ウルグアイが見せた"懐の深さ"  【コパアメリカ決勝 ウルグアイ×パラグアイ】

*2011-07-26更新 (アーカイブ記事)








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<ウルグアイが見せた"懐の深さ">


開幕前は誰がこの地味な決勝を予想できたか「ウルグアイ×パラグアイ」。


それではコパのレビューシリーズを締めくくる決勝戦のレビューいってみましょう。



<両方チーム布陣>
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まずはパラグアイの布陣から。

この試合、ベンチ入り禁止のマルティノ監督は思い切った采配を見せる。
エースのバリオスとチーム一のドリブラーであるエスティガリビアをベンチに置いた守備重視の4-4-2。


なるほど、未勝利で決勝まで勝ち上がってきたパラグアイとすればこの試合もロースコアでの展開に勝機を見出したいのは当然だ。


というよりも、そもそもこのチームの勝ちパターンはこれしかないと言うべきか。


中盤に展開力のある駒や前線に決定力を備えたストライカーを持たないパラグアイが
ここまで勝ち(分け)上がってこれたのは徹底して試合を膠着状態に持ち込み、
焦れた相手がバランスを崩して攻め込んできた瞬間を見計らっての一刺しが頼り。


つまり自分達で相手チームを崩す攻撃力がないのなら、
相手の方からバランスを崩してもらうまで。


そういう割り切った戦いをチーム全員で徹底出来る開き直りがある。

狙うは1-0。何なら延長戦やPK戦だって望むところだ。


(思えば昨年のW杯での「日本×パラグアイ」戦は
120分、お互いがバランスを崩さずに"様子見"を続けた末のPK決着であった。)




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対するウルグアイの勝ち上がりは開幕初戦こそ3トップで臨んだものの、
これが機能しないと見るや早々の見切りで2トップに戻したのが奏功。決勝進出に結びついた。
(バルサシステムをギリギリまで引っ張ったアルゼンチンとは対照的)


よって、もちろんこの試合も4-4-2である。


実はウルグアイもパラグアイと同じく中盤に展開力のある選手が不在という事情を抱えている。
故に、しっかり引いてからのカウンターというロースコアの展開もやぶさかではないのだが、
わざわざパラグアイが望む展開に付き合う事も無い。


何故ならウルグアイはパラグアイが持っていない決定的な武器を持っているからだ。


ウルグアイにあって、パラグアイにないもの―



それは試合を決定付ける"ストライカーの有無"である。




<持つものと持たざるもの>


そう、前線にフォルランとスアレスを持つウルグアイは
むしろ試合をアップテンポの打ち合いに持ち込めれば勝ちは必然だ。


何故なら、そこで勝敗を分けるのは
打ち合った中で何本それを決める事が出来るかという決定力の差に集約されるからである。


問題はキックオフから試合のペースダウンを目論むパラグアイに対し、
どう自分達のペースに巻き込んでいくか―



そこでウルグアイのタバレス監督は今までの戦い方とは若干違うプランを決勝に用意してきた。


それが徹底して中盤を省略する【縦に速い攻撃】と前への【パワーを持った守備】の2つ。


【縦に速い攻撃】は女子W杯決勝でアメリカが日本に対して仕掛けてきた事と同じですね。
自軍の2トップを活かす為、早めのタイミングで裏のスペースに蹴りだしてFWにヨーンドン!させる・・と。


まあ、今大会のスアレスは反則級のキレ味なんで、
これがまぁ~多少無理目のボールでも鬼のようにマイボールにしちゃうんですな。(^^;


ただ、2トップを活かした速い展開ってのはこの決勝に限らず、

ウルグアイが本来持っている形の一つなので、

試合のミソになってくるのは【パワーを持った守備】の方です。



そもそも【パワーを持った守備】とは何か?


これは主にコーチ等が使うテクニカル用語の一つで、
要するにサッカーにおける守備の中でも"前方向へのディフェンス"ってのは
守備側に有利なディフェンスと言われておりまして・・・。


ディフェンスの選手が進行方向へ勢いを持って行う守備は
自分のマーカーと次の展開のパスコースを同時に視野に入れる事が可能な上、
例えボールを下げられたとしても
そのままの勢いで"前へ前へ"と継続して【パワーを持った守備】が行える、と。


これに対して、攻撃方向に背を向けながらプレスを受ける攻撃側の選手というのは前方への視野もなく、
エリアによってはミスからのボールロストが即失点につながりかねない厳しい局面に追い込まれている訳で、
どっちが主導権を握っているかと言ったらもう圧倒的に守備側なんですよね。


このへんが体格の小さい選手を集めていながらバルサの守備が崩れない要因だったりもするのですが、
まあ今はそれは置いておくとして・・・。



この日のウルグアイのゲームプランが秀逸だったのは
何より2つの攻守におけるプランが密接にリンクしていたっていう事だと思うんです。


要するに【縦に速い攻撃】ってのは、
例えマイボールに出来なかったとしても相手DFに後ろ向きでの処理を強いる訳で、
更にそこにはもう全速力で追ってる2トップもいる訳です。


だから【縦に速い攻撃】の段階でウルグアイは既に【パワーを持った守備】を同時に行っているようなもので、
この一見「攻撃」と「守備」に分かれていたゲームプランが
実はピッチ上では溶け合うようにして混ざっていた・・・と。


そう見る事も出来るかと思います。


では、このウルグアイの狙いが見事にハマった2点目となるフォルランのゴールを検証していきましょう。




【ウルグアイの"パワーを持った守備"が生んだ得点】




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パラグアイ陣内でのフィフティーボールに対しゴンザレスとパラグアイの2選手が競るところから局面はスタート





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競り合ったこぼれ球がパラグアイに渡ると、すかさずゴンザレスはこれを追撃。


この追撃に合わせて後ろからMペレイラ(?)が物凄い勢いで距離を詰め、挟み撃ちへ。



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いきなりの挟み撃ちに遭ったパラグアイの選手はたまらず近くの味方へボールを預けようとするが

2人の挟み撃ちによってこのパスコースを完全に読んでいたアルレバロが

前がかりに【パワーを持った】状態で詰める。


ここで注目したいのはパスを受ける選手が完全にアレバロに背を向けている状態であるという事。

これでアレバロは躊躇無く突進出来る。



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「待ってました!」とばかりに詰めたアレバロがボールを奪い、そのままの勢いで突進。

巧みに裏へ抜けたフォルランにラストパスを出し、これを冷静に決めた。


フィフティボールのこぼれ球から僅かパス2本、パスカットからラストパス1本、

時間にして3秒の電光石火の得点だった。


自分達が抱える「中盤の展開力不足」という弱点を補い、

自分達の武器である「2トップの決定力」は生かすという見事なプラン。



<ウルグアイが見せた"懐の深さ">


いや~お見事でしたね~。


でも、だったら大会の最初からコレをやってればよかったんじゃないか・・・

という意見もあるかもしれませんがそう単純な話でもありません。


"前へ前へ"守備をするという事は、同時に裏には常に危険なスペースが出来る事と隣り合わせ。

前へ勢いがついている分、ワンタッチの素早いパス交換や逆をつくターン&ドリブルなどでプレスがかわされた場合、
一気に数的不利に陥るリスクを抱えている訳ですね。


実際、ウルグアイは準々決勝のアルゼンチン戦において、
この裏のスペースでメッシをフリーにしてしまった事から失点を喫しています。


(この試合では失点後10人になった事もあり、
一旦後ろに引いて【迎え撃つ守備】に切り替えた事で勝利に結び付けました。)



つまり【パワーを持った前への守備】と後ろで【迎え撃つ守備】は
どちらがいいとか悪いではなく、使いどころの見極めが一番重要って事です。



その点、この決勝の相手がパラグアイという事を考慮すれば、

これはウルグアイのベストプランだったかな…という気がしますね。


なんせパラグアイには中盤のプレスをかわせる「展開力」も

一気のカウンターを決める「個の力」も無い訳ですから。


(まあ、このへんが未勝利で決勝まできちゃったチームの限界かな?)



試合は後半、もう行くしかなくなったパラグアイが

温存していたドリブラーのエスティガリビアやエースのバリオスを投入し、一気に攻勢に出ます。



しかし、ここでも光ったのはウルグアイの懐の深さでした。


すかさず今度は引いて「待ち受ける守備」にゲームプランを切り替え、

今度はウルグアイがゲームにテンポを落としにかかります。

(アルゼンチン戦でも見せた黄金の「2010W杯バージョン」!)


それでいながら、残り時間が僅かとなって総攻撃状態になったパラグアイの隙は見逃さず、

今度はカウンターからキッチリとどめの3点目を奪うしたたかさ。



今大会の出場全チームと比べても

このウルグイアというチームが持つ「懐の広さ」「引き出しの豊富さ」が最後に勝負を分けたかな…と思わせる

そんな象徴的な決勝戦でした。


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