイドのサニャから中のラムジーへボールが渡った瞬間の2人の動きに注目して下さい。

サニャを捨ててボールへ向かったベンダーとより危険な裏への飛び出しを狙うウィルシャーへと向かったシュメルツァー。

つまりこれが緊急時の守備における優先順位というものです。


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ボールを持ったラムジーに対してすぐさま中へのパスコースを消し、
更に間受けを狙うエジルにはフンメルスがDFラインから飛び出してケアに向かう構え。

危ないエリアから次々と潰していくドルトムントの守備からは相当訓練されている下地が伺えます。


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結果的にアーセナルのカウンターを外へ迂回させる事に成功しました。


・・・とここまで見てきて勘の鋭いアーセナルファンの方ならもしかして気付いたかもしれませんが、
「あれ・・・?これウチの得点シーンじゃね?」

ハイ、その通りでございます(^^;

実際の試合ではこの後、サイドのサニャからGKとDFラインの間を縫う見事なクロスが入ると
ジルーがこれに合わせてアーセナルが同点へ。

このようにサッカーでは例え素晴らしい守備が出来ていたとしても
相手にそれを上回る技術を発揮されたら守りきれない…というのが醍醐味の一つなんですね。

これで試合は1-1で前半を折り返す事に。


<前プレを剥がそう>

アーセナルは後半、それまで中盤の低い位置で標的にされていた感のあるラムジーを一列上げて
トップ下へ持ってくる事で今季絶好調の得点力をゴール前で活かしてもらおうとベンゲルが画策。

同じように中央で思うように間受けが出来なかったエジルをサイドに回して
ボランチにはウィルシャーを下げる配置転換を施してきました。

これは11/12シーズンのCL対バルセロナ戦で
ウィルシャーが全盛期のバルサ相手にその前プレを1人でかわして見事チームを勝利へ導いたあの試合を彷彿とさせる一手でしたね。

さて、この一手はどう出るか・・・?


【ウィルシャーをボランチへ】
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局面は後半、右から左へと攻めるアーセナルのビルドアップ。

CBコシエルニーから最初のタテパスを中盤で受けるのがボランチに下がったウィルシャーです。


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ボールを受けたウィルシャーはドリブルによってボールを前に運ぼうとしますがドルトムントの前プレは依然厳しく・・・


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あかん!イギリス系のMFじゃこの前プレ突破出来んわ!www

とベンゲル監督が思ったかどうかは定かじゃありませんが(笑)
とにかくウェールズ、イングランド期待の両ボランチが全く仕事をさせてもらえません。

かと思えば隣で飄々とボールをさばいているあのスペイン人は何者だ…!?
(ただのアルテタです)

という訳で後半58分に選手交代。

ウィルシャー OUT⇒カソルラ IN

イギリス系が駄目ならスペイン系にこの前プレを突破してもらおうという話ですね(^^;

幸いにもこの一手はすぐに効果が表れます。


【前プレ剥がしならスペイン系にお任せ】
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局面は先程と同じようにアーセナルのビルドアップから。

CBの間で横パスがかわされている段階で中盤の低い位置まで降りてきたカソルラは既に首を振って背後にいる敵と味方の位置を確認しています。(これ大事)


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で、コシエルニーからタテパスを受けて・・・


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すぐに前にいたラムジーを使ってボールを動かしながらリターンを受け取るカソルラ。

これでまずドルのファーストプレスを剥がすと・・・


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一気に逆サイドへボールを動かしてプレッシングの泣き所である「遠いサイドのオープンスペース」を突いていきます。

この前プレ剥がしと逆サイドへの大きな展開がカソルラ投入によってもたらされると
ようやくサイドに逃がしたエジルも起点として効き始めアーセナルの中盤に躍動感が戻ってきました。

それにしてもドルの激しい前プレの中でもカソルラとアルテタのスペインコンビは涼しい顔で淡々とプレーしていたのはさすがです。

これはもうスペインとイングランドの育成の差なのかもしれませんが
彼らはDNAレベルでボールの受け方、プレスの外し方といった基本技術が備わっているのでしょう。

しかも彼らはそれぞれバルサ、マドリーのトップチームには上がれなかった選手だというのだから
スペインの若手事情は一体どうなってんだっていう話で(^^;


<伝家の宝刀カウンター>

さて、試合では中盤がプレス合戦からパスワーク勝負へと土俵が変わってしまうと苦しいのはドルトムントです。
黄色いソルジャー達はそういう戦い方を得意としていません。

(元々テクニック勝負では分が悪いので前プレ戦術を採用してきたとも言えますが)

試合は一気にアーセナルペースへ流れ、ドルトムントは自陣への撤退戦を強いられる苦しい時間帯が続きます。

試合を見ていてこれはもうアーセナルが逆転するかドルトムントが耐えてドローに持ち込むかのどちらかだろう…と思ったのは
ちょうど昨季CL決勝の終盤もこのような流れで一方的なバイエルンペースになっていたのを思い出したからでもあります。


しかしクロップはまだ勝利を諦めてはいませんでした。
アーセナルの時間帯になったと見るやオーバメヤンとホフマンを投入して着々と逆転への布石を打っていくクロップ。

すると耐えに耐えた後半82分、遂にドルトムントの苦労が報われる事となります。
逆転ゴールはもちろん伝家の宝刀カウンターから。


後半82分―

アーセナルのクロスを跳ね返したクリアボールをレバンドフスキがメルテザッカーと競り合いながら
1トップのお手本のようなキープでマイボールにするとそこから一気呵成に攻め上がる黄色い波。

最後は右から上がったクロスにゴール前へ4枚が突進する迫力で
途中出場のホフマンがニアにDFを引っ張るとその裏に走り込んできたのはカウンターの起点となったレバンドフスキでした。

この絶好機を世界最強の1トップが外すはずもなくドルトムントが起死回生の逆転劇。

昨季までのドルトムントはキックオフからフルスロットルで行けるところまで行く…という感じのチームでしたが、
今季は苦しい時間帯には無理せず耐えに耐えてカウンターから一刺し…という大人の試合運びが出来るチームへと着実に進歩しています。

(余談ですが試合後のスタッツを見るとチームの総走行距離でドルトムントが13キロも上回っており、
アーセナルの走行距離が特別少ない訳ではなかった事と併せて考えるとまさに走り勝ちか)


<時代はドイツのクラシコへ?>

さて、個人的には今季見た試合の中でも文句無しのベストゲームを見せてくれた両チーム。

負けたアーセナルにしても内容的には紙一重で特にカソルラがスタメンからいたら…と思うと今夜の試合はどっちに転んでもおかしくないと思います。

しかしながらあれだけ押せ押せだった後半にカウンター一発でアッサリ沈んでしまうあたり、
やはり厳しい試合を勝ち切るには何か物足りなさを覚えるチームかな…と(^^;

加えてフラミニが戻ってきたらボランチはどのペアを組ませるのか?
2列目に至ってはエジル、ウィルシャー、カソルラ、ロシツキー、ウォルコット、ポドルスキーと過剰戦力を揃えていますが、一方でCFはジルー頼みと明らかにアンバランスな持ち駒も悩みの種。

僕の見立てでは今季もアーセナルが何らかのタイトルを獲るのは難しい気がしますが
やっているサッカーの質と娯楽性では間違い無くプレミアでダントツのナンバー1です。

例え勝ちきれなくても「見ていて楽しいアーセナル」が帰ってきたのはいちサッカーファンとして嬉しい限りですね。


一方のドルトムントについてはクロップが人間の脳とメンタルの領域にまで探求の幅を広げ
もはやピッチ上では精密なサイボーグが試合をしているかのごとき激しいインテンシティが要求されています。

プレミアリーグのサッカーもよく「速い」と言われますが
ドルトムントやバイエルンのサッカーは単純なボール往復スピードではなく
人間の思考と切り替えの領域でもはや他のクラブとは質が違うサッカーを展開していると言えるでしょう。

ドイツの二強に比べるとメッシ、シャビ、イニエスタの切り替えは3テンポ遅く、
ロナウドとベンゼマを前残りにして守っているスペインの二強とはますます差が開く一方な気も…。

(とは言えこの2チームにはそうした差を一発でひっくり返す個の力があるので決して侮れませんが)


先日のクラシコに何も新しい戦術的発見が無かった事と併せて考えると
昨季のCLドイツ決勝は決してフロックなどではなく時代の必然だったのかもしれませんね。

その意味でいよいよ現代サッカーの先端を引っ張るのは
スペインのクラシコからドイツのクラシコへとそのバトンが渡るシーズンになるのでしょうか―



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そこにバルサもマドリーもいなかった ~FCバルセロナ×Rマドリー~

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<そこにバルサもマドリーもいなかった ~FCバルセロナ×Rマドリー~

―クラシコ―

それはサッカーの枠を超えた極上のエンターテイメントであり人間ドラマであり国の歴史であり戦術史の革命である。

とりわけこのブログではその性格上、これまでクラシコという試合を
近代サッカー史における戦術革命という視点で見てきました。

ペップが去りモウリーニョも去った今回のクラシコが純粋にスポーツの一試合へ回帰した事は
少し寂しい気もするのですが、長い目で見れば正しい姿に戻ったというべきなのでしょう。

しかし戦術的に見てこの日のピッチに何も新しい発見を見出す事が出来なかったのは
ベンチに役者が去った以上に寂しい事であります。

ペップの革新的なアイディアとそれを打ち破らんとするモウリーニョのせめぎ合いが
近年の戦術進化に大きな影響を与えてきた事を考えると
残念ながらこの日のピッチには僕が求めていたバルセロナもマドリーもいなかったと言ってもいい試合でした。


<初クラシコ同士の顔合わせ>
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お互い初クラシコとなる新監督を迎え新たな章へ突入したクラシコ。

まずはマドリーの新指揮官アンチェロッティが送り出した驚くべきオーダーから見ていきましょう。

…ハイ、トリボーテ復活です。
まずは前任者の置いていった遺産を無難に引っ張り出してきました。
やっぱりクラシコ童貞としては初夜からマニータとか絶対に勘弁願いたいものですからね(^^;

前任者との違いはペペではくSラモスをアンカーに指名した点でしょう。
元々SラモスはCBで起用されていても中盤に降りるメッシを追って捕まえる役割を担っていたので
アンチェロッティとしてはその機動力を買ったのかもしれません。

そして前線3トップの顔ぶれです。
まさかベイル、ロナウド、ディマリアのスピードスター3枚を並べてくるとは思いませんでした。

SBにアルベロアではなく攻撃重視のコンビを選んだ事と併せて考えると
中はラモス、ケディラ、ペペらで固めて攻撃はサイドと前線のスピード勝負という腹づもりでしょうか。

確かにバルサ相手に中盤勝負を避けるのは一見理にかなった選択のようにも思えますが
今季のマドリーはその中盤でつなぐサッカーを目指してきたのではなかったか・・・?


対するバルセロナのマルティーノ監督は相手のメッシ対策を見越してその狙いを外す布陣を送り出してきました。

偽9番と言われるCFにはセスクを置いてメッシは右へ。
(とは言え両者の関係はあくまでメッシが右を起点に自由に動いて、セスクがその穴を埋めるというもの)

これまでのバルサだと相手のメッシ対策は分かった上で
それを真正面から崩していこう(或いはメッシ無双でバラバラにしてやろう)という傾向が強かったのですが
他所から来たマルティーノは「どうせ相手はメッシ対策してくるのが分かりきってるなら、その狙いを外してやればいーじゃん」という至極シンプルな回答。

当たり前過ぎてバルサでは逆に新鮮です!


<ゾーンでバルサは守れない>

結果的に試合ではメッシ番として置いたつもりのSラモスがセスクを見るような関係となってしまい、
局面によってはマークに付くべき相手を浮かせてしまう場合も多く、アンチェロッティの狙いが上手く外されてしまいました。

その上、それ以上に問題だったのがマドリーの守り方にあります。

例えばバルサの中盤まで降りてくるCFに対し普通にゾーンで守ってしまうと
CBが放置プレーを食らって代わりに中盤が数的不利に陥るというのはこれまで散々言い尽くされてきた常識です。

故にモウリーニョ時代は途中からDFラインとゾーンディフェンスという概念を捨てて
中盤に降りていくメッシに対してはそのままCBがマンツーマン気味に付いていくという守り方で一定の成果を得ています。

ところがアンチェロッティは初のクラシコでバルサに対し普通にゾーンディフェンスで試合に入ってしまうんですね。

【CBがメッシへ付かずに受け渡すマドリー】
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この場面でもペペはメッシへ付かず代わりに誰かが付くようにコーチングしていますね。

これだと一度モウリーニョ時代にとっくに解決させた問題が再び芽を出してきてしまいます。

即ち「CBがマークすべき相手がいない」という事と「中盤の数的不利」ですね。

基本的にこの日のマドリーは「誰がボールに当たって」「誰が誰のマークに付くのか」が不明瞭で
延々とバルサのボール回しを飛び込まずに眺めているようなディフェンスが目立ちました。

つまりチームとしてどこでボールを奪うのかがハッキリしていないんですね。


【常にマークが混乱しているマドリー】
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↑ここでもただ中盤に降りていくだけのイニエスタに誰がマークに付くのかがハッキリしません。

後方で2人のプレイヤーが「誰が付くんだ!?」としきりに声を出している始末。

しかもこの状態でベースがゾーンディフェンスなものだから、いとも簡単にバルサの間受けで突破されてしまうんですよ。

ちょっと実際の試合から一つ見てみましょうか。


【間受けに対して無防備過ぎたマドリー】
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局面は左から右へと攻めるバルサのビルドアップ。

ピケからイニエスタへ入るボールへはSラモスが捕まえに出ます。


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ところがSラモスが飛び出すまではいいのですが、
その際に出来るスペースは後ろのCBが同じように前進守備で埋めなければただのオープンスペースと化してしまいます。


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でもマドリーはゾーンディフェンスでDF「ライン」の意識を優先させるのでここでも容易に間受けが決まってしまいます。


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更にそこからダイレクトで繋がれて最後は裏の危険なスペースへ出されてしまいました。

やはり普通のゾーンディフェンスではバルサは守れない相手なのです。

正直モウリーニョ時代からのクラシコシリーズをずっと見てきたファンからすると
「またそこからやり直しなのかよ!」と言いたくもなる惨状でした(^^;


<ボディが打てるマルティーノ>

ではもう一方のバルサ視点でこのクラシコを見るとどう映るでしょうか。

マルティーノはメッシを右に移す事で既にSラモスのアンカー起用という狙いを外させていますが
今季のバルサは他にも頑固に自分達のスタイルを押し通すのではなく
【相手の薄いところをシンプルに突く】スタイルへと生まれ変わっています。

これがマルティーノ色なのですね。


【中攻めにこだわらない今季のバルサ】
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局面は左から右へ攻めるバルサの攻撃ですが、この場面にマルティーノ色が集約されています。

まず中央で間受けを狙うのは相手から標的にされるメッシではなくシャビやセスクが担い、
代わりに右へ逃がしたメッシがSラモスらのマークから逃れた位置で自由にボールを受けて運び役となっています。

更に旧来のバルサでは相手がどれだけ中を閉めてこようと
それでも躍起になって針の穴を通すようなパスコースを探していましたが
マルティーノは「中が閉められてんなら外を使おうぜ」というここでもシンプルな理論が適用されるのですね。

(アンチェロッティとすれば「バルサの外攻めに驚異無し」と割り切って両SBは攻撃重視のペアを選んだのに
左右のネイマールとメッシをシンプルに使われる外攻めは完全に誤算だったはず)

そしてこの発想の源となっているのがネイマールの存在でしょう。
本来、マドリーとしてはネイマールに対して最低でもマークを2枚当たらせて数的優位を確保したいのが本音のはず。

【ネイマールへの対応は2対1が基本】
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しかし中攻めを常に警戒しなければならないバルサというチーム相手に外のネイマールにも気を配るのは至難の業。

実際にマルティーノはこれを上手く利用した攻めを今季よく見せています。
特にバルサの一点目の場面はそんな狙いがよく表れていたので検証してみましょう。


【バルサの一点目を検証】
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局面は左から右へと攻めるバルサのビルドアップですが
守るマドリーはブロック全体をボールサイドへとスライドさせ、尚且つ中攻めを警戒せざるを得ないので理屈の上でも逆サイドに張るウイングはどうしても浮いてしまいます。

昨年までのようにここがペドロやビジャであれば例えサイドチェンジが決まったところで
そこから縦に突破される怖さはなく、どうせ一度ボールを下げてからの組み立て直し…とバルサの攻めも相場が決まっていたので
ある意味ここは放置していても大丈夫というエリアだったのですが今季はそうもいきません。

↑の場面ではマスケラーノから大外のネイマールへサイドチェンジのパスが出されます。


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ボールはネイマールを経由して一度ブスケスへ下げられますが
昨季との違いはネイマール自身に縦への突破という怖さがあるのでサイドチェンジのボールにマドリーは一度外側の2枚が引っ張られているという事なんです。

それ故、ネイマールに引っ張られた分、中が空いてしまいイニエスタに絶好のスペースを与える結果となってしまいました。


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イニエスタに中でこれだけスペースを与えてしまうと自由にボールを運ばれて・・・


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マドリーが慌てて中を閉めた瞬間を見計らって、今度は外のネイマールへ再びリターンパス。

フリーで受けたネイマールが左45度から得意のシュートを決めてバルサが先制します。

一連の流れを見ていくとマスケラーノのサイドチェンジから始まり外⇒中⇒外
シンプルに「空いたスペースを突く」という攻撃が具現化されています。

これをボクシングに例えると昨年までのバルサは相手がガードを固める顔面に
それでも巧みにグローブを滑らせようと躍起になっていたボクサーで
マルティーノは「だったら空いてるボディを打てばええやないか」というトレーナーと言えるでしょうか。

今季のバルサはサイドが空いていればシンプルにサイドチェンジを出すし
ラージョのように前プレ一点突破で向かってくる相手には自陣におびき寄せておいてから縦1本で裏を取るサッカーもします。

変態度(笑)と娯楽性は幾分落ちましたが、よりノーマルに勝ち点を拾える「勝てるチーム」になってきたと言えるでしょう。

メッシという決まれば一発KOのストレートパンチに加え
じわじわと相手の体力を奪うボディ打ち(ネイマール)もあるのがマルティーノの強みでしょうか。

(ネイマールは外に張っているだけでなく巧みに裏を取る動き出しが相手の集中力と体力を地味に削ってますよね。)


<アンチェロッティの緩手>
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前半19分の先制点に加えてバルサが前半を一方的に支配出来たのはマドリー側の布陣にもその原因があります。

というのもアンチェロッティ名人が並べた先発オーダーがモ○ーズ顔負けの香車コレクターになってしまったからですね。

【後手アンチェロッティ名人の布陣】
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ロナウド、ディマリア、ベイル、マルセロ、カルバハルとフィールドの半分が香車状態では・・・(^^;

バルサ相手に中盤勝負は避けて両サイド+前線のスピード勝負だ!…という狙いは分からなくもないですが
この布陣では攻撃がどうしても外へ外へ集中してしまいます。


【香車置きすぎて凹状態のマドリー】
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なんかもう外への意識が強すぎて凹みたいな並びになっちゃってんですよね(笑)

しかもこの持ち駒では肝心のスピードを活かそうにも展開役が圧倒的に不足して完全なる負け将棋。

例えばアンカーのSラモスが中盤でこぼれ球を拾ったような場面で考えてみましょうか。


【アンカーSラモスの限界】
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想像してみて下さい。

ここで仮にボールを持ったのがアロンソだったとすると大外の味方にビシッ!と音まで聞こえてきそうなパスをグラウンダーで通す画が思い浮かびますよね?

でも残念ながらSラモスだと・・・・


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パススピードが遅すぎてインターセプトの餌食や…!!


やはり中盤3枚の内2枚がラモス、ケディラって
これじゃあ仮にボールが奪えてもパスが2本と繋げない訳ですよ。

DFラインからのビルドアップでもケディラはそもそも低い位置で持つ事自体がリスクだから高い位置に上がって行っちゃうし、
本職じゃないSラモスもアンカーとしてマークを外しつつパス回しに関与するスキルが圧倒的に足りてません。

「じゃあ誰がやるの?」って話になると、「俺しかないか」って感じで
もうモドリッチの負担が半端無い事、半端無い事。(笑)


【モドリッチが遭遇した絶望的なビルドアップ】
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局面は左から右へと攻めるマドリーのビルドアップですが、
この場面でも中盤でペペから受け手となる意思を示したのはモドリッチただ一人。


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仕方なくモドリッチは自力でボールを運び出しますが、前線のロナウドとベイルの香車二枚がもろかぶり(笑)

しかも肝心の味方がいて欲しいエリアには誰もいねぇwww


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せっかく中盤で前を向けたモドリッチでしたがここは渋々外へボールを迂回させるはめに。

本当はこういう場面で黄色く囲ったエリアに間受けを狙う選手がいればねー。


真ん中で苦もなくボールを受けられる現代の王様みたいな選手がさー

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ねぇ…?マドリーにはそういう選手いないの?

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・・・本当に?

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<これがバルナチオだ!>

試合は1-0、バルサ1点リードで折り返した後半、
さすがにアンチェロッティもツッコミどころ満載だった前半の布陣に手を加え始めます。

まずは守備でメッシ番をさせてもらえず、攻撃でも当然アロンソの代役など望むべくもなかったSラモスに代えてイジャラメンディを。
そしてCFにはベイルに代えて本職のベンゼマを引っ張り出します。

それにしても、何故スタメンのCFがベイルだったのか…?

恐らく試合後のアンチェロッティ本人のコメントにもあるように
中央でベイルをブスケスやピケと1対1にさせる場面を作り出したかったのがその狙いなんでしょうが
だったら尚の事、後ろと前を繋げるリンク役を中盤に置くべきでした。


とにもかくにもこれでようやく平常営業へと戻ったマドリー。後半の逆襲が始まります。

ポイントになったのは交代出場のベンゼマ。

という事で「やっぱりマドリーの攻めは中のラインがある事で両翼が生きるよね」ってな場面を一つ。


【機能するマドリーの攻め】
benzema1101-1.jpg

局面は後半、左から右へと攻めるマドリーのビルドアップですが、
中央にベンゼマが戻った事でペペから中央を横切る縦のクサビというラインが復活しました。


benzema1101-2.jpg

マドリーの攻めはまずここに1本クサビが入ると両翼のスピードがより活きる仕組みになっています。


benzema1101-3.jpg

ベンゼマのポストプレーからディマリアを経由して裏へ抜けたロナウドへ。
(この後、マスケラーノにPA内で倒されたロナウドを巡って疑惑(?)の判定に(^^;)

後半は布陣をモウリーニョ時代に戻した事で、シンプルで縦に速い攻撃は彼らのDNAに根付いているスタイルです。


一方、マドリーの猛攻にさらされたバルセロナは、ここで驚くべき行動に出ます。

メッシ1人を敵陣に残し9人で自陣に引いたブロックを形成。

そうです・・・まさかのバルナチオ発動です(笑)

昨季のバルサは苦しい時間帯(つまり相手の時間帯)にも無理して前から取りに行った挙句、後ろのスペースを突かれて失点という、
自分達の流れにない時間帯での淡白な失点が目立っていましたがマルティーノは「耐えるべき時間帯は耐える」という方針です。

こういう時は無闇に自分達から動くのではなく、耐えて耐えて相手に隙が出来るのを待つのがサッカーでは常套手段。

とは言え「あのバルサが…」という衝撃は否めませんが(^^;


それにしても改めて引いて守る時のバルサを見ていると
欧州はおろかリーガで見ても並以下のチームだなぁ…というのが正直な感想です。(笑)

マルティーノもいっそ、こういう時の守り方はアッレグリにでも教えてもらった方がいいかもしれませんwww

(アッレグリ「私ならソング、ムンタリ、ケイタの中盤でも守りきれる自信がある(キリッ!)」)


それでもサッカーの理の通り、苦しい時間帯を耐え切ったチームにはご褒美が転がり込んでくるものです。

マドリーは押せ押せの時間帯にベンゼマが相変わらず才能の無駄遣いでポストにボールを当てて遊んでいると後半33分には手痛いしっぺ返しが。

パントキックのこぼれ球からマルセロの裏という泣き所をカウンター気味に突かれて
抜け出したアレクシスのビューティフルループが決まりジ・エンド。

バルナチオからのカウンター1本で追加点…なんていうゲーム運びも出来るようになったんですねバルサは。


しかも2-0となったところでマルティーノはイニエスタに代えてソングまで投入する慎重さでもって
これまた従来のバルサには無かった守備固めという一手を繰り出します。

マドリーも後半ロスタイムに1点を返しますが焼け石に水。

クラシコ第2章の幕開けは2-1で順当なバルサの勝利に終わりました。


<マドリーに残ったもの バルサが失ったもの>

試合後の率直な感想としては「アンチェロッティはバルサ相手に少しビビり過ぎたのでは?」

そもそも今季「美しいマドリーを見せる」とポゼッションサッカーに舵を切っていたのだから
このクラシコこそイスコを使った従来のスタイルで真っ向からぶつかるべきだったと思うのです。

何もこれで結果が変わったとまでは言いませんが
少なくともバルサ相手に何が通用して何が通用しないのかをハッキリさせるだけでも
最初のクラシコとしては大きな価値があったんじゃないかと。

逆にこの日のような出方で負けても「結局そこに何が残ったのか?」と言うと甚だ疑問ですね。

バルサにコテンパンにやられてカウンターサッカーへ舵を戻すならともかく、
この試合内容では今後に向けてどっちへ舵を切っていいものか航路は依然として霧の中でしょう。

そもそもポゼッションスタイルへ転向すると現場は言っておきながら
獲ってきたのがベイルで、イスコがベンチ、エジルが放出とは一体このクラブは何がしたいのでしょうか・・・(^^;


一方のバルサはマルティーノ色がだいぶ馴染んできたようです。

その証拠にこれまで「メッシが輝く」「メッシを抑えるか」がその勝敗の分かれ目だったクラシコで
今回は初めてそのメッシが脇役に回ったクラシコと言えるかもしれません。

試合を決めたのは本来脇役だったはずの両ウイング(ネイマールとアレクシス)でした。

もはやシャビ、イニエスタ、メッシの大御所トリオに関しては
国内リーグでは無意識の内に手を抜いているレベルなのかと思うほど、
クラシコでは別人のような動きを見せていたのはさすがでした(^^;

とは言えこの3人にペップ時代の鬼プレスが期待出来ない今、
時間帯によってはバルナチオも致し方なしの試合が今後増えてくるでしょうが
マルティーノはメッシにさえ特別扱いを許さない徹底したローテーションで各選手の負担を最小限に抑えています。

ただやはり長期的な視点で見ればペップ全盛期からチームは緩やかに下降線を描いているのも事実。

マルティーノが普通のサッカーへ針を戻すのも納得ですが
個人的には「あのバルサも普通のチームになるのかなぁ…」と一抹の寂しさが拭えません。

やはり当面の課題はこの試合でもそれぞれ左右の遠いサイドに配置して妥協策を見出していたメッシとネイマールの連携ですね。

ストレートとボディの単発的な打ち分けはあっても、
ボディからストレートに繋がるワンツーが入らないのが勿体無いんですよね。


相変わらずイニエスタたんの変態トラップさえ見られれば思わず「うめぇ!」とか声は出ちゃうんですが
クラシコってそれだけじゃない驚きがピッチの至るところに敷き詰められた特別な試合だと思っているので
クラシコ童貞を無事卒業した新指揮官の2人が織り成す第2章には大いに期待してます。



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