バルサの3-4-3は何故失敗に終わったのか?

*2012-05-25更新 (アーカイブ記事)





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<バルサの3-4-3は何故失敗に終わったのか?>


さて、今季のバルサはまだ国王杯決勝が残っているとはいうものの、
店長の希望的観測ではこのタイトルはビエルサビルバオの初タイトルとなるはずなので(笑)、
今季のタイトルはシーズン開幕前の「スーペルコパ」のみという事になります。



・・すいません、ビエルサ愛のあまり調子に乗りました。m(_ _)m

(本当はペップへ国王杯のタイトルという餞別を渡そうと
モチベーション100%で臨んでくるバルサにガクブルです・・・。)



とは言え、バルサが今季も最大の目標としていたCLとリーガという2大タイトルを取り逃してしまった事は
既に規定事実であり、そこには何らかの原因が潜んでいた事は間違いありません。



そこで今日はバルサの今季を徹底総括!

大反省会のていでお贈りしたいと思います(笑)



<3-4-3に抱いた夢>



今季のバルサを語る上で外せないのが【3-4-3への移行】です。


開幕戦となったビジャレアル戦で衝撃的なお披露目(5-0で虐殺)を果たすと
当初は格下相手や限られた時間帯のオプションに思われていた3-4-3は
じょじょにその出番を増やして行き、
遂にはシーズンの行方を左右するクラシコやCL準決勝(チェルシー戦)の大一番で用いられるまでに。


見方によっては、今季は【3-4-3と心中したシーズン】と言えなくもありません。


昨季、既に完成の域にまで達していた4-3-3を敢えて一度壊し、
更なる高みを目指した今季のペップ。


そもそも何故、そこまでする必要があったのでしょうか?



サッカーには『勝っているチームはいじるな』という昔からの格言もあります。



そこでまずはペップが3-4-3へ挑戦するに至った理由を主に四つに分けて確認していきたいと思います。




【理由その1】 ~飽くなき理想の追求~


これはまさに一言で言ってしまえば『それがペップという男なのサ…』という部分で(笑)

彼にとってフットボールの原体験とはカンテラからプロに引き上げてもらった
クライフ率いるドリームチームに他なりません。


ペップバルサの肝とも言える「メッシの0.5トップ」の原型も既に当時クライフが実践していたものでした。


周囲は何かとドリームチームとペップのチームを比較したがりますが、
当のペップ本人は事あるごとに「比較論」ではなく「系譜論」として自分のチームを語っています。


つまり、「ドリームチームやライカールトのチームがあったからこそ、今のバルサがある」と。


そういう意味では、"バルサの監督になった者は常にバルサを進化させ続ける義務を負っている"と見る事も出来るかもしれません。

(「バルサを」の部分を「フットボールを」に置き換えてみてもいいですね)



そんな彼が今季ドリームチームの代名詞である3-4-3を取り入れ、
そこに独自のエッセンスを加えた全く新しいフットボールへ挑もうとした事はもはや必然と言っていいでしょう。


「現状に甘んじる者にバルサの指揮を取る資格はない」



彼のそんな心の声が聞こえてくるような気概に満ちたシーズンが始まったのです。





【理由その2】~モチベーションの維持~


さりとてペップを初めとする選手達だって人間です。

昨季、取れるタイトルは全て取り尽してしまった彼らにとって
何か新しい事に挑戦するというモチベーションは今季を考える上で不可欠だったのもまた事実。


チームに刺激を与えるというペップのメンタルマネージメントという一面は
【3-4-3への移行】を考える上で外せないファクターになってきます。



【理由その3】~セスクの加入~


「埋められた最後のピース」

"セスクの加入"も当然3-4-3へ舵を切る大きな理由の一つでした。


周囲からは

「そもそも必要か…?」「せっかくの理想的なチームバランスを崩す恐れがある」

そんな声も上がる中、ペップがセスクの加入にこだわったのは
何も彼を「シャビの後継者」や「イニエスタの控え」としてベンチに座らせる為ではありません。



当然、ブスケス、シャビ、イニエスタ、メッシ、そしてセスクと
このバルサが誇るカンテラーノ達を同時起用するプランこそペップが頭の中に思い描いていたもの。



となるとこれまでの4-3-3からDFの数を削ってでも
中盤もしくは前線にセスクの居場所を作る必要があります。


そう考えた時、最も現実的でシックリ来るのがこの3-4-3という訳です。



【理由その4】バルサ対策への対応~


「理由その1」が「理想」だとするならば
「現実」的な問題として今季のバルサに突きつけられた命題がこの【バルサ対策への対応】です。


日進月歩を繰り返す現代サッカーにおいて「常勝バルサ」は全てのチームのターゲットになっています。


既に多くのチームが色々な「バルサ対策」である程度の成果を出してきていた事もあり、
当のバルサの方も「進化」を迫られているという現実的な問題がそこにはありました。



そして実際にペップが目指した3-4-3は
バルサ対策を打ち破る為のギミックが幾つも盛り込まれていたのですが、
これがペップが思い描いてたいたようには機能しなかった・・・。



ここに今季の敗因があります。



続いての章では「何故3-4-3が機能しなかったのか?」


その核心に迫っていきましょう。




<3-4-3が機能しなかった3つの原因>



ペップのバルサを苦しめた各チームの「バルサ対策」の中でも最も早く広まり、
今や完全に対バルサ戦の【テンプレ】ともなりつつあるのが
【サイドを捨てて中を閉めるディフェンス】です。



これはバルサの心臓部であるブスケス、シャビ、イニエスタ+「降りて来るメッシ」の中央攻撃を防ぐ為、
外のエリアはある程度捨ててでも中に人員を投入して密集を作ってしまうという守り方です。


外からの単純なクロスとDFラインの裏を狙った一発のロングボールが
バルサの攻撃のメカニズムにほとんど組み込まれていない事を逆手に取り、
DFラインは後ろを気にせずある程度の高さを維持しつつ、
MFのラインを下げてこの2ライン間のスペースを消失。


守備のラインはいずれもペナルティエリアの横幅を取る事で、
とどのつまり守備ブロック全体を前後左右から中へ圧縮させたような守り方と言えるでしょう。


【サイドを捨てて中を閉める守備】

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これではさすがにメッシも前を向くスペースがほとんど無いばかりか、
シャビ、イニエスタらが入り込む余地も無く、パスを通す事もままなりません。


要はバルサが一番使いたいエリアのスペースが極端に消されている状態です。


ペップはこの膠着状態を打破する為、
今度は自分達の手で相手の守備網を前後、左右から引っ張って間延びさせる事を狙います。

その為の秘策こそが純正ウインガーを両ワイドに置いた3-4-3でした。



予断ではありますが、この両翼が敵のDFを左右に引っ張って中を空けるという発想は
元々クライフのドリームチームが採用していた戦術でもあります。



クライフ「左右のウイングは常に両足でタッチラインをまたげ」


なんていう逸話も残っているぐらい
当時のバルサは4番がフィールド中央で顔を上げた時、
両翼の選手は左右のタッチライン目一杯に開いているのが基本でした。


その後、やはりオランダ人のファンハールが率いていた時代にも
4番(ペップ)とフィーゴ、リバウドの両翼という関係は鉄板のまま。


そしてこれが当時、絶大な効果を上げていた背景には
サッキが提唱した「ゾーンプレス破り」という側面があったからだと言われています。



つまり当時からの時代の流れを追ってみるとこういう事です。↓



90年代前半~【サッキ革命】

フィールドのコンパクト化が進み、「スペースレス」「タイムレス」の時代へ。

「ウイング」と「ファンタジスタ」が消滅し、
技術や閃きよりも体力と筋力に優れた選手が重宝されるように。





90年代後期~2000年代中盤【ウイングの復権】


一方、極限までコンパクト化が進んだ流れに
技術でもってこれを打破しようというのがクライフを源流とするスペインで起きた【ウイングの復権】。

クライフはサッキのゾーンプレスなどには付き合わず、
あらかじめフィールドの広い範囲に選手を配置して
技術の高さを生かしたパスのつなぎでゾーンプレスの網をかいくぐる方向性を示した。

実際に狭いエリアに選手を集中してボール狩りを行うサッキのゾーンプレスは
その網をパスで逆サイドに繋がれた時に完全な機能不全を起こしてしまう。


4番の展開力と両翼の突破力+クロス精度は【ゾーンプレス殺し】には持ってこいで、
以降、時代は再びフィーゴ、ロナウジーニョ、ロッベンらの【ウイング復権】へと傾いて行く。

(ファンハールがあれほど「リバウドのウイング起用」に拘ったのもこのせいだと思われる)


時を同じくして欧州の覇権は【ゾーンプレス】のイタリアからスペインへ。




2000年代中盤~後半 【サイド閉鎖】


横へと幅が広がった攻撃に再び門を閉じたのは時代の寵児モウリーニョ。

これまで攻撃の花形ポジションであった両ウイングに全力での守備を求め、
敵のウイングがボールを持った際にはプレスバックして自陣まで帰り、
味方のSBと挟み撃ちするかたわら、中からはボランチまでが加勢する事で
「攻撃の主戦場」であった両サイドのエリアを完全閉鎖へと追い込んだ。


特に「カテナチオ」の文化とピタリ一致したインテルでの2年目には
「サイド攻撃の象徴」とも言える当時のバルセロナを見事なサイド閉鎖と
一転繰り出される鋭いカウンターで沈めて見せた。

時代は「技術」を「ハードワーク」が凌駕する流れへ。

(プレミア勢が欧州で強さを発揮)





2011年~ 【メッシの0.5トップシステム】登場

ペップのバルサがメッシを偽CFに置き、
両翼にもウイングを置かない「ウイングレス」の3トップを発明。

横68Mの横幅を効率よく守る事を前提として作られた従来の守備システムを
局地的な数的優位とポジションレスから繰り出される「中央突破」で切り裂いた。

こうしてバルサだけがこの時代では特殊なシステムを使って戦う事で「時代の優位性」を謳歌した。




2012年~ バルサ対策の中央閉鎖

各チームがバルサ対策を進め
一度横に広がった守備システムが中を閉める流れへと傾いていく。



まさに攻撃と守備のイタチごっこと言える戦術史の流れを受けて
ペップは再び「時代の守備システム」を横に広げようと試みた末の3-4-3だったと考えられる。


奇しくもそれは、師クライフがサッキのゾーンプレスに対抗する為に歩んだのと同じ道であった。

(これが時代を経ても変わらないバルサイズムなのか?)



しかし皮肉にもその後、両者の歩む道は対照的な結果となる。




<【原因その1】機能しなかったオトリ>


これまで両翼のスタメンを担ってきたビジャやペドロは「外」に張るのではなく
斜めの動きで「中」に進入する事で持ち味を発揮してきたプレイヤーでしたが、
今季はこの両翼にいわゆる純正ウインガー(クエンカ、テージョ、Dアウベス)を置く事でワイドの位置取りをキープしてきました。


言わば彼らを"オトリ"に使って敵守備網の注意を横に広げ、
再び中にスペースを作り出そうという狙いです。

(この移行に伴い、今季はペドロの出番が激減。使う場所が無いからです)


【両ワイドをオトリに使ってDFを横に広げる (セスクver)】
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このように例えばセスクが前線に入るのであれば、
空いた中のスペースをメッシと共有する事が可能だし、


セスクの代わりにアレクシスが入るのであれば・・・




【アレクシスver】
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アレクシスが得意とする裏抜けでDFラインを後ろに引っ張る事で
今度は空いたバイタルエリアでメッシ無双が発動・・・という寸法です。


当初このペップの狙いは上手く行くかに思えたのですがここに大きな落とし穴が潜んでいました。



敵のDFが両翼に"食いついてくれなかった"のです・・・。



そもそもペップ就任以降のバルサは純粋なウイングとCFを敢えて不在にして戦ってきました。

という事は裏を返せばここ2~3年のバルサはウイングとCFの育成が
ポッカリと空白期間になっていたという事でもあります。

事実、ペップの戦術にピタリと符合したペドロ、ビジャ、チアゴが持ち味を発揮する反面、
ボージャン、イブラ、ジェフレンらがチームを去って行きました。




そう考えると今季、ペップがアレクシスの加入にあそこまでこだわったのも
「3-4-3への挑戦」に「ウイングの必要性」を感じていたからこそだったのかもしれま
せんね。



結果、望みどおりにアレクシスとセスクを手に入れたペップでしたが
ここで大きな誤算となったのが「ビジャの長期離脱」でした。


これを機に、それまではウイングとして使われる事が多かったアレクシスが
CFで起用されたり、裏を取る動きで相手DFラインを引っ張ったりという
これまで「ビジャが担ってきた役割」を課せられる事が多くなっていきました。


代わりにウイングの役割にはクエンカ、テージョをカンテラから戦引き上げて補充。



"足りない戦力はカンテラから探す"



これまで通り、ペップの一貫した姿勢が垣間見えます。



ところが、シーズン半ばでカンテラから突如引き上げられた若者達に
「新時代を切り開くバルサの3-4-3」とその戦術的キーマンという役割は少しばかり荷が重過ぎました。


結果、消化不良を起こした彼らはチームの中で明らかに浮いており、
怖さの無いウイングに「オトリ」としての効果は到底望めるものではありません。


こうなると多くのチームが
「クエンカ、テージョはボールが渡ってから対応しても充分間に合う」という
割り切った対応でDFが釣られず、横に広げるというペップの狙いが活きないばかりか、
効果を発揮しないオトリとして両翼に張り続けるウイングの2枚分、
バルサは数的不利で戦っているようなもの。


国内リーグはまだしも優勝の行方を左右するクラシコやCL準決勝といった大一番でも
彼らと半ば心中する覚悟で臨んだペップの決断は完全に裏目に出ていたと思います。

(ペドロを戻しての4-3-3でよかったような気がしたんですけどねぇ・・・(^^;)



その上、両ウイング以外の選手達が
そもそもサイドを縦に切り裂いての折り返しという攻撃に対応した選手達ではなく、
特にメッシなんかはテージョ、クエンカが縦に勝負を挑むたびに叱りつけていた始末。

(まぁ、そこを正攻法で折り返されてもメッシは何も出来んしなぁ・・・(^^;)



総合的に見てチームにはまだ3-4-3をやれるだけのベースが無かったように思います。




<【原因その2】消えたDアウベス>


もしかすると3-4-3導入の最大の犠牲者はこのDアウベスかもしれません。


これまで4-3-3では守備時にSBをこなしつつ、
攻撃時には最前線まで上がってきてウイングとして振る舞うなど
彼の最大の持ち味はその活動量にこそありました。


右サイドのタッチラインを1人で受け持てる彼の存在は
実質的にバルサが1人多い人数で戦っているようなもの。



ところが最前線にオトリとして固定される3-4-3では
彼のいいところが全て死んでしまったかのような劣化ぶり。


守る方としても止まっているアウベスに怖さは無く、
こちらもオトリとして全く機能していませんでした。


いずれにせよ「Dアウベスのポジション固定」
随分と相手を楽にしていたように思います。




<【原因その3】守備の崩壊>



3-4-3導入の亀裂は攻撃だけでなく、
当然後ろの守備陣にも大きな影響を及ぼしていました。


3バックだろうと基本的に「前プレ」でボールが奪えている時は問題無いのですが、
いざそこを突破された時、3バックの両脇に出来たスペースは完全に狙い撃ちにされていました。

特にリーガでは両サイドに個の突破力に優れた選手を置くチームが多い事もあり
相手に格好の狙いどころを与えてしまった感も否めません。


【狙われた3バック脇のスペース】
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もちろん3バックにする以上はペップもそのリスクは予め想定済みだったのでしょうが、
今季は「少数精鋭」による「連戦」の疲れから主力のコンディションが低下しだしたシーズン佳境で
明らかに「前プレ」の鋭さが鈍り出したのは誤算だったはず。


メッシなどは完全に「守備放棄」に近い状態になり
「前プレ」が効かない3バックは、その弱点が常に晒されているようなもの。



加えて今季はピケのパフォーマンスが著しく低下していた事もあり
3バックにはしばしばマスケラーノやアドリアーノまでもが駆り出されていましたが、
この編成には若干の無理がなかったでしょうか?



プジョルも加えていずれも「前」に強いCB陣の編成と
CBだろうと前からアグレッシブにマークを捕まえに行くバルサの戦術は
インターセプトのメリットと自陣ゴール中央のエリアが空くリスクと常に隣り合わせです。



特に本職がボランチのマスケラーノがピケの代わりに3バックの真ん中に入った際は
中盤まで上がって寄せるマスケラーノの良さ以上に、
3バックの中央が空くというリスクの方が目に付きました。


実際にCLの舞台を後にする羽目となった準決勝のチェルシー戦では
前に出たマスケラーノの裏にスペースをカウンターからラミレスに突かれて失点しています。


【対チェルシー戦の失点場面】
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空いたスペースはブスケスが降りてきてカバーする約束事があるとは言え、
相手のレベルが上がった際の高速カウンターと精度の高いパスには
毎回毎回ブスケスも対応し切れません。




・・・以上、バルサの3-4-3を検証してきましたが、
個人的にはペップの現状に決して満足せず、
常にその上を狙う求道者としての姿勢は非常に好感が持てるものでした。


挑戦には常にこういった失敗はつきものですし、
また必ずやこの男はサッカー界に帰ってきて理想の続きを追うであろうと店長は確信しています。



まずは来季、ビラノバがペップが描いた夢を引き継ぐ形でチームを始動させるのか、
それとも独自の色を加えた「新しい方向性」を見せるのかに注目です。



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