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ゲーゲンプレスは死んだのか? ~ユベントス×ドルトムント~

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<ゲーゲンプレスは死んだのか? ~ユベントス×ドルトムント~

はい、今回はCLのベスト16からユベントス×ドルトムントのマッチレビューを久々にやりたいと思います。

というのも以前コメント欄で「最近のドルトムントの不調」と「ユーベの4-3-1-2システム」について取り上げて欲しいというリクエストをもらっていたので、この試合やればいっぺんに済むだろう的な発想です(^^;

ちょっと久々すぎてマッチレビューの書き方を思い出しつつ書いていく感じになりそうですが、まずは両チームのスタメンから~。

【ユベントス×ドルトムント】
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まずは今季欧州クラブシーンにおける最大のサプライズとなったドルトムント。
もはや逆噴射という表現すら生ぬるい沈没船スタートとなった悪夢のシーズンはようやく冬のインターバルを挟み、
年明けから3連勝という復調を感じさせる流れでこの試合に臨んでいます。(その後4連勝まで伸びました)

復調した大きな要因の一つとして言われているのが前線の再編成です。
今季、大エース・レバンドフスキの後継者として加入した陰毛・・・ならぬインモービレが
「セリエA得点王」という経歴査証疑惑まで匂わせる低パフォーマンスに終始。

当初は辛抱強く使い続けていたクロップもついにしびれを切らしたのか
オーバメヤンをCFに置いて2列目にロイス、香川、カンプルを並べた0トップ布陣に踏み切ります。

するとこれがバロテッリを見切って0トップへシフトチェンジしたどこかのチームと同様に大当たり。
前線の流動性が「機動力を活かしたドルトムントサッカー」の一片を取り戻させたと見ます。


続いてユーベ。

今季コンテの常勝チームを引き継いだアッレグリは当初「ミラン時代の4バック」に布陣を変更するだろうと言われていましたが、蓋を開けてみれば昨季と同じ3-5-2システムでシーズンをスタート。
早急な改革に走る事なく、まずは新チームを無難に離陸させる事に成功しました。

国レベルで資金力が低下しているセリエAは今季の移籍市場でもクラブ間の力関係を一変させるような大物移籍は0。
ならば既に完成されている常勝チームを継続する事で大きな波風を立てる事なく開幕ダッシュという、いかにもアッレグリらしい堅実なスタートと言えるでしょう。

今季も第1コーナーで悠々と先頭に立つと、満を持して4バックへのトライに着手。
いよいよアッレグリの代名詞でもある4-3-1-2の登場です。


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<ユベントスの可変式4-3-1-2>

アッレグリが既に出来上がっている常勝の3-5-2からわざわざ4-3-1-2へのシフトチェンジを試みているにのはいくつか理由があります。

まず一つ目は「このシステムが好きだから」という至極単純な理由ですね。
監督も人間ですから、自分のやり慣れた理想のシステム=過去の成功体験はバカに出来ないもの。
ザックが最後まで代表に3-4-3を植え付けようとトライしていたのも同じ理由からでしょう。

二つ目は追われる立場の宿命である「ユーベ対策」への布石という一手です。
戦術的なバージョンアップと引き出しはどれだけあっても余計という事はないですからね。

そして三つ目は、これが一番大きいと思うのですが、自身のリソースを考えた時の最適化です。
これまで長く「未完の大器」止まりだったポグバがいよいよ本格的にバロンドール候補へ一歩高みに昇り始めました。

これによりチームにはピルロ、ポグバ、ビダル、マルキージオという世界屈指のCHを揃えた陣容になったのは良かったのですが、今度は3-5-2の3センター布陣だとこの内1名をベンチに置かなければならないという贅沢なジレンマが発生。

故に手持ちの駒を最大限活かすのであれば中盤のイスを一つ増やした4-3-1-2という布陣は理にかなっているという事です。


では3-5-2と4-3-1-2では戦術的に何が大きく変わるのでしょうか?

最も大きな違いは守備ブロックの組み方です。
現代サッカーのビルドアップは2CBの間にボランチを降ろした3枚か、もしくは最初から3バックで行うか、
いずれにせよ「3枚で行う」というのが一つのテンプレートになっています。

これに対し3-5-2にしろ4-4-2にしろ前線が2トップで守備の3ラインを作る場合、
相手の3枚ビルドアップに対して前線の数的不利が常態になっています。

【2トップ(4-4-2、3-5-2)で3ラインを組む場合】
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↑これが2トップの場合の3ラインの基本的な組み方ですね。
3-5-2もボールサイドのWBは中盤のラインに位置を取る事が多いので相手ボール時は意外と4-4-2ブロックとあまり変わらなかったりします。

この布陣の利点は中盤とDFラインがバランス良い人員配置でまんべんなく守れる一方、
相手のボールの出所に対するプレッシャーはどうしても緩くなります。(2対3の数的不利なので追いきれない事も)

そこで相手のビルドアップの起点となるこの3枚により強くプレッシャーをかけたいなら前線を3枚にするという考え方も今では主流になってきました。

アッレグリが採用する4-3-1-2も守備時は4-3-3の3ラインを組むのが基本になります。

【3トップ(4-3-3)で3ラインを組む場合】
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これだと前プレはガッツリとハマる分、中盤は3枚で横68Mを守る為、どうしても横スライドを強いられた際に中盤にスペースが空いてしまうというリスクもあります。


ユーベでは「4つめのイス」として新たに設置されたトップ下にビダルを置いていますが、では実際の試合からアッレグリの4-3-1-2システムがどのように機能するのか解析していきましょう。

【アッレグリの4-3-1-2】
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局面はドルトムントのビルドアップに対応するユベントスの守備から。
ユーベの守備陣形は中盤の3センター+ビダル、テベス、モラタの前線3枚という並び


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ここから逆サイドにボールが展開されるとユベントスの守備はボールに合わせて横スライドしていく訳ですが
その際、中盤が3枚しかいないのでボールサイドのCH(ポグバ)が出て行った裏に一瞬スペースが生まれます。
(ピルロがカバーの位置まで完全に絞るまでの間)

ところがアッレグリのシステムではこのスペースをトップ下のビダルがカバー


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相手に中盤までボールを運ばれた際は4-3-3の守備ブロックから4-4-2のブロックへ変形。
これで中盤も隙無く埋められます。

更にここからボールが一度DFラインまで下げられると再びフォーメーションが変化するので
今度は4-4-2ブロックで守っているところからの局面を見てみましょう↓


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局面は既に4-4-2で守備をしているところにドルトムントがDFラインへバックパス


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ボールがDFラインまで下げられる動きに合わせて今度はビダルが一列高いところまで出て行って相手のボランチ(アンカー)をケア


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これで相手のビルドアップには4-3-3の3ラインで守備を行えるアッレグリシステム。
ドルトムントの後ろの3枚に対して前線の3枚をマンツー気味に当てているので前プレもハマります。


つまりアッレグリの4-3-1-2は4-4-2と4-3-3のおいしいところ取りを狙った一挙両得可変式システムと言えるかもしれません。

昨季、アンチェロッティのマドリーがサイドのディマリアを攻撃時はWGに、守備時はSHまで下げる事で可変式の4-3-3を編み出していましたが、ユベントスはトップ下にマルチロールな役割を課す事で同じような効果を実現しています。
(ただマドリーのそれはどちらかというと運動量でロナウドとベンゼマのマイナス分をディマリアが補って収支をトントンに持っていく・・・的な発想だったのに対し、ユベントスのそれはビダルの運動量+戦術理解力で明らかにプラスアルファを狙ったもの)

今後、一つのトレンドとしてこの「可変式システム」は注目ですね。


<可変式システムの弱点>

試合は前半13分にユーベの先制で火蓋が切られる。
今季ドルトムントのアキレス腱になっているカウンターでSB裏のスペースを突かれる形。
(相手のウィークを突くカルチョの真骨頂ですな)

ドルトムントのDF陣ではセリエA最強の2トップ(モラタ&テベス)を止める術がなく、その後も2人の関係だけで度々崩されるハメに。

ところがユーベは先制の5分後にキエッリーニがホームの芝で滑るという一発芸をかまして試合を盛り上げてくれます。

悪い事は続くもので前半の37分には「一番怪我しちゃいけない選手」ことピルロが負傷交代。
代わりに出てきたのがセリエファンじゃなければ思わず「誰や!?お前!」と言いたくなるペレイラ登場。
世界的名手であるピルロの控えがコレか・・・と改めてセリエAの底力を見て他国リーグのファンもガクブルです。

この交代によりマルキージオがピルロの位置に入ってビダルが一列下がり、トップ下の位置にペレイラが収まりました。
問題はビダルの運動量と戦術的インテリジェンスに支えられていたこの可変式システムはどうなるのか?という事です。

実際の試合からユーベの守備がどう変わったのかを検証してみましょう。


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局面は攻めるドルトムントがユーベのプレスを受けてバックパスをボールを下げる場面ですが
ペレイラのポジショニングと運動量がイマイチなのでここではモラタが中盤のヘルプに入っています。

このバックパスには当然トップ下のペレイラが出て行かなければいけないのですが・・・


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ペレイラ「正直、どこを守っていいのかよく分からん・・・」

可変式システムの弱点は、それを可能にする戦術的キープレイヤーの能力に依拠しているところです。
走れるだけのバカでも、頭がいい地蔵でもこの役割は勤まらんって訳ですね。


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重要な役割を担っているペレイラがフリーズしているせいでシャヒンはノープレッシャーで間受けを狙うギュンドアンにタテパス


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それまでは鉄壁の3センター+トップ下で自陣のバイタルを完全封鎖していたユーベの守備ブロックに僅かな綻びが生まれるようになりました。




<ゲーゲンプレスは死んだのか?>
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ユーベの中盤のクオリティが落ちた事で一転してチャンスが回ってきたドルトムント。
しかし今の彼らではその好機を生かせません。
今季、絶不調に陥ったドルトムントの要因を考えてみましょう。

まず、そもそも「今季のドルトムントはそんなにひどかったのか?」という疑問があります。

いや、勿論そんなのは成績を見れば一目瞭然なんですけど、
個々の試合をデータで振り返るとチャンス構築率とシュート数では昨年と同等かそれ以上の数値が出ているのも事実。

ただ、この競技の「決定率」という蜃気楼のようなものは水物ですし、
なんといってもこれまで度々重要なゴールを決めてきたレバンドがいません。

重要なのはそれでも昨年同様、崩すところまではいっているので
今の自分達のやり方を信じきれるかどうか、です。

面白いものでサッカー選手といってもしょせんは人間、
結果が出ないと自分達のサッカーに疑心暗鬼が生まれ、後ろ髪を引かれた中途半端なサッカーへと悪循環が加速⇒
気がついたら元の姿は跡形も無くなっていた・・・的な流れはサッカーではよくある話。

そんな今季のドルトムントを象徴するようなシーンをこの試合から一つピックアップしてみました。


【今季のドルから見るGプレスの現在】
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局面はドルの攻撃で今、オーバメヤンがシュートを打つ瞬間です。
このシュートはブロックされてこぼれ球がユーベの元へ(攻⇒守)


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ハイ!ココ!

この攻守の切り替わりの瞬間こそ伝家の宝刀ゲーゲンプレッシング発動の好機であります!


開始5
シュミット(今だっ!狩れ!!)



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ん・・・????

一人がボールにプレッシャーをかけている間に全員が速やかに帰陣・・・・って、お前らモウリー○ョのチームかよっ!!


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1枚ぐらいのプレスじゃ今のポグバは捕まりません。

あっさりとかわされてもドルの中盤はステイ!
(あれ・・・?これ本当にクロップのチームか?)


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プレッシャーがないのでアッサリとサイドチェンジされてしまいました。

(ドル「横パスならOK」って、どっちがカルチョのチームだよっ!!www)


別にこれはこれで、現代サッカーにおいての一つの守り方なので全然間違っちゃいませんよ?

でも、そもそもこのチームが何故、王者バイエルンに噛み付けたのか?を思い出す時、
なんとも寂しい姿に映るのは僕だけでしょうか。


これまで何度も言ってきているように攻撃の流動性が増した現代サッカーでは
攻守の切り替わりの瞬間にとれる守備方法は二つしかありません。

一つはカオス状態のポジションバランスから一刻も早く秩序だったブロックを形成する守り方。
もう一つはそのカオス状態のままボールを奪い取り波状攻撃につなげる守り方というか・・・攻撃の延長でボールを狩る考え方ですね。

前者の代表的なチームがモウリーニョのチェルシーだったりアンチェロッティのマドリーで
後者はペップのバイエルンとかシュミットのレバークーゼンでしょう。

そしてそもそもこの流れを加速させた張本人の一人であったはずのクロップのチームが今やコレ・・・ですからね。OTL


いや、彼らの気持ちもよく分かるんですよ。

あの瞬間、Gプレスを剥がされて食らったカウンターの失点場面とかが脳裏にフラッシュバックしているようなおっかなビックリの守備を見れば。

今や追う立場から追われる立場となった事でドル対策もテンプレ化され、
これまで楽に勝てていたはずの相手に戦術的に攻略された時の無力さ・・・とかね。


でもそこで日和らず、もう一踏みアクセルを踏み込めるか否か?なんですよ、変態道とは(笑)
シュミット「ウチはもうブレーキ取り外したわwww」

「持たざる者」が「全てを持つ者」に勝とうと思ったら同じ土俵で戦っては無理です。
「守るものがない」武器をアドバンテージに戦え・・・と言うには彼らは既に色々勝ち過ぎたのかもしれませんね。

その点、まだ何も勝ち得ていないシュミットのようなチームとか、そもそも監督が目の前の勝敗にあまり興味のない
ペップとかビエルサの方が振り切れるのかもしれません(笑)


ただ、問題の本質は「この守り方でドルトムントが守れるチームなのかどうか」です。

では実際の試合から前半の終了間際に生まれたユベントスの逆転ゴールのシーンを見てみましょう。


【ザルトムントの守備】
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局面は左から右へと攻めるユベントスのビルドアップから。
ピッチ上には既にピルロはいませんが「ピルロを経由しない攻め」はコンテ時代に散々練習してきた形。

ここでもボヌッチから中盤を飛ばしたクサビを「ポストプレーの鬼」テベスへ


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ボールをコントロールするテベスの背後にはパパスタソプーロスが寄せますが何とも中途半端な距離感
どうやら大外を上がってくるポグバが気になっている模様


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あろう事かこの状態からポグバを気にしてテベスから離れるという愚考を冒したパパスタと難なく前を向けるテベス

カルチョファン一同「それアカン・・・!!」


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普段セリエAを見ているユーベファン以外の人間にならその後の悪夢は充分予測出来たはず。
テベス無双からバイタルに切り込まれて中へ密集させられたところで外のポグバを使われる必勝パターン


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…で、このポグバからクロスを上げられる場面でドルトムントのDFラインは
お互いの背後をカバー出来るディアゴナーレが出来ていません。

これだとパパスタとフンメルスの背後はカバーが効いておらず、
ラインが逆の方向に斜めになっているのでモラタもオフサイドポジションに置けていません


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正しくはこの角度でラインを形成しないとラインが機能しているとは言い難いですよね。

しかも実は1点目の失点シーンでもドルトムントは同じような状況から食らっています。


【ドルトムント 1点目の失点シーン】
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ここでもやはりフンメルスの背後にカバーが効いていない状況です。

実際はGKのヴァイデンフェラーがこぼしてしまったボールを押し込まれての失点だったんですが、
SBの裏をカウンターで突かれて残りの3枚でディフェンスをする度にこの状況を作られていては失点は免れません。


じゃあ一方ユベントスのクロス対応はと言うと・・・

【ユベントスのクロス対応】
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アッレグリ「誰が監督だと思ってる」

う~む・・・やはりカルチョの伝統っすなー(^^;


ちなみにモウリーニョだとこうなります↓

【モウリーニョのクロス対応】
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PA内に4-4のブロック敷いて、こぼれ球にも万全の体制や!
(まあこのチームの場合、まずカウンター「させない」もんなー(^^;)


話をドルトムントに戻すと、要するに普通のサッカーしてても守れるチームでは無いと思うんですよね。

やっぱり彼らの必勝パターンって先制して相手が前がかりに出てきたところを
伝家の宝刀カウンターから無慈悲なレバンドで加点⇒突き放すってパターンじゃないですか。

勿論、今でもGプレスの残り香みたいなものは時々ありますよ?


でもさー・・・・


君らって・・・


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こういう変態プレスとかさ・・・





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変態カウンターでゾクゾクさせてくてたじゃんか


何を守ってるか知らないけどクロップのチームはいつまでも「挑戦者」でいてもらいたいものですね。







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『お前の良いところは勝ちに貪欲なことだ。変にエリートづらしないところだな。
頂上にいるお前がいちばん勝ちに対してハングリーだ』



ま、逆フラグ発動で目下、国内リーグでは4連勝中だけどねwww




*最近やけにユーベに甘いけど「逆にユベンティーノとしてはガクブルだわ!」と思った貴方はクリック↓

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異次元のバイエルンとプレミアが勝てない理由 ~アーセナル×バイエルン~

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<異次元のバイエルンとプレミアが勝てない理由

早いもので今季も既に終盤戦を迎えていますが13/14シーズンのこれまでの流れを追って見た時に一つの確信があります。
それは戦術的には「過渡期に入ったな」というものです。

サッカーの長い歴史を振り返ってみても何か新しいエポックメイキングなチームが現れた後は
必ずその模倣が広まり、それが一般化して定着した後に再びこれを打破する新たなブレイクスルーが現れる…という流れの繰り返しなんですね。

そう考えると近年の現代サッカーをその先端で引っ張ってきたエポックメイキングと言えばペップのバルサで間違いないんですが、今や彼らのメソッドである「ポゼッション」「0トップ」「間受け」等は現代サッカーのセオリーとして一部定着しつつあります。

このような観点で今季を見た時に、この流れに乗れたチームと乗り遅れたチームとの二極化は明らかであり、これが戦術的な過渡期に入ったと思う所以です。


そこで今日はこの戦術的な二極化をフォーカスする為に
次のブレイクスルーを担うであろう筆頭候補のバイエルンと今まさに二極化に揺れるプレミアの雄アーセナルとの試合を振り返りながら話を進めていきたいと思います。
(2ndレグも間近に迫っている事ですしねww)


<アーセナル×バイエルン 1stレグ振り返り>
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ではスタメンをさらっと見ていきましょう。

バイエルンはリベリー、ミュラー、シュバインシュタイガーがいない…という事実を一瞬忘れてしまいそうになる豪華メンバーですね。
ラームが右SBに戻っているのはペップにとって唯一この右SBのポジションだけが満足のいく戦術理解度に達していないという事の現れと見ます。
つまり出来ればラームは中盤で使いたいのが本音だけれどもSBにラフィーニャを使ってしまうと全体の機能性が落ちる…という見立てなのでしょう。

対するアーセナルはシティに6点、リバプールに5点をぶち込まれるなどここにきて持病の再発が懸念されていたところにフラミニが復帰。
これで中盤の守備に安定感を取り戻せるかどうか。
それと前線にはいつの間にか飛べない電柱ベン○ナーの他に飛べる電柱サノゴを補強していた模様。


続いて試合を振り返る前に、前日の記者会見におけるペップの預言者ぶりをご覧いただきたい。

ペップ『アーセナルを相手に90分間試合を支配することはできない。それは不可能なことだ。
いいプレーができれば75分程度は支配できるかもしれないが、ゲーム全体を通しては無理だ。
向こうにはクオリティの高い選手がいて、我々にとって常に問題となり得る』


ハッキリ言ってこのコメントでほぼ試合の内容を全て語ってくれていると言ってもいいぐらいの感じなんすが、
実際本当に序盤の15分間だけペースを握ったアーセナルがこの好機を活かせないでいると残りの75分は
バイエルンがいいように試合を支配し続けた…って内容だったんですよね。

改めて試合を振り返ってみるとスタートでアーセナルがペースを握れたのは
守備では前から激しくプレッシャーをかける前プレが
攻撃ではサノゴの空中戦が利いてここからの落としをほとんどマイボールに繋げていた事が大きかったと見ます。

このいい流れの時間態に得たPKを目下絶不調のエジルが痛恨の温いキックでノイアーに難なく止められてしまいました。
(ドイツ代表のチームメイトであるノイアー相手にエジルに蹴らしたのは失敗だったか?完全に読まれていたフシも有り)

結果的にはこれが試合の決定的な分岐点となります。


<ポゼッションする為の現代型ロジック>

とは言え仮にエジルのPKが決まっていて90分間アーセナルが11人で戦えていたとしてもそのまま勝ち切るのは難しかったでしょう。
何故なら試合内容を客観的に分析すればアーセナルがバイエルンと戦って勝てるのはせいぜい10回やって1~2回ぐらいだろうと思える実力差がそこにあったからです。

まずペップの試合前の予言通りに残りの75分間を支配されてしまったのは
PK失敗という心理面での打撃以上にバイエルンにはアーセナルの前プレを外せるロジックが存在した事の方が大きかったと見ます。

このロジックについてですが一つは今ではどこのチームでも当たり前に取り入れられている
ボランチがDFラインまで降りる擬似3バックですね。

まあこれに関しては既に一般化されているので対応策も浸透してきているのですが
バイエルンやバルサ相手に前プレが難しい本当の理由は後ろの数的優位を作る動きに連動して中盤~前線の動きにもしっかりとしたロジックが根付いている事でしょう。


【ゲッツェのトライアングルの中心で受けるポジショニング】
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コレ、このゲッツェの相手ディフェンス3枚のちょうど中間で受けるポジショニングってのはバイエルンの他にもバルサ等、
現代サッカーでポゼッションを武器としたいチームなら一つのセオリーとなりつつあるものですね。

ペップ時代のバルサでもよく見られたこのポジショニングにどのような意味があるのかと言えば
↑の場面のようにゲッツェ自身がパスを受けてもいいんだけれども仮にパスを受けられなかった場合でもチームを大いに助ける事が出来るんです。


【パスを受けられなかった場合】
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ここでも同じようにゲッツェはアーセナルのSB、SH、ボランチで出来たトライアングルのちょうど中心、
いわゆる相手ディフェンスの「三辺の中心」に位置していますが、
アーセナルもここでは中へのパスを警戒してトライアングルを縮める事でゲッツェへのパスコースを消しています。

しかしこれは見方を変えればゲッツェ1人でディフェンス3枚を引き付けている事になり
となればその周囲の選手がどうしたってフリーになるのが11対11で戦っているサッカーの必然と言えるでしょう。

この場面ではクロースはラームへのパスを選択


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ラームから再びクロースへボールが下げられますが
これを見ても分かる通りゲッツェのポジショニングによって彼の周囲の選手(ラームとクロース)がスペースを傍受している図になっています。

これをやられるとどうしてもパスの受け手の方にディフェンスの人員が割かれてしまい、
前からボールにプレッシャーをかけられなくなってしまうんですね。
(しかも中途半端にボールを追えば今度はトライアングルが広がって中のゲッツェを使われ出す始末)

これが現代サッカーにおける【前プレ殺し】の一つであります。
実際に試合ではこれでアーセナルが全く前からプレッシャーをかけられなくなってしまいました。


<前プレ殺しからのバイタル蹂躙>

さて、前プレがかけられなくなったアーセナルは仕方なく自陣でセットアップした形からの守備に切り替えざるを得なくなってしまった訳ですが、ここで更に苦しかったのが彼らの守備体系がいわゆる典型的なプレミアの教典4-4-2による3ラインブロックだった事です。

ハッキリ言ってこの守備メソッドは現代サッカー、特にペップのチーム相手にはもはやでしかありません。

ペップはまず相手の前プレを無効化し、自陣でのポゼッションを確保すると
次はいよいよ崩しのフェーズに移っていく…という手順を恐ろしいほど冷静に進めていきます。
(どこまでもロジックにフットボールを突き詰める男やで・・・)

ではペップにとっての崩しとは何かと言えばそれはバイタルエリアの制圧ですね。
バルサ時代のメッシ0トップに始まり、このエリアを制する事がペップにとって勝利への王手となります。


【バイタル侵入 ~間受けオーソドックス型~】
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局面は右から左へ攻めるバイエルンのビルドアップから。

守備時、エジルとサノゴを横並びの2トップにした4-4-2で守るアーセナルの守備形態は
ペップからすると4バックと4枚の中盤の間に出来るバイタルエリアが格好の狙いどころになってきます。


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この場面では最初ラームへのパスコースを意識させておいてから
時間差でチアゴがボランチの門の間に顔を出し、巧みにボールを引き出しているのが分かります。

中盤がフラットな4-4-2は2枚のボランチの背中を取ると剥き出しのDFラインがほぼ無抵抗になるのが泣き所。

ではもう一つ、次はバルサ時代のメッシで御馴染みの形の発展系から。


【バイタル侵入 ~0トップ型~】
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先程と同じようなビルドアップから今度はアーセナルがバイタルで間受けを狙うチアゴをケアしてきたパターン。


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すると今度はゲッツェが前線からスルスルっと降りてきて門に顔を覗かせます。

当然、アーセナルとしては中のコースの方を切らざるを得ないので・・・


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ボールホルダーのボアテングはアーセナルが中を切ったのを見てからの後出しジャンケンでフリーのチアゴへ。

ここには一瞬SBのモンレアルが詰める素振りを見せますが
4-4-2の3ラインで守っている限りチアゴのようなタイプの選手はSHの裏を取りつつ
SBが飛び出すには微妙に距離が離れているという絶妙の位置取りでこれを無効化させてしまいます。


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やはりこの場面でもSBのモンレアルは行き切れず、結果としてチアゴがフリーで前を向けました。

じゃあ、次に守る方が考えるのはトップから降りてくる0トップ役(ゲッツェ)に最初からDFがマンマーク気味に付いちゃえばいいだろうって事なんですが・・・


【バイタル侵入⇒裏抜けへの切り替え】
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もう一つ、同じようにボアテングからのビルドアップの場面。

ここでもゲッツェが既にスルスルと中盤まで降りてきての間受けを狙っています。


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「そうそう何度もやられてたまるか!」って事で今度はSB(モンレアル)が初めから降りていくゲッツェを捕まえようとパスが出る前にDFラインから飛び出していきましたが、すると今度はボアテングがその頭上を越すロングボールを裏に蹴って・・・


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飛び出したSB(モンレアル)の裏をCFのマンジュキッチがサイドに流れて使う攻撃に切り替えています。


もうこうなるとアーセナルからしてみれば何をやってもその裏をバイエルンに突かれるっていう八方塞で
全てが後追いの苦しいディフェンスになってしまい、その結果として前半37分のPK献上&一発退場ですよね。

まあ、このPKはアラバが外してくれるっていうラッキーもあったんですが
11対11でもバイエルンのパス練習みたいになっていた試合が退場者まで出てしまうと
もはやシュート練習と化してしまった残りの50分。

10人になったベンゲルも4-4-1にして何とか耐えようとしたのは分かるんですが
何故この日空気だったエジルをサイドに回してまで90分引っ張ったのかはよく理解出来ません。

2-0の結果は試合内容から言ってもバイエルンの順当勝ちと見ます。


<プレミアの限界?と二極化>
720p-Liverpool v Cardiff City

このように同じくCLベスト16でバルサ相手に4-4-2で挑んだシティも含め
(結果は同じく退場者を出しての0-2。但しこちらは戦力充の個人能力(特に2ボランチとコンパニ兵長)である程度何とかしてはいたが…)
バルサやバイエルンといった現代サッカーのトップセオリーを身につけたチーム相手に
従来のプレミア型守備の限界といったものが近年顕著になってきました。

ペップのバルサ登場と時を同じくしてプレミア勢がCLで勝てなくなったのは何とも象徴的です。

ただ実はこれ、他ならぬプレミア内部でもそれに気付いた一部のクラブがそのアドバンテージを活かし始めた事もまた確かなんですよね。

例えばブレンダンロジャース率いるスウォンセロナの躍進は
従来のプレミアには無かったポゼッション型トップセオリーのアドバンテージを活かした好例で
このメソッドを獲得したリバプールが今季猛威を奮っているのも納得です。


【リバプールのポゼッションから崩し】
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では実際に今季のマージーサイドダービーからリバプールの崩しの形を見ていきたいと思います。

局面は右から左へ攻めるリバプールのビルドアップからCB(シュクルテル)⇒SB(フラナガン)への展開。


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今季のリバプールはサイドでボールを持って起点となったSBを中心にトライアングルを形成してパスコースを多く作る事でポゼッションの安定化が上手く機能しています。


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SB(フラナガン)からトライアングルを活かして中を使うと
やはりプレミア型の4-4-2で守るエバートンは青丸で囲った中央の2ボランチがこの位置関係。

4-3-3気味の布陣が基本のリバプールはこの2ボランチに対して中央で3対2の数的優位を作るのがその狙いの一つでもあるんですがここではヘンダーソンがエバートンのボランチの背中を取りつつ、後ろからはジェラードの上がりが次の展開への布石となります。


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リバプールは一度サイドのトライアングルでエバートンの守備陣を寄せてから中を使っているので
ボランチの背後を上手く取れているんですが、こうなるとそのカバーには後ろからSBを上げて使うしかありません。


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ここで利いてくるのがジェラードのサポートでヘンダーソンに食い付かせてからジェラードに落とし⇒SB裏のスペースへ浮き球という見事な繋ぎが素晴らしいですね。


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このパスで相手のDFラインが薄くなったところに更にCBまでをもつり出す事に成功しています。
(中がDFが薄いので非常に得点率が高い状況が生まれている。しかも中で待つのはあのSASコンビという凶悪さww)

つまり、リバプールの好調はスウォンジーでさえプレミアキラーとなっていたロジャースのサッカーに
スアレス、スターリッジ、コウチーニョらの一線級を与えたらこうなった…という好例ですね。

まあ、プレミアにとってのエポックメイキングであるが故、機能させるまでに時間はかかりますが
ハマり出したらアーセナル相手に5点ぶち込むぐらいの破壊力はあるぞって事で
個人的には僕のリバプール優勝予想もようやく実を結ぶのか・・・?と見守っているところであります(笑)

(とは言えDFラインが今の顔ぶれじゃ厳しいんだけど・・・(^^;)


もう一つ、『プレミア殺し』の旗手とも言えるチームの筆頭がマンチェスターシティですね。

このクラブは数年前からシルバの輸入に始まりスペイン産のポゼッションメソッドを持つ駒を集め、
今季は更にそのスペインでビジャレアル、マラガのパスサッカーを築き上げた頭脳、ペジェグリーニを招聘。

明らかに現代サッカーのトップセオリーを意識した「プレミアで勝つ」⇒「欧州で勝つ」のクラブビジョンまで見えてくるクラブです。

このチームなんかはもう露骨にシルバを中心としたポゼッションから4-4-2で守る相手のボランチを食い付かせてその背後を取る形を徹底してやり続けてますよね。


【シティのバイタル攻略】
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これも今季の試合(対スパーズ戦)から4-4-2の3ラインで守る相手のボランチをいかに食い付かせてその背後を取るかっていう攻撃の形を見ていきたいと思います。

局面は左から右へ攻めるシティのビルドアップから。
この背中を向けて受ける餌のパス1本で相手のボランチを食い付かせて・・・


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落としのパスからダイレクトで相手ボランチの裏へ一つ飛ばしたパス


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するとバイタルで待ってるのはもちろんシルバ。
シティは相手ボランチの背後でシルバがパスを受けた瞬間が明確な崩しへのスイッチになっています。


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ここで前を向かれたらディフェンス側が苦しいのはボールとDFライン裏のスペースを同時に見る事が不可能になるからですね。

↑の場面でもCBがシルバにプレッシャーをかけようと前に出た瞬間にその裏をアグエロに走られてゴールに繋がっています。

続いて似たような形をもう一つ


【シティのバイタル攻略②】
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この局面もスパーズの綺麗な4-4の2ラインが見てとれますが今度は横パスでシルバが相手ボランチの食いつかせ役となり・・・


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フェルナンジーニョが相手ボランチの背後で受ける形に。


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そのままドリブルでバイタルを侵攻するとやはりCBがこのケアに向かわざるを得なくなってジェコへのラストパスのコースが空いてしまう…という訳ですね。


このように今季プレミアの優勝争いはプレミア殺しとも言える現代サッカーのトップセオリーに乗った者と乗り遅れた者との二極化が明確になってきたように思えます。

個人的にアーセナルのサッカーは大好きなんですが、それでも優勝候補に推せないのは
このチームは前プレとパスワークが機能している時は最高に美しい反面、
一旦自陣でセットアップした形の守備になった時にトップセオリーの鴨になってしまう一面があるからなんですね。
(この長期政権でベンゲルがそこに一度も手を付けなかったという事はこの先も未来永劫同じだと思います…(^^;)

モウリーニョのチェルシーに関しては逆に「相手にバイタルを使わせない守備」が緻密に構築されているので
シティみたいなサツカーを封じてしぶとく勝ち点をもぎ取れる強さがありますけど
反面、攻撃でのバイタル攻略はイマイチなんで格下に引かれると打つ手がなくなる一面もあります。

(きっとモウリーニョはそれを自覚しているからこそ、
ウェストハムの「アラダイス流ゴール前バス留め戦術」を過敏に非難したんでしょうね)


一方で乗り遅れ組についてはモイモイのチームについては言うに及ばず、
ビラスボアスを解任したスパーズに関しても同じ事が言えるかと思います。

確かにビラスボアスのトップセオリーを意識したサッカーは構築に時間がかかるので
短期的に見ればアデバヨールを2トップに据えた4-4-2に戻す事である程度の数字は見込めるでしょう。

しかし長期的に見ればチームの目指すサッカーが一つ下のランクになっているので
このままだとCL圏内入りも難しいように思えるのですが・・・。
(エリクセンたんがワイドに置かれた4-4-2なんて見たくないんじゃ!ww)


以上がプレミアが欧州で「勝てない理由」になる訳ですが
既に見てきたようにそのプレミア内部でもエポックメイクングが行われており
今後のブレイクスルー組と乗り遅れ組の二極化については引き続き注視していく必要があるでしょう。


<異次元のバイエルンが見据える未来>
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ペップがバルサで撒いたトップセオリーが一般化し定着しつつある今季、
既に次のブレイクスルーへの芽吹きも同時に進行中であります。

その筆頭候補が他ならぬペップ自身が率いているバイエルンで間違いないでしょう。

では再び話をアーセナル×バイエルンの試合に戻して、
これまで見てきた彼らのバイタル攻略の形【オーソドックス型】【0トップ】【裏抜け】に続く【カオス型】を検証してみたいと思います。


【バイエルンのカオス型アタック】
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局面は右から左へ攻めるバイエルンのビルドアップから。

ゲッツェとマンジュキッチが裏を狙う動き出しと同時に・・・


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ロッベンがここに入り込んでバイタルでの間受けを狙う形。

これまでのロッベンのプレースタイルからはあまり見られなかった動きであり、明らかにペップイズムの現れである事が分かる。


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アーセナルからすれば、あれだけのバリエーションを持った攻撃に加えて
ここまで前線にカオスな出入りをされたらちょっとゾーンディフェンスではマークの受け渡しが不可能と言えるだろう。

今、バイエルンで進んでいるのがこの中盤~前線の不規則な規則性を持った流動的でカオスなサッカーです。

これを考える上で今一度ペップ政権下のバルサを思い起こしてみましょう。
就任3年目となる2010/11シーズンにCL決勝(対マンU戦)で見せた一つの完成品とも言えるサッカーから
翌シーズン、セスク加入を切望し更にこれを一度ぶっ壊してからのブレイクスルーを狙った彼の最後となるシーズンです。

そのままの継続路線でも充分タイトルが狙えたはずの当時頭三つ抜けていたバルサのサッカーを
敢えて一度壊すようなセスク加入を望んだペップの目線は更にその先に向けられていました。

彼が見据えていたブレイクスルーがよく現れていたのが同年12月に開催された
クラブW杯決勝(対サントスFC)におけるサッカーです。

【ペップバルサ11/12 クラブW杯決勝のスタメン】

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この3-4-3がペップが最後のシーズンに作り上げたかった本当の形です。

で、実際の試合でこの布陣がどう動くかというと・・・


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このカオス性こそペップが望んだ次のブレイクスルー。
もはや中盤より前にポジションなどあって無きに等しい代物でした。

この未来型サッカーを身をもって体験したサントスFCの監督は試合後、
「あれは4-6-0だ」というようなコメントを残していたのも印象的でした。

ただ、実際にはこのシーズン、セスクをフィットさせるのに予想以上の時間がかかった事やメッシのコンディション、
そして既にタイトルを取りつくした選手達のモチベーション管理や何よりペップ自身の精神的疲労の蓄積もあって志半ばにして次のブレイクスルーは遂に完成を見ずに終わっています。


あれから2年―

ペップがバイエルンで目指すのは間違いなく、あのブレイクスルーの続きに違いありません。
実際、今バイエルンの試合から窺えるペップの未来像はこのようなイメージのはず↓

【ペップバイエルンが目指す未来型カオスサッカー】
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中盤~前線の流動性に加えてSBにもカオス性を加えた進化系がバイエルンの真骨頂。
アラバ、ラームの両SBには時にボランチ、時にサイドアタッカーとしての振る舞いが求められます。

こうなるとCBの2枚以外にほとんどポジションらしいポジションは無く
「2-8-0」とも言える未来型カオスサッカーがイメージされるのではないでしょうか。


<個の能力、選手の進化が及ぼす戦術進化>
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最後に、とは言えサッカー自体も常に不確定要素に満ち溢れたカオスな球技であるという視点の検証をもって締めにしたいと思います。

確かに現在バイエルンが見せているサッカーというのは目を見張るものではありますが
それでも完璧かと言われればサッカーではそんな事は絶対にあり得ません。

このアーセナル戦でも絶好の先制チャンスとなったPKは1人の選手の個の能力が生んでいます。


【アーセナルのPK獲得シーンを検証】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルの最終ラインのビルドアップから。

バイエルンは最前線からのチェイシングでアーセナルのCBにプレッシャーをかけた後、
二度追いでパスの受け手であるフラミニを挟み込みます。

(この時、後方の様子を首を振って確認するウィルシャーが後々効いてくるのでご注目)


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フラミニからボールはギブスへ。
予めアーセナルのパスコースをこの1本に絞っていたバイエルンは既にボールへ寄せています。


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ギブスからダイレクトパスで中のウィルシャーへ。

しかしここでも近いパスコースから消していくバイエルンの守備が挟み込みを狙っていました。


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ところがウィルシャーは事前に背後から迫ってくるディフェンスを確認しているので
これを逆手にとって一発で逆を取ってバイエルンのプレッシングを個の能力で剥がしてしまいます。


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こうなると前から人数を投下してボールを奪いに行っているバイエルンは一転して空いたバイタルを使われる大ピンチに。

バイエルンでもここで前を向かれてしまうとボールと裏のスペースとを同時にケアするのは難しく、
ウィルシャーのスルーパスからエジルに裏をつかれて後追いのディフェンスになったところから
ボアテングの遅れたタックルがPKを取られてしまいました。


ちなみに・・・ペップバルサがピークだった10/11シーズンのCL決勝T1回戦で
バルサ相手にホームの1stレグを鮮やかな逆転勝利で飾ったアーセナルの試合を覚えているでしょうか?

この試合で一躍ヒーローになったのがまだ若きスター候補生だった当時のウィルシャーでした。
彼の個でバルサのプレスを剥がす力がペップを悩ませ、逆転弾を生んでいます。

そしてやはり二年後の再戦でもペップを悩ませたのは彼の個の力でした。

サッカーではどれだけ完璧なロジックを積み上げた戦術でも
それを一瞬で無にするプレイヤーの個の力というカウンターパンチが必ずあり
これらが両輪として時に相互作用し合いながら進化していくものです。

今夜のバイエルン×アーセナルの一戦もスコア的に考えれば8割がたバイエルンの勝ち抜けは堅いとも思われますが、
常にこの競技の本質がカオスである限り、それでも眠い目をこすりながら試合にかじりつく我々の姿がそこにある事でしょう―




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試合巧者だったバルサも絶対の強さは感じず ~マンチェスターC×FCバルセロナ~

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<試合巧者だったバルサも絶対の強さは感じず>
~マンチェスターC×FCバルセロナ~


待ちに待ったCLが再開されましたね~。

せっかくのビッグカードが退場者によって壊されてしまったのは残念でしたが、
欧州の最前線にいる彼らの現状というものが見えてきたベスト16の1stレグだったと思います。
(オリンピアコス「メシうまぁぁぁあああ!!!www」)

という訳で今日は中でも最大の注目を集めた「シティ×バルサ」の一戦をマッチレビューしていきましょう。


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シティはホームのエティハドとは言え、最大限バルサ相手という事を意識した布陣を組んできました。

通常、このチームは左SHに入るシルバの自由なポジション取りが相手からすると非常に捕まえづらく
攻撃のキーマンになっていたのですが、反面守備ではこのスペースが度々空いてしまうという諸刃の剣でもありました。

とは言え戦力充のシティからすればほとんどの相手は圧倒的な攻撃力で押し切れてしまうので
これまでそんなに穴として目立ってきた訳でも無かったのですが直前のプレミアでモウリーニョのチェルシーにピンポイントでこの弱点を突かれて試合を落としたという経緯もあります。
(決勝点はシルバがマークするはずだったイバノビッチに決められている)

そこでペジェグリーニは中に入りたがるシルバをこの試合では始めからトップ下に置き
懸案だった左サイドにはコラロフ、クリシーのSBを縦に2枚並べる形で守備のバランスをとってきました。

これでサイドから自由に出入りする「捕まえられないシルバ」という攻撃面のメリットは削られてしまいましたが、左サイドの穴は完全に埋まったと言えるでしょう。

普段プレミアではなかなかお目にかかる事のない「守備に重きを置いた」エティハドの王者がそこにいました。


一方のバルセロナもエティハドでのシティを充分に警戒した布陣を選択しています。

それはこれまでネイマール、アレクシス、ペドロと基本的にアタッカーを配する事が多かったWGのポジションに
ペップ時代の遺産とも言える「左WGイニエスタ」を起用してきた事からも明らかです。

純粋なアタッカーを起用する時と比べて縦への推進力と破壊力という点では落ちますが
これでボールポゼッションに関しては確実な担保が見込めます。

つまりバルサはポゼッション率を上げる事で試合の安定を図り、守備のバランスを取るという考え方ですね。


左のワイドから攻撃のキーマンを中へと移動させる事で守備の安定を図ったペジェグリーニと
左のワイドに攻撃のキーマンを増やす事でポゼッションの安定を図ったマルティーノ。

中々面白い構図ですね。


<ティキタカ・カルテット>

試合は予想通りシャビ、セスク、ブスケス、イニエスタと
世界最高のティキタカ・カルテットを揃えたバルサがまずポゼッションで主導権を握る立ち上がりとなりました。

(やはりこの面子相手にポゼッションを奪い返せるチームがあるとしたら、これを作ったあの人自身のチームしか…)


守備時、4-4の2ラインブロックの前にシルバとネグレドを置いた4-4-1-1の形をとるシティでしたが
バルサはすぐさまボールを安定させるスペースを見抜いてきました。

【4-4-1-1で守るシティの泣き所】
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↑要するに守備でハードワークが出来ないシルバの周囲一帯がバルサからすれば格好の休憩所。


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↑実際の試合から。このエリアにポゼッションの盟主を集結させてボールを渡さないバルサ。


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↑これもノーリスクの休憩所からバイタルでの間受けを狙う場面。
明らかにバルサはここを起点にボールと試合を支配していました。

その上でバルサは左からイニエスタ&Jアルバが、右からはアレクシス&Dアウベスがシティのブロックをワイドに引っ張ってから中のスペースを突く得意な形に持ち込んでいきます。

これをやられるとシティがキツイのは「プレミア最強のボランチペア」に距離が生まれてしまう事なんですね。


【ワイドに引っ張って中を突くバルサ】
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局面はバルサが左からの攻めでシティに揺さぶりをかけるシーン。

シティの右サイドがバルサの攻めに対して引っ張られているので
カバーにつり出されたフェルナンジーニョとヤヤとの距離感が開いてしまいます。


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ボランチの「門」が開いていると判断したイニエスタは巧みなファーストタッチで2人の間を突きます


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そのままドリブルでバイタル進入。これではシティは守りきれません。


要するに4-4の2ブロックではバルサ相手に横幅68Mのピッチ全域をカバーしきるのは不可能なんですよ。

なもんでミランのアッレグリとかアトレチコのシメオネ、モウリーニョなんかもバルサ相手には4-5の2ブロックにして
横に5枚(3センター+両ワイド)並べる事でサイドもケアしつつバイタル封鎖という策をとってきた訳なんですけども。

故に試合ではペジェグリーニもさすがにこれじゃ守れないと察して
途中からある程度外は捨ててブロック全体を中に絞らせる対バルサ用テンプレに修正するのでした。

【守備ブロック全体を中に絞らせるシティ】
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これで序じょにバルサの攻撃に対抗する目処がついてきたシティ。
外からクロスを上げさせる分には中でコンパニ兵長やフィジカルモンスターのヤヤがいるので全く問題ありません。

加えて重要なのはこれでボランチの距離感もぐっと近くなってバイタルも閉鎖出来た事ですね。


【距離感が近いと門が開かないシティのボランチ】
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局面はバルサの中盤での展開から。

迎え撃つシティはナバスがある程度外は捨てて中に絞る事でボランチの距離感もグッと縮まっています。


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この状況ならバルサが強引に中を突こうとしても・・・


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ファッションモ~ンスタ~♪ならぬフィジカルモンスターのヤヤとフェルナンジーニョの門は強固なのでそう簡単にこじ開ける事は出来ません。

普通のチームであれば前線に2枚を残した8枚ブロックだとバルサ相手にはなかなか守れる自信が無いものですが
そこはさすが戦力充のシティだけあって個々の質が高いので対バルサ用のテンプレをしっかり実行出来れば8枚でも充分に守れてしまうんですね。


<戦力充の脅威>

守備にある程度目処が立ったシティですが、じゃあ攻撃の方はどうだったのでしょうか?

バルサからすると担保されたボールポゼッションで相手をある程度押し込んでおく事は同時に守備でのリスクヘッジにもなっているはずなんですが、シティは前に残した2枚(シルバ+ネグレド)だけでも充分怖さがあります。

【シルバ+ネグレドでもカウンターは脅威】
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局面はシティのビルドアップから。

ここにコンパニ兵長クラスがいるのがシティの強みでここから鬼のようなグラウンダーのタテパスをビシッ!とバイタルまで通してしまいます。


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このタテパスを間受けしたシルバが完璧なファーストタッチ&ターン


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前のネグレドはバルサの両CBに挟まれていましたがシルバは針の穴を通すがごとく
この隙間にピンポイントでスルーパスを通してシュートまで持って行ってしまいました。

これがシティの怖さで8枚ブロックからの2枚カウンターでもそこそこの形になるんですよね。


<それでもメッシを置いておく事の意味>
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前半を総括すると序盤は完全にバルサが主導権を握って得点は時間の問題かという雰囲気を醸し出していましたが、
中盤過ぎから序じょにシティが盛り返して最終的には五分に近い形で終わったといったところでしょうか。

おそらく両指揮官共に「想定内の前半」だったと思います。

バルサはバルサでイニエスタを起用した狙い通りポゼッションは今季のゲームでも上出来の内容でしたし、
シティはシティで8枚ブロックで守ってからのトップ下に移したシルバを起点にカウンターという形が作れていましたから。

となると何がこの均衡を崩すのか?という点でやはり「メッシの取り扱い」が勝敗を分けるターニングポイントになってしまいました。


基本的にはこの試合、精彩を欠くメッシに対してシティは上手く守れていたと思います。

中絞りのブロックディフェンスで間受けを狙うメッシへのパスコースを遮断しつつ、
背後からはCBのデミチェリスがDFラインから飛び出して中途半端な位置で待つメッシをしっかりと捕まえていました。

【メッシを捕まえるデミチェリス】
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↑こういう場面でデミチェリスは迷わずDFラインから飛び出しメッシをケア。
残りのDFラインもしっかり中に絞ってカバーのポジショニングをとっています。

メッシ自身のキレが今ひとつ・・・(否、二つ?)だった事もあって
前半はほぼ何も仕事らしい仕事をさせていなかったデミチェリス。

確かにボランチとしてはク○だけど
コンパニとCBを組ませる分にはまだごまかしが利くかなーと思っていた矢先の後半8分―

バルサの攻撃を一度は跳ね返した後にシティはDFラインの押し上げで齟齬が生まれしまい
ギャップが出来ていたところに再びボールが入ってくると
それまで半分死んでいたメッシがトップギアで裏に抜け出す大ピンチの場面。

ここで元々スピードの無いデミチェリスは入れ替わられた瞬間にノーチャンスという恐怖感があったのでしょう、
後ろから足を引っ掛けて一発退場&PK献上。

これで試合は事実上ジ・エンドでした。

(バルサ相手にビハインドを負いながら残りの35分間を10人で戦えとか・・・OTL)


バルサからするとこれが死にたいでもメッシを前線に残して守備免除で置いておく事の意味なんでしょうね。
シティは分かっちゃいるけどそれまでメッシをほぼ抑えきっていたところに一瞬の油断が取り返しのつかない結果を招いてしまいました。


<試合巧者のバルサだが絶対的な強さは影を潜める>

最後に試合の総括としては、やはりそれでもバルサがイニエスタの起用から読み取れる狙い通りに全体的に上手くコントロールしていたと思います。

試合運びという点でシティとは「欧州舞台での経験値の差」を感じさせた事は間違いありません。


とは言えシティが11人の時は勿論、10人になっても尚、ズルズルいかなかった・・・というかちゃんと試合になっていたのは勝ったバルサ側にもかつての突き抜けた強さが影を潜めたからだと見ます。

そして、その主要因とも言えるのが、敵陣で速やかにボールを回収出来なくなったプレッシングでしょう。


【リトリートするもスペースが・・・】

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↑今季のバルサは守備で自陣に引いたリトリートもよく見せていますが、
個々の運動量に物足りなさがあるのと一旦引く守備じゃあシャビもセスクもイニも中盤のスペースをカバーし切れないし身体でも止められません。

故にそもそもの大前提としてプレッシングがかかりにくくなっている事を踏まえて次のシーンを見ていただきましょう。↓


【ボールを回収出来ないバルサ】
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局面は右サイドでボールを持ったナバスをバルサが挟みに行ってボールを奪おうという場面。

以前であればここで完全にハメて、ボールを奪うのが十八番だったバルサ。


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ところがここではナバスに中に入り込むようなキープのドリブルを入れられると次に囲い込む網が用意されておらず、中盤は完全なスペースに。


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ナバスは一旦ボールをCBのデミチェリスまで下げると・・・


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バルサは一度ナバスの動きに守備が引っ張られているので再び右サイドに展開されるとここがポッカリとスペースになっていました。


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ほぼフリーの状態のまま前を向けたヤヤトゥーレは充分余裕を持った状態でバイタルへクサビを打ち込みます。

これだとボールを回収出来ないどころか、ぶっちゃけ相手に回されてるじゃねえかって話なんですよ。
最近のバルサが以前ほどぶっ飛んだポゼッション率を記録しなくなったのも
「失ったボールを相手に回されているから」なんですよね。

まあ、だからこそ【ボールを回収出来ないならボールを失わない事でリスクをコントロールする】という
イニエスタのWG起用は確かに理に適ってはいるんですが・・・。


過去のデータから言っても0-2のリードをカンプノウに持ち帰るバルサの勝ち抜けはほぼ9割方決まったと見ますが
ベスト8以降もどこまでごまかしながら戦っていけるかは未知数です。

それこそ、ペップのチームなんかと当たってしまった時には「どっちが本家なんだ?」という試合にならなければいいですが・・・。




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【プチ告知】
明日の日本代表×ニュージーランド戦(19:30~)で久々に実況ツイッター解説を開催する・・・かも?

ツイッターID⇒@soccertenthou

クロップが目指す攻守のシームレス化 ~CL第3節 アーセナル×ドルトムント~

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<クロップが目指す攻守のシームレス化  ~CL第3節 アーセナル×ドルトムント~

ドルトムント強し・・・。

先日のブンデスリーガでも恐るべきスコアで健在ぶりを見せつけたクロップの戦士達。

とは言え本ブログでは今季まだ一度もこのチームを取り上げていなかったばかりか
CLの「死の組」も、ついでに言うならエジル加入後のアーセナルもそうだったので
この際まとめて今夜の第4節前の復習にこの試合を取り上げてしまおうという魂胆です(^^;

ではまず今日は試合のレビューへ進む前に一躍アーセナルの主役へ躍り出たこの人に登場してもらいましょう。


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<エジルは高価な買い物だったのか?>

そーなんです、なにはともあれ「エジル フィットし過ぎ問題」なんです!

中には66億の移籍金で獲ってきたエジルに対して「高すぎる!」などと書いていた某サッカーブログ⇒などもあったようですが、
よっぽど書いている人に見る目が無いか己の逆フラグ力を誇示したいかのどっちかでしょう。

実際に60億の移籍金に見合うプレーを早々に見せられてしまうと「ぐぬぬ・・・!!」としか言いようがありません(笑)


【参考記録:ロンドン在住F氏の場合 (移籍金:60億)】
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『シティ戦からが俺の本気だし・・・(震え声)』


但し、エジル自身がいくら60億に見合うプレーを披露しようと
やはりアーセナルが「タイトルを獲れるチーム」に近づく為には20億のDFとGKを3人連れてくるべきだったという考えに今も変わりはありません。
(ロシツキー、ウィルシャー、カソルラ、ウォルコットあたりの誰かをベンチに下げてまで使うポジションが現状の最優先補強ポイントだったとは到底思えず)


ですがエジルの加入によってアーセナルのサッカーが素晴らしいものへと変貌したのもこれまた事実。
今季は「プレミアで一番ハズレ試合の少ないチーム」としての地位も取り返し、
よくやくアーセナルらしいアーセナルになってきたな…という感じですかね。

いわばエジルはチームの最大出力を従来の100からMAX値120~150まで引き上げた補強だったんですが、
実は長いリーグ戦で優勝するチームというのは内容の悪い試合でいかに勝ち点の取りこぼしを減らすかが重要なので
最大出力を上げるよりアベレージを安定させる補強の方が結果には直結するものです。

確かに現在のアーセナルは一度乗った試合では手がつけられないサッカーを見せますが
そうでない試合の時にしぶとく勝ち点1をもぎ取るような底力があるかは未だ未知数と言えるでしょう。

このへんもまたベンゲルらしい補強とチーム作りで
彼はこれまでも常に理想のサッカー追求の為、チームの最高到達点のみにその照準を絞ってきました。

故に今後もアーセナルがタイトルを取るとしたらシーズンを通して最高のサッカーをし続けるような
それこそ「シーズン無敗優勝」のごとき完璧なシーズンを送るしか道は無いのかもしれません。


<今季、充実の両チーム>

それでは試合を振り返っていきましょう。

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アーセナルは今季序盤戦の好調を支えた1人、フラミニが使えなくても代わりがアルテタという無駄な豪華さ。
(やはり中盤は磐石で補強ポイントではない)

そしてもう1人のボランチには遂に覚醒したラムジーが入りました。
今季、そのあまりに鮮烈なパフォーマンスから「プレミア最高のセンターハーフ」の称号も近づいていますが
このラムジーとエジルの2人が序盤の快進撃を支えていた事は間違いありません。

更に1年の冬眠からようやく目覚めたジルーも加えて中盤から前は全く隙の無い充実ぶりですが、
一方でDFラインとGKは相変わらず何と言うか・・・な顔ぶれ(^^;

(やっぱり汚れ役を買って出る選手にもGシルバ、キャンベル、レーマンクラスが1人はいないとね・・・)


片や昨季のファイナリストで今季雪辱を期すドルトムントは
ゲッツェの抜けた穴に補強したムヒタリアンがすんなりと収まっています。

(香川⇒ロイス⇒ムヒタリアンと本当に補強で外れの無いチームですね!フロント力も高杉晋作!)

ゲッツェをあっさり放出した割にレバンドフスキを意地でも手放さなかったのは
恐らくここの代役は見当らなかったからなんでしょう。

ここら辺がただ単に移籍金を積まれれば放出していくチームとの違いで、
代役の計算が立っているポジションのみビジネスとして換金していく逞しさと言えるでしょうか。

ギュンドアンをはじめとする怪我人も数名抱えていますが
ホフマン、オーバメヤン、パパスタソプロフとベンチメンバーにも計算の目処が立ってきて昨季と比べても戦力に厚みを増しています。

そして今季のドルは何と言っても・・・レバンドフスキの充実ぶりが異常

恐らくキャリアの最盛期を迎えているこの25歳のストライカーは
FWとして得点が量産出来るだけでなくクサビのタテパスに対する収まりが「半端無いって!」(by 中西隆裕君)

とにかく今、世界最高の「理想の1トップ」と言えばこのポーランド人で間違い無いでしょう。
(こういうCFがいるチームは無理に0トップのトレンドを追う必要も無いですよねー)


改めて見ると両チームにエジル、ラムジー、レバンドフスキと今季好調の選手がたくさん揃っているのは楽しみです。


<標的にされたラムジー>

さて、試合前の注目ポイントはアウェイのドルトムントの出方にありました。

というのも第2節でアーセナルと戦ったナポリは彼らをリスペクトし過ぎる出方が完全に裏目に出て
序盤からチンチンにボールを回されていたからです。

基本的にプレミアでもアーセナルを相手にするチームは彼らをリスペクトした入り方をする場合が多いのですが
実はベンゲルのチーム相手に序盤から気前よくボールを渡してしまうと彼らの思うツボなんですね。

DFラインから一旦中盤にボールが渡ってしまうとアーセナルのウィークポイントはあまり目立たないのですが、
最終ラインのつなぎに大きな問題を抱えるこのチームにはいっそ前プレをガンガン仕掛けていった方が得策なのです。

(それか引くならいっそチェルシーのように完全にドン引きにして裏のスペースを潰してしまうかですね)


クロップの場合は相手がバイエルンだろうとハノーファーだろうと自分達のサッカーを押し通すので
これはナポリの二の舞にはなるまい…とは思っていたのですが、
いざ試合が始まってみると予想以上にドルの前プレが機能する結果となりました。

試合開始直後の↓のシーンをご覧下さい。


【クロップ「アーセナル…?だからどうした?そんなの関係ねぇ!」】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルのビルドアップ。

中盤の低い位置まで降りてきたエジルが一度DFラインからのボールを受け取るという今季のアーセナルでよく見かける場面ですね。

エジルは逆サイドへの展開を探りますがここに選手がいなかった為、少し溜めを作ろうとすると・・・


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ドルの前プレがすぐに寄せてきたので一旦矢印の方向へターンしてボールを逃がそうとしますが・・・


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あっと言う間に前後から挟まれてボールを奪われてしまいました。

この場面ではすぐにファウルをとってもらえたので助かりましたが、
アーセナルはプレミアの試合では未体験とも言える果敢な前プレを受けて明らかに出だしから困惑していた様子。

基本的にドルトムント相手に3タッチ以上したらもう前後から囲まれていると思って間違いないでしょう。
(全くもって恐ろしいチームです・・・(^^;)

そしてこの未体験の前プレの餌食となってしまったのが皮肉にもこれまでアーセナルを引っ張ってきたラムジーです。

ラムジーはプレミアでは(特にアーセナル相手には)3列目のボランチにまで積極的にプレッシャーをかけられる場面は少ないという利点を活かし、
後方からの長い距離を走った飛び出しや中盤の空いたスペースをドリブルで持ち上がる機動力を武器としてきました。

しかし狭いスペースでの素早い状況判断とボールテクニックではまだまだ向上の余地があり、
基本的には目の前にスペースを必要とする選手なので中盤でドリブルの2タッチ、3タッチを挟んでいる間に囲まれるシーンが序盤から目立ってしまいます。

もう1人のアルテタの方はさすがバルサで育っただけあり、
無駄の無いツータッチのボール裁きで無難にこなしてはいましたが
やはりラムジーという縦の推進力を殺されると前にボールを運べなくなる苦しさがこのチームにはあります。

クロップとしてはまずアーセナル好調の推進力となっていたキーマンの一人を消す事に成功したと言えるでしょう。


<消された間受けとアーセナルの甘さ>


ではもう一人のキーマン、エジルはどうだったでしょうか。

勿論エジルもドルの果敢な前プレをかなり嫌がっていた様子ですが
クロップからするとこの選手のプレーで最も警戒しなければいけないのがバイタルエリアでの間受けです。

昨年~一昨年ぐらいまでのドルトムントだと前プレも一本槍なところがあったので
エジルも巧みなポジションどりでボールを引き出せていた可能性もあったのですが、
今のドルトムントは単に前から取りに行くだけのチームではありません。

中盤の守備でも効果的に中を切って消すべきパスコースとエリアを潰せる巧みな守備を見せるようになっています。


【中を切る守備で間受けも無効化】
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局面は左から右へ攻めるアーセナルの中盤でエジルがボールを受けた場面。

ドルトムントからするとここで一番避けたいのがエジルに反転されて中のパスコースをラムジーへ繋がれる事です。

したがってベンダーがすぐにケアへ向かいます。


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結果的にエジルは反転せず、そのままメルテザッカーへボールを渡したのですが
こうなると今度は新たにバイタルエリアで間受けを狙うウィルシャーへのパスコースが出来てここが危険なエリアへと局面が切り替わりました。

これを見たベンダーがラムジーのケアからこちらのケアへと切り替えている判断がまず速い。


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続いてロイスとシャヒンもサイドではなく「中を切る」共通意識を持っているので
メルテザッカーには中を通すパスコースが完全に消滅してしまいました。


アーセナルはこのレベルの守備で中を切られるとエジルの間受けが死んで、こちらも試合から消されてしまう事に。

となればキーマン2人を潰されて得意のパス回しを寸断されたアーセナル相手に
試合序盤からドルトムントが主導権を握ったのは当然の結果と言えるでしょう。

そしてこういう展開で守勢に回らされると途端に脆さが見え始めるのが今も昔もアーセナルというチームの体質なのですね。

何故かというと「相手にボールを持たれた時」・・・つまり守備の詰めがドルと比較しても明らかに甘いからです。


【アーセナルの中切りを検証】
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局面は今度はドルトムントのビルドアップの場面ですが
アーセナルはラムジー&アルテタの両ボランチの絞りが甘く中を通すパスコースが空いてしまっています。

ドル相手にここのコースを空けてしまうと先に待ち構えるのは"あの男"なんですね・・・。


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このチーム相手にCBから直接レバンドフスキへ縦パスを通してしまうようでは話になりません。

ドルトムントに比べるとアーセナルの守備は「どこから消すか?」という優先順位が明確になっていない場面が目立っていました。

勿論それは前プレにも表れています。


【アーセナルの前プレを検証】
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局面は右から左へ攻めるドルのビルドアップに対し、めずらしくアーセナルが前プレを仕掛けていく場面。

但しチームの約束事として細部まで練られているドルのそれと比べると
アーセナルの前プレはほとんど選手個々の判断に委ねられた、ある意味気まぐれというようなものでしかありません。


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アーセナルは引き続き下げられたボールを追っていきますが中でシャヒンがフリーになっています。


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あっさりここを使われると懸命に追っていたジルーが「何でここが空いているんだ!?」とばかりに不満のジェスチャー。

これだと前プレは単なる徒労に終わってしまうんですが、要するにドルとの違いはチーム全員が連動していないという点に尽きます。

この場面でも何がいけなかったかと言うと「ボール近辺の密度を上げて逆サイドは捨てる」という
プレッシングの基本事項が徹底出来ていなかったせいですね。

つまり局面を一つ遡って・・・


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この場面でロシツキーとアルテタは一つずつポジションを上げた前進守備で押し上げる必要があっただろうし、
ボールから遠いサイドのエジルももう少し中に絞り気味のポジションをとるべきだったのです。

要するに突発的にボール周辺の3枚だけで追ったところでそれは無駄走りで終わるよ…という話。
(特にCLレベルでは尚の事)


選手補強もそうですが、ベンゲルが守備の詰めに関してそこまで関心が無い事はもはやガナーズサポーターの間でも周知の事実として定着している感すらありますよね。(^^;


<『考えるな!走れ!』>
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とは言え、これまでの比較はそれがちょっと守備についてはアレ…なアーセナルが対象だったので、
続いてはクロップが目指す本当の狙い、現代サッカーで頭一つ抜け出す為の他とは一線を画す武器を検証していきたいと思います。

それは「攻守のシームレス化」と呼べるものなんですが、
とどのつまり人間が行うサッカーというスポーツにおいて攻守が切り替わる瞬間に出来るコンマ数秒…
ほんの一瞬のエアポケットというべき空白の時間を限りなく0に近づける試みです。

これを理解する為にまずは普通のチーム、アーセナルの場合を見てみましょう。
ちなみにこれはアーセナルに限らず他のどのチーム、それこそ世界中のトップレベルのチームでもごく当たり前に見られる光景なのでその事を念頭に置いて見ていただくといいかもしれません。


【攻守の切り替わりに現れる一瞬のエアポケット】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルの攻撃で、今ボールを持ったウィルシャーからロシツキーへパスが出される場面。

ところがここで両者の意図が食い違っていて、とりあえず前のロシツキーにボールを預けたいウィルシャーと
スペースへ流れてからその先でボールを受けたいロシツキーという齟齬が生まれてしまいます。

(これ自体はサッカーではよくある事)


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で・・・ウィルシャーからパスが出された頃には時すでに遅し。

両者共に「えっ!?そっちかよ・・!」ってのが本音ですが、実際の試合はそんな瞬間にも止まってはくれません。


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・・・ハイ!ココ!

サッカーでは攻⇒守に切り替わった瞬間をネガティブトランジションと言うように
攻撃が失敗して守備へ切り替わる瞬間は人間どうしても気持ちが後ろ向きになってしまうものです。

それが味方のミスとなれば尚の事ですが、それが起きた後に天を仰いだり、
このロシツキーのようにパスがミスに終わった事はもう分かっているのにそのまま惰性で何歩か走り続けてしまう事はサッカー経験者なら「あるある」の場面なはず。


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これはつまり視覚でボールが奪われた場面を認識していても脳が「攻⇒守」へと即座には切り替わっていない、
というか人間のメンタルは構造上そうすぐには割り切って考えられない為、
頭の中はそのままパスを受けようとしていた状態で思考停止に陥っているが故に現れる惰性の無駄走りというべきものです。

ですが繰り返すように、これは何もアーセナルに限った話ではなくバルサでもレアルでもユナイテッドでもどこにでもある日常の光景。
相田み○お先生じゃないですが、だって人間だもの

ところがクロップはここにメスを入れようとしているのですね。
つまり人間のメンタルと頭の中を改革しようと言う訳です。

その成果は今季のチームにも確実に表れていました。


【ドルトムントの攻⇒守 (ネガティブトランジション)】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルのコシエルニーがドリブルでボールを運びますが
中盤で引っ掛けられてボールを奪われそうになっている瞬間です。

この時既に守⇒攻へ切り替わる気配を察知したロイスが既に走り始めています。
(いわゆるポジティブトランジションで、これはメンタル的な負荷が低く誰でも出来る)


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ところが奪われるかに思われたボールがこぼれ球となってロシツキーの前へ。

普通の人間ならばせっかくカウンターに備えて走った分がそのまま無駄走りとなった上に
自分の背後で攻守が切り替わったこのような場面ならば一瞬切り替えのエアポケットが出来てしまうもの。

ところがロイスは攻守の切れ目なく(まさにシームレス)すぐに守備へと頭と身体を切り替えられています。


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その後、ロシツキーからラムジーへボールが渡りますがロイスは諦めずに帰陣し続けて・・・


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最後ラムジーがシュートを打つ瞬間にはギリギリ間に合って背後からプレッシャーをかける事に成功しました。
(シュートは枠を外れる)

このようにトップレベルの試合になればなるほど、
こういう場面であと一歩戻りきれているかどうかが得点と勝敗に直結してくるのが現代サッカーなのです。

それを証明するように前半16分に生まれたドルトムントの先制点が雄弁に物語ってくれているのでちょっと見ていきましょう。


【ドルトムントの先制点を検証】
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局面は右から左へと攻めるドルトムントの崩しの場面。

左サイドでボールを持ったロイスがレバンドに預けてパス&ゴーでリターンをもらおうと走り出しますが
このパスが少しズレてアルテタへ渡ってしまいます。


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結果的にこのパスをインターセプトする形になったアルテタからラムジーへ。

ところがこの瞬間、まさにドルトムントが「攻守のシームレス化」を体現する動きで思考のエアポケットなく守備へ切り替えている動きが見事過ぎます。


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気がつけば前を塞がれていたラムジーが取り敢えずボール逃がそうと左へ持ち出しますが・・・


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なんかもう囲まれてるし!奪われてるし!

この場面に至っても周囲のアーセナルの選手はまだ棒立ちの状態が目立ち、
明らかに切り替えの意識という点で両チームに段違いの差が表れています。


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ドルトムントはパスをインターセプトされてから僅か4秒後にはシュートを放っています。
(遂に近代サッカーはここまでスピード化が進んだか・・・。)

まさに切り替えの意識が生んだゴールと言えるでしょう。

最初にインターセプトされた瞬間にエアポケットの時間を作ってしまうと一転してカウンターを食らうピンチの場面でしたが、
サッカーではその瞬間に差をつける事で一気に得点のチャンスへと変換出来てしまう可能性をクロップが証明しています。


<カウンターのピンチこそ優先順位を>

これでドルトムントの守備は従来の前プレと遅攻に対する中切りに加え、奪われた瞬間のGプレスも完璧。

となれば次は考えうる中でも最悪の場面、Gプレスがかわされた時のカウンターに対する守りですがこれも見事に整備されています。


【ドルトムントの守備 (カウンターへの対応)】
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局面は左から右へと攻めるアーセナルのカウンター!

ここでポイントとなるのがボールサイドにいるベンダー&シュメルツァーの対応です。


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サイドのサニャから中のラムジーへボールが渡った瞬間の2人の動きに注目して下さい。

サニャを捨ててボールへ向かったベンダーとより危険な裏への飛び出しを狙うウィルシャーへと向かったシュメルツァー。

つまりこれが緊急時の守備における優先順位というものです。


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ボールを持ったラムジーに対してすぐさま中へのパスコースを消し、
更に間受けを狙うエジルにはフンメルスがDFラインから飛び出してケアに向かう構え。

危ないエリアから次々と潰していくドルトムントの守備からは相当訓練されている下地が伺えます。


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結果的にアーセナルのカウンターを外へ迂回させる事に成功しました。


・・・とここまで見てきて勘の鋭いアーセナルファンの方ならもしかして気付いたかもしれませんが、
「あれ・・・?これウチの得点シーンじゃね?」

ハイ、その通りでございます(^^;

実際の試合ではこの後、サイドのサニャからGKとDFラインの間を縫う見事なクロスが入ると
ジルーがこれに合わせてアーセナルが同点へ。

このようにサッカーでは例え素晴らしい守備が出来ていたとしても
相手にそれを上回る技術を発揮されたら守りきれない…というのが醍醐味の一つなんですね。

これで試合は1-1で前半を折り返す事に。


<前プレを剥がそう>

アーセナルは後半、それまで中盤の低い位置で標的にされていた感のあるラムジーを一列上げて
トップ下へ持ってくる事で今季絶好調の得点力をゴール前で活かしてもらおうとベンゲルが画策。

同じように中央で思うように間受けが出来なかったエジルをサイドに回して
ボランチにはウィルシャーを下げる配置転換を施してきました。

これは11/12シーズンのCL対バルセロナ戦で
ウィルシャーが全盛期のバルサ相手にその前プレを1人でかわして見事チームを勝利へ導いたあの試合を彷彿とさせる一手でしたね。

さて、この一手はどう出るか・・・?


【ウィルシャーをボランチへ】
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局面は後半、右から左へと攻めるアーセナルのビルドアップ。

CBコシエルニーから最初のタテパスを中盤で受けるのがボランチに下がったウィルシャーです。


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ボールを受けたウィルシャーはドリブルによってボールを前に運ぼうとしますがドルトムントの前プレは依然厳しく・・・


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あかん!イギリス系のMFじゃこの前プレ突破出来んわ!www

とベンゲル監督が思ったかどうかは定かじゃありませんが(笑)
とにかくウェールズ、イングランド期待の両ボランチが全く仕事をさせてもらえません。

かと思えば隣で飄々とボールをさばいているあのスペイン人は何者だ…!?
(ただのアルテタです)

という訳で後半58分に選手交代。

ウィルシャー OUT⇒カソルラ IN

イギリス系が駄目ならスペイン系にこの前プレを突破してもらおうという話ですね(^^;

幸いにもこの一手はすぐに効果が表れます。


【前プレ剥がしならスペイン系にお任せ】
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局面は先程と同じようにアーセナルのビルドアップから。

CBの間で横パスがかわされている段階で中盤の低い位置まで降りてきたカソルラは既に首を振って背後にいる敵と味方の位置を確認しています。(これ大事)


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で、コシエルニーからタテパスを受けて・・・


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すぐに前にいたラムジーを使ってボールを動かしながらリターンを受け取るカソルラ。

これでまずドルのファーストプレスを剥がすと・・・


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一気に逆サイドへボールを動かしてプレッシングの泣き所である「遠いサイドのオープンスペース」を突いていきます。

この前プレ剥がしと逆サイドへの大きな展開がカソルラ投入によってもたらされると
ようやくサイドに逃がしたエジルも起点として効き始めアーセナルの中盤に躍動感が戻ってきました。

それにしてもドルの激しい前プレの中でもカソルラとアルテタのスペインコンビは涼しい顔で淡々とプレーしていたのはさすがです。

これはもうスペインとイングランドの育成の差なのかもしれませんが
彼らはDNAレベルでボールの受け方、プレスの外し方といった基本技術が備わっているのでしょう。

しかも彼らはそれぞれバルサ、マドリーのトップチームには上がれなかった選手だというのだから
スペインの若手事情は一体どうなってんだっていう話で(^^;


<伝家の宝刀カウンター>

さて、試合では中盤がプレス合戦からパスワーク勝負へと土俵が変わってしまうと苦しいのはドルトムントです。
黄色いソルジャー達はそういう戦い方を得意としていません。

(元々テクニック勝負では分が悪いので前プレ戦術を採用してきたとも言えますが)

試合は一気にアーセナルペースへ流れ、ドルトムントは自陣への撤退戦を強いられる苦しい時間帯が続きます。

試合を見ていてこれはもうアーセナルが逆転するかドルトムントが耐えてドローに持ち込むかのどちらかだろう…と思ったのは
ちょうど昨季CL決勝の終盤もこのような流れで一方的なバイエルンペースになっていたのを思い出したからでもあります。


しかしクロップはまだ勝利を諦めてはいませんでした。
アーセナルの時間帯になったと見るやオーバメヤンとホフマンを投入して着々と逆転への布石を打っていくクロップ。

すると耐えに耐えた後半82分、遂にドルトムントの苦労が報われる事となります。
逆転ゴールはもちろん伝家の宝刀カウンターから。


後半82分―

アーセナルのクロスを跳ね返したクリアボールをレバンドフスキがメルテザッカーと競り合いながら
1トップのお手本のようなキープでマイボールにするとそこから一気呵成に攻め上がる黄色い波。

最後は右から上がったクロスにゴール前へ4枚が突進する迫力で
途中出場のホフマンがニアにDFを引っ張るとその裏に走り込んできたのはカウンターの起点となったレバンドフスキでした。

この絶好機を世界最強の1トップが外すはずもなくドルトムントが起死回生の逆転劇。

昨季までのドルトムントはキックオフからフルスロットルで行けるところまで行く…という感じのチームでしたが、
今季は苦しい時間帯には無理せず耐えに耐えてカウンターから一刺し…という大人の試合運びが出来るチームへと着実に進歩しています。

(余談ですが試合後のスタッツを見るとチームの総走行距離でドルトムントが13キロも上回っており、
アーセナルの走行距離が特別少ない訳ではなかった事と併せて考えるとまさに走り勝ちか)


<時代はドイツのクラシコへ?>

さて、個人的には今季見た試合の中でも文句無しのベストゲームを見せてくれた両チーム。

負けたアーセナルにしても内容的には紙一重で特にカソルラがスタメンからいたら…と思うと今夜の試合はどっちに転んでもおかしくないと思います。

しかしながらあれだけ押せ押せだった後半にカウンター一発でアッサリ沈んでしまうあたり、
やはり厳しい試合を勝ち切るには何か物足りなさを覚えるチームかな…と(^^;

加えてフラミニが戻ってきたらボランチはどのペアを組ませるのか?
2列目に至ってはエジル、ウィルシャー、カソルラ、ロシツキー、ウォルコット、ポドルスキーと過剰戦力を揃えていますが、一方でCFはジルー頼みと明らかにアンバランスな持ち駒も悩みの種。

僕の見立てでは今季もアーセナルが何らかのタイトルを獲るのは難しい気がしますが
やっているサッカーの質と娯楽性では間違い無くプレミアでダントツのナンバー1です。

例え勝ちきれなくても「見ていて楽しいアーセナル」が帰ってきたのはいちサッカーファンとして嬉しい限りですね。


一方のドルトムントについてはクロップが人間の脳とメンタルの領域にまで探求の幅を広げ
もはやピッチ上では精密なサイボーグが試合をしているかのごとき激しいインテンシティが要求されています。

プレミアリーグのサッカーもよく「速い」と言われますが
ドルトムントやバイエルンのサッカーは単純なボール往復スピードではなく
人間の思考と切り替えの領域でもはや他のクラブとは質が違うサッカーを展開していると言えるでしょう。

ドイツの二強に比べるとメッシ、シャビ、イニエスタの切り替えは3テンポ遅く、
ロナウドとベンゼマを前残りにして守っているスペインの二強とはますます差が開く一方な気も…。

(とは言えこの2チームにはそうした差を一発でひっくり返す個の力があるので決して侮れませんが)


先日のクラシコに何も新しい戦術的発見が無かった事と併せて考えると
昨季のCLドイツ決勝は決してフロックなどではなく時代の必然だったのかもしれませんね。

その意味でいよいよ現代サッカーの先端を引っ張るのは
スペインのクラシコからドイツのクラシコへとそのバトンが渡るシーズンになるのでしょうか―



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それでもカルチョは死なず ~CL第2節 アヤックス×ACミラン~

いやーしょっぱい試合でしたねザックJAPAN。(^^;

この2試合を見返すとかもはや苦行でしかないので録画は消してしまいました(爆)

まあ、この時期の親善試合と本大会の成績との因果関係が限りなく薄い事は過去岡田JAPAN(若手セルビア相手に0-3)とジーコJAPAN(開催国ドイツ相手に神試合)が証明してくれていますが、
それでもあの内容では不満が噴出するのも仕方ないですよね。

そこで今回は「欧州版ザックJAPAN」と言う訳ではないですが、
「限りなく怪しいCB」「著しく低いインテンシティ」「脆弱な持ち駒」と、
どことなく日本代表を思わせるミランがいかにして毎年欧州の舞台で結果を残してきているのか?を見る事で参考になる部分もあるのではないかという趣旨の元、先日のCLでの戦い振りを検証してみたいと思います。



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<それでもカルチョは死なず ~CL第2節 アヤックス×ACミラン~

さて、目下国内リーグでは絶賛逆噴射中のミラン。

今季も目立った補強はなく救世主のはずだったカカは早々に戦線離脱、更に怪我人も続出と
何一つ明るい話題の無いこのチームがそれでもCLの舞台ではしぶとく結果を残しつつ、セリエAでも最後は帳尻を合わせた順意表でシーズンを終える。

ミランにはそういった熟練の技工士を思わせる老獪さがあります。

このアヤックス戦でも予備予選のPSV戦で見せたように内容と勢いではオランダの若手チームに譲りながら
終わってみればアウェイでしっかり勝ち点を持ち帰る結果になりました。

これこそ他国の文化には無い、イタリア独自のサッカーの捉え方「カルチョ」の息吹そのものです。

では試合を追いながらミランのカルチョ魂を検証していきましょう。


【ACミラン×アヤックス】
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ミランは左のWGに新加入のビルサが怪我で使えず、ニアンは前代未聞の登録ミスでベンチにも入れないという事で遂にモントリーボがこんな位置に入る苦肉の布陣。

そもそも普段セリエAに馴染みの薄い人とっては「ビルサって誰だよ?」「どこの3-4-3マニアだ?」って話ですが、
ジェノアから加入の新顔ウインガーは開幕からなかなかいい仕事をしてくれています。

ポーリ、サパタという新顔もそうですが、もうすっかりミランの補強範囲ってセリエAの中堅どころなんですよね。
いかにして他国から目を付けられていない国内の掘り出し物を安く買ってくるか…みたいな事になってしまっているのが現実かと。

それ故に豪華さはありませんが、カルチョのDNAはどんどん濃くなっているとも言えます。
(スタメン全員がカルチョ○年目という選手ばかりで構成されていますからね…(^^;)


対するのは我が愛しのアヤックス。

最近の若いファンにはあまりピンとこないのかもしれませんが、
やっぱりオーバー30の僕ら世代はアヤックスこそ「最先端」っていうイメージが未だ残ってたりするじゃないですか(^^;

バルサのサッカーだって源流を辿ればこのチームに行き着くし、
ユースからの一貫したパスサッカースタイルだってこっちが本家です。
なにより僕にはファンハールの3-4-3黄金期の記憶が鮮烈過ぎたってのもあるんですがね(笑)
(あれから私の3-4-3人生が始まった…ww)

今は資本力のある各国ビッグクラブからの草刈り場になってしまっていますが、
それでも一貫したスタイルの元、面白い素材を輩出し続けています。

例えばCB。
アヤックスというチームが無かったら今も「つなげるCB」というカテゴリーは欧州中で脆弱なものになっていたはずです。

Fデブールから始まりキブ、ベルメーレン、ヴェルトンゲンと常にこのチームの最終ラインにはエレガントにボールを繋ぐCBの姿があります。

現在のチームでもAZから復帰させたCBモイサンダーがしっかりとその系譜を受け継いでいます。



<現代版アヤックスのワイド攻撃>


試合では序盤から圧倒的なアヤックスのボールポゼッションが展開されていきます。
前半20分の段階でアヤックスのポゼッション率は75%に届こうとしていました。

そんな彼らの生命線は今も昔もピッチの横幅をワイドに使ったサイド攻撃ですが
現在のアヤックスにはオーフェルマルスやフィニディ・ジョージのように個の力でサイドを縦に突破出来るウインガーがいないので(いてもすぐ獲られてしまう)別のやり方でサイド攻略を実現させています。

では実際の試合から現代版アヤックスのワイド攻撃を見ていきましょう。


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局面は右から左へと攻めるアヤックスの攻撃。

この場面では左のWGフィッシャーが手前に引いてSBのアバーテを釣りだし、その裏をMFデュアルテが狙う動きでサイド突破を目論みます。


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SBのブリントから引いてきたフィッシャーにつなぎ、狙い通りアバーテを前に釣り出しました。


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ここからアバーテの裏を狙っていたデュアルテに繋いで・・・


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パスを受けたデュアルテにミランのCBサパタが食いつくとデュアルテは巧みなターンで前を向きます。

(CB軽いよ!どこのアジア代表だよ!)

又、この動きと連動するようにアヤックスはCFのシグソールソンがメクセスのマークを外して弧を描くように内へ。


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デュアルテから裏へ抜けたシグソールソンへラストパスが出て決定機を演出しました。

このように現代版アヤックスでは個の突破力ではなく、ポジションチェンジと食い付かせによってパスでワイド攻撃を実現しているのです。


<ミランの修正力>

試合展開としてはまるで「バイエルン×マンチェスターC」のような流れで進んでいくのですが
大きな違いとしてシティは相手にボールを回され続けている状況はストレスでしかないものを
ミランは開き直って「待てる」メンタリティを持っているという事ですね。

つまりボールを「回されている」チームと「回させている」チームの違いです。

そもそもアッレグリのプランとして若いアヤックス相手に前半からそのパス回しを追いかける体力勝負では話にならないので、とにかく前半45分は好きなだけ回させての0-0折り返しプランだった事は間違いありません。

先程、↑で紹介した前半4分のアヤックスのサイド攻撃を見てピッチ上の選手達も
「こいつらのパスに食い付いていたら厄介な事になる」と悟ったのでしょう。
以降、見事な修正力で守り方を修正してきました。

では続いてミランの修正力が光ったアヤックスのサイド攻撃への対応を検証してみましょう。


【サイド攻撃への守り方を修正するミラン】
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局面は前半19分過ぎのアヤックスのサイド攻撃の場面。

4-3-3の3ラインで守るミランに対し、アヤックスは外側を使ってCBから右SBのファンラインにつなぐところです。

先程はSBのアバーテを当たりに行かせた事で裏のスペースを狙われたミランは
この場面ではSBではなく中盤の3センター(ムンタリ&デヨング&ポーリ)をサイドにスライドさせる守り方に修正します。


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ボールへ当たりに行くムンタリとワンツーリターンでこれをかわすファンラインの攻防。

ここでポイントとなるのが食い付かせる事なく後ろへ残したSBコンスタンの位置取り

ボールへチャレンジしたムンタリに対していわゆるイタリア語で言うところの「スカラトゥーラ」
つまりカバーリングのポジショニングを取る訳ですが、これが最初からサイドの裏を意識し過ぎるとWGのム・サが空き過ぎてしまい、かと言ってWGのマークに気を取られ過ぎると裏のスペースを突かれた時にカバーリングが間に合わなくなります。

この難しい局面をコンスタンはどっちにボールが出ても間に合うファジーな位置取りで完璧な対応と言えるでしょう。


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実際に裏に出されたボールへはコンスタンのカバーリングが半歩早くクリアに成功しています。

と同時に今度はコンスタンが空けたスペースをMFデヨングが埋める地味な連動も見逃せないポイント。

う~ん・・・緻密、さすがカルチョっすな~(笑)

(カルチョ好きの守備マニアはこういう地味なシーンでご飯3杯いけるもんなんですよ、ええww)


先程サイドを崩されたシーンと比較しても完璧な修正を見せたミラン。
ピッチに出たら選手自らが判断し、修正も行う。これが本来のフットボールだと思うんですよ。

にも関わらずこの国のサッカーに対する見方はチームに何か問題があるとすぐに監督(ザック)の対応が修正が…と話がそっちへ向かってしまうのは非常に残念ですね。

守備で明らかに崩されている…と感じたなら守り方を変えればいいじゃないですか。
きっとイタリアでもブラジルでもそんな事は草サッカーレベルでもやっている話だと思うのです。


<守備マニア必見の攻防>

こうなると試合は何とかしてパス回しでミランを引きずり出そうとするアヤックスの揺さぶりと
そんな誘いには乗らんと言わんばかりのミランとで高度な駆け引きが繰り広げられていきます。

ここでは守備マニア必見のミランの見事な守備を実際の試合からいくつか検証していきたいと思います。


【誘いに乗らないミラン】
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4-3-3で待ちの守備を行うミランにとっては何より中盤の3枚(3センター)の位置取りが生命線です。

アヤックスもそれは分かっているので色々と揺さぶりをかけてくる訳ですが
↑この場面ではCBからタテパスを入れたいアヤックスがデヨンクがムンタリを引っ張る事でスペースを空けて
次に中に絞るファンラインへタテパスを送ろうという狙いです。


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一度ムンタリもこのデヨンクの動きに引っ張られかけるのですが、ギリギリのところで後ろへマークを受け渡し中盤の3センターを崩しませんでした。
(中盤の誰かがDFラインに吸収されてしまうと3センターが崩れてしまう)

これを見てアヤックスも一度は入れようと思っていたタテパスをキャンセルしていますが、
かと言って手前に引いてくるCFシグソールソンへはデヨンクがしっかりコースを消しているし、
そうこうしている内にポーリはボールへアタックをかけようとしています。

ミランは中盤の3センターがそれぞれの役割を完璧にこなしつつ組織としても見事に機能している状態と言えるのではないでしょうか。


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結局タテパスを断念したアヤックスは一度サイドへ迂回させてから再び中への展開を探り出します。

この隙にミランの3センターは再び各自が持ち場に戻ってラインを形成。


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中に入れたパスには今度はデヨングが対応して前を向かせずアヤックスの攻撃をバックパスへ誘導させました。

このようにアヤックスはあの手この手でミランへ揺さぶりをかけるのですが、ミランの守備は全く崩れる気配を見せません。

やはり中央のパスコースに間受けの名手エリクセンを失った痛手が大き過ぎると見ます。

では続いてもう一つ、ミランの守備を。


【守備の優先順位を崩さない】
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局面は右から左へ攻めるアヤックスが攻撃の起点でもあるアンカーのポウルセンへタテパスを入れるところから始まります。


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ポイントはココ!

まずムンタリの寄せ方が巧みで逆サイドへの展開を消しながらポウルセンへ寄せているので
アヤックスが数的優位になっているエリアを殺しているのが秀逸ですね。

もう一つがデヨングの絞り。

普通、ここでポウルセンの身体の向きとその先にいるデュアルテを見たらこのパスコースを真っ先に切りたくなるものだと思うんですよ。

でも守備の優先順位とデヨングのアンカーという役割を考えたら消すべきコースは外<<<中なんです。

守るミランから見てここで一番嫌な展開はデヨングがパスコースに食い付いてシグソールソンに間受けを入れられた上に前を向かれる展開なのです。

しかもこうしてムンタリが逆サイドの展開を殺し、デヨングが中を絞ればポウルセンからの展開は一択に限定されたも同然なので・・・


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はい、パスを出させてポーリがインターセプトに成功しました。

ムンタリ、デヨング、ポーリという何とも地味な3センターのこの見事な働きっぷり!


昨季のCLを思い返してみてもメッシの規格外な無双さえなければベスト8へ勝ち進んでいたのはミランの守備だったはず。

そう考えるとドリブルでの剥がしが無く、チームの構成上パスだけでミランを・・・否、カルチョを崩しきろうというアヤックスの攻めには無理があるようにも思えます。


更にミランの老獪な守備に比べるとアヤックスの守備はいかにも青臭いものと言わざるを得ません。

【アヤックスの守備】
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局面は左から右へと攻めるミランの攻撃に対するアヤックスの守備の場面。

今、DFラインからタテパスを受けたムンタリにアヤックスの中盤が寄せにかかります。


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ボールを受けたムンタリは左へ展開しますが、これにアヤックスの中盤全員が食い付いてしまいます。


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するとアンカーのポウルセンが不在のバイタルエリアに気付いたロビーニョが降りてきて間受けを狙う動き


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コンスタンからロビーニョにパスが出て間受けを成功させると・・・


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ロビーニョから逆サイドへ決定的なパスが出されてアヤックスは完全に崩されています。

ミランの老獪な守備と比べるとアヤックスの青臭さは明らかですね(^^;

もしアヤックスはボール狩りがしたいのであれば最初の場面でペップのバイエルンばりに激しくムンタリに寄せてボールを奪いきってしまわないとこの戦術は成り立ちません。

ミランは自分達のメンバー構成上、最先端のバイエルンやドルトムントのようなインテンシティが無い事を分かっているので、そこは開き直って「待ち」の守備を完璧に遂行させる方向にシフト出来る強みがあります。


<トレンドを追う者、追わぬ者>

試合は前半を狙い通り0-0で折り返したミランが後半は一転して前からプレスをかけてアヤックスを翻弄。

攻撃でもこの日のピッチ上で唯一のワールドクラス、バロテッリの強靭なキープ力を活かしたポストプレー(ほぼ取られないし!)を軸に
次々と危険なカウンターを繰り出して完全に試合の主導権を握ってしまいます。

アッレグリのプランは完璧にハマったと言えるでしょう。

ところが面白いもので攻め手を失ったアヤックスがたった1本のCKから試合終盤に先制ゴール。

さすがにこれで決まったかと思われましたが、ミランが総攻撃を仕掛けたロスタイムに微妙な判定からPKを獲得。
これをバロテッリが沈めて1-1のドロー決着となりました。

90分を総括すれば内容的にドロー決着は妥当な線ではありますが、
最後のPKが微妙な判定だっただけにアヤックスからしたら受け入れがたい勝ち点1となった事は間違い無いでしょう。

ガリ○ーニあたりに言わせれば「ウチが毎年バルサを引き受けてやっているんだからこれぐらい当然(キリッ!)」とかうそぶくのかもしれませんがww、
それならアヤックスだって3年連続Rマドリー⇒今年バルサの涙目状態だっていう話も…。(^^;


最後に何とか結果を持ち帰ったミランですが、昨今多くのチームが「ボールポゼッション」「高いインテンシティをベースとした前プレ」を理想のスタイルとしてトレンドに傾く中、自分達の置かれた状況を冷静に判断してこの開き直った路線を取れるのはさすがはアッレグリと思わせるものでした。

恐らくアヤックスのパス回しにメッシやネイマール、ロナウドやベイル、ロッベンにリベリーあたりのドリブルが加わる相手には多分ミランの守備では限界があると思います。

同じセリエAでカルチョの老獪さを持つ曲者相手にもこうはいかないでしょう。


しかし、チャンピオンズリーグのような異種格闘技戦で見せるカルチョの輝きは
「それでもカルチョは死なず」を強く印象づけるに充分だったのではないでしょうか-


(一方、アヤックスのパスだけで崩しきろうという攻撃の限界はザックJAPANと全く同じ課題と言えそうです・・・。)



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