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変態ブログが一冊の本になるまで


この変態ブログが一冊の本に―


今まで誰がそんなことを考えたでしょうか。


「いくらスクロールしても終わらない」「試合より解説の方が長いのでは」「日本で唯一の読者=俺のブログ」


そんな声もどこ知らず、ただただ、己が書きたいから書く


それだけで続けてきた本ブログに一通のDMが届いたのは今から遡ることおよそ2年前‐


当時いただいたDM(ほぼ原文をそのまま再現)


>>サッカー店長 様

突然のDM突然のDMを失礼します。
私、光文社新書編集部のTと申します。

以前よりブログを楽しく読ませていただいております。

さて、本題なのですが、弊社にて「ペップ・グアルディオラを通じて現代サッカーをよみとく」というテーマで、店長さんに新書をご執筆いただけないものかと妄想しております。
ペップのチームが披露してきたこの10年少々のパフォーマンスを振り返り、現代サッカー界の変化(と変わらない本質)をよみとくという、壮大で濃厚な一冊を是非読んでみたいです。
そしてそれは、多くの人に買ってもらい、楽しんでもらえるものになると思います。

他の出版社などから同様のお声がけをされているかもしれませんが、こういった出版に興味はないでしょうか?
ご検討くださいますと幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>




ははーん、なるほど・・・











新手のDM詐欺だな( ^ω^)

*光文社の皆様、その節は大変申し訳ございませんでした(焼き土下座)





残念過ぎることに普段サッカー以外の本を読まない無知な私には当時、そのように見えてしまったのだ。




加えて色々多忙な時期だったこともあり、このDMを数ケ月スルー
(*光文社の皆様、その節は…)…




数か月後、光文社様がいかに出版界のビッグクラブであるかを改めて知った愚か者からのお詫びの連絡もこころよく受け入れていただき、一度本社にお話しを聞かせていただくことに




後日、東京文京区にある光文社本社ビルに我到着せり―




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*あくまで筆者のイメージです




ううーん、本当にこのビルに入っていって大丈夫なんだろうか?
(ソッコーで警備員とか飛んできたりせんだろうな…ドキドキ)





ビビっていても埒が明かないので突入。
受付にいた乃木坂のセンター横に立ってそうな綺麗なお姉さんにドギマギしながら要件を告げると上へ案内され、遂に担当のTさんとご対面。



そして開口一番、私は率直な思いをお伝えさせていただくことにした。




『大変ありがたいお話なんですけどあのブログ…
変態しか読んでないと思うんですが、大丈夫でしょうか?』

(*色んな方面に失礼)




すると担当のT氏は涼しい顔をしてこう答えたのだ




担当T氏『ええ…知っていますとも。









だって私、18歳の頃からあのブログを読んでいるその変態の一人なので(キリッ!)






なんと話を聞けばこのT氏、サッカー部でボールを追いかけていた高校時代から将来出版の仕事について、いつか自分の本を出せる日が来たらあの変態ブログを一冊の本にして世に送り出そうと企んでいたという生粋の変わり者

そしてこの度、本当にオファーをくれた、という訳である。


なんという壮大なストーリー!
(今のところ登場人物変態しかいないけど)





こんな粋なオファーを受けて日和ってる変態いる?





いねえよなぁ?

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しかし、二つ返事で受けたものの、そこからは苦闘の日々が始まった



店「ペップで現代サッカーを語るなら、やっぱライバルのクロップは外せないですよね?」


T氏「いいですね!入れましょう!」


店「となればモウリーニョも…」


T氏「いいですね!入れましょう!」


店「また違った立ち位置のアンチェロッティも語らないとですし、そうすると師弟関係のジダンにも言及して…」


T氏「いいですね!入れましょう!」


店「王道とは言い難いですが、ガスペリーニみたいなキワモノも…」


T氏「いいですね!入れましょう!」


店「そしたらビエル…」


T氏「入れましょう!」



このような果てしないワンツーパスの交換により、書く範囲もテーマも取り上げる監督も膨大に広がっていき、自分が納得するまで書切った頃には1年半が経過していました(爆)


その間、長いことこのブログも放置してしまいましたが、その分、今回の本に特濃でぶち込まさせていただきました!


今回は本書の「まえがき」を原文そのままにこちらに完全掲載させていただきます。
全変態の皆様のお手元に届く事を願って―












「サッカー店長の戦術入門(まえがき)」完全掲載

本書を手にとってくださった奇特な皆さま(敢えてリスペクトを込めてそう呼ばさせて下さい)、はじめまして。まず始めに簡単な自己紹介も兼ねて、私が「サッカー店長」として本書を上梓するまでに至った経緯をご紹介させていただければ幸いです。

元々、私自身はサッカーとは無縁の少年時代を送っていた、ごく普通の運動音痴でした。特に体育のサッカーでは皆の足を引っ張るのが嫌で憂鬱な気分になっていたことを今もよく憶えています。そんな私が12歳の頃、運命を変える出来事が起こります。それが1993年のJリーグ開幕でした。

同世代のファンなら当時のことはよく憶えていらっしゃる方も多いかとは存じますが、現代の日本では到底考えられないような熱狂がそこにありました。超満員の国立競技場がまばゆいカクテルライトに照らされ、顔にお気に入りのクラブのペイントを入れた若いサポーターが耳慣れない音のチアホーンを鳴り響かせていたあの日。たまたまTV放送でそれを目撃した私は、「この国で何かとてつもないことが始まろうとしている」という予感に、わけも分からず興奮していました。それからは熱に浮かされたように、毎週放送されるJリーグの試合を全試合録画して繰り返し観る日々の始まりです。周囲の同級生達が部活動や勉学、恋愛と青春を謳歌する中、私はひたすらサッカーを「観る」ことに青春を捧げていたのです。今振り返ってみても何か悪いものに取り憑かれたのではないか、としか説明が付きません。


そうして来る日も来る日もサッカーの試合を観ていると、素人ながらにいくつかの疑問が湧いてきます。中でもゴールはフィールドの真ん中にあるのに、何故どのチームも回り道するかのようにサイドへ迂回するのか?は大きな疑問でした。当時は今と違ってインターネットも発達しておらず、グーグル先生に聞く訳にもいきません。そこで本屋や図書館でサッカー関連の書籍を漁ってみると、どうやらサッカーはただ走ってボールを蹴るだけに収まらない領域があることを知ることになります。それが私が初めて「戦術」と出会った瞬間でした。


元々運動神経が悪かった私は、ことさらこの頭脳戦の領域に興味を惹かれ、更にのめり込むようになります。
世界中のチームの戦術、過去のW杯の歴史、最先端のトレンド、戦術に関する情報ならば、ありとあらゆるものを集める日々が始まりました。観た試合は全てノートにメモを取り、フォーメーションや監督采配、拙い戦術分析を書き始めたのもこの頃です。頭を使って戦略で相手を出し抜く、その過程に覚えるワクワク感は今でも1ミリも変わっていません。



そんなサッカー漬けの日々も気付けば10年を超え、多くの同級生達が社会人として着々と人生を歩む中、私はと言えば相変わらずの日々を送っていました。アルバイトをしてお金が貯まると海外にサッカー放浪の旅に出て、お金が尽きる頃に戻ってきてはまたアルバイトをして…の繰り返し。当時の流行り言葉で言うなら「フリーター」というやつでしょうか。日本でのサッカーブームも一段落し、いい歳をして365日サッカーに浮かされているような人間は明らかにこの社会で浮いていたと思います。しかし、その海外放浪の日々で私は一つの確信を得たのでした。

あれは初めて海外に一人でサッカーを観に行った時の事です。W杯よりもレベルが高いと言われる欧州選手権を観に、私はオランダを訪れていました。そこで観たフランス代表の試合のある場面で不思議な感覚を体験したのです。
それはフランスが攻め込まれた後、自陣でフランス代表のSBテュラム選手がボールを奪った瞬間のことです。ボールは奪えたものの、あいにくテュラム選手は敵のFWに囲まれていたので、自陣ゴール前ということもあり前線にロングフィードを蹴るかな、と観ていました。ところがテュラム選手はDFとは思えない巧みなステップワークで敵の包囲網をかいくぐると、近くにいた味方選手に横パスをつなぎました。パス自体は何でもない横パスですが、ここで苦し紛れにクリアに逃げるのと、パスでつないでマイボールにするのとでは、その後の展開に雲泥の差が生まれる場面です。スタンドで観ていた自分は思わず、さすが世界トップレベルのプレーだ、と感嘆の溜め息を漏らしていたその時、スタンド全体から自然と拍手が沸き起こったのです。つまりこのスタジアムにいる人々は皆、今起きたプレーの価値の高さを分かっている、ということです。シュートシーンでもなければGKの決定的なセーブでもない、SBの横パス1本でこのような反応をスタンドが示す光景を私はそれまで経験した事がありませんでした。その時、言葉も文化も全く違う異国にいながら、「サッカー」という文法で彼らとつながり、日本では浮きまくっていた自分がつかの間受け入れられたような、そんな感覚を憶えたのです。もちろん私の一方的かつ勝手な妄想ですが、少なくともサッカーを深く知らなければ通じ合えない瞬間だったことは間違いないと思います。



他にも海外のサッカー事情は驚きの連続でした。オランダではオランダ代表の試合がキックオフされると、本当に街中から人々の姿が消えました。そして試合を観ていなくても街を歩いていれば、家々から起こる喝采でオランダの得点を知ることが出来ます。南米ではゴール裏の金網に半裸でよじ登ったサポーターが半狂乱になりながらチームを鼓舞する姿に衝撃を受けました。そんな彼らを見て「人生の中にサッカーがある」のではなく「サッカーの中に人生がある」、そんな生き方を尊く思うと共に、自分の中で一つの確信が芽生えたのです。このサッカーという競技、文化、言語は人生を賭けるに値するものだ、と。



欧州や南米等、一通り行きたいと思っていた国に行き尽くした私は、今度は少しでもサッカーに関わる仕事がしたいと思い立ち、地元のサッカーショップで働くことにしました。その頃、ちょうど世間ではインターネット通販(楽天、アマゾン)が盛んになり始めた時期で、自分が働いてたショップでもネット通販事業の拡販に発信力のある人間が求められていました。既に職場内でも異常にサッカーに詳しい「変態」として知れ渡っていた私が、気が付けばネット通販部門の「店長」に抜擢されることとなります。即ち、これが「サッカー店長」誕生の瞬間です(笑)。


しかし、当初はネット通販の売上が思ったように伸びず、苦悩の日々でした。少しでも売上増につながれば…との思いで始めたショップブログにも誰も訪れてくれません。そんな誰も読んでくれないブログを日々更新していると、ふつふつと私の中に巣食う変態の虫が顔を覗かせるようになります。どうせ誰も読んでいないなら…の軽い気持ちでショップとは全く関係のない、最近見た試合の分析記事が紛れ込むようになるまでそう時間はかかりませんでした。ところが、この試合分析が一部の同志にハマったのか、以降少しづつブロクのアクセス等が伸び始めるではないですか。コメント欄にも「分析、面白いです!」などの有り難いお言葉をいただくようになり、売上にも少しづつ影響が見られるようになります。

完全に調子に乗った私は、気が付けば2万文字にも渡る戦術分析のブログを書き綴るようになっていました。完全に常軌を逸していますが、こと戦術の話しになると私にはブレーキが付いていないのです。なにせ既に15年以上もの間、私の中には誰に披露するでもない戦術に関する知見が溜まりに溜まっており、ダムの決壊は時間の問題だったのです。ところが人生、何が起こるか分からないもので、このブログが次の思わぬ転機となりました。



なんとJリーグクラブの藤枝MYFCの当時の社長がこのブログを目にし、チームの戦術分析官として自分にオファーをくれたのでした。恐らく当時、サッカー未経験の分析官など日本のサッカー界では異例中の異例の出来事だったと思います。もちろん私はこのオファーを快諾し、2014年にプロの戦術分析官としての第一歩を踏み出します。以降、4年に渡って藤枝で務めた後、現在は関西リーグからJリーグ昇格を目指すおこしやす京都ACの一員としてサッカー漬けの日々を奮闘しています。


プロの現場の最前線に立たせていただいたことで、今まで見えてこなかった日本サッカーの一面が見えてきました。自分もそうでしたが、ファンの立場で試合を観てああでもない、こうでもないとサッカー談義に花を咲かせるのは楽しいものです。これは間違いなくサッカーが持つ魅力の一つで、ファン、サポーターの特権のようなものだと思います。一方でどこまでいっても現場で実際に起きている内情については知るよしもありません。かといえば方や現場は現場で外部の意見や知見を積極的に取り入れる姿勢が当時はまだ少なかったと思います。そういった姿勢は外から観ているファン、サポーターからすると歯がゆく感じられたりすることもあるでしょう。

私はある意味、この両面に片足ずつを置いているような、サッカー界ではレアな立場に身を置く機会をいただけたと思っています。だからこそ、なるほど外からでは見えない「現場の現実」というものをこの数年でたくさん経験させていただきました。一方で、やはりここは外部の意見も積極的に取り入れた方が良いのでは、と感じる部分も発見することが出来ました。だからこそ本書にはこの「外からの客観的な視点」と「内部の現実」の両面を盛り込んだ戦術論を書かせていただいたつもりです。


最後に、本書のテーマである「戦術」の魅力とはなにかを私なりにお伝えして、まえがきの結びとさせていただきたいと思います。
私はブログのタイトルにもしていたように、常々「戦術とは浪漫である」と思っています。戦術は過去の偉大なチームと現在のチームを線でつなぐ一本の糸のような役割を果たします。例えばスペインのFCバルセロナで考えてみましょう。その物語は戦術史に一大革命を起こした1974年オランダ代表の「トータルフットボール」抜きに語れません。

この当時FCバルセロナ監督と兼任でオランダ代表を率いていたオランダの名将ミケルスの元には、愛弟子として同じくFCバルセロナ、オランダ代表、双方で大活躍中のクライフがいました。そしてクライフが監督としてFCバルセロナに帰還すると、クライフ流にアレンジされたトータルフットボールは完全にこの地に根付きます。そのクライフ監督の「ドリームチーム」と言われたバルサで司令塔を務めていたのがペップ・グアルディオラになります。後にペップが監督としてバルサを立て直し、黄金時代を築いた時の中心選手の一人はシャビでした。そして今、シャビがそのバトンを受け継いで物語は続いていくー。オランダの名将ミケルスからシャビに至る半世紀にも及ぶその過程を「戦術」という観点でつなぐと、見事に浮かび上がってくる一本のストーリー。私はこの一大ストーリーにこそ、歴史の浪漫を感じるのです。サッカーを点ではなく線で観ることの魅力が「戦術」にはあります。

そして過去を知ることは現在を理解することであり、更にそれは未来を予測することにもつながります。例えば現在、戦術のトレンドワードとして語られている「5レーン」や「ハーフスペース」「偽SB」や「可変システム」に至るまで、それらは全くのゼロから生み出された訳では決して無く、全て過去の歴史にその源流をみてとることが出来るのです。


過去から引用され、現代風にアレンジが加わり、そしてまたそれらが影響しあって次のトレンドを生んでいく。それが戦術史なのです。したがって本書は過去から現在、そして未来へと続く戦術史の糸を手繰り寄せるような構成になっています。

本書が貴方にとって戦術が持つ本当の魅力を知る、その「入門」になってくれたなら、これ以上の喜びはありません。



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⇒amazon『サッカー店長の戦術入門』
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なぜモウリーニョだけ

面白かったです。けどペップ、クロップが自らのサッカー観を変えていったのに対しなぜモウリーニョは変わらなかった、変えれなかったのでしょう。チェルシー時代のセスク、レアル時代のモドリッチ等彼が活かしきれない駒にもテンプレがあるように思います。メガクラブの手駒を持ってしても一度止めたバスを動かすのは簡単なことではないのでしょうか。。。

本読みました。

本読みました!
ブログで紹介されてた試合も載ってて面白かったです。
お気に入りのデラペーニャも出ていてニヤニヤしちゃいました。

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