スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ハインケスの最高傑作に相応しいフィナーレ ~バイエルン×ドルトムント~

hyoushi0528.jpg
<ハインケスの最高傑作に相応しいフィナーレ ~バイエルン×ドルトムント~

どう見ても神試合です。ありがとうございました。

個人的にはここ10年の中でも最高の決勝になったと思われる今年のCL。

試合前には「ドイツ決勝は地味だ」なんて声も耳にしましたが
恐らくそういう人達すらも実際に試合を観た後ではぐうの音も出ないような内容だったと思います。


絶え間無き攻守の切り替えとハードワーク。

プレッシャーの中でも発揮される高い技術。

そして試合を引き締めるGKの好守に極めてフェアなボール奪取の応酬と
現代サッカーの最高峰が全てあの日のピッチにはありました。

もちろん、来期以降のトレンドを探るヒントもこの試合から探し当てる事が出来るはずです。


そこで今日は今季最後を飾るに相応しいCL決勝のマッチレビューから両軍の駆け引きとバイエルンの勝因、
そして来期以降の戦術的なトレンドを探っていきたいと思います。


<手の内を知り尽くした者同士の名人戦>
cl-final0528-sutamen.jpg

両軍共に予想通りの順当なメンバーが顔を揃えました。

(但し、ドルトムントはゲッツェが使えないのが相当痛手)

ここ3シーズンほどブンデスの覇権を争ってきた両チームだけに、
お互いの手の内は知り尽くしている両者。

そんな背景もあってか、この対決はまるで将棋の名人戦のような駆け引きがピッチ上で展開されてたように思います。
(将棋の名人戦も何度も打ち合った者同士の戦いになりますからね)

まずは主導権争いの序盤戦から一進一退の中盤戦へと移り、そして「詰み」にかかる終盤戦という具合に。


そんな名人戦を試合の経過に沿ってマッチレビューしていきたいと思います。


<ドルトムントの仕掛け 【0分~10分】

サッカーが将棋と違うのはキックオフ時、お互いの持ち駒が全くイーブンの将棋とは異なり
両チームの持ち駒に若干の戦力差があるという事です。

ただでさえエースのゲッツェを欠くドルトムントは飛車抜きで試合を始めるようなものですが、
そもそもクロップ率いる若き挑戦者達は単純な持ち駒の質ではどうしてもバイエルンに劣る為、
足元の技術差を極力出させない試合展開に持ち込む事で彼らと互角以上に渡り合ってきました。

そんな彼らですから、この決勝でも「待ち」の姿勢は有り得ません。

最初からいけるところまで飛ばしてハイペースの試合に持ち込み、
自分達の流れの内に試合を決めてしまうというプランしか「詰み」への道筋は無いのです。

実際、試合が始まるとドルトムントのハイプレスは凄まじいものでした。

バイエルンが最終ラインからボールを持ち出す時、ドルトムントは以下↓のように前プレを仕掛けていきます。

【ドルトムントの前プレ図】
hame0528.jpg

バイエルンの4バックに4枚をぶつけて、シュバとハビマルのボランチにもギュンドアンとベンダーを前進させてマンツーマン気味に。

両サイドのリベリー&ロッベンにはSBがどこまでも追ってしまう事でバイエルンをビルドアップの段階でハメてしまうんですね。

(ミュラーとマンジュキッチのところが若干空くものの、そもそもここまでボールを運ばせなければ御の字という守備)


では実際の試合からドルトムントが前プレでバイエルンの組み立てをハメてしまっている様子を検証してみましょう。

【ドルトムントが前プレでハメる】
hame-1.jpg

局面はバイエルンが最終ラインからビルドアップを図るシーンですが、
ご覧の通りドルトムントはバイエルンのDFラインにガッツリ前プレを当てているので
ボールを持ったSBのアラバにもパスコースを探す時間的猶予が全くありません。

ここでは前からボールを受けようと降りてきたリベリーへのタテパスぐらいしか物理的にコースが見つかりませんよね?


hame-2.jpg

で、実際にリベリーへタテパスを送っても当然ドルトムントは分かっていて誘っているので
SBのピシチェクがリベリーの背中にくっつくぐらいの0距離まで自信を持って寄せ切っています。

さすがのロッベリーと言えどもサイドで前を向けないこの展開では局面打開は厳しいところ。


クロップはバイエルンの最大の武器である両サイドのタテ関係を遮断すると共に
見事に試合をハイテンポなリズムに持ち込んで序盤の主導権を握る事に成功しました。

ハインケス(試合後の談話)
『序盤、我々はなかなか本来の調子が出なかった。
逆にドルトムントが素晴らしかったね。積極的にプレスをかけられ、自分たちのリズムをつかめなかったよ。』


序盤から積極的に仕掛けて主導権を握る戦法は将棋でも挑戦者側でよく用いられるものですが、
この戦法の弱点は仕掛けを全て"受け"切られてしまうと終盤に手も足も出なくなってしまう事。

ドルトムントは一方的にペースを握っているように見えて、その実この展開の内にアドバンテージを握っておかないと
(すなわち先制点を取っておかないと)
後々苦しい状況に追い込まれる事は目に見えていた。

無論、それはクロップ、ハインケス共に分かっており、
ドルトムントはいかにこの流れを持続させるか、バイエルンはいかにこの苦しい時間帯を耐えしのぐかという我慢比べが既に始まっていたのだ。


<シュバインシュタイガーの対応 【10分~】

さて、試合ではドルトムントのハメ技プレスに対しバイエルンがどういう対応を見せるのかに注目していたのだが、
早速シュバインシュタイガーが動きを見せる。


【シュバイニーがDFラインまで降りて数的優位を確保】
syubaori0528.jpg

自分達のDFラインが4対4の数的同数に追い込まれてアップアップしてる内は中盤もクソもねぇ!って事で
シュバインシュタイガーがDFラインまで降りてきて最後尾での数的優位確保を画策します。


syuba0528.jpg

ドルトムントの4枚ハメプレに対し、5バック気味に対応する事で何とか最終ラインでの落ち着きを確保する事に成功。

しかし最終ラインに人数を裂いた分、中盤が薄くなっているのでここから⇒中盤⇒前線へと繋いでいくいつもの形は難しいところ。

ここでバイエルンが賢かったのは、バルサやRマドリーと違い、Gプレスに遭った展開で無理に中盤を経由して繋ごうとしなかったところにあります。

バイエルンはこの時間帯、中盤を半ば放棄して最終ラインから前線のマンジュキッチ目掛けて放り込みに徹する割り切った姿勢を見せます。

準決勝でバイエルンと対戦したバルサはバイエルンが待ち構えている中盤の網を無理にこじ開けようと繋ぎにこだわった結果、
まんまとバイエルンの注文にハマる形でボールを絡め獲られ⇒ショートカウンターの破滅パターンに陥っていましたが、
バイエルンは相手の出方によって引き出しを変える臨機応変さが決勝まで勝ち進めた要因だったのではないでしょうか。

とは言え、神頼みのようなマンジュキッチへのロングボールはほとんどフンメルスとスボティッチに拾われていましたが、
それでも自陣の低い位置で奪われて⇒ドルトムントのショートカウンター発動という最悪のパターンだけは免れる事に成功していたと思います。


<GKの好守から一進一退の展開へ 【20分~】

リスク回避を主目的としたバイエルンのやけっぱちロングボールをことごとく拾ったドルトムントは
ロイスを中心に鋭い攻めを見せます。

もしドルトムントが拾ったボールを横パスも織り交ぜて大事に展開してくれれば
バイエルンもマンジュキッチのプレスバックを筆頭に必殺のプレス返しが出来たのでしょうが
元々バイエルンを自陣に押し込んだ状態でボールを拾っているドルトムントは
ほとんど横パスを挟まずにタテへタテへと展開する事でバイエルンの良さを出させないクロップの手腕が光ります。

それでも「ここは耐える時間」と割り切っているバイエルンはDFラインを完全に崩させる事だけは避ける専守防衛に努めます。

その背景にはDFラインの手前から打たせる分にはウチにはSGGK(スーパーグレードGK)が控えているゼ…!という信頼のようなものが感じられました。

そしてノイアーはその信頼に見事応える好パフォーマンスで一方的なドルトムントの時間帯に失点だけは許さない構え。


一方のドルトムントのGプレスですが、これはこれで結構リスクを負った守備だったりします。

その危うさと紙一重のGプレスを実際の試合から検証していきましょう。

【ドルトムント(Gプレス)が抱えるリスク】
torenai1.jpg
局面はサイドでボールを持ったSBアラバをドルトムントが前後で挟み込もうというシーンですね。(これは狙い通り)

で、アラバはここからミュラーへ繋ぐんですが、バイエルンがこのコースしかないのはドルトムントは百も承知って事で中盤全体を一気にボールへ寄せてここで奪ってしまおうという狙いです。


torenai2.jpg

・・・が、ここでアラバからのパスをミュラーに上手く身体を使われて入れ違いに抜け出されてしまいました。

こうなると全体がミュラーへと寄せていたドルトムントは・・・



torenai3.jpg
逆サイのロッベン師匠がどフリーだがや・・・!!

まさかクロップも「ヤツならフリーにさせても大丈夫だ…」と思った訳ではないでしょうが(笑)、
狙った位置でボールが取れていればイケイケな展開になるドルのGプレスも一歩狙いを外されると一転して大ピンチに陥るリスクと隣合わせなのが分かるかと思います。

このシーンをアングルを変えてもう一度↓


【ボールに全体を寄せるドルトムントのGプレス】
torenai4.jpg

↑これはアラバからミュラーへパスが出た瞬間の別アングルなんですが、
黄色で囲ったボール周辺のエリアにいかにドルが密集地帯を作り出しているかが一目瞭然かと思います。


ただ、この決定機も今度はドルトムントの守護神ヴァイデンフェラーの好守で防ぎ切り、
両GKの活躍で試合が非常に締まったものになりました。


<受け切ったバイエルンが反撃開始 【30分~60分(中盤戦)】

このロッベンがGKと1対1を迎えた前半29分のチャンスから試合の流れが少しずつ変わっていきます。

ドルトムントのような前プレ戦法は面白いようにボールが奪えている内は全く疲労を感じないものですが、
面白い事に一度相手に突破されただけで途端にDFラインは後ろ髪を引かれだし、前線は肉体的疲労を思い出したりするもの。

ドルトムントはこのシーンを契機に少しずつ自慢のプレスに綻びが見えるようになります。


【甘くなるドルトムントの寄せとバイエルンの切り替え】
kusabi0528-3.jpg

局面はバイエルンが最終ラインからビルドアップを図るシーンですが、試合開始当初に比べると
明らかにロイスのCB(ダンテ)への寄せが甘くなっています。

バイエルンレベルのCBだと、これぐらいの寄せでは簡単にタテパスを出せる技術を持っていますから・・・


kusabi0528-4.jpg

中盤に降りてきたミュラーへの縦のクサビを経由してサイドのアラバへ展開。

バイエルンは中盤を省略したロングボール一辺倒の攻めから
ドルトムントの寄せが甘くなってきたのを悟ると攻撃方法の切り変えにすぐさま打って出るしたたかさ。

それを確信させる似たようなシーンをもう一つ。↓


kusabi0528-1.jpg

もはやこのシーンではバイエルンの2CBに対し、1トップのレバンドフスキが1枚で前プレを行うような形になってしまい、
バイエルンはシュバを中盤に残したまま余裕で縦へのクサビが打ち込めるようになっています。


kusabi0528-2.jpg

こうなると中盤でうるさいのがミュラーの神出鬼没な動きで
CBのクサビからミュラーの間受けがバシバシ決まり出すバイエルン。

序盤のドルの猛攻を受け切り、遂にバイエルンが反撃開始。


試合は0-0で迎えたハーフタイムを経て後半になると益々ドルトムントの前プレが苦しくなっていく。

habimaru0528.jpg

局面は前半には無かったロイス&レバンドの前線のラインと中盤の間のスペースをハビマルに使われてしまっているシーン。

更にドルトムントは守備ラインをズルズルと下げていき・・・・


wborante0528.jpg

気が付けば、もう普通にシュバとハビマルのボランチから両サイドに展開されるバイエルン得意の形が出始めている…と。

試合を観ながら「ああ、こうなるとドルの失点は時間の問題かなぁ・・・」と思っていたのですが、やはり案の定でした。
(サッカーとは必ず失点に繋がる兆候があるものですよね)


<無理なGプレスを逆手にとったバイエルンが先制 【59分】

1ten-10528.jpg

局面はバイエルン陣内でボールを持ったシュバインシュタイガーにドルトムントが一斉にGプレスを仕掛けている場面。

但し、それぞれの出足が前半に比べると鈍く、誰一人として充分にシュバイニーに身体を寄せ切れていない為
ここで無理して囲い込むのはやや無謀なGプレスだった事は否めません。

シュバインシュタイガーは状況を冷静に判断し、ここで一旦GKまでバックパス。


1ten-20528.jpg

このバックパスをノイアーが見事なコントロールからドッカンと前へ蹴り出すと・・・


1ten-30528.jpg

見事な精度のボールがマンジュキッチからロッベンへ。

問題はドルトムントの前衛がシュバイニーに寄せたところから、このロングボールにどれだけ素早く帰陣出来るかです。

(局面は5対4)


1ten-40528.jpg

はい、ロッベンにボールを運ばれている間、その背後から戻ってくるドルトムントの選手が1人も見えない厳しい状況。

これで局面は5対4のままズルズルと後退を余儀なくされているドルなんですが、
問題はこの試合で初めてロッベリーが同サイドに流れたコンビネーションを見せているという事ですね。

ロッベリーに前を向かせた状態で2対2の数的同数で対応ですか・・・、これは失点の危険性大です。


1ten-05528.jpg

最後、リベリーからロッベンに渡るシーンですが、ボールを持ったリベリーに3枚当たりに行って股を通されているのは確かに大失態なんですけど、
それ以上にドルの守備枚数が最初の5枚から全く増えていないところに問題があるんですね。

ドルは元々ボールに持っている選手に2~3枚は常時当たりに行くので、
ましてやゴール前の危険なエリアでボールを持ったのがリベリーとなればこれは致し方ない面もあるのですが、
そのカバーに誰か1人でも戻っていればロッベンに1枚はマークを当てられていた可能性はあったんじゃないかと思うのですよ。


となると、これはもう最初の段階で無理にシュバイニーのところで取りに行った前プレを上手くバイエルンに逆手に取られたかな~と。

前線と後衛がやや間延びしてきた時間帯でのGKを使ったGプレ回避はこのシーン以外にも何度か見せていたので
ハインケスが用意していた一つの策と考えるのが妥当でしょうか。


<開放されたフンメルス 【60分~】

ただ面白いもので、バイエルンは先制を機に一旦引いて「受け」の守備になっていくんですね。

これは監督の指示というより、自分達でも気付かない内に知らず知らず気持ちが「大事な1点を守り切りたい」という方向に向いてしまった人間の性みたいなものでしょう。


するとドルトムントはこれまで玉の近くで最後尾の守りを担当していた「居飛車」ことフンメルス将軍の前にポッカリとスペースが出来て
一発で敵陣まで得意のロングパスを放てるようになります。

(*「居尾車」とは将棋の戦術の一つで、飛車を攻めではなく自陣の守りに置いておく戦法)


【解放されたフンメルス将軍】
funmeru-10528.jpg

局面はフンメルスが最後尾からビルドアップを図る場面ですが、
明らかにバイエルンは自陣に引いて「待ち」の守備に切り替えてしまっています。

ドルトムントの強さは代名詞のGプレス+ショートカウンターだけでなく
遅攻ではCBにフンメルスがいるという強みがある事ですね。

フンメルスにこれだけスペースを与えてしまうと、ここから見事なタテパスがグラウンダーで・・・


funmeru-20528.jpg

バシッ!と中盤のグロスクロイツへ間受けを通してしまいます。

(こうなると両サイドの香車(グロクロ&ブラシチ)や桂馬(ロイス)も利いてきて一気にめんどくさい事になりますぞ)


こうして高い位置でボールが取れなくなっていたドルトムントですが
バイエルンが一旦引いてくれたお陰でフンメルスの展開力が蘇り、再びペースを握る事に成功。

「これはバイエルン、最後まで逃げ切れるか・・・?」と思っていた矢先の事でした。


<バイエルンの受身が生んだ同点弾 【66分】

では必然とも言えるドルトムントの同点ゴールを見ていきましょう。

2ten-10528.jpg

局面は再びドルトムントの最後尾からの組み立てですが、まずここでフンメルスにズルズルとフリーでドリブルさせてしまった事が失策でしたね。

フリーのままフンメルスはサイドのスペースへ浮き玉を送ります。


2ten-20528.jpg

この浮き球からの展開をグロスクロイツに拾われると裏に抜け出したロイスへ繋がれて・・・


2ten-30528.jpg

ペナルティエリアの中で一番危険なロイスに前を向かせてボールをコントロールさせてはならない!
という気持ちが働いたのでしょう。

ダンテが浮き玉を処理するロイスから無理にボールを掻き出そうとした結果、思い切り腹パンならぬ腹蹴りでPKを謙譲。

ギュンドアンが決めてドルトムントが同点に追いつき、試合は混沌としたまま終盤戦へ。



<経験を生かしたバイエルンが詰みへ 【70分~】

この同点ゴールの直後、試合開始からずっと立ちっぱなしだったクロップとは対照的に
それまでベンチでじっと戦況を見守っていたハインケスが真っ赤な顔でテクニカルエリアに飛び出してきました。

僕はドイツ語は分かりませんが、その時彼が選手達に向かって叫んでいた内容はおおよそ見当が付きます。

『お前ら!去年の二の舞になりたいのか!?』

自分達のペースで進んでいた試合から先制点を取った後、変に守りに入って同点ゴールを食らう。

これは去年の決勝でチェルシーのドログバに決められた流れと全く同じです。

まあ、試合も終盤の極限状況で普通監督が何を叫んだところで選手の耳には届いても頭には入らないものですが、
バイエルンが幸いだったのは昨年の決勝で死ぬほど悔しい想いをした選手のほとんどがこのピッチに残っていた事です。

「このままズルズルと延長戦突入だけは絶対に避けねばならない。90分で決着を付けるんだ…!!」

そんなバイエルンの選手達の想いがここからピッチ上で具現化されていきます。


前線からの積極的なプレスと素早い好守の切り替え。

前半から飛ばしていたドルトムントと違い、充分に余力を残していたバイエルンは90分内で決着を付けるべくここでギアをトップに入れてきました。


苦しくなったのはドルトムントです。

中盤は明らかに疲弊していましたが、ゲッツェの欠場でスタートからグロスクロイツを使っているこの布陣では
交代の持ち駒がそもそも不足しています。

(仮に1点リードしている展開ならケール投入で守備固めの一手もあったのでしょうが同点の状況では・・・)


更に昨年の失敗から90分決着で意思統一されていたバイエルンと違い、
クロップは延長戦に備えてハインケスより先にカードを切る事に躊躇していた様子も伺えました。


しかしピッチ上ではドルトムントの限界はもう明らかで、それはこんなシーン↓からも見てとれます。

【限界のドルトムント】
dorukau1.jpg

局面は終盤に訪れたドルトムントのカウンターのチャンスから。

中盤から前線で待つレバンドフスキへタテパスが送られる。


dorukau2.jpg

これをサイドに流れつつ受けるレバンドフスキ。

1トップに張る彼の強みはここで1人で時間を作れる事。
その間に後ろから味方が次々と飛び出してくるのがドルトムントの強みになっている。


dorukau3.jpg

ところがレバンドフスキがどれだけ時間を作ってみても
後ろから飛び込んでくるドルトムントの選手は皆無。
(普段なら黄色く囲ったスペースにドルの選手達が走りこんできている場面)

そうこうしている内にバイエルンの帰陣の方が早く、孤立したレバンドは囲まれてボールを失ってしまう。

ドルトムントはこの時間帯、完全にレバ&ロイスの前線が切り離された前後分断サッカーに陥ってしまっていた。



これと対照的だったのが88分に生まれたバイエルンの決勝点の場面。↓

【バイエルンの決勝点を生んだ味方のサポート】
3ten-0528.jpg

ロングボールを受けるリベリーの後ろからミュラーとロッベンが適切なサポートで走りこんでいる。

結果的にはこのサポートがあったからこそ、リベリーの踏ん張りが活きてロッベンの決勝点が生まれた訳だ。

(しかしロッベン師匠は最後に男になったな(笑) 一瞬、王子とかぶったわww)


試合は最後に昨年の経験を糧にしたバイエルンが地力で上回った勝利と見る。


<そして最強チームはペップに引き継がれる>

このようにお互いに手の内を知り尽くした両者だからこそ
ちょっとした心理面の揺れさえもピッチ上の流れに大きく影響し、
その上で共にベストを尽くした好ゲームが展開されたように思います。

そして、この決勝から導き出される来期以降のトレンド、言い換えれば欧州で勝つ為のマストは
【時代は自分達のサッカーを貫くだけでも、相手のサッカーに合わせるだけでも、もはや不十分である】という事。


仮にこの試合、バイエルンが最初から中盤でつなぐサッカーにこだわっていたらドルトムントの注文にハマって
ショートカウンターから大量失点を許していた可能性は高いだろう。

反対にドルトムントがカウンター一本槍だったとしたらバイエルンが受身に回った際の同点弾は生まれなかったに違いない。


つまり、これからのサッカーでは試合の局面と相手の出方に応じて自分達の引き出しの中からベストなものを瞬時に開けられるチームだけが勝ち残っていける時代になると予想する。

それは単に「ドイツの時代到来」とか「時代はGプレス」といった短絡的なものではなく
もっと広い視野で見た時、チームの幹に備わっていなければならないものだ。


一方で「最高の結果を残したハインケスを切ってまでペップを召集した意味はあるのか?」という声も聞こえてくるが、
個人的にはバイエルンの判断はベストだったと確信する。

昨年からの流れを考えてモチベーション的に見ても「ハインケスのバイエルン」は今季が一つのピークを迎えたと見て間違い無い。

仮に来期もハインケスでいったところで、ブンデスは取れるだろうがCLの連覇は難しいところだろう。

それはちょうどペップがバルサで3冠を取った翌シーズンと同じ事である。


内心、ペップ自身は今頃「マジかよwww 来期のハードル上がりすぎww」と思っているかもしれないが(笑)
今季の成績はどうあれ、バイエルンの長期的なプロジェクトとして来期からは新しいサイクルに入る事が決まっていた訳で
その意味では選手達のモチベーション的にも大きな問題にはならないだろう。

監督、チームSTAFF、サッカースタイル、そして選手の顔ぶれまで一新されるチームに停滞感を心配する必要は無い。


もちろん未知への挑戦となる以上、一気にチームが崩れ成績を落とすリスクは付き物だ。

だがサッカーの世界で「現状維持」を目指した瞬間、そのチームは下降線を辿っている事もまた事実なのである。



最後に、来期以降の展望だが、この結果を持って「ドイツの時代到来」とするのは時期尚早だ。

コンディションさえ整えばメッシやイニエスタにネイマールまでが加わるカタルーニャの雄は依然として世界最高の名に相応しいサッカーを見せるだろう。

モウリーニョが去り、新たなサイクルに入ったマドリーも侮るべきではない。

そのモウリーニョが復帰するプレミア勢は巻き返しを狙っているだろうし、
益々力を付けるPSGも不気味な存在だ。

欧州の舞台で力の差を見せ付けられ、本気の強化をフロントに直訴したコンテ率いるカルチョの王者も外せない。



・・・そう、これは「ドイツの時代到来」ではなく横一線の戦国時代、乱世が幕を開けたのだ-


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

去年のファイナルで、頑なに右サイドからのカットインに拘っていたロッベンを見て、「コイツもうオワコンすぎるwww」とか思っていましたが、今年のファイナルでは左サイドに流れたり、中央に入ってきたりと、流動的なポジショニングを披露してたのが印象的でした。
ロッベンの成長というより、マンジュの起用等でチーム全体が成長した事の方が大きいのかもしれませんが、29歳という年齢でも進化出来る事を証明してくれたのは嬉しかったですね。

また、ハイプレスやロングボール中心で、フィジカルの強度が試される試合にあって、最後の最後に彼が極上のテクニックを魅せつけてくれた事にも感動しました。
ゲーゲンプレスやらインテンシティも大事ですけど、やっぱりテクニックこそがサッカーの華であり、基本であるという事を忘れてはいけないなと思うのです。

素晴らしいゲームでしたね。
ほとんど流れが途切れずに試合が進んだのもよかったです。


もしドルトムントが、前プレの強弱を調整できたら後半バテずに戦えていたかもしれませんね。
ドルトムントもシュバのようなチームのかじ取り役としてギュンドアンが成長したらと思いました。

眠気も吹っ飛ぶ本当に素晴らしい試合でしたね!
個人的にはゲッツェがいたらドルトムントの攻撃にもっと厚みが出来て、前半で試合決まってたかも…なんて思ったりもしてるんですが…。

まぁでも今季の結果から言ってもバイエルンの方が一枚上手だったかなと(^_^;)

にしても、何年もシルバーコレクターであり続けたゆえのロッベンの気合には少し圧倒されて、見てて気持ちが良かったです( ^ω^ )

店長、こんばんは。
こっちに移ってから初めてコメントします。

やれドイツの時代だ、やれGプレスが新機軸だ、などという記事も見ますが、店長の仰る通り、マスコミの短絡な考えに辟易とします。じゃあお前に何が分かるんだ、と言われるかもしれませんが・・・。
バイエルンは優勝したし、バルセロナをフルボッコしたのも事実ですが、彼らはアーセナルにミッションインポッシブルを危うくコンプリートされるところでしたし、ドルトムントにしてもマラガに後半ロスタイムまで負けてたわけだし。なによりドイツは第二集団のレベルが低いですしね。リーガ信者の私としては、ブンデスのスタジアムが軒並み満員なのはすごいな、と思いますが、そこで展開される試合はというと・・・。ライブでは見られませんね(笑)

Gプレスも戦術としてビッグクラブ向きではないように思いますので時代の潮流にはなりにくいかと。あれを発動するにはそれなりに条件が必要だと個人的には思っていますので。

なんだかんだで色々ありましたが(笑)、来シーズンは監督人事を含め、今シーズンよりもさらに面白いことが待ち受けている気がしてなりません。

Re: rage30さん

ミュラーやロッベンがほとんどポジションがあってないようなぐらい流動的なんで
ロッベンも押し出される形で特に中央のミュラーとこの試合では頻繁にポジションチェンジをしていましたね(笑)

決勝点のGKのタイミングを外した流し込みは見事でした。

テクニックという面ではやはりゲッツェがいないドルの苦戦は否めませんな。



> 去年のファイナルで、頑なに右サイドからのカットインに拘っていたロッベンを見て、「コイツもうオワコンすぎるwww」とか思っていましたが、今年のファイナルでは左サイドに流れたり、中央に入ってきたりと、流動的なポジショニングを披露してたのが印象的でした。
> ロッベンの成長というより、マンジュの起用等でチーム全体が成長した事の方が大きいのかもしれませんが、29歳という年齢でも進化出来る事を証明してくれたのは嬉しかったですね。
>
> また、ハイプレスやロングボール中心で、フィジカルの強度が試される試合にあって、最後の最後に彼が極上のテクニックを魅せつけてくれた事にも感動しました。
> ゲーゲンプレスやらインテンシティも大事ですけど、やっぱりテクニックこそがサッカーの華であり、基本であるという事を忘れてはいけないなと思うのです。

Re: 住所不定無職さん

ただ、バイエルン相手にプレスを意図的に弱めてしまうとあっちゅう間にペース握られます。多分。
クロップも分かっていてフルスロットルでいくしかなかったんではないでしょうか。

ギュンドアンはベースとなるテクニックは申し分ないので、あとは経験だけですね。
シュバイニーと比較して足りない部分は。


> 素晴らしいゲームでしたね。
> ほとんど流れが途切れずに試合が進んだのもよかったです。
>
>
> もしドルトムントが、前プレの強弱を調整できたら後半バテずに戦えていたかもしれませんね。
> ドルトムントもシュバのようなチームのかじ取り役としてギュンドアンが成長したらと思いました。

Re: マンチェスター香川さん

僕も2-1というスコア以上に両者の差はあったかなと感じている1人です。

にしてもゲッツェ不在となれば、仮に香川があと1年粘っていたらトップ下でチームを引っ張る姿が見られていたかと思うと・・・ww


> 眠気も吹っ飛ぶ本当に素晴らしい試合でしたね!
> 個人的にはゲッツェがいたらドルトムントの攻撃にもっと厚みが出来て、前半で試合決まってたかも…なんて思ったりもしてるんですが…。
>
> まぁでも今季の結果から言ってもバイエルンの方が一枚上手だったかなと(^_^;)
>
> にしても、何年もシルバーコレクターであり続けたゆえのロッベンの気合には少し圧倒されて、見てて気持ちが良かったです( ^ω^ )

Re:F9Tさん

あ、どうも。なんかお久しぶりのような気がします(笑)

仰る通り、今年のCLベスト4の顔ぶれが3つリーガ勢で占められていた可能性もかなりあったんですけどね(^^;

Gプレスに関しては本家バルサがどこまで戻せるかも来季は気になります。


> 店長、こんばんは。
> こっちに移ってから初めてコメントします。
>
> やれドイツの時代だ、やれGプレスが新機軸だ、などという記事も見ますが、店長の仰る通り、マスコミの短絡な考えに辟易とします。じゃあお前に何が分かるんだ、と言われるかもしれませんが・・・。
> バイエルンは優勝したし、バルセロナをフルボッコしたのも事実ですが、彼らはアーセナルにミッションインポッシブルを危うくコンプリートされるところでしたし、ドルトムントにしてもマラガに後半ロスタイムまで負けてたわけだし。なによりドイツは第二集団のレベルが低いですしね。リーガ信者の私としては、ブンデスのスタジアムが軒並み満員なのはすごいな、と思いますが、そこで展開される試合はというと・・・。ライブでは見られませんね(笑)
>
> Gプレスも戦術としてビッグクラブ向きではないように思いますので時代の潮流にはなりにくいかと。あれを発動するにはそれなりに条件が必要だと個人的には思っていますので。
>
> なんだかんだで色々ありましたが(笑)、来シーズンは監督人事を含め、今シーズンよりもさらに面白いことが待ち受けている気がしてなりません。

分刻みの解説に店長の熱の入れようが伝わってきました(笑)。

10分過ぎのシュバインシュタイガーが下がって数的有利の状況を作ったときのことなんですがバイエルン側はロングボールを選択しました。ローリスク・ローリターンでドルトムント側の疲労を待つと言う理に敵っている最善手だと思います。ですが、それ以外にもっと強い選択肢はあると思いますか?

またドルトムント側は下がったシュバインシュタイガーをさらに追うという選択肢はなかったのでしょうか?(5対4を5対5にするということです)

Re: わさび唐辛子さん

まずバイエルン側の選択肢ですが、もっと強い選択肢としてはロングボールに逃げるのではなく
それでもドルのGプレスをパスワークでつないで外して崩し切ってしまう事ですね。

かなりのリスクと高い技術を必要としますがバルサは常にそれを狙っているチームです。


反対にドルトムントに関しては、バイエルンに最終ラインから無理めのロングボールを蹴らしておく分には
フンメルスとスボティッチがほぼボールを回収出来ていたので御の字としたのではないでしょうか。

カウンターの距離こそ長くなってしまいますが、実際に試合ではそこからの展開で(特にロイスのドリブルを中心)チャンスを量産しまくっていましたし。

僕がクロップでも前半はあれで御の字としていたと思います。



> 分刻みの解説に店長の熱の入れようが伝わってきました(笑)。
>
> 10分過ぎのシュバインシュタイガーが下がって数的有利の状況を作ったときのことなんですがバイエルン側はロングボールを選択しました。ローリスク・ローリターンでドルトムント側の疲労を待つと言う理に敵っている最善手だと思います。ですが、それ以外にもっと強い選択肢はあると思いますか?
>
> またドルトムント側は下がったシュバインシュタイガーをさらに追うという選択肢はなかったのでしょうか?(5対4を5対5にするということです)
プロフィール

soccertentyou

Author:soccertentyou
年間300試合観戦のサッカー馬鹿によるサッカー馬鹿の為の戦術分析ブログ

【メールアドレス】
wowow_2000(あっとまーく)yahoo.co.jp

サッカー店長のつぶやき
最新記事
最新コメント
カテゴリ
読んだ記事が面白かったら1クリックをお願いします↓
サッカーブログランキング
更新カレンダー
07 | 2017/03 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
マイベストサッカー本10選
広告リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。