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ユーベの3センターを崩壊させたインテルの王様 ~インテル×ユベントス~

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<ユーベの3センターを崩壊させたインテルの王様 ~インテル×ユベントス~

今週は久方ぶりのセリエAをマッチレビューします。
カードはイタリアデルビー。

Fデブールを招聘したインテルがなかなか面白いサッカーをしていたのと
単勝オッズ1.0倍の絶対王者ユベントスの躓きの原因を検証していきたいと思います。

両チームのスタメンはコチラ↓
インテルユーベ0922

まずはインテル。
昨年まで「とりあえず筋肉集めてみました」みたいだった中盤に待望の司令塔バネガが加入。
これでチームにDFと前線をつなぐ1本の筋が通りました。
更にEUROのポルトガル代表で評価を高めていたマリオをスポルティングから獲得と何だか今季の補強には明確な「意図」を感じるぞ!

それもそのはずベンチにはアヤックス復活で評価を高めた「今が旬」やり手のFデブールが座っています。


迎え撃つは「セリエAのナリタブライン、ディープインパクト」
今季も既に連覇は確定とも思える凶悪な補強を敢行。

手薄だった「黄金の3バックの控え」にはセリエAでの実績も充分のベナティアを、
そしてスクデット争いの対抗馬ナポリから絶対的エースのイグアンとローマの司令塔ピアニッチを強奪。
ライバル達の戦力を削り自軍の戦力を上げるバイエルンさながらの補強で国内での地盤を固めてきました。

今季はこれまでチームの看板だった3センターからポグバが抜けマルキージオが離脱中。
ポグバの位置には急ごしらえでアサモアを当てがってますが問題なのはアンカーポジション。
これまでエルナネス、レミアあたりが起用されてきましたがいずれもアッレグリを満足させるには到らず。

そこでアッレグリはこのデルビーにレジスタとしてピアニッチを起用。
本職はもう1列前で輝くこの天才司令塔に中盤の指揮を任せます。



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<ピアニッチを経由しないユーベのボール>

個人的にはトップ下で自由に動けるピアニッチが見たかったのですが
過去ピルロがレジスタとして開花した例もあるので蓋を開けてみない事にはどうなるか分からないこの抜擢。

しかし実際の試合ではピアニッチを経由してボールが動く、動く・・・という事にはなりませんでした(笑)
序盤からユベントスのビルドアップ、崩し、いずれの局面でもピアニッチ自身はボールを受けようと顔を出しているものの、
まだチーム内での信頼感がローマほど絶対的なものでないのかとにかくパスが来ない。


ピア使われず1-1

局面は右から左へ攻めるユーベのビルドアップから

中盤からピアニッチがボールを受けようと降りてくるものの・・・・



ピア使われず1-2

ピルロがいた時代からピルロがマンマークで抑えられた時の「第二の司令塔」として散々鍛えられてきたボヌッチ。
ここは中盤を経由しない対角のサイドチェンジでWBを走らせるパスを選択。

なんか後ろはお呼びじゃないみたいなんで前線の崩しに絡もう!


ピア使われず2-1

前線でボールを受けたディバラをサポートするピアニッチ。
ローマではここからピアニッチに預けてサイドチェンジなり中へのドリブル進入なりあとは王様の閃きを待つばかりだったのですが・・・



ピア使われず2-2

ディバラは自力で局面を打開して逆サイドへサイドチェンジ



ピア使われず2-3

WBの利点を活かして左右に揺さぶったれーって事でここでもピアニッチのお呼びでない感・・・。

このようにユーベは後ろの司令塔としてボヌッチが、前の司令塔(&受け手)として前線~中盤を幅広く動き回るディバラが既に確固たる地位をチームで築いています。
これに中盤の王様ピアニッチを加えた三党体制へ移行するにはもう少し時間が必要なのか、
それともそもそも「船頭多くして」何とやら・・・なのか。

ピアニッチの両脇もどちらかと言うと使う選手ではなく使われる側であるアサモアとピッチをドタバタ駆け回る安定のケディラ。
従ってこの日のユーベの攻撃は3センターを経由したものではなく本線は外⇒外のサイド攻撃になっていました。
そこには3バックと4バックのミスマッチを戦術的に突くというアッレグリの狙いもあります。


【外⇒外で崩すユーベの攻撃】
ユーベ外⇒外0922-1

ユーベのビルドアップから崩しの狙いは明確。
まず3バックを使ってインテルのファーストラインである3トップを剥がします。
具体的にはサイドに開いたCBにインテルのWGを食いつかせるところから始めます。

ここではイカルディとエデルがポジションを入れ替わっていますが要は左WGを右CBに食いつかせてWBに展開


ユーベ外⇒外0922-2

4-3-3(4-2-1-3)のインテルは中盤に明確なサイドプレイヤーがいないのでユーベのWBにアプローチするのは基本的にはSBが多くなります。

↑ここでもリヒトシュタイナーに逃がしたボールにはSBのサントンが対応


ユーベ外⇒外0922-3

・・で、サントンを食いつかせた裏にFWか3センターの両脇を流すという攻撃でシンプルにチャンスを作っていたユーベ


試合自体は終始インテルペースだったにも関わらずシステムの利点を活かしたWBからWBへのクロスで
少ないチャンスをものにするあたりさすがのアッレグリですよ。

【ユーベの先制点】
ユーベ先制0922

大外のWBがダイアゴナルにゴール前に入って来る動きは守る側からすると捕まえずらい事この上なし

逆SBのサントンが上手く見ながら絞りきれませんでしたねー。
これならNAGATOMO使っとけとも一瞬思ったけど、よく考えたら長友もこの守備苦手だからきっと防げてないわ(笑)


で、話をユーベに戻すと先制点も奪っているように外⇒外の攻め筋は確かに戦術的には正しいかもなんですが、これだとピアニッチいらなくないですか?
しかも攻撃面でメリットが薄いなら懸案事項でもあるピアニッチをアンカーに起用した事による守備力の方はどうなのよ、と。



<強度が落ちた鉄壁の3センター>

ここ数年のユーベの強さ、国内は勿論CLでもバイエルンやバルサといったメガクラブと戦力と資金力で劣りながら互角に渡り合ってこれたのは3センターのクオリティと完成度の高さにあります。

中盤3枚の息の合ったチャレンジ&カバーと横スライドは近年の欧州サッカーでも頭一つ抜けた完成度で
対戦チームはとにかく中盤から前へタテパスが入れられない、という現象が頻繁に起こっていました。

しかしピルロが抜け、ポグバが抜け、マルキージオが離脱している今の3センターは明らかにクオリティが低下。
しかも敵将Fデブールはこのユーベの心臓である3センターに対し明確な崩し手を用意していたのです。


【インテルが仕掛けた3センター崩し】
バネガ3センター脇0922-1

まずインテルが狙うのは3センターの内最もボールに食いつきグセのあるケディラ。
バックパスでエサを撒きます。


バネガ3センター脇0922-2

するとこのように必ずケディラが食いついてくるのでバネガが背後を通ってサイドのスペースへ
奥の高い位置でSBがユーベのWBをピン止めしている上、
アンカーのピアニッチからすると出ていきずらい死角のスペースが生まれています。インテルはフリーのバネガへパス


バネガ3センター脇0922-3

バネガがフリーで受けるとさすがにピアニッチが対応せざるを得ず、
アンカーがサイドに引きずり出されてしまってバイタルが空くという寸法です。
インテルからすると狙っていた攻め筋なのでスムーズにエデルが流れてきていますね。


この攻め筋がFデブールによって事前に計画され準備してきたものだったという確証は
ボールに絡む選手が変わっても全く同じ手筋が繰り返された事からも間違いありません。


3センター脇0922-1

これも同じようにバックパスでケディラを釣り出して・・・



3センター脇0922-2

今度はボランチのマリオがケディラの背後を通ってサイドの死角へ




3センター脇0922-3

ピアニッチがつり出された背後のバイタルにエデルが入り・・・




3センター脇0922-4

ほら、エデルがバイタルでフリーで前を向けました。



これはあくまでインテルによって3センターが「崩された」形ですが、
ユーベは3センターの顔ぶれが変わった事で明らかに強度自体も落ちていました。
従って崩されるかたりばかりでなく「崩れている」状態というのも試合でたびたび目にするようになります。

例えばこの場面↓

【強度が落ちたユーベの3センター】
3センター距離×0922-1-1

局面は右から左へインテルがユーベ陣内でボールを回している場面ですが明らかに3センターの距離感が遠すぎます
そのせいでボランチのメデルの前にはボールを受ける広大なスペースが



3センター距離×0922-1-2

本来、ボールサイドのケディラが対応しているのであれば逆サイドのアサモアはもっと絞ってアンカー(ピアニッチ)との距離を縮めないとカバーが出来ません。
仮にここまで絞っていればメデルにパスが出てもアンカーではなくアサモアがこのパスには対応出来たはず。




3センター距離×0922-2

しかし現実にはメデルにスペースを使われてボールを運ばれるとユーベは後退する守備を強いられてしまいます。
そしてリヒトシュタイナーが自分のポジションに帰る矢印を利用して絶妙のタイミングでバネガが逆の矢印を入れてスッと引いてきます。
(これでフリーになれる)



3センター距離×0922-3

するとバネガからイカルディへど真ん中を割られるパスを通されてしまいます。


コンテが下地を作りアッレグリが熟成させたユーベの3センター。
その生命線はタテパスを入れさせない事、とくに中央は絶対に割らせない強度に自信があったはず。

しかし今の顔ぶれだとアサモアはしょせんただの便利屋に過ぎず、ピアニッチにアンカーの守備は無理でしょう。
ケディラも残りの2枚が「あいつ(ケディラ)には好きに行かせて俺らでバランスは取るよ」という大人のMFが相棒なら活きるでしょうが、今のメンバーでは1人浮いたタイミングでボールに突っ込む野犬のような状態。


この場面なんかSBからCFに直接タテパス入れられてますからね↓

真ん中割られる0922-1

SBのサントンからCFのイカルディへ・・・



真ん中割られる0922-2
アカンでしょコレ


少なくとも去年までのユーベだったら絶対に見られないシーンでした。

開幕戦でアンカーに起用したレミナはそこそこ気の利く守備が出来ていたので
ピアニッチのアンカーには見切りをつけて本来のポジションに戻すべきでしょうね。


結局試合はこれまでのユーベであれば試合内要など関係なく1点先行した時点で試合を閉じて渋~く勝ち点3を強奪していたパターンが
3センターの安定感がないのでアッサリ逆転されてむしろインテルの準備の良さFデブールのとポテンシャルの高さだけが印象に残る試合となりました。





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<輝けなかったピアニッチ 王として君臨したバネガ>

この試合の明暗は何と言っても輝けなかったピアニッチと中盤の王様として君臨したバネガの両者でしょう。
特にバネガはビジャレアル時代のリケルメを彷彿とさせるオールドファッションなトップ下として完全に試合のテンポをコントロールしていました。

やはりセリエAにはまだこういうトップ下が輝ける下地がありますよ。

近年確かにシルバや香川といったよりモダンなトップ下の台頭が著しいですが、彼らはゴール前でラストパスやシュートという
よりゴールに直結した仕事をするタイプなのに比べてバネガはその一つ前の過程で何度も顔を出しては試合の流れをコントロールする仕事に輝きを見出すタイプ。

完全に古き良き時代のトップ下なのです。

そしてセリエAでは古くからシステマチックな戦術が下位チームに到るまでカチッと組み上げられているからこそ
その組織を一瞬でズタズタにする天才の閃きこそが一種のカタルシスとしてファンタジスタの系譜も受け継がれてきたのでしょう。


例えばそれは僕のような一部変態からするとバネガの何気ないプレーでご飯何杯でもいけちゃいますよ!っていう事なんですけど↓
【バネガのご飯3杯いけるプレー】
バネガ0922-1

局面は自陣の深い位置で三方向から囲まれるバネガ
現代サッカーのセオリーで言えばセーフティーファーストで蹴り出すかワンタッチで近くに味方にはたいてプレスの網を回避するかの二択になりますがバネガは・・・



バネガ0922-2
足裏の切り返し一発でターン!

この自信!この不敵!
「奪われた時のリスク」から逆算するのが現代のセオリー、「奪われない事」を前提にベストな選択肢を探るのが俺のジャスティス!YO!YO!




バネガ0922-3

そして自陣DFラインの前をまるで散歩でもするかのように優雅に闊歩しながらCBとワンツー




バネガ0922-4

リヒトシュタイナーが詰めて来れば・・・




バネガ0922-5
股抜きウィィィ・・・・yeeeeea!!


ユーベの組織的なプレスを優雅にかわすこの技巧こそ額に入れて家に飾りたいカルチョのファンタジーアですよ。

確かに勝利やゴールに直結するプレーではないし、効率が良いかと言われたらそれはまた別の話。
昔は後ろから組み立てて⇒中盤で作って⇒アタッキングサードで崩して⇒ゴールという段階を経てましたが
今はもうボール奪う⇒ゴールみたいなサッカーになってきてますからねー。

これは時代の必然でもあって将棋界でも昔は序盤にしっかり自陣の陣形を整えてそこから中盤⇒終盤の勝負どころへ…という流れだったのが
今はもう序盤と中盤がどんどん削られて一気に勝負どころへ持ち込むような戦術が主流派になってきているらしいです。


でもこの変態ブログではそういう時代の最先端、主流を追いつつもこういう「古き良きもの」もしっかり拾い上げていきたいんですよ!

そんな訳で今季も誰も見て無くても僕はセリエAを追い続けるつもりですよ。

アッレグリの事ですからきっとすぐに3センターは修正されるでしょうし、
Fデブールみたいな理論派を加えた知将達のやり合いはやっぱり目が離せませんからね。







*「おいインテルネタとか何年ぶりだよ 数年振りの逆フラグにガクブルだわ!」と思ったインテリスタは下のボタンをクリック!

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数的優位と質的優位を巡る戦い ~マンチェスターU×マンチェスターC~

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<数的優位と質的優位を巡る戦い ~マンチェスターU×マンチェスターC~


ここに一枚の写真がある-



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ある日のトレーニングの午後、選手と通訳によるたわいもないサッカー談義に花が咲いているのだろうか。

まだ"何者"でもなかった両者の間には何の垣根も障害も無かったのだろう。

そして恐らく当時の2人のサッカー観もきっと根底の部分では通じ合うものがあったのではないだろうか


しかし時を経て、2人は全く異なる立場に身を置く運命となったのである-


1人のロマンチストは言った
「自分の哲学は美しく勝つ事である」


1人のリアリストは言った
「勝利こそが私の哲学である」


戦術の進化を巡る歴史とは即ち、異なる価値観のぶつかり合いである

その最高峰に立つ両者がスペインの地で対峙したクラシコでは「0トップ」と「間受け」、
それに対抗する「中央圧縮」「トリボーテ」「ゾーンを越えたCBの迎撃守備」など数多くの戦術的進化が促された

それに比べるとここ数年の現代サッカー史は戦術的にはやや停滞期に入っていた、と言えるかもしれない


その両者がマンチェスターに地を移し、再び相まみえるというではないか


これはただの1試合ではない。


『さあ、そろそろフットボールの歴史を動かそうか』



<スペシャリスト集団対マルチロール集団>
スタメンダービー0917

という訳で上記が両チームのスタメンです。

ユナイテッドは各セクションにワールドクラスのスペシャリスト達を揃えた非常にモウリーニョらしいチームになっています。
特にセンターラインにはバイリー、ポグバ、イブラヒモビッチというフィジカルモンスターを獲得。

極論すればCBとボランチは「来たボールは全て跳ね返せ」、両ワイドは「個で突破しろ」CFには「決めろ」です。
フェライーニ&ポグバのダブルボランチとか、もうこれから殺し合いでも始めるのかっていう夢と希望の無さですよね(笑)

それぞれのタスクを明確化して有機的につなぎ、計算出来る100%からブレの無い、
極めて不確定要素の低いチームを作るのがモウリーニョという男の強み


一方で「目に見えない何か」「計算できない何か」から新しい化学反応を生み出そうとするのがペップという男のチーム。
「CBに中盤の選手を起用するのが私の好みだ」と言うように一芸のスペシャリストよりも攻守に秀でるマルチプレイヤーを揃えるのがペップサッカーです。

プレシーズンから早速コラロフ、フェルナンドをCBに起用したりと色々実験しているようですが取りあえずこの試合では通常の位置に戻したDFラインを編成。
GKにはペップの哲学からすると「ただゴールマウスに突っ立っているだけのでくの坊」に過ぎないハートを早々に放出し、バルサから足元の技術に優れたブラボを獲得。

そしてペップのサッカーにおけるヘソの位置にあたる4番ポジション(アンカー)には全能のフェルナンジーニョが抜擢されました。
この選手が「バルサにおけるブスケス」であり「バイエルン時代のラーム」にあたる立ち位置にいる事は間違いありません。

2列目には間受けして良し、ワイドに開いて良しの技巧派を4人並べて1トップはエースアグエロの負傷によりイヘア・ナチョが代役に。



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<ぶつかり合う両者の哲学>

試合は序盤から両者の哲学ががっぷり四つに組み合う展開となる

モウリーニョのユナイテッドは守備時4-4-1-1に近い並びに。
これは守備をある程度免除せざるを得ないイブラを最前線に置いているチーム編成なので致し方なし。

シティがビルドアップを始める段階でイブラをストーンズ(今イングランド人で最も展開力のあるCB)に付けて
ルーニーにはアンカーのフェルナンジーニョを見させる縦関係にしてもう1人のCBであるオタメンディは放置

オタメン放置b0917

相手チームで最もビルドアップに難のある選手を敢えてフリーにしておびき出し、カウンターの罠を張るのはモウリーニョの常套手段です。
クラシコ時代にはロナウドにピケを、ベンゼマにブスケスを見させてプジョルに同じような放置プレーをしていたのを思い出しますね。

なのでシティはオタメンディがボールを持ち運ぶところからビルドアップをスタートさせる事が多く、
ここからモウの張る4×4の守備網シティの2列目間受けカルテットという構図が見られました。

実際の試合からその攻防を確認していきましょう

モウ4141-0917-1

局面はボールをユナイテッド陣地まで運んだオタメンディから間受けを狙うノリートへ


モウ4141-0917-2
すかさず中央圧縮で対抗!

閉められたノリートはワンタッチでオタメンディに返すと、その隙に今度はシルバが「間」を伺う


モウ4141-0917-3
連続した中央閉鎖!

ここではルーニーのプレスバックまで加えて前後左右で囲みこむのがミソ


モウ4141-0917-4

3枚で包囲して狙い通りボール奪取成功


ペップ「ならば0トップ発動だ」

バイリー迎撃0917-1

局面は1トップのナチョを落として間受けを狙うシティ



バイリー迎撃0917-2
モウ「CBで迎撃だ、行け」

どこのSラモスだYO!

メッシの0トップを抑える為にCBのゾーンを広げてSラモスを迎撃に向かわせたあの戦術。

な~んかこのへんの攻防、一時期のクラシコを思い出してオラわくわくすっぞ!


ちなみにこの新戦力のバイリー。
ビジャレアル時代から密かに目を付けてたんですが、個人的には今季モウの下でワールドクラスの仲間入りをするのではないかと期待している逸材です。

確かにまだまだ荒削りなんですが1対1は無敵だし、スピードが半端じゃないんでカバーリングのエリアも広大。
第二のカルバーリョ、Sラモス候補生として要チェキですよ。



さて、モウリーニョに中央を閉鎖されたペップ。
しかしここまではある意味両者織り込み済み

ペップも中央一辺倒だった当時と違い、今は「中がダメなら外」という柔軟性があります。


対角スライド0917-1

4×4ブロックの難しさは横68Mをボールサイドにスライドさせながら4枚で守らなければいけない事。
特に中央のボランチ2枚はサイドを変えられる度に30M以上の横スライドを強いられます。

ペップはそこを突いてボールサイドにユナイテッドがスライドし切ったタイミングでノリートから逆サイドのスターリングへサイドチェンジ




対角スライド0917-2
フェライニ&ポグバは顔色一つ変えず鬼の横スライド!


それならば、という事でスターリングから一旦ボールを下げて・・・



対角スライド0917-3

4×4ブロックのもう一つの泣き所はブロック前にアンカーを置かれるとケアが難しい事

ここでもルーニーのプレスバックが間に合う前にフェルナンジーニョが再び逆サイドへの対角パス



対角スライド0917-4
これ去年までバイエルンで見た事ある!


このように試合は序盤から両指揮官の狙いが明確にピッチで見て取れ、明らかに普段のダービー・・・というかプレミアとは異質の攻防が繰り広げられていました。


<質的優位を作り出せなかったユナイテッド>

ではここで、この試合におけるモウリーニョの狙いを考えてみましょう。
繰り返すようですがモウリーニョのサッカーとはは各ポジションにスペシャリストを配置し、その質的優位を活かして相手を殴り続けるものです。

とすればこの日のスタメンからその狙いは明確。

4×4の中央圧縮から特にセンターエリアでのフィジカルの強さを活かしてボールを強奪⇒サイドに展開してリンガードorムヒタリアンが個で突破⇒中央のイブラ⇒落としてルーニー

非情にシンプルですがその為の駒が各ポジションに配置されている合理性こそ彼の真骨頂

しかし、前半は2つのポジションで不確定要素が発生していました。
不確定要素とは「選手のパフォーマンス」です

モウ「今日はゲームの性質上、我々の個人技で相手にダメージを与えられると考えていたが、彼らは私の欲していたものを与えてくれなかった。前半のうちに2、3人の選手が明らかにプレーできていなかったんだ。ただ、これはフットボールだ。選手は監督を失望させもするし、大きなサプライズを与えてくれたりもする」

試合後モウ本人が語っている通り、前半は奪ったボールを両サイドに展開するもそこでリンガード、ムヒタリアンがことごとくボールをロストしていました。

シティの切り替えの速さも特筆すべきものでしたが、それも含めて個の質で凌駕する算段がモウにはあったはず。
しかし不確定要素により質的優位が確保されなかった事で前半は一方的なシティペースに。

ただ、その時間帯に元々の配置で「質的優位」を確保しておかなかったポジションから失点が生まれたのは必然だったのか偶然だったのか-


この日のユナイテッドのスタメンを見た時に唯一、違和感のあるポジション配置があると思ったのは私だけでしょうか?

モウリ-ニョサッカーの心臓部とも言えるCB+2ボランチの4枚で囲む四角いエリア。

ポグバ、フェライーニのボランチ・・・うん、これぞモウ

新戦力バイリーのフィジカル・・・こういうCB必ずいるよね

CBブリント・・・あれ?本職ボランチの選手が何故ここに?


そう、ここだけ異質なんですよねー。
過去ここにはテリーとかペペとか屈強マンが配置されてきたと思うんですが。

恐らくモウの狙いはブリントの左足からのロングィードでイブラへタテポン1発を攻撃面で確保したかったのだと思いますが
本職ボランチのCBは良くも悪くも「リスクよりもリターン」を見てプレーを選択しがちなんですよね。

シティの先制点の場面ではブリントの軽い対応が失点に直結してしまいましたが
ああいうフィフティーボールの処理でまずはリスク回避と割り切ってドーンとタッチラインに蹴り出せるのが本職CBで
最後までマイボールにしてつなごうかという選択肢を持ってしまいがちな故怪しい対応になってしまうのが日本代表の吉田らにも通じるボランチからの転向組です。

攻撃面での質的優位を取って起用したものの失点場面では守備面でのマイナスが出てしまった恰好。


<『11対10の戦い』数的優位を活かすシティ>
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一方ペップのチームは局面局面で数的優位を上手く作り出して相手の守備を丁寧に剥がしていく攻撃に持ち味があります。
メッシの0トップも元々は中盤で数的優位を作り出すのがその目的でした。

ではペップがシティで作り出す数的優位は何か-

それはGKを本格的にフィールドプレイヤーとして活用するビルドアップです。
シティは攻撃時、積極的にGKのブラボも活用してビルドアップを行っていました。

【シティのGKを活用するビルドアップ配置図】
マンCGKつなぎ0917

シティのビルドアップに対し、ユナイテッドはルーニーがアンカーを見て両SH+イブラと4枚で4枚を見る4対4の構図に見えてシティはブラボも活用するので実は5対4の数的優位を作られてます。

その上、シティはユナイテッドの4バックを前線のワイドかCFが前残りになってピン止め。
その隙にシルバ、ノリート、ナチョらが入れ替わり立ち代り中盤の低い位置まで降りてくるのでユナイテッドのCBはそこまで深追い出来ないし、ルーニーら前線からすると背後から降りてくる技巧派達までケア出来ません。

ちょっと実際の試合からシティのGKを活用したビルドアップの場面を確認してみましょう。

【シティのGKを活用したビルドアップ】
GKつなぎ0917-1

局面はGKブラボからビルドアップを始める場面での両チームの配置
4対4に見えて5対4という構図ですね。

注目すべきはCBのストーンズがアンカーポジションに入ってアンカーのフェルナンジーニョがCBに降りてきているポジションチェンジ。
このカタチは過去バルサでもバイエルンでも見せなかったペップの新機軸です。

単にストーンズとフェルナンをケアしてきたモウへの対応なのか、実際にこのポジションチェンジ自体がこの試合で戦術的に何か大きな機能を果たしていたかと言うと必ずしもそうではないのですが、もしかしたらシーズンが進むにつれて何か新たしい発展系があるのかもしれません。


GKつなぎ0917-2

ブラボからフェルナンジーニョに展開されるとボールサイドでは画面には映っていませんがSBのコラロフがワイドで中途半端な位置を取っているのでムヒタリアンは思い切ってボールにアプローチ出来ません。

このボールサイドの局面だけ見るとユナイテッドは1対2で、シティから見ると2対1の数的優位を作り出せているのが分かります。


GKつなぎ0917-3

ムヒタリアンがボールに行けない隙を狙って今度はノリートとシルバがフェライーニの脇まで落ちてきます。
フェライーニからするとここでも1対2の数的不利を強いられていて思い切った守備が出来ません。


GKつなぎ0917-4

引いてボールを受けたノリートにSBのバレンシアが食いつくと今度は大外のコラロフへ

シティはビルドアップの始点でGKが作った数的優位を段階的にズラして活用し、ノーリスクで相手のアタッキングサードまでボールを運べてしまえるという訳ですね。
(実際に試合ではこの後方からのビルドアップで2点目を取っています)

つまり11対10(実質はイブラが守備でノー戦力なので9・5かな?ww)の構図こそが圧倒的シティペースで終わった前半の肝だったと見ます。


<モウリーニョの勝てるところで勝負する>

結局前半はお互いミスから1点を取り合い、その後シティが数的優位を活かして追加点、2-1で折り返す事に。

モウリーニョからすると苦戦の原因はハッキリしています。
自分達の質的優位が両サイドで確保できていない事、そしてGKから剥がされる相手のビルドアップです。

という事で選手のパフォーマンスが悪ければパーツ交換で対応。
ムヒタリアンとリンガードを下げてラッシュフォードとエレーラを投入します。

まずは両翼をラッシュフォードとルーニーに変えて両ワイドで質的優位を確保しました。
試合では入ってすぐのラッシュフォードが個人技でアドバンテージを握ると右サイドではクロッサーと化したルーニーがベッカムさながらの高精度クロスでイブラの空中戦を活かし始めます。

相手のビルドアップに対しては布陣を4-1-4-1にして前線を「3-1」から「4-1」の5枚にした事で
パスコースを消しながらGKブラボにもプレスをかけに行く守備に変更。
これでブラボから余裕を持ったビルドアップが出来なくなり、あわやGKでボールを奪われそうなシーンまで。

そして後半キックオフのいかにもモウリーニョらしいデザインプレーも秀逸でした。


【後半キックオフのデザインプレー】
後半キックオフ0917-1

局面は後半、今夏からのルール変更を利用してキックフからのボールをCBのブリントまで下げると
フェライーニとルーニーが右サイドでGO!


後半キックオフ0917-2

相手のSBとフェライーニをロングボールで競らせて落としたボールをサイドでルーニーが拾い⇒イブラへ高精度クロス

これで後半スタートのワンプレーで同点にしたろ!と狙っていたモウリーニョの完璧にデザインされたキックオフ。

前半は先制点を失うキッカケとなったブリントでしたが後半のキック&ラッシュ戦法ではロングボールの精度で大いに貢献していました。

後半のユナイテッドはこれを徹底的に繰り返し、まさに「勝てるポイントで殴り続ける」モウリーニョの真骨頂とも言える展開に。


又、↑の場面で注目したいのはフェライーニにシティのSBが競りに出た際、アンカーのフェルナンジーニョがDFラインに入って中を固めている点

まあ、アンカーポジションの鉄則とも言える動きですが、ただ実際にもしこれでクロスが上がってきた場合、
中でイブラと競るのがフェルナンジーニョではかなり不安があるなぁ・・・と思った矢先


後半動き0917-1

シティベンチでコーチと何やら話し込んでいるペップ

からの~


後半動き0917-2
3分後にはもうフェルナンド用意しとる!


これでアンカーにフェルナンドを入れてユナイテッドのキック&ラッシュにも空中戦で対抗出来るように高さを確保・・・っていう意図は分かるんだけどこのベンチワークの早さは尋常じゃない!








これは本当にプレミアリーグの試合なのか・・・!?
IMG_7655.jpg



試合は後半、イブラ、フェライニ、ポグバに放り込んで凶悪なキック&ラッシュ戦法になった事でボールが落ち着かなくなるとペップもサネを投入してデブライネを1トップに。

前半の間受け&ワイドでポゼッションしようぜチームから完全に奪ったボールをカウンターで仕上げる編成にチェンジして逃げ切る、らしくない(?)試合巧者ぶりをペップが発揮してシティが快勝。


恐らくあと2ケ月遅かったら両チームの仕上がりもだいぶ違って全く別の内容になっていたと思うだけに
個人的には少々早すぎる巡り合わせとなった今回のマンチェスターダービー。

次回のダービーではプレミアの地からサッカー史を動かすような名試合を期待したい。









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香川&本田と心中か?日本のとるべき道は ~日本×タイ~

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<香川&本田と心中か?日本のとるべき道は ~日本×タイ~

前回の黒星でこの試合に負けて連敗スタートとなれば「指揮官解任」もまことしやかに噂されていたハリルJAPAN。

プレッシャーのかかる第2戦は何とか「勝ち点3」という結果を持ち帰る事に成功しました。
これで一旦解任派も鞘を収める事となりましたが、タイに勝った程度で収めるぐらいの刀ならもう少し慎重に出すタイミングを考えてくれとも思う次第。
(ザック時代ならこの内容でタイに2-0とか逆に解任騒動になってたレベル)

果たして日本代表は前回の試合と比べて成長が見られたでしょうか?

答えはNOです。
それも当然、UAE戦から1週間もない準備期間にチームの根本的な改善はモウリーニョでも不可能でしょう。


では何が違ったのか?

実も蓋も無い言い方をすれば日本が変わったのではなく「相手」が違ったというだけの話。

結論から言うとタイはUAEに比べて1ランク(2~3ランク?)は落ちる相手でした。
日本に対するスカウティングも甘く、カウンターは遅いしフィジカルも日本に圧倒されている始末。
得意のパスのつなぎも日本のプレスをかいくぐる程の技術はなく90分でシュートらしいシュートが1本だけ(西川がセーブ)では実力の差は歴然としていました。


ただ、それだと話があまりに大雑把でレビューも終わってしまいますので、
今回はハリルが行ったマイナーチェンジと依然燻り続ける日本の課題から今後の行く末も占っていきましょう。


<幅と深さを求めて>

両チームのスタメンはこちら

taisutamen.jpg

UAE戦からの変更点は「展開力」の大島に代えて広い守備範囲とボールに強く当たれる守備力が売りの山口をボランチに、
SHは中に入って来る動きからの崩しと足元の技術に定評のある清武に代えてワイドでタテに突破する推進力の原口を。
1トップは背後へ飛び出すスピードで目下売り出し中の若手浅野をスタメンに抜擢してきました。

指揮官からすると1週間に満たない準備期間でチームの何かを動かすとしたら駒を変えるぐらいしか手がありません。
それだけにハリルが求めた「中盤は展開力よりもまずは守備力を」
そして攻撃は「幅(原口)」「深さ(浅野)」を加えてもっとシンプルにピッチを広く使いたいという狙いが明確です。


さて、ハリルが施したこのマイナーチェンジでチームはどう変わったでしょうか?




<ボールの狩人により中盤の奪取力向上>
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まずは守備面から。

ここはもう試合をご覧になった方なら一目瞭然だったように
日本の敵陣で失った瞬間の切り替えと前からの守備においてボランチの位置でボールを刈り取れる力は大島だった時と比べて段違いに上がっていました。

では実際の試合から日本のボール狩りを観てみましょう。


【日本のボール狩り】
守備改善0910-1

局面は右から左へ攻める日本のサイド攻撃。
SBの酒井から裏へ抜ける本田へ



守備改善0910-2

本田はスピードが無いのでアッサリDFに身体入れられて先にボールを奪われてしまいます。
しかし日本にとって(ハリルにって)重要なのはここから。
奪われたボールをなるべく高い位置で奪い返す事で、カウンターリスクを二次攻撃のチャンスへと変えるのがこのチームの狙いです。


守備改善0910-3

すぐにボール周辺の日本の選手が切り換えた事でタイの最初のパスをタテではなく横パスにする事に成功



守備改善0910-4

日本はこの横パスを囲んでファーストディフェンスの網を作っていますが、
重要なのはSBの酒井が上がったまま、高い位置で守備をしている裏のスペースです。

このスペースをカバーするのがボランチの役目で山口は持ち前の機動力を活かしてこのスペースをすでに埋めています。

そして狙い通り広いサイドへのパスコースを切られたタイは同サイドでのタテパスを選択するしかなく・・・



守備改善0910-5
山口「シャー!コラー!!」

ガツンと行ったーーー!!

ここで身体を当ててボールを刈り取れるのが山口の魅力ですね。
この守備力で前回のW杯でも大会直前に遠藤からレギュラーを奪っています。
まさに弱者のサッカー寄りにチームバランスを調整するなら打ってつけの駒と言えるでしょう。



守備改善0910-6

敵陣のこの高い位置で奪えれば即ショートカウンターのチャンスになります。

ボールは再び本田から浅野を経由したワンツーで



守備改善0910-7

本田がボールを奪われてから僅か6秒後にはシュートチャンスになるというのがこの守備の強みですね。


・・・ただ、大島を山口に代えただけで日本の守備の構造的な欠陥が全て解決されるほどサッカーは甘くはありません。
ある意味「特攻」で勢い良く出て前で狩れてる時はいいですが、奪われたボールを一発で裏に蹴られると日本の脆さが一気に顔を出します。



【中盤を飛ばされた場合】

カウンター2CB0910-1

局面は山口からバイタルの本田にボールを入れる瞬間ですが、この時の日本の配置に注目。

両SBを高い位置に上げてボランチが並列。そう、UAE戦と同じ並びですね。
中盤~前線の厚みを攻守に活かしたいというサッカーなのでそれはそれでいいんですが、
常にボールのラインより後ろにはCBの2枚しかいないというリスクも同時に内包しています。


カウンター2CB0910-2

だからここで失って、タイに中盤を越えたタテパスを裏に蹴られると・・・






カウンター2CB0910-3
はい出た!このパターン!

鈍足2バックでこの広大な裏のスペースをカバーしなければいけない恐怖の時間がやってきました。
定番なのはこっからタテに加速されて森重振り切られる⇒カバーに向かう吉田が切り返し一発ですっ転ばされる・・・っていうトラウマ画だな



カウンター2CB0910-4

・・・・が、UAEと違ってタイのカウンターにスピードはなくFWもマブフートのような個の突破力がないので
ここで一旦攻撃方向に背を向けてキープの姿勢を取ってくれました。(正直、助かった)




カウンター2CB0910-5
で、その間に全員帰陣・・・と。

でもこれタイの速攻だからこうなっただけで現象としてはこれまでの失点パターンと何ら変わらない事象が起きている訳ですよ。
まあ、チームの構造に手を付けられてないので当たり前といえば当たり前なんですが、このままだと本大会はおろかアジアでもこの弱点は確実にスカウティングされてるんじゃないかと・・・。





<個人戦術では補いきれない組織的な欠陥>


次に個人ではなく組織的な守備という視点で見た時の欠陥を考えてみましょう。

山口の特攻守備という個人戦術をチームという枠にハメてUAE戦の課題を部分的にごまかしたまでは良かったものの、
周囲の味方と連携する組織守備はまた別物。

それはこの試合、日本が唯一許したタイの決定機の場面で
その原因が物凄くシンプルな守備の連携ミスであったという事が何よりの証左です。


【日本の初歩的な守備連携ミス】
森重ピンチ0910-1

局面はタイのスローインを森重が中盤まで出てインターセプト
このプレー自体は読みからの良い飛び出しで何ら問題なし



森重ピンチ0910-2

・・・が、コントロールが大きくなって失ってしまう、と。
これも技術的なミスなんでまあ仕方ないと。
(少なくとも戦術的なミスではないという意味で)




森重ピンチ0910-3
問題はココですよ。

CBがDFラインから飛び出してチャレンジしてるのに、それに対する周囲のカバーリングが一切なく全員そのままのポジショニングで自分のマークを見てるだけなんです。

いやいや、守備の優先順位考えたらCBがいるべきスペースって最も失点に直結するスペースじゃないですか。
普通、SBが絞るかボランチが1枚降りてきて埋めるでしょう。

イタリアじゃ多分小学生の試合でもこれぐらい自然と出来ますって。

でもさー・・・どう見てもコレ空いてるんだよね(国際Aマッチで)

急いで戻ろうとしてる森重の姿が何とも滑稽で哀愁を誘います・・・OTL


森重ピンチ0910-4
アッーーーー!!!

「西川ナイスセーブ!」とか言ってる場合じゃないですよ本当にww

これが個人戦術ではごまかしきれない「組織戦術」のマズさです。





<輝けない香川と原口の推進力>
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守備面では山口に「出来る事だけやらせる」という起用で狙いがある程度ハマった今回の抜擢。
しかし当然そこにはメリットだけでなくデメリットもあります。

ボランチにタテパスが期待出来る大島がいなくなり山口&長谷部の組み合わせになった事で
ビルドアップで後ろからのタテパスがほとんど中盤に入らない状態となりました。

CB、ボランチからのパスルートは外へ外へ。UAE戦と違いSBが攻撃の起点を担います。
これで一気に存在価値が半減したのがトップ下の香川。

以前から言ってきているように香川を活かすには「タテパスの入れられるボランチ&CB(ようはフンメルスと牛丼)」が必要不可欠だからですね。

この編成だと攻撃時、香川がどうなるかと言うと・・・


【輝けない香川のプレーを検証】
香川降りてくる0910-1

もうボランチに期待出来ないもんだからCBが持ったところでボランチの位置まで降りてきちゃう



香川降りてくる0910-2

・・・で、ここでボール受けても誰か寄って来てくれて新たな展開が生まれるとか特に無いんで
CBから受けたパスをもう片方のCBにバックパスで返すだけのお仕事です・・・で終了(爆)

え・・・?香川のこの仕事、意味ある?


よし、じゃあ今度はサイドに流れて受けてみよう!↓

香川外0910-1

サイドに流れて足元でボール受けて・・・



香川外0910-2

DFから離れるように後ろへ後ろへとカニドリブル・・・



香川外0910-3

そして最後はお決まりのバックパス・・・終了。


じゃあコレ、原口だと何が違うのか?
一連のプレーで比較してみましょう。

【原口のサイド受け】
原口仕掛け0910-1

CBからSBを飛ばして原口がパスを受けるシーン。
もうパスを受ける前の姿勢が香川と違って前に向いているんですよね


原口仕掛け0910-2

で、ファーストタッチでタイのSHを置き去りにしてすぐSBに仕掛けていける、と。
こうなると守る側としてはSBが向かわざるを得なくなって、出て行ったSBの背後にスペースが生まれます。



原口仕掛け0910-3

香川とのワンツー突破で・・・



原口仕掛け0910-4

タイの守備ブロックを完全に突破!これが裏を取れる攻撃です。


そして原口にはこの突破力があるのでディフェンス側の対応も当然変わってきます。
この応用編がコチラ↓

【SB裏にFWが流れるパターン】
浅野SB裏0910-1

局面は左サイドでSBの酒井高徳が持っているところ。
原口がパスを受ける素振りで降りて行くと前を向かれてはタテに突破されてしまうのでSBが背後から食いつき気味の守備



浅野SB裏0910-2

SBが出て行った事で空いた背後のスペースにFWの浅野が流れる。
このようにスペースがある状態でヨーイドン!をさせたら浅野は・・・




浅野SB裏0910-3
テンテンテンテッテテッテッテテッテ~♪(マリオカートでスター取った時のBGM)

浅野無双や・・・こうなってはもう誰も追い付けん・・・。

で、中への折り返しを本田ーーー!!ってお前も外すんかーい!www

△「何で外したのか良く分からん・・・」



要するにこれが幅と深さを活かした「背後の取り方」です。
単純な外⇒外クロスと何が違うかと言うと一度SBの背後を取っているって事ですね。

最近の欧州サッカーのトレンドでも
ワイドにタテの突破力を置いておく事で守備側のSBを引きずり出す

つり出したSB裏をボランチポジションからSBがインナーラップ

CBが釣り出される

中の守備が弱体化した状態で相手CFとクロス対応を迫られる



この流れで得点を量産したのがバルサ時代は「中攻めの鬼」だったペップ・グアルディオラのバイエルンでした。

【ペップバイエルンの外攻め⇒SBインナーラップ】
バイエルンインナーラップ0910

最終ラインのボアテング、アロンソ、キミッヒらから大外のWG(ロッベン、コスタ)に向かって対角のサイドチェンジ、
相手SBとSHが対応したところでボランチポジションからSB(ラーム、アラバ)がインナーラップをかけて中で待つレバンドとミュラーに折り返すだけ

これだけで守る側はレバンド+ミュラーという得点力の鬼に対応するのが逆サイドから絞ってきたSB(だいたい小さいヤツ)か中盤からプレスバックしてきたボランチ(守備時の視野確保が本職DFじゃないから甘い)になる訳ですから効果は絶大です。


話しが少し横道に反れましたが、日本もアジアだったら外⇒外の単純なクロスでもある程度点は取れると思います。
ですが世界相手にCB2枚が待ってましたの状態で単純に上げても跳ね返されるだけのモイーズサッカーになっちゃいますよ。

やっぱりSBのバージョンアップというか、もう「タッチラインを上下動してクロスを上げるお仕事です」っていう
古臭いSB観を日本も捨てていかないと原口のようなワイドアタッカーも活かしきれないと思うんですよね。

これからの時代はSBにこそボランチ的な感性を持つ選手が必要で「SBがゲームを作れるチーム」なら今のところアジアでは無双出来るはず。


勘違いしてほしくないのですが、別に僕はこの試合から原口の方が香川より優れている、とは思っていないんですよね。

SHにワイドアタッカーを置く場合、現状日本の場合はSBと仕事がかぶるのでこういう事にもなりがちですし↓

【左サイドで渋滞を引き起こす原口&SB】
左サイド渋滞

要は香川も原口も一長一短で、どっちが輝くかはチームの枠組み次第である、と。





<香川&本田と心中か?日本の取るべき道は>
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じゃあ、本田と香川を活かすカタチって一体なんなのよ?という話になりますよね。
ではこの試合で見られた数少ない2人を活かす攻撃というのも検証してみましょう。


【日本の中央突破】
理想の崩し0910-1

局面は左から右へ攻める後半の攻撃。
この試合数少ないグラウンダーで質の高いタテパスがボランチ(山口)から本田へ



理想の崩し0910-2
そう本田が今受けているこのスペース!!

原口は相手守備ブロックの外で輝く駒ですが、本田と香川はブロックの中でこそ。
相手SHとボランチの間、もっと言うならCBとSBを結んだ四角形のちょうど中間・・・いわゆるバイタルでの間受けですね。

本田はこのタテパスをワンタッチフリックで香川へ



理想の崩し0910-4

バイタルで前を向いた状態でパスを受けられた香川。
現代サッカーでは攻撃側がバイタルで前を向けたら「王手飛車取り」の状態です。

香川はダイアゴナルに裏へ抜ける原口へのスルーパスを出すもよし、原口が空けたスペースへドリブルでナナメに持ち出してシュートするも良し、理想を言えばここに大外から入って来るJアルバ・・・ならぬSBがいれば更に香川の選択肢も増えた事でしょう。
(結果は原口へのスルーパスを選択し、原口のシュートはGKがセーブ)


この中攻めを成功させる為には本田と香川が受けるバイタルのスペースを少しでも広げておく必要があるので
ワイドと裏に圧力のある駒をおかないと「どうせ最後はここに入れてくるんでしょ」って感じで相手にも割り切って絞られちゃいます。

この絞られた状態でも意地になって(判断なく)バイタルにタテパスを打ち込んでいたのがUAE戦の日本でした。


勿論、スペースを広げてもそこにタテパスを入れられるボランチがいなければ同じように無意味なので
じゃあ大島を使うか⇒UAE戦に戻るの無限ループ。

ハリルだって本当は山口の守備力と大島の展開力を併せ持つボランチを使いたいはずなんです。
(ザック「それな」 アギーレ「ほんまそれ」 岡田「アンカー置くしかないっしょ」)

でも日本の選手層だと何かを取ったら何かを捨てなきゃいけないんですよね。
確かにこの試合の香川、本田のプレーは完全にチームから乖離してましたが、それはそういう設計にチーム構成がなっていたからという部分も大きいんじゃないでしょうか。


現代サッカーの最先端では守備時と攻撃時の選手配置、距離感を緻密に設計して
局面に応じて可変させつつ、お互いの攻め筋をぶつけ合っている名人将棋の時代。
一方で日本代表のポジショニング一つとっても何とアバウトな事か。

【日本の意図と意味が感じられない攻撃時の配置】
全員足元0910
ちょっと油断してると↑こんな感じですからね(笑)

TV解説がしきりに「今日は良い距離感で戦えてますね!」と言っていましたが、
こんな外⇒外一辺倒のモイーズサッカーの「どこがだよ!」とツッコまずにはいられませんでした(笑)


近年のトレンドを見れば「何か」を捨てて「何か」を取っているチームの脆弱性は明らかです。
ウインガーを切り捨ててポゼ専用の駒を集めたスペインの時代は長くは続きませんでした。


本田と香川に心中覚悟でチームの命運を託すのか?


それとも2人をバッサリ切り捨てるのか?


いずれにせよ、日本は限られた戦力の中で「外攻め」も「中崩し」も「守備のバランス」も両立出来るバランスを見出さなければ勝機はありません。

ハリルには少なくともこの難解なパズルの取っ掛かりぐらいは、最終予選で見つけ出す事が望まれる-








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「脱・自分達のサッカー」ハリルJAPAN前途多難の船出~日本×UAE~

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<「脱・自分達のサッカー」ハリルJAPAN前途多難の船出~日本×UAE~>

ロシアに向けて黒星発進となったW杯アジア最終予選。
1年半振りに対戦するUAE相手にまるでアジアCUPのリプレーを見るような内容で不覚をとったハリルJAPAN。

ちなみにこのブログで日本代表を取り上げるのはそのアジア杯以来なので
就任から1年半で見えてきたハリルのサッカーとその可能性もこの試合から見極めていきたいと思います。

まずそもそもハリル就任までに到った流れをざっと振り返ってみましょう。
日本サッカーの方向性は常に4年スパン、W杯敗退の反省からスタートします。

前回は2010南アW杯でひたすら亀のように守るだけだった戦いぶりから
「自分達で主導権を握るサッカーへの転換」をザックへリクエストしたものの、
肝心の本大会で「自分達のサッカー」が崩れるとプランBを持たないチームはなす術なく敗退。

そこで次に協会が打ち立てたのが今更「相手を見てサッカーをする」だったのは笑うしかないですが、
とにもかくにもアギーレ、ハリルの選出は世界に出た時に「耐久力のある弱者のサッカー」への転換がその大筋となります。

合言葉は「脱・自分達のサッカー」



今回のマッチレビューを読んでいただく前に前回対戦時のレビューをおさらい⇒していただくとより深く理解出来ると思いますのでオススメです!


<スタメンとスタイルのアンマッチ?>
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日本のスタメンです。
ザックリ言うと基本、ザックJAPANと同じです(爆)

ザックJAPANに欠けていたピース、言い換えれば国内組で埋めていたポジションは3つ。

吉田の相棒となるCBは国内に守れるCBはいないとの判断からビルドアップ力を重視して今野、
ボランチの1枚は国内組では飛び抜けた実力を持つ遠藤
(但しアジアでは無双出来ても世界ではインテンシティ不足を曝け出して本大会直前にスーパーサブ降格)、
そして1トップは当初前田でスタートしたものの柿谷、大迫と最後まで適任者を見つけ出す事が出来ず・・・といった按配でした。

ハリルはその1トップに岡崎をスライドさせて清武をスタメンに、
CBはザック同様展開力を買って森重を、遠藤の後継者としては似たタイプの大島を抜擢。

ハリルがこの試合に選んだスタメンを見れば、日本人であればそこで展開されるサッカーはおおよそ見当がつくでしょう。
左SHに宇佐美や武藤ではなく清武を選び、ボランチが大島という事であればここに香川、本田が加わってのポゼッションを軸とした紛れもない「強者のサッカー」です。

中盤の守備はある程度長谷部1人で自陣バイタルエリアをケアしてもらい、
スペースを埋めるのではなくボールを失わない事で守備のリスクを担保する、要するにザックが進めていた路線の踏襲。


あれ・・・?

「脱・自分達のサッカー」はどこいった?(笑)



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<求む世界基準のボランチ>

現状、日本の戦力で最も手薄になっているのがボランチです。
言うまでも無くここ2大会(およそ8年)を長谷部&遠藤で固定してきたツケですが
ハリルが長谷部の相棒に求めているのは展開力と攻撃をタテに加速させる「タテパスの出せるボランチ」なのは間違いありません。

長谷部はその広い守備範囲と攻守において「ここだけは絶対に譲れない」という場所を嗅ぎ分ける経験値で
現在の代表に欠かせない存在ではありますが反面、攻撃をタテに加速させる推進力は持っていません。
ハリルが理想とする「タテに速いサッカー」を実現するにはここのピースにその為の駒が必要なのです。

これまで柏木、柴崎、果ては原口までが試されてきましたがどれも指揮官を納得させる答えにはなっていない様子。
そこで白羽の矢が立ったのが現在Jで好調を維持し、先日のリオ五輪でも活躍した大島でした。


実際に試合では序盤かなり固さも見られましたが、狭いスペースやDFを背負っていても苦も無くボールを要求し
最終ラインと本田、香川らの2列目をつなぐタテパスを供給していました。

但しハリルが要求するレベルから観ると攻守におけるインテンシティ不足は明らか。

ハリル「もう少し期待はしていた。(大島は)けがをした柏木(陽介)と競争していて、若い選手を決断した。
スピードアップのところ、前へのパスでもう少し期待していた。ただ、彼もできる限りのことはやってくれたと思う
彼も日本のフットボールのイメージを体現している。まだまだ、伸ばすべきところもある。」

世界のサッカーは今、ボランチで攻撃を加速させています。
あそこで簡単にボールを下げるボランチは生存競争に生き残っていけない時代になってきました。
つまり攻撃におけるインテンシティの要求がますます高まってきている・・・というトレンドをハリルは日本にも同様に求めているに過ぎません。

しかしJリーグのサッカーは中盤を「ボールの落ち着かせどころ」としている試合がまだまだ多いように見受けられます。
勇気を持ったターンで前を向くべき場面で簡単にボールを下げてしまう。

この試合でもそういう場面はハリルがベンチから出てきて攻撃方向を指し「タテだ!タテ!」という風に怒鳴りつけていた姿が印象的でした。
ただハリル自身が言うようにこれが「日本のフットボールのイメージを体現している」プレーなのです。

確かにPKを与えてしまった大島のプレーは彼の若さが出てしまった一場面ですが、
と同時にあの守備こそが日本サッカーの未熟さを体現しているとも言えます。
(3対1でボールホールダーを囲みながら全員が「どうぞ、どうぞ」状態)

国内で生産されるボランチの最高峰の完成品が遠藤というのが象徴的でしょう。
その遠藤を起用する為に岡田監督は10番の同時起用を諦めて後ろにアンカーを配置し、
ザックは本大会直前にスーパーサブへと降格させています。

これは「Jリーグでは世界が求める攻守のインテンシティを兼ね備えたボランチは作れない」という一つの事実を示しています。

今後、大島の伸びしろに期待するも良し、柏木、柴崎らに戻すも良しですが
2年後の本大会を考えるのではれば海外に移籍し、レギュラーを確保しているボランチの確保は絶対条件ではないでしょうか。


<弱者によるタテに速いサッカー>

ハリルのように攻撃に「タテの速さ」を求めるのは現代サッカーの一つのトレンド(流派)ではありますが、
特に世界に出たら「弱者」である立場の日本の場合「守備から逆算した攻撃」は生命線になってきます。

どういう事が実際の試合から検証してみましょう。

【タテパスで失った場合】
ビルド⇒失って包囲0902-1

局面はボランチの大島から前線にタテパスが打ち込まれる瞬間です。

日本のビルドアップの狙いはCBとボランチの4枚でUAEのファーストラインを剥がし、
ボランチが前を向いた状態を作ってタテパスというのがその第一段階となります。
(受け手がこの距離感で密集しているのも失った後で利いてくる)




ビルド⇒失って包囲0902-2

このようにボランチからのタテパスで攻撃が始まる場合、仮にこのタテパスを失っても・・・






ビルド⇒失って包囲0902-3

迅速な切り替えが出来れば受け手になるはずだった前線の選手の厚みでまずファーストプレスをかけられるので・・・




ビルド⇒失って包囲0902-4

苦し紛れに出された相手のパスを出し手だったボランチ(大島)が前向きにインターセプトを狙えるという訳ですね。

これで二次攻撃、三次攻撃に繋げていくというのが所謂「弱者による攻撃的サッカー」
トランジション派(ラングニック、クロップ、ロジャーシュミット他)の流れです。

ボールを失わない事を前提とするポゼッション派(ペップ、バルサ)では無理なタテパスは禁物ですが、
失う事を前提としているこちらの流派は「どうせ失うなら前向きに」という割り切りが重要。

どういう事か実際の試合で確認してみましょう。



【横パスで失った場合】
リスク管理0902-1

局面は左から右へ攻める日本の攻撃から。

日本はマイボール時、本田と清武の両SHが中に絞ってくるので両ワイドのスペースはSBが上がって使います。
したがってパスの出所であるボランチの前に1トップ+2列目の3枚+両SBを配置した2-4-4の状態ですね。
(ボランチの背後は2バック状態)




リスク管理0902-2

この状態でもしタテパスではなくボランチからの横パスでボールを失った場合・・・




リスク管理0902-3

2-4-4の「4-4」が一発で置去りにされて後ろから追いかける守備になる為、
もうこれを止めるのは2バックしかいない状態になります。

しかも日本の場合、吉田と森重の両CBにスピードがない為、一発で裏を取られないよう深いポジションをとりがち。
となると自然とボランチとの間にスペースが出来るので必ずこのスペースで相手のカウンターに加速されて
吉田と森重がズルズルと下がるだけの守備になる・・・というのは日本代表の試合ではよく見かける場面かと思います。

ちなみに↑の場面からの流れで取られたファウルから日本は失点。(UAEの1点目)
これが横パスで失った場合のリスクであり、だからこそハリルはあれだけ「タテパス」を強調しているのですね。

今や「タテに速いサッカー」というのは別にハリルの専売特許でも何でもなく
多くの持たざるチームにとって当たり前になりつつある一つのトレンドと言えるでしょう。


日本の問題はアジアだとなまじボールを持ててしまう事+そもそもタテパスを出せるボランチが少ない事で
中途半端なポゼッションサッカーに陥りがちな点。

勿論、中盤から前に人数を投下してポゼッションサッカーをするならするでそれも一つの方法なのですが
それを実現するには背後の広大なスペースをケア出来るCB+GKも深刻な人材難です。
マイボール時2-4-4でリスク管理をするにはマスケラーノ、プジョル級の「個に絶対的な強さ」を持つCBが必要不可欠。
(アンカーが本職のマスケラーノをバルサがCBで起用するのは「アンカーの潰す守備」が最終ラインに必要だから)

↑の場面でも2CBはハーフラインギリギリまでラインを上げてないといけないし(ペップバイエルンは時に2CBも敵陣に入れていた)
森重は手前のトップをマイボール時から捕まえておかないといけないはず。

もしそれが難しいのであれば逆サイドのSBは上げずに3バックを残しておくか、
長谷部をアンカーの役割に固定して2CB+1アンカーのトライアングルを形成するといった具体的なリスクヘッジが必要ではないでしょうか。
(実際の試合ではむしろ大島が残って長谷部が上がっていく場面が多いのは攻守において効果的ではないと思うのだが・・・)






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<ハリルが用意した3つの攻撃カード>

では続いて日本がこの試合、具体的にどういう方法でUAEを崩していくつもりだったのか、手持ちの攻撃カードを検証していきましょう。

まずは基本となる「中央突破」のルートから。

この日のSHは清武と本田ですから受けたいエリアはバイタルでの間受けがメインになります。
つまりトップ下の香川と合わせてかなり狭いエリアに3人が入ってきてその近い距離間のままワンツー、ドリブル、スルーパスで中央を突破したい訳ですね。


【中央突破ルート】
ビルド(CB⇒SH間受け)

場面は日本のビルドアップでCBのタテパスを清武が降りてきて間受けするところ



ビルド2(CB⇒SH間受け)
このタテパスをワンタッチで香川にフリック、と同時に大外を長友・・・ならぬ高徳がオーバラップ。
あ、これ知ってる!ザックJAPANでよく観た形だ!

・・・ハイ、その通り。基本構成のメンバーが変わらないので、こちらの攻め筋は既に持っている日本の武器。


ただ相手もバカじゃないんで、日本の間受けと中央突破ルートは当然真っ先に警戒されます。
そこで第2ルートの「中⇒外SBルート」がその応手。



【中⇒外SBルート】
UAE中絞り

↑の場面ではUAEの守備が香川、清武への前受けを警戒してかなり「中絞り」の守備になっています。
となると今度は大外のSB(酒井)が空くので・・・・



UAE中絞り2

ボランチからシンプルに外のSBを使ってクロス


UAE中絞り3

本田がドンピシャで合わせてこぼれ球を香川ー!って押し込めんのかーい!(笑)

更にこの第2ルートからの派生が第3ルート「対角サイドチェンジ」


【対角サイドチェンジルート】
対角0902-1

日本の細かいパス回しを警戒して相手守備陣がボールサイドに寄せていたら一旦CBまで下げて・・・




対角0902-2

あ、これ知ってる!ボアテング⇒ドウグラスコスタのやつ!



対角0902-3

逆サイドの広いスペースに展開してこの後本田のミドルシュートでフィニッシュ。

ペップバイエルン流ではないですが本当だったらもう一つ深くえぐりたかったものの
逆サイドで受けるSBにしてもSHの本田、清武にしてもタテへの突破力が無いので難しいところ。


まあ、要するに日本が持っている(ハリルが持たせている)攻撃カードとして
「中央」「サイド」「逆サイド」と3つのルートを相手の出方を見て柔軟に
そして素早く決断し、守備に息つく暇も与えないぐらい叩き続けて崩す・・・というのが指揮官の本来の狙いだったのでしょう。



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<ハリルの誤算 相手無きサッカー>

しかしハリルからすると大きな誤算がいくつかありました。

確かに日本の間受け職人を2列目に並べて相手が中を警戒するからこそ外が空き、
外を使うからこそ今度は守備が広がって中が使える・・・という相手を見たサッカーは強者が格下を叩く際の基本です。

しかしパスの出し手からすると香川、本田、清武らのメインキャストの存在感(権力)が大き過ぎて
どうしてもパスの行く先が中央の彼らに集中してしまい「相手を見る」より「上司(リーダー)を見る」サッカーになってしまった事。


そして中央を細かいワンツーで崩すにしても日本の場合、その技量が充分では無かったという事。
この中央突破で一番難しいのはワンツーのリターンをトップスピードで動きながらファーストコントロールでシュートに以降出来る位置にボールを止める受け手の技術です。

メッシのゴールパターンの一つで簡単に中央を割っているように見えますが、
あれはリターンを受けるメッシのファーストコントロールが完璧だからこそ成せる業。

日本の場合はリターンのコントロールでボールを流してしまい、シュートを打つ角度を失ったり、DFにボールを引っ掛けられたりという場面がほとんどで一度もビタッ!と止めてシュートまでいけた場面はありませんでした。


又、この中央突破の形のもう一つの狙いとして実は「DFの目と足を止める」というのがあるんですが、
要は狭い距離感でボールがワンタッチで動く事で相手の守備の意識と視線を釘付けにしておけるという事です。

この隙に大外のSBやFWが背後に抜けると守備側は視野の外なので全くケア出来ない、
いわゆるメッシからDアウベスへのループパスでよく見かけるアレです。

実はコレ、今季のドルトムントがシーズン前半でよく香川⇒SB(ギュンター)で見せてた形なんですが
日本代表だとSBにこの動きが実装されておらずサイドに張ったままなので最後まで中央の3枚に絡む「大外(視野外)の4枚目・5枚目」がいないって事ですね。

【中央崩しからの大外SBパターン(理想)】
アウベスロール0902


ザックはこれが分かっていたので岡崎を2列目(SH)に置いて左の香川、本田、遠藤で細かいパスを回しーの⇒大外からザキオカー!っていう必殺パターンを構築してたんですが。

【ザックJAPANの「左で崩して右から岡崎」】
ザックロール0903


一方、ハリルみたく岡崎を1トップに置いちゃうと一度間受け職人達の戯れが始まっちゃったら岡崎は絡めないから傍観するしかないし
下手に裏に抜けようとしても助走距離がないからオフサイドになっちゃうわで手持ち無沙汰なんですよね。


ハリルも実は清武らのSHには別の動きを期待していたみたいで試合後に
「彼(清武)にはFWとしてのプレーを望んだ。プレースピード、背後(をとる)ランニングを要求したが、少し背中を向けてしまった状態でプレーしてしまっていた。」
と語っていましたがこれは選んだ駒と望むプレーとのミスマッチではないでしょうか。

清武をあそこ(左SH)に置いたらああなるでしょう、というのは多くの日本人ならイメージ出来た事だと思います。


後半の選手交代を見ればハリルの不満がどこにあるかも明確で要は攻撃に「幅」(宇佐美)と「深さ」(浅野)が足りないって事です。

しかし懸案の清武に変えて宇佐美を投入しても尚、日本の攻撃に大きな変化は見られませんでした。




宇佐美0902-1
局面は後半の日本の攻撃から。

左SHに宇佐美を投入した狙いは明らかで
「ワイドに張って幅を作り、尚且つそこから個でタテに突破する力」が欲しかったから。

しかし、宇佐美は不穏な動きを見せてスルスル中へ入って行くと・・・





宇佐美0902-2
宇佐美、お前もか・・・・ _| ̄|○

結局バイタルでクレクレ「間受け職人」かーい!




宇佐美0902-3
ワンツーで中央に当ててミドルシュート・・・ってそうじゃないから!www
(結局、UAEの守備ブロックに当たってカウンター食らう)



要は日本の場合、攻撃の手札を用意しただけでは「いつ、どのカードを出すか」という判断、駆け引きを
相手を見ながら出来ないという事です。


その点、UAEの方がよっぽど相手を見てサッカーをする姿勢に徹していました。

日本にボールは持たせても構わない、ミドルはどうせ飛んでこない、SBからのクロスを跳ね返してカウンター、
吉田と森重の背後に向かってヨーイドンなら3回に2回はチャンスになる。
非情にシンプルですが合理的なサッカーだったと思います。

実際、前回の対戦で吉田と森重の横の連携(特にカバーリング)が怪しいと分かっているUAEはトップの内1枚は必ず2人の間に置いてそこからの裏抜けで簡単にチャンスを作っていました。

【UAEの日本の弱点を突いた裏抜け】
DFライン0902




<必要以上の悲観論は不要>

内容的にはアジアCUPのリプレーを見るような形での敗戦。

両方のゴール前で「点を取る」「点を取らせない」最後の部分が弱いチームなので
負けるとしたら「自分達が外しまくってる内にカウンターで自滅」のこのパターンしかないのは予め分かっていた事。


アジアでも最終予選までくる相手となると10回やったら3回は引き分け、ないしは負けかねないというのが今の日本の実力なので
スタートの1戦で躓いたからと言って必要以上に悲観的になる必要もありません。
(終わってみたら9勝1敗でたまたま1敗が最初に来ただけという可能性すらある)

マスコミはしきりに「出場率0%」などというミニマムなデータを持ち出して不安を煽ってますが
そもそも最終予選とは当たり率6~7割のガチャを10回引くようなもの。何回かはハズレも出ます。

ただ、この当たり率を8~9割にするぐらいの実力がないとW杯本大会で結果を残すのはなかなか難しいでしょう。


現在の日本の戦力を見た時にザック⇒アギーレ⇒ハリルと3人の外国人指揮官がフラットな目で選んで
ほとんどメンバーが変わっていないという事実が層の薄さを物語っています。

「大島の抜擢」を批判されているハリルにしたって「他にチョイス出来る駒がいなかった」というのが本音ではないでしょうか。


日本のガチャの確率を上げたいのであれば本田が言うように
「例えば、毎年100人くらい日本から(海外に)行き、レギュラーも50人いて、そこから誰を選ぶのか」という
選手層にならないと難しいでしょう。

自陣と敵陣のゴール前に弱いのはそのポジションの選手層とイコールだからです。


その国のサッカー国力を上げたければ、その唯一の方法は「育成」であると歴史が教えてくれています。

「デュエル」も「インテンシティ」も「相手を見てサッカーをするインテリジェンス」も
A代表の監督が声を上げるのではなく育成の現場から動かねばならない課題ではないでしょうか。


最終予選の10試合など、育成を土台とするピラミッドのほんの先端での出来事に過ぎないのですから-








*次のタイ戦終了までに「いいね!」が一定数集まったら次回も更新する・・・かも!?(笑)

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ボールを捨ててCUPをとった決勝戦 ~Rマドリー×Aマドリー~

20160529071223e61.jpg
<ボールを捨ててCUPをとった決勝戦 ~Rマドリー×Aマドリー~

CL決勝の激闘からはや1週間-

世間ではやれEUROだコパだキリンカップだ平愛梨だとすでに次の話題に興味は移りつつあるが、
15-16シーズンの総決算であり象徴とも言えるこの試合を語らずして現代サッカーの"今"は見えてこないだろう。

そこで今回はこの決勝戦を時間軸に沿って徹底的に検証する事で
両チームの狙いと勝敗の分れ目、そして来季以降の現代サッカーの未来像まで探っていきたいと思う。

そうさ、僕らにゃフットボールがあるじゃないか!

アモーレ・フットボール!


<革命は「持たざる者」の側から起こる>
CL決勝スタメン0604

両チームとも現状のほぼベストメンバーが顔を揃えたこの試合。

現代サッカーの「格差社会」を象徴する両者が相まみえる事となったが
格差の上に位置するマドリーやバルサは驚くべきほど似通った構成になっているのは面白い。

前線に超ド級のスーパースターを3枚並べて(MSNとBBC)、
2列目のインサイドハーフに確かな技術に加えて気の利いたプレーが出来るボールの運び屋(モドリッチ、クロース、イニエスタ、ラキティッチ)を配置
そしてアンカー(カゼミーロ、ブスケス)で守備のバランスをとらせるという構成だ。

前線の3枚から逆算したチーム作りであるし、彼らにいかに気持ち良くゴール前で仕事をしてもらうかを考えた合理的なバランスになっている。
いわば「選手が戦術」であり、もう少し身も蓋も無い言い方をしてしまえば「スターこそ戦術」なのである。

これに対抗する庶民代表の「持たざる者」側は前回の記事でも取り上げたように
最終ラインは対空兵器、中盤はハードワーカー、サイドに運び屋、最前線にカウンターマスターという
「戦術から逆算した選手配置」になっている。

これが今、「持たざる者」の側から新たな戦術トレンドが生まれる流れの背景といえよう。



<リスクを冒さない攻め筋「戦術BBC」>
o0800053312925873796.jpg

では試合の時系列に沿ってレビューを進めていきたい。


【前半0~15分】

試合の展開を決めるのは当然レアル側に決定権があるが、彼らからすると最も警戒しなければいけないのはアトレチコのカウンターである。
ボールを持っていない時のアトレチコほど警戒が必要だ。
アトレチコの守備は中に絞った4-4-2の3ラインを極限までコンパクトに保ち、中に入ってきたパスをかっさらって鬼のカウンターが発動する。

一時、ペップバルサから発生したポゼッションサッカーの流れは
4-4-2のラインとラインの「間」で受ける「間受け」が威力を発揮して4-4-2を時代遅れの産物へと追いやった・・・はずだった。

しかし攻撃側の戦術が進化すれば必ずその反動で守備戦術の発展があり、
自陣撤退の10人ブロックで「間受け」を迎撃する守備が進化すると「間受け」のリスクは増大。
今季もアトレチコが積極的にライン間を利用するペップバイエルンとバルサを打ち破って決勝まで辿り着いたのは決して偶然ではないだろう。


こういった背景を踏まえて、この試合でジダンが選んだ初手は「外⇒外」のサイド攻撃であった。
相手が中に網を張っているなら外からリスクを負わずに攻めようという魂胆である。

外⇒外0601

具体的にはビルドアップ時、CB⇒SB⇒WGへとつないであとはBBCの個の能力に任せよう・・というもの。
したがってこの時間帯はクロースやモドリッチのボールタッチがほとんどなく、まるで司令塔はマルセロとカルバハルという様相であった。

実際の試合から見てみよう。


【マドリーの外⇒外】
マドリ先制0602-1
局面は左から右へと攻めるレアルのビルドアップの場面。
試合中、ベイルとロナウドは頻繁にポジションを移していたがここではベイルが左に流れてきている。

マドリーの攻め筋は前述の通りCBのペペから⇒SBマルセロを経由してサイドに流れるBBC(ベイル)へ


マドリ先制0602-2
こんなシンプルな攻め筋でも前線の圧倒的な個人能力で何とかなってしまうのが富裕層の攻めともいえる。

したがって守るアトレチコはここでも簡単にベイルに受けさせるわけにはいかず、序盤からかなりタイトに当たっていたが、これがファウルをとられ、このFKからレアルが先制。

ニアでフリックさせる得意の形だったが、レアルとアトレチコは今、欧州で最もセットプレーが強い2チームだと個人的には思っている。
拮抗した戦いになればなるほどセットプレーが勝敗を分ける要因として大きくなっていくものだが、ここまでの勝ち上がりでも両者セットプレーが重要な役割を果たしており、そういう意味でも最後にこの2チームが勝ち残ったのは必然といえる一面はある。


<「4-4-2殺し」のインサイドハーフ落とし>

【前半15~30分】
大方の予想に反して試合は序盤から動いた。

これでシメオネは「待ち」120%の守備から、ある程度自分達からも積極的にボールを奪わなければいけないという動議が出来てしまったと言えるし、
一方のジダンは相手が取りにくるならゴールに向かわないポゼッションでもそれをいなしてやり過ごすのも悪くないという余裕が生まれている。

この両者の機微が試合展開に影響しない訳はない。
レアルは先制後、一転してポゼッションで試合のリズムを落としにかかった。

勿論主役は2人のインサイドハーフ、モドリッチとクロースである。
この2枚を4-4-2の泣き所、2トップの脇まで落としてしまう。

【2トップ脇で起点になるモドリッチ】
2トップ脇0602-1
これをされると4-4-2のアトレチコは対応が難しい。
もしボランチをそこまで出してしまうとブロックの密度が薄れるしSHは外のSBをケアしなければならないからだ。

では実際の試合からレアルがどのようにインサイドハーフを使ってアトレチコのプレスをいなし始めたのかを見ていこう。

【レアルのインサイドハーフ落とし】
2トップ脇0602-2
局面は一度深い位置まで降りてきたモドリッチがフリーでボールを受け逆サイドのマルセロへサドチェンジ


2トップ脇0602-3

マルセロからトーレスの脇まで降りてきたクロースにボール渡るとアトレチコは仕方なくボランチのガビがアプローチ


2トップ脇0602-4
・・・が、インサドハーフのクロースとモドリッチをケアすると今度はアンカーのカゼミーロが空いてしまう。

レアルはフリーのカゼミーロを経由した再び右サイドへ振って揺さぶりをかける


2トップ脇0602-5
勿論アトレチコはその度に横スライドを強いられる訳だが、この隙にモドリッチが「間受け」のポジションを取る。

「横」にスライドしている最中に「縦」の動きでライン間に入るのは人間の視野から言っても最も捕まえづらい動きと言えよう。

アトレチコは逃げるインサイドハーフを捕まえに出ている内に少しづつブロック間にスペースを空けさせられていた。
したがってこの時間帯はボールと主導権を握ったマドリーの時間帯だったと言えるだろう。


<いびつな組織を個のバランスで補うマドリー>
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【前半30~45分】
1点をリードしているレアルは守備時4-1-4-1のブロック形成を意識して序盤からベイルとロナウドの両WGも守備要員に組み込んだ守りをしていた。

しかし前半も30分を過ぎたこの時間帯から2人の守備がかなり怪しくなってくる。
プレスバックが遅れ始め、アトレチコのSBにフリーで攻め上がりを許す場面が増えてきた。

ここでジダンは発想の転換をする。
だったらいっそ「アトレチコにボールを持たせよう」
(この戦術的柔軟性はちょっとアンチェロッティっぽい)

ボールを持たないアトレチコは欧州最強だが、ボールを持たせたら欧州レベルでは並のチームである。

ここから試合はロナウドやベイルといった攻撃のスターを抱えるチームがボールを放棄し、
欧州最強のカウンターチームがボール持たされているという何ともイビツな展開になっていく。

アトレチコのボール運びはぎこちないがレアルの守備ブロックもかなり怪しい代物だ。

こうやってお互いアンマッチな状況に持っていって試合の膠着を狙うジダンの発想はカルチョっぽいとも言えるが
レアルには組織のアンバランスを個で帳尻を合わせるアトレチコにはない力技があったのも計算の内だったのではないか。


一言でいうなら・・・ボールを捨てたらカゼミーロ無双発動である。

【カゼミーロの守備を検証】
カゼミロ0602-1]
局面はアトレチコ陣内でレアルがボールを失った瞬間。
この時、最も警戒しなければいけないのはアトレチコのカウンターである。

カゼミーロはアンカーポジションから飛び出してボールの出所に急行


カゼミロ0602-2
一気に距離を詰めてタテパスのコースを塞ぎ、アトレチコの最初のパスをバックパスにしている。

これでアトレチコのカウンターはなくなった、あとは遅攻にして守るだけ


カゼミロ0602-3
カゼミーロはカウンターの芽を摘むと、すぐに自分の元いたポジションへ戻る
無論、自陣でのブロック守備に備える為だ


カゼミロ0602-4
アトレチコはSBがボールを運ぶと(この時間帯、レアルのWGの守備は全く機能していない)
ここから中へのタテパスのコースはアンカーのカゼミーロが消すセオリー通りの守備

カゼミーロはボールの移動に合わせてポジションを常に修正し、アトレチコのタテパスを消し続けていた


カゼミロ0602-5
タテパスを消して横パスを出させたら、すかさずそこにはアプローチ

ブロック内へのパスコースを消しながら隙あらばインターセプトを狙っている教科書通りのプレー


カゼミロ0602-6
結局アトレチコの遅攻はタテパスが出せずに逆サイドへ迂回。

ここからSBにクロスを上げさせる分にはペペとラモスの最凶コンビが最後は跳ね返しますよ・・・というのがジダンの「せや!ボール持たせたろ」の狙いだったのではないだろうか。

この時間帯、クロースとモドリッチの存在感が消えたら今度はカゼミーロが輝き始めるというのがレアルの強みだろう。




<シメオネの応手は「4-3-3殺し」の4-1-4-1>
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【後半45~60分】
ハーフタイム、シメオネが動いた。スーパーサブのカラスコを投入。
システムを4-4-2から4-1-4-1に変更した狙いは以下の2つだろう。

①アンカー(カゼミーロ)の両脇に出来るスペースを2シャドーで狙う
4141狙い

②WGが守備を放棄しているレアルのサイドでカラスコのドリブル突破を活かす


そして①の狙いについては後半開始早々から早くも効果覿面であった。

【カゼミーロの両脇を狙うアトレチコ】
カゼミロ脇0604-1
局面は左から右へと攻めるアトレチコ。
アンカーのカゼミーロの両脇に2シャドーが明らかに狙って位置している。

そして1アンカーのガビをマドリーは捕まえられない。


カゼミロ脇0604-2
これで何が起きるかと言うとあっさりバイタルに通されてシュートまで持っていかれてしまうって事。

今度はシメオネが個の力でバランスを取っているマドリーの守備を組織で崩してきた。
そしてこの狙いが後半開始1分に功を奏す。


【シメオネの応手】
PK0604-1
局面はマドリー陣内深い位置からのアトレチコのスローインからの流れ
マルセロが奪い返したボールを渡したロナウドのドリブルが大きくなりボールを失う


PK0604-2
ロナウド傍観!

自分が取られたボールだってのに、まるでどこぞの都知事みたいな開き直りっぷりが清々しいゼ・・・!

ま、結果的にはこの守備放棄が響くんだけどね。



PK0604-3
ガビにボールを運ばれるとアンカーのカゼミーロがボールサイドにスライドして対応。

しかしマドリーは守備の出発点で失ったロナウドが戦線離脱しているのでボールホルダーのガビにはクロースが出ていかされている。
という事は元々クロースが見るはずだったシャドーのコケがフリーになっており、カゼミーロは1対2の対応を強いられてしまう事に。


PK0604-4
数的不利ではさすがのカゼミーロも厳しい。

ここを突破されるとレアルのバイタルエリアはスライドしてきたモドリッチ1枚で対応しなければならない。

これはアカンな・・・。

そう確信した瞬間にグリーズマンからモドリッチの股を通すクサビがトーレスに通ってPK獲得。

さすが王子!
これまで45分間消えていたのはこの為の布石だったのか・・!!

このようにシメオネの応手がビタッとハマって得たPKだけにグリーズマンの失敗は痛恨や・・・。OTL


<後半60~75分>
次に2つ目の狙いである「②WGが守備を放棄しているレアルのサイドでカラスコのドリブル突破を活かす」で攻め筋を探すアトレチコ。

だが、こちらの狙いについては思った通り機能しなかった。

何故だろうか?
実際の試合から検証してみよう。

【機能しなかった左サイドのカラスコ】
アトレ左サイド後半1
アトレチコの左SBは幅をとってサイドを上下動する事に長けたFルイス。
この試合でもマドリーのWGが守備をしない隙を狙って完全にボール運びの役割を担っていた。


アトレ左サイド後半2
しかしマドリーのサイドが無人の高速道路と化している事でSBがボールを運ぶと
本来ワイドに張ってドリブル突破を図りたいカラスコが中に入ってスペースを空ける役割になってしまう。

これではドリブラーのカラスコを入れた意味がない。

かと言ってカラスコを無理にワイドに張らすと・・・


アトレ左サイド後半3
今度は左サイドが渋滞してしまう
(同点弾を決める直前で途中投入のカラスコを下げようとシメオネが準備していたのはこの為だろう)


むしろこれなら前半のコケとFルイスのコンビの方が左サイドは機能していた。


【アトレチコの左サイド(前半)】
アトレ左サイド前半1
前半、左SHに入っていたコケは度々中に入り込む動きでSBのカルバハルを引っ張っていた。


アトレ左サイド前半2
こうする事で大外のSB(Fルイス)がフリーでクロスまで上げられるというシンプルな構造が機能していたのだ。


ならば後半のアトレチコの左サイドはどうすればよかったのか?
SHをワイドに張らせたいのではれば原則同ラインにSBがいると攻撃は機能しない。
(言い換えれば守備側が守りやすい状況を自ら作っている事になる)

なのでペップバイエルンにおけるラームやアラバのようのSBがある程度インサイドのポジションから運んでSHに幅を取らせるべきであった。

シメオネはトレードマークの4-4-2の他にオプションとして4-1-4-1の完成度も数年前から高めているが、まだまだ遅攻の部分では未完成に思える。

このアトレチコの攻撃がチグハグしていた時間帯にジダンが動く。
運動量に陰りが見え始めていたクロースに代えてイスコ、サイドの守備を固める為のルーカス・バスケスを投入。
ロナウドをCFにして残りの20分を逃げ切る作戦に出た。


しかしサッカーとは分からないもので、アトレチコが当初狙いとしていた左サイドが機能しない事で右に振ってみたら一発で同点ゴールが生まれてしまった。

ザルセロの軽い守備から裏を取られてクロスを許すとカラスコが逆サイドから飛び込んだ。
当初の狙いとは逆のサイドからではあったがシメオネの4-1-4-1にした狙いは活きたと見る。


【後半75~90分】
同点に追いついたシメオネのこの後の決断が勝負の分れ目となった。

このまま4-1-4-1で逆転を狙うのか、それとも4-4-2に戻して当初の一からのプランに戻すのか-

同点には追いつけたものの、後半4-1-4-1にしてからのアトレチコの守備はかなり危うい場面を作られていた。
ガビの1アンカーではマドリーのカウンターに対する防波堤としては不十分で、むしろマドリーの追加点の方が早いのではないかという流れだったので
シメオネの4-4-2に戻す決断は到って全うなものだったと思う。

試合はラスト15分に到ってようやく4-4-2で守りを固めるアトレチコの守備を
マドリーが技術でこじ開けようとする戦前に予想されていた展開に着地していく。


しかし、マドリーは既に3枚の交代カードを切っており新たな打開策はなく
自陣に10人で4-4-2を敷くアトレチコのブロックは堅牢そのもの。

後半アトレ442
何というシメナチオ!!


試合は膠着したまま90分を終えるのだった。



<敗者なき決着が示す現代サッカーの"今"とは>
img_165f21a4a1127320b7adbf2563508dc2174994.jpg

結果的に30分の延長戦は蛇足に過ぎなかった。
90分の激闘で既に気力、体力を使い果たしていた両チームはリスクを負って勝ちに出られる状態ではなく、サッカーにならなかった。

延長突入の時点で見れば交代枠を残しているシメオネに分があるかと思われたが
途中から入ってきた選手のパフォーマンスを見るにカラスコ以外、このレベルの試合で信頼に足りる手持ちのカードがシメオネには無かったと見る。

公式記録は引き分けであり、PK戦はあくまで決着を決める為の手段でしかないが
この戦力で120分間ドローに持ち込んだシメオネとアトレチコの奮闘は称えられてしかるべきだろう。


さて、この決着が指し示す現代サッカーの"今"とは何だろうか?
120分戦って勝者無し、つまり決着は持ち越されたというのが今季の結論だろうと個人的には思っている。


ジダンやルイスエンリケは戦術的には何ら革新的なものは生み出してはいない。
彼らに言わせれば「選手こそが戦術」であり、攻守のバランスが明らかに偏っていたチームに
カゼミーロというバランサーを置いただけでレアルは蘇った。

ジダンは魔法を使ったわけではなく、欠けていた最低限の約束事と自由を与えたに過ぎないが
レアルのようなクラブに欠けていたのはまさしくそれだったのだ。

ペップバイエルンも最終的には両ワイドからの外攻めを中心にした「選手ありき」の戦術に落ち着いた。
まさかペップのサッカーでゲッツェが干されるような事態になるとは予想外だったが、そういった事が起こるのもまたサッカーの魅力だろう。


数年に渡って優勢だったポゼッションと攻撃サッカーの時代に対する反動から
ここ3年はその年最高のカウンターを持ったチームがCLで勝ち上がっており(BBC⇒MSN⇒BBC)
今季はレスターのプレミアリーグ優勝も含めて「持たざるクラブ」達がその流れに追いついてきたシーズンと言えよう。


多くのクラブで監督のサイクルが一回りした来季、果たして新たな潮流は生まれるのだろうか


ペップ、モウリーニョ、クロップ、コンテらが集うあのリーグが何を見せてくれるだろうか?


ああ・・・もう既に来季が待ち遠しい。




アモーレ・フットボール。








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