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『持たざる者達』の生存戦略~レスターとアトレチコの躍進を探る~

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<『持たざる者達』の生存戦略~レスターとアトレチコの躍進を探る~

さて、かなり久々の更新になります。

これまで散々ネタにしてきたラニエリに対し
昨年の11月ぐらいからずーっと焼き土下座機に乗って頭(こうべ)を垂れて続けてきたせいで
両腕がタイピング出来ないぐらいの火傷を負ってしまったからですね。

そろそろ古傷も癒えてきたので今回はラニエリへの謝罪の意も込めて誰も予想しなかったレスターの躍進と、
CLでバルサ、バイエルンを破り予想外のビッグイヤー王手をかけたアトレチコの戦術を取り上げてみたいと思います。


<10人ブロックの時代>

と言ってもこの2チームが執っている戦術時代は別段目新しいものではありません。
少なくとも本ブログでこれまで取り上げてきた革新性や変態心とは間逆の発想とも言えるでしょう。

レスターは勿論、アトレチコもリーガの2強やCLで対戦する欧州の列強と比べれば圧倒的弱者。
故に彼らの戦術は「弱者の兵法」であり、その最大の特徴は「全員守備」です。

「全員守備」「全員攻撃」なんてものはもはや現代サッカーでは極ありふれた陳腐な表現ですが
彼らの強さは文字通り、本当の意味で「全員で守備」をするところにあります。


その意味を探る前に彼らの守備を現代サッカー史の流れから考えてみたいと思います。
90年代のサッカーは「8人ブロック」の時代でした。
サッキの登場以降、いわゆる4-4-2が世界中に浸透し守備時は4×4の2ブロックを形成して守るので
相手ボール時守備に思い切りリソースを割く人員の数が「8枚」という意味です。

これが2000年代に入ると4-2-3-1が主流になり、守備時は1トップを残して9枚が守備に参加する時代に突入しました。
代表的なのは4×4ブロックの前でブスケスをフリーにしてしまうとバルサに好き勝手されてしまうのでここに「+1」でマークを置く4-4-1ブロックのイメージですね。

そして2010年代に入り、CBの攻撃力向上、アンカーをDFラインに落としたビルドアップなど進化した攻撃戦術がテンプレ化されていくと特に質の高いタレントを揃えたビッグクラブ相手には9枚守備でも守りきるのが難しい時代になってきました。

そこでもう1枚、つまりフィールドプレイヤー全員で守備ブロックを形成する「10人ブロック」の代表例として
レスターとアトレチコの存在は時代の必然とも言える流れで捉えるとよりしっくり来るのではないでしょうか。


では実際の試合からレスターの10枚守備を検証してみましょう。

【レスターの4-4-2】
レスター442-1
局面は自陣で4×4のブロックを形成するレスター

従来の4×4ブロックの泣き所は2ラインの前でボランチに持たれて、そこからバイタルへタテパスを入れられた瞬間のモロさにありました。


レスター442-2
ここでも相手は定石通りボランチを使って打開を図りますが、そこに背後から猛烈な勢いでプレスバックする我らがザキオカ


レスター442-3
前を向けなかったボランチがたまらずボールをSBへ返す


レスター442-4
ボールはSB経由でもう1枚のボランチへ

ここで4×4で守る側としてされたらキツイ攻め筋が逆サイドへのサイドチェンジ。
長い距離の横スライドはブロックに隙が出来やすく、逆サイドはスペースがあるので攻撃側が圧倒的に優位です。
(今季のバイエルンだとこの攻め筋から逆サイドでDコスタ、ロッベン、リベリーが仕掛ける鬼)


レスター442-5
そこでヴァーディーですよ。
ここに2トップのFWがプレスバックして逆サイドへのパスルート切ってくれたら4×4の2ラインはどれだけ楽か。
結局サイドチェンジをさせなかった事でこの後レスターがボールを奪う事に成功。

4×4の2ラインに2トップのハードワークが加わって10人が守備で機能している事がレスターの堅守を支えています。
特に一度も横スライドをせずに相手の攻撃を左サイドだけで抑え込んだ守備がポイント。


しかしもしかするとこれだけでは10人守備の堅さがいまいちピンとこない方もいるかもしれません。

次はサッカーにおいて「横スライド」の有無がどれだけチームの守備力に影響するかという事がよく分かる例を見ていきましょう。
駄目な守備の見本として今季のRマドリーの守備を取り上げるのでレスターの守備との比較で見ていくと面白いかと思います。

【Rマドリーの揺さぶられる守備】
ヴォルフ1
試合はCLヴォルフスブルク戦から。
右から左へ攻めるヴォルフスブルクに対してのマドリーの守備を見ていきます。
局面は先ほどのレスターの展開と一緒でSBからボランチがボールを受けたところですがCFのベンゼマは横で見ているだけです。

これだと当然ボランチが楽に前を向けるのでまずは1回目のサイドチェンジでボールは逆サイドへ


ヴォルフ2
この横パスの間にRマドリーは何とか自陣で4×3の2ラインを形成。

この試合のマドリーの布陣は4-3-3なので4×3のブロックが基本になります。


ヴォルフ3
しかしモドリッチの守備力では仕掛けられた時に無力過ぎるのでここでも楽にカットインを許すと
カゼミーロはかろうじてカバーに入って中を閉めていますが横のクロースは棒立ち

したがって逆サイドへのパスコースが全く切れていません。
ボールは再び右サイドへ-


ヴォルフ4
守る側からすると横の揺さぶりでスライドが繰り返されると何がキツイって
視野がボールの動きを追うのに手一杯でマークを捕まえるのが難しく、
かと言って逆サイドのボールには必ず1枚はアプローチしないといけないので段々とブロックに隙間が出来てしまう事。

↑の場面でも注目して欲しいのはマドリーのDF陣が全員ボールの動きを追ってボールウォッチャーになっています。
しかもSBのマルセロがアプローチに出て行った後の中途半端なスライドのせいでCBとCBの間に恰好のスペースが。
これをボールウォッチャーになっているCBの背後から前を取るのはさほど難しい事ではありません。


ヴォルフ5
アッーー!!


一連の攻撃を遡るとボールが右⇒左⇒右⇒左でGOALという流れですが、
横の揺さぶりがどれだけ守備の強度に影響するかというのがよく分かる場面だったと思います。



<「7人守備」と「10人守備」の二極化>
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一方、アトレティコの守備はもっと割り切って2トップを守備ブロックに組み込んでいます。
相手が自陣で持っている時にチャンスと見れば前プレをかける一方、
奪うのが難しいと判断すればすぐさま自陣に撤退して10人で強固な守備ブロックを形成。

【アトレチコの自陣撤退10人ブロック】
アトレ442
自陣ゴール前で鬼の4-4-2!
2トップが相手の中盤にファーストプレスをかけるのでDFはおろかボランチを引きずり出すのさえ一苦労する完全リトリートブロック。

これ崩せるチームいるの・・・?(笑)


ブロックの堅さはイコール密度と言い変えてもいいので理論上、フィールドプレイヤー10人のサッカーではこれが最強です。

そして、これと対極を成すのが今季の「MSNバルサ」。
(通称ウイイレサッカー)

ではブロック守備における密度の重要さを検証する為に
実際の試合からアトレティコの対極にいるバルサの「7人守備」を検証してみましょう。


【バルサの貴族守備】
バル433-1
試合はCLのアトレチコ戦から。
局面は自陣でブロック・・・・らしきものを作っているバルサ。

マドリーと同じく4-3-3・・・のようなものを形成していますがMとSとNはどちらかというと傍観者と言った方が近いでしょう。
中盤を3枚で形成する4-3-3のウイークは横幅68Mを3枚だとスライドしきれずに逆サイドが空いてしまう・・・というのが定説ですが、このシーンだともはや真ん中がズコーッと空いてしまっとりますがな。
(普通はラキティッチとメッシの間のスペースが泣き所になる)

要するにアトレチコの4-4-2と比べてブロックの強度(密度)が偽装建築ばりにスッカスカやないか!という話。


バルサ433-2
当然アトレチコがこのスペースを見逃すはずもなく。
ここのタテパスを入れられたら対応するのはCBしかいません。⇒ピケ突撃


バルサ433-3
アッーーー!!
(本日二度目)

角度を変えてもう一度


バルサ433-4
ブロック守備の弱点は一つの小さな穴が最終的に大きな穴となって失点につながりうるという事。
(バルサキラーの王子にこれだけのスペース与えちゃったらね・・・)

3トップが守備をしない

中盤のスライド負担倍増

スライドが甘くなって中盤に穴が開く

穴を塞ぐ為にCB突撃

最終ラインに穴が開く


という構図ですね。

故に守備の密度が重要で時代の流れが「10人守備」を生んだのは必然としても
一方でバルサのようなタレントを抱えるチームは「7人守備」というまるで貴族のような守備を謳歌しているのが格差時代の実情です。
(それでもバルサやマドリーは「肉を切らせて骨を断つ」カウンター合戦に持ち込めば決定力の差がものをいって年間収支で大幅プラスというリア充っぷり)


<『持たざる者達』の生存戦略>

このように平面的な戦術論で彼らのスキームを探っていくと、ともすればみんなが頑張っているだけで特段凄い事をしている訳ではないとも捉えられてしまうのですが
もう一つ違った側面で彼らのとった戦術を考えていくと非常に合理的である事も分かります。

その視点とは「経済的」な側面で、言うまでも無くレスターはプレミアリーグの中でも予算の限られた『持たざる者』ですが
彼らのような弱者がアップセットを起こせるようなチーム編成とは何か?を考えてみると一つの戦略が浮かび上がってきます。

ポイントはどこで予算を抑えて、どこに投資するか?


【DF】
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まずDF陣の編成。
昨今「ハイライン&ハイプレス」戦術がトレンドとなり、それに合わせて「攻撃の起点となるCB」の市場価値がますます高まっていく中、同じ土俵で選手獲得競争をしていては勝ち目は100%ありません。

そこでCBには「ハイライン」と「攻撃の起点」を捨てる事でスピードが無く足元の弱いCBであれば比較的安値で取って来る事が可能。
ターゲットは時代に取り残された昔堅気の「不器用だけど跳ね返す仕事に専念させたら無敵」というストッパータイプだったらどうでしょうか?

もし生まれた時代が違えば、例えば90年代までであれば一線級で戦えたはずの「忘れられたストッパー」はこの時代にも確実にいます。
プレミアで一度は失格の烙印を押されたフートやアトレチコのゴディンがこのタイプなのは決して偶然ではありません。

過去、ビラスボアスがチェルシーで、ロジャースがリバプールで近代的なサッカーを実現しようと試みたものの、
手駒のCBが前時代タイプだった為に無理に上げたラインの裏を突かれ、ビルドアップでは自滅し、散々たる結果だったのは記憶に新しいところ。

しかしレスターやアトレチコは持ち駒に合わせた戦術をとれるので、
「だったらラインも上げずに、無理して繋がなくてもええやん」という割り切りが可能。


SBも攻撃力を売りにした点に絡める攻撃的SBは人気銘柄なので、
ハードワークと安定感が売りのどちらかと言うと地味なSBが理想。
元々リスクを冒さない4バックがチーム戦術になるのでニーズとも合致します。

フェリペルイスが今季チェルシーとアトレティコで見せた輝きの違いを見れば要は適材適所っていう事ですな。


【MF】
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ボランチは「ボールを持っている時」に仕事をする司令塔タイプが市場の主役なので
「ボールを持っていない時」に仕事をするファイタータイプを並べます。

その意味でカンテは理想的ですがフランスサッカーは元々マケレレを筆頭に
この手のタイプをボランチに置くのが古くからの文化として定着しているので
「無名のマケレレ」を探すという意味ではスカウティング的にも正解です。
(マチュイーディ、エッシェン、ディアラの系譜)

そして現にマケレレを過小評価していた世界的なクラブが過去あったように(尚、いまだに反省はしてない模様)
この手のタイプは実際の価値より市場価格が低くなっているのも魅力。


【ボールの運び屋(SH&WG)】
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実はここがこの戦術のキーポジションになります。
10人の撤退守備戦術における最大の弱点はボールの回収地点が低くなるという事。
仮に自陣でボールが奪えても相手ゴールまでボールを運べなければ攻撃が成立しないというジレンマが解消出来ず
多くの「持たざるクラブ」がただベタ引きするだけのジリ貧サッカーに陥ってしまうのです。

レスターとアトレティコがその点、他と一線を画すのはここに一点集中の投資を行い
長い距離を単独でボールを運べるタレントを擁している事。
レスターならマフレズであり、アトレティコならグリーズマンやカラスコ、元アルダの役割ですね。

移籍市場でのポイントは多少戦術的には荒削りでも「個でサッカーをするタイプ」で構わないという割り切りが出来る点です。
攻撃に余計な人数をかけて失った時のリスクを冒したくないので、個で仕掛けてくれるのはチームの戦術的なニーズとも合致するという訳ですな。
仮に3回に2回失っても、はなからカウンターに人数を投下していないのでまた自陣で跳ね返せばいいという割り切りが弱者の強みと言えるでしょう。


【点取り屋(FW)】
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多くのクラブが最も大金をつぎこむストライカーにはそれほどお金をかける必要はありません。
というより・・・かけようがないのが現実です。

どういう事かと言うと「得点」というハッキリした指標に対し有能な選手はすでに適正な市場価値がついているので
「持たざるクラブ」はどっちにしろ獲れないという現実がある訳で。

なのでここはもう無名の掘り出し物を発掘してきて自前でブレイクさせるしかないというのが
ヴァーディ、ジエゴコスタらの例でもよく分かると思います。

クラブのスカウト力とある程度の「運」も必要なのは致し方ないとして
ブレイクするとすぐに引っこ抜かれるのが悩みどころ。


今後サッカー界でもますます広がっていくであろう「格差時代」の中、
時代のトレンドと敢えて逆をいく事で戦力補強でも市場価値を逆手に取り
たくましく強者と渡り合う彼らの「生存戦略」をそこに見た思いです。








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