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ドイツ優勝はフットボールの勝利 ~W杯決勝ドイツ×アルゼンチン~

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<ドイツ優勝はフットボールの勝利 ~W杯決勝 ドイツ×アルゼンチン~

いや~終わっちゃいましたねW杯。

意外な伏兵の躍進やエース不在と同時に衝撃の惨敗で大会を去ったブラジル、
攻守分断のアルゼンチンに5バックのオランダと色々トピックはありましたが最後に優勝したのがドイツというのは
フットボールの未来にとってもよい出来事だったのではないでしょうか。

では今回はこのW杯決勝をマッチレビューで振り返ってみたいと思います。


<トータルフットボール×キングダムフットボール>
final-sutamen2.jpg


打倒王者スペインを目標にスペイン化を進めてきたレーブ政権化のドイツは
その本家グアルディオラがバイエルンの指揮官となった事である意味レーブとペップによる
トータルフットボールの合作のようなチーム。

片やアルゼンチンはメッシという個人の才能を最大限に活かす事から逆算して作られた王様の為のチーム。
すなわちキングダムフットボールですね。

ドイツのスタメンを見ていくと本来ラームをアンカーに置いてクロースとシュバインシュタイガーで組ませる事で
このサッカーに一番重要な中盤をそのままバイエルンメソッドで埋められるのが当然ベスト。

しかし、現実には両SBにこれといった駒がいないのでラームを本職の右SBで起用し、
左はCBのヘヴェテスを持ってくる事でラームが上がった際にCB3枚の3バックが敷けるという割り切った人選。
勿論、この鈍足3バックがあれだけ高いラインを敷けるのは怪物ノイアーのお陰ですけどね(^^;

加えて中盤から前は流動的なサッカーが出来る人材を集めたものの、結局エースはクローゼっていうところにドイツらしい名残りを感じさせるではないか。


対するアルゼンチンはアグエロとディマリアの状態が充分ではなくベンチスタートになった事で
ハッキリと「王様メッシと10人の労働者」という構図になりました。

王様とお付きのイグアインは守備免除の完全前残りで8人で守って2人で攻める攻守分業サッカーの清々しい事。

まあ、こういう飛び抜けた才能がいるチームには往々にして起こりがちなんですが、
思い返してみればマラドーナがいた頃のアルゼンチンも8人で守ってマラドーナ+バルダーノ(86)かマラドーナ+カニーヒア(90)だったしな…と(^^;

それでW杯ファイナルに2回辿り着いた訳ですし、3回目は「メッシ+イグアイン」であのトロフィーを掲げるってのもあながちない話ではないですよね(笑)


<バイタルエリアを巡る攻防>

試合は予想通りドイツがボールと主導権を握ってアルゼンチンが受ける形でスタート。
アルゼンチンの守備は4-4-2の3ラインというより4-4-0-2とも言える超間延び布陣なので
4-4の2ラインの前で常にシュバインシュタイガー、クロースがフリーでボールを持てるという異常な展開で試合は進んでいきます。

ペップイズム全開のドイツはこの2ラインの間(つまりバイタル)で間受けして中央突破から崩す攻撃がしたいチームなんですが、そんな事は百も承知のアルゼンチンも4-4の2ラインを中絞りにして入ってきたボールを囲い込んで奪い⇒後はメッシさんお願いしやす!とかえってやりたい事がハッキリした感も。

【4-4-0-2 アルゼンチンの狙い(守備)】
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アルゼンチンの4-4ブロックは外は捨てて中絞りの構え。
左SHのペレスも実質ボランチの役割なので中盤は3センター+SH(ラベッシ)に近い感じ。

ペナルティ手前にゾーンを敷いて横パスは静観するが、中に入ってくる敵は排除するぞ…と。

この場面ではボールを持ったクロースに対してプレーの選択肢を制限する為にまずビグリアがプレッシャーをかけ、残りは様子見の構え。


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クロースはこれをかわそうと中へドリブルで進入すると・・・


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EMERGENCY! 侵入者を排除シマス!!

中へ入って来る侵入者へはマスケラーノ、ペレス、ビグリアの3ボランチが囲い込んで瞬殺。
マスケラーノを中心としたこの3枚の殺傷能力は半端ないぞ…!(笑)


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ボールを奪ったら3バックで残っているドイツDFラインに対してメッシ、イグアインの2トップでカウンター発動!

特に左のフンメルスのところがメッシとミスマッチになっているので狙い目だと思います先生!!


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スピード勝負では全く話にならないフンメルスをメッシが二度三度置き去りにしてカウンターからチャンスを量産。
この割り切った狙いがアルゼンチンの作戦や…!!

まあ、ハッキリ言ってリケルメもベロンもアイマールもいない現在の構成力を考えたら中盤をパスで繋いで崩すのは無理なんですよね。
だからサベーラ監督からするとしっかりフットボールをして繋いで崩そうと出てきてくれるドイツみたいな相手はむしろ大歓迎で
ある意味「お前等もドン引き分業かYO・・・・!!」だった準決勝オランダの方がやりづらかったはず。


ところがこのアルゼンチンの狙いを察知したドイツもすかさず攻撃ルートを変えて中⇒中⇒中のルートから一度外のSBへ迂回させた中⇒外⇒中へ変更。

試合が動き始めます。


【攻撃ルートを変更したドイツ】
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局面は左から右へ攻めるドイツのビルドアップで、一度中に入れてまず一番厄介な排除者マスケラーノを食いつかせておく


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その上で大外のSB(ラーム)にボールを迂回させて・・・・


baitaru0718-3.jpg

狙い通り空けたバイタルでエジルの間受けやで!!

だがだがアルゼンチンもこれを放置しておく訳はない。
ドイツのルートが変更された事を察知した排除者マスケラーノはこれにすぐさま反応。


【マスケラーノの対応】
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局面は同じくドイツのビルドアップから。
ここではあまりシュバへ食いつかないで縦のコースだけ切っているマスケラーノ。

シュバは大外のSBラームへ展開。


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・・・で、ここでも同様に「外から中へ」のドイツ


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マスケラーノ「甘いわっ!!」

ん~、もう読み切って対応してきましたね・・・(^^;

バイタルエリアを巡る攻防、レベル高過ぎwwww


<間延び上等!アルゼンチンが決勝までこれた理由>
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そもそも何故こんな前時代的な攻守分断サッカーのアルゼンチンが決勝まで勝ち上がってこれたのでしょうか?

大会前はチームのアキレス腱と言われていたDF陣。
仮にアルゼンチンがドイツのようにDFラインを押し上げてコンパクトなサッカーを志向していたらおそらく大量失点で大会を去っていた事でしょう。
何故ならアルゼンチンのDFのクオリティでは横68M縦54Mの自陣全てをカバーする事は到底不可能だからです。

サベージ監督は手持ちのDF陣のクオリティを分かった上で
オールコートで相手とガップリ四つに組み合う戦いは諦め、ゴール前の局地戦で守る考え方にシフトしたのだと思います。

4×4のブロックを自陣前に敷いて中盤を捨て、中絞りにする事で両サイドも捨てました。
更に2トップは前残りにする事でコンパクトさも捨て、意図的に前線とDFが間延びする泥仕合に持ち込むのが彼らの狙いです。
そういう試合をさせたら個で守れるマスケラーノ、個で得点が取れるメッシ要するアルゼンチンに勝つのは容易ではありませんからね。

そして大会随一のモダンなサッカーを志向していたドイツが攻めあぐねた理由もまさにここにあります。


【アルゼンチンの局地戦 ハンドボールディフェンス】
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これがこの試合、アルゼンチンの基本的な守り方です。

中盤でボールを持つクロース、シュバインシュタイガーは捨てて自陣PA前に極めてコンパクトな4×4のブロックを敷き人海戦術で守ります。

ドイツはこの2ラインの間にボールを入れて崩す事を信条としてきたチームなので・・・


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意地でもバイタルへタテパスを入れてきますが、ミュラーの間受けレベルと小回り性能では
さすがにアルゼンチンの人海戦術の方が上回ります。

アルゼンチンのDF陣(特にCB)はスピードは無いのでラインは上げられませんが
入ってきたボールを潰す対人の強さは「さすがは南米」
しかもアンカーにはマスケラーノとかいう1人でボランチ、SB、CBの3役をこなしてしまう化け物までいますから。

この「中盤は捨ててゴール前の人海戦術で守る」やり方はどちらかというとハンドボールに近い考え方ですよね。
手でボールが扱えるハンドボールでは中盤でのインターセプトという概念が存在しないも同義なので
オールコートで守備をするのではなくゴール前にゾーンの人垣を作って守るんですが
ティキタカメソッドを身につけたドイツ代表はアルゼンチンからすれば「どうせ前から取りに行ったって取れっこない」相手。
ある意味、ハンドボールみたいなもんです。

だったら「待ちガイル」(えっ?20代には通用しないネタ?ww)で相手が来るのを待ち伏せたらいいってのがサベーラの考え方だったんじゃないでしょうか。
ある意味、コレがハマって決勝まで来ちゃったのがアルゼンチン。

そう、意図的に試合を間延びさせたらアルゼンチンのペースなのです。


<流動性が消えたドイツ>
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一方のドイツのこれまでの歩みですが、当初前線はミュラー、ゲッツェ、エジルの3トップで流動性溢れる攻撃を展開していました。

しかしスーパーサブの切り札として使ってきたクローゼの存在感が次第に光り始め
「やっぱドイツのエースはこの男やろ」という雰囲気になってきた頃からクローゼをCFに置いた3トップに変更されていきます。

これで、ゴール前のいるべきところにいる決定力は増した分、前線の流動性という点ではやや落ちた格好でしたが
この決勝戦は前半の30分にクラマーが負傷退場を余儀なくされた為、レーブはシュールレを投入し、布陣を4-2-3-1へ変更。

これで1トップのクローゼ、左SHのシュールレはガチガチの本職なので定位置固定。
更にこれまでサイドから中に入ったりと出入りがあったエジルが待望のトップ下に移った事でこちらもポジションは固定化。
結果、右SHのミュラーも他の3人が動かないので入り込むスペースがなく、半ば強制的に固定化されてしまいます。

こうなるとドイツの魅力でもあった流動性溢れる攻撃が硬直化し、アルゼンチンを守りやすくさせてしまったのも苦戦の一因と見ます。


<レーブの4×4ブロック崩し>

話を試合に戻しましょう。
中⇒外⇒中の攻撃ルートも次第にアルゼンチンに読まれ始めたドイツ。

レーブの次なる手はアルゼンチンの中絞り4×4ブロックそのものを崩しにかかる事。
現状、ドイツが攻めあぐねているこの試合の噛み合わせをピッチ全体像で見るとこんな感じ↓

【ドイツボール保持時の両チーム布陣図】
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アルゼンチンの2トップに3枚DFを残しているドイツは
アルゼンチンの4×4ブロックの手前まではクロース、シュバインシュタイガーがどフリーでボールを持てる状態。

代わりに3トップがアルゼンチンのブロックの中にすっぽり納まって、ここへ外からいくらボールを入れても8対3の数的不利なのでいくらなんでも苦しいものがあります。

そこでレーブはアルゼンチンが放置プレーにしている大外のSBをもう一つ高い位置まで上げて
アルゼンチンのSBにケアせざるを得ない状況を作り出そうと画策。

【SBを更に高い位置まで上げる】
4-4buroku2.jpg

具体的には「世界ナンバー1右SB」のラームをアルゼンチンのSHの背中を取る位置まで上げると
さすがにラームをどフリーのまま即ゴール前へクロスを上げられる状態で放置しておく訳にはいかなくなったアルゼンチン。

レーブの狙い通り、SBロホがラームのケアに釣り出されると
空いたスペースをケアする為にマスケラーノがカバーに入る形へ。

これで4×4のブロックから5×3のブロックになり中へパスが通しやすくなります。
(強制的にアルゼンチンを5バック化させる)

では実際の試合からこれで何が起きたかを確認していきましょう。

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局面はまさに5バック化させられているアルゼンチンのブロックに
「前の壁が3枚になって中へ通しやすくなったゼ!」と言わんばかりのシュバインシュタイガーという構図。
厄介なマスケラーノがSBのカバーでDFラインに入っているからですね。


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ドイツは中のエジルに当ててクロースへボールを落とす。

この後のマスケラーノの動きにご注目。


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クロースから再び中へクサビを入れると受け手のミュラー、エジルにはアルゼンチンのマスケラーノとガライがDFラインから飛び出して対応。

ドイツの間受け攻撃は相手の守備がラインを維持してくれないとそもそもラインとラインの「間」が生まれないので機能しません。

これが南米特有の【ゾーンで待ち構えて入って来るボールにはマンツー気味に人を捕まえに行く守備】ですね。
まあ、そもそも「ゾーンディフェンス」っていうのは各自の持ち場を区切って、自分のゾーンに入ってきた敵を捕まえる守備ですからアルゼンチンが特殊って話でもないんですが。

ただ、欧州だとどちらかと言うともう少しスマートに2ラインを維持して守ろうとするので
瞬間、間受けの為のスペース(文字通り「間」)が生まれるものなんですが
これだけ人にガップリ寄せられると間受けは出来ません。

欧州のチームが「守りに徹した南米勢」に苦戦するのはだいたいこのパターンなんですよね。

まあ、この守り方もDFラインからCBが躊躇無く飛び出していく分、
空いたスペースを第三者に使われたりするリスクも内包しているのでどっちが良くてどっちが悪いって話でもないんですが。
(決勝点でこの守備の負の面が出るのは後述)

ただフリックパスや逆を取るトラップで外されそうになったら最悪プロフェッショナルファウルで潰すっていうのも
彼ら南米特有のマリーシアでなかなか上手くリスク管理されているんですよね(^^;

試合では↑ここでボールを失ったドイツ。


5baku0718-4.jpg
ハイ!ココがドイツが苦戦してる理由その②です。

ドイツの中央を厚く攻める攻撃はボールを失った際に攻撃の厚みをそのまま守備の囲い込みとして投入⇒すぐさまボール奪取⇒波状攻撃がその狙いです。

ここでもボールを失った瞬間にすぐさまラベッシを挟んでボール奪取を狙います。


5baku0718-5.jpg
・・・が、ラベッシ特急止まらず・・・!!

ココなんですよ、ドイツが苦戦している要因は。

アルゼンチンはこれだけドン引きの守備をしてるので当然の帰結としてボール奪取位置はめちゃくちゃ低いんです。
なもんで奪ったボールもドイツの包囲網にあうんですが、ここでボールを失わずにドリブルで運べる個の力があるんですよねー。
特に守備時は半分ボランチとしての仕事もこなしているペレスやラベッシはマイボールになった瞬間、1人で20~30Mボールを運べるキープ力があります。

お陰でドイツは一度アルゼンチン陣内でボールを失うとなかなか波状攻撃が出来ずにいたんですね。
これが試合を通して攻めあぐねた大きな要因だったと見ます。


<我こそはFW充!3トップで勝負を賭けたサベーラ>
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0-0で折り返したハーフタイム、アルゼンチンのサベーラ監督が動きます。
ラベッシに代えてアグエロを投入し4-3-3の3トップへ。

まさかの3枚前残しで守備は4×3ブロック。勝負を決めにきました。
とにかくアルゼンチンにとってドイツの間受け隊は問題じゃありません。入ってきたら潰せますから。
厄介なのはドイツのSBが高い位置まで上がってきた時。

という事もあって2トップだとドイツは後ろに3枚残しで1枚SBを上げてきちゃうから
3トップにすればドイツの両SBに蓋を出来るだろう・・・という算段もあったはずです。

その上で守ってるだけでは優勝出来ませんから
どこかでマークの噛み合わせのズレを生もうという攻撃面での狙いも含んだ4-3-3だったのではないかと。

具体的にはどういう事かと言うと・・・

【4-3-3に変更して噛み合わせをズラす】
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アルゼンチンから見ると3トップにしてドイツのSBには蓋をしてあるので
クロース、シュバインシュタイガーの2ボランチの両脇でペレスとビグリアがフリーになれるという算段です。

試合では早速、後半開始早々の46分に狙い通りのシーンを作っていました。

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局面は後半、左から右へと攻めるアルゼンチンのビルドアップの場面。

ボールを持ったビグリアにはトップ下のエジルが寄せてくるのでペレスがフリーになるというところ


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ボールを受けたペレスにはラームが出ていきたいけれど距離がある上に
背後はアグエロ、メッシ、イグアインの3トップが控えているので行き切れないんですよね。

そうこうしている内にマーク役が不在でフリーなペレスから裏へ抜けるメッシへスルーパス


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狙い通りメッシが抜け出てノイアーと1対1や!
(シュートは惜しくも枠を外れる)

この変更によって後半立ち上がりの15分ぐらいまではアルゼンチンが得点機を量産していたので
出来ればここで勝負を決めたかったはず。

その後はドイツに対応されてしまったのと
なにより投入したアグエロのコンディションが悪過ぎて全く脅威にならなかった事。

ディマリアがいれば・・・というのが本音ですが、だったら前半ボールを運ぶ際に
ラベッシ無双が利いていたので下げるんだったら別の選手でもよかったような・・・・?


<肉を切らせて骨を断つ>

ドイツからすると当初相手のシステム変更にとまどってSBが上がれない⇒攻撃の横幅が生まれない⇒アルゼンチンが4×3枚の中絞りで充分対応出来ちゃう という悪循環に陥っていました。

これを察知したレーヴはすぐさまアルゼンチンの4-3-3に対応。
特に右WGのイグアインは全く守備をしないので左SBのヘヴェテスを下げっぱなしの守備専にするのではなく
思い切って高い位置まで上げて左サイドで攻撃を組み立てるよう変更してきました。

【後半45~60分 ドイツのプレイヤーマップ】攻撃方向⇒doimapu-final.jpg
↑明らかに左SBのヘヴェテスを高い位置に上げて攻撃の起点としている事がデータからもハッキリと分かる。

実際の試合の流れで確認するとこんな感じ↓

【4-3-3にも打ち合い上等!】
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局面は右から左へ攻めるドイツのビルドアップ。
メッシは守備時、目の前をボールが通過しても静観なのでクロースはノープレッシャーでボールを運べる。

この間にSBヘヴェテスを高い位置まで上げておきシュールレと組んでドイツは左サイドでトライアングルを形成。
3トップが前残りのアルゼンチンはサイドの守備がSB+CHの2枚なので必然的に3対2の数的優位が作れます。


ger-saido-2.jpg

高い位置をとったSBに相手のSBを食いつかせておいて、その裏をSHシュールレが取るというサイド攻撃。

ドイツはボールを持てばほぼサイドでこの深さまで自動的にボールが運べるのですが
最後の最後でマスケラーノの鬼カバーやCBの頑張りもあってなかなかゴールを割る事が出来ません


【後半45~75分 アルゼンチン プレイヤーマップ】arugefinal.jpg
この時間帯はアルゼンチンの右サイドにご注目。
前残りのイグアインのサイドをドイツが徹底的に突いた事でCBのデミチェリスが完全にサイドまで引っ張られている。
(ガライとのCB同士の距離感を見れば明らか)

ドイツにしても逆にこの攻めでボールを失うとSBを上げた裏のスペースにイグアインが入り込んでくるのでカウンターから何度か危ない場面も。
アルゼンチンもこれが分かっていて「肉を切らせて骨を断つ」覚悟で3トップを前残りにしているし
ドイツだってSBを上げるリスクを分かった上で勝負を決めにきているのです。

お互いがリスクとリターンを天秤にかけて「打ち合い上等!」と狙いが一致した後半~延長戦はある意味オープンなカウンター合戦となっていきます。

その裏で繰り広げられた両指揮官の指し手争いも見応え充分。

まずは後半30分にパラシオを投入したアルゼンチンは
ドイツが自分達の右サイドを攻めてくるならばとメッシを右に回し、ヘヴェテスの裏で待機させるカウンター要員を
イグアインからメッシにスイッチさせるという鬼畜な一手。

【後半75~90分 アルゼンチン プレイヤーマップ】
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メッシを右に持ってきて中央にアグエロ、左にパラシオの並びへスイッチ。

するとすかさずレーブもメッシを残されたらリスクとリターンの収支が合わないと判断したのか
ヘヴェテスを上げるのを止めて、代わりに今度は右サイドのラームへと攻撃の起点を移していきます。

【後半75~90分 ドイツ プレイヤーマップ】
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ヘヴェテスを下げて守備専に残し、今度はラームを上げてエジルとのコンビで右サイドからの攻略を狙う。

延長戦はこの流れで主戦場のサイドが逆サイドへ移った事により右サイドのメッシがなかなかボールに絡めなくなってしまいました。
ボールを欲しがるメッシは次第に低い位置まで降りていくようになります。

【延長前半90~105分 アルゼンチン プレイヤーマップ】
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パラシオ、アグエロとの距離感を考えても、もはや3トップは崩れているも同然。
メッシがこの位置取りだとドイツからしても怖さは無いんですよね。

さて、両軍ベンチが空中戦を繰り広げる中、ピッチ上に目を戻すと
アルゼンチンはマスケラーノが、ドイツはシュバインシュタイガーが抜群のカバーと危機察知能力を見せて最後失点は許さずにPK戦濃厚となってきました。


<勝負を決めた0トップ采配>
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延長戦突入に向けてレーヴがクローゼに代えて投入したゲッツェ。
延長前半は中央にミュラー、左シュールレ、右ゲッツェの並びの3トップでしたが
これだとミュラーが常にゴール前にいるメリットはあるんですが前線の流動性という意味では今ひとつ。

そこでレーヴが延長後半を迎えるハーフタイムに勝負を賭けます。
これまで散々温めてきた「0トップ」布陣をここでぶつけてきました。
打倒スペインに向けて6年の歳月をかけて注入してきたスペインメソッドの総仕上げが今ここに・・・!!

具体的には3トップの中央にゲッツェを置いたCF0枚システムですね。
ミュラーは右に移されるとそこから斜めにゴール前へ入って行く動きが得意なので自然と流動性も生まれる…と。

そして待望の決勝点は0トップが見事にハマって生まれたものでした。

【ドイツの決勝点を検証】
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局面は左から右へ攻めるドイツの攻撃。
この場面では左のシュールレがボールを持った際にゲッツェがボールサイドへ流れ、空いた中央へミュラーが入り込んでいます。

これがゲッツェを中央に置いた0トップが持つ流動性ですね。


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なおもシュールレがドリブルでボールを運ぶと前線ではミュラーが更に流れて
今度は空いた中央にゲッツェが入って来る旋回の動き。

アルゼンチンはCBのデミチェリスが逆サイドから入り込んできたミュラーを抑える為に(入って来た人を捕まえる守備)釣り出されています。


gete0720-3.jpg

シュールレがサイドで抜きに入った瞬間、ミュラーに食いついたデミチェリスの背後をゲッツェが取った時点で勝負ありました。

シュールレが折り返したボールに中でフリーになっていたゲッツェが合わせてタイムアップ。

アルゼンチンの人に食いつく守備には流動性が高い0トップ戦術がモロにハマりましたね。


<フットボールの勝利であり 育成こそが優勝へ通ずる道>
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結果的には今大会で最もモダンなサッカーをしていたドイツの順当な優勝だったと見ます。

脆弱な戦力とロッベンという資源を最大限に活かした5バックのオレンジ軍団はPKに勝負を委ねるしかなかったし、
攻撃は若きクラッキ頼みでCFは置物、中盤以下を労働者で固めたカナリアは翼をもがれています。

メッシという天才から逆算してチームを組み上げざるを得なかったアルゼンチンの攻守分断サッカーは決勝Tを3試合連続延長戦という苦難の道へ迷い込み、キックオフから散歩を続けた天才は準決、決勝と240分間で1ゴールも演出出来ませんでした。これではチームとして収支が合っていません。

その意味でドイツの優勝は「フットボールの勝利」であると言えるのではないでしょうか。

このドイツにしたって優勝までの道のりは決して楽なものではなく、
EURO2004の惨敗を機に国を挙げて育成の改革に乗り出した成果が10年の歳月を経てようやく実を結んだものです。

思えば98年、初優勝のフランスもかの有名なクレーヌフォンテーヌに作られた国立のユースアカデミーが完成したのが1989年ですから優勝まで約10年。
スペインは「予選だけ無敵艦隊()」と揶揄され、長年国際舞台でのコンプレックスに悩んでいましたが
カシージャス、シャビらの若い世代がワールドユースで優勝したのが99年なので、こちらも10年の後にW杯のトロフィーを掲げている事になります。

やはりW杯優勝へ通ずる道は一番遠回りなように見えて「育成」こそが最大の近道なのです。

もし、日本が今回の失敗を糧にその成果を出すとするならば2022年カタール大会あたりから。
既にバルセロナやRマドリーのカンテラに日本人がいる時代ですから
もしかするとその頃にはクラシコで日本人対決・・・・なんて夢物語も?

まあ、本気で世界の8強を狙うならそれが当たり前の時代になっていないと厳しいとも言えますが-





*そう言えば開幕前、オランダを壮大にdisってませんでしたっけ?と思った貴方はクリック!↓

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非公開コメント

No title

まさしく「フットボールの勝利」ですね。
ドイツに特別な思い入れは有りませんがドイツが勝って良かったと思っています。

No title

ドイツもノイアーとかいう新しいポジションを創造してしまったGK無しには
あのようなサッカーでの優勝は難しかったと思います。アルジェリア戦とか
本当に危なかったですもん。

スペインも前回の決勝で快速ハゲをかろうじてまだあの頃は冴えてたカシージャスがギリギリで阻止してましたけど、ほんとギリギリのところで何とかしてくれる
GKが居るか居ないか本当に大きいですね。

あとは、日本はやっぱセットプレー(空中戦)で得点できないとなかなか上に行くのは難しいではないかと。堅守同志の戦いになると、中々流れから崩すのは難しくなりますし、セルヒオラモスのような空中戦無双してくれる選手が居てくれると
デカいと思います。(マンチェスターの某赤いチームが内容が酷くてもでなぜか勝ててしまったりするのもやはりここですよね・・・)

これまたスペインも前の大会で準決勝じゃらしくないCKからプジョルのヘッドで
勝利しましたし、
今年のCL、リーガの優勝決定戦でもつくづくセットプレーで得点できるチームの有利さを感じましたし

No title

ノイアーはリベロだと誰か言ってましたね。MVPにふさわしい存在でした。
でも、ドイツの優勝はワクワクしませんでした・・ホッとしましたけど。

チリのサッカーをもっと観たかったです。対ブラジル戦最高でした!

No title

 ドイツが優勝したという事実は、これからのサッカーにおいて「○○だけ」するプレイヤーやそういう戦術をとるチームは置いていかれることを示唆しているのだと思いました。
(アザールはロナウドやメッシにならないでほしいです。アトレティコ戦とか)


 W杯が終わってさっそくなのですが、チェルシーにセスクが入団しました。店長はこれをどう見ますか?



 あと、今のガイルは待つだけでは勝てません(笑)

 

No title

考察面白く読ませてもらいました、ありがとうございます。

私も10年ほどドイツに住んでいるので、日本に次いで応援していたチームでしたが贔屓目なしに地力が違ったと思います。(いや、贔屓目か?)

そもそもロイスはじめ何人か欠いて大会に臨んでるのに、交替する選手が場違いにならないのが如何に代表の戦術がすみずみまで浸透しているかという証拠だと思います。

守備も1対1からして強い上に実質3バックなのにやたら固く、攻めては相手が中を固めようがドン引きしようが玉砕覚悟で前がかりに来ようが、絶対に形を作って決めてくるのはため息が出ました。強豪という言葉が一番似合うチームだったのではないでしょうか。

育成もそうですし、10年レーヴが指導しているチームの完成度という点でも、地力の違いを見せつけられた印象です。

おっしゃる通り、ドイツにはピッチ外では学ぶことは多いと思いますね。
ピッチ上ではどうするのが良いと思いますか?
私はピッチ上では日本はドイツのモデルは無理だと思います。
シュバイニー、ボアテング、ヘヴェデス、ノイアー、のような化物が揃う日が日本にくるのが想像できません。ドイツ人は平均身長がそもそも180cmですから、その中から足の速いやつ、高く跳べる奴、気持ちの強い奴、頭のいいやつを選んでいけばいいわけです。前提からして違いすぎる。私も素人スポーツですが日本ではぶつかられても特になんともありませんが、ドイツ人と衝突すると縦に回転することがあります(笑)。例え背が同じでも体の厚みと骨格が全然違いますから、ここで勝負をしたら100%、負けます。
日本人から無理して同じようにデカイ奴を揃えようとすれば恐らく他のクオリティが致命的に落ちるでしょう。
そして日本のフィジカルエリートは他のスポーツに流れているのではないでしょうか。野球や柔道にはフィジカルエリートがゴロゴロいるように見えますが、彼らがサッカーに集まる日もすぐには来ないでしょう。

日本のピッチ上での指針は、ザックが4年間やってきた路線が基本、私は正解だと思います。一番日本人の強みを活かし、弱みをカバーするやり方だと思いますね。あれがロジカルな帰結だと思います。あとはここから少しずつ引き出しと対応力、経験を増やしていって欲しいですね。

個人的には、今後のサッカーのためにも?ドイツの優勝は嬉しかったですが、MVPメッシはおいおい(^^;; でした。
ドイツは2002年から育成を一新して、その年代が今の主力…という記事がありました。日本の場合も育成を考えるべきでしょうが、協会内部から変える必要がありそうですね(^^;;
いつになるのやら…

<追記>
噛みつき野郎は結局バルサに引き抜かれ…複雑な気分です。
前線はロイス、グリーズマン、ディマリアのうち誰かとって欲しいと切に願う今日この頃…。先に取りすぎたか…。

No title

決定機で言うならアルゼンチンもドイツもそれ程の差は無かった。 ディマリア抜きであそこまで決定機を作ったのは驚いた。 

アルゼンチンは良いチームだったと思う。 だけどMFが1人どうしても補えなかった。 マラドーナの亡霊がメッシにトップ下を強いてしまったのが敗因なんじゃないかな。

私的にはマスチェラーノの働きが2006年のイタリアのカンナバーロにダブって見えてたのでカップを取らせてあげたかった。

No title

「育成」の勝利なら、「戦術」の敗退なのでは?笑

裕福な国の国を上げてのプロジェクトで完成したチームを、天才をようしたいびつな戦術が打ち負かすってのを見てほくそ笑むのがこのブログの主旨では?笑

日本の育成は、プロと大学サッカー、ユースと高校部活とか素晴らしい補間関係だと思う。しかし、ジュニアユースと中学部活、少年サッカーの指導者のレベル差が大きすぎると思います。この辺を解決して欲しいですね。

No title

ぐらっちぇ。

ノイアーがもし今CBやったとしたら、日本代表不動のレギュラーになれるレベルだと思います。(笑)

ドイツは内容も層の厚さも圧倒的でしたね。

でもこういうドイツみたいなフットボールを、独立で打開してしまう怪物が現れるのが、サッカーの面白いところですよね。
4年後、8年後、どんな怪物が現れてるのか!?
そして日本にも怪物が生まれる可能性だってある!?
ドイツの優勝を讃えながらも、優等生に嫉妬してしまう自分がわずかにいます。

店長ありがとう

サッカー観戦初心者ですが
サッカー店長のおかげで
フットボールの奥深さと
面白さに触れられた気が
します。ありがとう!

No title

なんとなく覗いたら、分析がすごすてびっくりした。
こんなに解析してるんですねー。
すごく関心しました。

No title

ドイツ国内の育成やフランス国内の育成と比較して日本の育成を語り始めたのに
最終的な結論が海外の下部組織に丸投げして、期待!とかアホなんじゃないのこの人

No title

ドイツ優勝はフットボールの勝利 と言えるような内容でした?
アルゼンチンの前線が決めきれなかった感じを受けたのですが・・・
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