ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか~日本×イラク~

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<ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか
~日本×イラク~


「ホタルゥゥゥ~!!」

ドーハの悲劇から23年-
イラク相手に劇的な逆転勝利を収めた日本代表

色々と示唆に富む試合だったので今回はこのイラク戦を検証していきたいと思います。


まずはスタメン




・・・はい、ご存知の通りです(手抜きかよ!)


ポイントは遂に10番香川が外れて代わりに清武がトップ下に入った事でしょうね。

世間ではこれをもって「世代交代」やら「香川限界論」が賑やかですがハリル自身も言っているように
単なるコンディションの比較で起用を決めたに過ぎないのでこれをもって序列が変わったとは言い難いと思います。

ハリル『清武は(所属クラブで)プレー時間が短い現状にあったが、(香川)真司より1日半早く帰国したので、そこのアドバンテージがあった。この時間が、私にとって重要だった』


要は選んだ選手の中で現状のベストを選択した、という事なのでしょう。


<驚きのゲームプランと間延びJAPAN>

さて、まず取り上げたいのがこの試合で日本が選択したゲームプランです。

序盤こそイラクの出だしの勢いをいなす為にシンプルにロングボールを蹴っていたのかと思っていましたが
そのまま前半の45分間を蹴り続けていたのには驚きを通り越して呆れてしまいました。


日本がロングボールを蹴って喜ぶのはむしろイラクの方でしょう。
相手が恐れているのは日本の組織力と技術の高さですが自分達からその武器が最も活きない戦い方を選択し
フィジカル勝負に持ち込みたいイラクの土俵にわざわざ上がっていってしまったのですから。


柏木「(縦に速い攻撃をするのは)チームとして決めていました。ただ、後方からのパスが多くなってしまった」


イラクの監督が序盤から「もっと前から行け!」としきりに叫んでいたのはこの日の日本が前プレをかければ簡単にロングボールを蹴ってくれるからです。



では何故ハリルはこの戦い方を選択したのでしょうか?

これは恐らく初戦の黒星が思った以上に利いている、という事でしょう。
この試合前も負けたら解任という噂がマスコミからしきりに持ち出されていましたが
現在のチームと監督のメンタル状況が「自分達の良さを出して勝ち切る」よりも「負けたくない」「つなぎをロストした時に変なカウンターを受けたくない」という方に流れていったのだと思います。

確かにロングボールを蹴っている以上、自陣で奪われるリスクはなくなります。
その代わり前半の日本はほとんどチャンスらしいチャンスを作れていません。

得点機と言えるのはロングボールのセカンドをたまたま高い位置で拾えた清武のシュートとショートカウンターからの得点シーンの2つぐらい。


原口の得点シーンは彼のプレスバックでボールを奪った瞬間の原口、本田、岡崎、清武の海外組が見せたトランジションの質の高さが光りました。

誰1人足を止めずに4枚がゴールに向かい、その過程で技術的なミスが一つも無かったのがゴールに結び付いておりアジアのレベルを超えた欧州クラスのカウンターだったと思います。
(唯一本田のパスを出すタイミングがやや遅れてオフサイ気味だったけど)


ただ2回の決定機で1点取れたのは結果論(行幸)に過ぎず、マイボールを自ら放棄するような遅攻ならぬ稚攻ばかりが目立っていました。

更にこのタテポンJAPANのデメリットは攻撃だけでなく守備にも及びます。
攻撃がロングボールで終わるという事は失った後の守備陣形が充分でなく全体的に縦に間延びしている状態になるからです。

実際の試合から日本の守備を検証してみましょう。


【間延びした日本の陣形】
間延び1008-3

局面は日本がイラク陣内で失ったボールにすかさずプレスをかけていくところ。

ファーストディフェンスの原口がイラクの攻撃方向を限定し、左サイドに追い込んでいます。
日本はボールを失った左サイドで数的優位を作ってこのサイドから出さずに奪いきりたいところ。

何故なら・・・


間延び1008-2

このプレス網を抜けられるとボランチ脇の空いているバイタルエリアを使われてしまうから

つまりボールサイドに人数を割いてこの弱点となるエリアを「使わせなければ」日本の勝ち。
プレス網を抜けられてしまうと日本の負けという守備ですね。

ただお互いがロングボール中心の蹴り合いの展開になっている関係で日本の陣形がやや間延びしているのが気になります。
イラクにここからロングボールを蹴らせると・・・



間延び1008-4

吉田が背後を気にして更に深さを取るのでイラクのFWをボランチの長谷部が下がって受け取る形に。

結果的に柏木の矢印がボールサイドに向かって前向きに、長谷部が後ろ向きになっているのでボランチ同士の距離も離れて
このロングボールを跳ね返したセカンドを拾うエリアに赤丸で囲ったイラクの2ボランチしか人がいない状態になっています。



間延び1008-5

本来であれば吉田がボールサイドのCB(森重)の高さに合わせてイラクの2トップをCBが見て長谷部にセカンドを拾わせる並びにしたかったところ。




間延び1008-7

ほらね、この間延びした陣形だとイラクのボランチにセカンド拾われちゃうでしょ?



間延び1008-6

で、空いたバイタルを使われてミドルシュート・・・と。


更にこの試合でも特にハリルが「デュエル!デュエル!」を強調していただけあって、
チャレンジ&カバーが怪しい戦術レベルの選手達が間延びした陣形の中で中途半端にボールにだけは強く行く意識を持っているもんだから性質の悪い話に。


【日本の特攻デュエル】
ディアゴナ1008-1

局面は日本陣内での守備の切り替え。失ったボールに対してすぐに柏木と原口が寄せてイラクにバックパスをさせると・・・



ディアゴナ1008-2
問題点①ディアゴナーレが無い

日本の特攻デュエル守備はこの下げられたボールにネコまっしぐらで向かってしまうので簡単に間を通されてしまうんですよね



ディアゴナ1008-3
問題点②バックパスに対する後ろの押し上げが甘い

せっかく相手にバックパスをさせたのだから吉田らの最終ラインを機敏に押し上げれば
ボランチの長谷部はもう一つ前で守備が出来て全体がコンパクトになったはず



ディアゴナ1008-4

さりとて特攻デュエルの結果は間を通され・・・・




ディアゴナ1008-5

逆サイドに展開されてスライドを強いられるしんどい展開。


結局マイボールは蹴り合ってしまうわ、守備は特攻だわで試合運びに全く安定感がありません。




<稚拙だったゲーム運びと選手起用>
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日本は僥倖の先制点を取った事であとはホームチームが試合を落ち着かせて焦って出てきたイラクの隙を付けばいいだけという理想的な状況が出来上がっていました。

にも関わらず「縦に早く(失う)」サッカーでみすみすイラクにチャンスを与え続けるのです。


【日本の稚拙なゲーム運び】
リスク1008-1

局面は酒井ゴートクが中盤でインターセプトを成功させたところですが試合のスコアと時間帯に注目。

1-0リードで前半ロスタイム。
やる事はこのスコアのままハーフタイムを迎えるだけです。

しかしゴートクはこのボールを中盤にパスで預けると・・・



リスク1008-2

いやーこの状況でSBがリスクを負って出て行って攻撃をタテに加速させる必要あるか?

しかも清武へのパスもズレていてボール状況も微妙⇒と思ったらやっぱり失ってイラクにタテポンされる




リスク1008-3

SBが上がっているので当然最終ラインは3枚+1ボラの不安定な状態

でも原口が機転を利かせてゴートクが上がったスペースをカバーしていた。ナイス判断。




リスク1008-4

でもやっぱり原口は守備が専門の選手じゃないからここでもボールに食いついちゃうんだよねー

(頼む、ここではもう相手の攻撃を遅らせるだけでいんだ。それで前半終わるから・・・)



リスク1008-5

あわや前半ロスタイムに追いつかれてハーフタイムでしたよ。


↑の場面はイラクの(アジアの)決定力に助けられて事なきを得ましたが
こういう稚拙なゲーム運びのA級ミスは世界相手だと確実に手痛いしっぺ返しを食らう事はザックJAPAN時代にも散々証明されています。


まあ、こんな感じなんで当然後半もバタバタとした展開を繰り返し、
ロングボールが増える⇒セカンドボールを巡る身体のぶつけ合いが増える⇒フィジカルで不利な日本のファウルが増える
の三段論法でいらないファウルからFKで同点弾。当然の帰結ですね。


そもそもこれだけ間延びした中盤でボールを狩ろうと思ったら断然柏木より山口蛍なんですが
投入が「少し遅れた」(ハリル)せいで日本の中盤が持ち堪えられずに失点してしまいました。

そのせいで1-1に追いつかれてから攻撃の舵取り役を下げて守備の選手を入れるというチグハグな交代に。


では今予選、初登場となった柏木には何が期待されての起用だったのでしょうか?
勿論ビルドアップの際の配球ですよね。

【日本のビルドアップ時の配置】
日本ビルド布陣1008

日本はイラクが自陣でブロックを作った時の遅攻の場合、両SBを上げて柏木がCB近くに落ち、配球役を担います。

序盤からこの形で両サイド目がけた対角パスをしきりに狙っていましたが
柏木のふんわりサイドチェンジは精度が悪く、しかも両サイドで受けるのがSBのW酒井では縦への突破はあまり望めません。

そもそも柏木が浦和で担っている攻撃の役割は外⇒外のサイドチェンジというよりは
バイタルへのタテパスやグラウンダーのパス回しが出来る距離感でのワンタッチフリックなど短いレンジのパスと崩しの連続性ではないでしょうか?

タテポンメインの間延びしたサッカーで長いボールでサイドを変えさせる役目として柏木という抜擢は選手起用のチグハグさを感じずにはいられません。



<"本田の時代は終わった"のか?>
honda10032.jpg

巷ではこのイラク戦を受けて清武、原口の躍動と本田、香川の限界説⇒『世代交代待望論』が根強いですが果たして本当にそうでしょうか?


その要因について考える上で続いて日本の攻撃を検証していきたいと思います。


この試合での日本の攻め筋はとにかく徹底して外⇒外で中への打ち込みは皆無といってよい状態でした。
何故なら中に打ち込んでロストした場合のカウンターが怖いから。



【ハリルJAPANの外⇒外】
間受け出さない1008-1

局面は左から右へ攻める日本のビルドアップ。本田が上手く相手ボランチの脇に入り込んで間受けを狙う得意の形。

SBの酒井が高い位置を取っているのと背後のDFの関係を首を振って確認しているので、間違いなく本田のビジョンには今⇒で書かれている中⇒外ルートとDFの寄せが甘ければ前を向いて裏へのスルーパスor清武とのワンツー等が頭に描かれているはず



間受け出さない1008-2

クルッと身体の向きを変えて逆サイドを見るベーハセ

え・・・?出さないの??

清武も出せって手を使って指示してるし本田も「マジかよ!?」みたいなリアクション




間受け出さない1008-3

あーCBに下げて逆サイへの対角にしちゃったよ・・・⇒吉田の40Mサイドチェンジは精度が低くて直接タッチラインを割る

これでマイボールがみすみすイラクのスローインから再開ですか。
まあ、確かにカウンターは受けずに済んだけどね!


続いてもう一つ


間受け1008-1

こちらもCB森重がフリーで運んでいるタイミングで本田が中、酒井が外の連動
イラクの左SBに対して2対1を作っているので今タテパスを打ち込まれるとイラクはアプローチ出来ない

よし!グランダーのタテパスだ!フンメルス!



間受け1008-2

え?ここでも外⇒外なの!?ビビってるの?



間受け出さない1008-4
何すか?この腰の引けたチキンサッカーは?

あの状況からGKへのバックパスって嘘でしょ?

これで「機能しない本田」とか本気ですか?


いや、確かに左サイドはこの外⇒外でもいいと思いますよ。左SHが原口だから。


【左サイドの外⇒外】
左原口1008-1

CB⇒CB⇒SB⇒SHというお手本のような外⇒外ルート




左原口1008-2

原口得意のファーストタッチでタテに外して・・・




左原口1008-3

そのままスピードに乗って仕掛けて大外の逆サイでは本田がゴール前へ
この形なら本田もセカンドトップとして機能するし左サイドの攻め筋は配置した駒と合致していたと思います。


実際、後半1-1に追いつかれて逃げ切りを図るイラクが5-4-1の守備に移行してからは
日本の攻め筋はこの左サイドの外⇒外しかなく実質「戦術原口」のような状態になっていました。


でもこの原口の単騎突破はアジアでは通用しても世界では確実に潰される事は分かっているはずなんですよ。
外を有効に使いたいなら一度中に打ち込んで相手の守備ブロックを絞らせる必要があるし、
中を使う為に外、外を使うための中を上手く使い分けていかないと戦術的に整備された守備ブロックなんて絶対崩しきれませんから。


だから本田を置いている右サイドはこういう崩しが必要だったんです↓


【本田を活かす右サイドの攻め筋】
右本田崩し1008-1

局面は右から左へ攻める日本のビルドアップから
SBの酒井が幅を取ってイラクのSHを外に引きつけた事で出来た中央のパスコースに本田が顔を出す

これが「外」をオトリに使った「中」の崩し


右本田崩し1008-2

この日の両チームの布陣を噛み合わせれば相手2ボランチの背後でトップ下の清武はフリーになれる配置になっていたんですが
外⇒外一辺倒の攻めだとその利点が活きていませんでした。

清武(香川)を活かすならやっぱりこの攻め筋、中⇒中でバイタルに落とし・・・



右本田崩し1008-3

相手の守備がギュッと中に絞ったところでワンツーからサイド突破!
中⇒中⇒外のこのルートこそ最後の「外」のスペースを広くしてあるので決定機につながるし、パスで先手を取っているので本田のスピードの無さは問題になりません。

これが左の原口とは違う右の本田を活かす攻め筋ではないでしょうか。


本田「ここに入れば簡単に崩せるのになという場面の意思統一。そこに関しては本当に改善が必要かなと思います。もっと簡単に崩れると思うんですよね。」




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<ハリルは日本サッカーの時計を20年巻き戻すつもりなのか>


ハリル『今までやってきた美しいつなぎは確かに出せなかったが、今回は強い気持ちと勇気でもぎとった勝利だった。』


試合後のコメントを読む限りハリルもこの試合の日本の戦い方が本来の戦い方とは思っていないフシは伺えます。
徹底したリスクの排除、相手の前プレはタテポンで回避し、ブロックを敷かれればカウンターを恐れて中にタテパスを打ち込む事なく外⇒外からの個人突破一辺倒。

この日の日本代表で最も”勇気”に欠けていたのは指揮官のハリルだったのではないでしょうか。


僕はこのイラク戦を見ながらその昔、といってもたかだが20年前の話ですが日本サッカーにとって「W杯出場」が悲願だった頃のアジア予選を思い出していました。

当時、日本サッカーと世界との距離など誰も正しく認識していなかったので宿敵韓国はドイツ、イランイラクなどはアルゼンチンばりの強敵に見えていた時代が確かにそこにあったのです。
(韓国相手にたかだか1点先制したら慌てて5バックでベタ引きを始めるような時代でした)

とりわけ中東勢のカウンターには繰り返し痛い目を見せられていたので日本の中東コンプレックスは根深く
当時の加茂監督は「中央でパスミスすると中東のカウンターが危険だから中央へのタテパスは禁止。サイドならリスクも低くて済む」と公言し、「中央突破禁止令」を敷いていたほど。

しかし世界のサッカーではまさにその時、バイタルエリアを巡る攻防が本格化し、その為の戦術多様化が始まっていた頃だったので衛星放送で食い入るように最先端のサッカーを見ていた中学生の自分は本気で発狂したくなるようなもどかしさをこの国の代表に感じていたものです。


あれから20年-
ハリルがイラク戦で見せたサッカーはまさにあの頃の日本代表そのものです。

何故今更、中東のカウンターにビビって腰の引けた日本代表など見せられなければならないのでしょうか?

イラクに逆転勝ちしたぐらいで精根尽き果てたようなフラフラの指揮官の姿を見ると不安になります。
モウリーニョだったら「君たちは今予選のレギュレーションを今一度よく確認した方が良いのではないか?10試合のリーグ戦で1勝1敗1分のスタートだったとしても突破には何ら問題は無い。だが今日は途中出場の選手が期待に応えてくれたお陰で更に良い状況になったね。それについては非常に満足しているよ(ウインク)」ぐらいケロっと言ってくれたはず。


采配面でもかなりグラついてきた感は否めません。

最後たまたま山口が逆転ゴールを決めた事で帳消しのようになっていますが同点の状況から勝ち点3を目指すカードとして
山口投入はロスタイムまで攻撃面での貢献度は低く、むしろチームの攻撃力を下げる交代になっていた点は見逃すべきではないでしょう。

そのロスタイム弾にしても結局外⇒外の戦術原口をイラクに見透かされて膠着していた状況に業を煮やした選手達が自発的に吉田のパワープレーを決断した副産物。

最後、打つ手が無くなったら結局「吉田のパワープレー頼みかよ」という状況は2014W杯時から何ら手持ちのカードが増えていない事も意味しています。


ゲームプランと選手起用のミスマッチも気になるところ。

外⇒外の攻め筋でいくなら右SHはそれこそ斎藤学で良かったのではないでしょうか。
逆にこの配置で行くなら当然右と左の攻め筋はそれぞれ異なるものにカスタマイズする必要があったのにも関わらずそこが徹底出来ていないせいで右(本田)が機能しない状況を自分達で作り出してしまいました。


最後に。

サポーターが目の前の勝敗に一喜一憂するのはいいですが指揮官がアジア予選ごときの勝敗でチームのスタイルをブラしているようでは世界では絶対に勝てないと断言出来ます。

サッカーでは37本シュートを打ったのに勝てない時もあれば、こんな内容の試合でもロスタイムにシュートが入って勝ててしまう時もあるのです。

「中東の笛」でゴールが取り消されれば「極東の笛」でオフサイドが見逃されもする。


だからこそ最終予選は10試合総当りで戦う事でそういった不確定要素が是正され、最終的にはチームの総合力が順位に反映されるフォーマットになっているのです。

一番危険なのはそういった内容の分析もなく目先の結果に引きずられて自らのスタイルをコロコロ変えてしまう事。


勝ち点3を取れたのだからこのスタイルで今後も行きますか?


今一度冷静になりましょう。


本日の閉めはそんな今の日本サッカー界にピッタリな明言を










『サッカーではリスクを冒さない選択こそが最もリスクの大きい選択となる-』










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ジダンはいてもマケレレ不在? ~ドルトムント×Rマドリー~

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<ジダンはいてもマケレレ不在? ~ドルトムント×Rマドリー~

今回は「何か毎年やってんなお前ら」という顔合わせになったドルトムント×Rマドリーのカードをレビューしていきたいと思います。
ジダンの真価が問われる2年目のマドリーと昨年途中で路線変更したトゥヘルのサッカーが今季どうなっていくのかに注目してみましょう。

では両チームのスタメンから↓
レアルドルスタメン0930

今季のレアルは大型補強無し。
なんだかタレントの質はゴテゴテ派手だけど戦力の厚みが物足りない、いつぞやの銀河系みたいな戦力バランスになってきたマドリー。
これも一つのクラブ哲学なのか。

しかし気が付けば「代えの利かない駒」になっていたカゼミーロが離脱して以降、目下成績は下降気味。
マケレレがいなくなると勝てなくなるのも過去の歴史が証明しています。

ジダンはカゼミーロがいる時はアンカーを置いた4-3-3がメインでしたがこの試合ではアンカーの適任者がいないという事でモドリッチとクロースの2ボランチで急場を凌ごうという算段か。

ハメスロドリゲスには現役時代の自分同様ある程度の自由を与えて前線はもちろんBBC。
中盤より前が全員攻撃に持ち味を発揮する駒という布陣はジダンの哲学というよりは現状のイビツなメンバー編成の表れと見るべきでしょう。


一方のドルトムントは4-1-4-1。
今季のチームは司令塔ギュンドアンが抜けたものの新戦力の補強もあり中盤の厚みが増しています。

特に2列目は復帰したゲッツェ、昨季よりトゥヘルの信頼も厚い万能型カストロ、開幕からブレイク中のドリブラーデンベレ、実力は間違い無しのシュールレ、「秘密兵器」として途方もないポテンシャルを感じさせる天才プリシッチ、誰なんだお前はエムレ・モル、そして我らが香川という多種多様な顔ぶれ。

この中からその日のコンディション、対戦相手、ゲームプランを考慮してトゥヘルがベストの組み合わせを送り出す激しいレギュラー争いはチームとしてはプラスですが香川からするとかなり苦しい立場に追い込まれています。
レアル相手に攻撃3:守備7のゲームプランが予想されるこの試合で香川がベンチ外というのはある意味順当な結果でしょう。





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<ディアゴナーレの喪失>

試合の展開を決める権限は主にレアル側のジダンにある訳ですが
ジダンのサッカー観は極めてオーソドックスで何か戦術的に仕掛ける引き出しはなく
良く言えば「自由」、悪く言えば「選手次第」の代物です。

実際の試合では序盤こそドルトムントのビルドアップに対して前から行く姿勢を見せていましたが
トゥヘル指揮下でポゼッションも強化しているドルトムントがGKを使ってレアルの中途半端な前プレをいなすと
ジダンは無理に深追いする事なくアッサリと自陣でのリトリート守備を選択。

伝家の宝刀カウンターを持っているレアルがリトリートを選択するのは悪手ではないですが
問題はこの日のメンバーでブロックを敷いた際、どういう事が起きるかというところです。


【両チームの噛み合わせとレアルの戦術的な問題】
レアルシステム0930

まず最前線ではドルトムントの2CBに対してベンゼマが1対2の数的不利の状態からスタートします。
ハメスはふわっと「ヴァイグルを見とけ」ぐらいは言われていたのかもしれませんが攻撃時に自由にポジションを取っている為、油断すると外しているレベルの曖昧なマンマーク。

ジダンとすれば4-4-1-1で守りたかったのかもしれませんが両ワイドのベイルとロナウドは守備時全然絞ってこないので実際は4-2で守る事になります。

しかも2ボランチのモドリッチ、クロースも守備時のチャレンジ&カバーでディアゴナーレのポジショニングが取れないので2人の間を通すパスがバイタルに入れ放題の惨状。

では実際の試合からレアルの守備組織を検証していきましょう。


【ロナウド、ベイルの絞らない両ワイド】
ボラ脇0930-1

局面は左から右へ攻めるドルトムントの攻撃を自陣で守るレアルの図

ボールが自陣まで運ばれているにも関わらずロナウド、ベイルの両SHは全く中央に絞る素振りも見せていないのでボランチの両脇はガラガラです。



ボラ脇0930-2]

従って序盤からこのスペースでドルのSHに自由にボールを受けられる場面が頻出



ボラ脇0930-3

ドリブラーのデンベレに前を向いて仕掛けるスペースを与えてからボランチのモドリッチに1対1で止めて来いと言われても・・・




ボラ脇0930-4

アッサリはずされてシュートまで持ち込まれています


続いては自陣でブロックを敷く守備を検証

【マドリーのブロック形成】
レアルブロック守備0930-1
局面はマドリーが自陣で4-4-2の3ラインらしきブロックを形成してる守備の場面

ファーストラインはベンゼマとハメスの2枚ですが2人が並列なので中央の「門」をドルのCBに簡単に通されてアンカーのヴァイグルへ



レアルブロック守備0930-2

ヴァイグルにノープレッシャーでボールを運ばれて・・・




レアルブロック守備0930-3

引いてきたゲッツェに簡単にバイタルで前を向かれてしまってます。


これだけタテパスがポンポン入る原因は守備時のチャレンジ&カバーでカバー役の選手がいわゆるディアゴナーレ(ナナメ後ろのポジション)を取れていないからです。
一言でいえばジダンのレアルには「ディアゴナーレ」の文化が喪失しています。


【ディアゴナーレの喪失】
SBディゴナ0930-1

↑通常このようにボランチのモドリッチがボールにチャレンジしたら隣のSBカルバハルはナナメ後ろのポジションを取ってカバーに入らないといけません




SBディゴナ0930-2

何故ならこのように2人同時に前に出て「チャレンジ&チャレンジ」になってしまうと2人の間をタテパスで簡単に通されてしまうからですね



SBディゴナ0930-3
アッーーーー!!!


ディアゴナーレの最も基本的な関係はダブルボランチのペアが分かりやすいでしょう。
1人がボールにチャレンジしたらもう片方はカバーに入ってバイタルにタテパスを入れさせないという基本的なグループ戦術ですね。

ではモドリッチとクロースの2ボランチの守備を実際の試合から見てみましょう。


【モドリッチ&クロースの守備】
Sラモス迎撃0930-1
清々しいほどにど真ん中空いてるんだよね・・・

モドリッチとクロースのペアは守備時、お互いの動きとか一切見ていないから単体で動いてるし、簡単に並列になっちゃうんで



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Sラモス迎撃0930-2
ラモス『誰がガバガバだって・・・?』







Sラモス迎撃0930-3
出たー!対メッシ封じでお馴染みの迎撃インターセプト!




普通、そっからCBが出てきて間に合っちゃうのかよ・・・!!










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そうなんですよねー。
ジダンマドリーの守備は前がどんだけガバガバでも結局最後のところでSラモスとヴァランの個人能力で何とかしてしまうから凶悪なんですよ。


ただ、この2バックに全投げ守備はかなりリスキーな代物。
それはもうCBの迎撃が失敗したら即アウトっていう綱渡りの守備を90分やるんかい、っていう事なんで↓


【迎撃守備が失敗した場合】
迎撃失敗0930-1

ここでもロナウドが全く絞ってこないからボランチ脇のバイタルはCBのSラモスがカバーするしかない



迎撃失敗0930-2

しかしカストロにそれを見越されてワンタッチでラモスの背後に流される・・・と。

まあ、CBがボランチも兼任してるようなイビツなシステムが現代サッカーで通用するはずが無いですよね。





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<マドリーに欠けていたビタミン"C">

要はベンチにジダンはいるけどピッチにマケレレがいないぞ、って事なんです。

勿論今のマドリーに欠けているのはビタミン"C"(asemiro)で、カゼミーロがいる場合の守備と比較するとそれは鮮明になってきます。


【比較検証:カゼミーロがアンカーにいる守備ブロック】
カゼミロ0930-1

こちらは今季のリーガエスパニョーラ第2節のマドリーから。カゼミーロがアンカーにいる守備を見ていきましょう。

今、まさにバイタルにタテパスが打ち込まれようとしている場面です。



カゼミロ0930-2

カゼミーロはバイタルをケアする意識が高いので真っ先にカバーに向かいます。
寄せられた相手は一旦パスでボールを逃がすしかありません。



カゼミロ0930-3

カゼミーロは続けてボールに対し常に中央へのコースを消すポジションを取るので相手からするとタテパスが出せません




カゼミロ0930-4

するとこのように相手の攻撃ルートが外へ、外へ流れていく訳ですね。
この守備だとSラモスの迎撃の出番が少なくて済むので一部の変態からは物足りないかもしれませんが(笑)



続いてカゼミーロのディアゴナーレを検証。

カゼミロディアゴナーレ0930-1

局面はボールに対しモドリッチがアプローチする時のカゼミーロの動きが重要になる場面





カゼミロディアゴナーレ0930-2
これがディアゴナーレの基本

1人が出たら1人がカバー
このポジショニングをとられると守備に角度が付いてタテパスが入れられなくなります。

実際にこの場面でも横パスを選択させていますね





カゼミロディアゴナーレ0930-3

どうですか?ドルトムント戦と比較して明らかにCBの出番少なくないですか?
相手の攻撃がタテではなく横に横にと誘導されてるのがよく分かりますよね。


だから問題はカゼミーロがいない事・・・では無い


この基本的な守備をチームに仕込めないジダンの手腕が問題なんです。
アッレグリだったらピルロが抜けようがポグバが抜けようが「3センターに求める動き」自体は変わらないので
必ず時間をかけて戦術的な動きは仕上げてくるはずなんですよ。

勿論、その上でボールを奪い切る守備力だったりとか足の速さの問題で守備範囲とかは誤差が出てくると思いますが
現在のマドリーのように「3ラインが作れない」「ディアゴナーレが喪失している」「カゼミーロがいないと即崩壊」みたいな事にはならないと断言出来ます。




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<ドルトムントの組織的なボール狩り>

一方のドルトムントですがクロップ仕込みのGプレスをトゥヘルが少しマイルドにしてはいますが
一度チームに染み付いた「ボール狩り」は健在です。


Gプレス◎0930-1

ドルトムントの守備の特徴・・・というか、そこから派生したインテンシティ強化の流れで現在はどのチームでもベーシックに装備されているものですが、ボールを奪われた瞬間にその肝があります。

↑の場面はゲッツェからデンベレへのタテパスが奪われる瞬間ですが、ここからボール狩りが始まります





Gプレス◎0930-2

まずはパスを出した張本人のゲッツェがすぐに切り替えてファーストプレス







Gプレス◎0930-3

クロースの進路を横にして時間を稼いでいる間に前線からのプレスバックで一気に包囲網を作ります





Gプレス◎0930-4

クロースはたまらずロナウドへバックパス
ボールは奪いきれなくてもタテパスを出させていないところが重要です
(ヴァイグルがタテパスのコースを切っている)





Gプレス◎0930-6

ロナウドの進路も横にしてドリブルさせるとセカンドディフェンスとしてヴァイグルがボールにアプローチ
ここも横パスにさせるとサードディフェンスとしてゲレイロがGO!

ボールを失ってから相手の攻撃進路を全て横パス、バックパスにさせているのでドルトムントの守備が前向きの矢印でアプローチ出来ているのが分かるかと思います。

このように守っている方が攻撃的に、攻めている(ボールを持っている)方が守備的にならざるを得ない状況に持って行くのが現代サッカーの守備で、ハリルが広義に「デュエルが足りない」と言っているのも、そもそもの守備文化が違うという意味も含まれているのではないかと。





Gプレス◎0930-7

ゲレイロの前向きのアプローチによってパスコースが限定されているので後ろのDFが確信を持ってインターセプトを狙える状況




Gプレス◎0930-8

受け手が少しでも時間をかけたら一気にプレスバックで包囲!


どうです?守備の質量、つまりインテンシティがジダンのマドリーとは段違いだと思いませんか?



と・こ・ろ・が

これで先に失点するのがドルトムント、というのがフットボールの面白いところでね。


【マドリーの先制点を検証】
Gプレ剥がす先制0930-1

局面はドルトムントのクロスが跳ね返されてマドリー陣内深くでこぼれ球を拾われる瞬間。
ドルトムントはすぐに切り替えてこのボールにアプローチしたのでマドリーはバックパスを選択





Gプレ剥がす先制0930-2

下げられたボールをドルのセカンドアプローチより早くモドリッチが得意のアウトサイドキックで前線へ





Gプレ剥がす先制0930-3

正確なパスがベンゼマへ届くとドルはCBとSBが2枚がかりでアプローチ

ここで奪いきれないと・・・・







Gプレ剥がす先制0930-4
一気に数的不利の大ピンチ!

前に人数をかけている分、剥がされると後ろが薄いというリスクがこの守備にはあります。
それにしてもドルのプレスを丁寧に剥がしていく過程でマドリーに技術的なミスが1つも無いのは脅威的ですね。
これがタレントを揃えているチームの強みでしょう




Gプレ剥がす先制0930-5

得点の流れを振り返ると自陣からモドリッチ⇒ベンゼマ⇒クロース⇒ハメス⇒ベイル⇒ロナウドとつないでゴール。

中盤より前に配置した銀河系が仕事をして生まれた得点を見れば守備のマイナス面と相殺して強引にプラスに持って行くのがこのマドリーというチームの勝ちパターンである事が分かる事でしょう。


結局試合はこの後お互いにセットプレーから1点づつを取り合って2-1、マドリーの1点リードで終盤へ




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<トゥヘルは香川を必要としていないのか?>

トゥヘルのドルトムントはボールを失った瞬間のボール狩りと、それで取りきれなかった場合のリトリートを上手く使い分けて安定感のあるチームに仕上げていました。

勿論、先制点の場面のようにパーフェクトな個の技術で連続して剥がされたら厳しいですが、そういうチームは世界でもそうそういないのでブンデスでは安定した成績が出せるはずです。
マドリーと違ってロナウドやハメスがいない事がドルトムントの強みと言えるでしょう。


となると現在のドルトムントで求められている一定水準の守備力・・・特に守備戦術の理解力において香川がレギュラー争いで苦戦しているのは先のW杯で日本代表を見ていた我々には合点がいく事でもあります。

この試合でも中盤で最も守備の穴になっていたゲッツェが後半真っ先に下げられていたのは象徴的でもありました。


ただ一方で攻撃面ではドルトムントに決め手がなく試合が膠着しています。
現在のゲッツェは以前のような間受けのキレがなくブロックの外まで降りてきてボールをはたいた後の「次の仕事」にとりかかれない香川と同じ症状を発症中。

唯一変化をつけられるのはデンベレのドリブルぐらいですが、まだまだ荒削りでおしいところまではいくものの決定的な仕事に結び付きません。


特に試合を見ていてもどかしかったのはこういうシーンです↓

間受け出来ない0930-1

そう、カゼミーロがいないこの日のレアルならバイタルにパスは入れ放題なんですよ!




間受け出来ない0930-2

いやーそっちにトラップしちゃうかー!

身体の向きとファーストタッチがねー、でもカストロはその仕事が本職じゃないし他で色々頑張ってるからなー・・・



こういうザル守備が相手の時こそ・・・・












kagawashinji20160229-thumb-500x344-120200.jpg
日本が誇る"間受け職人"がいたら面白くないですか?


実際、香川がこの分厚い選手層の中でレギュラー争いに食い込むとしたら苦手な守備の改善ではなく
得意の「間受け」で全盛期のキレを取り戻し、トゥヘルに有無を言わせないパフォーマンスで示すしかないと思うんですよね。

だってこのチーム、明らかに中央で変化を付けられる選手が不足してるもの。




そんな事は当然分かっとるわ!と言わんばかりにトゥヘルも1点ビハインドで迎えた後半70分過ぎに
シュールレとプリシッチというサイドアタッカーを一挙の投入。外⇒外でマドリーのザルディフェンスを揺さぶりに来ました。

この狙いがピタリと的中したドルトムントの同点ゴールを見ていきましょう。


【ドルトムントの同点ゴール】
ドル2点目0930-1

局面は右から左へ攻めるドルトムント。
早速サイドのプリシッチに振ると対応するのはダニーロ




ドル2点目0930-2

不用意に飛び込んだダニーロをファーストタッチで中に外すプリシッチ。
(才能を感じさせる18歳や!)






ドル2点目0930-3

中に外された上に転倒して置いていかれるダニーロ
(マドリディスタ「抜かれるにしてもせめて中を切って外に行かせろや!」)






ドル2点目0930-4

とは言え中はまだ2対2
カルバハルが大外シュールレの存在を首を振って認識していれば守り切れるはず・・・・






ドル2点目0930-5
ボールに釣られてしまったかーー!!







ドル2点目0930-6
やっぱこうなるよね


トゥヘルからすれば交代で入れたプリシッチの突破⇒クロスからこれまた交代で入れた大外のシュールレが決めるというしてやったりの勝ち点1

お見事。






pcimage.jpg
<足し算で作るチームの限界>

どちらかと言うと勝ちに等しいドローだったドルトムント。
前線の層の薄さはオーバメヤンが怪我したらどうするの?とは思うが面白そうな若手もいるのでまたブレイクさせてあのクラブに強奪されていく事でしょう。
(これがブンデスの食物連鎖)

香川、ゲッツェというブンデス屈指の「間受け職人」がいながら、両者が全盛期のキレを完全に失っているせいで中央の攻撃ルートが死んでいるのは勿体無い限りですがロイスの復帰とこの2人の復活があれば赤い巨人を食うポテンシャルはあると見ます。



一方、ジダンの限界・・・というか予想通りの展開になっているのがレアル。

勿論カゼミーロが復帰すればある程度チームのパフォーマンスは安定するでしょうが
未だに「マケレレショック」の二の舞をジダンを監督に据えてこのクラブは繰り返しているのか・・・というのが本音のところ。

世界中から超一流のパーツを買い漁って、それぞれの長所と短所を補完関係で埋め合わせる足し算のチームは
素材の総和以上の力は絶対に生み出せない上に1つでもパーツが欠けると戦術でカバーが利かない脆さが同居しています。

アッレグリやコンテのように素材ではなく「調理」でチームを一定のレベルに保てる料理人か
ペップやビエルサのように足し算ではなく「かけ算」の選手起用で新たな化学反応を引き起こす哲学者を指揮官に据えない限り、
「カゼミーロ欠乏症」は何度でも繰り返されるだろう。








*「先週インテル褒めたら早速逆フラグ発動してんぞ!」と思ったポジティブなマドリディスタは下のボタンをクリック!

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ユーベの3センターを崩壊させたインテルの王様 ~インテル×ユベントス~

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<ユーベの3センターを崩壊させたインテルの王様 ~インテル×ユベントス~

今週は久方ぶりのセリエAをマッチレビューします。
カードはイタリアデルビー。

Fデブールを招聘したインテルがなかなか面白いサッカーをしていたのと
単勝オッズ1.0倍の絶対王者ユベントスの躓きの原因を検証していきたいと思います。

両チームのスタメンはコチラ↓
インテルユーベ0922

まずはインテル。
昨年まで「とりあえず筋肉集めてみました」みたいだった中盤に待望の司令塔バネガが加入。
これでチームにDFと前線をつなぐ1本の筋が通りました。
更にEUROのポルトガル代表で評価を高めていたマリオをスポルティングから獲得と何だか今季の補強には明確な「意図」を感じるぞ!

それもそのはずベンチにはアヤックス復活で評価を高めた「今が旬」やり手のFデブールが座っています。


迎え撃つは「セリエAのナリタブライン、ディープインパクト」
今季も既に連覇は確定とも思える凶悪な補強を敢行。

手薄だった「黄金の3バックの控え」にはセリエAでの実績も充分のベナティアを、
そしてスクデット争いの対抗馬ナポリから絶対的エースのイグアンとローマの司令塔ピアニッチを強奪。
ライバル達の戦力を削り自軍の戦力を上げるバイエルンさながらの補強で国内での地盤を固めてきました。

今季はこれまでチームの看板だった3センターからポグバが抜けマルキージオが離脱中。
ポグバの位置には急ごしらえでアサモアを当てがってますが問題なのはアンカーポジション。
これまでエルナネス、レミアあたりが起用されてきましたがいずれもアッレグリを満足させるには到らず。

そこでアッレグリはこのデルビーにレジスタとしてピアニッチを起用。
本職はもう1列前で輝くこの天才司令塔に中盤の指揮を任せます。



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<ピアニッチを経由しないユーベのボール>

個人的にはトップ下で自由に動けるピアニッチが見たかったのですが
過去ピルロがレジスタとして開花した例もあるので蓋を開けてみない事にはどうなるか分からないこの抜擢。

しかし実際の試合ではピアニッチを経由してボールが動く、動く・・・という事にはなりませんでした(笑)
序盤からユベントスのビルドアップ、崩し、いずれの局面でもピアニッチ自身はボールを受けようと顔を出しているものの、
まだチーム内での信頼感がローマほど絶対的なものでないのかとにかくパスが来ない。


ピア使われず1-1

局面は右から左へ攻めるユーベのビルドアップから

中盤からピアニッチがボールを受けようと降りてくるものの・・・・



ピア使われず1-2

ピルロがいた時代からピルロがマンマークで抑えられた時の「第二の司令塔」として散々鍛えられてきたボヌッチ。
ここは中盤を経由しない対角のサイドチェンジでWBを走らせるパスを選択。

なんか後ろはお呼びじゃないみたいなんで前線の崩しに絡もう!


ピア使われず2-1

前線でボールを受けたディバラをサポートするピアニッチ。
ローマではここからピアニッチに預けてサイドチェンジなり中へのドリブル進入なりあとは王様の閃きを待つばかりだったのですが・・・



ピア使われず2-2

ディバラは自力で局面を打開して逆サイドへサイドチェンジ



ピア使われず2-3

WBの利点を活かして左右に揺さぶったれーって事でここでもピアニッチのお呼びでない感・・・。

このようにユーベは後ろの司令塔としてボヌッチが、前の司令塔(&受け手)として前線~中盤を幅広く動き回るディバラが既に確固たる地位をチームで築いています。
これに中盤の王様ピアニッチを加えた三党体制へ移行するにはもう少し時間が必要なのか、
それともそもそも「船頭多くして」何とやら・・・なのか。

ピアニッチの両脇もどちらかと言うと使う選手ではなく使われる側であるアサモアとピッチをドタバタ駆け回る安定のケディラ。
従ってこの日のユーベの攻撃は3センターを経由したものではなく本線は外⇒外のサイド攻撃になっていました。
そこには3バックと4バックのミスマッチを戦術的に突くというアッレグリの狙いもあります。


【外⇒外で崩すユーベの攻撃】
ユーベ外⇒外0922-1

ユーベのビルドアップから崩しの狙いは明確。
まず3バックを使ってインテルのファーストラインである3トップを剥がします。
具体的にはサイドに開いたCBにインテルのWGを食いつかせるところから始めます。

ここではイカルディとエデルがポジションを入れ替わっていますが要は左WGを右CBに食いつかせてWBに展開


ユーベ外⇒外0922-2

4-3-3(4-2-1-3)のインテルは中盤に明確なサイドプレイヤーがいないのでユーベのWBにアプローチするのは基本的にはSBが多くなります。

↑ここでもリヒトシュタイナーに逃がしたボールにはSBのサントンが対応


ユーベ外⇒外0922-3

・・で、サントンを食いつかせた裏にFWか3センターの両脇を流すという攻撃でシンプルにチャンスを作っていたユーベ


試合自体は終始インテルペースだったにも関わらずシステムの利点を活かしたWBからWBへのクロスで
少ないチャンスをものにするあたりさすがのアッレグリですよ。

【ユーベの先制点】
ユーベ先制0922

大外のWBがダイアゴナルにゴール前に入って来る動きは守る側からすると捕まえずらい事この上なし

逆SBのサントンが上手く見ながら絞りきれませんでしたねー。
これならNAGATOMO使っとけとも一瞬思ったけど、よく考えたら長友もこの守備苦手だからきっと防げてないわ(笑)


で、話をユーベに戻すと先制点も奪っているように外⇒外の攻め筋は確かに戦術的には正しいかもなんですが、これだとピアニッチいらなくないですか?
しかも攻撃面でメリットが薄いなら懸案事項でもあるピアニッチをアンカーに起用した事による守備力の方はどうなのよ、と。



<強度が落ちた鉄壁の3センター>

ここ数年のユーベの強さ、国内は勿論CLでもバイエルンやバルサといったメガクラブと戦力と資金力で劣りながら互角に渡り合ってこれたのは3センターのクオリティと完成度の高さにあります。

中盤3枚の息の合ったチャレンジ&カバーと横スライドは近年の欧州サッカーでも頭一つ抜けた完成度で
対戦チームはとにかく中盤から前へタテパスが入れられない、という現象が頻繁に起こっていました。

しかしピルロが抜け、ポグバが抜け、マルキージオが離脱している今の3センターは明らかにクオリティが低下。
しかも敵将Fデブールはこのユーベの心臓である3センターに対し明確な崩し手を用意していたのです。


【インテルが仕掛けた3センター崩し】
バネガ3センター脇0922-1

まずインテルが狙うのは3センターの内最もボールに食いつきグセのあるケディラ。
バックパスでエサを撒きます。


バネガ3センター脇0922-2

するとこのように必ずケディラが食いついてくるのでバネガが背後を通ってサイドのスペースへ
奥の高い位置でSBがユーベのWBをピン止めしている上、
アンカーのピアニッチからすると出ていきずらい死角のスペースが生まれています。インテルはフリーのバネガへパス


バネガ3センター脇0922-3

バネガがフリーで受けるとさすがにピアニッチが対応せざるを得ず、
アンカーがサイドに引きずり出されてしまってバイタルが空くという寸法です。
インテルからすると狙っていた攻め筋なのでスムーズにエデルが流れてきていますね。


この攻め筋がFデブールによって事前に計画され準備してきたものだったという確証は
ボールに絡む選手が変わっても全く同じ手筋が繰り返された事からも間違いありません。


3センター脇0922-1

これも同じようにバックパスでケディラを釣り出して・・・



3センター脇0922-2

今度はボランチのマリオがケディラの背後を通ってサイドの死角へ




3センター脇0922-3

ピアニッチがつり出された背後のバイタルにエデルが入り・・・




3センター脇0922-4

ほら、エデルがバイタルでフリーで前を向けました。



これはあくまでインテルによって3センターが「崩された」形ですが、
ユーベは3センターの顔ぶれが変わった事で明らかに強度自体も落ちていました。
従って崩されるかたりばかりでなく「崩れている」状態というのも試合でたびたび目にするようになります。

例えばこの場面↓

【強度が落ちたユーベの3センター】
3センター距離×0922-1-1

局面は右から左へインテルがユーベ陣内でボールを回している場面ですが明らかに3センターの距離感が遠すぎます
そのせいでボランチのメデルの前にはボールを受ける広大なスペースが



3センター距離×0922-1-2

本来、ボールサイドのケディラが対応しているのであれば逆サイドのアサモアはもっと絞ってアンカー(ピアニッチ)との距離を縮めないとカバーが出来ません。
仮にここまで絞っていればメデルにパスが出てもアンカーではなくアサモアがこのパスには対応出来たはず。




3センター距離×0922-2

しかし現実にはメデルにスペースを使われてボールを運ばれるとユーベは後退する守備を強いられてしまいます。
そしてリヒトシュタイナーが自分のポジションに帰る矢印を利用して絶妙のタイミングでバネガが逆の矢印を入れてスッと引いてきます。
(これでフリーになれる)



3センター距離×0922-3

するとバネガからイカルディへど真ん中を割られるパスを通されてしまいます。


コンテが下地を作りアッレグリが熟成させたユーベの3センター。
その生命線はタテパスを入れさせない事、とくに中央は絶対に割らせない強度に自信があったはず。

しかし今の顔ぶれだとアサモアはしょせんただの便利屋に過ぎず、ピアニッチにアンカーの守備は無理でしょう。
ケディラも残りの2枚が「あいつ(ケディラ)には好きに行かせて俺らでバランスは取るよ」という大人のMFが相棒なら活きるでしょうが、今のメンバーでは1人浮いたタイミングでボールに突っ込む野犬のような状態。


この場面なんかSBからCFに直接タテパス入れられてますからね↓

真ん中割られる0922-1

SBのサントンからCFのイカルディへ・・・



真ん中割られる0922-2
アカンでしょコレ


少なくとも去年までのユーベだったら絶対に見られないシーンでした。

開幕戦でアンカーに起用したレミナはそこそこ気の利く守備が出来ていたので
ピアニッチのアンカーには見切りをつけて本来のポジションに戻すべきでしょうね。


結局試合はこれまでのユーベであれば試合内要など関係なく1点先行した時点で試合を閉じて渋~く勝ち点3を強奪していたパターンが
3センターの安定感がないのでアッサリ逆転されてむしろインテルの準備の良さFデブールのとポテンシャルの高さだけが印象に残る試合となりました。





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<輝けなかったピアニッチ 王として君臨したバネガ>

この試合の明暗は何と言っても輝けなかったピアニッチと中盤の王様として君臨したバネガの両者でしょう。
特にバネガはビジャレアル時代のリケルメを彷彿とさせるオールドファッションなトップ下として完全に試合のテンポをコントロールしていました。

やはりセリエAにはまだこういうトップ下が輝ける下地がありますよ。

近年確かにシルバや香川といったよりモダンなトップ下の台頭が著しいですが、彼らはゴール前でラストパスやシュートという
よりゴールに直結した仕事をするタイプなのに比べてバネガはその一つ前の過程で何度も顔を出しては試合の流れをコントロールする仕事に輝きを見出すタイプ。

完全に古き良き時代のトップ下なのです。

そしてセリエAでは古くからシステマチックな戦術が下位チームに到るまでカチッと組み上げられているからこそ
その組織を一瞬でズタズタにする天才の閃きこそが一種のカタルシスとしてファンタジスタの系譜も受け継がれてきたのでしょう。


例えばそれは僕のような一部変態からするとバネガの何気ないプレーでご飯何杯でもいけちゃいますよ!っていう事なんですけど↓
【バネガのご飯3杯いけるプレー】
バネガ0922-1

局面は自陣の深い位置で三方向から囲まれるバネガ
現代サッカーのセオリーで言えばセーフティーファーストで蹴り出すかワンタッチで近くに味方にはたいてプレスの網を回避するかの二択になりますがバネガは・・・



バネガ0922-2
足裏の切り返し一発でターン!

この自信!この不敵!
「奪われた時のリスク」から逆算するのが現代のセオリー、「奪われない事」を前提にベストな選択肢を探るのが俺のジャスティス!YO!YO!




バネガ0922-3

そして自陣DFラインの前をまるで散歩でもするかのように優雅に闊歩しながらCBとワンツー




バネガ0922-4

リヒトシュタイナーが詰めて来れば・・・




バネガ0922-5
股抜きウィィィ・・・・yeeeeea!!


ユーベの組織的なプレスを優雅にかわすこの技巧こそ額に入れて家に飾りたいカルチョのファンタジーアですよ。

確かに勝利やゴールに直結するプレーではないし、効率が良いかと言われたらそれはまた別の話。
昔は後ろから組み立てて⇒中盤で作って⇒アタッキングサードで崩して⇒ゴールという段階を経てましたが
今はもうボール奪う⇒ゴールみたいなサッカーになってきてますからねー。

これは時代の必然でもあって将棋界でも昔は序盤にしっかり自陣の陣形を整えてそこから中盤⇒終盤の勝負どころへ…という流れだったのが
今はもう序盤と中盤がどんどん削られて一気に勝負どころへ持ち込むような戦術が主流派になってきているらしいです。


でもこの変態ブログではそういう時代の最先端、主流を追いつつもこういう「古き良きもの」もしっかり拾い上げていきたいんですよ!

そんな訳で今季も誰も見て無くても僕はセリエAを追い続けるつもりですよ。

アッレグリの事ですからきっとすぐに3センターは修正されるでしょうし、
Fデブールみたいな理論派を加えた知将達のやり合いはやっぱり目が離せませんからね。







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数的優位と質的優位を巡る戦い ~マンチェスターU×マンチェスターC~

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<数的優位と質的優位を巡る戦い ~マンチェスターU×マンチェスターC~


ここに一枚の写真がある-



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ある日のトレーニングの午後、選手と通訳によるたわいもないサッカー談義に花が咲いているのだろうか。

まだ"何者"でもなかった両者の間には何の垣根も障害も無かったのだろう。

そして恐らく当時の2人のサッカー観もきっと根底の部分では通じ合うものがあったのではないだろうか


しかし時を経て、2人は全く異なる立場に身を置く運命となったのである-


1人のロマンチストは言った
「自分の哲学は美しく勝つ事である」


1人のリアリストは言った
「勝利こそが私の哲学である」


戦術の進化を巡る歴史とは即ち、異なる価値観のぶつかり合いである

その最高峰に立つ両者がスペインの地で対峙したクラシコでは「0トップ」と「間受け」、
それに対抗する「中央圧縮」「トリボーテ」「ゾーンを越えたCBの迎撃守備」など数多くの戦術的進化が促された

それに比べるとここ数年の現代サッカー史は戦術的にはやや停滞期に入っていた、と言えるかもしれない


その両者がマンチェスターに地を移し、再び相まみえるというではないか


これはただの1試合ではない。


『さあ、そろそろフットボールの歴史を動かそうか』



<スペシャリスト集団対マルチロール集団>
スタメンダービー0917

という訳で上記が両チームのスタメンです。

ユナイテッドは各セクションにワールドクラスのスペシャリスト達を揃えた非常にモウリーニョらしいチームになっています。
特にセンターラインにはバイリー、ポグバ、イブラヒモビッチというフィジカルモンスターを獲得。

極論すればCBとボランチは「来たボールは全て跳ね返せ」、両ワイドは「個で突破しろ」CFには「決めろ」です。
フェライーニ&ポグバのダブルボランチとか、もうこれから殺し合いでも始めるのかっていう夢と希望の無さですよね(笑)

それぞれのタスクを明確化して有機的につなぎ、計算出来る100%からブレの無い、
極めて不確定要素の低いチームを作るのがモウリーニョという男の強み


一方で「目に見えない何か」「計算できない何か」から新しい化学反応を生み出そうとするのがペップという男のチーム。
「CBに中盤の選手を起用するのが私の好みだ」と言うように一芸のスペシャリストよりも攻守に秀でるマルチプレイヤーを揃えるのがペップサッカーです。

プレシーズンから早速コラロフ、フェルナンドをCBに起用したりと色々実験しているようですが取りあえずこの試合では通常の位置に戻したDFラインを編成。
GKにはペップの哲学からすると「ただゴールマウスに突っ立っているだけのでくの坊」に過ぎないハートを早々に放出し、バルサから足元の技術に優れたブラボを獲得。

そしてペップのサッカーにおけるヘソの位置にあたる4番ポジション(アンカー)には全能のフェルナンジーニョが抜擢されました。
この選手が「バルサにおけるブスケス」であり「バイエルン時代のラーム」にあたる立ち位置にいる事は間違いありません。

2列目には間受けして良し、ワイドに開いて良しの技巧派を4人並べて1トップはエースアグエロの負傷によりイヘア・ナチョが代役に。



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<ぶつかり合う両者の哲学>

試合は序盤から両者の哲学ががっぷり四つに組み合う展開となる

モウリーニョのユナイテッドは守備時4-4-1-1に近い並びに。
これは守備をある程度免除せざるを得ないイブラを最前線に置いているチーム編成なので致し方なし。

シティがビルドアップを始める段階でイブラをストーンズ(今イングランド人で最も展開力のあるCB)に付けて
ルーニーにはアンカーのフェルナンジーニョを見させる縦関係にしてもう1人のCBであるオタメンディは放置

オタメン放置b0917

相手チームで最もビルドアップに難のある選手を敢えてフリーにしておびき出し、カウンターの罠を張るのはモウリーニョの常套手段です。
クラシコ時代にはロナウドにピケを、ベンゼマにブスケスを見させてプジョルに同じような放置プレーをしていたのを思い出しますね。

なのでシティはオタメンディがボールを持ち運ぶところからビルドアップをスタートさせる事が多く、
ここからモウの張る4×4の守備網シティの2列目間受けカルテットという構図が見られました。

実際の試合からその攻防を確認していきましょう

モウ4141-0917-1

局面はボールをユナイテッド陣地まで運んだオタメンディから間受けを狙うノリートへ


モウ4141-0917-2
すかさず中央圧縮で対抗!

閉められたノリートはワンタッチでオタメンディに返すと、その隙に今度はシルバが「間」を伺う


モウ4141-0917-3
連続した中央閉鎖!

ここではルーニーのプレスバックまで加えて前後左右で囲みこむのがミソ


モウ4141-0917-4

3枚で包囲して狙い通りボール奪取成功


ペップ「ならば0トップ発動だ」

バイリー迎撃0917-1

局面は1トップのナチョを落として間受けを狙うシティ



バイリー迎撃0917-2
モウ「CBで迎撃だ、行け」

どこのSラモスだYO!

メッシの0トップを抑える為にCBのゾーンを広げてSラモスを迎撃に向かわせたあの戦術。

な~んかこのへんの攻防、一時期のクラシコを思い出してオラわくわくすっぞ!


ちなみにこの新戦力のバイリー。
ビジャレアル時代から密かに目を付けてたんですが、個人的には今季モウの下でワールドクラスの仲間入りをするのではないかと期待している逸材です。

確かにまだまだ荒削りなんですが1対1は無敵だし、スピードが半端じゃないんでカバーリングのエリアも広大。
第二のカルバーリョ、Sラモス候補生として要チェキですよ。



さて、モウリーニョに中央を閉鎖されたペップ。
しかしここまではある意味両者織り込み済み

ペップも中央一辺倒だった当時と違い、今は「中がダメなら外」という柔軟性があります。


対角スライド0917-1

4×4ブロックの難しさは横68Mをボールサイドにスライドさせながら4枚で守らなければいけない事。
特に中央のボランチ2枚はサイドを変えられる度に30M以上の横スライドを強いられます。

ペップはそこを突いてボールサイドにユナイテッドがスライドし切ったタイミングでノリートから逆サイドのスターリングへサイドチェンジ




対角スライド0917-2
フェライニ&ポグバは顔色一つ変えず鬼の横スライド!


それならば、という事でスターリングから一旦ボールを下げて・・・



対角スライド0917-3

4×4ブロックのもう一つの泣き所はブロック前にアンカーを置かれるとケアが難しい事

ここでもルーニーのプレスバックが間に合う前にフェルナンジーニョが再び逆サイドへの対角パス



対角スライド0917-4
これ去年までバイエルンで見た事ある!


このように試合は序盤から両指揮官の狙いが明確にピッチで見て取れ、明らかに普段のダービー・・・というかプレミアとは異質の攻防が繰り広げられていました。


<質的優位を作り出せなかったユナイテッド>

ではここで、この試合におけるモウリーニョの狙いを考えてみましょう。
繰り返すようですがモウリーニョのサッカーとはは各ポジションにスペシャリストを配置し、その質的優位を活かして相手を殴り続けるものです。

とすればこの日のスタメンからその狙いは明確。

4×4の中央圧縮から特にセンターエリアでのフィジカルの強さを活かしてボールを強奪⇒サイドに展開してリンガードorムヒタリアンが個で突破⇒中央のイブラ⇒落としてルーニー

非情にシンプルですがその為の駒が各ポジションに配置されている合理性こそ彼の真骨頂

しかし、前半は2つのポジションで不確定要素が発生していました。
不確定要素とは「選手のパフォーマンス」です

モウ「今日はゲームの性質上、我々の個人技で相手にダメージを与えられると考えていたが、彼らは私の欲していたものを与えてくれなかった。前半のうちに2、3人の選手が明らかにプレーできていなかったんだ。ただ、これはフットボールだ。選手は監督を失望させもするし、大きなサプライズを与えてくれたりもする」

試合後モウ本人が語っている通り、前半は奪ったボールを両サイドに展開するもそこでリンガード、ムヒタリアンがことごとくボールをロストしていました。

シティの切り替えの速さも特筆すべきものでしたが、それも含めて個の質で凌駕する算段がモウにはあったはず。
しかし不確定要素により質的優位が確保されなかった事で前半は一方的なシティペースに。

ただ、その時間帯に元々の配置で「質的優位」を確保しておかなかったポジションから失点が生まれたのは必然だったのか偶然だったのか-


この日のユナイテッドのスタメンを見た時に唯一、違和感のあるポジション配置があると思ったのは私だけでしょうか?

モウリ-ニョサッカーの心臓部とも言えるCB+2ボランチの4枚で囲む四角いエリア。

ポグバ、フェライーニのボランチ・・・うん、これぞモウ

新戦力バイリーのフィジカル・・・こういうCB必ずいるよね

CBブリント・・・あれ?本職ボランチの選手が何故ここに?


そう、ここだけ異質なんですよねー。
過去ここにはテリーとかペペとか屈強マンが配置されてきたと思うんですが。

恐らくモウの狙いはブリントの左足からのロングィードでイブラへタテポン1発を攻撃面で確保したかったのだと思いますが
本職ボランチのCBは良くも悪くも「リスクよりもリターン」を見てプレーを選択しがちなんですよね。

シティの先制点の場面ではブリントの軽い対応が失点に直結してしまいましたが
ああいうフィフティーボールの処理でまずはリスク回避と割り切ってドーンとタッチラインに蹴り出せるのが本職CBで
最後までマイボールにしてつなごうかという選択肢を持ってしまいがちな故怪しい対応になってしまうのが日本代表の吉田らにも通じるボランチからの転向組です。

攻撃面での質的優位を取って起用したものの失点場面では守備面でのマイナスが出てしまった恰好。


<『11対10の戦い』数的優位を活かすシティ>
GettyImages-601776222-min (1)

一方ペップのチームは局面局面で数的優位を上手く作り出して相手の守備を丁寧に剥がしていく攻撃に持ち味があります。
メッシの0トップも元々は中盤で数的優位を作り出すのがその目的でした。

ではペップがシティで作り出す数的優位は何か-

それはGKを本格的にフィールドプレイヤーとして活用するビルドアップです。
シティは攻撃時、積極的にGKのブラボも活用してビルドアップを行っていました。

【シティのGKを活用するビルドアップ配置図】
マンCGKつなぎ0917

シティのビルドアップに対し、ユナイテッドはルーニーがアンカーを見て両SH+イブラと4枚で4枚を見る4対4の構図に見えてシティはブラボも活用するので実は5対4の数的優位を作られてます。

その上、シティはユナイテッドの4バックを前線のワイドかCFが前残りになってピン止め。
その隙にシルバ、ノリート、ナチョらが入れ替わり立ち代り中盤の低い位置まで降りてくるのでユナイテッドのCBはそこまで深追い出来ないし、ルーニーら前線からすると背後から降りてくる技巧派達までケア出来ません。

ちょっと実際の試合からシティのGKを活用したビルドアップの場面を確認してみましょう。

【シティのGKを活用したビルドアップ】
GKつなぎ0917-1

局面はGKブラボからビルドアップを始める場面での両チームの配置
4対4に見えて5対4という構図ですね。

注目すべきはCBのストーンズがアンカーポジションに入ってアンカーのフェルナンジーニョがCBに降りてきているポジションチェンジ。
このカタチは過去バルサでもバイエルンでも見せなかったペップの新機軸です。

単にストーンズとフェルナンをケアしてきたモウへの対応なのか、実際にこのポジションチェンジ自体がこの試合で戦術的に何か大きな機能を果たしていたかと言うと必ずしもそうではないのですが、もしかしたらシーズンが進むにつれて何か新たしい発展系があるのかもしれません。


GKつなぎ0917-2

ブラボからフェルナンジーニョに展開されるとボールサイドでは画面には映っていませんがSBのコラロフがワイドで中途半端な位置を取っているのでムヒタリアンは思い切ってボールにアプローチ出来ません。

このボールサイドの局面だけ見るとユナイテッドは1対2で、シティから見ると2対1の数的優位を作り出せているのが分かります。


GKつなぎ0917-3

ムヒタリアンがボールに行けない隙を狙って今度はノリートとシルバがフェライーニの脇まで落ちてきます。
フェライーニからするとここでも1対2の数的不利を強いられていて思い切った守備が出来ません。


GKつなぎ0917-4

引いてボールを受けたノリートにSBのバレンシアが食いつくと今度は大外のコラロフへ

シティはビルドアップの始点でGKが作った数的優位を段階的にズラして活用し、ノーリスクで相手のアタッキングサードまでボールを運べてしまえるという訳ですね。
(実際に試合ではこの後方からのビルドアップで2点目を取っています)

つまり11対10(実質はイブラが守備でノー戦力なので9・5かな?ww)の構図こそが圧倒的シティペースで終わった前半の肝だったと見ます。


<モウリーニョの勝てるところで勝負する>

結局前半はお互いミスから1点を取り合い、その後シティが数的優位を活かして追加点、2-1で折り返す事に。

モウリーニョからすると苦戦の原因はハッキリしています。
自分達の質的優位が両サイドで確保できていない事、そしてGKから剥がされる相手のビルドアップです。

という事で選手のパフォーマンスが悪ければパーツ交換で対応。
ムヒタリアンとリンガードを下げてラッシュフォードとエレーラを投入します。

まずは両翼をラッシュフォードとルーニーに変えて両ワイドで質的優位を確保しました。
試合では入ってすぐのラッシュフォードが個人技でアドバンテージを握ると右サイドではクロッサーと化したルーニーがベッカムさながらの高精度クロスでイブラの空中戦を活かし始めます。

相手のビルドアップに対しては布陣を4-1-4-1にして前線を「3-1」から「4-1」の5枚にした事で
パスコースを消しながらGKブラボにもプレスをかけに行く守備に変更。
これでブラボから余裕を持ったビルドアップが出来なくなり、あわやGKでボールを奪われそうなシーンまで。

そして後半キックオフのいかにもモウリーニョらしいデザインプレーも秀逸でした。


【後半キックオフのデザインプレー】
後半キックオフ0917-1

局面は後半、今夏からのルール変更を利用してキックフからのボールをCBのブリントまで下げると
フェライーニとルーニーが右サイドでGO!


後半キックオフ0917-2

相手のSBとフェライーニをロングボールで競らせて落としたボールをサイドでルーニーが拾い⇒イブラへ高精度クロス

これで後半スタートのワンプレーで同点にしたろ!と狙っていたモウリーニョの完璧にデザインされたキックオフ。

前半は先制点を失うキッカケとなったブリントでしたが後半のキック&ラッシュ戦法ではロングボールの精度で大いに貢献していました。

後半のユナイテッドはこれを徹底的に繰り返し、まさに「勝てるポイントで殴り続ける」モウリーニョの真骨頂とも言える展開に。


又、↑の場面で注目したいのはフェライーニにシティのSBが競りに出た際、アンカーのフェルナンジーニョがDFラインに入って中を固めている点

まあ、アンカーポジションの鉄則とも言える動きですが、ただ実際にもしこれでクロスが上がってきた場合、
中でイブラと競るのがフェルナンジーニョではかなり不安があるなぁ・・・と思った矢先


後半動き0917-1

シティベンチでコーチと何やら話し込んでいるペップ

からの~


後半動き0917-2
3分後にはもうフェルナンド用意しとる!


これでアンカーにフェルナンドを入れてユナイテッドのキック&ラッシュにも空中戦で対抗出来るように高さを確保・・・っていう意図は分かるんだけどこのベンチワークの早さは尋常じゃない!








これは本当にプレミアリーグの試合なのか・・・!?
IMG_7655.jpg



試合は後半、イブラ、フェライニ、ポグバに放り込んで凶悪なキック&ラッシュ戦法になった事でボールが落ち着かなくなるとペップもサネを投入してデブライネを1トップに。

前半の間受け&ワイドでポゼッションしようぜチームから完全に奪ったボールをカウンターで仕上げる編成にチェンジして逃げ切る、らしくない(?)試合巧者ぶりをペップが発揮してシティが快勝。


恐らくあと2ケ月遅かったら両チームの仕上がりもだいぶ違って全く別の内容になっていたと思うだけに
個人的には少々早すぎる巡り合わせとなった今回のマンチェスターダービー。

次回のダービーではプレミアの地からサッカー史を動かすような名試合を期待したい。









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香川&本田と心中か?日本のとるべき道は ~日本×タイ~

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<香川&本田と心中か?日本のとるべき道は ~日本×タイ~

前回の黒星でこの試合に負けて連敗スタートとなれば「指揮官解任」もまことしやかに噂されていたハリルJAPAN。

プレッシャーのかかる第2戦は何とか「勝ち点3」という結果を持ち帰る事に成功しました。
これで一旦解任派も鞘を収める事となりましたが、タイに勝った程度で収めるぐらいの刀ならもう少し慎重に出すタイミングを考えてくれとも思う次第。
(ザック時代ならこの内容でタイに2-0とか逆に解任騒動になってたレベル)

果たして日本代表は前回の試合と比べて成長が見られたでしょうか?

答えはNOです。
それも当然、UAE戦から1週間もない準備期間にチームの根本的な改善はモウリーニョでも不可能でしょう。


では何が違ったのか?

実も蓋も無い言い方をすれば日本が変わったのではなく「相手」が違ったというだけの話。

結論から言うとタイはUAEに比べて1ランク(2~3ランク?)は落ちる相手でした。
日本に対するスカウティングも甘く、カウンターは遅いしフィジカルも日本に圧倒されている始末。
得意のパスのつなぎも日本のプレスをかいくぐる程の技術はなく90分でシュートらしいシュートが1本だけ(西川がセーブ)では実力の差は歴然としていました。


ただ、それだと話があまりに大雑把でレビューも終わってしまいますので、
今回はハリルが行ったマイナーチェンジと依然燻り続ける日本の課題から今後の行く末も占っていきましょう。


<幅と深さを求めて>

両チームのスタメンはこちら

taisutamen.jpg

UAE戦からの変更点は「展開力」の大島に代えて広い守備範囲とボールに強く当たれる守備力が売りの山口をボランチに、
SHは中に入って来る動きからの崩しと足元の技術に定評のある清武に代えてワイドでタテに突破する推進力の原口を。
1トップは背後へ飛び出すスピードで目下売り出し中の若手浅野をスタメンに抜擢してきました。

指揮官からすると1週間に満たない準備期間でチームの何かを動かすとしたら駒を変えるぐらいしか手がありません。
それだけにハリルが求めた「中盤は展開力よりもまずは守備力を」
そして攻撃は「幅(原口)」「深さ(浅野)」を加えてもっとシンプルにピッチを広く使いたいという狙いが明確です。


さて、ハリルが施したこのマイナーチェンジでチームはどう変わったでしょうか?




<ボールの狩人により中盤の奪取力向上>
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まずは守備面から。

ここはもう試合をご覧になった方なら一目瞭然だったように
日本の敵陣で失った瞬間の切り替えと前からの守備においてボランチの位置でボールを刈り取れる力は大島だった時と比べて段違いに上がっていました。

では実際の試合から日本のボール狩りを観てみましょう。


【日本のボール狩り】
守備改善0910-1

局面は右から左へ攻める日本のサイド攻撃。
SBの酒井から裏へ抜ける本田へ



守備改善0910-2

本田はスピードが無いのでアッサリDFに身体入れられて先にボールを奪われてしまいます。
しかし日本にとって(ハリルにって)重要なのはここから。
奪われたボールをなるべく高い位置で奪い返す事で、カウンターリスクを二次攻撃のチャンスへと変えるのがこのチームの狙いです。


守備改善0910-3

すぐにボール周辺の日本の選手が切り換えた事でタイの最初のパスをタテではなく横パスにする事に成功



守備改善0910-4

日本はこの横パスを囲んでファーストディフェンスの網を作っていますが、
重要なのはSBの酒井が上がったまま、高い位置で守備をしている裏のスペースです。

このスペースをカバーするのがボランチの役目で山口は持ち前の機動力を活かしてこのスペースをすでに埋めています。

そして狙い通り広いサイドへのパスコースを切られたタイは同サイドでのタテパスを選択するしかなく・・・



守備改善0910-5
山口「シャー!コラー!!」

ガツンと行ったーーー!!

ここで身体を当ててボールを刈り取れるのが山口の魅力ですね。
この守備力で前回のW杯でも大会直前に遠藤からレギュラーを奪っています。
まさに弱者のサッカー寄りにチームバランスを調整するなら打ってつけの駒と言えるでしょう。



守備改善0910-6

敵陣のこの高い位置で奪えれば即ショートカウンターのチャンスになります。

ボールは再び本田から浅野を経由したワンツーで



守備改善0910-7

本田がボールを奪われてから僅か6秒後にはシュートチャンスになるというのがこの守備の強みですね。


・・・ただ、大島を山口に代えただけで日本の守備の構造的な欠陥が全て解決されるほどサッカーは甘くはありません。
ある意味「特攻」で勢い良く出て前で狩れてる時はいいですが、奪われたボールを一発で裏に蹴られると日本の脆さが一気に顔を出します。



【中盤を飛ばされた場合】

カウンター2CB0910-1

局面は山口からバイタルの本田にボールを入れる瞬間ですが、この時の日本の配置に注目。

両SBを高い位置に上げてボランチが並列。そう、UAE戦と同じ並びですね。
中盤~前線の厚みを攻守に活かしたいというサッカーなのでそれはそれでいいんですが、
常にボールのラインより後ろにはCBの2枚しかいないというリスクも同時に内包しています。


カウンター2CB0910-2

だからここで失って、タイに中盤を越えたタテパスを裏に蹴られると・・・






カウンター2CB0910-3
はい出た!このパターン!

鈍足2バックでこの広大な裏のスペースをカバーしなければいけない恐怖の時間がやってきました。
定番なのはこっからタテに加速されて森重振り切られる⇒カバーに向かう吉田が切り返し一発ですっ転ばされる・・・っていうトラウマ画だな



カウンター2CB0910-4

・・・・が、UAEと違ってタイのカウンターにスピードはなくFWもマブフートのような個の突破力がないので
ここで一旦攻撃方向に背を向けてキープの姿勢を取ってくれました。(正直、助かった)




カウンター2CB0910-5
で、その間に全員帰陣・・・と。

でもこれタイの速攻だからこうなっただけで現象としてはこれまでの失点パターンと何ら変わらない事象が起きている訳ですよ。
まあ、チームの構造に手を付けられてないので当たり前といえば当たり前なんですが、このままだと本大会はおろかアジアでもこの弱点は確実にスカウティングされてるんじゃないかと・・・。





<個人戦術では補いきれない組織的な欠陥>


次に個人ではなく組織的な守備という視点で見た時の欠陥を考えてみましょう。

山口の特攻守備という個人戦術をチームという枠にハメてUAE戦の課題を部分的にごまかしたまでは良かったものの、
周囲の味方と連携する組織守備はまた別物。

それはこの試合、日本が唯一許したタイの決定機の場面で
その原因が物凄くシンプルな守備の連携ミスであったという事が何よりの証左です。


【日本の初歩的な守備連携ミス】
森重ピンチ0910-1

局面はタイのスローインを森重が中盤まで出てインターセプト
このプレー自体は読みからの良い飛び出しで何ら問題なし



森重ピンチ0910-2

・・・が、コントロールが大きくなって失ってしまう、と。
これも技術的なミスなんでまあ仕方ないと。
(少なくとも戦術的なミスではないという意味で)




森重ピンチ0910-3
問題はココですよ。

CBがDFラインから飛び出してチャレンジしてるのに、それに対する周囲のカバーリングが一切なく全員そのままのポジショニングで自分のマークを見てるだけなんです。

いやいや、守備の優先順位考えたらCBがいるべきスペースって最も失点に直結するスペースじゃないですか。
普通、SBが絞るかボランチが1枚降りてきて埋めるでしょう。

イタリアじゃ多分小学生の試合でもこれぐらい自然と出来ますって。

でもさー・・・どう見てもコレ空いてるんだよね(国際Aマッチで)

急いで戻ろうとしてる森重の姿が何とも滑稽で哀愁を誘います・・・OTL


森重ピンチ0910-4
アッーーーー!!!

「西川ナイスセーブ!」とか言ってる場合じゃないですよ本当にww

これが個人戦術ではごまかしきれない「組織戦術」のマズさです。





<輝けない香川と原口の推進力>
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守備面では山口に「出来る事だけやらせる」という起用で狙いがある程度ハマった今回の抜擢。
しかし当然そこにはメリットだけでなくデメリットもあります。

ボランチにタテパスが期待出来る大島がいなくなり山口&長谷部の組み合わせになった事で
ビルドアップで後ろからのタテパスがほとんど中盤に入らない状態となりました。

CB、ボランチからのパスルートは外へ外へ。UAE戦と違いSBが攻撃の起点を担います。
これで一気に存在価値が半減したのがトップ下の香川。

以前から言ってきているように香川を活かすには「タテパスの入れられるボランチ&CB(ようはフンメルスと牛丼)」が必要不可欠だからですね。

この編成だと攻撃時、香川がどうなるかと言うと・・・


【輝けない香川のプレーを検証】
香川降りてくる0910-1

もうボランチに期待出来ないもんだからCBが持ったところでボランチの位置まで降りてきちゃう



香川降りてくる0910-2

・・・で、ここでボール受けても誰か寄って来てくれて新たな展開が生まれるとか特に無いんで
CBから受けたパスをもう片方のCBにバックパスで返すだけのお仕事です・・・で終了(爆)

え・・・?香川のこの仕事、意味ある?


よし、じゃあ今度はサイドに流れて受けてみよう!↓

香川外0910-1

サイドに流れて足元でボール受けて・・・



香川外0910-2

DFから離れるように後ろへ後ろへとカニドリブル・・・



香川外0910-3

そして最後はお決まりのバックパス・・・終了。


じゃあコレ、原口だと何が違うのか?
一連のプレーで比較してみましょう。

【原口のサイド受け】
原口仕掛け0910-1

CBからSBを飛ばして原口がパスを受けるシーン。
もうパスを受ける前の姿勢が香川と違って前に向いているんですよね


原口仕掛け0910-2

で、ファーストタッチでタイのSHを置き去りにしてすぐSBに仕掛けていける、と。
こうなると守る側としてはSBが向かわざるを得なくなって、出て行ったSBの背後にスペースが生まれます。



原口仕掛け0910-3

香川とのワンツー突破で・・・



原口仕掛け0910-4

タイの守備ブロックを完全に突破!これが裏を取れる攻撃です。


そして原口にはこの突破力があるのでディフェンス側の対応も当然変わってきます。
この応用編がコチラ↓

【SB裏にFWが流れるパターン】
浅野SB裏0910-1

局面は左サイドでSBの酒井高徳が持っているところ。
原口がパスを受ける素振りで降りて行くと前を向かれてはタテに突破されてしまうのでSBが背後から食いつき気味の守備



浅野SB裏0910-2

SBが出て行った事で空いた背後のスペースにFWの浅野が流れる。
このようにスペースがある状態でヨーイドン!をさせたら浅野は・・・




浅野SB裏0910-3
テンテンテンテッテテッテッテテッテ~♪(マリオカートでスター取った時のBGM)

浅野無双や・・・こうなってはもう誰も追い付けん・・・。

で、中への折り返しを本田ーーー!!ってお前も外すんかーい!www

△「何で外したのか良く分からん・・・」



要するにこれが幅と深さを活かした「背後の取り方」です。
単純な外⇒外クロスと何が違うかと言うと一度SBの背後を取っているって事ですね。

最近の欧州サッカーのトレンドでも
ワイドにタテの突破力を置いておく事で守備側のSBを引きずり出す

つり出したSB裏をボランチポジションからSBがインナーラップ

CBが釣り出される

中の守備が弱体化した状態で相手CFとクロス対応を迫られる



この流れで得点を量産したのがバルサ時代は「中攻めの鬼」だったペップ・グアルディオラのバイエルンでした。

【ペップバイエルンの外攻め⇒SBインナーラップ】
バイエルンインナーラップ0910

最終ラインのボアテング、アロンソ、キミッヒらから大外のWG(ロッベン、コスタ)に向かって対角のサイドチェンジ、
相手SBとSHが対応したところでボランチポジションからSB(ラーム、アラバ)がインナーラップをかけて中で待つレバンドとミュラーに折り返すだけ

これだけで守る側はレバンド+ミュラーという得点力の鬼に対応するのが逆サイドから絞ってきたSB(だいたい小さいヤツ)か中盤からプレスバックしてきたボランチ(守備時の視野確保が本職DFじゃないから甘い)になる訳ですから効果は絶大です。


話しが少し横道に反れましたが、日本もアジアだったら外⇒外の単純なクロスでもある程度点は取れると思います。
ですが世界相手にCB2枚が待ってましたの状態で単純に上げても跳ね返されるだけのモイーズサッカーになっちゃいますよ。

やっぱりSBのバージョンアップというか、もう「タッチラインを上下動してクロスを上げるお仕事です」っていう
古臭いSB観を日本も捨てていかないと原口のようなワイドアタッカーも活かしきれないと思うんですよね。

これからの時代はSBにこそボランチ的な感性を持つ選手が必要で「SBがゲームを作れるチーム」なら今のところアジアでは無双出来るはず。


勘違いしてほしくないのですが、別に僕はこの試合から原口の方が香川より優れている、とは思っていないんですよね。

SHにワイドアタッカーを置く場合、現状日本の場合はSBと仕事がかぶるのでこういう事にもなりがちですし↓

【左サイドで渋滞を引き起こす原口&SB】
左サイド渋滞

要は香川も原口も一長一短で、どっちが輝くかはチームの枠組み次第である、と。





<香川&本田と心中か?日本の取るべき道は>
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じゃあ、本田と香川を活かすカタチって一体なんなのよ?という話になりますよね。
ではこの試合で見られた数少ない2人を活かす攻撃というのも検証してみましょう。


【日本の中央突破】
理想の崩し0910-1

局面は左から右へ攻める後半の攻撃。
この試合数少ないグラウンダーで質の高いタテパスがボランチ(山口)から本田へ



理想の崩し0910-2
そう本田が今受けているこのスペース!!

原口は相手守備ブロックの外で輝く駒ですが、本田と香川はブロックの中でこそ。
相手SHとボランチの間、もっと言うならCBとSBを結んだ四角形のちょうど中間・・・いわゆるバイタルでの間受けですね。

本田はこのタテパスをワンタッチフリックで香川へ



理想の崩し0910-4

バイタルで前を向いた状態でパスを受けられた香川。
現代サッカーでは攻撃側がバイタルで前を向けたら「王手飛車取り」の状態です。

香川はダイアゴナルに裏へ抜ける原口へのスルーパスを出すもよし、原口が空けたスペースへドリブルでナナメに持ち出してシュートするも良し、理想を言えばここに大外から入って来るJアルバ・・・ならぬSBがいれば更に香川の選択肢も増えた事でしょう。
(結果は原口へのスルーパスを選択し、原口のシュートはGKがセーブ)


この中攻めを成功させる為には本田と香川が受けるバイタルのスペースを少しでも広げておく必要があるので
ワイドと裏に圧力のある駒をおかないと「どうせ最後はここに入れてくるんでしょ」って感じで相手にも割り切って絞られちゃいます。

この絞られた状態でも意地になって(判断なく)バイタルにタテパスを打ち込んでいたのがUAE戦の日本でした。


勿論、スペースを広げてもそこにタテパスを入れられるボランチがいなければ同じように無意味なので
じゃあ大島を使うか⇒UAE戦に戻るの無限ループ。

ハリルだって本当は山口の守備力と大島の展開力を併せ持つボランチを使いたいはずなんです。
(ザック「それな」 アギーレ「ほんまそれ」 岡田「アンカー置くしかないっしょ」)

でも日本の選手層だと何かを取ったら何かを捨てなきゃいけないんですよね。
確かにこの試合の香川、本田のプレーは完全にチームから乖離してましたが、それはそういう設計にチーム構成がなっていたからという部分も大きいんじゃないでしょうか。


現代サッカーの最先端では守備時と攻撃時の選手配置、距離感を緻密に設計して
局面に応じて可変させつつ、お互いの攻め筋をぶつけ合っている名人将棋の時代。
一方で日本代表のポジショニング一つとっても何とアバウトな事か。

【日本の意図と意味が感じられない攻撃時の配置】
全員足元0910
ちょっと油断してると↑こんな感じですからね(笑)

TV解説がしきりに「今日は良い距離感で戦えてますね!」と言っていましたが、
こんな外⇒外一辺倒のモイーズサッカーの「どこがだよ!」とツッコまずにはいられませんでした(笑)


近年のトレンドを見れば「何か」を捨てて「何か」を取っているチームの脆弱性は明らかです。
ウインガーを切り捨ててポゼ専用の駒を集めたスペインの時代は長くは続きませんでした。


本田と香川に心中覚悟でチームの命運を託すのか?


それとも2人をバッサリ切り捨てるのか?


いずれにせよ、日本は限られた戦力の中で「外攻め」も「中崩し」も「守備のバランス」も両立出来るバランスを見出さなければ勝機はありません。

ハリルには少なくともこの難解なパズルの取っ掛かりぐらいは、最終予選で見つけ出す事が望まれる-








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