光射す方へ ~日本×コロンビア徹底分析~

<光射す方へ ~2018W杯 日本×コロンビア~>
どうも半年ぶり、ご無沙汰です。
思えば前回のW杯から一体、何回更新したんだ?っていう本ブログではありますが、気が付いたら4年経ってました(笑)
時の流れは早いものです。
さて、ブラジルの地での惨敗から4年、まさかロシアW杯を西野監督で戦っているとは誰が予想したでしょうか?
本当に色々ありました。ありましたが・・・ここでは一旦置いておきましょう。
ここに到る経緯はもう散々メディアなりSNSなりで議論尽くされてきましたから。
本ブログはあくまで「ピッチ上のプレー、戦術にフォーカス」するのが基本路線なので。
何より・・・その手の話題は荒れるしね(爆)
では半年ぶりのマッチレビューは歴史的な勝利を飾ったコロンビア戦の勝因解分析です。
何故日本は勝てたのか?10人になった事で両チームに何が起きたのか?前半と後半の違いは何か?
そこら辺も含めて解析していきましょう。
<的中した選手選考&コロンビアの隙>

まずは両チームのスタメンから↓

両チーム共にシステムは4-2-3-1
コロンビアはハメスロドリゲスがコンディション不良でまさかのベンチスタート。
一方の日本は本大会まで僅か3試合という強化試合を目一杯に使って西野監督は最適解を見出したと思えるスタメン選考です。
システムは当初、長谷部をCBに落とした3バックを試してみるも結局はやり慣れた4-2-3-1がベストという賢明な判断。
更に直前のパラグアイ戦で光明を見出した香川&乾のユニット、司令塔・柴崎のタテパス、南米のFW相手に対人で完勝してみせた昌子をCBに抜擢。
結果的に見ても前線、中盤、最終ラインでそれぞれ抜擢した選手が躍動し勝利に貢献してくれました。
では、この試合の行方を左右した”あの場面”から試合の検証を始めていきましょう。
前半-
試合開始と共に前からプレスをかける日本に対して、コロンビアにはどこか緩さが垣間見えました。
それは4年前の惨敗のイメージが色濃く残る我々の感覚が、彼らにしたら日本=大勝の感覚で残っていたと考えれば無理も無い事でしょう。
しかし、サッカーにおいてその油断は致命傷を招きます。
オシム『コロンビアが最初にピッチに姿を現したとき、私は彼らの傲りを感じた。南米選手にありがちな、そうした驕慢を私はよく知っている。そして彼らはピッチでその代償を支払うことになった。』
ではPKに到るシーンを少し遡って流れを見ていきましょう。
【前半3分のPKシーンを検証】

前半3分、コロンビアの左SBが浅い位置から早めのアーリークロスをゴール前に送る場面が↑になります。
まず、注目したいのがコロンビアの攻撃にかける枚数。
両SBを同時に高い位置へ上げ、ボールより前に7枚を投入しているのが分かります。
(ネット配信で戦術カメラが観れるのは有り難い!)
前回対戦時の2014W杯のコロンビアは攻撃は前線の3枚~多くても4枚に任せて
4バック+2ボランチの6枚が常に自陣で待ち構えているカウンター主体のプランだったのを考えると2つの試合でコロンビアのアプローチが大きく違うのが分かりますね。
この両SBを同時に上げて攻撃に枚数をかけるサッカーはまさに前回のザックJAPAN、我々の姿そのもの。
これはコロンビア版「俺達のサッカー」なのか…?(笑)
とにかく、こんなところに序盤からコロンビアの傲慢さが垣間見えていた訳です。
日本は守備時、4-4-1-1で守るのでボールより前に残るのは香川+大迫の2人。
しかしコロンビアのボランチ+CBの3枚はそれぞれ、誰が誰を捕まえているのか?非常に中途半端なポジショニングになってるのが分かります。
(基本的には守備残りのボランチが香川を観て、CB2枚で大迫に対して「+1」を作る、というのが基本路線)
攻撃の最中から後ろはカウンターを防止する為の予防的ポジションを取る、というのは現代サッカーの必須戦術となっていますが、この場面におけるコロンビアの予防的ポジションはかなり怪しいと言わざるを得ません。(コロンビアのミスその①)

このクロスが跳ね返されて香川にこぼれた瞬間が↑になります。
ここで問題なのが何を血迷ったのか、香川に対してボランチではなく、後ろで大迫を見なければいけないはずのCBがボールにチャレンジする為に前へ突っ込んでいる事です。
またその距離を見ても、明らかに香川の方がボールに近く、先に触られるであろう状況なのにも関わらず、このCBのチャレンジはあらゆる意味から考えてセオリーを逸脱したコロンビアのミスその②です。
香川はドルトムントでもこのポジションでカウンターを発動させる為のスイッチとして機能している選手なので、
ボールを拾う前から自分の背後には大迫とコロンビアのCBが1対2の状況である事、自分が誰からも明確なマークされる距離にいない事を「観て」、分かっていました。
なのでコロンビアのCBが自分に突っ込んできてるのを周辺視野で捉えて、大迫が今この瞬間、自分の背中で1対1の状況である事を瞬時に察知します。しかしこの時、香川の視野はバウンドするボールに身体が向いているので大迫の動き出しまでは恐らく観えていません。そこで感覚で背後のスペースに、事故が置きやすく、かつ大迫がパスコースへの修正が効きやすいフワッとしたロブをスペースへ落としたのです。
これは今季クロップのリバプールを観ていた人には分かるかと思いますが、クロップのチームはセカンドを拾った瞬間にサラー、マネがヨーイドン!するスペースへ向かってアバウトに浮き球を落とすシーンが数多く見られます。(そしてこの2人はだいたいヨーイドン!に勝てるw)
香川は現代サッカーのトップ下に必要とされるこのセンスがとにかく抜群なので、真骨頂とも言えるシーンでした。
(更にパスを出した後に足を止めず、パス&ゴーでゴール前へ詰めていた動き出しがPKにつながったのもミソ)

↑は香川のスペースに落とされたパスに対して大迫とCBのDサンチェスが競り合っているシーンです。
ここで大迫と1対1のDサンチェスに求められたのはまずゴールに向かって帰陣し、大迫の突進を遅らせる守備でした。
しかしDサンチェスは所属するスパーズでも度々こういったプレーを見せているように、抜群の身体能力を過信したリスキーなプレー選択が見られるDF。
ここでも遅らせる事ではなく、自分で奪いに行く事を優先した矢印で大迫に向かってしまい、結果入れ変わられてしまいました(コロンビアのミスその③)
よく現代サッカーでは『ミスが3つ続くと失点になる』と言われますが、日本がPKを獲得したシーンは正にコロンビアの致命的なミスが3つ続けて起こった事による必然だったと言えるでしょう。
そして、その引き金となったのは香川の一瞬の判断とセンス、そして大迫の競り合いにおける粘り強さだった事も忘れるべきではないですね。
<10人で落ち着くコロンビア&慌てる日本>
開始3分で1点(PK)&退場で10人へ。
しかしコロンビアの選手達はベンチを見る事もなく自動的に4-4-1のオーガナイズで守備を再構築。
逆に慌てたのが1人多くなった日本で「…え?え?相手10人だけど、どうする?どうする?」と言わんばかりのチグハグさ。
何故、相手より1人多いはずの日本が有効な攻め筋を見つけられなかったのでしょうか?
そこでまずこの時、日本がすべきプレーは何だったのか?を考えてみましょう。
2トップの1枚を削って4-4-1で守るコロンビアに対しての定石はビルドアップの始点で起きる2対1の数的優位を上手く活用する事です。すなわち日本のCB2枚とコロンビアの1トップによる2対1のエリアですね。↓
【数的優位を活かせない日本の攻め筋】

この場面はコロンビアの退場直後の日本のビルドアップから。
吉田と昌子のCBがコロンビアの1トップ(ファルカオ)に対し2対1の数的優位になっているのが分かります。
ここから昌子がボールを運んで・・・・

日本はサイドに入れてコロンビアの矢印⇒を後ろ向きにし、1トップの背後でボランチが前向きに受ければそこからタテパスorナナメの間受けor逆サイドへの対角パスという崩しのフェーズに入ります。
要は1トップを剥がして常に残りの8枚と勝負!っていうのが9人守備を崩す始点になるという事ですね。

しかーし!サイドの乾から横パスを受ける長谷部の距離と身体の向きが悪過ぎる!
日本のボランチ(長谷部&山口蛍)が抱える問題がコレで、要は間で受けて前を向く事が出来ないんですね。

…で、苦しい体勢の長谷部はサイドの乾へリターンパス。
コロンビアはボールサイドに寄せてきているので、これは受けた方が苦しい、いわゆる死に筋のパス。
案の定、乾はこの後難なくボールを奪われてしまいました。
これが日本の左サイドの問題で、ボランチが長谷部、その後ろのCB昌子も運ぶドリブルやタテパスといった攻撃面が苦手という地獄の組み合わせなので、サイドの長友&乾が死んでしまっていたんですね。
(前半、乾のボールロストが多かったのは後ろからの配球側の問題も大きかったと見ます)
じゃあ、もう1枚のボランチ柴崎はどうか?という話になってきます。
続いて右サイドの攻撃ルートを見ていきましょう。
【右サイド(柴崎)の攻撃ルート】

局面はCB吉田がボールを持ったところで柴崎がかなり低い位置まで落ちてきてタテパスを引き出す場面

柴崎の特徴はこの低い位置からでも正確な長いタテパスを通せるという事です。
香川が欲しいタテパスはまさにコレなんですね。

香川は正確なタテパスさせ刺せば、狭いエリアでも苦も無く前を向く事が出来る職人
この場面でも得意のターンから原口へのスルーパスでサイドをえぐりました。
このように右サイドはCB吉田⇒ボランチ柴崎⇒香川⇒SH原口という中→中→外の攻撃ルートがあるのでアタッキングサードまで侵入出来る下地はありました。
左右の攻撃ルートの違いはそのまま長谷部と柴崎の違いと言っても良い訳ですが、ボランチというポジションにとっていかにボールを受ける際の「身体の向きを作るスキル」が重要であるか、この両者を見ていると良く分かります。
【長谷部と柴崎の身体の向きの違い】

日本代表の試合を観ていて↑こういうシーンをよく見かける事にお気付きでしょうか…?
長谷部がこの身体の向きでボールを持っている事で守る側からすると逆サイドの柴崎&酒井は全くケアする必要が無く、非常にハメやすい持ち方であるという事が言えるでしょう。
実際、↑の場面でも柴崎が両手を挙げてアピールしていますが、長谷部の視野には入っておらず、狭い方の乾へタテパスを出してまんまと囲まれてしまいました。これは山口蛍でも同様のシーンを本当に多く見かけます。

続いて全く同じエリアでボールを持った時の柴崎の身体の向きを見て下さい。
この向きで持たれると、まず長谷部へのセーフティな横パスを確保しながらナナメの香川とも目が合うし、パスの選択肢が複数あるのでコロンビアのDFが寄せられないという状況を作っています。
そしてボールにプレッシャーがかかり切らないので同サイドの乾も迷う事なく裏へ走り出せる訳です。
ちなみにハリルJAPANはどちらもこの持ち方が出来ない長谷部&山口蛍という地獄のボランチコンビだったので、完全に日本の攻め筋から中→中→外というルートは消えていました。
もっぱらパスはCB→SB→SHとUの字型に外→外→外。同サイドで3本以上パスをつなぐので相手からするとハメやすく、苦しくなって大迫にタテポンという遅攻が目立ったのはこのためです。
なので個人的に日本のボランチは柴崎と大島の組み合わせしかないだろう、と思っていたのですが西野監督はその折衷案を取って1枚は柴崎or大島の司令塔タイプ、もう1枚に長谷部or山口のファイタータイプという補完性による組み合わせを基本に考えている模様。
であるならば、この日の日本は右サイドを中心に攻めたら良かったのではないか・・・?という疑問は当然湧いてくるのですが、コロンビアも事前のスカウティングでこの事をよく理解しており、対策を立てていました。
【コロンビアのビルドアップ対策】

局面は日本のビルドアップ
1トップのファルカオは基本的に日本のCBは放置。その分、柴崎へのコースをケアする立ち位置で日本のビルドアップを左サイドへと誘います。

・・・で、お馴染みのバックパサー長谷部。
こちらのルートはボランチに預けたところでサイドで詰まるか、バックパスが返ってくるだけなのでコロンビアからすると全く問題無し。

この時のファルカオのポジショニングがミソ
首を振って背後の柴崎を確認し、ここのコースだけは死んでも空けないぞ!という構え。
恐らくコロンビアのペケルマンは当初2トップで柴崎へのパスコースをケアしながらチャンスとあればCBにプレスをかけるというプランだったのだと思いますが、1トップになった事で割り切って「柴崎を消す事」のみにファルカオの守備タスクを絞ったと見ます。
こうなると日本のビルドアップは右サイドに回しても柴崎回避の外→外ルートになるので・・・

ハイ、待ってました~!とばかりに原口が囲まれてジ・エンド。
まさにこれがボランチを補完性のコンビで組んだ時の弱点で、スカウティングされて「片方だけ消す」という対策を講じられやすいんですね。
考えられる日本の打ち手としては「1トップのファルカオが疲れるまで後ろでひたすら回し、柴崎が空くのを待つ」か「長谷部を大島に変えて左右どちらからも攻められるようにする」の2つ。
前者が1-0リードを保ったまま隙あらば追加点を…の安全策で、後者が自分達から2点目をとって試合を決めてしまう積極策なんですが前半の日本はどっちつかずのまま試合を進めて、何となくコロンビアの守備にハメられてカウンターを食らうという展開になっていました。非常に勿体無かったですね。
<香川は何故、試合から消えたのか?>

この状況に業を煮やした選手がいました。
トップ下の香川です。
気持ちは分かります。「待っててもボール来ねえじゃん…!」という心情だったのでしょう(笑)
こういう時は香川の悪い癖が顔を出します。
【ポジションを崩す香川】

局面は日本のビルドアップから。
我慢しきれなくなった香川が「ええい、オレが行く!」とばかりにボランチのポジションまで落ちてきてしまいました。
これでファルカオの1枚を剥がすのにイビツな3ボランチ気味の人数過多になってしまい、その分前の枚数が足りない状況へ自分達からバランスを崩してしまう日本

しかしコロンビアからすれば長谷部は捨てられるし、香川が一番怖いエリアから離れてるので、このエリアで受けるなら思い切り強く当たれるだけ

更にせっかく柴崎にボールが渡っても前線に香川がいないので大迫が孤立
これならコロンビアのCBも大迫一択で前にインターセプトを狙える状態が整っています

アッーーー!!!
日本はこの時間帯、バランスを崩した状態で無理なタテパスを入れてはカウンターを食らうという悪循環に陥ってました。しかもその流れで与えた不用意なセットプレーから痛恨の失点を喫しています。
パスマップのデータで見ても前半の香川のポジション移動は明らか↓


これが香川が諸刃の剣と言われる所以で、4年前のブラジル大会も彼の負の面の方が出てしまい、惨敗につながっているだけに悪い予感が漂う流れになってきました。
<バランスをとった知将ペケルマンの修正>

一方、10人になったコロンビアの視点で前半を振り返るとどう見えるでしょうか?
ボランチのCサンチェスが退場になった後のコロンビアはトップ下のキンテーロをボランチに下げた4-4-1でそのまま試合を進めました。
実はこのキンテーロという選手、ハメスというクラックがいるから目立っていないだけで、クラシカルな南米の10番タイプとしてなかなかの実力者。事実、10人になった後のコロンビアで攻撃のタクトを振るっていたのはこのキンテーロであり、長いタテパスから何度もカウンターの起点になっていました。
しかし、一方でペケルマンにはこのキンテーロをボランチにした中盤のバランスに懸念はあったはず。
どういう事か、検証していきましょう。
【キンテーロをボランチで使うリスク】

局面は右から左へ攻めるコロンビアのビルドアップ
キンテーロがボランチの位置でボールを受けます

1人少ない10人で日本の守備を崩さないといけないという事もありますが、キンテーロの持ち味は強気なプレー
↑の場面でもドリブルで日本の中盤ラインを剥がすべくボールを運びます

・・・ただ、いかんせんドリブルを始める位置が低い。
ボランチなんで仕方ないんですが、ここでボールを失った場合、前に5枚が取り残された状態で日本にカウンターを浴びるハメになります

そのままカウンターを食らって、あわや決定的な2失点目を喫するところでした
(このシーンでは乾がシュートをふかして一命を取り留める)
更に守備ではこのようなシーンも↓

ファルカオに疲れが見えてきた前半25分過ぎ、日本で最も危険な柴崎が持った時にボランチのキンテーロが中を閉め切れないんですね。
このシーンを見たペケルマンはこのままオープンに日本とカウンターを打ち合うのではなく、一旦ボランチの守備バランスを修正する一手を打ちます。ただし攻撃面を考えると追いつく為には司令塔キンテーロは欠かせない。
という訳で中盤で最も守備力の低いクアドラードを下げて、守備型のボランチ・バリオスを投入。キンテーロを一列前に上げたSHに移します。
(10人になった時に最も守備で計算出来ない選手を下げるのは定石であり、94W杯のイタリア代表ではサッキが前半にあのRバッジョを下げた事で話題にもなった→結果は狙い通り勝ち点1を獲得)
0-1のビハインドを追いながらまずは守備を整え、キンテーロとファルカオの距離を近くして、このホットラインとセットプレーから同点ゴールを狙う。曖昧に前半を過ごした日本とは対照的に明確な姿勢を打ち出したペケルマンのしたたかさが光ります。
実際に試合ではボランチをキンテーロからバリオスに代えた事でまず守備が安定↓

しっかり中を閉められているので柴崎から大迫へのタテパスを消す事に成功。まず守備を安定させます
そして攻撃ではキンテーロをSHに上げたメリットで早速↓のような場面が生まれました
【キンテーロの間受け⇒ラストパス】

右から左へ攻めるコロンビアの攻撃。
右SHに上がったキンテーロはライン間に入ってボールを受ける得意なプレー
先ほどまでのボランチだった時と比べてボールを受けるエリアが一段高くなっている事が分かります。

間で受けてファルカオへのラストパス
この交代以降、日本の攻め筋は塞がれ、コロンビアのカウンターに脅威が増していきます。
香川が落ちて中盤のバランスが崩れた日本と、キンテーロを上げて中盤のバランスが修正されたコロンビア
前半の1-1というスコアにはそれなりの必然が潜んでいたと見るべきでしょう。
<最適手に見えた悪手 ハメス投入が勝負を分ける>

1-1で折り返したハーフタイム-
試合を観ながら日本が勝ちのルートに乗る為の修正点は一つ、だと思ってました。
香川のポジショニングを修正出来るか?これに付きます。
果たして後半の立ち上がりに↓のようなプレーが観れたので「これはもしかすると…」の思いを強めた次第。
【香川のポジションを戻した日本の猛攻】

局面は右から左へ攻める日本。
後半はファルカオの電池が切れてコロンビアの1列目の守備が機能しなくなっていました。
加えて香川がしっかりとバイタルエリアにポジションを取っているのでコロンビアのボランチが香川をケアする為に引っ張られているのが分かります。
これでボールを持ったボランチ(長谷部)の前にフリーで運べるスペースが出来ており、さすがにノープレッシャーであれば長谷部も苦も無く前を向いてボールを運べるシーンが増えてきました。

↑勿論、それは柴崎とて同じ事。
要は1トップのファルカオが追えなくなってきた事+香川がコロンビアのボランチを引っ張る事で日本のボランチのエリアは完全なオープンスペースになっていたんですね。
香川はボールタッチ数こそ少なかった後半ですが、「いるべきところにいる」事で、日本ペースを生み出す主要因になっていたと見ます。
原口(試合後のコメント)
『ハーフタイムでは監督からポジショニングのことを言われました。せっかく相手が10人なんだからもっと相手の嫌なポジションで受けたら必ずチャンスができるという話だったので、各選手がポジショニングを考え直したと思います。』
・・・さて、日本はハーフタイムでキッチリ修正してきました。
対するコロンビアは規定路線の最適手(?)を打ちます。後半15分、エースのハメス・ロドリゲス投入。
この交代によりピッチでは何が起こったのでしょうか?
【ハメス投入で崩れたコロンビアのバランス】

投入直後からハメスの動きは明らかに鈍く、元々守備をほとんどしない選手なので基本は前残り。
それまで4-4-1で保たれていたコロンビアの守備ブロックがハメス投入によって4-3-2になってしまいました。
中盤の2列目が4枚から横幅68Mを3枚でスライドする事になったコロンビアの中盤、特にハメスが入った右サイドは完全にスペースが空いており、ここは香川が受けたいエリアでもあります。
戦術カメラアングルで見てもバランスの崩れたコロンビアの右サイド(日本の左サイド)で数的なバランスが崩れているのは明らか↓

これにより日本は左サイドで香川、乾、長友が常に数的優位を傍受しながら気持ちよくパスをつないで崩す事が出来ていました。

後半、乾のドリブル突破が突如復活したのはコロンビア側のバランスが崩れたからだと言えるでしょう。
(ハメスは乾の突破を後ろで傍観してるだけ)
柴崎(試合後のコメント)
『攻撃の部分で乾くんと(長友)佑都さん、真司さんの連係で左サイドを作りたかった。前半は右サイドに偏っていたので僕がなるべく左サイドでボールを持つようになって全体的にうまく回った印象があります。』
試合は残り20分、コロンビアのバランスが崩れて日本優位の流れ-
ここでぞれぞれの指揮官が次にどんな手を打つかが勝敗の鍵を握っている事は間違いありません。
まず日本の西野監督としては、当然あと1点を求めて勝ちに出たいところ。
コロンビアの中盤のバランスが崩れているという事を鑑みて、ここは中盤からミドルシュートで得点が期待出来る本田の投入を決めました。(香川はオープンスペースでボールを受けてもここまで自分で打つミドルは0本)
本田のメリットはご存知の通り、こういった大一番で決めてくれる得点力であり、デメリットは日本の中で最も運動量とスピードが低い事。
しかし10人のコロンビアは引いているのでスピードが必要な速攻はほとんど無いですし、本田の運動量のマイナス分はコロンビアもハメスがいるので帳尻が合うと踏んだのでしょう。
一方のペケルマン監督はどうか?
さきほどは崩れた中盤のバランスを修正する見事な一手で試合を振り出しに戻した知将。ここは1-1のまま勝ち点1をまず確保する、という選択肢もあったはずです。
しかし、4年前とは違い優勝候補の一つにも挙げられるほどの地位になったコロンビアで、グループ最弱と目されていた日本に「まず初戦で勝ち点3を確保する」以外のプランは頭に無かったとしても無理はないかもしれません。
ペケルマンは崩れたバランスを更に攻撃的に動かし、10人で2点目を奪いに行く一手を選択。
中盤で最も運動量のあるSHイスキエルドに代えてFWのバッカ投入で勝ちにきました。
この一手の明暗は本田のファーストプレーで明らかになります。
【試合の流れをベンチから見ていた本田のファーストプレー】

バッカ投入でハメスが左、バッカを右サイドに移したコロンビアに対し、本田のファーストプレーはハメス側の右サイドに移動し酒井と2対1を作りに行っています。
これは明らかにベンチで試合の流れを見て、自分が出た時のプレーをイメージしていたであろう事が分かる本田の動きだと思います。

狙い通り日本は右サイドで本田+酒井の関係性を作り出すと、ハメスは全く追ってきません。
従ってコロンビアの左SBに対して2対1の数的優位を作れています。

フリーの本田に戻して、ファーストプレーでミドルシュートを選択した本田。
相手の状況を観て最適のポジションを取り、ベンチが求める「引いたコロンビアにミドルの脅威を」という役割を忠実にこなしています。
一方のコロンビアはバッカ投入でただでさえ崩れていたチームのバランスが更に攻撃過多になり4-3-2から4-2-3気味となって、これは日本の得点は時間の問題だろう…というカオス状態に陥ってしまいました。
後半73分、バッカ&本田投入の僅か3分後に生まれた大迫のゴール。
このCKを取る経緯となった日本の攻撃は必然といえる流れだったのではないでしょうか。
【日本の2点目を生んだ攻撃の流れ】

局面はもはやコロンビアのファーストラインが崩壊し、フリーで持ち運び自由となった柴崎から乾へのタテパスが起点。
バッカはハメスよりは運動量がありますが、守備で中閉めが出来ないのでタテパスも通し放題

乾が間受けで前を向くとハメスは既にスイッチOFF
本田もそれを分かっているのでハメスの背後でスタンバイ

右サイドの本田&酒井で数的優位を作る日本。
ここに到る流れの中で既に20本以上パスをつなぎ右に左に揺さぶられたコロンビアはもう大外の酒井をケア出来ません

戦術カメラの視点で見てもコロンビアの守備組織がもはや4+2の2ラインで守っていて崩壊しているのが良く分かります。
乾が前を向いた段階でコロンビアは詰んでました。
<僥倖ではなく実力で掴んだ光明>

この試合の勝敗を分けたポイントは誰がどう見ても「前半3分のPK&退場」で間違いありません。
しかし、それをもって「僥倖」「たまたま勝てただけ」「ラッキーだった」と日本の勝利の価値が下がったかのような論調も目に付きますが果たしてそうなんでしょうか・・?
コロンビアの退場とPKを生んだのは純粋に競技内における日本の一連のプレーでした。
もしあれを「たまたま」と言ってしまうのであればサッカーとはそもそも「たまたま」パスがつながって「たまたま」ドリブルで抜けてしまい「たまたま」シュートが入って勝ってしまう競技という事になってしまいます。
アルゼンチンには「たまたま」メッシがアルゼンチンに生まれてくれて、ポルトガルの好調は「たまたま」ロナウドがポルトガル人だったからでしょうね。ロシアは「たまたま」開催国だったから好調なのかもしれません。
勿論、11対11だったら結果はどうなっていたか分かりませんし、この1試合の結果で両国の実力は測れないでしょう。
しかし元々誰が監督であろうとコロンビアが格上なのは分かっていた事で、それを前提にいかに「10回に1回」の勝ちルートを探るかがW杯という大会ではないでしょうか。
今回の西野JAPANが見せたサッカーも「タテに速いサッカーの遺産」だとか「俺達のサッカー復活」だとかの二元論で語っていては今大会のレベルに日本サッカーが置いていかれるだけでしょう。
開始と共に前へ勢い良く出て来たコロンビアを逆手にとって「タテに速い」パスを2本つないだ前半3分の1点目。
10人になって引いた相手を右に左に22本のパスをつないで崩した2点目。
どちらも相手を観て、最適な判断でパスを繋いだ「日本のサッカー」に他ならないのですから。
*↓のRTと「イイネ!」が一定数以上集まったらセネガル戦のマッチレビューもやる・・・・かも!?

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