スウォンジーのパスサッカー解析 ~敵を操るフリーランニング~

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<スウォンジーのパスサッカー解析 ~敵を操るフリーランニング~

今日はオフシーズン企画第一弾という事でちょっとマイナーなチームを取り上げてみようと思います。

それでいて部活少年、草サッカープレイヤーには明日からでもすぐに取り入れられるワンランク上の実戦テクニックご紹介と一部の方に好評の企画でもあります(笑)

本日取り上げるチームはここ2シーズン、プレミアで魅力的なパスサッカーを展開しているスウォンジーシティです。
その美しいパスサッカーを評して一部では「スウォンセロナ」なんて呼ばれているチームですね。

個人的にも今プレミアで一番面白いサッカーをしているチームだと思っていますし
このパスサッカーの礎を築いたロジャース監督がその手腕を見込まれて昨シーズンにリバプールへと栄転しています。

ところが選手個々のレベルではスウォンジーと比べて圧倒的に良質な駒が揃っているはずのリバプールでなかなかロジャースのパスサッカーが機能しなかった一方、
ロジャースの後を引き継いだ新監督ラウドルップはベースとなるメンバーをそのままに前任者を継承するサッカーで躍進、見事リーグカップ優勝を手にしたシーズンとなりました。


何故、両者でこのような差が生まれてしまったのでしょうか?

それは個々の能力では補えない、スウォンジーのパスサッカーを支えるメカニズムにあります。


<現代版ポゼッションサッカーにおけるビルドアップの考察>

スウォンジーに限らず、今ポゼッションサッカーのエッセンスを取り入れているチーム(CLに出てくる欧州の強豪と呼ばれるチームはほとんどと言えますが)では
最終ラインからのビルドアップ時にほとんどテンプレとも言えるオートマティックなメカニズムを採用しています。

仮にGKから攻撃を組み立てるとした場合、まずCBが両サイドに開き、SBを高い位置に押し上げてボランチ(アンカー)が1枚最終ラインに降りてきて最後尾の3枚で組み立てを行う動きですね。

【ビルドアップのメカニズム (4-2-3-1の場合)】
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↑例として4-2-3-1布陣の場合を図にしてみましたが、両SBが高い位置を取る分、
両SHは中に絞って敵バイタルエリアでの間受け要員を厚くするのが現代のトレンドと言えます。

(布陣が4-3-3でも4-4-2でも基本となるメカニズムは一緒)

このメカニズムのミソは3枚になった最終ラインが相手の布陣が2トップにしろ1トップ+トップ下の2枚にしろ
敵の前プレに対して3対2の数的優位を持てるところにあります。


【最終ラインで3対2の数的優位を確保】
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この数的優位を活かしてボールをつないでいく訳ですが当然守り方のほうも進化しており
最近では敵の2トップが簡単に中を割らせない絞りの動きや
敢えて展開力が低いCBの方を常にフリーにさせておく事でビルドアップをスムースに行えないような工夫も見てとれるようになってきました。

当初CBに利き足がヘディングのシュクルテルだったりアンカーにボールを蹴るより相手の足を蹴るのが得意なルーカスだのを置いていたリバプールが苦戦していたのも当然と言えるでしょう(^^;

じゃあスウォンジーにはリバプールに比べてテクニックに優れた選手を揃えているのかと言うと決してそうではありません。
(資金力的にもそういう戦力を揃えるのは不可能)

FCバルセロナのように全てのポジションに超絶的なテクニックを持った選手を揃えていれば
相手がどれだけ守り方を工夫してこようが密集地帯に平然とパスを通していく事も可能でしょうが多くのチームでは現実的な話ではありません。


そこでスウォンジーのパスサッカーを支えるメソッドが活きてくるのです。

パスのコースを限定されたり中盤で密集を作られたりしたらそこを繋いで行くのが難しい多くのチームにとって
大切なのは相手にそうさせないよう仕向ける事です。

より具体的に言えば「パスを受ける為のフリーランニング」から一歩進んだ「敵を操るフリーランニング」がその鍵を握ってくるので、
続いての章では実践的テクニックの一つとして試合画像を使って解析していこうと思います。


<ブリットンが見せる敵を操るフリーランニング>

スウォンジーのパスサッカーを支えるメソッドを紹介するにあたってここで1人の選手をピックアップさせて下さい。

スウォンジーの背番号7、MFのブリットン選手です。
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まあ、代表暦もありませんし、プレミアでもかな~り地味な部類に入る選手なので知らない人も多いかとは思いますが…(^^;

但し、一見地味な見かけとは違い、この選手かなりのやり手です。

一昨シーズンの欧州五大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス)の全選手におけるパス成功率のデータであのシャビの92.4%という数字を唯一上回ったのがこのブリットンであり、その数字は脅威の93.5%!

プレースタイル的にもチームで担っている役割的にも「スウォンジーのシャビ」と言って差し支えないかと思います。

とまあ、ただでさえスウォンジーのパスサッカーは有名になった上にブリットンはこんな派手なスタッツを叩き出しちゃった訳ですから、昨季は相手チームからのマークも一段とキツくなったのは当然の話。


ところがこの選手の場合、その脅威のパス成功率を叩き出していた秘訣は超絶的な足元のテクニック・・・ではなく、(繰り返すようですが、そういう選手は取れません)
頭の良さ、周囲を見る眼の良さといった地味な部分が支えていたので、敵のマークを利用してチームのパス回しの流れを作る巧みさを見せてくれました。

では実際の試合からブリットンの動きが作るスウォンジーのビルドアップを見ていきましょう。


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局面は左から右方向へと攻めるスウォンジーの最終ラインのビルドアップから。

スウォンジーは4-2-3-1布陣でボランチがキ・ソンヨンとブリットンのコンビになります。
ここではCBの間にキソンヨンを降ろして最終ラインを3枚に、ブリットンはボランチのポジションに留まる関係性です。

これに対し敵チームも青丸で囲った1トップ+トップ下の2枚が簡単にはビルドアップさせまいと前プレを仕掛けていきます。
(敵チームからすると中のブリットンを使われると厄介なのでここは切りたい)

ボールは降りてきたキソンヨンから左のCBへ


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左のCBへボールが渡ったところでブリットンがタテパスのコースに入る動きで水色2枚の前プレを牽制。

ブリットンの動きに釣られて2枚が大きく右へと引っ張られているのが分かります。

この動きで逆にキソンヨンにはスペースが出来ました。


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ボールはもう一度キソンヨンを経由して今度は中のCBへ。

と同時にブリットンが今度は青2枚のちょうど真ん中でタテパスを受けられるようなポジション取りへと修正。

現代サッカーにおける2トップの前プレで一番やっちゃいけないのは真ん中を割られてタテパスを通される事なので、
ここは急いで中に絞る動きに変更しています。


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「中を絞れば当然外が空く」ってな訳で、スウォンジーはブリットンの動きに釣られて中を絞った前プレを見て再び外のCBを使います。
(ここにはブリットンが作ったスペースがある。)



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ボールが左へと展開されると再びブリットンは流れながらタテパスを受けるような動きを見せて前プレを引っ張ります。

これで空いた斜めのパスコースにブリットンの意図を感じて次の味方(デグスマン)が動き出しているのがミソ。
(これがスウォンジーが築いたコンビネーションのメカニズム)


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予定通りここにパスが入って・・・

(ここで前プレ2枚を完全攻略)


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受けたデグスマンからサイドへ大きな展開が入ると・・・


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ビルドアップ完成⇒次は崩しのフェーズへと移っていきます。


以上、3枚にした最終ラインからの見事なビルドアップを見てきましたが、
最大のポイントは一度もパスを受け取っていないブリットンの動きにあると見ます。

ビルドアップの段階で3対2の攻防がメインとなる現代のポゼッションサッカーでは
敵の前プレをここでいかに外すかがその後の展開の成否を握っています。

そこで自分へのマークをパスを受ける為に外すというフリーランニングではなく
チームのビルドアップを助ける為に使うというブリットンの自己犠牲はチームにとってなくてはならないものです。


今後マイボール時には多かれ少なかれポゼッションが求められる現代サッカーにおいて
どうしてもポゼッションというと=足元のテクニックと見られがちな側面があるものの、
その実、重要なのは頭を使った駆け引きであるという事がよく分かるのではないでしょうか?


プレイヤー目線で見ても人間の心理上、決定機などで自分がボールを受ける為に走れる人は多いですが
味方の為に無駄走りが出来るプレイヤーはますます貴重になっていくはず。

(オシムなんかは「水を運ぶ」という表現を使ってこの手の選手をとりわけ高く評価していましたね)


現役プレイヤーの皆さんも自分のマークが厳しい時や中盤に出しどころが無い苦しい局面でこそ
「敵を操る動き」でチームに貢献してみましょう。

勿論、来季の『スウォンセロナ』の躍進にも期待大ですね!

(某リバ○ールはロングパス蹴っ飛ばしてナンボのジェラードとルーカスのボランチじゃーロジャースサッカーは無理だと思います!ww)


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非公開コメント

読んでいて思わず「すげえ」と声を出してしまいました(笑)

サッカーが上手いというのはこういうことなのかと。

この選手もすごいと思うのですが、その動きの意味を理解している周囲の選手もすばらしいですね。

守備側も守備側でここまで読んだプレーを選択していくのでしょう。(開けるスペースの予測とか)

この先スペースを作ったり潰したり、こっちで作ると見せて違うところに作ったりなど凄まじい頭脳戦が繰り広げられる、そんなサッカーの未来を想像しました。

超ド素人な質問なんですがなんでロジャースはリバポの選手にこの動きを真似させないんでしょうか?

イングランドのサッカーとしては珍しく(まあウェールズのクラブですが)キッチリつないでくるので、たいへん魅力的です。昨シーズンは、結果も残しました。
きちんとグラウンダーの速いパスが出せて、ピタリと止めることができる、気持ちいいサッカーをします。
ブリットンとデ・グズマンは、上手いですね。ミチュは、好きなプレーヤーです。
技術はあっても例えばユナイテッドのペルシーと香川は絶望的に息が合わないので、スウォンジーのようにつなぐチームというのは、同じ絵を描けているかがポイントになるのでしょう。
そういう意味で、ロジャースやミカエルは高い手腕を発揮していると思います。

お久しぶりです!

もしかしたらブログ移転してからコメントするのは初めてかもしれません。
前はグーナーという名前でした。
今回はスウォンジー特集でしたが、ミチュではなくブリットンに注目した所も店長らしさ全開ですね!ww
次はラージョかフィオレンティーナでお願いします!

ブリットンですか( ゚д゚)
よ〜〜く覚えておきます!
一節から香川のユナイテッドvsスウォンジーが見られるということでだいぶテンションが上がっていたところにスウォンジーの企画を持ってくるとは…
流石です店長
香川の新シーズンのスタートから、ミチュとボニーの共存、それからブリットンと、期待していたゲームの中にまた一つ楽しみが増えました!

後半の負けている時間帯に周りを活かすために囮になるというのはすごいですね。。
ブリットン覚えときます。スウォンジーはやっぱりミチュお買い得過ぎましたね(笑)

シティが大会で決勝でバイエルンに逆転負けしましたがベジェグリーニなので期待したいと思います(。-∀-)

これは面白い!巧妙なフリーランはそれ自体が武器になりえるんですね。
今年のスウォンジーはボニーが加入し、崩しの選択肢が増えてますからね。
さらなる躍進に期待したいなぁと思っています。

ブリットンですか

(ウイイレをやってるお陰で)名前は知っていましたがそんなに良い選手だったとは

パス成功率でシャビを上回る選手が居たなんて初めて知りました(笑)

Re:わさび唐辛子さん

サッカーがボールを使った頭脳戦と言われる所以ですよね。

こういう読みがある試合は見ていても面白いですし。




> 読んでいて思わず「すげえ」と声を出してしまいました(笑)
>
> サッカーが上手いというのはこういうことなのかと。
>
> この選手もすごいと思うのですが、その動きの意味を理解している周囲の選手もすばらしいですね。
>
> 守備側も守備側でここまで読んだプレーを選択していくのでしょう。(開けるスペースの予測とか)
>
> この先スペースを作ったり潰したり、こっちで作ると見せて違うところに作ったりなど凄まじい頭脳戦が繰り広げられる、そんなサッカーの未来を想像しました。

Re: バルス!さん

> 超ド素人な質問なんですがなんでロジャースはリバポの選手にこの動きを真似させないんでしょうか?


やろうとはしてましたがすぐには出来ないというか、ポゼッションに見合った駒が要所に足りなかったといいますか・・・(^^;

Re: onelove2pacさん

> イングランドのサッカーとしては珍しく(まあウェールズのクラブですが)キッチリつないでくるので、たいへん魅力的です。昨シーズンは、結果も残しました。
> きちんとグラウンダーの速いパスが出せて、ピタリと止めることができる、気持ちいいサッカーをします。
> ブリットンとデ・グズマンは、上手いですね。ミチュは、好きなプレーヤーです。
> 技術はあっても例えばユナイテッドのペルシーと香川は絶望的に息が合わないので、スウォンジーのようにつなぐチームというのは、同じ絵を描けているかがポイントになるのでしょう。
> そういう意味で、ロジャースやミカエルは高い手腕を発揮していると思います。



一番プレミアっぽくないサッカーをしますよねーこのチームは。

メンバーも固定されていると同じ絵も描きやすいですし。

Re: ベナTさん

> もしかしたらブログ移転してからコメントするのは初めてかもしれません。
> 前はグーナーという名前でした。
> 今回はスウォンジー特集でしたが、ミチュではなくブリットンに注目した所も店長らしさ全開ですね!ww
> 次はラージョかフィオレンティーナでお願いします!



お久しぶりです。

ラージョに需要があるのか疑問ですが、定期的にマイナーチームも取り上げていこうかと(笑)

Re: マンチェスター香川さん

> ブリットンですか( ゚д゚)
> よ〜〜く覚えておきます!
> 一節から香川のユナイテッドvsスウォンジーが見られるということでだいぶテンションが上がっていたところにスウォンジーの企画を持ってくるとは…
> 流石です店長
> 香川の新シーズンのスタートから、ミチュとボニーの共存、それからブリットンと、期待していたゲームの中にまた一つ楽しみが増えました!



そうなんですよねー。僕も開幕戦はこのカードが一番注目だと思っています。

昨季のエバートン戦のようにいきなり開幕金星も・・・?(爆)

Re: シルバさん

> 後半の負けている時間帯に周りを活かすために囮になるというのはすごいですね。。
> ブリットン覚えときます。スウォンジーはやっぱりミチュお買い得過ぎましたね(笑)
>
> シティが大会で決勝でバイエルンに逆転負けしましたがベジェグリーニなので期待したいと思います(。-∀-)



ミチュのように選手を取ってくる目を持っているのもこのチームのいいところです。

しかしシティの守備は今季も堅そうですなー(^^;

Re: 爪楊枝さん

> これは面白い!巧妙なフリーランはそれ自体が武器になりえるんですね。
> 今年のスウォンジーはボニーが加入し、崩しの選択肢が増えてますからね。
> さらなる躍進に期待したいなぁと思っています。



逆に言うとただやみくもに走っているチームは本当の意味でフットボールは出来ませんww

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Author:soccertentyou
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