ペップとモウリーニョ 絡み合う両者の思惑 【クワトロクラシコ 第3ラウンド レビュー】

*2011-04-29更新 (アーカイブ記事)








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<クワトロクラシコ 第3ラウンド >


「クワトロクラシコシリーズ」もあっと言う間に第3ラウンド。


CL準決勝の1stレグを終えた。



このシリーズが始まる前は

「いくら何でも4連戦は多過ぎ」 「クラシコの価値が・・・」 「さすがに胃もたれ起こしそう」

そんな風にも思ったものだが、
蓋を開けてみれば「もうあと1試合しか見れないのか・・・」と一抹の寂しさを覚える始末。



何試合続けて見ようとクラシコはクラシコ。


さすがの安定感である。


では、残念ながら試合の展開上、おそらくこれが最後の「クラシコレビュー」となるであろう

サンチャゴベルナベウでの1stレグを振り返っていこう。



<想定通りの両布陣>

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両チームのスタメンは上記の通り。


Rマドリーは予想通りのメンバー。

このシリーズで一貫して機能している「3センター」を軸にした4-3-2-1。

ケディラの代わりには想定通りラサナ・ディアラを起用してきた。


バルサは「復活したカピタン」ことプジョルを左のSBに、
故障で欠場のイニエスタに代わってケイタを起用して並びはいつも通りの4-3-3。

(3トップ両翼の並びがいつもと逆になっているがこれは後ほど検証したい)



事前に想定された中でも最も無難な布陣を敷いてきた事が
この日のペップの狙いを端的に表している。


これまでの2試合とは違い、このCLラウンドは「180分の勝負」


ペップとすれば最悪このベルナベウでの90分を「0-0」で折り返せば、
次のカンプノウでいくらでも決着はつけられると踏んだのだろう。


これもCLにおける一つのセオリーではあるが・・・・。



<驚きと共にキックオフ>


試合は一つの驚きと共にキックオフされた。


驚きとはバルサが自陣から攻撃を組み立てようとしたその時、
Rマドリーが敷いた陣形である。



ロナウドを含めたフィールドプレイヤー全員を自陣に下げただけでなく、
ディマリア、エジルの両WGを中盤のラインに下げ、
自陣バイタルエリア手前にアンカーのアロンソを1枚残し、
2列目のセンターにはCロナウドを下げてFWは0枚。



つまりピッチに描かれた陣形は・・・



4-1-5-0!!


完全に自陣に網を敷いてバルサの攻撃を待ち受ける体勢だ。


この布陣に対し、バルサは当然CBが自由にボールを持って組み立てられるのだが、
なかなかレアルの網に飛び込んでいかない。


1つタテパスを入れても、Rマドリーの網が取り囲もうとする姿勢を見せれば
すぐにバックパスでやり直しを図る。


どちらのチームも極力リスクを減らしたプレーの連続で

必然的に試合はすぐさま膠着状態に。



まるで剣豪2人が鞘にかけた手から刀を抜かず、

ジリジリと睨み合うような展開。



これは両監督の思惑が複雑に絡み合った結果でもある。



<絡み合う思惑 【モウリーニョの狙い】>


考えてみればクワトロクラシコもこれで3試合目。



この短期間に連続して3試合も同じカードが続けば、

お互いがお互いの狙いと意図を掴み合っているような状態だ。


この試合のプランが、事前の2試合を踏まえて編み出されたのも当然の話である。



まず、マドリーのモウリーニョであるが、
直前のコパレルレイ決勝における反省点がよく活かされたプランで臨んできた。


その【反省点】とは、前半の飛ばしすぎが祟ってガス欠を招き、

神ージャス降臨で何とかしのいだものの、サンドバック状態に陥った後半45分にある。


このガス欠を招いた原因は、「ボールではなく人につく」ディフェンスで

3センターに対しマーカーを追いかけ回す事を要求しただけでなく、

攻撃でも長い距離を走らせるという「負荷のかけ過ぎ」に原因があった。



そこでこの試合では

あらかじめ自陣に網を引いて待ち構える事で体力の消費を抑え、


3センターに対してもそれぞれのマーカーにはマンツーマン気味でつくが、

マーカーがバルサ陣地に引いていく動きに対しては

ある程度のラインを越えてからは深追いせずに放させ、

自陣の網から はみ出させない事で3センターの稼動範囲を制限。



そんなモウリーニョの思惑があっての4-1-5-0だった訳だが、


これをもって

「ベルナベウでの引きこもり」 「アンチフットボール」とする声には

試合を片方の視点からしか見ていないと言わざるを得ない。



今更モウリーニョの経歴を持ち出すまでもなく、

彼はCLのスペシャリストなのだ。


「180分」の試合を想定してモウリーニョの立場に立てば、

ペップとは間逆のプラン、「ベルナベウでリードを持っての折り返し」は絶対に譲れない。



当然だがモウリーニョは「勝つ」為にこのプランを選択した。



Rマドリーほどの戦力を持ったチームが11人で張った自陣の網に対し

バルサが飛び込んでくれば、

そこでボールを奪ってのカウンターは必ず一定の確率で生じる得点機。



事実、コパデルレイ決勝の前半では

攻撃に上がったバルサSBの裏をロナウドやディマリアが高速カウンターで突く事で

何度もチャンスを作っている。



守備では自陣に引いて体力を「溜め込み」、

奪うやいなや高速カウンターで一気に仕留める。



ガス欠のリスクを最小限まで抑えつつ、

自軍の最大の強みである高速カウンターを最大限に活かす。



モウリーニョの「勝つ」為のプランがそこにはある。





・・・・では何故、試合は膠着してしまったのか?




答えは簡単。



バルサがレアルの張った網に「飛び込んでこなかった」からであり、


つまり原因はモウリーニョのプランにあるのではなく、

むしろそのプランにペップが「乗ってこなかった」からなのである。




<絡み合う思惑 【グアルディオラの場合】>



片や、グアルディオラは事前のクラシコ2試合をどう捉えていただろう?


バルサというチームとその指揮者グアルディオラは

これまで基本的に相手に合わせるのではなく

「自分達のサッカーを貫く」事で勝利を重ねてきたチームである。



・・・・いや、このクラブの歴史を遡れば勝てなくなった低迷期でさえ

このスタイルを崩す事は無かったので、

厳密に言えば勝ち負けに関係なく"このスタイルを貫く"事こそが存在意義のチームというべきだろうか…(^^;



このバルサと対戦する際、
事前にプランを練るのはモウリーニョでなくともそれは比較的容易な事だ。


最初からバルサの出方は分かり切っているのだから。

(問題は分かっていても止められない点にあるのだが・・・(^^;)



ところがグアルディオラはこの試合で一つ、
バルササッカーの大きな特徴に軌道修正を施してきた。


今年初のタイトルとなるはずだった 国王杯を取り逃したあの試合-


相手の注文に敢えて乗る形でいつも通りのサッカーを貫き、

まんまと両SBの裏を再三に渡って突かれ、

遂にはサイドを破られてのクロスから決勝点を献上・・・・。


(しかもマドリーのお調子者が直後に国王杯をぶっ壊すというコントのオマケつきwww)



この敗戦を踏まえ、この試合ではバルサの大きな特徴の一つ

「同時に上がる両SB」を完全に封印。


左SBにプジョルを使ったのも「専守防衛」の表れであるが

右のDアウベスまでがDFラインに張り付いたまま離れない姿は

普段、バルサの試合を見ている方なら大きな違和感を覚えた事であろう。


結果的には、これでモウリーニョの狙いを外させる事に成功したペップだったが、

同時にこれは自軍の攻撃力ダウンも意味する。



それでもペップは3トップ+MF3枚による中央突破で

何とか崩せるだろうと踏んだのだろうが、

事はそううまく運ばなかった。



<機能不全に陥ったバルサのビルドアップ>


まず中盤におけるビルドアップである。


バルサのビルドアップの始点はいつもアンカーのブスケス。



彼がシンプルにシャビ、イニエスタに預けるか、

もしくは真ん中の2人が警戒されている時は一度両サイドに張り出したSBに展開して

相手DFを横に広げるところから全ては始まる。




ところがこの試合では「SBの上がり」が封印されている上、

シャビはペペの密着マークにあっている。



残るはイニエスタの代わりに入ったケイタなのだが、
やはり攻撃時、ケイタにイニエスタの代わりを求めるのは荷が重いというもの。



この試合、守備では素早い潰しで貢献も出来たケイタだが、

マイボール時におけるポゼッションへの貢献度は0に近い。



やはりシャビ、イニエスタ、メッシ、ブスケスからなる

あの独特なバルサのパス回しは

カンテラという下地がない選手には厳しいのか・・・・。




結局出しどころに困ったブスケスがモタモタしている内に

Rマドリーの網が自分にもかかってくるものだから、

CBに下げるしか選択肢が無くなってしまう。




これでは一向にバルサの攻撃が構築されていかず、

バルサとすればレアルの網に対し

「飛び込まなかった」のではなく、実は「飛び込めなかった」のだ。





遂には見かねたシャビが
ブスケスの位置まで降りてきてビルドアップの始点を自ら駆って出ると
中盤の並びはブスケスとシャビによる「ドブレ・ピボーテ(Wボランチ)」状態に。




【シャビとブスケスによるWボランチへ】
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これで攻撃の「始点」は出来たのだが、
シャビが本来の位置から離れた事で新たな弊害が生まれてしまう。



そもそもバルサ本来のビルドアップの強みは

「ブスケス⇒シャビorイニエスタ⇒メッシ」

と短い距離を繋いでいく「相手にインターセプトのチャンスを与えない」繋ぎにあった。



これがシャビがブスケスの位置に降りたことで

「ブスケス+シャビ⇒   ⇒メッシ」 となってしまい、

メッシまでボールが上手く繋げない。


( 【メッシの孤立】 * ↑の画像でもメッシが映らないぐらいシャビとの距離が遠い )



う~ん・・・バルセロニスタならずとも
ここであの イニエスタたん のスルスルと抜けていくドリブルによる「ボール運び」が恋しいゼ・・・。




<失策の3トップ>


更にもう1点、前線の3トップにもペップは修正を施してきた。



コパデルレイ決勝の後半―


中央を閉めてくるRマドリーに対し、そのディフェンスを横に広げるためにメッシをWGに回したペップ。



ところが肝心のメッシが中に入ってきてしまう為、この狙いが活きなかった反省を踏まえ、

この試合ではメッシをCFに戻し、本来左に入るビジャを右に ペドロを左に回した3トップへ。



通常、ビジャを左に置いたバルサの3トップでは、

右利きのビジャが左から メッシが引いた事で空いた中のスペースへ度々入り込んで

「ストライカー」の役割も果たす「偽ウイング」にその特徴があった。


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だが、この「中へ、中へ」の3トップでは

Rマドリーの「中央封鎖」に対し、真ん中のエリアで交通渋滞を起こしてしまう。


ペップとしては、一度このRマドリーの守備陣を横に広げたい。



ビジャを左から右に回した狙いは、
右WGに「中へ」の動きではなく、本来のウイングらしい「外へ」の動きを求めた事による。



つまり、メッシを右WGに置いても中に入って来てしまう。


ペドロも本来は右利きながら左も同等に使える両利きの為、
シュートの際は中に入って来るだろう。


で、あるならば右利きのビジャを右に回そうという訳だ。



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だが、このペップの狙いは明らかに失策であった。



右に回されたビジャは本来「ストライカー」の選手であり、

自らドリブルで1対1をタテに仕掛けるタイプの選手ではない。


後ろのDアウベスも上がりを封じられているため

後方支援もない状況で孤軍奮闘するビジャの見せ場は

結局右から中へカットインしての不慣れな左足によるシュートという本末転倒な結果に。



メッシを真ん中で活かしたいあまり、

ビジャを犠牲にしてしまったような3トップとなってしまった。




結局前半は、攻撃しようにも機能不全に陥って組み立てもままならないバルサと

バルサに出てきてもらわねばカウンターが成立しないRマドリーとの
「噛み合わない攻防」に終始して45分が過ぎ去った。



<焦るモウリーニョ そしてあの退場劇へ・・・>



結局ペップは後半頭から、

3トップの並びをいつもの左ビジャ、真ん中メッシ、右ペドロへ戻す。


それでも最悪0-0でもいいペップにはまだ余裕があった。



焦ったのはモウリーニョである。


バルサが出てこないなら自分達からボールを奪いに行くしかない。


それもなるべく高い位置で奪えるのが理想だ―



恐らくモウリーニョのハーフタイムの指示はこんなプラン変更だったに違いない。



その狙いをより明確にする為、

後半頭からエジルに代わりアデバヨールを投入。



加えて3センターのペペ、ディアラにも「稼動範囲制限」を解除。


なるべく前に出ていって高い位置での潰しを指示。






その結果、前半に比べて俄然「自分達から取りに行く」姿勢が強くなったRマドリーだが

ここでバルセロナのGK、Vバルデスのキック技術が光った。



これまで自由だったバルサDFラインが

Rマドリーの前線による猛烈なプレッシャーに晒された為、

この時間帯はGKへのバックパスが急増。




通常、このバックパスにプレッシャーをかけたチームは、

相手GKに焦って前線へのロングキックを蹴らせる事で

自分達の陣地を押し上げ、尚且つ中盤でこぼれ球を拾う事で

試合を自分達のリズムに持っていけるものだが、



Vバルデスは全く慌てる事なく

このバックパスを味方に「明確なパス」として展開。



完全に11人目のフィールドプレイヤーとして機能する事で

Rマドリーの猛プレスを空転させる事に成功。



追っても追ってもバルサに展開され、

次第に「高い位置で奪う」はずだったRマドリーの選手達に焦りが見え始めると

これが一つの悲劇を生んでしまう。



高い位置で潰しをかけにいったペペが

足の裏を見せた危険なタックルを取られ一発退場に。



いつものようにこのブログではジャッジングの是非については話を置いておくとしても、

"いちサッカーファン"としては「90分 11対11」でのクラシコが見たかっただけに非常に残念。



<崩れた均衡 解き放たれたメッシ>


10人になったマドリーは「3センター」を解除せざるを得ず、4-4-1の布陣に。



3センター解体と共に「中央閉鎖」のロックが開かれてしまった事で

このスペースにメッシ、シャビ、ブスケスが好き放題進出すると試合は完全にバルサペースに。



【中央閉鎖が解除】
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4-4-1で守るRマドリー。

本来、ペペ(もしくはアロンソ)が潰していた中央のスペースが開いてしまいメッシがフリーになっている。


ここへシャビからボールが送られると・・・・


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一気にドリブルでボールを運ばれてDFラインが丸裸にされてしまう。



これを見たペップは試合のプランを「0-0でもOK」から

「残り30分でRマドリーを叩き、ここで決着をつける」に変更。



この日、何かとネックになっていた右のウイングに
本来のウインガータイプであるドリブラーのアフェライを投入。



更に右のDアウベスにだけ攻撃参加を解禁し、この右サイドから一気に攻勢をかけた。



これまでのクラシコシリーズを主にペドロ、ビジャのマーカーとして勤め、

その役割をほぼ完璧にこなしてきたマルセロだったが、

ここで急にタイプの違うアフェライのドリブルに対し後手に回ってしまう。



(野球でいう速球タイプから変化球タイプへのピッチャー交代、

もしくはチェンジアップのような効果が生まれる)





ペップの狙い通り、この右サイドを破っての鋭いクロスにメッシが中で合わせて先制。


(メッシにしては、めずらしいCFらしい得点)



1-0となってもバルサは攻勢の手を緩めない。



今度は空いた中央のスペースを使ってメッシ無双が発動しトドメの2点目が生まれた。
(アウェイゴール)




<クワトロクラシコ総括>


これでRマドリーは2点のアウェイゴールを背負い、

2ndレグはカンプノウでSラモス、ペペ、そしてモウリーニョを欠いた戦いを強いられる事となった。



もちろん勝負は終わってみるまで何が起こるかわからないが、

試合後の会見でモウリーニョも認めたように

これでほぼバルサの勝ち抜けは決まってしまったように思う。



そこで最後に軽くこの「クワトロクラシコ シリーズ」を総括してみると


バルサの「0・5トップ」に対する「メッシ封じ」として

「3センター」による「中央閉鎖」は非常に上手くいっていたように思う。



事実、Rマドリーが11人で、尚且つ3センターが体力万全の状態で機能している時は

バルサに得点どころか決定機も許していない。



あとはこれを「90分持たせる」工夫と

身体で潰しに行く守備に対する「退場へのリスクマネージメント」さえ万全にしておけば

或いは・・・・?と思わせるシリーズであった。




それでも今年に限って言えば

結局は、試合後の会見でペップ自身が語ったように



『メッシという選手に恵まれたチーム』が勝利を手にしたクラシコとなった。



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