掴んだアジアの頂点 【アジアCUP決勝レビュー】

*2011-01-31更新 (アーカイブ記事)





<プロローグ>



実況 
『さあ、20××年シーズン、CL決勝【Rマドリー×バイエルン・ミュンヘン】の試合は
0-0のシーソーゲームのまま、延長後半を迎えました』





実況
『解説のベッケンバウアーさん、
今季のバイエルンは本当に充実したシーズンを送っていますね』





ベッケンバウアー
『仰るとおり。
一時期はプレミアやスペインに完全に水を開けられたと言われたブンデスだったが
今季のバイエルンの活躍がそれを過去のものとしてくれた』





実況
『やはり近年の"名より実"の補強が実った事が大きいですよね?』





ベッケンバウアー
『ドルトムントから引き抜いたシンジ・カガワはリベリー移籍の穴を完全に埋めてくれた。
リベリーに熱狂していたサポーターも今ではすっかりシンジの虜だよ。

更に中盤の司令塔としてロシアから引き抜いたケイスケ・ホンダはまさに新時代のトータルプレイヤーだ。
ケイスケのお陰でシュバインシュタイガーの負担もだいぶ軽減されたものさ』




実況
『ゲスト解説のクライフさんは、今季のバイエルンをどう見ていますか?』




クライフ

『カガワとホンダはもちろん素晴らしいが、地味ながらもCBに補強したマヤ・ヨシダ。

最終ラインで彼が見せる優雅なたたずまいは、まるでフランツ、君の現役時代を見ているようじゃないか…!』






ベッケンバウアー
『ハッハッハッ!確かにハンサムなところも私とソックリだ。(笑)』






クライフ
『それとロッベンの長期離脱の穴を埋めたミスター・ザキオカ。
彼もフランツがとってきたのだろう?』




ベッケンバウアー
『ザキオカはシュトットガルトでチーム得点王になるなど目覚ましい活躍を見せていたからね。
あのエネエルギッシュな動きはバイエルンの右サイドを必ずや活性化させてくれると信じていたよ』






実況
『さあ、ピッチ上ではRマドリーベンチに動きがあるようです。

モウリーニョ監督、ここで1トップのイグアインに代えて、
この冬の移籍市場でとってきたばかりのFW、タダナリを投入です。

この選手については手元にほとんど情報がありませんが・・・・』





クライフ
『彼については典型的な"持っている"選手と言っていいだろうね。
アジアの大陸選手権・決勝で信じられないゴールを決めていたよ。
以来、彼についた名称が ”アジアの・・・・』







実況
『おっと!ピッチ上ではRマドリーの”新たなロベカル”ことナガトモが
左サイドでラームに1対1を挑むぞ…!』







クライフ
『全く・・・既に延長後半だというのに、今試合が始まったかのようなあの動き。

彼には今季のクラシコで我がバルサも痛い目を見たからね(笑)
あのクラスの選手がイタリアの片田舎クラブにいたって言うんだから驚きさ。

もし私がモウリーニョより早く彼を発見していたら、
ペップに言って絶対にバルサの選手として迎えていたはずなんだが(笑)』






実況

『ナガトモがラームを抜いてクロス・・・! 

おっと中では完全に1枚、フリーになっている選手がいるぞ!?


あれは誰だ・・・!??』









ガタッ・・・・!!



(クライフが思わずイスから立ち上がる)









クライフ

『この形・・・!! 

間違いない、あのアジアCUP決勝で見たゴールと全く同じ形じゃないか・・・!』









実況

『中は完全にフリーだ!すでにボレーの態勢に入っているぞっ・・・!!?





誰だ!? あれは誰なんだ・・・!?』











クライフ

『あのゴール以来、彼についた名称 それが”東洋の・・・・


























実況&クライフ

『ジネディーヌ・タダナリだぁぁあああああああ~~~~!!!!!!』

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・・・・ハッ!



店長「どうやら居眠りをしてしまっていたようだな・・・・」



店長「何の夢を見ていたのかよく思い出せないけど、

やたら現実味(リアリティ)のある夢を見ていたような・・・・?」



店長「・・・おっと、こんな事している暇は無かったんだ。

急いで決勝のレビューをUPするべ」







<掴んだアジアの頂点>
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「いよぉぉおおおっしゃ・・・!!」




李のスーパーゴールが決まった瞬間、

店長と一緒に思わず立ち上がってしまった同士はこのブログ読者にどれぐらいいるでしょうか?(笑)





「日本一頑固なツンデレ」ことセルジオのスイッチをぶっ壊し、


後半頭から既に「飲み屋のオヤジ」状態だった我らが松木を

「新橋の駅前でネクタイ頭に踊り出した酔っ払い」に変えたあのゴール。




何のかんのと言ってみたところで

やはり"football最大の醍醐味"は「GOAL!の瞬間」でしょ!



そんな当たり前の事を思い出させてくれた

アジアCUP決勝「オーストラリア戦」を遅ればせながら検証していきましょう。




<オーストラリアの秘策>



まず、決勝で対戦したオーストラリアですが、あの舞台に相応しい好チームでした。


個々の技術、パワーでは日本を圧倒していたと言ってもよいでしょう。



180cmのキューウェル、178cmのケーヒルで組む2トップは

豪州規格でなくとも”小型コンビ”ですが、

日本はこの2人に対し、個々ではパワーでも太刀打ち出来ず。



決勝前のプレビュー記事でも取り上げましたが

ケーヒルはもう「190cm超え」のFWぐらいの気持ちで向かうべき選手であり、

キューウェルの胸板の厚さと身体の使い方は完全にワールドクラス。



オーストラアはこの2人でゴール前の競り合いと制空権は握れると読んで

明らかな対日本用の秘策を用意してきました。






オーストラリアから見た場合、日本のこれまでの試合を分析すれば

やはり「日本の左サイド」は非常にうるさいところ。


逆に言えば、ここを抑えてしまえば勝ちは約束されたようなものです。



中でも尋常ではないアップダウンを繰り返す長友をどうにかできないものか―



そこで、日本の事情にも精通しているオジェック監督が用意した秘策。



それが「徹底して長友の裏を突くべし」です。




実はオーストラリアの手持ちの駒にも

”豪州版・長友”とも言うべき活動量を持った

素晴らしいSBウィルシャーがいました。



序盤、オーストラリアは彼を使って、

徹底して長友の裏のスペースを突いてきます。



それを実際の試合のシーンで確認してみましょう。





【オーストラリアの徹底した長友潰し】

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ボールを持っているのがウィルシャーです。


ここからCFのキューウェルにサイドに流れさせ、

長友の裏を突かせる事でCBの吉田を外に釣り出します。


この流れたキューウェルにウィルシャーが縦パスを送り、自らはパス&ゴー。



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局面はキューウェルが縦パスを受けたところ。

背後には吉田がマークで付いています。



吉田が外に釣り出された事で空いてしまったCBのスペースを

長友が埋めているのが確認出来ます。



これで日本のDFラインは吉田と長友の位置を逆転させられてしまいました。


加えて、パスを出したウィルシャーは更に裏のスペースを狙って、もう走り出しています。


2011-01-31_14-41-35_entry-10785575474_o0590034211017396420.jpg


キューウェルは無理をせず、そのまま上がってきたウィルシャーにボールを預けると

キューウェルに付いていた吉田は1対2の数的不利に陥ってしまい、

完全に左サイドを破られてしまいました。


長友もCBのカバーに入った手前、(加えてケーヒルが嫌らしい動きで中に入ってきてる)

自らも外に流れる訳にもいかず、ウィルシャーは完全にフリー。



長友と吉田を本来の仕事場から遠ざけ、日本の生命線を殺しつつ、

自分達はチャンスを作る一挙両得の作戦。




この形をオーストラリアが繰り返した為、

長友は得意のオーバーラップを封印せざるを得ません。



しかも、この秘策にはもう1つ、

オーストラリアの武器を活かす隠し味が存在するのです。





【狙われた内田】



日本の左サイドからファーサイドに高いクロスを上げれば

そこで競り合うのは必然的に逆サイドから絞ってくる右SB内田の仕事になります。



ご存知の通り、内田は決して空中戦の競り合いを武器としている選手ではありません。



オーストラリアは多少ラフでもいいから、ここに向かってフワリとしたボールを徹底。




松木「背の高い人用のボールですね。これは」


(注* ケーヒルとキューウェルの身長は180cm未満、吉田は191cm)





普通、クロスは「低く速く」入れるのが鉄則です。


何故なら、滞空時間の長いクロスではDFに対応する時間を与えてしまうから。




しかし、対応させた状態でもヨーイドン!の競り合いで「絶対に勝てる」という確信があるなら話は別。



高く上げた事で、ラフなクロスでも

キューウェル、ケーヒルの2トップにボールに向かう時間を与え(もちろん内田にも)、

そこで満を持して競り合わせる。




これがオジェックの仕掛けた2つめの罠です。




では、実際の試合で確認してみましょう。


2011-01-31_14-41-35_entry-10785575474_o0595042011017432264.jpg


局面は先程とは別の場面ですが、

相変わらずオーストラリアは徹底してウィルシャーを使った攻めを見せます。



長友と岡崎は分かっていても、対応に向かわざるを得ません。



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結局、長友と岡崎が引っ張り出された状態で、ウィルシャーにクロスを許す日本。



ここで注目したいのはキューウェルのポジショニング。



明らかに狙って内田と競り合う為の位置に、クロスが上がる前から入っています。


結局、このクロスは内田が競り負けてキューウェルにヘディングシュートを許す事に。



そして試合が進んでくると、

この攻撃に味をしめたオーストラリアが調子付いてきます。



右に張らせたウィルシャーを今度はオトリに使い、

中央からもボンボンと内田の位置に入り込ませた2トップへ向けてロングボールを入れ始めました。



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ややもすると↑と同じシーンにも見えますが、全く別の局面です。



真ん中からの放り込みですが、長友は相変わらずウィルシャーが気になって仕方ない様子。



今度は「空中戦の鬼」ケーヒルを露骨に内田と競らせてきました。



結局、このシーンはケーヒルが競り勝って

裏に抜け出たキューウェルにボールを落とす⇒キューウェルのボレーシュートは枠を外れる。





<ザック「奇跡の一手」を検証>
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オジェックの罠もあり、前半45分は圧倒的な豪州ペースで折り返し。



前半、そしてハーフタイムでもザックは懸命に形勢逆転へ向けた一手を思案していたはず。



店長も試合を見ながらアレコレと考えていたが、

考えれば考える程、状況は厳しい事が分かってきます。




まず、本来なら攻撃でアクセントをつけられる駒を投入したいところだが、

この役割を担う松井と香川は負傷離脱で、

藤本もいきなり回ってきた決勝の出番に消化不良を起こしている。



ところが、手持ちの持ち駒はアクセントをつける駒同士を結ぶ「リンクマン」柏木と

いまだ実戦でほとんど使っていない李の2枚。



かといって後半頭から細貝を入れて守り切る作戦はいくらなんでも早すぎる。




う~む・・・・


どんな名将でも頭を抱えたくなるようなこの局面、


(もし店長がザックのポジションにいたらとっくにサジを投げてますw)




ここまで定石を積み上げてきたザックが「奇跡の一手」を打ちます。



藤本OUT⇒岩政IN



この交代には、さすがに指揮官の意図を計るのに時間が必要だった。



一瞬、「ここで3バックかっ!?」と思いましたが、

あくまで表面上の配置は4-2-3-1のまま、

長友を一列上げて、今野を左SBへスライドさせてきました。



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で・す・が・・・・・


この一見4-2-3-1に見える布陣には、今度はザックが仕掛けた隠し味の妙アリ。



守備時にはこの並びで間違いないのですが、

一旦マイボールとなって攻撃に移る際には各選手が持ち味を活かして赤の矢印のように動きます。




エネルギッシュな岡崎と長友の両サイドは言うに及ばずですが、

攻撃を持ち味とする内田が一列前へ、

逆サイの今野は守備に専念で若干中へ絞り気味に残ります。



そして戦況を見極めた本田が

日本の生命線である左サイドを復活させる為、基点を作るべく左サイドに流れる と。




すると・・・・・



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あ~ら不思議。



あっと言う間に3-4-3がピッチ上で具現化されます。



攻撃で長友を蘇らせ、

守備では内田が豪州の2トップと競る必要がなくなり

岩政がしっかりと空中戦の強さを見せて
オーストラリアのロングボールをシャットアウト。



役割分担が俄然ハッキリしました。

ザックがこの決勝の土壇場で遂に伝家の宝刀3-4-3を抜いてきました!


(この采配には店長シビれたゼ・・・!!)




【ピッチ上で具現化された3-4-3】
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最終ラインの3バックこそ画面には入りませんでしたが、

前線の3トップと中盤のフラットな4枚のラインが確認出来ると思います。



又、これまでやりたい放題だったウィルシャーに

守備から解放した長友を当てた事で

今度はウィルシャーの裏のスペースを日本が突く形に。



長友は最終ラインから一列上がって、後ろに今野(画面外)が控える事から

安心して攻撃に専念出来ます。




この采配で一気に日本が形成を逆転。




CBを投入したのに結果として攻撃的になるというトリック。



まさに現状の持ち駒ではこれしかない!という神采配。




僅かCB1枚を投入しただけで、ここまで大掛かりな仕掛けを打つとは

完全に店長が想定した指し手の外、まさに「奇跡の一手」でした。




しかし、この一手はザックのその場の思いつきだったのでしょうか?




いくら日本代表の選手達と言えども、

いきなりの本番で初の3-4-3がここまで上手く機能するはずがありません。




ここで時計の針を遡り、昨年末、

このアジアカップに向けた日本代表の直前合宿の時の記事を抜粋しましょう。




~~~以下、朝日新聞の記事より抜粋~~~~


サッカーのアジア杯に向けた日本代表合宿は30日、堺市内で紅白戦を行った。


ザッケローニ監督は、イタリア時代から精通している「3―4―3」の布陣を試し、

就任後初めての国際大会を目前に自分の色を出し始めた。



 3バックのこの布陣は、ザッケローニ監督がウディネーゼで成功を収めた際に練り上げ、

同監督の代名詞といえるもの。


初めて取り組んだ29日の練習では、約1時間かけて身ぶり手ぶりを交えて基本の動きを教えこんでいた。



アジア杯は従来の4バックで臨むというが、

「試合でチームの顔を変えられるよう、両方できるようにしたい。

現代サッカーは一つのシステムだけでは厳しい」


と狙いを語る。




朝日新聞 2010.12.30


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




ザック・・・・事前に仕込んでやがった!!



これが当時、一部でアジア杯は3-4-3!の憶測を生んだりもしましたが、

やはりベースは4-2-3-1というのがザックらしいバランス感覚。



それにしても有事の際の奥の手を用意しつつ、

実戦では常にバランスをとった定石を積み上げ、

いざという時には思い切った一手を打つ決断力・・・・




この男、どうやら本物です。




<ザックJAPANが掴んだもの>




ザックJAPANはこの勝利でもちろん「アジアの頂点」という称号と

「コンフェデ杯 出場権」というチケットを手にしました。




しかし、今大会で彼らが掴んだ最も価値あるもの、


それは"国民の信頼"です。



この大会を見た者なら店長でなくとも、

この代表をザックに3年も預けたら、一体どんなチームが出来上がるのか、

その未来に想いを馳せてワクワクした事でしょう。




このアジアカップを見た多くの人も、

次のコパアメリカは見ずにはいられない大会になりました。




気が付けば、コパアメリカに向けて

選手達はもちろん、我々も揺ぎ無い自信を得て、

ザックJAPANの航海は続く―



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うわーーーーこの記事には鳥肌が立ちました!もちろん良い意味で!
現在のザックjapanの閉塞感(煽られてますね…)についても最新レビューを早く読ませていただきたいです!

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