大会史上に残る激戦  【アジア杯準決勝 日韓戦レビュー】

*2011-01-26更新 (アーカイブ記事)





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<大会史上に残る激戦>



日韓戦、前日の記者会見でザックはこの試合をこんな風に例えた。



「この試合は欧州におけるイタリア×ドイツ、南米におけるブラジル×アルゼンチンのようなものだ」




宿命のライバル、数々の激闘、絶対に負けられない相手 ―



積み重ねてきた歴史だけが作り上げる伝統の重み。



"アジアのクラシコ"と呼ぶに相応しいこの一戦を迎え、

帰りの電車でも


「試合、間に合うかな」 「韓国に勝てるの?」


そんな会話を交わす人々を見かけた。



瞬間最高視聴率で40%を超えるなど、

昨夜は久しぶりに ”日本がfootballに酔いしれた夜" となった。




試合は韓国が日本の良さを引き出し、日本が韓国の力を引き上げる一進一退の攻防。



日本人は「ザックJAPANが持つポテンシャル」を発見し、


韓国人は「韓国サッカーの底力」を再確認したはずだ。




お互いが「勝利への意思」を乗せてプレーする120分は

観る者にチャンネルを変える余地を与えない。


(こんな試合を毎試合見せてくれたら僕らの業界も安泰なんですけどね~ww)



"大会史上に残る激戦"を共に作り上げた韓国には、

勝敗を抜きにして、こんな近くに素晴らしい好敵手がいる幸運を

いちサッカーファンとして感謝せずにはいられない。



<日韓戦 レビュー>


では、試合を検証していきましょう。



試合前、カタール戦を終えて批判の集まっていたFW前田、

痛恨のミスから失点を喫したGK川島のスタメン落ちも一部では囁かれていたが

ザックはこの大一番に不動のスターティングオーダーを送り出す。



この指揮官からの絶大な信頼に

前田はゴール、川島はPK阻止という最高の形で応えた。



ザックのチームマネジメント、人身掌握術の一端が垣間見える隠れた好采配だ。





キックオフと共に、試合は中盤の主導権争いから始まった。



1トップの前田がこの大一番で自らの持ち味を思い出したプレーを見せると

これまで詰まっていた物が一気に流れ出したかのように

日本のパスがスムースに回り始める。



試合前には警戒されていた韓国の右SBチャドゥリは

長友が攻守に渡り 機動力で圧倒。


大型トラックのパワーを軽自動車の小回りで凌駕した。



この長友を軸に香川と本田で作る

日本の左サイドのトライアングルが再三に渡ってチャンスを演出。



今大会で最高の出来を見せた日本代表に対し、

やはり中盤の構成力では劣勢に立たされる韓国代表。



そこで韓国は、すかさず中盤を飛ばしたロングボール主体の攻撃に切り替え、

日本に揺さぶりをかけてくる。





これで微妙に試合の流れが変わり始めると

1本のロングボールから韓国にPKが与えられる。




このブログでは、あくまでピッチ上のプレーと戦術に絞ったレビューでお送りするので、

敢えてここでジャッジングの問題に触れる事はしません。



まあ、このPKによって解説・松木氏のエンジンを一気に点火させる事に成功―



ぐらいに捉えておけばいいんじゃないかと思います(笑)





松木「なんなんだコレは!? なんなんだコレ!? えぇっ・・・!?」





<ザック采配を検証>



思わぬ先制点の献上にも動じる事なく、すぐさま前田のゴールで追いついた日本。



後半は韓国が得意の肉弾戦に持ち込んでプレッシャーを強めてくると

徐々に受けに回らざるを得ないザックJAPAN。



やはり事前の見立て通り、チームの総合力では韓国が一枚上。



そこでザックは運動量の落ちてきた香川に代えて細貝を投入。


中盤を3センターにして守備を強化。

(4-3-3へ布陣を変更)



この辺の一貫した見切りと駒扱いはさすが。





延長では、前半の"疑惑のPK"の帳尻合わせで今度は日本にPKが与えれて勝ち越しに成功。



ここでザックは前田を下げてCB伊野波を投入。


DFを5バックにして前線は岡崎と本田の2トップによる5-3-2へ。



最後の交代枠は足を吊った長谷部を本田拓にパーツチェンジで使い切った。

(布陣はそのまま)



ここで、この采配に集まっている批判

「5バックにした事でベタ引きに」
「本田拓の無用なファウルからのFKによる失点」について言及したい。




まず、「5バックにした事でベタ引きに」について。



延長突入前、ザックはしきりに身振り手振りで「コンパクトに!」を指示していたが、

あの時間帯、すでに極限まで疲労していたピッチ上のイレブンは

”頭では分かっているが身体が動かない”状態に陥っていた。



DFラインもMFラインもなくスクランブル状態で守る日本が

もしあの時、無理にラインを上げようとすれば

それこそバラバラのギャップを突かれて韓国の選手にどフリーで抜け出される危険性がある。



トルシエJAPAN時代のフラット3で何度か喫した事のある失点パターンだが、

この延長後半にそんなバカげた形で失点する事だけは避けねばならない。



もちろん、それでも卓越したライン統率能力を持つCBがいれば話は別だが、

今野と岩政にそれを求めるのは酷というもの。



そこで、限界がきていた今野と岩政を助け、

中央の守備に厚みを持たせる伊野波の投入と5バックへの変更は理に適った一手だと見ます。







もう一点の「本田拓の無用なファウルからの失点」について。



この戦術も組織も効かないカオスな時間帯において、

あの瞬間 「後ろの人数は揃ってるから無理に当たりに行くな」というのは

完全な結果論ではないだろうか?



そもそも他の選手達に限界が来ている時間帯で

「無理をしてでも止めに行く」為に本田拓は投入されている。



それこそ、あそこで当たりに行かず、

結果としてクロスを上げられ失点していたら

「何故、無理してでも止めに行かなかったのか。途中出場で体力もあっただろうに」

と言われていた可能性すらある。




結果的に

戦局を一発で変えるウルトラCの奇手こそ無いが、

非常に理に適った定石を積み上げるザックの采配がこの日も見られたと思う。





<本田圭佑のブレイクスルー>
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最後に、この男の常軌を逸したプレーに触れないわけにはいかないだろう。



この試合に本田のブレイクスルーを見た。



強引な突破や派手なシュートこそ無くなったが


サイドに開いて香川、前田にスペースを空けたかと思えば、


ボランチの位置まで引いてきてのゲームメイク、


と思えばサイドからのクロスにはゴール前に現れて頭で合わせる―




これぞ”トータルフットボールプレイヤー”と形容できる

時代の最先端を行くプレーを披露。



「百聞は一見にしかず」という事で

この大会で本田がどれだけ進化したかを見てもらう為に

初戦のヨルダン戦と昨夜の韓国戦における本田のプレーエリアを見てもらいたい。





【ヨルダン戦 本田のプレーエリア】
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【韓国戦 本田のプレーエリア】
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化け物か コイツはwwww




どうやら本田圭祐というプレイヤーに関して、僕は少々誤解していたようです。



最初、VVVフェンロンで頭角を現した時には、

その見たくれと言動に加え、

それこそイケイケのエゴイストなプレースタイルから


「う~ん・・・ 諸刃の剣か。危うい駒だな」



と見ていたが、

2010W杯では1トップとして献身的なプレーを見せ、



このアジア杯では更に進化して、

香川や前田を活かす為の完全なバランサーとして機能している。




そこで、この本田が持つ抜群のサッカーセンスが発揮された

韓国戦でのシーンを2つ検証してみましょう。




<本田が見せるスペースメイク>


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局面は本田が左サイドに流れた位置からボールを受けようというシーン。


遠藤からのタテパスを感じつつ、

視野の隅で後方から上がってくる長友を確認する本田。


(ミドリで囲ってあるのが長友です。)


マーカーのチャドゥリを中に釣り出す。


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遠藤からのクサビをチャドゥリを釣り出しながら受け、

ダイレクトで遠藤へ戻す。


この何気ないワンツー1回で

長友が上がるスペースを本田が意図的に空けているのが分かる。



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遠藤は突っ立ったまま、

本田から戻されたボールをダイレクトで長友の鼻先へ出してやるだけで

韓国ディフェンスを完全に崩せている。



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裏に抜け出た長友が、これをダイレクトで中へ折り返すと

合わせた岡崎のヘディングシュートは惜しくもポスト直撃!




松木「入った! 入った!」





遠藤→本田→遠藤→長友→岡崎



と全てダイレクトによる崩しは「アジアのバルサ」の名に相応しい攻撃。



遠藤がシャビ、本田がビジャ、長友をアビダルに置き換えても

バルサの左サイドで見られる崩しと何ら遜色は無い。





<本田が見せるスペースメイク2>


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日本の同点ゴールが生まれたシーン。



中盤でボールを受けた本田の前には

等間隔で綺麗に整った韓国の守備ブロックが築かれている。



当然、このままでは日本のチャンスは生まれない。



しかし、前述したシーンで韓国の右SBチャドゥリが

ボールに釣られやすいというクセを見抜いていた本田。



そこでこのチャドゥリの弱点を利用すべく

韓国の守備ブロックに向かってゆっくりとボールを持ち出す。



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後方からチャージを受けつつも抜群のキープ力を活かし、

ブロックの中へドリブルで突き進む本田。


韓国はこの本田をケアする為に守備ブロックを狭めざるを得ない。


この時、チャドゥリの視野は完全に本田に向いており

自らの背後を抜けようとする長友は完全にノーマークになっている。



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最初はバランスの取れていた韓国の守備ブロックが完全に本田1人に翻弄され、

再び狙い通りのスペースが創出された。



ここで本田は韓国DF4枚が完全に自分に集中するギリギリまで"溜め"を作ってから

最高のタイミングでスルーパスを通す。



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先程と全く同じような崩しから今度は前田が決めてくれました。



断言してもいいですが、

間違いなく最初のシーンの段階(ドリブル開始時)で

本田の頭の中にはこの「3秒先のゴールシーン」が浮かんでいたはず。




香川のようにキレのあるドリブルではないものの、

味方をフリーにし、無かったはずのスペースを創出した

「2手、3手先を読んだ」本田のドリブルがゴールを生んだ。




韓国DF4枚相手にあそこでもし本田が潰されていれば、

長友と一緒に置き去りにされるカウンターの大ピンチに陥る局面。




自らの技術、キープ力に絶対の自信があり、

尚且つ周囲の味方の配置、韓国の守備陣系を視野に入れた判断力。



今、本田は確実にプレイヤーとして一つ上のステージに昇りつつある。






ちょっと話は飛ぶが、ここで新銀河系のRマドリーの話を持ち出したい。




昨年、Cロナウド、カカの2枚看板の共演が期待された新星銀河系だが

この2人のプレーエリアとプレースタイルが被ってしまった結果

なかなかチームが機能しない状態に陥っていたRマドリー。



そこに今季エジルが加わり、カカの怪我を受けて代役で出場すると

見違えるようにチームが機能し始めた事は皆さんご存知の事と思う。



自ら仕掛けるカカと違い、エジルの周りを使うプレー、

トップ下から降りてきてCロナウドにバイタルエリアを使わせる動き、

これらが上手くハマった。




ちょっと大袈裟に表現すれば、

このカカ→エジルのバトンタッチを本田は自ら1人の選手の中で行ったかのようなプレースタイルの変貌だ。




香川(Cロナウド)は、この恩恵をモロに受けている。




派手さは減ったものの、地味ながらも抜群のゲームメイカーとなった本田を決勝でも注目していきたい。



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