スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『3-4-3を巡る冒険』 ~番外編~ 【ビエルサという男】

*2011-06-23更新 (アーカイブ記事)









2011-06-23_17-22-28_entry-10932214849_o0600032311308351012.jpg
<ビエルサの3-4-3>


今日は『3-4-3を巡る冒険』を締めくくる【番外編】


この人抜きに3-4-3は語れないだろうと言うビエルサネタでまとめてみました。







前回の記事で取り上げた「オランダ発 攻撃型の3-4-3」ですが、

現在のサッカー界でこの布陣を採用しているチームは皆無と言っていいでしょう。



バルサもクライフの哲学は継承しつつも布陣は4-3-3を採用していますし、

「最強アヤックス」を作り上げたファンハールも

現在はバランスのとれた4-4-2をメインに使っています。



理由はいくつか考えられますが、

やはり「リスクが大き過ぎる事」と「緻密なシステムゆえ、チーム構築に多大な時間を要する事」が

大きな原因ではないでしょうか。



そんな世知辛いご時世にあって、

今でも尚「3-4-3」を使い続ける男がいます。



「ロコ=(変人)」の相性で呼ばれる

アルゼンチンが生んだ名将ビエルサ その人です。



若い頃からサッカーにおける戦術とシステムの研究に心奪われたビエルサは

たまの休日だろうが、どこの監督も努めていないフリーの期間だろうが、

もっぱら部屋に閉じこもって、日がな一日 世界中から取り寄せたサッカーのビデオを食い入るように見るのが日課だそうな。



そんなビエルサのキャラクターがよく表れた昔のインタビュー記事が今でも忘れられません。



ビエルサ

『私にとっては どんな高級な服も 絶品の料理も 絶世の美女も興味に値しない。

フットボールの進化を見極める。

その崇高さに比べたら全てが陳腐に見えるのだ』






これを見た時は思わず


「実は俺の本当の父親ってビエルサじゃねえのか・・・?」


と思ったものです(爆)



ビエルサさん、あんたカッケーよ・・・・。




サッカーの監督というよりは「研究者」と言った方が近い

世界でも非常に稀な人物と言えるでしょう。



彼にとって目の前の試合の勝ち負けはそれほど重要ではなく、

勝った試合の会見で不機嫌そうにしている時もあれば、

負けた試合で満足そうにしている事も。



全ては自分のチームが

思い描く理想のサッカーが出来たかどうか


彼の興味も 監督をする理由も 全てはそこにあります。



そんな筋金入り戦術マニアのビエルサが

自身の生涯をかけて取り組んでいる研究が「3-4-3」の進化に他なりません。



何故、このシステムにそこまで拘るのかは定かではありませんが、

世界中のあらゆるシステムを研究し尽くした結果、

この「3-4-3」こそが最も難易度が高く、研究しがいがあると考えたのかもしれません。



今ではすっかり「3-4-3と言えばビエルサ」と呼ばれるまでになりました。




ビエルサはまず、

オランダが生み、クライフが世界に示した「3-4-3」の改良を試みます。



具体的に言えば、それは「流動性を加える」というものでした。



クライフが「サッキのゾーンプレス」打破に向けて編み出した3-4-3は

その基本理念として「ポジションを崩さない」事が念頭にありましたが、

つまりこれは各ポジションで選手個々が相手を圧倒する技量を持っている事が前提になります。


これではバルサのような世界有数のビッグクラブならいざ知らず、

そうではない世界の多くのチームでは採用しようがない

非常に汎用性の低い代物です。



まあ、ここらへんは元々サッカー史にその名を残す名プレイヤーだった

クライフらしさが滲み出ていると見る事も出来るでしょう。



つまり、クライフにとってのシステム観とは

「いかにプレイヤーの能力を引き出すか」であって

システムはその土台に過ぎない と。


あくまで「選手>>>システム」の関係ですね。




対するビエルサは、現役時代は無名の一選手に過ぎず、

そもそも25歳の若さで見切りをつけて引退しています。


そんな彼にとってのシステム観は

「戦術とはプレイヤーの能力を補うもの」であって、

戦術次第では選手個々の能力で劣るチームが勝つ事も出来るのだから

プレイヤーは戦術の土台に過ぎない と考えているフシがあります。


つまり「選手<<<システム」という捉え方ですね。



この辺は試合中、ピッチを見るよりメモを書いている時間の方が長いファンハールも同じ部類に入りますが。




この2つの考え方については、どちらが正しいというものでもなく、

"どちらの意見も一片の真理を突いている"というのが私見ですが、


とにもかくにも【3-4-3】なんていう極端なシステムを志す人間は

性格も極端だなぁ・・・・なんて思ったり(笑)




話が横道に逸れました(^^;

話題を「ビエルサの3-4-3」に戻しましょう。



ビエルサはそれまでポジション固定型だった3-4-3に

ポジションチェンジの動きとプレッシングを加える事に着手します。



そうです。


それまで「プレッシング」を打破する為のシステムだった3-4-3に

「プレッシング」そのものを持ち込んだのです。


このへんは、プレイヤーとしての変なこだわりや哲学が無く、

あくまで「サッカーの進化」の為には

良いものは何でも取り入れようという貪欲な姿勢が表れていますね。



(クライフさんが聞いたら怒るで しかし・・・・)




ビエルサにとっての「流動性」とは

逆説的ではありますが「オートマティズム」そのものです。



基本的にビエルサは選手個々の閃きや判断というものを信用していません。


選手個々のレベルが高ければ、

局面ごとの判断を選手に任せて上手くいく事もあるだろうが、

それでは選手の質で劣るチームは一生勝てないし、

そもそもチームの行く末を一個人の閃きに賭ける事自体リスク以外の何物でもない と。



そこでビエルサは長年の研究から

サッカーの試合で起こるあらゆる局面における選手個々の動きを最適化、

つまりパターン化し、極限までオートマティズム性を高めようと試みます。



よって彼が行うチーム練習では、

「SBのポジションが10cmズレている」という理由で

一から戦術練習をやり直すなど

とにかく徹底してディティールにこだわります。


(一説ではスローインからの展開パターンだけで50を軽く超えるとか・・・・)



自身が頭の中に思い描く、完璧なチーム、完璧なサッカーへと限りなくチームを近づけていく・・・。



そんなビエルサの最初の作品が

98年から4年をかけて作り上げた2002年W杯のアルゼンチン代表です。




ええ・・・、ご存知の通り、「優勝候補筆頭」と持ち上げられながら

アッサリとグループリーグで敗退したあのチームです(笑)



ただ、結果こそ出なかったものの

僕はこの2002年のアルゼンチンは素晴らしいチームだったと

今でもそう思っています。


何より南米予選で見せたパフォーマンスは圧倒的だったし(ブラジルを子供扱いにしたった)、

練り上げられたオートマティズムが生む攻撃サッカーは圧巻でした。



特筆すべきはオルテガのドリブルさえ、

チームの中のオートマティズムに組み込んでしまう懐の広さ。


(オルテガが中にカットインした時、残りの9人がとるべき動きとポジショニングが完璧に組まれていて

例えそこでボールを奪われても微塵にもピンチにならないよう仕組まれていました。)



しかし、この完璧さは「脆さ」と表裏一体。


チームの重要なパーツであるベロンが不調に陥った本大会では

そこからチームの歯車が狂いだし、崩壊。


代えのパーツがあれば何の問題もなかったのですが、

システムの完成度を上げるため、

4年間をほぼ固定したメンバーで戦ってきたツケが最後に出てしまいました。




もしこれがクライフの【選手の資質に寄り沿った】「3-4-3」なら

ベンチに能力の高い選手さえいれば何とでもなったでしょうが、

反面、選手の質に恵まれないチームでは手も足も出なくなる「脆さ」を抱えているのとは対照的。



ビエルサの「3-4-3」は

訓練さえ受けていれば選手個々の資質に頼らない強みがあるものの、

反面、どんなに質の高い選手がいても、

チームのメカニズムを理解していないと全く使えないという「脆さ」を抱えています。



・・・まあ、一長一短ですね。





このW杯の失敗の後、ビエルサは2004年のアテネ五輪に向け

若いチームでもう一度、一からのチーム作りに着手します。


実績は無くても能力の高い選手が集まったアルゼンチンのアテネ世代。


(テベス、マスケラーノ、ダレサンドロ、ルーチョゴンザレス、コロッチーニ…etc)



W杯での反省を活かし、控え選手も含めたチーム全体の底上げを計った

このアルゼンチン五輪代表(アテネ)のチームは


あくまで個人的な意見ですが、

僕が過去見た全てのアルゼンチン代表(フル代表も含む)の中で最強チームだったと

未だにその考えに変わりはありません。



「選手個々の能力」と「組織のオートマティズム」が高次元で融合したチームは

圧倒的な強さで金メダルを獲得。


大会初戦から決勝戦に至るまで

他の出場国とは、まるで「大人と子供が戦っている」ぐらいの差があったように思います。




この大会で、一つの到達点と達成感を得たビエルサが

次の新天地にチリ代表を選んだのもごく自然な流れだったかと。



いよいよもって自身の理論に自信をつけたビエルサが

「個々の能力で劣るチーム」で研究を開始。


このへんが「研究者魂」の面目躍如、

マッドサイエンティストらしいじゃあ~りませんか(笑)



チリ代表監督に就任したビエルサは

早速、国内の無名な若手を集めた壮大な実験をスタート。


これまでのアルゼンチン代表の面々と違い、

選手個々の我が薄いお陰で

チームはより「ビエルサ濃度」の高いものへ・・・。



これが功を奏して南米予選を2位という好成績で抜けると

ハイライトは本大会ベスト16で実現した「対ブラジル」戦。



優勝候補筆頭のブラジル相手に

チリは無謀にも(?)3-4-3で挑みます。



この試合で、店長が忘れられないシーンがあります。




【チリが見せた3-4-3のオートマティズム】
2011-06-23_17-22-28_entry-10932214849_o0600034211308269382.jpg



局面は中盤でボールを持ったチリ(白)がブラジル相手に果敢に仕掛けるところ。


前線は3トップ(一番左のWGは見切れ)、中盤は流れの中でやや形が崩れているものの、ダイヤ型。



実に7人もの選手を敵陣に送り込む姿勢もアッパレですが、驚愕のシーンはこれに続く流れにあります。



右サイドから崩しを図るチリ。


ここで3-4-3のオートマティズムが発動。



カルチョ初の3-4-3と違い、オランダ発の3-4-3の大外と言えば・・・・??



2011-06-23_17-22-28_entry-10932214849_o0600034211308269383.jpg


テッテッテッテテ テッテッテテッテ~♪

 (マリオのスター発動音)


右CB「さぁさぁ!こうなったら俺を止める事は出来ないぜ~~!!」




大外を物凄い勢いで1人駆け上がってきました。


確認するまでもなく、彼は3バックの1枚。右のCB(SB)です。



ブラジル相手に8人目を攻撃に動員する この潔さ。



普通のチームだったら後ろ髪を引かれるものですが、

彼らにとってはコレが普通なんです。


サイドを崩す時は、躊躇無くCBが大外を駆け上がる。


このオートマティズムこそが、ビエルササッカーの強み。



これで右を崩したチリが中へクロスを上げると・・・・



2011-06-23_17-22-28_entry-10932214849_o0600033311308269384.jpg



ブラジルはこのクロスをドッカンクリア。


チリCB(あぼ~ん・・・)



このボールが大きくチリ陣地へ跳ね返されると・・・・




2011-06-23_17-22-28_entry-10932214849_o0600035511308288520.jpg


チリは2バックしか残ってねぇwwwww




まあ、3バックの内の1枚が上がっていけば、そりゃこうなりますわな。



本来、右のCBが守る黄色い丸で囲ったエリアはポッカリとオープンスペースが空いており、

ここをロビーニョに使われるとブラジルのカウンター発動で失点。



しかし、そんなリスクは最初から百も承知。


個々の能力で劣るチームが攻撃で相手を崩そうと思ったら

数的優位の確保が必須。


故に、それを迅速に作り出す為のオートマティズムであり、

実際このシーンでもクロスを上げるところまでは成立しているのですから。



結局、試合には敗れましたが、

この大会で言うならばブラジルが見せたガチガチのカウンターサッカーより

よっぽどチリの方が忘れられないチームでしたよ。ええ。





<3-4-3の難しさ>




これを見ると、何となく

現在のサッカー界から「3-4-3」が消えている理由がお分かりいただけたかと思います。(^^;



これまで見てきたように過去の3-4-3の成功例は

どれもチームと監督の奇跡的な出会いが必要条件です。



クライフは自身の絶対的なカリスマ性を用いて

選手達に自らが理想と掲げる新しいサッカーを提示し、


ファンハールとビエルサは

まだ若く無名ながら、それでいて持っている能力はべらぼうに高いという

奇跡的なチームに恵まれて、


それぞれ結果を出してきたのは偶然ではありません。





この先、果たしてそのような奇跡的な出会いはあるのか・・・?



確率で言えば、ツチノコを探すようなものかもしれません。




でも、だからこそ店長は「3-4-3フェチ」が止められないのである。




(・・・以上、3回のシリーズに渡り、長々と店長の暴走にお付き合いいただき、ありがとうございましたww)


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

soccertentyou

Author:soccertentyou
年間300試合観戦のサッカー馬鹿によるサッカー馬鹿の為の戦術分析ブログ

【メールアドレス】
wowow_2000(あっとまーく)yahoo.co.jp

サッカー店長のつぶやき
最新記事
最新コメント
カテゴリ
読んだ記事が面白かったら1クリックをお願いします↓
サッカーブログランキング
更新カレンダー
07 | 2017/03 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
マイベストサッカー本10選
広告リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。