<新たなる銀河系は誕生するのか? ~マドリードダービー~>「Rマドリーはスルーですか?」
・・・って、そんなつもりは毛頭無かったんですが、
確かにタイミングが合わず、まだ今季一度も取り上げていませんでしたね(^^;
とは言えちゃんと開幕から試合は追っていましたので今日は今季開幕~これまでのRマドリーを振り返りつつ、
ある意味マドリーの現状が決定的となった試合とも言える先日のマドリードダービーを検証していきたいと思います。
ではまず、モウリーニョと決別した白い巨人が新たなる銀河系チーム再建を託したこの男に登場してもらいましょう。
<アンチェロッティという男>今季のマドリーを語る上で、まずはこのアンチェロッティという新指揮官は外せないファクターになってきます。
そこで彼のこれまでの経歴を振り返る事でこの新監督を今一度おさらいしておきましょう。
そもそも彼が現在の地位まで上り詰めるそのキッカケとなったのは96年から2シーズンに渡って指揮をとったパルマでの躍進です。
当時、生粋のサッキニスタだったアンチェロッティは師匠アリーゴサッキの流れを汲むゾーンプレスの申し子で
パルマでも
「4-4-2にファンタジスタの居場所は無い」としてチームナンバー1のテクニシャンだった
ジャンフランコ・ゾラを放出。
後にアンチェロッティ本人も「当時の私はまだ若く、監督として頭も固かった」と認めている通り、
この頃はまだガチガチにシステマチックな戦術で固めるタイプの監督でした。
そんな彼の戦術観を一変させたのが、次に指揮を執ったユベントスでの事。
キッカケは1人の選手、
ジダンの存在です。
屈強なフィジカルと繊細なテクニック、「近代サッカー最後のトップ下」と言われたジダンを抜きに
当時のユベントスでチーム作りを進めていくなど到底不可能な話でした。
しかしジダンを使うからにはピッチ上の選手が均等に攻守を受け持つ4-4-2を諦めねばなりません。
そしてアンチェロッティは決断するのです。このチームではジダンを最大限に活かす3-4-1-2を採用すると。
(ジダンには守備を免除する代わりに彼の周囲にその負担を受け持つ労働者を配置してバランスを取る布陣へ)
結果的にこの決断は吉と出てジダンに率いられたチームは躍動。
この時の経験がアンチェロッティの戦術に幅と柔軟性をもたらす事になります。
その後はミランでピルロをアンカーに置いたり、PSGでスター軍団の共存を図る4-4-2を採用したりと
年齢を重ねると共に引き出しを増やしていきました。
よく監督をタイプ別に分ける際
「自身の戦術に合わせて駒を選ぶタイプ」と
「持ち駒に合わせて戦術を選ぶタイプ」の2種類がいると言われますが、
アンチェロッティの強みはこの2つのちょうど中間に位置している事です。
選手やクラブの会長とも温厚な関係を築く事が出来る彼は、全てにおいてバランスを調整する事に長けたオールラウンダーな監督と言えるでしょう。
昨季、ロッカールームでの派閥闘争、クラブ内部での政治的駆け引き、カウンター戦術の限界と不満に揺れたマドリーにとって、まさに今クラブが必要としていた男がアンチェロッティだったのです。
<「ネクスト・ジダン」 イスコの存在>運命とは時に不思議な巡り合わせをするものですが、
今季アンチェロッティのチームには「次世代のジダン」とも言うべき天才イスコという持ち駒がいました。
しかもこのイスコをマドリーに引き寄せ、
アンチェロッティと引き合わせたのが誰あろうそのジダン張本人だったというのだから面白い話ですよね。
ではここで、そのジダンをアシスタントコーチに加え、
今季アンチェロッティが最初に送り出した開幕当初のオーダーを見てみましょう。
【13/14 Rマドリー (開幕当初)】
ポイントは4つ。
まずはSBに新加入のカルバハルを開幕スタメンに大抜擢したものの、
攻撃力では魅せた反面、守備で裏のスペースを空けるクセがあるというまるで
「スペイン版マルセロ(笑)」だった事からマルセロとの併用はリスクが大き過ぎると判断。
以降はアルベロアが起用されいますが、左のマルセロが怪我で戦線離脱すると再びカルバハルに出番が回ってきたり…とやり繰りに試行錯誤している現状です。
次に話題のGK問題。
昨季は監督との個人的ないざこざからベンチメンバーになっていたと見られていたカシージャスが
新指揮官の元でもベンチに座り続けた事でちょっとした騒動に発展していました。
しかしアンチェロッティからすると昨季から試合に出続けていてパフォーマンスにも問題が無い正GKを下げる理由が見当たりません。
実際にDロペスは今季も開幕から絶好調で、彼のスーパーセーブが無ければ今頃マドリーはバルサに大きく勝ち点で離されていた可能性もあります。
折衷案として今はCLでカシージャス、リーグ戦でDロペスを使うという苦肉の策を取っていますが、
確かにカシージャスには大一番になればなる程、又チームが苦境に陥れば陥る程その力を発揮する
通称
「聖・イケル・カシージャス」なる特殊能力を持っているのでシーズンの佳境では出番が多くなる事も予想されます。
3つ目は骨折でしばらく復帰が見込めない司令塔シャビアロンソ不在のボランチです。
新戦力として同タイプのイジャラメンディを補強してはいましたが、
すでにチームに馴染んでいるモドリッチとケディラのコンビが無難に起用されました。
しかしこの組み合わせは2ボランチとしては最悪です。
ケディラは身体をぶつけた競り合いに強いので、いつもケディラがボールに当たりアロンソがそのカバーをするというのがマドリーの2ボランチにおける基本的な役割分担になっていました。
一方のモドリッチもスパーズ時代から豊富な運動量で攻撃に上がっていく事でその持ち味が発揮されるので
相棒のパーカーがその分バランスを取るという分担です。
つまり、逆の言い方をすればケディラにチーム全体のバランスを見たカバーリング役をこなせるセンスは無いし、
モドリッチもアンカーとして身体をぶつけてでも相手の攻撃を止めるフィジカル的な強さは持ち合わせていません。
結果としてお互いに
「アロンソを必要としている」このコンビは全く機能していませんでした。
4つ目はこの中盤のゴタゴタをたった1人で解決していた「新たなるジダン」
イスコの存在です。
マラガ時代からその能力の高さは際立っていましたが、
周囲の味方のレベルが上がった事で今季は更に輝きを増しています。
とにかくバイタルエリアで間受けに入るタイミングが絶妙でマドリーは彼にボールを渡しておけば自動的にチャンスが生まれるという
ボーナスステージ状態。
あのロナウドも含め、マドリーはボールを持ったらまずイスコを探しているフシもあり、瞬く間にチームの王様として君臨しています。
ゴールとアシストという二つの決定的な仕事によって開幕序盤のマドリーを文字通り引っ張っていたのがイスコでした。
一方でそのイスコと役割が完全にかぶっているエジルはサイドに追いやられ、
ピッチ上の持ち場まで奪われてしまい、さすがにこれは移籍も止む無しと見ました。
<そしてベイルがやってきた…。>そして移籍市場も終了間際になって遂に
「130億円の男」ベイルがチームに加入しました。
勿論、彼の力は大きな武器になり得ますが、既にスター選手と新加入選手で溢れかえっているチームで一歩使い方を間違えれば諸刃の剣にもなりかねません。
アンチェロッティの慎重な手綱さばきが問われるところです。
実際に開幕から1ケ月ほどはチームとしての機能性に問題を抱えながらも個々の能力の高さによって順調に勝ち点を稼いでいたマドリーでしたが、遂に第4節のビジャレアル戦で負の側面が一気に露わになります。
それはモウリーニョとの決別から今季は多くのマドリディスタ達が望むポゼッション型へ舵を切っているマドリー相手に、2部に落ちようとも一貫してポゼッションサッカーを貫いてきたビジャレアルがそのお手本を示したような試合になりました。
ではこのビジャレアル戦で見られたマドリーの課題を検証してみましょう。
【13/14 Rマドリー 対ビジャレアル戦】
この試合、怪我のマルセロに加えてアルベロアとコエントランも使えない事情からアンチェロッティはナチョ・フェルナンデスをSBに抜擢。
加えて最悪のバランスだったボランチペアはモドリッチとイジャラメンディの組み合わせに変更されています。
そして注目のベイルは右SHとしてデビュー戦を迎えました。
ところが試合は序盤から見事なパス回しを見せるビジャレアルにマドリーが翻弄される事となります。
まずボランチのペアが抱える問題はこの試合でも全く改善の兆しを見せる事が無かったのでバイタルエリアは終始不安定なままでした。
【ビジャレアルのカウンターに無人のバイタルエリアが狙われる】
マドリーはモドリッチと新加入のイジャラメンディで役割分担がハッキリせず、
攻撃時にどちらも自分のタイミングで持ち場を離れてしまうのでDFラインの前は常に無人のスペースと化し、
カウンターを食らう度にこのバイタルエリアを使われる有り様でした。
そしてそれは遅攻を受けた際にも同じような問題が発生しています。
【遅攻でもバイタルエリアを埋めきれない】
↑この場面では片やDFラインに吸収され気味の深いポジションを取るイジャラメンディと
片やボールに食らいつくモドリッチで距離が開き過ぎてしまい、結果としてやはりバイタルを空けてしまっています。
出来ればベイルにも中に絞ったケアをしてもらいたい場面でしたが
ここでは相手のサイドチェンジを想定したのか逆サイドのエリアに回るような動きを見せています。
まあ、細かい事を言ってしまえば守備の優先順位として
逆サイド<<中のバイタルとなるんですが
そもそもベイルにはそういう気の利いた守備を期待してわざわざ大枚を叩いた訳ではありません。
続いてビジャレアルのパス回しに翻弄されるマドリーをもう一つ↓

局面は左から右へと攻めるビジャレアルのビルドアップにまずイジャラメンディが食いついた場面です。
実はこの一つ前の段階で既にモドリッチも持ち場を離れているので微妙な判断ではあるんですが、
なにぶん前がロナウド、ベンゼマ、イスコでは積極的な前プレが全く期待出来ないというチーム事情があります。
既にいいようにボールを回されてきたマドリー守備陣の心情としては
ここでも相手のボランチに全くプレッシャーがかかっていないのを見て積極的な動きに出たのも無理はないかな…と(^^;

ですがイジャラメンディの積極性も所詮周囲が連動していない単発的な動きなので難なくいなされてしまうと
ダブルボランチが空けた中央のパスコースがパックリ空いてしまい、ここでもベイルに対して中へ絞る守備が求められる事となってしまいました。

しかし、元来が純粋なサイドアタッカーであるベイルに過度な守備センスまでは求められません。
この場面でもやはり中ではなく外をケアするクセが出てしまい、一番危険なコースにパスを通されてしまいます。
…このように前線をベンゼマ、ロナウド、イスコ、ベイルで構成してしまうと絵面こそ豪華絢爛ですが
やはり攻守のバランスがガタガタになってしまうのですね。
その上、攻撃でもベイルが右サイドを突破する度にわざわざ左足に持ち変える姿を見ては
「何という130億の無駄使い」「こんなベイルは見たくなかった」というのが偽らざる感想です。
この中途半端なポゼッションサッカーが本家ビジャレアルに通用しないと見たアンチェロッティは後半、
ベイルに代えて右が本職のディマリアを、ボランチにはモドリッチに変えてケディラを入れる事で昨季までのカウンターサッカーへスタイルを180度変更。
この効果はすぐに現れて右サイドでディマリアの走力が復活⇒攻守のバランスも改善。
試合は伝家の宝刀カウンターからマドリーがなんとか引き分けに持ち込んでいます。
<4-4-2の【守・破・離】 ~マドリードダービー~>そんな流れで迎えたのがこの大一番マドリードダービーになります。
ではいつものように両チームのスターティングオーダーから見て行きましょう。
【Rマドリー×Aマドリー】
(
*アトレチコの布陣はアルダとコケが左右逆でした(^^;)
アンチェロッティはこれまでのイビツなバランスの布陣ではリーガナンバー1のリアクションサッカーで鳴らすシメオネのアトレティコ相手にカウンターで狙い撃ちにされる危険性を懸念していた事でしょう。
そこで立ち返ったのが自らの原点でもある
4-4-2でした。
ここで一度それぞれのポジションを固定化させた4-4-2にする事でまずは攻守のバランス改善に努めたアンチェロッティらしい狙いが透けて見えます。
対するシメオネもこのダービーでは自分達の基本布陣である4-4-2を押し通してきました。
但し、同じ4-4-2でもこちらは意味合いが全く異なります。
何故ならシメオネはバルサと戦ったスーパーCUPでは中盤を厚くした4-5-1で迎撃体制を取っていたからです。
【バルサ相手に4-5-1で迎え撃つアトレティコ】
↑このようにビジャを1トップに残した4-5-1でバイタル閉鎖を敷いたのがバルサ戦のアトレティコでした。
本来の4-4-2に比べるとビジャの1トップではどうしてもカウンターの切れ味が落ちるんですが、
それ以上にバルサに中盤を明け渡したくないというのがシメオネの偽らざる本音だったのでしょう。
逆に言えば
「マドリー相手には4-4-2でいける」という自信があったという事です。
【ダービーのアトレティコは4-4-2】
実際の試合では予想通りアトレティコがボールをマドリーに譲りながらも試合の主導権は自分達が納めるという狙い通りの展開。
アトレチコはある程度マドリーにボールを回させて自陣におびき寄せたところからボールを奪い、
一気にカウンターで得点を狙うシンプルなリアクションサッカーに徹していました。
一方、ビジャレアル戦と違いボールを渡されたマドリーには難点があります。
ポジション固定型の4-4-2だと2列目の中盤がボールを持った時に前へのパスコースが2トップの二つしか無いという事です。
これがマドリーのボール回しを難しくしていました。
【ディマリアの前に誰もいない問題】
局面は左か右へと攻めるマドリーのビルドアップの場面。
最終ラインから右へと展開されたボールをディマリアが受け取ります。

ところが中盤がフラットなラインになっている4-4-2だと
2トップが降りてくるかサイドに流れない限り、中盤から前へのパスコースが生まれません。
ところが足元で受けたがるベンゼマとロナウドの2トップは味方へのフォローに回る意識が緩慢で
この場面ではディマリアの前にパスコースが全くありません。

仕方なくディマリアはドリブリでマークをズラしながら無理やり逆サイドのイスコ目掛けたサイドチェンジを試みます。
ですが、戦術的に見て自陣深いこのエリアでSHが攻撃方向と逆に向かってドリブルしながら無理やりサイドチェンジを通そうとういう攻撃は明らかに異常だと思うのです。

結果的にこのサイドチェンジは完全に読まれていてインターセプトからカウンターを受ける事になりました。
戦術的な違和感というのはやはり失点に直結するもので、アトレティコの先制点もこの問題が遠因となっています。
【アトレティコの先制点を検証】
局面はマドリーの自陣深いエリア、DFライン前でこぼれ球をディマリアが拾った場面。
ここにはFルイスが自信を持って詰めて来ていますが、その自信の裏付けとなっているのがディマリアの前にパスコースが無い事なのは明らかです。

パスコースの無いディマリアは自分でボールを運ぼうとドリブルを挟みますが、これをFルイスに突っつかれてこぼれ球がコケの前に。

手前でパスカットを狙ったアルベロアの裏をDコスタに抜けられてGKと1対1を作られてしまいました。
今季開幕から絶好調のDコスタがこの決定機を外す訳も無く、しっかり流し込んでアトレティコが先制します。
これで勝利には2点が必要になったマドリーは俄然攻撃モードに入りますが、ここでもお仕着せの4-4-2が邪魔をするんですね。
まずイスコがサイドに張っているので中央で得意の間受けが激減。
反対にロナウドは得意のサイドから2トップに回された事で前を向いてではなくDFを背負ってボールを受ける場面が増えてこちらも持ち味が半減していました。
【機能しないマドリーの遅攻】
局面は左から右へと攻めるマドリーの遅攻の場面。
ここではやや中に絞った位置でもらいたいイスコとトップから下がってきたロナウドでエリアがもろ被り。
奥のイスコが早速死んでいます(笑)

DFを背負ってボールを受けたロナウドは力強いターンで前を向きます。
サイドのエリアと違って守りがぶ厚い中央のエリアではすぐにカバーのDFが入るのですが、
これがイスコなら自分に食いつかせる事を逆手にとってDFの鼻先でボールを逃がす視野とテクニックを持っています。
ところがロナウドはドリブル時の視野がイスコほど広くなく、自分で突破しようとする傾向も強いのでここでも切り返しでカバーのDFを外そうとするんですが・・・

シメオネ直伝の深いタックルにボールを奪われてしまいます。
(きちんとボールに行っている正等なスライディングなのでノーファウル)

遅攻で攻めに人数をかけているところで奪われてのカウンターは非常にしんどい守備になります。
マドリーとしては早めに高い位置で潰しておきたいところですが、
アトレチコにドリブルでだいぶ運ばれているこの場面でも尚、ロナウドは倒れたままの姿勢でレフェリーにファウルを求めるいつものダダっ子ポーズww
これでは素早い攻守の切り替えなど望むべくもありません。
ロナウドはサイドから斜めにカットインして入って来た時は前を向いているので中央での間受けも活きるんですが
CFから降りてくる場合だと背後にCBかボランチを背負う事になるので今ひとつだと思うんですよね。
やはりこの仕事をさせるならイスコだろう…と。
一方、懸案だったボランチの守備はだいぶ改善の兆しが見えていました。
攻撃で持ち場を離れる傾向が強いモドリッチをベンチに下げて、
ポジション固定型の4-4-2でケディラとイジャラメンディを並べた事で不用意にバイタルエリアを空けるシーンは半減しています。
しかし、これが逆に攻撃では足枷となってしまうのがサッカーの難しいところ。
【ポジション固定のボランチが生む弊害】
局面は左から右へと攻めるマドリーの攻撃の場面。
イスコが巧みなポジショニングで間受けを狙っていますが、ケディラには手前の門のコースにパスを通す自信が無いのか逡巡している様子。
(手前でペペが「早く縦に出せ!」って叫んでるのが笑えるwww)
まあ、ここはそもそも中盤にケディラなんかを置いているのが問題なんですが、ここでは一旦それは置いておきましょう(^^;

仕方ないのでイスコがより広いパスコースを求めて中へ移動。これでケディラからようやくタテパスが入ります。
ですが問題はこの後のイジャラメンディの動きにあります。

イスコの間受けの狙いは自分にDFを食いつかせてからボールを逃がし展開する事にあります。
ここでもケディラのタテパスをフォローに来るであろうイジャラメンディに落とす画を描いていましたが、
問題はボランチにモドリッチがおらず、ポジション固定型になっているという事です。

ハイ、やっぱりイジャラメンディが上がってきません。
そうこうしている内にイスコへはDFが迫って来てしまい・・・・

せっかくの間受けが台無しになってしまいました。
「こっちを立てればあちらが立たず」マドリーの難解な攻守のバランスを巡るパズルにアンチェロッティも頭が痛いはず。
【アンチェロッティの出した回答 後半】
0-1アトレティコのリードで折り返した後半、アンチェロッティはメンバーチェンジで4-4-2に見切りをつけます。
イジャラメンディに代えてモドリッチを、ディマリアに代えてベイルを投入。
この交代が生み出した攻守バランスの結果を象徴するシーンを一つ見て行きましょう。

まずこの交代のメリットはイスコを中央に戻した事で間受けが復活して中盤の預けどころが明確になった事ですよね。
ここでも2テンポから3テンポぐらいケディラのパス出しが遅くてイライラしたんですが、
まあなんとかイスコにパスを入れているのでギリギリ合格としましょう(笑)

パス出しが遅かったせいでDFに寄せられたイスコでしたが、そこは巧みなターンでかわしつつ前を向いて間受けを成功させます。(流石やね)

イスコをトップ下に置いたもう一つのメリットはベンゼマとの縦関係で中央にラインが出来る事です。
お陰でこの場面でもベンゼマに預けたワンツーリターンで中央突破の画が描ける訳ですね。

と・こ・ろが…
ベンゼマさんの落としが雑過ぎ~!!今季も開幕から低調なパフォーマンスに終始しているベンゼマ先生ですが、
「本気のベンゼマを見せる(キリッ!)」と言い出して早3年。
いい加減マドリディスタも愛想を尽かしている感もあります(笑)
試合ではこのパスがインターセプトされた事でアトレティコのカウンターが発動。

前線のDコスタにタテパスが入ったところで残っていたモドリッチが背後から寄せますが簡単に後ろへ叩かれて・・・

ここでファウルでもいいから身体で止めきれないのがアンカー・モドリッチの泣きどころ。
マドリーはカウンターを受けた場面でボランチがいなされてしまうと2CBでの守備を強いられてしまいます。

ここでアトレティコが2トップを残していたメリットが活きるんですね。
マドリーはベンゼマのミスパスから僅かタテパス3本繋がれただけでGKと1対1の決定機を作られてしまいました。
つまりこの交代を総合的に見るとトップ下イスコの復活とモドリッチの攻撃参加で中央に厚みを増した攻撃面では良い効果が得られていましたが、
やはりカウンターを受けた時の守備は脆弱なものになってしまったと言えそうです。
(加えて右のベイルは左足でボールを持つので横か後ろ方向へのドリブルがほとんどという惨状…OTL)
試合では最後、アンチェロッティが3枚目のカードにイスコに代えてモラタを投入。前線の厚みを増やしてきました。
(個人的にはベンゼマの方を下げて欲しかったが・・・)
精彩を欠くベンゼマと違いモラタのハツラツとした動きがようやく前線を活性化させますが時既に遅し。
1点のリードを持ったアトレチコが終盤は自陣深くに4-4-2の強固なブロックを敷いてそのまま試合をクローズさせる事に成功しました。
【アトレティコの4-4-2ブロック】
日本の伝統芸能ではその道を極める過程を
「守・破・離」と表現する事がありますが、
これはまず「型」を"守る"ところから入り、次にその既存の型を"破り"、最後に型から"離れて"自分のモノにするという意味ですね。
アトレチコは半ば遅攻は捨て気味の開き直りがあるので4-4-2の型を守る事で自分達の勝ちパターンを持っていますが、
マドリーは4-4-2の型を守る事がイコール呪縛となってしまい、足枷になっている感が強い訳です。
同じ4-4-2でも完成度に雲泥の差があった2つのマドリーが戦えばこうなるのはある意味必然の結果だったのかもしれません。
<新たなる銀河系は誕生するのか?>このように選手の組み合わせを変え、布陣を変え、最適バランスを見極めるアンチェロッティの苦悩こそが今のマドリーの全てです。
カウンタースタイルに徹すればすぐにでも欧州最高峰のチームに戻るんでしょうが、
現在のどっちつかずの中途半端なポゼッションスタイルだとパス回しではビジャレアルに翻弄され、
アトレチコにはカウンターの餌食にされるレベルの代物でしかありません。
さて、それでは最後にアンチェロッティが見い出すべきベストバランスとはどこにあるのか?を少し考えてみましょう。
まずGKは世界一レベルの高いレギュラー争いを今後も続けていく事になるのでしょうか。
正GKを固定しないリスクも高いのですが、クラシコ等の大一番ではやはりカシージャスの神通力が必要な気もします。
DFラインは経験重視のCBはラモスとペペで固定(ヴァランはカップ戦要員からスタート)、
SBはマルセロが復帰すればだいぶ磐石なものになるはずです。
懸案のボランチはアロンソ1人が欠けただけでここまでガタガタになる事がそもそも驚きでした(^^;
(まあ、その昔同じような事がプレミアの赤いチームでも起こったそうですが…(爆))
彼の復帰次第で万事解決する気もしますが、とするとベストな相棒は果たして誰なのか?
順当にモドリッチでもいいですが、個人的にはMシウバ、Gシルバの系統を受け継ぐブラジル人ボランチ=カゼミーロを置いてみるのも面白いんじゃないかと思います。
(この選手は個の力でボールを奪える若いボランチで将来が楽しみですよね)
前線ではやはりロナウドをサイドに、イスコは中央に戻すのが無難かと。
イスコを銀河系時代のジダンに見立ててロベカル役をマルセロに…という見方もあるかもしれませんが、
それをやるには前線で気の利いた献身が出来るラウールとボランチにもマケレレ役がいません。
ベイルは右に置くぐらいだったらプレミアに返却して下さい(爆)これは僕からの切なるお願いですww
(やっぱり中盤にはこのチームで唯一、攻守で汚れ役になれるディマリアが必要だと思いますよ。ええ)
それとあれだけ補強資金を使っておきながらイグアインを放出したCFにベンゼマとモラタしかいないのは一体全体どういうチームバランスなのでしょうか?(^^;
まあ、最近のパフォーマンスを見ればCFにどちらを使うべきなのかは明らかだとは思いますが、それにしても層が薄過ぎる…。
結局、本気を出さず終いのベンゼマにしても、そもそも1トップは彼のベストポジションでは無いのです。
リヨン時代のベンゼマ無双が見たいならチーム全体の戦術をベンゼマに寄せる必要がありますが、
それをやるにはこのチームは他に主役級の駒が多過ぎるのですね…。
一見豪華なように見えて激しくバランスの偏ったこの持ち駒をアンチェロッティがいかに使いこなすのか。
新たなる銀河系が誕生するか否かは、案外彼が
「第二のデルボスケ」になれるかどうかと同義だったりするのだろうか・・・?
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